皇位継承における最も重要な伝統とは何か
つげのり子さんの寝言のような皇位継承論
皇位継承について、つげのり子さんとおっしゃる方が男系継承を絶対のものとする立場から妙な主張をなさっています。
このつげのり子さんの主張にはまったく同意することはできません。つげのり子さんの懸念が、ご自身が重視する男系継承においても問われる問題であるだけでなく、男系継承ではより厳しく問われるという視点がまったく欠けているからです。
つげのり子さんは、天皇の配偶者には品格が求められるとおっしゃいます。それでは、男系男子の皇族の配偶者となられる女性に求められる品格は桁違いではないのでしょうか。しかも、男系継承を前提とするならば、それに加えて必ず男子誕生が求められることになりますから、皇位継承可能な皇族として残る女性皇族の配偶者以上に求められるものが大きくなるわけです。
そして、男系継承が皇位継承の伝統であるという主張にもとっくに大きな疑問符がついています。天皇の権威は神話の世界からもたらされたものであり、女神である天照大神の子孫であることが皇位継承の正統性を示すものであることが理由の一つ、44代天皇の女性天皇である元明天皇から45代天皇の女性天皇である元正天皇への皇位継承においてすでに女系継承がなされていることが理由の一つです。
天照大神の子孫であることが天皇の権威の正統性を示すものであることはすでに多くの方がおっしゃっているものですので、ここでは多くは語らず、もう一つの理由について述べていきたいと思います。
元正天皇は、元明天皇と草壁皇子の間に生まれた内親王で、元明天皇の次の天皇です。この皇位継承は、女系継承がなされていると考えなければ説明がつきません。草壁皇子は天武天皇の皇太子でしたが、天武天皇の崩御後に皇位に就いたのは天武天皇の皇后である持統天皇でした。その後草壁皇子とその皇子である文武天皇の早世により草壁皇子の配偶者で文武天皇のある元明天皇が皇位に就き、元正天皇がその後を継ぎました。この皇位継承において、天智天皇系の男系男子の皇族には桓武天皇の祖父である志貴皇子や天武天皇系の男系男子の皇族には長皇子や舎人親王などが存命であることからも天皇にすらなっていない草壁皇子の男系の血統が重視されたとは考えられず、元明天皇の内親王であることが皇位継承の決め手となったことは明らかです。つまり、すでに女系の皇位継承は行われていたのです。
皇位継承で最も重要な伝統
皇位継承において最も重要な伝統について私は一つの結論に至っています。それは、天皇と同じ時代を生きる国民が天皇の正統性を受け入れ、天皇に権威を感じ、天皇を敬愛することです。その時代の国民に天皇が受け入れられていなければ126代も皇位が継承されることはなかったでしょうし、皇位継承においてそれまで守られてきた習わしがあったとしてもその時代の国民にそれに基づいて即位した天皇が受け入れられなければその時代で皇位は途絶えます。
世論調査では愛子内親王が天皇となることを支持する意見が過半数をはるかに超えます。そして、その多くが女性天皇、女系天皇について詳しく知っていない者が多いという結果も明らかになっています。この世論調査の結果は、国民の多くは女性天皇、女系天皇という意味について理解が進んでいないものの、天皇陛下の内親王という直系で継承された皇統に権威を感じているということが分かります。そして、この世論調査の結果は、その時代の国民が権威を感じる天皇が代々連なることによって126代続いたという伝統から考えれば、決して軽視すべきものではないことが明らかです。