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ナレ録り後のMAミキサー④

ナレーター、そしてMAミキサーの小枝です。

(このnoteは個人的な意見ですので、チラシ程度に留めてくださると嬉しいです。また、誤情報などないように気をつけてはいますが、間違いなどがありましたらご指摘して頂けると幸いです。)

音作り<EQ・コンプについて>

前回のおさらい

…1段階目のEQは、まずその人の声の基音と倍音を削ります。全体的に音量を持ち上げるための下処理です。詳しいことは、前記事をどうぞ。

…その次のコンプの工程です。

ここで使うコンプは、ゆる〜く持ち上げて、滑らかにratioを引っかけるくらいにしておきます。意図としては、小さい音をそこそこ大きくし、大きすぎる音は少し叩いてやる、といった感じです。

(最終的に、声のレベルのばらつきを整えてあげるのがEQコンプの目標です。なので、発声がちゃんとしているナレーターの方はこれ以上プラグインを差すことはありません)

…もう一度EQをかけて調整

なんでもう一度EQ調整するのかというと、ここで聴こえ方が劇的に変化させられるからです。音量レベルがある程度整った状態で、元の声の基音や倍音の成分を少しだけ持ち上げると、その人の声の音色がよくなります。輪郭を形作ったりと、この辺りの調整はよく試行錯誤します。

…もっかいコンプ

最後にコンプを深めにかけます。③で調整した時、大きくなってしまった音をしっかり削って固めるイメージで調整します。とにかく音量のバラつきを抑えます。

…必要ならディエッサー

ディエッサーは正直、どこで挟んだらいいという正解はないかと思います。①の終わりに差しこむ場合もあります。

さて、ここまで読んで頂いた方からすると、「え〜、そんなに変わるものなのー?」と疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。

ひとつ昔話です。

とある仕事で、某(オレンジ色のコートとハットを被り、ちょび髭を生やした刑事を彷彿とさせる)声優さんと仕事をしたときのこと。

その時は某番組のPRでご一緒したのですが、収録したあと、いつも聴いているあの声につくり込むことが出来ませんでした。当時の僕は、EQコンプの設定をなんとなくで調整したため、全くどうしていいのか分からなかったのです。。。納得していない音のまま納品してしまったことは、今でも後悔しています。

その後、師匠に相談したところ、ああいった低音が響く声の場合は意外にハイの帯域を持ち上げるといいよと教えてくれました。そうすることで、音の輪郭が際立つのだそうです。

結論、EQ・コンプを使用することで、音は変わります。

あれこれ言いましたが、このEQコンプの目的は、「音量レベルのバラつきをなくすこと」が重要です。なぜかというと、人間は大小様々な音が連続すると、聞き疲れしてしまうからです。小さい音に耳を傾けようとした時に、突然大きい音が鳴ったら驚きますし、意外にストレスになります。

人間の耳は存外優秀で、騒がしい環境でも聴きたい音を拾う、つまり「耳を傾ける」ことが出来ます。集中して聴いているのを妨げられると不快になるように、音量のバラつきも不快に感じてしまいます。

余談ですが、僕の師匠はナレーション録りの時、その人の癖などを先読みしてフェーダーで音量を調整していました。

どういうことかと言うと、言葉頭の音が大きくなりがちな人や、「〜です。」「〜ます。」といった言葉尻がしぼむ人は存外多いので、これをミキサー側で調整します。

この作業を、「収録中」に行います。ナレーターの癖を把握して、「この人は語尾がしぼむ人だ」と思ったら文末に進むに従って、フェーダーで調整するわけです。これは今でも自分も使います。(もっともミキサーの方々からすると大した話ではありませんが・・・)

今回はここまで!

次回は、木曜更新予定です。何について書こうかな・・・。

小枝真也

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