アタック25 最後の挑戦その2

こんにちは。訪れてくださり、ありがとうございます。前回の続きです。それでは早速、どうぞ!

かくして、僕は歴代チャンピオンだらけの筆記予選と面接予選を勝ち抜き、全国のファイナリスト12人(東日本6人・西日本6人)に選ばれた。

勝ち抜いた決め手となった要因は、未だによく分からない。結果を待っていた時点で、僕はよく「神様の思し召し」と表現していたが、実際そうだったのかもしれないし、「アタック愛に溢れてまくっていた12人」だったのかもしれない。ただ、本番当日に、番組構成を長年やられている高見(孔二)さんというスタッフの方に、(たとえお世辞であっても)「この12人やったら、最終回はきっとオモロなるんやないかなぁ、と思う12人を選んだつもりです」と仰っていただいたときは、とにかく嬉しかった。

さて、決戦となる本番収録までは2週間。

もともと、僕は46年の歴史あるクイズ番組のファイナルに立ち会えて見届けられるだけで、幸せだと思っていた。勝ち負けなんてどうでもいい。
面接試験でもスタッフの方々に強調したように、「番組のラストの瞬間を、とにかく笑顔で見送りたい」。それができれば十分だった。それが神様からのご褒美だ。良くいえば「自然体」で、悪くいえば「手ぶら」で、本番に臨もうとしていたのだ。

ある日のこと。とある人が僕に言った。「それって、予選で負けていった人に失礼じゃない??」

………!!!

まさにコペルニクス的転回だった(笑)。そうだ。神聖なる最終回なのだ。勉強して臨まないと失礼だ。そんな当たり前のことすら気付かないくらい、僕には勝負師としてのブランクがあった。

そこからは意識を切り替えて、仕事の合間を縫っての猛勉強の毎日だった。残りは10日間だ。

やったことは、大きく分けて2つ。
①クイズに直接的に関わること
②クイズに直接的には関わらないこと


まず、分かりやすい①は次の通り。

1:『パネルクイズ アタック25』(大泉書店)の単行本にある問題をこなす
これは1983年発行の、いわゆる古(いにしえ)の名著。初期の普遍的な名作問題が並んでいる。僕が以前、98年の『アタック』に出場するにあたって、クイズの先輩から借りて、ワープロに全1250問を打ち込み、感熱紙に印刷した。とにかく、この本をやるのは勝利に向けての必須条件。あの頃、アタックに勝った友人たちは全員、この本をこなしていた。
(え!?古過ぎて手に入れる方法がない??そこはクリアしましょう。いくらでも手段はあるはずです)
今回も、大体250問ずつ5回に分けてやり、分からない問題は正解と問題のキーワードだけメモした(6回目は総復習)
さすがに、クイズに頻出の「チャウチャウの原作国」を「メキシコ」と答えたのはショックだった(正解は「中国」。メキシコはチワワだ(笑)これぞブランク)。ノートには
問題番号13-27「中国」(チャウチャウ)
と書くなど、時間がないので簡略化してメモしていった。問題の文章を全部写していたのでは時間が足りない。復習時に自分さえ分かればいい。
最後は50問を1分でアウトプットできるようにした。この本についてだが、今回の収録でも、本番の凄いところで助けてもらった。
ただ、この本(ていうか感熱紙)の勉強で一番辛かったのは、文字が23年分だけしっかり薄くなっており、ひたすら目を酷使したことだ。

2:アタック25の最近の問題構成に慣れる
アタック25は、言うまでもなく歴史の長い番組だ。たとえば、初期、1990年、2005年、2021年では、問題の文法から、正解の落とし所まで、ほとんどといっていいほど異なる。
僕は「今」の問題傾向を熟知した。なるほど。どんなに前フリが長くても、正解は「メジャーな単語」に落ち着く。特有の言い回しもマスターした(つもり)。大事なのは、これらのクイズを誰かに読んでもらうのではなく、必ずビデオで加藤明子さん(ABCアナウンサー)の読み方に慣れ、脳内で加藤さんの声を何度も再生し、脳内で「ここで押す」を何度もイメージトレーニングすることだ。リズムを掴んで、あとは素振りの精神。個人的には、このトレーニングが一番、当日の安心感を生むように思う。

3:アタックの過去問をできるだけこなす
まずは自作アタックノートの1ページ目を見直す。「正多角形のうち、辺の数と対角線の数が同じものはただ一つです。何でしょう?」懐かしいなあ。こんなの本番でも出そうだなぁ。もし収録本番で出たら「正多角形のうち、辺の/」がポイントになりそうだ。勝負どころでは「正多角形のうち、/」でも行けるだろう。
本番を見ていた方には信じられないだろうが、僕はブランクを埋めるため、まさしくこの問題をモデルケースにして、早押しの勘を取り戻していたのである(勝負の世界は皮肉なものだ。実際に本番の終盤で同じ問題が出題されたときは驚いたものだが、そのとき僕は不正解のペナルティとして解答席の隣に立って、しみじみとこの問題を聞いていたのである)。
勉強時間の都合上、現代の問題から遡っていったが、もしもこのノートから古い順に読んでいったら、アタックチャンスで出題された「原子番号25=マンガン」にも触れていた。つまりは正解していた。とはいえ、そんなのは結果論だ。仕方がない。
さて、勉強時間には制約がある。直近から、15年分ほど「9月中旬から10月上旬」の問題に絞りこんで、ひたすら加藤さんの声を脳内再生しながら、こなしていった。凄い発見をした。なんと、「ここ数年『アタック25』の9月下旬の問題」には、毎年「山形県」が答えとなる問題が出るのだ!!(そんな大層なことか(笑))
本来だったら皆さんには披露しない発見ではあるが、もう番組が終わったので書いていいだろう(笑)。なるほど、「芋煮」「さくらんぼ」「出羽三山」「かみのやま温泉」……アタックでは秋を象徴するのは「山形県」なのだ。きっと。

4:日付問題(過去の9月26日)、1975年の徹底研究(当然出るだろう)、時事問題をチェックする
この辺りは当たり前であろう。今回、中でも力を入れたのは時事問題だった。アタックの予選問題で出るのは「過去から現在」の時事、本戦で出題されるは「現在進行形」か「未来形」の時事であることを今更ながら見つけた。細かいキーワードを覚えて、一番「メジャーな単語」を答える。ベストセラーやイベントだけではなく、旬な人にまつわる問題も出題される。例えば、その予想問題のひとつは、「SnowManの阿部亮平さんの出身大学=上智大学」だった。これがなんと、本番で的中した。ただし「西日本ブロック」の最終予選で、だったが(笑)

ここまで見てきたとおり、早押しに本当に強くなりたかったら、文字面を目で追って、脳内で音声を再生し、ここぞというところで止める。場合によっては、それを繰り返す。これは、僕が14歳の頃から、早押しクイズに強くなりたい一心で生み出した勉強法だ(そして実際に強くなった、とかいうと令和の時代には嫌われる(笑))。個人差はあるが、たとえば「みんはや(みんなで早押しクイズ)」などのアプリでは、文字面が出るスピードがアプリ側で決まっているので、アタックの勉強、ひいては早押しクイズの訓練には、個人的にはあまり適さないと思っている(もちろん楽しみたい人はやればよいし、否定する気は毛頭ないです)。

ほんの一例ではあるが、クイズの勉強としては、上に挙げたことを、優先順位をつけてやっていった。現役時代(主に大学生時代)を思い出すような、懐かしい感情だった。ただ、今回はほぼ間違いなくラストチャンス。さらにはコロナ禍にも見舞われ(条件はみんな一緒)、孤独な勉強の毎日だった。本当に怖くて寂しい、というのが本音だった。本来「勉強」とはそういうものなのかもしれないが。

………………

なかなかの分量になってしまった。
とはいえ、こんなことはクイズの猛者はみんな当たり前にやっていることだ(きっと)。少なくとも、僕の現役時代は、これの3倍はやっていた。どれも特に気を衒っていない基本的な勉強法だ。ポイントは、これを、一日の時間帯のいつ、どのような組み合わせで、本番までどのくらいのタイミングで、やるかのチョイスだ。それは流石にマル秘である(または有料コンテンツで?(笑))

というわけで、今回はここまで。

次回は「②クイズには直接的に関わらないこと」について記します。テレビクイズでは、いかにこちらに時間と労力を割けるか、が大事。主にメンタル面のお話になります。そして、僕は大きなミスを犯していることに気付きます!

その辺りは次回書きますね。流石に濃い文章が続くのもアレなので、小ネタとか挟むかもしれません。乞うご期待!

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