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マイナー裁判シリーズ第1回「請求理由がユニークな本訴と反訴」

 今回からnoteであまり触れられていないマイナーな裁判について触れていきます。

煙草の煙を吹きかけられたことを不法行為と主張した原告

 今回は東京簡易裁判所に提訴された民事訴訟についてです。当事者は次のとおりです。

原告 荒井泉(フジモンズのシンガー)
被告 近廣直也(「どうげんぼうず」店主)
被告訴訟代理人 神原元弁護士

 この民事訴訟は、近廣直也さんに煙草の煙を吹きかけられたことなどを不法行為として、荒井泉さんが損害賠償を求めて東京簡易裁判所に訴訟を提起したものでした。簡易裁判所ですから請求金額は低く、10万円の支払いを求めていました。ここだけを見ると本人訴訟にありがちなおかしな裁判でしかありませんでしたし、近廣直也さんに対する請求が棄却されることは明らかでした。しかし、ここから流れが変わります。

提訴したことが不法行為と主張した被告

 そのきっかけは、近廣直也さんの反訴でした。請求理由は「提訴したことが不法行為」というものでした。民事の判例に詳しい人ならばお分かりでしょうが、民事訴訟の提起が不法行為として認められるためには想像以上にハードルが高いのです。弁護士であれば当然ご存知のはずにもかかわらず、神原元さんがその請求理由で反訴したのが不思議でなりません。ひょっとしたら近廣直也さんの強い意向があったのかもしれません。
 そして、東京簡易裁判所が言い渡した判決は、双方の請求を棄却するというものでした。双方が控訴しなかったため判決は確定することになりますが、近廣直也さんの側から見れば完全に勝てる民事訴訟で余計な反訴をしたばかりに双方痛み分けとなる結果となりました。