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絵本を読み聞かせることや夢・目標を持つことよりも大切なこと

本日の幼児教室会議では、先日のコミュニケーション障害学会での「意味づくりを育む絵本と遊び」(宇都宮大学・石川先生)を扱った。

石川先生は、かつて、行動療法の研究室にいて、応用行動分析を活用して、「刺激・反応・結果操作」を繰り返し、言語発達を行っていた。しかし、これが先生にとっては疑問だった。

「そうして作られる『ことば』にどんな意味があるのか?」

疑問を持った先生は、別の研究室に移った。そして、絵本をテーマにした研究をすることにした。

「個人の能力を発達させるのではなく、関係性を発達させることが大切。その関係性を発達させることで、言語やコミュニケーションの力が伸びる。絵本を媒介として子どもと関わることで、関係性ができ、そして、それが成長を促していく。」

先生の中に、こんな気づきが生まれていった。

ブックスタートという運動がある。絵本を配る運動だ。"絵本は、子どもの言語発達によい影響を与える"という前提を元に、この運動が繰り広げられている。もちろん、絵本にはその機能があるのだが、絵本を配るだけで、それが達成されるというわけではないのだが、配ることが先行してしまう。

また、絵本の読み聞かせをしたいが、それをする時間がなかなか取れない。そして、その役割を読み聞かせアプリに委ねてしまう人たちも出てくる。

気づけば、"絵本を読む"という行為のみが前へ前へと押し出され一人歩きをし、大切なことが後ろに追いやられていく。こんな光景はいろんなところでよく見かける。

石川先生は、絵本の読み合い遊びというものを提唱している。これは、絵本を読むことの本当の意味「関係性を作ること」を大切にしている。


読み聞かせと読み合い遊び (宇都宮大学・石川先生の講演資料より引用)

上のイラストは、読み聞かせ(左)と読み合い遊び(右)を表したものだ。

どちらもライオンの絵本を読んでいるのだが、読み合い遊び(右)では、親はライオンの温かさを感じて、ゆったりを時間をかけて本を読み、子どももまたライオンの温かさを感じて絵本に接することができている。

本当に大切なのは、このライオンのぬくもりや安心感、ゆったりとした時間の流れ。そして、相互の関係性だったのだ。でも、それらは切り捨てられて、効率重視で僕らは突っ走ってきたような気がする。

教育についても、大切なのはこのようなもののはずなのに、微分されて、骨抜きにされたものが大手を振るってる。例えば、教育の現場では、「夢や目標を持とう」とよく言われる。でも、気づけば、「夢」「目標」を持つことばかりが先行していき、本当の意味で大切なことは見失われていく。微分されたものは分かりやすい。だからこのようなことが起こる。

子育てに関して言えば、「子宝」という言葉からも分かるように、生まれてきた子どもを愛し、慈しむことが出発点だ。教育に関して言えば、この世は生きるに値する楽しい場所なのだと感じることが出発点だ。どちらも、人と人、人と自然、そんな関係性のなかから産まれる概念・培われる感覚だと思う。

絵本や夢や目標は、媒介に過ぎない。大切なのは、人と人、人と自然との関係性なのだ。効率の名の下に、一見分かりづらいものは蔑ろにされてきた。でも、そろそろ、脚光を浴びてもいい頃だと思う。「大切なものは目に見えない」。だからこそ、大切なものを見ようする姿勢が大事だ。

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