見出し画像

AM5環境へ更新:RyZen9 9950Xと仲間たち・動作検証編

全世界5.7億人のギガヘルツ脳な皆様こんにちは。ギガヘルツ脳ってなんだろうと質問があったのですが、いかんせん私もよくわかりません。アルミホイルかぶるとか? 怒られそうな予感がするので多くは語りますまい。香月です。

さて、RyZen9 9950X環境への乗り換えネタ、後編です。こちらでは組み立て内容はそこそこに、ベンチマークや使用感を例によって乱文乱筆で行きます。前編はこちら。


組み立てそのものは特に引っかかることも無し

大きめのE-ATXサイズという事もあり、組立作業は結構らくちん

前編でパーツ紹介をしながら組立中の写真を載せたりして、こっちの記事でどこまで書くか悩みどころなのと、組立中の写真があまりないのでいよいよアレです。

E-ATXのマザーボードを設置した所

今回はM/BがE-ATXと横に広い大型ボードなので、配置や配線が通常のATXとは違う雰囲気になるかなとは思っていました。とりあえずケース内にM/Bを設置すると、ケースフロント側、M/Bから見て右側にあるケーブル通しのグロメットが半分ほど覆われてしまう状態。E-ATXでコレなので、SSI CEBや同EEBのボードを入れたらどうなっちゃうんだろうかと訝しむ所ですが、それらのサイズを普通のPCの用に使うことはまぁ無いだろうと思うので良いとして、この時点では電源ケーブルの配線が苦労しそうだな、とかなんとか考えていました。

最終的な完成図
グロメット部は半分だけ空いていれば問題なし

しかし、いざ配線してみると、電源ケーブルがフラットタイプだったのも良かったのか、グロメットが半分露出の状態で難なく配線が行えました。VGA向けの配線がちょっと気になる所ではありますが、ガラスケースではないソリッドタイプなのと、冷却系に影響が出るほどではなかったのでちょっとだけ妥協。これよりも綺麗に配線するとなると、延長のスリーブケーブルでまとめるくらいしか思いつかない事や、そもそも延長させた分のケーブルをまとめておくスペースも考えなくてはならない事もあって、とりあえず甘んじる事に。もう少し見栄えが良くなるような方法はお悩み中です。

また、今回はSATA系のドライブを搭載していない為、電源の他にSATAの通信ケーブルも無し。位置関係的に接続があっても表からは目立たない感じになりそうですが、ケーブルは少なければ少ないだけ正義です。

ケース右側面、裏配線スペース
電源ユニット部

裏配線スペースに関しても、まぁまぁそれなりにしっかり出来たかなと。このケースに搭載されているケーブルレールは、基本的にラウンドケーブルを前提とした作りになっており、フラットケーブルを通すことは出来なかったので、ケース側のフロントヘッダ用やピンヘッダ用のケーブルをレールにまとめて固定、電源ケーブル類はその横に流し、ケーブル同士を重ねるようにして固定。EPS12V用の8ピンケーブルが空中配線になっている以外は、このクラスの電源ユニット向けとしてはかなり頑張ったほうです。一方で電源ユニット(PSU)が収められているスペースはまだ少し空きがありました。このスペースを最大限に使ってあげれば、延長のスリーブケーブルを使うことが出来る可能性もあるかもしれません。フルタワーケースだけあって、1200W級のデカいPSUでも難なく収まってくれています。

写真再掲:水冷ホースのアングルが厳しい

一方で悩んだのが、簡易水冷クーラーのホース取り回し。ヘッド側でホースにアングルを付ける事は出来るのですが、いかんせんホース自体が固く、自由度もかなり低いので、かなりギリギリな取り回しになりました。フルタワーのケースに載せるにはホースそのものの長さもちょっと足りない感じがあります。安価なキットを使った弊害といえなくも無いですが、他の水冷載せたときどうだったかなぁ的な感じにもなっています。ホースや各ジョイント部に過剰なテンションはかかっていないので問題なく使用可能ですが、これはなんとかしたいなと思う所。ちなみに改めて確認した所、ごくわずかではありますがすぐ隣のメモリモジュールにL字アングルが接触している様子。水冷キットの交換……ってこれ、今回買ったばかりなんですが……。

組み立て部分に関してはこんな感じで、写真の枚数が少ないのは組み立て難易度が低かった事にも起因しています。そのくらいには楽に組み立てられました。ちなみにM.2 SSDに関しては、PCIe5.0スロット(VGA上段)はヒートシンクもSSD固定もツールレス、それ以外のスロット(メモリ右側、及びVGA下側)については、ヒートシンクはドライバーで外す必要がありますが、SSDの固定は同様にツールレスです。無印Taichiと比べてギミック系がオミットされている本製品ですが、最低限の機能は載っています。強いて言えばVGA脱着が楽になるギミック(無印Taichiではスライドロック)があれば良かったなと。SSD増設の時にVGAを外す必要がありますが、このラッチが固いのなんの。

BIOSの罠を切り抜けて、なんとか安定稼働

全項目しっかり識別

組み立ても完了し、さぁいざ火入れ! と意気揚々と電源ON。とりあえず起動する事を確認してから、memtest86でメモリの初回スキャンを実施しましたが、特にエラーは発生せず、無事に動作出来る事を確認。Windowsも入れ直して、一通り確認が済んだのでBIOS調整……からが地獄でした。ちょっとでも何かをいじるとあっさり沈黙。ボード上のエラーコード表示ディスプレイことDr.Debugで15番エラーがガンガン発生し、その都度Flashback機能(未起動状態でのBIOSリカバリ機能)を使ってBIOSを書き戻して、また試して落ちて書き戻して……の繰り返しで2時間くらいは経っていたと思います。最終的に「初期BIOSで、かつ一切設定を触らない」事で動作が安定したので、ひとまずこの状態で運用する事に。ちなみに最新BIOSに書き換えても、一度は起動するものの、再起動をかけるとアウトというあまりにあんまりな状況で泣きそうでした。

ちなみに前編で追記した通り、その後ASRockサポートとのやりとりの結果、Dr.Debugによる15番表示は「メモリトレーニング」で、動作上は正常な表示であることを確認。15番が出てもしばらく待つと、次の段階へ進むようになりました。一度進んでしまえば、次以降は短時間、もしくは15番が表示されずに起動するという状態まで改善。BIOSも最新版に更新してあります。

ケースを閉じた状態ではありますが駆動音もそこそこ静かで、このへんはファンの仕様が有効に働いたものと思います。

ASRockおなじみのA-Tuning、ファン調整画面

ファンの回転数調整は「A-Tuning」内の「FAN-Tastic Tuning」。このツールはASRock製品ではすっかりおなじみ。それぞれのファンの最高/最低回転数を測定させてから、ファンタスティックなグラフでプロットするだけです。駆動音を下げたり、逆に常に強い冷却状態を保つなど、ユーザが自由に設定出来る機能は、他社含め昨今のPCではお約束になってきました。ちなみにこの前に使っていたMSIのM/B(MEG B550 Unify)では、ファンコントロールやデバイス状況、LED設定モードなどがすべて一つのユーティリティに統合されていたのですが、ASRockではLEDユーティリティが独立して別のものになっています。その関係で都合2つのツールを常設しておかなくてはならないのが残念な所。そろそろ一通り統合してくれても良いんじゃないかな、とは思います。

各種ベンチマークも無事に完走、マルチコアでは70%近い上昇率

VGAメインの3DMarkでも上昇を確認

そんなわけで、ドバッとベンチマークで比較したのが以下。検証環境もざっくりと紹介。

  • RyZen9 5900X環境

  • M/B:MSI MEG B550 Unify

  • メモリ:Crucial DDR4-3200 16GB*4 3200MHz動作

Cinebench2024:マルチコア・RyZen9 5900X
Cinebench2024:マルチコア・RyZen9 9950X

Cinebench2024でのマルチコアベンチの比較から。5900Xのスコアが少しブレ気味ではありますが、9950Xでおおよそ58%ほどのスコアアップ。世代が違うのはもちろん、そもそも物理コアもスレッド数も増えているので、順当といえるスコアでは無いでしょうか。もう少し爆発的に増えてくれても良かったかな、と思う所はありますが。

Cinebench2024:シングルコア・RyZen9 5900X
Cinebench2024:シングルコア・RyZen9 9950X

一方のシングルコアは、9950Xで70%ほど伸びました。何かとシングルコアが弱いと言われるRyZen系ですが、それにしてはかなりいい数字が出たんじゃないかと思います。参考データが古いデータなのはともかく、数値的にはかなり抜きん出たものになっています。

3DMark:Steel Nomad・RyZen9 5900X
3DMark:Steel Nomad・RyZen9 9950X

続いて3DMark。グラフは左側の指標が異なることに注意。VGAはどちらも同じ7900XTXなのでそう大きな変化が出るものでは無いのですが、それでもわずかながら違いが見られました。数値以上に気になるのがCPUクロックの安定感。5900Xではかなり波打ったクロック推移ですが、9950Xではほとんど変動が無いような推移です。5900Xが4.5~5GHz弱の所、9950Xでは5.7GHzでド安定。またグラフィックとしてのFPSも上昇が見られ、全体的にかなり安定した状態でハイスコアが出ている印象です。

3DMark:Time Spy Extreme・RyZen9 5900X
3DMark:Time Spy Extreme・RyZen9 9950X

Time Spyでの比較がこちら。いずれもスペックは充分の為、最も負荷の高いExtremeで計測しています。こちらでもやはりCPUクロックはかなり安定しており、全体的に高負荷での安定感が良好なのが見て取れます。CPUスコアが上がっている他、グラフィックスコアも多少なり上昇しており、PCIe5.0環境でバス側処理でヘッドルームが確保されている、といったところでしょうか。今後PCIe5.0にネイティブ対応したVGAが登場した際には、また少し違った結果が見えるかもしれません。

3DMark:CPU Profile・RyZen9 5900X
3DMark:CPU Profile・RyZen9 9950X

CPU性能をスレッドごとにテストする「CPU Profile」でも、やはり安定感はしっかりした感じ。5900Xでは一部のロード時にかなりのドロップが見られますが、9950Xではそこまで大きな波になっておらず、5.5GHz付近でしっかり安定してくれています。各テストで30%~70%のスコア上昇があり、スレッド数が減少してもしっかりした数値が出ています。実質2世代違いのCPUですが、その世代更新のぶんだけはしっかり性能も上がっており、それ故に安定性も向上しているようです。

PCIe4.0 M.2 SSDの計測値

最後にM.2 SSDに関して。こちらは5900Xの数値を取り忘れていたので9950Xのみとなりますが、SSD自体のカタログスペックとほぼ同等の速度が出ています。ちなみに装着スロットはPCIe5.0対応のスロットなのですが、5900X(PCIe4.0)でも同じような数値となっており、こちらに関してはバス幅の余裕というよりは、SSD側のスペックによるところが大きいようです。

実使用環境:低負荷作業時にも5.5GHzに届く勢い

5GHzは余裕で通過、低負荷動作でも5.5GHzちかく

最後にクロックの出方についてですが、いわゆる「箱出し」の状態でも、この記事を書いているまさにその時点で5.44GHz。上下に振れる部分はありますが、おおよそ5GHzは超えたところで安定しており、CPU温度も30℃台後半~45℃付近で安定。クロックが出ている割には発熱が抑え気味なのは、クーラーの性能だけではない、CPUの性格によるものも大きいものと思います。CPUとしての最大温度(Tjmax)は95℃とされており、BIOS設定が出来さえすれば、もう少し全体的な性能の底上げができそうな感じではあります。

一方でCPU内蔵のiGPUに関しては、そもそもの性能が低く、また負荷もほとんどかかっていない状態のため、温度的にも35℃~40℃付近で推移しています。ちなみに温度センサはCPUコアとiGPUで別らしく、iGPUの温度=CPUパッケージ温度、とはならないので注意が必要です。

いずれの場合でもなかなかドッシリとした安定感で、高クロックで回る割にはあまり苦労するような設定や運用は無さそうです。

総評:購入総額は考えたくないが、このくらいの性能があればしばらく戦えるスペック

フラッグシップで揃えた最大の問題は「おサイフ破壊」

さて、そんなわけで前後編に分けて、RyZen9000番台とハイエンドM/B環境に移行しましたよ、というお話でした。近くX3Dモデルが出るとはいえ、現時点でコンシューマ向けRyZenとしてはフラッグシップとなる9950XとX870Eで有力なTaichi Lite、メモリは色気出してLED付きになった32GB*4の計128GB環境となり、これだけのスペックがあれば暫くは戦えるようになりました。前世代のRyZen9 5900XとMSI MEG B550 Unifyの組み合わせでも都合3年の使用期間で、他のパーツは一部変えたもののCPU・M/B・メモリは継続使用していた事もあるので、最低でも同じ3年くらいは持って欲しいな、というのが正直な所。VGAのRadeon RX7900XTXにしても今回にしても、お財布が大爆発して失神してたような所もあるので、頑張ってほしいです。え、失神と爆発が逆順? さぁなんのことでしょう。

組み立て直後はBIOS周りで散々苦労したのですが、結果的には「ちょっと待てば立ち上がるからちょっと待ってろ」というアレで、実際にそれ以降は色々とBIOSをいじっても問題なく使えています。強いて言えばメモリについて、EXPOで適用出来るDDR5-6000での動作をさせようとすると起動しなくなる、という点が残念ですが、これはAMDの公式情報として、原則的にメモリモジュール4枚の環境ではDDR5-3600が上限となっているのが原因と思われます。前世代でも似たような状況があり、今回もEXPOやJEDECのプリセットによる高クロック適用は難しそうだと、このへんはちょっと諦め気味。速度より容量という選択なので、多少の妥協はやむを得ないところです。

そんなわけでハイスペックで堅牢な構成になった我が新PC、これからもしっかり安定して動作しておくれ、とお祈りしたところで締めとさせていただきとうございます。なにかあったら追記するか、別記事でとりあげますので、そちらもよろしくお願いします。