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普天間飛行場移設問題 2 ~費用の問題へと逃げをうった東京新聞~

耳を疑った東京新聞の報道

 ご存知の方もいらっしゃると思いますが、私はほぼ一日中ラジオを聴いていて、テレビを観るのは大河ドラマと日曜劇場の週2時間という極端な生活をしています。朝は5時から時計がわりにラジオを聴き始め、その後首都圏、中京圏、東北地方の朝のワイド番組をローテーションで聴いています。その朝のラジオ番組で新聞記事の解説を行なっているコーナーを聴いていましたが、「工事が中々進んでいない」、「当初の想定から費用が膨れ上がっている」などという言葉が流れてきていたので、てっきり大阪の万国博覧会の問題だと思っていたら東京新聞の辺野古基地に関する記事の解説でした。

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画を巡り、軟弱地盤の対策に伴う訴訟で最高裁は4日、県の上告を退ける決定をした。県の敗訴確定で、難航が予想される地盤改良は動き出す可能性が出てきたが、工事には2022年度末時点で4000億円以上が投入されている。防衛省が当初見積もった総工費3500億円を上回りながら、埋め立ての進捗しんちょく率は14%に過ぎない。辺野古予算は底無しの様相を帯びてきた。(中沢誠)

◆難工事予想される軟弱地盤は手つかず
 沖縄防衛局によると、22年度、辺野古の新基地建設に支出した額は815億円。着工から21年度までにかかった工費と合わせると、総額で4312億円に達した。
 一方で、22年度末時点の工事の進捗を見ると、事業全体の埋め立て土量2020万立方メートルのうち、4年余りで埋め立てた量は14%。しかも、これまで埋め立ててきた場所は、工事がしやすい水深の浅い海域だ。
 防衛省は4年前、軟弱地盤対策のため総工費を9300億円に引き上げた。
 工費がさらに膨らむ可能性はないのか。沖縄防衛局に見解を尋ねると、「回答までに時間が欲しい」とのことだった。

◆「2兆、3兆円超えるかも」
 「事業進捗からすると、2兆をも超えて3兆も超えるかもしれない」。工費膨張の恐れは、国会でもたびたび指摘されている。
 ただし、国会の質疑を見ても、政府が「これから幾らかかるのか」との問いに正面から答えた形跡は見当たらない。浜田靖一防衛相も今年3月の参院外交防衛委員会で、「引き続き抑制に努めつつ、必要な経費を計上してまいりたい」と述べるにとどまった。
 新基地建設の総工費に関しては、軟弱地盤が判明するまで、政府は「少なくとも3500億円以上」と見積もっていた。
 総工費を2.7倍の9300億円に引き上げたのは、海底に約7万本もの砂杭ぐいなどを打ち込み、軟弱地盤を固める大がかりな改良工事が必要となったためだ。工期も5年から9年3カ月に延ばした。大幅な設計変更に、当時の河野太郎防衛相は「無理のない工程だ」と強調していた。
 今年6月の参院外交防衛委員会。総工費の全体像を明らかにしない政府に対し、沖縄選出の伊波洋一参院議員は、こう迫った。「これ以上の税金の無遣いにならないよう、今が引き時ではないか」

◆前泊博盛・沖縄国際大教授「事業の再点検を」
 「(辺野古新基地は)何のために造っているのか。ドローンの時代には使えない不要な基地だ」
 今年3月、新基地建設の視察に訪れた米軍幹部が、周囲に漏らしたという。
 この「辺野古不要」発言を在沖縄米軍関係者から聞いた前泊博盛・沖縄国際大教授(安全保障論)は、軍事的合理性の観点から「司法判断の前に、四半世紀前に計画された新基地建設は防衛政策上、今も有効なのか再検証は必要」と説く。
 「世界一危険な普天間飛行場の危険性除去」を理由に建設が進められたはずだが、普天間の危険は放置され、滑走路のかさ上げや兵舎整備などが加速している。「返還どころか恒久使用に向けた整備強化が進んでいる。政府の主張は矛盾していないか」
 財政的合理性からも疑問を投げ掛ける。「建設費が当初計画の3倍というのは公共事業として破綻している。3倍になった建設費もさらに膨らむ可能性がある上に、軟弱地盤問題で完成のめどすら立っていない。裁判が終結しても、事業全体の総点検が必要だろう」

東京新聞「『辺野古』工事費底なし 埋め立て14%すでに半分近く使い切る 米軍幹部も『ドローンの時代に不要』」

 普天間飛行場の辺野古移設は、世界一危険な普天間飛行場の周辺住民の安全のために計画されたものですが、沖縄県の地元企業のために配慮された公共事業でもあります。すでに地元も米軍も沖縄県知事の同意すら得られていた普天間飛行場の辺野古移設について、何の腹案もなく「県外移設」を唱えてぶち壊した鳩山由紀夫元総理大臣が最後にこだわったのは辺野古基地の海上桟橋方式などによる移設工法でした。しかしながら、海上桟橋方式などとした場合、沖縄県の地元建設業者で対応することができず、大手ゼネコンなどの高い技術力のある建設会社しか受注することができなくなり、地元建設業者はせいぜいJVに加わるぐらいになってしまいます。このように地元の同意を取り付けるということは、様々な面で配慮して可能となるのです。

「安全保障論」が専門のはずの前泊博盛沖縄国際大学大学院教授の首を傾げる発言を持ち上げる東京新聞の愚

 この記事では、米軍でどのような立場にあるか明らかにしない「米軍幹部」の発言というものを元に辺野古不要論を唱える前泊博盛沖縄国際大学教授の発言を持ち上げています。この「米軍幹部」は、ドローンが軍事で活用されているから航空基地が不要であるなどとよくわからない発言をなさる非常に不思議な方です。そして、その「米軍幹部」の発言を検証しているはずの前泊博盛沖縄国際大学教授の経歴を見ると軍事や安全保障に関する論文は見当たらず、わずかに九州大学助教授であった1年間のみ「安全保障論」という記載があるのみです。そして、その学歴と経歴は、経済学部を卒業後に琉球新報社で記者を務め、大学の講師と記者の二足の草鞋を履きながら編集委員などを経て沖縄国際大学大学院教授となり、現在に至ります。研究分野や論文などを見ると、その学問的な関心は日米安保や基地にも向けられているものの、基地経済など経済学の分野にとどまっています。つまり、軍事や安全保障が専門ではなく、学歴どおりに経済学が専門の学者であるといえるでしょう。したがって、「米軍幹部」の発言を軍事面や安全保障面から検証することができる専門性はほとんどないといってもよいと思います。そもそも、廃止が前提となっている基地であっても維持管理は必要不可欠なのですが、その維持管理にケチをつける前泊博盛沖縄国際大学大学院教授は、不適切な維持管理で普天間飛行場周辺住民の安全が脅かされてもよいとお考えなのでしょうか。

普天間飛行場の辺野古移設について、無駄な公共事業批判に舵をとった東京新聞の不誠実さ

 すでに述べたように、普天間飛行場の辺野古移設は世界一危険な基地から沖縄県民を守るということであり、それに伴って辺野古基地建設という公共事業と移転後の普天間飛行場跡地の開発という地元経済の振興策がついてくるというものとなっています。そして、すでに合意に至っていた辺野古移設を「県外移設」を唱えることによって沖縄県民の微妙な基地に対する感情を逆撫でして御破産にしたのが鳩山由紀夫元総理大臣をはじめとする当時の民主党を中心とした与党の面々で、鳩山由紀夫元総理大臣が結局辺野古海上埋立てしかないと結論づけると、陣笠ではあるものの、民主党衆議院議員の立場で賛同するコメントを発したのが玉城デニー沖縄県知事でした。
 そのような背景の中で、辺野古移設反対の論陣を張った上で玉城デニー沖縄県知事の姿勢を擁護し、玉城デニー沖縄県知事が知事として不適切な許認可権の行使をなしていることが法廷の場で明らかになってくると、軍事や安全保障についての見識が怪しいとしか考えられない学者を持ち上げて、辺野古移設を無駄な公共事業として批判する東京新聞に第四の権力である報道に携わる矜持を微塵も感じることはできません。