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三遊亭圓歌一門「パワハラ」裁判第1回口頭弁論詳報 2 ~訴状の抜粋 請求の趣旨から請求理由となる2022年2月20日の行為まで~

訴状

1 請求の趣旨

1 被告は原告に対して金300万円およびこれに対する訴状送達の翌日より支払済に至るまで年3分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決および仮執行宣言を求める。

2 被告の不法行為

(1)暴行行為

 被告は、令和4年(2022年)2月11日から同月20日までの浅草演芸ホールにおける興行の期間中、同興行のトリをつとめていたが、被告が楽屋入りするときに被告の弟子である原告および訴外三遊亭歌実らが同興行中に1日も楽屋にいなかったことに腹を立て、同年2月20日午後7時40分頃、同ホールの楽屋にて同人らに対して問答無用といわんばかりに原告らの頭頂部を平手で強く叩く暴力行為を行い、次いで「どういう了見で生きてんだよ、てめえらは。なんで残ってねぇんだよ。言え」と怒鳴りだした(甲1の1、2)。
 このような理不尽な暴行を被告から受け続けた原告らが、この当時、楽屋に残っていなかったのは以下の経緯からであった。
 当時、東京都、埼玉県などの地域では、同年3月6日までまんえん防止等重点措置が発出され、不要不急の外出をしないよう要請されていた、
 さらに、被告が理事の地位に就いている一般社団法人落語協会(以下、単に「落語協会」という。)においても、新型コロナの感染が蔓延、増大している状況を考慮して、2020年6月の総会で、演者は自分の出番が終わった後には楽屋に残らず帰宅することを要請していた。こうした方針は浅草演芸ホールでも実施され、2022年2月当時も変更されていなかった。
 加えて浅草演芸ホールにおける上記の興行が始まる前の2月4日には、落語協会は協会員全員に、上記の方針をメールで送信していた(甲2の1)。また、同興行中に出演者が新型コロナに感染したため、同月15日にも、落語協会は、再度、注意喚起のメールを送信していた(甲2の2)。
 こうした方針のもとに原告らは、被告の妻から新型コロナの感染が蔓延・増大している状況を考慮して、寄席出演後は楽屋に残らず、速やかに帰るよう指示されていた。こうした指示は、上記の寄席の初日だけでなく5日目と二度にわたって行われ、原告らはこの指示を受け、指示通りしたがっていた(甲1の1、2)。原告らは被告の妻(おかみさん)による上記指示の原告らへの伝達は師匠である被告からの指示によるものであると理解していた(甲1の1、2)。
 また、原告は10年以上にわたり被告の弟子をつとめてきたなかで、このような指示のあることの確認を怠ると、被告からたびたび激しく怒られたことがあったため、今回の上記の方針と指示についても確認のうえ、指示に従っていた(甲1の1、2)。したがって、2020年6月の協会の総会後、被告が各寄席でたびたびトリをつとめたことがあったが、この間のどの興行でも原告らは指示を確認して、被告がトリをつとめている間、1日たりとも楽屋にはいなかった。こうした経緯を踏まえて原告らは、上記の浅草演芸ホールでの興行中、楽屋には残っていなかったものである。
 こうして被告の妻に2度の確認をした経緯を説明した原告に対して、被告は「は?言ってないけどな、俺は・・・」、「俺がトリのときにちょっと来りゃいいじゃねぇかよ。そういう了見にならねぇのか。てめえは」(甲1の1、2)と怒鳴るばかりであった。
 以上の通り、被告による原告らに対する理不尽な暴行行為は許容されるものではなく、また師匠として弟子に対して行う指導の域をはるかに越えた、刑法上暴行罪に該当する違法な不法行為である。
 被告は、一般社団法人落語協会に所属する正会員であるとともに、「古典落語を中心とする寄席芸能の普及向上に関する事業を行い、もってわが国文化の発展に寄与することを目的(同協会の定款第4条、甲3)とする同協会の目的事業遂行の責務を理事として果たすべき地位にある者として、「寄席芸能に関する後進の育成」すべき責務を担っていながら、その目的事業遂行とまった無関係の上記の暴行行為を行うことは、師匠であっても弟子に対する指導として許容される行為ではないこと明白である。また、落語協会においても、師匠だからといって弟子に対して、このような理不尽な暴行を許容していない。

(2)上記暴行行為後における原告に対する理不尽な制裁と人格侵害行為

 原告は、被告から上記の暴行行為を受けた後、なおも原告に詰問してくる被告に対して、原告が被告の妻からの上記指示を事前に受け、これに従って行動していた旨説明すると、被告は「口答えするな、この野郎」と理不尽に怒鳴るので、堪えられなくなり、「いきなり叩かれるのは本当によくわからないです」と弁明した。
 これに対して被告から「なんだとこの野郎、師匠に逆らうのか」、「逆らうな、そういう了見が気に入らない、破門だ。帰れ」、「2度と俺の前に面を出すんじゃねぇぞ」(甲1の1、2)と怒鳴られ、破門を告知された原告は、その場を退去せざるを得なかった。
 しかし、その後、被告は、「破門」を原告に対して通告していながら、原告の師匠として一般社団法人落語協会に原告への「破門届」を提出しないでいる。そのため、原告は、同協会をはじめとして対外的には「破門」扱いにされず、対外的には被告と師弟関係にある物とされている。そこで、原告は、「二ツ目」として落語を専門の業とする者でありながら、師匠である被告の門下としては勿論のこと、師匠である被告から離れて新たな師匠のもとで、やり直しをすることもできないでいる。
 そこで、原告は被告に対して、「破門届」の協会への提出の確認を求めたのであるが、被告はこれを無視して今日に至っている。
 また、被告がこうしした「破門」を原告に通告していながら、協会には「破門届」と提出しない扱い(嫌がらせ)によって被っている窮状を、原告は協会の会長、事務局長に直接に訴えた。その結果、会長や事務局長は被告に確認を求めているのであるが、状況は依然としてかわらなかった。
 特に、2022年6月20日には、被告は協会には「原告の代理人と被告の代理人とで話し合いを行うことになっているので、破門届の届け出は見送る」と報告していながら、被告や被告の代理人からは原告や原告の代理人に連絡は一切なく、話し合いの機会をもてないでいる。こうして被告は協会に虚偽の報告をしていることを、原告は協会にその間の経緯を説明しているのであるが、協会は「師弟関係に口を挟めない」と対応するばかりで、こうした状況は一向に改善されずに今日までおよんでいる。
 被告によるこのような対応(「破門」といいながら「破門届」を協会に提出しない嫌がらせ)は、すでに半年もの長い時間が経過してきた。
 そればかりでなく、被告は、2022年6月17日の原告あてのショートメッセージで、「廃業届を私に出してください。それがなければ破門届が出せません。宮崎の親御さんに会いに行きます。」(甲4)として、落語家を廃業しない限り、協会に「破門届」を提出しないとするメールを原告に送信しているのである。被告は、高座などに出演することを望んでいる原告に対して、落語家を廃業することを強要しているのである。協会への「破門届」の提出は落語家としての廃業は必要とされていないにもかかわらず、「廃業」することを強要しているのである。
 被告によるこうした対応は、原告に対して敵意をもった制裁ともいうべき悪質な対応をしている。これに加えて原告の両親に会うとして、圧力を加えることまで示唆しているのである。
 こうして原告は、被告による上記のごとく理不尽な制裁により、寄席の高座などに上がって出演する自由を剥奪されたままの状態(出演を控えざるを得ない関係)に陥らされている。いわば落語家でありながら落語をできず、「生殺し」のじょうたいにおかれてきたのである。
 被告による原告に対する上記の一連の言動・対応は、被告が原告の師匠としての地位にあることをバックに、落語家として生きようとする原告の人格権を著しく侵害する言動を恣に投げつけるパワー・ハラスメントであり、原告の業務を妨害し続ける人格権侵害行為である。
 したがって、原告の言動・対応は、原告の人格権を侵害し、落語家としての業務を妨害するパワー・ハラスメントとして、違法な行為として法的責任を負うべきものである。