もはやプロスポーツを報じる資格を失った片岡亮さん

私怨なのかプロスポーツを取り上げるライターとしての限界なのか

 ジムの会長やプロモーターを不当に停止されたことにより損害を被ったとして亀田興毅さんらが日本ボクシングコミッションなどを提訴した民事訴訟は、東京地方裁判所で4550万円の金員の支払いを命ずる判決が言い渡されました。

 判決に対し、日本ボクシングコミッションらは判決を不服として東京高等裁判所に控訴しましたが、亀田興毅さんら原告側も賠償額を不服として控訴しました。それに対して、ライターの片岡亮さんが自身の管理するブログ「拳論ときどき猫論 片岡亮の猫とボクシングと馬来」令和2年2月14日付け記事「■亀田問題■亀田側の控訴理由に噴飯『もっと高い額じゃないとJBC改革できない』」で亀田興毅さんらの控訴を批判しています。

 四国で行われたボクシング興行で日本ボクシングリングアナウンサーの富樫光明さんが亀田兄弟に監禁されたとして民事訴訟を提起し、亀田兄弟からの反訴によって逆に賠償を命ぜられた事件に関連して、同様に亀田兄弟から賠償を命ぜられた片岡亮さんですが、私怨が過ぎるかそうでなければすでにプロスポーツを記事にするまともな感覚を失っているといえるでしょう。

プロスポーツの統括団体としての日本ボクシングコミッションの役割

 片岡亮さんの記事はこれまでボクシングに関する記事を書いてきたライターであるとはとても考えられないほど偏見に満ちたものです。片岡亮さんはこう述べます。

「負けても防衛」問題での亀田ジムへの処分(会長とマネージャーのライセンス更新を認めない)は当時、会長やマネージャーが名ばかりで職責が果たされていないジムの指揮系統が問題視されたものだったが、騒動自体はIBFのずさんな説明や、本来それを監督する側であるJBCの責任転嫁みたいなところもあったから、処分が「やりすぎ」として否定されてしまう見方は仕方ない。ただ、なんでそうなったかと言えば、それまで亀田兄弟がやらかした無数のトラブルがあって、それをリアルタイムで書いてきた当ブログの記事のコメント欄を見返せば、当時いかにボクシングファンのストレスになっていたかが分かる。

 亀田大毅対リポリオ・ソリスのWBA・IBF世界スーパーフライ級王座統一戦で体重超過してWBA王座を剥奪されたリポリオ・ソリスが勝っても負けても亀田大毅のIBF王座は維持されることはルールミーティングで確認されていたことでした。そうであるにも関わらず日本ボクシングコミッションはルールをまともに確認することなく、IBF側が誤って亀田大毅が敗れた場合には空位となると記者会見で述べた発言から混乱が生じた原因を亀田大毅の所属する亀田ジムになすり付けて会長とマネージャーのライセンス更新を認めないという不可解な処分をなしたのです。
 プロスポーツの統括団体としての日本ボクシングコミッションの役割は、ルールを守りルールを守らせることが最も重要です。私はWOWOWの「エキサイト・マッチ」でWBC世界ウェルター級タイトルマッチのパーネル・ウィテカー対フリオ・セサール・チャベスの試合をリアルタイムでテレビ観戦した世代ですが、チャベスが勝った場合にはWBC世界スーパーウェルター級王者のテリー・ノリスと対戦することがほぼ内定していました。興行側とすればチャベスが勝った方がビッグマッチが行われることとなりますから、チャベスに勝ってほしいという期待は相当なものであったと思われます。この試合はウィテカーが有利に試合をコントロールした結果の引き分けとなり、チャベスとの試合にメリットがないと考えたノリス側は対戦に興味を無くしました。ただ、興行側のビッグマッチへの期待が高まるあまり、期待が圧力に変わって試合結果が左右される危険性は常にあるわけです。プロスポーツの統括団体は、大金の動く興行を公平に運営するために所属する選手、興行主などにルールを守らせなければならないのです。そして、ルールを守らせる立場であることから自らもルールに従った公正な組織運営を行っていかなければならないのです。
 記事で片岡亮さんが主張している内容は、ファンから嫌われている亀田兄弟をボクシング界から追い出すためなら日本ボクシングコミッションはルールを恣意的に運用してよいといっているに等しく、プロスポーツを取材して記事にする立場の人物がいってはいけないことです。
 他のプロスポーツに目を向けてみましょう。日本ボクシングコミッションと比較してはるかに公正な運営が行われているのがJリーグです。

Jリーグでは審判がジャッジとして用いることができる情報を厳格に定め、2019年の浦和レッズ対湘南ベルマーレの試合で湘南の杉岡大暉の明らかなゴールがノーゴールとなった試合においても、Jリーグの試合運営規定に基づいてノーゴールの判定を下しています。これは、湘南の選手やサポーターにとってはとても受け入れられない判定となりましたが、Jリーグでは審判が何を見たのかを聴き取ったうえで検証を行っています。結果が妥当なものではないとしても審判が直接見ていないものは判断の材料とすることができないというルールに基づいて判定を行っていることが明らかにされています。そして、このようなミスジャッジをした審判に対して厳しい処分がなされたうえで復帰プログラムで心理的なダメージの回復や技量の向上がなされ、今後はVARやゴールラインテクノロジーの導入を検討していることに触れています。プロスポーツの統括団体がルールを守らせ、自らもルールを守るということはこれほどに重いことなのです。プロボクシングだけでなく様々なプロスポーツの取材を行っているはずの片岡亮さんがどうしてそこに思い至らないのでしょうか。

プロボクシングの取材者として不適格な片岡亮さんがプロスポーツの取材者として不適格に


 日本ボクシングコミッションのリングアナウンサーの富樫光明さんが行った記者会見が名誉毀損にあたるとして名誉毀損案件としては高額な賠償を命ぜられた民事訴訟に関連して、同様に亀田兄弟に対して名誉毀損としては高額な名誉毀損を命ぜられた片岡亮さんは、プロボクシングの取材者としては不適格であるといえます。片岡亮さんが頻繁に記事を執筆している「紙の爆弾」では、井上尚弥のWBSS優勝という大きな話題となった出来事があったにもかかわらず、平成30年6月号の記事を最後としてプロボクシングに関する片岡亮さんの記事は掲載されていません。私は、片岡亮さんがプロボクシングの取材者として不適格であるということが広く認識されてきた結果ではないかと思っています。
 そして、プロスポーツの統括団体の役割すら理解してないブログ記事を掲載した片岡亮さんがプロスポーツの取材者として不適格であると考える者は私だけではないでしょう。