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【授業におけるICT入門】統計教育とプログラミング的思考

平成29年3月に小学校および中学校の学習指導要領が公示され、翌年3 月には高等学校の学習指導要領が公示されました。

そこで大きく変わった内容として、算数科で身に付ける論理的な思考の理解を深めるためにプログラミング教育(プログラミング的思考)が取り入れるというものがあります。

また、社会生活などのさまざまな場面において必要なデータを収集して分析し,その傾向を踏まえて課題を解決したり意思決定をしたりすることが求められいます。そのような能力を育成するため、高等学校情報科等との関連も図りつつ小・中・高等学校教育を通じて統計的な内容等の改善について検討していくことが必要であるともされています。

私はこの「プログラミング的思考」と「統計教育」には密接な関係があると思っています。

これは実際に授業(専門学校)で情報科学を教えているときに強く実感するものです。研究のために調査をして、そのデータを読み解くということは、機械的にできることではありません。

データをまとめることはパソコンでできますが、そこから意味を見いだすこと、情報を読み解き、処理をすることは私たち人間が行うべきものだと考えます。その力がどうも弱いのではないか…と思うのです。

数字を「データ」とみるか「情報」とみるかでまったく捉え方が違ってきます。その違いを理解することが統計教育であり、考察を伝えるためにまとめる手法として、プログラミング的思考があるのではないかと考えています。

現代の社会ではビジネスだけでなく、さまざまなシーンでビッグデータが活用されています。ビッグデータを分析してすることは時に社会の課題を見つけることでもあります。(もちろん、課題を認識したうえでビッグデータを使うこともありますし、そちらの方が主流)

分析から仮説を立て、課題の解決につなげる昨今、「統計をとってデータから何かを読み取り、課題を解決・改善に役立てる力」は、これからの社会を生き抜くうえで大変重要な能力になっていくと言えるでしょう。

しかしこういった力は、大人になって突然身につくものではありません。私は子どものころからの継続した教育によって育まれるのだろうと思います。

ICTの教材は統計教育にもプログラミング的思考の教育にも大変有用です。さらに言えば、STEAM教育としても、これらふたつの教育は重要な位置を占めると思います。


STEAM教育についてはさまざまなところで語られていますから、今さら説明の必要はないでしょう。簡単に言えば「IT社会に順応した競争力のある人材を育てるための教育手法」となります。

急速な技術の進展による社会の変化に呼応していろいろ課題が⽣じている現代では、私たちが学生だったころのような ⽂系・理系という枠ではなく、さまざまな教科を横断的に学べるような仕組みが必要です。

その中で自分に必要な情報を入手し、それらを統合していく情報リテラシーの力を身につけ課題解決ができるような人材の育成が求められています。

「データ」と「情報」の違いはデータがただの結果(数字)であるのに対し、情報はそれを扱う人の意思決定の根拠となることです。

統計処理をしたデータを自分の問題意識に合わせた情報として処理し、考察をし、行動につなげる。その一連の流れは論理的思考に基づくことで説明を容易にします。

小学校の統計は数字をグラフに作り替えて「わかりやすく」「見やすく」することに重点を置きがちです。しかし、その先の考察の部分に時間を割くために、タブレットやパソコンを使ってグラフの考察に説得力をつけるような情報を入手するといったところまで踏み込んでみてはどうでしょうか。そうすると子ども達も単に「正解」をみつけるのではない、情報検索の仕方のイメージがわかるのではないでしょうか。

こうした授業のためには、いかに具体的なテーマを提示するかが重要になりますが、そうした教材を「日本統計学会統計教育委員会」という団体が提供しています。(https://estat.sci.kagoshima-u.ac.jp/cse/shido/

この団体は評議員会の下におかれた学会の特別委員会のひとつで、活動の目的は統計教育を促進し, その発展, 普及に貢献することだそうです。 統計教育に関するさまざまなワークショップを行ったり、情報提供を行ったりしていますので、参考にされてみてはいかがでしょうか。

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