【聞香会のアーカイブ】2023年1月25日・特別会・古木
聞香会 2023.1.25
(初めての参加者に香木断面の顕微鏡写真のコピーを説明して…)
「会長」何がわかるかというと…これ四種類撮影してありますが、これが元々の沈香樹。何もなっていないジンチョウゲ科アキラリア属の植物の表面を撮影してもらったものです。で、この下にあるのが、いわゆる沈香、インドネシアの沈香。それの比較的いいものですけど。それを撮影してもらった画像です。こっちは伽羅です。
「連衆」いただいてないです。貴重な資料。
(会長は資料を探す)
「会長」ごめんなさい。今届きますので。
(探してコピーを頼んだところでファイルが見つかる)
「会長」ここにあった。気付かなかった(笑)
「連衆」ありがとうございます。
「会長」これはおそらく初めてですよね。この画像は。ちょっとだけ説明しておきます。ほかにこれ見たことないって方おられましたっけ。大体お持ちですよね。
もう一回言いますけど、これが何でもない原木の断面ですね。これが、こっちが普通のインドネシア産沈香の切断面を拡大した顕微鏡の画像です。こっちが伽羅ですね。
伽羅のを見ていただくと、管状の組織が並んでいますよね。この管状の組織の中で空洞になっているものと、空洞になっていない物がおわかりいただけるかと思うんですが、空洞になっているのは元々のそのまま空気が詰まっている。だけど蓋されているような部分ですね。何かで埋まっているのは、これ樹脂分が埋まっている訳です。
この伽羅のこの欠片を加熱した写真がこちらです。このぶくぶくしてるの、これ樹脂分が溶けて泡状になってますね。
だから、聞香するってことは、こういう組織を加熱することによって、こうやって樹脂分が液状化して、(常温より)より揮発するっていう状態ですね。だからこれをどれくらいの温め方をするといい感じで香りが出るかっていうのを試しながらやっていくということになります。
この樹脂分が入っていない所の組織。これ元のジンチョウゲ科アキラリア属の元の組織のままなんですね。だから、これの割合が多い部分っていうのは当然香木になっていない組織の香りがする訳です。匂いが。それがどういう混ざり方をしていって、どういう影響を与えるかっていうのは、それはもう木の塊ごとに違いますね。
で、今日炷き出す香木も、比較的こういう組織でまばらに樹脂化していないところが混ざっているようなものも出てきます。それをどういう風に聞いていただくかということになるんですね。それでちょっとこれ、初めてご参加の方には今説明しておかないと、と思ってお話をしておきました。
あと何かご質問とかありましたら、その都度おっしゃっていただいたらと思いますのでよろしくお願いします。
今年初めて(お目に掛かる)かと思いますけど、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
「連衆」よろしくお願いします。
「会長」今日は室温20.6度ですね。(温度・湿度計の)湿度がLLってありますね。ということは多分20%以下。あまり条件としては良くないですね。
今日はあとで歴史的な名香もお炷きしますので。ちょっと急いで。
まず「夢路」という香木。これは元々無銘で見つかってますが。いい木なんですけど。今年が40周年記念で感謝(の意を籠めて)っていうことで推奨香木としてお出しするつもりでおります。で、仮銘をつけました。「夢路」という仮銘です。
これどうぞ。あの袱紗で持って顔近づけていただいても大丈夫ですので。
なんか午前中の人の話だと結構香り出ているっておっしゃってましたね。これ多分、100年、200年ほど経っている木なんですけど。
これの断面を拡大すると、さっきの顕微鏡写真みたいな感じになってくるという。
「会長」夢路です。今100℃。ありがとう。
「連衆」100℃
16:00
真那賀・夢路・1回目・100℃
「連衆」(初参加の方に説明して)ジグザグに回ってきて、帰りもジグザグに帰っていきます。最初は回して、帰ってくる時に写真撮るといいそうです。
「連衆」結構違う感じなんですかね。
「連衆」初めてで。
「会長」香りします?
「連衆」はい、します。
「会長」ああ本当、私あんまり感じないんですよね。皆さん「香る、香る」っておっしゃるんですけど。切り口の断面なんかは特にっておっしゃるんですけど、私は慣れちゃってるせいかな、あんまり。
「連衆」断面ちょっといいですか。香り。
「連衆」香らない時が多いですよね。
「会長」これはいつ発見されたか全然わかりませんし、いつの時代に誰が持っていたかっていうのもはっきりわかっていないんですけれど。ずうっとこれ発見されてから延々この香りを出し続けているんですよね。
「連衆」へえ。
「会長」これを止める手立てはないので。だけど、こうやって炷くとちゃんと香りが立ちますから、ホント不思議なもんだなって思いますね。
これ古い木で貴重品は貴重品なんですけど、割と大きさがありますから、そういうこともあって今年は40周年記念ということで、推奨香木で公開販売をさせていただくことになります。2月の推奨香木で出します。
「会長」次に同じく昔の真那賀ですが、『浪花芦』という。これもやっぱり、そんなにたくさんはなかったですけど、一応、推奨香木でお出しして、もうちょっとなくなってしまっておりますが、あのもしまだ買えていないって方がおられて、ご希望があればなんとかしますので、おっしゃっていただけましたら。
これが『浪花芦』が包まれていた…これなんでしょうね…色んな人が調べてくださったのですけど…芭蕉の葉じゃないかって説がありますけど。あの、一般的には後でお出しするもののように古いものは竹の皮。竹の皮をそのままおむすびみたいな感じで包まれていることが多いんですけど。これも私も見たことなかったですね。こういうのは。もうバキバキになってるんで、ビニール袋に入れたままにしてありますが。
ここにちょっと題箋が貼ってありますが、これ『浪花芦』と今でも読めると目のいい方はおっしゃってます。私はちょっとわからないんですけど薄くなっちゃって。これは昔からそういう銘がついておりますので『浪花芦』となっております。お願いします。
「会長」あ、そっか。この電気香炉は割と一定に温度をほぼ保てるので非常に便利なんですけど、安全のためか15分で切れるように作られてますので。ここにブルーの点がありますけど、これが消えていたりしたら、もう電源落ちてますから、その場合はこの下のやつをこれをこう上にあげて長押ししていただくとまたつきますので。あるいはおっしゃっていただいたら見ますので。
100度ですね。『浪花芦』100℃でいきます。『浪花芦』です。
真那賀・浪花芦・1回目・100℃
「連衆」(聞き取れず)どっか落っこってませんでした?
「連衆」落っこってます。
「会長」伽羅だと樹脂分が出てきて、それが粘り気を持ってますから銀葉に貼り付くってことがあってあんまり動かないことが多いですが、それ以外は割と走ったりします。なかなか水平に保つのはちょっと難しいんですけど。
「連衆」会長さん、昔は香木はどのくらいにカットして聞いていたんですか?
「会長」わからないですけど、多分裕福な方は多分ですけど、大きく切っておられたんでしょうね。大胆にね。だってあれ伝説みたいなもんで、本当かどうかわかりませんけど、一斤丸ごと焚いたとかね。一斤って言ったら600gですから。そんなんはまずねえ。
「連衆」札束燃やしているのかな。
「会長」アラブでは結構な塊で燃やすって言ってましたね。
「連衆」アラブ?
「会長」ええ。サウジアラビアとかカタール。
皇太子が日本に来るのでお土産に香炉が欲しいって言われたことがあって、それで用意した時に、私なんかはカタールの皇太子だったら、古九谷かなんかのいいやつって思ったんですけど、その話をしたら向こうの人が「いや、そんなんじゃ駄目だ。ちいさ過ぎる。」と。もっと大きなやつで派手なやつを探してくれと。しゃあないから九谷の窯元に頼んで作ってもらいましたよ。これどうやって炷くんだと言ったら、「丸ごと焚くんだ」と。
「連衆」傾けると滑っちゃうんでそれ水平にして。
「連衆」なるほど。
「会長」この。108℃ですね。帰ってきたとき。
真那賀・夢路・1回目戻り・108℃
(聞き取れず)
「連衆」山田さん、アラブでも香木焚く時って、同じようなやり方をするんでしょうかね。すごく乾燥している国だから全然香るのかしらっていうか、シュッて行っちゃいそうな気がするんですけど。
「会長」ばんばん焚くイメージです。
「連衆」ですよね。逆にばんばん焚かないと聞けないのかな。もしかしたら。
「会長」かもしれないですけど。
「連衆」多分香らない。一気にシュワシュワ行っちゃうから、ばんばん焚くって正解なんだ。
「会長」割と強烈な感じですね。で、焚かれる香木どんなやつかって言うと、ほぼ合成香料に浸けたものです。
「連衆」ふうん。じゃあいいや。それなら(笑)
「会長」サウジアラビアに何年もいて帰ってきた人が、トランク…スーツケース2つ持ってきて、これ向こうで手に入れた香木なんだけど買い取ってくれって言われてきたんですよ。見たらみんな浸け物でした。それは何の植物かわかんないものが化学合成香料で漬け込んであって、どれもこれもみんな同じ匂いです。サウジには何件かお香屋さんがあって、お店ごとに使っている油が違うから店ごとには香りが違うけど、同じ店の中ではみんな同じ香りらしいですね。で、日本ではこんなの売り物になりまへんつって言ってお断りせざるを得なかったですね。だけど、みんなそんなの焚いてる。
昔からそうかって言うと、まあそうでもなかったみたいで。というのはカタールの大使館が近くに、元麻布にありますよね。あそこでカタールの皇太子が日本に来た時に色々アレンジしてセッティングするような秘書官がいるんです。その人が一回来て「今度こんなやつ買おうと思うんだけどどうでしょうか。」って、鑑定を依頼してきたんですよね。その時に色々話をしてたら、その持ってきたやつも作り物だったんです。ええ。化学合成香料を中に含侵させたようなそういう作り物だったんですね。うまく出来てはいましたけれど。
で、こういうの使っているのかって言ったら、まあ昔はそうじゃなかったけど、今は手に入らないから、こういうものも使いますって話でしたね。で、本当はそのもうちょっとちゃんとした沈香を使っていたらしいんですけど。どうやって焚くのって聞いたら、炭みたいな火種をでかい香炉の中に入れてそこに直接ポンと。
「連衆」ふうん。
「会長」香木のせて、炷くっちゅうより燃やしている感じですよね。
その時に鑑定のお礼にって言って王様が使っておられるという練香みたいのをいただいたんですけど、それも結構強烈な匂いでしたね。よかったら嗅がせますけど。時間があるかどうかわかんないんで。はい。あの。練香、練香みたいなものですね。それはちょこちょこっと手に付けて、耳たぶにつけて使うらしいですけれど。それも非常に妖艶な匂いがしますね。相当香りとしては強烈な感じです。
次も真那賀ですが、これもまあ古い木です。やっぱり無銘でしたので、これも大きさそんなには大きくないんですけど今年記念に分木させていただこうと思っています。それで仮銘をつけました。それがこの三番目の「花の通ひ路」ですね。で、これはやっぱり古い時代で竹皮紙がまだ出来ていなかった頃の状態ですね。竹の皮そのままに入っていました。で、面白いことにこれ沈香って包みに書いてあります。これは多分そんなに昔じゃない。明治とか大正とかそこらへん辺かなと思いますけど。その頃持っていた方が沈香としてます。炷いてみたら真那賀でしたので、一応私は真那賀とさせていただいております。仮銘「花の通ひ路」ですね。
「連衆」古い木っていう判断はこの包み紙で判断されるんですか。
「会長」そうですね。木の表情そのものも、ここ30年40年とかのものじゃないですね。それはなんていうかな体験上そう見るということになりますね。
「連衆」江戸時代位って考える。だと考えていいんですか。
「会長」だと思います。あの、一緒に保管されてた香木は安永4年に入ってきたのかどうかわからないんですけど安永4年に一回見ていて、文政5年に目方を測り直しているんですね。そのように書いてありますけれど。だから1700年ちょっととかその辺の年代でしょうけれど。
だけど、そんなんわかっていても、いつ日本に入ってきたかはわからないですから。もう何の資料にもならないかなって思いますけれど。ただ、まあ昭和とか平成とかの物ではないことは間違いないとは思います。炷いても、さっきの『浪花芦』なんかもそうですけど、すぐには立ってこないんですよね香りが。かといって温度設定高くすると途中でもう温度高すぎてしまいますから、大体なるべく低めでスタートしているんですが。
多分だから今、香炉が回っている間にだんだん良くなってくるっていう感じになっていると思います。
40:43
「連衆」山田さん、真那賀は結構希少というか量の少ない香木だという風に理解していますが
「会長」そうなんですよ。
「連衆」古木でこんなに今日真那賀三つ出して頂いて。たまたまお持ちだったということですか。
「会長」頑張りました。
「連衆」笑
「会長」頑張りましたというか…
「連衆」希少中の希少じゃありません?真那賀の古木っていうと。珍しいですよね。
「会長」おっしゃる通りです。『浪花芦』とかもそんなにはなかったんですけど、本当に真那賀の、これが沈香の真那賀ですよっていうものが、やっぱり世の中少なすぎるので、それであえて推奨香木で分木させていただいたんですが、もうすぐになくなりますが。はい。
「連衆」凄い貴重な機会ですね。
「会長」今回の「夢路」もさっきの午前中の方も褒めてくださっていましたけど割といい真那賀で、たまたま『浪花芦』よりは量あるので、それも推奨香木でお分けしようという風に考えてます。
「連衆」ありがたいです。
「会長」そうやっておっしゃっていただくとお炷きした甲斐があって。
「連衆」笑
「会長」嬉しいんです。はい。
一般的には後でお炷きするような、そんなに伽羅らしくない伽羅みたいなものが割と羅国とか真那賀に使われることが一般的なんでね。確かに貴重品ではありますよね。
110℃で花の通ひ路ですね。
真那賀・花の通ひ路・1回目・110℃
「会長」花の通ひ路と夢路では、同じ真那賀であっても、その香木の断面見ると樹脂分の詰まり方が違いますよね。
105℃ですね。
ありがとうございます。
真那賀・『浪花芦』・1回目戻り・105℃
「連衆」これは竹皮紙になるんですか。竹の皮?
「会長」それは竹皮紙ではないです。単なる竹の皮。多分、江戸時代の後期までは竹皮紙は出来てなかったと思います。だから竹皮紙が出来る以前のものだったということは確かですね。
「連衆」これは、楮っていうか檀紙っていうか。
「会長」檀紙ではないですね。なんの紙だか。大分古いので柔らかくなってしまっていますけれど。はい。そうやって単に木所でも銘でもなく沈香って書いてあるのは珍しいですね。見た事ないですね。ただそれは江戸の物ではないと思いますよ。もっとこっちの時代の誰かが分類して分けようとして記録としてそうやって書いておいたことだと思います。だから木所が判断できなかったのかもしれないですし、元々銘がついてませんでしたから、だから、銘でもついてれば、銘は何々、木所はなんでとかって風なことも伝わっただろうと思うんですが。
「連衆」じゃこれは仕分けのための沈香?
「会長」だと思います。後から出すやつでもっと面白いものがあります。
「連衆」ありがとうございます。そんな面白いものが…。
「会長」お稽古でもされててね、香道の稽古でもされていて家元が身近におられたり、あるいはご宗家が身近におられたりしたら、これなんでしょうかって言って鑑定してもらって極め状を書いてもらうってこともできたでしょうけれど、そういう風な方ではなかったのかもしれないですよね。
最後にお出しする『大内』っていう百二十種名香で五味兼備。まあ人によっては蘭奢待より好きだっておっしゃる方おられますけど、それなんかは大正7年に売り立てに出た時、『大内』と『小倉山』が一緒に出て、その時に鑑定書がついているんですけど、それは多分売り立てに備えてだと思うんですけど、志野流の十八世 頑魯庵宗致(がんろあんそうち)っていうお家元が極めを書いてますね。
それは多分、藤田美術館とかそこら辺が鑑定を依頼したんだと思います。元々由緒書きはちゃんとついているんですけどね。そうやって権威付けをして、こういう木所で、こういう味で、位はこれで。そういうことをしてあるとわかりやすくていいんですけど。まあ一方ではそれはもう「そのお家元の考えで決められたことっていうに過ぎない」とも言えるんですけどね。大きな指針にはなりますよね。
次にお聞かせするのが、これも無銘だったんですが、これもいずれ分木させていただこうと思っていて、仮銘つけました。「過ぐる春」という仮銘をつけました。これがさっき言ってたちょっと面白いやつで、いつの時代の人か知りませんけど「吟味向き」っていう風に書いてます。だから、ゆっくり聞いて木所決めようかなみたいな感じだったんじゃないかと思います。
こっちにはその、これ(「吟味向き」とある)よりは古いと思うんですけど、伽羅って書いてあるんです。これ48匁。で、数が4個ってありますけど、実際には一つしかなかったんですけど。これはこの「吟味向き」よりはちょっと前の時代だろうと。色々何人かに渡ってきているんだと思います。
これがその伽羅ですが、あの多分、三條西のご宗家とか先々代が鑑定されたら多分、真那賀か羅国にされると思います。堂々とした伽羅ってタイプではないんですね。でもあの、私が見たところ、木としては伽羅です。
「過ぐる春」っていう仮銘をつけました。
「会長」それの香りします?あんまりしないんですよね。
これだけ割って割って、挽いて挽いてだから断面が多いですから、割と揮発した量が多かったんじゃないかと思いますね。立ち上がり遅いですよね。
ありがとうございます。
「連衆」(聞き取れず)
「会長」106℃ 過ぐる春ですね。
伽羅・過ぐる春・1回目・106℃
58:40
「会長」120℃ですね。
「連衆」120℃ 花の通ひ路の戻り。
真那賀・花の通ひ路・1回目戻り・120℃
「会長」花の通ひ路
「連衆」十二匁ですね。匁だけを見る。
「連衆」三種類違いますね。(聞き取れず)
「連衆」私もこれはすごくわかりやすくて。そうですね。近いなあと。ちょっと真那賀が今まで香りを捉えづらくて。今日初めて分かった。
「連衆」(聞き取れず)
「連衆」(聞き取れず)
1:00
「連衆」はじめ香らない。時間が経つと良さが出てくる。
「連衆」伽羅がわからなかった。
「連衆」木の香りがするっていうか。(聞き取れず)
「連衆」あ、ごめんなさい。ちょっとずれてしまって。
「会長」次に『志ら雪』を回します。これは一応伽羅となってましたね。
それで、文政五年の二月に改めたって書いてありますが、量りなおしてますね。これ、箱には安永4年っていうふうに書いてありましたから、文政5年よりはだいぶ前、安永五年っていうと1775年らしいです。
これ『志ら雪』です。これ一応伽羅になってました。
結構昔の人って、題箋みたいなもの、ラベルみたいなものを香木に貼りますよね。やめといて欲しいんですけど。
(一同爆笑)
「会長」使いにくいですもんね。
「連衆」外れないから一番安心だったのかも。
「会長」なんでかなあ。
まあ、紛らわしくならないようになんでしょうけど…。
後で回す『香久山』なんかは、字が彫ってありますからね。
「連衆」へえ~
「会長」本当にやめて欲しい。
「連衆」一旦はがれたら取返しつかないですから。
「連衆」そういう意味では一番安心。
「連衆」外れない。
「連衆」沢山持ってたのよ。一個だけだったらラベルしなくても。
「連衆」ほんと走るわ。白いんですよね。
1:12
「会長」多分、えっとなんだっけ。「過ぐる春」ですか。これまあ私なんか伽羅と見ますけど、だけど、昔ある時期に持ってた人が伽羅としてますが、その後の人が多分どうだかわかんない。怪しい。
「連衆」(笑)
「会長」場合によっては、伽羅じゃないんじゃないかって思っておられた可能性は高いですよね。そういうタイプの伽羅ですから。これはだからさっき申し上げたように、例えば御家流のご宗家がこれを鑑定しろと頼まれたら、真那賀とか羅国とかになさるんじゃないかってタイプの木ですね。
途中から多分、行って帰ってきた辺りから伽羅らしく。
「連衆」帰りは少し感じたんですけど行きは全く。思い切り全くわかんないです。
「会長」そうですよね。そういうタイプですよね。
「連衆」見た目も白いし、かなり樹脂感ベタベタさが全くないので、でも、今も乾燥しているせいか走りっぱなしだったんですけど。そういう所から見てもとても伽羅とは思えなかったんですが、山田さんはどこで決定的に伽羅を感じられましたか。
「会長」やっぱり伽羅らしさを持ってますね。香りにね。
「連衆」香りはそうですね。戻りの香りは確かに。
「会長」あの甘みの感じがね。例えば真那賀とか羅国とかとは違うんですね。そういう風に私は感じるので。
「連衆」素晴らしい。
「会長」それと、木の感じがやっぱりこれは伽羅なんですよ。
我々は香木屋ですから、どうしても香木として何かっていうのを見てしまうから、そういう先入観が入ることもあると思いますけれど。
やっぱり香りの甘みが感じが違うんですよね、真那賀とは。真那賀ってどこかしら古人曰く「女のうち恨みたるがごとし」というような、ちょっとした曲(くせ)を持ってる。その曲の出方がやっぱりこの木には感じられないんですね。
木所の判定って言うのは誰が判定するかによって変わりますから。我々の判定っていうのは別にいい加減なものなんで。本来流派の家元、ご宗家がなさる事がちゃんとした判定になりますんで。
というのは、この木が伽羅であっても何であっても、どういう分類で使うかっていうのは流派の勝手なんで。そういう点で、これを流派の家元が、或いは御宗家が鑑定される場合、その流派のお好みで鑑定される訳ですから。それはもう動かしようがない話なんで。ただ、香木としてみたら伽羅ですということになりますね。
「連衆」ジグザグに回すんですか。
「連衆」どっちでも。大丈夫です。
「連衆」あのお家元が銘をつける時は、やはり和歌から取ることが多いんでしょうか。
「会長」えっとですね。多分そうだと思いますが、御家流の御宗家に銘をつけていただく場合、私の体験上、歌から取られます。で、その歌も極め状に書かれます。次の聞香会の時は、家元とか宗家の銘つけられた香木焚こうかと思ってますが。その時に極め状があるのもご覧にいれて、これを根拠としてこうなってますっていうのをやろうかと思ってますが。
「連衆」えー、引っ越し真っただ中です。写真載せてください。
「会長」引っ越し…。ご参加不可能ですか。でもまたご好評だったらまたシーズン2をいずれやりますから。
「連衆」東北から参ります。
「会長」東北?何県ですか・
「連衆」仙台です。
「会長」仙台ですか。あそうですか。以前はね長野とか、金沢とか、秋田の方も見えていましたけど。はい。大変だと思いますけど。仙台だといい先生もおられますし。
「連衆」そうですか。
「会長」はい。あとあの面白いブログを続けておられる方もおられます。なかなか面白い方が結構おられます。
「連衆」私宮城です。
「連衆」宮城からいらしてるんですか?もしかしてその面白いブログの方?
「連衆」いえ違います。(笑)
「連衆」よろしくお願いします。
「会長」うん。立つのがゆっくり目ってゆうこともあるかと思いますし、段々本性出してくる感じがありますよね。うん。114℃ですね。戻りが。えっとこれは過ぐる春ですね。
伽羅・過ぐる春・1回目戻り・114℃
「会長」本当にこれ伽羅のくせにすごく走りますね。伽羅とは思えないですね。
「連衆」『志ら雪』というこの字ですが、志ら雪という字が取れてこの字ってなってるんですが、本当は白いという字ですか。本当って言うか。
「会長」これがもし名香だとすれば。
「連衆」あ、あるのか。
「会長」はい。白い雪だと思いますけど、これはその同木かどうか。多分違うんだと思います。ええ、それで「し」は「志」と当ててますよね。
「連衆」名香に「白雪」という御名の物があるということですか。
「会長」あります。あります。はい。
「連衆」そうなんだ。すごい。
「連衆」こうやって切込みがあるのは、割れちゃったのかな。なんの切込みだろう?切ろうとして?
「連衆」(聞き取れず)
「会長」次、『香久山』をお回ししますね。これよくこんな木あったなと思うんですけど。
「連衆」『志ら雪』がまだ来てないです。
「会長」あ、そうでしたか。すいません。最近ね、よくそういうことがあるんですよ。てっきりお回ししたと思ってました。失礼しました。
「連衆」きれいですね。
「連衆」うん。きれいですね。何で貼るんですかね。米の糊で貼るんですかね。
「連衆」何ですかね接着は。
「会長」『志ら雪』です。105℃
伽羅・『志ら雪』・1回目・105℃
「連衆」105
「会長」ちなみに今の室温が22・4℃で、湿度が28%になりました。
「連衆」聞き取れず。
「連衆」(聞き取れず)教室みたいなのに入った方がいいのか、どういう風に考えたらいいのかわからなくて。
「連衆」どっかの教室入ってもいいと思いますよ。そこで教えてもらえるし。ただ、こういう所に来てもいいと思うし。こういう所は1回限りだから、もし、あれだったら先生に。
「連衆」うーん。
「連衆」やっぱりわからないです。大雑把に、あっ違うのくらいにしか私わからないです。
「連衆」やっぱり、1年2年でどうこうなるもんじゃないですよね。やっぱり何十年もなりますよね。
「連衆」難しいですよね。そんなに。わかれば。
「連衆」別に当たりはずれじゃなくて、なんかあれじゃないですか。それでまあリラックスできるだけでもね。
「連衆」はい。それでもいいんだ。
「連衆」いいんです。いいんです。
「連衆」そう言う意味では凄い楽しいんですよ。あ、何って言うのはわかんないっていうか。この大雑把な分け方、ああ違うとか、あと行きと帰りとか、違うとか、そういうぐらいしか今わからないです。
「連衆」大きい(会では現時点で?)当てたりするんですよ。香りを。当たらないとなんか落ち込んじゃったりとか、怒っちゃったりとかそういう方もいるんですよ。
「連衆」怒っちゃうんですか。
「連衆」怒っちゃうってちょっとおかしいんですけど、そうじゃないんですよね。別にね。無理に当てなくてもいいかも。楽しんでもらえればいいだし。それだけじゃないんで。別に当りはずれだけじゃないんで。お香って言うのはね。
1:33
「連衆」銀座と茨城に(聞き取れず)つくばの手前に(聞き取れず)
「連衆」銀座とか茨城に。(聞き取れず)
「連衆」新幹線でいらっしゃるんですか。
「連衆」昨日(聞き取れず)
「連衆」銀座の方がお稽古じゃなくてお香会みたいな感じで、なんかお稽古したこともない人も来てもらって。
「連衆」じゃこういう人で。
「連衆」初めての人も来てもらって、一緒に楽しくやりましょうって感じだったけど。
守谷でもお稽古やったりとかしますけど。ほんと楽しくやってます。
「連衆」どちらかでお稽古されているんですか。
「連衆」志野流?御家流?
「連衆」御家流。
「連衆」結構御家流の方多いですよね。
「連衆」お点前とかするんで。ただ、組香でゲームして香りあてゲームみたいな。
「連衆」それが組香ってこと。それ当てるんですよね。(聞き取れず)チケットみたいですよね。
「連衆」香木店、香木屋さんはいつ頃できた?というか、昔は漢方屋さんだったんですよね。
「会長」ああ…うち(現、山田松香木店)も昔は薬種商。
で、いつ頃かちょっとよくわからないんですけど、私が知っているのは、おじいちゃんがおられた時分なんですけれど、まだ百味箪笥みたいな、薬種がいっぱい入ったような引き出しの箪笥がまだありましたね、家に。それを商売にしているような記憶はないんですけどね。だから、もうその頃には、多分香木しか扱ってなかったんだろうと思います。
おじいちゃんの時代は、鳩居堂さんとか松栄堂さんに卸していたんですね。だから鳩居堂さんがお香扱い始めたのは、うちが原料を卸し始めてからです。だから、まあお香屋さんとしては若い方ですね鳩居堂さんは。お店は古いですけど。一番京都で古いのは児玉さん、薫玉堂さんですね。あそこはもう300年以上だと思いますけど。あそこの先代は詳しかったです香木に。もう亡くなられてしまいましたけどね。
「連衆」そうですか。江戸時代はどういう風に香木って売り買いされていたんですか。
「会長」いや、知らないです。そんなに長生きしてませんから(笑)
「連衆」なんか、あの昔から「金より高い」とか「金と同じ」とか言われていますけど、どんな風に取引されていたのかなと思って。
「会長」そうですよね。
「連衆」薬屋さんが持って行っていたのかなとか。
「会長」確かに金とかの目方とかと、なんかそういう単位で取引されてたらしいというような記録はありますよね。おそらく京都ではなく、堺とかあちらの方が主だったんじゃないかと想像しますけれど。
「連衆」あ、そうか。じゃあ船が荷物を下ろしてそのまま売ってた可能性もあるかもしれない。
「会長」そうですね。そんなに全国にお店が展開されていたっていうようなことは多分ないと思いますよ。ちょっと詳しいことが本当にわかんないんですけれど。
「連衆」ありがとうございます。
「会長」いえいえ。本当に香木に関してはわかんないことが多くて。
「連衆」いいですね。わかんないことが多いって。
「会長」で、これはちょっと所謂歴史的な名香ですね。
『香久山』です。なんか『香久山』と『柴舟』が一緒に収まっていたようで、『柴舟』はちょっとしかないんですけど、『香久山』は結構いっぱいあります。やっぱりこれ竹の皮ですよね。これ『香久山』です。
一緒についてた『柴舟』は、こんな塊ちっちゃいもんなんですけど、私が見る限り、宇和島の伊達さんの所にある『柴舟』と同じような木ですね。一木四銘って本当になんかいい加減な感じでよくわからないんですが。『柴舟』だってあちこちにありますが、どれがどれだかよくわからないです。でも、少なくともこれに付いていた『柴舟』は宇和島の伊達家のと多分同じ木だろうと。炷いても、ひたすら辛いですね。ええ、だから見かけ通りですね。
ああいう黄色いタイプの伽羅っていうのは大体辛さを出すことが多いんですけど、『柴舟』はその典型だと思います。
この『香久山』は、なぜこんな量で残っていたのか不思議でならないんですけど。これがさっき言ってた、彫ってありますよね字が。
「会長」『香久山』です。111℃
羅国・『香久山』・1回目・111℃
「会長」115℃ですね。『志ら雪』。
「連衆」115℃
伽羅・『志ら雪』・1回目戻り・115℃
「会長」いいですよねこれやっぱね。できればもうちょっと湿度があるともっと良かったですよね。
「連衆」お湯沸かしておきますか。
「会長」蒸気(加湿器の)出てますよ。28%ですから今。倍くらい欲しいですね。そしたらもっと立ったと思うんですけどね。香りが。
「連衆」乾いた感じがしますね。
「連衆」そうそう乾いた感じが。
「連衆」せっかくの。
「連衆」自分の鼻の中も乾いた感じが。ありません?
「連衆」あります。あります。
「連衆」自分がキャッチできない感じがある。
「連衆」(聞き取れず)
「連衆」百二十種名香というのは志野流のお家元の?
「会長」志野流、御家流関係ないですねこれは。
百二十種は百二十種ですね。
「連衆」百二十種?
「会長」例えば、京極道誉(が所持した名香)が百八十種とかあったりすると思いますけど、基本的にこういう歴史的名香は流派関係ないです。
「連衆」流派関係なく百二十種の名香っていったら。
「会長」六十一種に次ぐ存在です。
「連衆」六十一種に次ぐもの。
「会長」ランクとしては。
「連衆」そうなんですね。
「会長」その次に二百種っていうのがあって、それ以外に京極道誉が百八十種選んだとかそんなふうなものはありますけれど。
だから、六十一種名香には入れなかったけれど…っていうものですよね。
「連衆」それが百二十、次が二百。
「会長」二百。はい。
後でお炷きする『大内』っていうのは五味兼備ですが、人によっては(六十一種名香の)『蘭奢待』より好きだっていう方おられます。なかなかの名香ですよね。
その『香久山』は珍しいですよね。
(百二十種名香なのに)それだけの量が残っているっていうのが。
「連衆」あ、ほんとだ。彫ったの。
「会長」なんか字が彫ってありますでしょ。なんか古いって字かなっていう。
「連衆」ここ?
「連衆」そこ下。
「連衆」本当だ。古いって字が。ここにもなんかありますよね。
「会長」なんかありますよね。彫ったり、紙貼ったり、色々してますけど。ははは。
「連衆」これは自分の。みたいな。
「会長」特に『香久山』は木所が羅国ですから、歴史的な名香で羅国がそれだけ残っているっていうのは非常に貴重だと思います。立ち方もまあ私なんかの感想で言うと、とっても「もののふ」らしい、武士らしい羅国らしい立ち方をしていると思います。
「連衆」先ほど宇和島伊達家の『柴舟』と一緒にこの木があったっておっしゃってたんですけど、それは何かセットに?セットにって言うか何か一緒に?
「会長」いえいえ、そんなこと言うてまへん。
「連衆」聞き間違えましたすみません。
「会長」宇和島伊達家の『柴舟』があって、それと、『香久山』と一緒になってた『柴舟』が似てるって意味です。
「連衆」似てるという意味。失礼いたしました。
「会長」多分、見た感じ、同木だろうなって気がしますね。
「連衆」ふうん。
「会長」宇和島の伊達さんの、私、手で持って触り倒したんですけど、炷いてはいないんですよ。だけど、顔を見ていると炷いた時に同じような立ち方をするんだろうなって、経験上そう思うんですね。
「連衆」『柴舟』も羅国なんですか?
「会長」『柴舟』は伽羅ですよ。
「連衆」伽羅ですよね。すいません。でも、えっ?すごい混乱しているかもしれない。同木と今言われたのは一木という。
「会長」『柴舟』同士が同じ『柴舟』だろうなって。『柴舟』にも色んな系統がどうやらあるんですよ。あちこちで見る『柴舟』が全部同じじゃないんです。
そういう中で宇和島の伊達さんのと、今日は炷きませんけど、(『香久山』と)一緒になってた『柴舟』が同じ木じゃないかなって。
「連衆」『香久山』と『柴舟』が一緒に入ってた。
「連衆」あ、一緒に入ってた。
「連衆」『柴舟』は小さいから。
「連衆」一緒に。セットというか。同じふうに。ああ最初の(聞き取れず)
「連衆」宇和島のやつが似ているということ。
「会長」かなり似てますね。宇和島のはでかいですけどね。こんな塊ですけど。厚みがこんなある。
「連衆」一緒に入っていたということは同じ所蔵の方から入れられたということですか。
「会長」それは間違いないと思います。さっきお回しした紙に並んで記録してありましたからね。
「連衆」はい。わかりました。ありがとうございます。
「会長」で、『大内』ですが、大正7年に売立で『小倉山』と一緒に出たんですね。その時に出たのと多分ほぼ同じ、全く同じものだと思いますけど。これ資料が写真しかないのでこれお回ししますね。620g位ありました。
ひと頃、藤田美術館に収まってたようなんですけど、多分そこで売立に出すにあたって、鑑定書を志野流の十八世頑魯庵宗致に依頼をしていますね。
それがこれです。写真しかないんですけど。これ大高檀紙に書いていまして、本来、頑魯庵宗致はもっと達筆なんですけど、檀紙に書くって大変難しいので、デコボコですから、頑魯庵らしい筆致ではないんですけど。でも間違いない。この花押も頑魯庵の花押です。だから極め状は頑魯庵が書いたの間違いないと思います。内容はここに書いてありますけど「志野伝来の大内と認められる」みたいなことを書いてありますが、私が聞いたことがある、蜂谷家がお持ちの『大内』とはちょっと香りが違う気がします。ちょっと謎なんですけど。
これは(現在の)持ち主の方のご依頼で、その方の家まで行って、家っていうか近くの料亭迄行って、それを挽いて(截香して)きたんですけど…そうか、それの写真が…ないな。ちょっと今手配しますね。
「連衆」これ鎹(かすがい)だと思います。違いますかね。
「連衆」本当だ。そうだ。
「連衆」鎹だということは割れないように。
「連衆」落っこちないように。
「会長」ああ、そうそう鎹が打ってありますよね。割れ止めが。合計二か所打ってあります。
「連衆」ポロっといっちゃう。
「連衆」ポロっといかないように。
「会長」そうです。そうです。
「連衆」すみません。『香久山』の包みに書かれている羅国の上に何か漢字あるんですけど何て読むんでしょう。何羅国?
「会長」ちょっと待ってくださいね。それあのひと頃の持ち主の方が書かれているので、どうせ大したこと書いてないと思うんです。
「連衆」(笑)
「連衆」羅国に種類があるのかと。
「会長」えっとどれでしたっけ?
「連衆」『香久山』?『大内』?
「会長」正味ですね。正味何匁っていうやつですね。なんかね、昔の人って結構目方に拘って、自分で記録するために量りなおして目方を。それでまた保存してる。そういうことです。
「連衆」じゃあ手に入れた時に書いてあったのと、自分が持っているのが本当にそのグラムなのかって量りなおすみたいな感じなんですかね。
「会長」それはあると思います。
これですよね。これ「正味」正しいですね。だから風袋、入れ物とかの重さを除いてこれそのものが何匁あったかっていうそういう記録ですね。
2:01
「連衆」これは『大内』の方ね。
「会長」これね、遥々出かけて行ってその『大内』を鋸で引いてきたんですけど、挽いた時の画像ですね。目方量ってるんです。ここに鎹がここはっきり写ってます。
「連衆」鎹抜かなきゃ。
「連衆」鎹の方が重そう。
「会長」私が知ってるもう一つのと言ったらいいのか、志野流の家元教場で聞かしていただいた事がある『大内』とは多分、伽羅のタイプが違うという風に思わざるを得ないんですが。こっちの『大内』は割とあっさりした木でしたね。ただ、挽くのに3、40分かかりましたけれど。伽羅としては樹脂が詰まってないタイプですけどね。
だけど、色んな箱、でかい仕舞い箱、桐箱があって、塗り箱があって、書付もあって、箱書きもあってていう、所謂名香の条件は完璧に備わってるんですね。だけど、中身が私が知っている『大内』とはどうも一致しない。不思議なところがあります。何故だかわかんないんです。だから『蘭奢待』なんかと同じように『大内』にも複数あるのかなっていう。頑魯庵宗致が極め状書いてますけど、これ多分、藤田美術館に頼まれて書いたんですね。で、書いてますけど、どう思って書かれたのかはちょっとわかんないですね。怪しいと思いながら書いているかもしれない。そこはわからないですね。
「連衆」元々533gくらいあって?
「会長」元々620g位あった。
「連衆」それで分けて500gと91g(注:正確には533.99gと91.91g)
「会長」その二つ足せば元々の。
「連衆」じゃあ切ったって。
「連衆」じゃあこういう感じになってる。
「会長」はい。挽いてから量りました。何故量ったかっていうと、100g位を知り合いの方に分木したいんだと。譲りたいから100g見当で挽いてくれって。そんな上手いこといく訳ない。
一同笑う
「連衆」でもいい感じに。
「会長」大分善戦してますよね。
「連衆」なるほど。ビフォーアフター。切った後。
「連衆」多過ぎず、少な過ぎずいい感じじゃないですか。
「会長」いい感じだと思いますね。我ながら。だって10g誤差ないですからね。
「連衆」さすが。
「連衆」多過ぎちゃうと問題あるかもしれないから、微妙に少ないっていうのが。
「会長」大体、こんな塊をね100g挽いてくれっていうのがねえ、無理がありますよね。
「連衆」(聞き取れず)
「連衆」これは『香久山』も『大内』も木下さんの香木なんですか。
「会長」木下?
「連衆」あ、違う。あ、全然。前に木下先生が持っているいい香木を聞くみたいな。
「会長」あ、それやりましたよね。で、あれは木下さんのお持ちの香木で。この『香久山』は香雅堂の持ち物で、『大内』はとある…。
「連衆」とある。
「会長」ご婦人の御持物でございます。
なんかね、最初(外箱を)開けた時に、ふわーっと香りが出て、で、もうみんなふらふらになったっていう。
「連衆」あーそうなんだ。
「会長」傍にいたお嬢さん具合悪くなったっていう話があって、で、こういうものはなんか畏れ多くて、これに手を付けたらなんか危ないことが起こるんじゃないかみたいなこともあって。私はまあ健康は別に害さなかったですけど、挽いた後でお手洗い行った時にベルトが切れましたけどね。
「連衆」ちょっとお。
「会長」もともと金具の部分と皮の所が接着したのが取れただけなんですけどね。
そのことをうっかり現地で言っちゃったらですね、偉い騒ぎになっちゃって。やっぱり『大内』は凄いっていうことで。
一同笑う
2:09:00
「会長」『香久山』の戻りが112℃です。
羅国・『香久山』・一回目戻り・112℃
「連衆」やっほー。
「連衆」すいません。
「連衆」112℃
「会長」『香久山』の戻り。
「会長」『大内』です。112℃
伽羅・『大内』・1回目・112℃
「会長」ちょっと(聞き取れず)かもしれないけど。
「連衆」湿度上がりましたか。山田さん。
「会長」27%ですね。
「連衆」28下がってる。
「会長」換気のために換気扇回してるのが、あれがちょっとね。
「連衆」しょうがないですよね。
「連衆」最初20位でしたか。
「連衆」20.6%
「連衆」『志ら雪』の時に室温が22.5℃で湿度が28%
2:15:30
「連衆」すいません。大正7年の売立はそれは水戸徳川家の売立?
「会長」だと思います。
ありがとうございます。
「連衆」あの香木そのもの自体を聞くようになったのは鎌倉時代、武士の時代になってからって話を聞いたことがあるんですけど、平安期は練香が主流で、鎌倉武士になってから香木を炷くようになったって聞いたんですけど、それはやっぱりそうなんですか。
「会長」う~ん…。そう言われてますけど、実際は誰も見てないからわかんないですよね。
「連衆」じゃあ想像としてそうじゃないかなあみたいな。
「会長」まあそんな風にね、言いたい人は言われてるんだと思いますが、だってあの源氏物語の中にね、例えば源氏がお姫さん入内させる時に練香作りましたよね。それ自分で作ったのもあるし他の方に作ってもらったのもあって。で、自分が作るのはなるべくいい材料を選ぼうとして、しまってある所から古いもの…平安時代で新渡りとか古渡とか言ったのかどうかわかんないですけど、とにかく昔入ってきたよさげな物から選んだっていう。そういう表記がありましたよね。
ということはね、やっぱり伽羅がどういう伽羅かっていうことをちゃんとテイスティングはしてたはずですから。はい。全部粉にしていきなり練り合わせて原料に使ってたとは考えられないですよね。
でもそんなこと誰も言ってないから、文献には出てないし、定説にはなってないけれども、私なんかが想像するに、当然(香木の状態で)聞いていただろうと思います。
「連衆」そうですか。そういう文献みたいのがあるのかなと考えていたんですけど。
「会長」(存じ上げる範囲では)ないですね。
「連衆」確証はなく、そうじゃないかなと言われている感じなんですね。
「会長」だと思います。
研究者の、研究対象の分野としては(香道関係は)非常に手薄でね。先達があまりおられないような分野。お茶に比べたらね。全然お香の方がそういう点では新鮮な分野で。だからまあ私が存じ上げている知り合いだと矢野環さんとか。ああいうね、数学者でありながらお茶の研究も凄くされて。あの方はもう文献を非常にたくさん当たって、文献当たったところから物をおっしゃる方なんで、想像でものを言ったりしない方ですよね。その方が香道にも手を付けたというので非常に面白かったですけれど、今はちょっとお香はなさっていないようですけど。
「連衆」YouTubeに結構御マニアックな。
「連衆」やってますよね。矢野先生の講演載ってます。
「連衆」載ってます。載ってます。
「連衆」かなりマニアックな。
「連衆」結構マニアック。
「会長」あの人そうなんですよ。マニアックだし、だからあの人の発案で楊貴妃が飲んでいたといわれるお香をね、じゃあ作ってみまひょかってことで再現したりして。で、私飲むの怖いから矢野さんに飲んでもらって。はい。麝香いっぱい入れてるから、心臓に効き過ぎたら困ると思って。はい。過ぎたるは猶及ばざるが如しなんで。麝香って心臓の薬ですけど。だけど、あまりにもたくさん麝香入れてあったんで、楊貴妃のレシピがね。だからそれ全部矢野さんに飲んでもらったんですよ。四日分。1日13粒。
「連衆」怖い。
「会長」そうですか、YouTubeでやってますか。
「連衆」やってます。
「会長」へえ。見てみよう。ついこの間もメールもらったばかりなんですけど。
「連衆」そうなんですか。
「会長」久しくお会いしていない。
「連衆」随分マニアックな番組だなと思って。
「会長」ああそう。あの人そのものがマニアックですから。
「連衆」そしたらこの間お話聞いて、どこかで聞いた名前だなと思ったら、やっぱりその方でした。
「会長」そうでしたか。昔、東京におられた頃はよくあちこち行ってました。一緒に。名古屋の早川甚三さんのお宅にまで行ってきましたしね。それ全部矢野さんの発案なんです。
「連衆」ええー。
「会長」今日もすみません。私、途中で今日は時間余りそうだからと思って、例の王様のお香ってやつを持ってきたんですけど、しっかり30分位もう延長っていうか遅くなってしまっていて、いつも申し訳ないですが。あの終わった後でも時間ある方はお香の余香がどうなってもいいから、王様のお香を嗅ぎたいという方がおられましたら、おっしゃっていただいたら嗅がせます。
「連衆」それって以前に焚いていただいたバラの香りのするやつですか。
「会長」あ、そうそうそう。
「連衆」あ、大丈夫です。(笑)
「会長」一度経験した方はね。ああもうわかったって感じ。
「連衆」『大内』のまま帰ります。もったいない。(笑)
「会長」その方がいいと思います。どうぞ『大内』でお帰りください。
「連衆」『大内』をもう一周くらい。
「連衆」それなら『大内』をもう一周した方がいいかなあ。
「会長」お回ししますよ。
「連衆」『大内』をもう一周お願いします。
「会長」王様のお香はいずれまた機会があると思いますから。その時におっしゃっていただいたら。
「連衆」聞き取れず
「連衆」お帰りにもしあれだったら。今までのかき消されるかも。
2:30
「会長」次、2月の聞香会は、去年やってた六国シリーズのシーズン2がまだ終わっていないので、次は多分真那賀かなんか六国でやらせていただくことになると思いますが。真那賀やる時は、また霊元院の勅銘香『雲間』と、時間ありそうだったら『波間』と、両方の勅命香を炷くようにします。
今日お炷きした「夢路」と『雲間』が似ているタイプかなっていうのを午前中の方がおっしゃってましたけど。
「連衆」「夢路」と『雲間』が似ているタイプ?
「会長」じゃあもう一回『大内』をいきましょうか。
お時間なくなった方はお帰り頂いて、お時間ある方は回しますから。せっかくなんで。
「連衆」伽羅がダメな方がいるんですよね。
「連衆」あそう。
「連衆」なんかいちごがきらいってくらい不思議な気がする。
「連衆」寸門陀羅がちょっとダメ。
「連衆」寸門陀羅。
「連衆」御家流の寸門陀羅じゃないですか? 嫌いな方結構いるんですよ。
「連衆」違うんですね。
「連衆」違うんです。
「連衆」黄熟香がダメ。
「連衆」だから黄熟香です。御家流の寸門陀羅は。
「連衆」あー、分類がちょっと違うんですね。
「連衆」逆に好きって方も多いんですけどね。
「連衆」ちょっとスパイシー。
「連衆」お助けとかって出るんですか。
「連衆」同じことです。
「連衆」そうですね。同じだったんですね。
「連衆」伽羅もいい伽羅聞かせていただけて。
(聞き取れず)
「連衆」伽羅も樟脳っぽい。そんなようなことないですか。気になって。私だけかな。
「連衆」しまっている所が樟脳で虫よけしてるとか。
「連衆」なんかね、どうしてもそれが頭に残ってて。香席とか出るとそれを基準にして(聞き取れず)
「連衆」私、新幹線の時間があるんで。お先に失礼します。
「連衆」お疲れ様でした。
「連衆」すみません。
「会長」どうもありがとうございます。
「連衆」すみませんお先に失礼します。
「会長」ありがとうございます。
「連衆」長持ちしますね。
「会長」まだいけそうな気がしますけど。
「連衆」温度
「会長」温度ね。119ですね。
「連衆」ちなみに湿度はどれくらいですか。
「会長」今、25になりました。今度、加湿器の位置をちょっと変えますね。次回は。どっかこっちの方に置く方が、そっからこう向こうに換気扇があるんで抜けていって。ちょっと工夫してみますね。
よかったらどうぞ。時間(の制約が)ある方はどうぞお帰りください。
来月は多分、六国の真那賀だと思いますが、その次はまた、家元の銘付きのものをやって…とか思ってまして。今年いっぱいは、普段はあまり出来ないようなことをやってみようかと思いますので、またどうぞよろしくお願い申し上げます。
「連衆」ありがとうございました。
「連衆」今年は開店周年企画で色々楽しいものとか、素晴らしいものを聞かせていただけそうですごく楽しみです。よろしくお願いします。
「会長」はい。できるだけやっていきますので。
「連衆」こんな機会なかなかないので。ありがとうございます。おめでとうございます。
END