見出し画像

一般社団法人Colaboの研究 3~バスカフェは福祉の手法として有効か~

ドラマ「健康で文化的な最低限度の生活」で描き切れなかった福祉の現実

 かつて、漫画を原作とした「健康で文化的な最低限度の生活」というドラマがフジテレビ系で放映されました。

 このドラマは、東京都東区役所生活課の新人ケースワーカーが生活保護業務に悪戦苦闘するものですが、現実にケースワークをなさっている方々はこのウェブサイトの画像を観て違和感を感じるのではないでしょうか。
 それは、主人公の義経えみるさんの同期のケースワーカーの七条竜一さんの服装です。主人公の義経えみるさん、先輩ケースワーカーの半田明伸さん、福祉専門職で義経えみるさんと同期の栗橋千奈さんはカジュアルな服装をしているのに対し、七条竜一さんはスーツを着ています。ケースワーカーの服装は前者のような服装が主で、七条竜一さんのようにスーツを着る方は管理職の方を除いていないと言ってよいでしょう。このようになる原因は日本人の福祉に対する認識にあるのではないかと思っています。

日本人の福祉に対する認識

 一番部数の多い読売新聞に意見広告をするために5000万円を目標として菅野完さんが始めた募金は、1000万円の募金を集め、広告代理店にディスカウントしてもらって毎日新聞に意見広告を掲載することになりました。菅野完さんが募金募集最終期に残金を明らかにしましたから、広告代理店に支払った広告料は1000万円からその額を引くことによって明らかになるわけです。菅野完さんはこの広告代理店との間には機密保持契約を締結しているだと私は認識していましたが、こんなことを暇空茜さんの裁判カンパ額に張り合うためだけにばらして大丈夫なのかとも思いますが、この募金の最初のきっかけは人気漫才師の親族が生活保護を受給していることが明らかになってその漫才師が批判されたことでした。
 生活保護については、権利であるから堂々と受給すればよいと私は思いますし、健康で文化的な最低限度の生活すらままならない者が大勢いるような社会では生活苦から望まぬ犯罪に手を染める者が生まれて治安が悪化することが懸念されることからも、国の政策として日本国籍を有する者以外にも生活保護の受給を認めているのも十分理解できる話です。つまり、生活保護を受給するかどうかは本人の意思ですが、健康で文化的な最低限度の生活がままならない者に対しては、社会が生活保護を受給することを期待しているとも言えると思います。
 ただ、特に日本ではそのような意識に至ることはまれで、福祉の支援が必要であると思われる方が自力で何とかしようとしている事例も見られます。そこまでいかないとしても、福祉の支援を受ける際に世間体を気にする方は多くいらっしゃいます。

一般社団法人Colaboのバスカフェは福祉の支援として有効なのか

 一般社団法人Colaboは新宿区の繁華街などにバスカフェによる支援を行っています。そのバスは派手な色でラッピングされ、利用しようとする方が一般社団法人Colaboの支援を受けようとする方であることが明らかになるものとなっています。このような手法では、支援を受けようとする者が尻込みすることにはならないのでしょうか。
 前述のドラマ「健康で文化的な最低限度の生活」で描かれる生活保護業務の現場では、ケースワーカーは区役所の人間であることが分からないようにしています。服装はカジュアルなもので、スーツを着るのは事務所で座っている管理職ぐらいのもので、訪問の際に用いる公用車も区役所の表記がないものを用いるように努めていると聞きます。
 福祉に対する認識を前提にした上で利用しやすい手法で支援を行うことは福祉の基本です。新たに福祉に携わろうとする団体などは先行して携わっている団体などから学びながら事業を進めていっていると聞きますが、バスカフェのようなやり方では支援が必要な方が受けにくくなるおそれがあるというアドバイスを受けなかったのでしょうか。