人は真剣に関われば、真剣に応じる

私は、15年前に家庭教師の派遣で起業をしました。家庭教師派遣自体は、学生時代から始めていたので、そこから数えると20年くらい前から教育サービスに関わっていることになります。

家庭教師派遣からスタートし、現在では、発達障害や発達遅れのある子のための学習塾や幼児教室を事業のメインにして仕事をしており、幼児教室を6校舎、学習塾を5校舎運営しています。最近は、事業紹介をすると、「えっ!そんなに校舎があるんですね!!すごいです」と驚かれることが多いですが、最初から順風満帆だった訳ではなく、目標を立てたとしてもその通りに前に進むことなどほぼ無く、失敗を繰り返してばかりでした。でも、目の前で起こる出来事に対して、真摯に向き合い、反省をしながら一歩一歩を歩むことは昔からずっと大切にしています。

今回は、まだまだ甘ちゃん大学生だった私が、社会人としての姿勢を教わった時の話です。

大学生として家庭教師をしていた頃、私は、高校3年生の子を教える機会を頂きました。家庭教師を開始する時期としては大変遅い10月くらいのスタートでした。生徒の家に行き、部屋に入ってみると、高校生にもかかわらず、灰皿にはたばこの吸い殻が山なりになっていました。生徒自身の態度も、「先生、勉強教えてください」という姿勢ではなく、勉強なんてやりたくない感がバンバン伝わってきました。

そんな生徒の態度に気圧されて、私も彼の姿勢になんとなく合わせるようになり、真剣に向かい合おうとはせず、適当に週1回2時間という時間を過ごすようになりました。2学期の期末テストを終え、そろそろ受験も直前に迫ってきた頃でした。授業を終えて、帰ろうとする私を、生徒のお父さんが呼び止めました。お父さんが、私に尋ねました。

「うちの子、大学合格できますか?」

私は、不意に投げかけられたこの質問に対して、愛想笑いをして応じました。適当に時間を過ごしているわけですから、愛想笑いくらいしか応じる術はなかったのです。すると、お父さんが怒りの形相になり、

「へらへら笑ってんじゃねぇ!」

と一喝されました。

「先生にとっては、たくさん生徒がいる中での一人かも知れないが、この子にとっては、たった一度の人生なんだ!もっと真剣に考えろ!!!」

私は、ハッとしました。彼の雰囲気に流されて、自分の仕事の目的を忘れて、無駄な時間を過ごしていました。真剣に関わることもなく、無為に時が過ぎれば良いと考えていた自分がいることに生徒のお父さんによって気づかされました。何のために起業をしたのか?ラクをするため??そんなバカな時間を過ごすために起業したわけじゃない。そんな思いが自分の中を駆け巡りました。

私は、これまでの行ないを反省して、真剣に向かい合うことを決めました。大学に合格するかどうかは分からないが、最善は尽くそうと。志望校の過去問を10年分解き、出題傾向を探り、数週間でも結果が出せる勉強計画を作りました。計画を作ってみると、授業時間の1分も無駄にできる時間は無いと思いました。なので、授業前には準備を入念に行い、授業に臨みました。これまで、勉強に不真面目にしか関わってくれなかった生徒の姿勢が徐々に変わり、気づけば、2時間集中して勉強に取り組むようになっていました。

私は、生徒がやる気が無いから仕方ないと思っていました。が、真実はそうではありませんでした。"私のやる気がないから、生徒もやる気がない"が正解でした。

私が心を入れ替えて、本腰を入れて1ヶ月強。なんとか受験に間に合い、志望校合格に導くことができました。生徒のお父さんからも、最後に、「真剣に向かい合ってくれてありがとう」と言って頂けました。本当に嬉しい気持ちになりました。

「人は真剣に関われば、真剣に応じる。」

このことをこの生徒とお父さんから教えられました。また、準備することや反省して行動を変えることの大切さもこの出来事から教わりました。

この時教えて頂いたことは、今なお、私の中で大切な教えとして生き続けています。


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