ナレ録り後のMAミキサー③
ナレーター、そしてMAミキサーの小枝です。
(このnoteは個人的な意見ですので、チラシ程度に留めてくださると嬉しいです。また、誤情報などないように気をつけてはいますが、間違いなどがありましたらご指摘して頂けると幸いです。)
<3.EQ・コンプ調整>
全ミキサー、一生の課題であるEQコンプ問題。
音に関する全てのミキサーが長年四苦八苦してるセクションです。(note一回でまとめられるわけがないので、何回かに分けます。)
結論だけ先に述べます。最終的な音づくりは「好み」です。
もちろん、良し悪しはありますが、一定のラインから先は好みの問題です。何故なら、人によって聴こえ方が変わってくるからです。 では、その「一定のライン」について僕の所感を書いていきます。
(ちなみに、EQ(イコライズ)って何ですか?って人は、「声にお化粧をしてあげる作業」と考えてみてください。<引用:バーズ講師>)
現在、僕がNAにかけているプラグインの順番はこんな感じです。
1.EQ(ローカット・基音倍音を少し削る)
2.コンプ(全体的な音のレベルをやや持ち上げる)
3.EQ(200Hz〜帯にあるその人の声の基音、そして1.0kHz〜あたりにある 倍音成分を緩やかに持ち上げる)
4.コンプ(かっちりと音を固める)
5.必要であればディエッサー
と、こんな感じです。もちろん、これは僕のやり方ですので、全てのミキサーがやってるわけではありません。ミキサーによって考え方も違いますし、音作りの仕方も違います。
師匠の方々にセッティングの仕方を聞いた時、「設定の仕方?なんとなく良い音にすればいいんだよ」と詳しく教えてくれませんでした。
その時は、(えーなにそれ…めんど…)と思っていましたが、今思うと、あれは「自分好みの音を見つけなさい」という意味だったのかもしれません。。。
話を戻します。
そもそも、EQ設定(イコライズ)は何のためにやるのかというと、音色を良くし、聞こえをよくするためにあります。
例えば、低域の音について。動画を制作されてる方は分かると思いますが、室内だと、空調のヴーという音、外で録音した時の自動車の走行音などは思いの外、マイクにのっていますよね。
この音源にローカットを入れるだけでも大分聴きやすい音になります。これが第一の工程としての「余計な音の成分を削る」作業です。いやいやそんなん知っとるわ!とおっしゃる方もいると思いますが、ここ意外と重要なんです。
ローカットは値を間違えると、特に男性の声は音が軽くなってスカスカになってしまいますし、かと言って、そのままにしておくと、コンプをかけた際、不愉快な低音になってしまう可能性が高いです。そうすると、中高域の音を食ってしまうため、音の輪郭がボヤけてしまいます。
個人差はありますが、100Hz以下辺りに声の基音となる帯域の音があるので、そのギリギリ削らないラインでローカットを入れるのが肝です。(切りすぎると余韻が消えるので、急なローカットはおすすめしません)
では次に、倍音成分についてのEQです。
ここで使うのは「サージカルEQ」という処理です。
音には須く倍音成分がありますが、ここではその説明は省きます。 (下記に説明されてるサイトのリンクを貼っておきますので、気になる方はそちらからどうぞ!)
https://info.shimamura.co.jp/digital/knowledge/2014/09/34946
で、そういった倍音成分を探し当てる作業をサージカルEQといいます。
まずQ幅をしぼり、ある程度ブーストしたうえで、周波数帯を動かしながら問題の箇所を探し当てるというテクニックです。
引用元 https://simplestudio.jp/the-techniques/eq3-isolate-frequency-band/
この時、少し耳が痛くなる様な音が聴こえてきたら、そこが倍音成分です。(シャーシャーするような音)
ヘッドホンでの作業だと、耳を痛める場合があるので、探る時は十分注意してください。1.0kHz〜辺りに、サ行の音が集中しやすいです。(前記事参照)
僕は一度ここを軽く削りますが、それは後でコンプを使って全体的にナレーションのレベルを上げた際に、さらにEQでこの帯域をゆるやかに持ち上げるためです。そうすることで、音圧を稼ぎつつ、音像の輪郭をより強調する効果が得られます。
今回は、EQコンプの大雑把な処理の流れと、EQの下処理1段階目の役割をご紹介しました。とりあえず今日はここまでです。
次回は、木曜日更新予定です。
小枝真也
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