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芋煮ロックフェスティバル

「そういえば俺たちって、結構音楽好きなのにフェス行ったことないよな」

友人O、Mと地元の居酒屋で飲んでいるとき、そんなことを誰ともなく言い出した。

「そのアーティストに興味がないわけではなく、めちゃくちゃ好きなアーティストでも同じような曲に聞こえるアーティストはいる」という話題を一通り揉んだ後だったはずだ。
ミスチルは割とそれだわ、あとパプリカを除く米津玄師、YOASOBIは? みたいなファンによっては怒られそうな話をしていた覚えがある。

その日は雨が降っていた、季節は梅雨だったと思う。居酒屋は二階で、窓ガラスは雨に濡れていた。

時期的にも、知名度的にもちょうどよいフェスがあった。ロックインジャパンフェスティバルだ。恐らく日本で一番ポピュラーなフェスだろう。

二日間行ってみよう。どうせチケットは取れるだろう。

そんな酒のノリも相まって、その場でチケットを購入した。もう1人の友人を誘って4人で行こうとしていたけれど、結局3人しか予定が合わなかった。

結果として、2人は当選して俺だけ落ちた。公式リセールも駄目だった。一日も行けない。最悪だ。3人の中で俺だけが軽音楽部だったのに。

違法でチケットを取る気はなかったし、そもそもAIで顔認識をするとか、その辺のセキュリティはしっかりしていそうだった。
結局2人が楽しそうに宿の予約をしているLINEをただ眺める期間があった、当日は彼らのインスタの投稿を見て「いいね!」を押して悪態をつく、〇ソったれ。

そんなわけで、今年はライブの爆音をまったく浴びていなかった。今年はもうライブは無理かなーと思っていたが、とあるイベントに友人Oが誘ってくれた。

芋煮ロックフェスティバル。今年で7回目だそうだ。

とても満足した一日になったので、記録として残したいと思った。この記事は、簡単な日記にしようと思っている。

芋煮ロックフェスティバル

そもそもは去年だったはずだ。

そのときもO、Mと居酒屋にいた気がする。
友人Oが、明日は彼女に誘われて芋煮ロックフェスティバルとやらに行くと語っていた。

Oも芋煮ロックフェスティバルなるものが、どのようなものなのかわかっていなかったらしく、そこまで気乗りした様子はなかったのだが、若干二日酔いのまま行ったそのロックフェスに痛く感動したそうで、なんなら歌を聞いて泣いてしまったらしい。

アーティストは、かもめ児童合唱団である。

以上は公式リンク。歌唱動画も見られるようだ。

去年はO(を含むコミュニティ)が大好きな奥田民生のイージュー★ライダーを歌ってくれたそうで、それにいたく感動して涙を流したらしい。

そんな経緯で、このロックフェス、及びかもめ児童合唱団を俺たちにも見て欲しかったらしく「今年はみんなで行こう!」とラジオ人間Kと、友人Mが誘われたのである。

車で迎えに来てくれるとか若干ごたついたけれど、結局12時三崎口駅に直接集合となった。会場はそこからバスに20分ほど乗っていく、港近くの店で一緒にマグロを食べる予定だった。
しかしながら、深夜ラジオを聞いて当然のように遅刻をする俺。それでも20分遅れで着くはずで、連絡すると待ってくれるとのことだった。
申し訳ない気持ちはもちろんあるのだが、まあこのくらいの遅刻はお互い様な上、いつものことだった。

けれど更にやらかす。乗る電車を間違えるミス。なぜか逆方向の電車に乗っていて情けなくなって泣きそうになった。


「最悪」の連呼。語彙力も低下している。

飛行機乗れないフワちゃんみたいなことしている。

タイムテーブルはこの時点で頭に入ってはいなかったが、お目当てはかもめ児童合唱団だったので、とりあえず十六時に着けばよいみたいだった。

友人に謝罪と、バスに乗って先に会場に行くよう伝えた。友人たちはマグロを食べるとのことだった、会場は三崎口だから名物のマグロは自然な選択と言えるだろう。

自分はというと、何故かその日は別段マグロに魅力を感じていなかった。到着が遅れたのもあり、食事は彼らと別にすることにした。
ペットボトルのお茶と、おにぎりを食べながら聞くロックフェスというものに少しだけ憧れもあったのかもしれない。

三崎口駅に到着し、セブンイレブンでおにぎり二つ、緑茶、缶コーヒーを買う。三崎港方面へ向かうバス停にはそれなりに人がいた。恐らくフェスへ向かう人たちだろう。若い男女グループや、がっつりおっさんもいた。

公式サイトを覗くと、三崎港駅と三崎東岡駅の二つが最寄り駅として案内されていたけれど、三崎東岡駅行のバスの方が先に来たのでそれに乗ることにする。
起床してから腹に何も入れてなかったせいで、糖分が欲しかったのか、いつの間にか缶コーヒーを飲んでいて気持ち悪くなった。
胃に何も入れてない状態でコーヒーは止めた方がいいと毎回思うのに、毎回やる学ばなさ。

三崎東岡駅からは公式サイトによると会場まで徒歩五分とのことだった。
どうせ集合には遅れていたし、友人らは店に入って食事を摂っている最中のようなので、ゆっくり歩くことにした。

終点に到着。
交通費の払い方を間違えるオバサン、後ろ乗りは初めてか?
席に座って眠っているおっちゃんがバスに残っていたので運転手に伝えておいて、港の方へ歩き出す。

これが意外と楽しかった。久しぶりに寂れた古い街というのを歩いた気がする。市街地の方に出てくると自販機があった。


取り出し口にも空き缶がある荒れっぷり

この時代にこんなぶっ壊れ方をして放置されている自動販売機があるのだろうか。人類が絶滅したディストピア系とかでしか見たことがない。

他にも山の中にある家に隣接している小さな公園とかがあって、それに子供の気配がまったくないのがまたよかった。
こんなところでのどかに暮らしていくのも悪くないなあ、とかそんなことを考えて、現実が一時的にどうでもよくなる。

友人がご飯を食べている店の近くまで来ると、もう海は目の前だった。海は見えなかったけれど、微かに潮風の臭いがした。

到着した旨を連絡し、店の前で待つ。コーヒーの空き缶を近くのゴミ箱に捨てて店に戻ると、出てきたのは友人Oだった。そしてその奥さん。続いて出てきた友人Mとその彼女。
顔は見知っているので「あら、久しぶり」みたいな会話をしつつ、ここで「あ、今日はそういう会なのね」と知る。

事前に友人OとMが来ることは知っていたけれど、恋仲が来るとは聞いてなかった。俺だけ単身かい。
でもよく考えたらOの奥さんが来るのは自然だった、だって去年Oを誘ったの奥さんだもん。

電車を間違えたことをいじられ「迷子ちゃん来たよー」とか言われて恥ずかしかったけれど、もうしょうがなかった。
「絶対ビョ〇キでーす」とおちゃらけて見せる。生きづらいけど心は少し軽くなるからフワちゃんマインドは結構大事だ。

そんなわけで5人になった。会場はすぐそこだったので歩いていく、交わしたのは本当に雑談だった。
「あ、カバン変わったの~?」と友人Mの彼女に聞かれた。使い古してぼろ雑巾みたいなカバンをしばらく使っていたから変わったことに気が付かれたのだと思う。買ったのは一か月くらい前だったと思う、カバンを変えたことに気が付かれる頻度くらいには、顔を合わせている。
そういえばカバンについて「いっぱい入りそうでいいね」みたいなこと女性陣に言われたけど、モテる人って荷物少ないって言うよね。そういうことですか?

そんな感じで今日のアーティストについてとか、どうでもいい会話をしながら歩くのだけれど、釣りが好きな友人O、Mの二人は海があれば覗き込んでしまう習性の持ち主で、会場前のコの字型の港を、海に沿うように歩いては覗き込み、魚を見ては「○○だ!」と魚の名前を言い合って歩みが進まない。

釣り竿持って来ればよかったと友人が漏らしていたけれど、どこにしまう気なんだろう。それはもうポケモンの世界観だ。

でも自分も生き物を見るのは嫌いじゃない。たしかに魚はいっぱいいた。そんな感じでゆっくり歩いてたらOの奥さんが四人を置いて会場へ先に歩いて行ってしまう。

天高く馬肥ゆる秋。気持ちの良い秋晴れで、最近気温は落ち着いてきたと思っていたけれど、その日は夏をちょっと思い出したみたいに暑かった。
奥さんの行動は熱さを避けるため屋根があるところへ向かう自然な行動だった。多分、一般の人は海や魚にそんなに興味がない。

会場はコの字の一画目、書き始めの部分にあった。入り口にタイムテーブルが置いてある。


会場入口にて

既に出演者は数組出番を終えていたと思う。演奏の音が会場に着く前から聞こえていたけれど、到着した頃にちょうど終わった。時刻は十四時前くらいだったと思う。

ちょっとした産地販売施設らしきものに隣接してできた四角形の砂利でできたスペースがフェス会場だった。

入場料はなんと無料なので、ステージを鑑賞するだけなら払わなくても良い。
ただ経営が難しいらしく2000円の寄付を募っている。だったら最初から入場料取ってやればいいのにとは思うけれど、フェスの信念とか、集金のシステムとか作るのも大変なのだろうと思う、知らんけど。

簡素な入場門で検温を済ませ、これまた手作りらしき箱に2000円を入れる。お返しにステッカーをもらった、記念にはなりそうだ。なお入場門と書いたが、実際抜け道はいたる所にあったのでどこからでも入れた。

芋煮……だろうか

ステージから見て右手、つまり下手に、スペースの区切りに沿うように出店が立ち並んでいる、ビールや芋煮などの軽食がここで購入できる。
中央部には4~6人くらいが座れる木造のファミリーテーブルと椅子が5、6脚あったと思う。
上手には販売施設二階に繋がっている階段があった、こちらの施設はお手洗いでお世話になる。アルコールも二階で少しだけ販売していた。クラフトビールが多かった。

ステージの目の前にはキャンプで使う、缶を手すりに置けるタイプのラウンジチェアが数脚並んでいた。
これはクラウドファンディングで10000円払うと座れる権利がもらえるらしい。椅子の前に防護柵とかそんなものはなく、実際その前に客は行き放題だったけれど、そこはマナーに任せられているのだろう。
もしかしたら後述するかもしれないが、そういうマナーを破ってしまっている人もいたはいた。

日が高く、昼からビール日和だ。出店でベトナムビールを購入、絶対使えないと思っていたのにペイペイが使えて驚いた。
芋煮ロックとのことで、芋煮も売っているのだが、玉こんにゃくが好きなのでそっちを購入。芋煮は紙コップに入って500円、玉こんにゃくは串に通されてある。4個で300円だ。

乾杯をして、5人で昼から酒が飲める幸せをかみしめる。
友人Oはシロップで真っ赤なかき氷も買っていた。少し分けてもらったがこの暑さにはよく効いて、めちゃくちゃ美味かった。そういえば今年の夏はかき氷すら食べてなかったな。

それにしても暑すぎる、日が高い。女性陣は日傘の下に隠れていた。

こちらはこちらで暑さにやられ食欲がなかったのだけれど、腹に何か入れないと気持ち悪くなりそうなのも事実だったので、ビールと並行しておにぎりを食べた。ツナマヨうまい、たらこは海苔なかったけどどういうことかね。

玉こんにゃくも美味かった。
Mの彼女は玉こんにゃくを食べたことがなかったらしく購入していて「美味しい」と満足していたみたいだけど、風にあおられて一個地面に落として砂利まみれにしてた。切ない。そのあとがM洗って食べてたっけ?

お目当てのかもめ児童合唱団までは時間があった。それまで2バンド見たけれど、ご飯を食べつつだったり、散策したりで詳細は覚えていないが、印象に残ったことを簡単に。

【うみのて】

上手にいたギターの人の立ち姿が決まってた。ギターボーカルは毎年出ている名物っぽい人らしい。フェスの苦しい内情を冗談半分もありつつバンバン喋っていくMCは面白かったし、応援しようという気持ちになった。

【Small Circle of Friends】

まさかの男女ヒップホップユニットだった、こう言っちゃなんだがビジュアルからはあまり想像できなかった。
見た限り、サンプラーで曲を流したり、ディレイやコーラスのエフェクトも手元操作で入れてたと思うんだけど、それが巧妙だった気がする。
最初の曲はゴリゴリ昔の日本語ヒップホップだなあ、とは思ったけれど、ローファイの例のコード進行(よくわかってないけど)を織り交ぜた現代調な曲もあって格好良かった。若干レゲエも入るような感じ。女性の声がそう感じさせた。友人からも好評だった。

曲中ででたフレーズ「驚き桃の木山椒の木」が友人間で変なブームになる。Oが徒歩で会場に向かう時、魚を見ながら「マジアジ釣り好き」とか言い出して、韻踏む行為そのものが話題に挙がっていたせいかもしれない。
思い返せばクソ寒いし、何が面白いのかまったくわからない。

出番が変わるときは、基本的にニ十分くらいの転換なのだけれど、その間に流れる曲がぶっ刺さりまくる。
モーモールルギャバン、羊文学、きのこ帝国。選曲した人と友達になりたい感じだ。多分、同じ青春を生きた人だと思う。

そして、かもめ児童合唱団の出番がやってくる。
転換前にビールやら買ってきて鑑賞準備を万端にしたら、友人たちに「抜け駆けするな」みたいなことを言われる、こちとら完璧に仕上げたいんや。
スモールサークルフレンズの出番が終わったら、友人たちは三々五々散らばって各々の飲み物や食べ物を買いに走っていた。

児童にはそれぞれマイクが与えられるらしく、ステージ上には十本近くのマイクが置かれることになった。
マイクチェックが大変そうだった。イコライザとか弄り出すとキリがない、若干ハウったらミドル落とそうとか、ベース上げようとか、高校時代を思い出して懐かしいなあと思った。

皆は食料を買いに行っているし、マイクリハがしっかり行われているので、ここで機材を見る時間を得た。

スピーカーはJBLだった。
まったく詳しくないが、たしか中華メーカー(調べてみたらアメリカ発で韓国のサムスンに買収されていただけなのでしっかり間違い)で、コスパがよく、安い割にはかなり太い音が出るイメージがある。
ヘッドホンを身内が持っていたことがあって、正直好みでないくらい低音が出ていたのを覚えている。

じゃあモニターはと確認したけど、こっちもおそらくJBLだった。
モニターやスピーカー市場がどうだか知らないけれど、経営が大変なのは本当かもしれないと思わせた。二千円払ってよかった。お金に余裕があればもっと払ってもよかったかもしれない。

そのうち友人も戻ってきて、ステージの上手側、ほぼ最前列の位置を確保できた。それなりに有名らしく、心なしかお客さんが多くなった気がした。児童の親御さんとかが見ているのかもしれない。

長い長いマイクリハが終わり、児童たちがステージに上がる。
マイクがステージ上にごろごろ置かれていたのだが、案の定児童がマイクに躓いて、「ゴリ」っという音が響く。
責任者っぽいおじさんがちょっとだけ怒る。
会場は笑いが包んでいたとは思う。少なくとも友人や俺は笑ってた。

【かもめ児童合唱団】

最初の曲はリハも兼ねてオリジナル曲をやるそうだ。友人Oと奥さんが教えてくれた。
ゆっくりしたチャカチャカした軽いギターのイントロ、昭和歌謡みたいな曲調だと思ってボーっと歌詞を聴いていたら目が覚めるような驚きがそのまま声に出た。

K「インターネットブルース!?

俺の声を聞いて友人Oと奥さんが口角を上げてこちらを振り返った。「そうなの」と彼女は言った。
Oは「歌詞の意味絶対わかってないよな」と言っていた、「そんなことないだろ」と返したけれど、普通に幼稚園児もいるんじゃわからないのが大半だなと思い直した。

誰が喜ぶ他人の飯
遠い異国の悲しみをリアルタイムで眺めては胸を痛めて涙する
ご飯が出来たとメール来る
なんと便利な世の中よ
https://www.uta-net.com/song/200939/

これを「皮肉めいた歌詞」と捉えるか「便利になった世界で嬉しい!」と捉えるかどうかはその時代に生まれた人しかわからないかもしれない。
まあでも実際「誰が喜ぶ人の飯」というのには作詞者の明確な皮肉が伝わってくる。この歌詞を幼い子たちに歌わせるというのはなかなか強い意志が入っているなあと思う。
歌っている子どもたちは後者の意味でとらえる子もいるのではないだろうか、というのが所感だ。

とまあ、聞いてる大人は色々考えるんだけど、かもめ児童合唱団についてはそういうの考えなくてもよいのかもしれない。

えげつない歌詞を真っ直ぐ歌う彼ら彼女の歌声は、ひたすらにストレート。ハモリとか何もない、ステージに上がっている全員が主役になっている。上手いとか下手くそとか、そういう概念も正直ほとんどない。ただ子どもたちが大きな口を開けて、音楽に合わせて身体を揺らし、けんめいに歌うのである。

歌っている最中はリズムに合わせ常に体を揺らしている

「インッ、ターアッ、ネッッ、トブルウウース」と歌うところは手を上げて下げる簡単な振り付けがあった。それを真似するのに時間はかからなかった。

他の曲はカバーになるそうだ。知らない曲もあったのだが、ツイッターにセトリが上がっていた。なんと便利な世の中か。

(サウンドチェック)インターネットブルース
神様の宝石でできた島
インターネットブルース
海に向かって歌う歌
ずっと好きだった
どうしてこんなに悲しいんだろう
この街
Mother’s Song

すべて素晴らしかったけれど、結局はっきり覚えているのは「インターネットブルース」と「ずっと好きだった」だ。児童に同窓会という単語を歌わせるあたりが凄まじい。

Oは相変わらず感動していて、帰った後もかもめ児童合唱団のことをツイートしていた。なんというか友人Oは、ひたむきで邪気のない歌唱に弱いのだと思う。

みんなが主旋律、みんなが主役のかもめ児童合唱団は、とにかく全員の主張が勝手に強くなる。
そのせいなのか、Oも奥さんも推しを見つけていた。なんなら去年に居た子がいない、という推しの卒業まで経験していた。
この夫婦はアイドルにそこまで興味はないと思っていたのだが、合唱団を見守る目は明確に推しだった。

推し、いつになったら自分にも現れるのか。

結構な満足度でかもめ児童合唱団のステージは終わった。綺麗な夕暮れをバックに退場する児童たち。子どもは夕方には家に帰らないといけない。

次のバンド「サニーデイ・サービス」がこのフェスの目玉の一つのようである、失礼ながら存じ上げていなかった。
そしてOの奥さんはこのバンドのファンだったらしい。出番前のギターボーカル曽我部さんにファンだと直接伝えていた。どこまで書いていいのかわからないが、出演者もちょくちょく客席に来るような会場だった。

彼女は邦ロックに造詣が深い人なので、サニーデイサービスもかなりマイナーなバンドなのかと思っていたがまったくそうではないらしい。別の機会で軽音で一緒だった友人に聞いたら、大学でコピーしたことあるよ、と言っていた。

ギターボーカルのソロ、曽我部恵一というアーティストに関しては「ギター」という曲を知っていた。ただ、この曲とこのバンドはまるで結び付かなかった。
ライブ中盤で曽我部という苗字を聞いてようやくつながったのである。

つまり、自分にとっては完全初見で迎えるバンドだった。
Oの奥さんは俺が軽音楽部だったことも知っており「K君好きだと思うよ」と言ってくれた。実際その通りだった。

【サニーデイ・サービス】

ギターの曽我部さんは無線のシールドを使用したかったみたいだけれど、調子が悪そうだった。ギターはちゃんと確認できなかったけどサブでホワイトファルコン使ってたかも、めっちゃ格好いい。
ベースの人がイケメン過ぎる。細くした福山雅治という感じ。

リハを終えて少し前倒しでライブを始めてくれて、追加で一曲多くやってくれたらしい。MCはほぼなかったが、海をバックにやりたいと言っていたのが印象に残っている、たしかに良い会場だった。
途中Mの彼女から「あっちに立ちたいと思います?」という冗談交じりの質問を受けて、半分本気で「思うわー!」と返した。

とにかくめちゃくちゃ格好いい。
メジャーセブンスコードを多用する感じは2000年代後半によく聞いたイメージがある。自分が聞き込んでいたBase Ball Bearがえげつないほど使ってたからそういうイメージがあるだけかもしれないけれど。
だから奥さんの言う通り、このバンドは凄く好みだった。お洒落なコードもあるけれど、ギラギラしている感じがいい、歌詞も青くていい。

だから自分はてっきり2000年代に活躍していたバンドだと思っていたのだが、後で聞けば90年代に活躍していたそうだ。よう古いバンドを見つけて来るな、と奥さんに飲み会で問うと、自分でもなぜ出会ったのか明確には覚えていないようだった。

そして、ライブ終了後の友人Mやその彼女の感想は「結構新しい曲だと思った」と言うのである、自分とは真逆だ。
実際、再結成をした後の曲が主だったそうだから、最近の曲だったのだろう。自分の音楽センスが古くなっているのを感じる。

ずっと圧巻のパフォーマンスだった。前述の通りライブの途中で曽我部さんの名前が繋がって、記憶の底から「ギター」を引っ張り上げてきたが、この曲とこのバンドはなかなか結びつかない。

10分くらいインストやるシーンもあった、思わず友人と「長―い(笑)」と言い合ってしまったが、それも格好よかった。後で聞けば名物らしい。

お客さんの数も段違いだ

酒が進んだせいか一度手洗いに退席もしたが、ずっと楽しめた。正直、このバンドを見るだけで来る価値があると思った。

これが無料は狂ってる。

帰り際、友人Oは「これ以上(このフェスが)見つからないで欲しい」と言っていたから、この記事は彼の意向には反しているかもしれない。
ただ、経営が難しいのは本当のことなのだと思うから、拡散することに罪はないと思う。

面白いフェスだった。
願わくば来年も開催されて、見に行けたら。

フェス後の日記

以下は完全にプライベートの日記だからフェスに関しては以上になる。楽しめるとしても身内だけだと思う。

るろ剣の主題歌、1/2を歌っていた川本真琴もやって来るみたいだったけど、各々の都合もありここで帰宅することにした。
サニーデイ・サービス終了後、アナウンスで隣接するトイレが閉まるみたいなことを言っていたけれど、残った人はどうしたんだろう。近くにファミマはあったけど。

ゴミ類を捨ててバス停へ。
ゴミ箱があった施設の入口が一部閉鎖され、少し手間取ったがちゃんと分類もして捨てられたのでこの辺は良心的だと思う、ゴミを持って帰るのは嫌だ。
そういえば、地面にゴミがほっぽり出されているのを見なかった気がする。その辺のマナーはよかったみたいだ。

バス停はもちろん混んでいたので、タクシーをアプリで呼ぼうとしたけれど、田舎過ぎて手配できず。それでもニ十分も待たないくらいで乗れたから良心的だ。
三崎口駅から出る電車もまったく混んではいなかった、フェスならもっと混むべきだとは思う。
いつか、このフェスの帰りが満員の電車になって、不快になりながら揺られるときが来るかもしれない。

自分は直帰しようと思っていたが、適当な駅で降りて、居酒屋で軽く飲む流れになった。

海鮮系の居酒屋に入り、二階に通される。
フェス会場でそこそこビールは飲んでいたのでハイボールを頼んだ、食べ物は刺身とか生ガキだったか、中トロがやたら美味かった覚えがある。途中で頼んだすだちハイボールが美味しかったので、そればっかり頼んだ。

交わした話は色々あったけれど、プライベートすぎるのでここには書かない。

店内にはなぜかショーアップナイターがかかっていて、結果的に優勝決定戦となった横浜vsヤクルトの試合を中継していた。
OとMは割と強めの横浜ファンだ。自分もたまにハマスタに行くこともあるくらいには、なんとなく横浜を応援している。

試合中継をラジオで聞くのは楽しい、打球音が聞こえた瞬間にOの背筋が伸びて、ラジオに耳を傾ける時間が続いた。

そのうち野球の話をしていたら、女性の店員が会話に入って来た。
この子がヤクルトファンだったみたいで、職権乱用でBGMをショーアップナイターにしていたらしい。しかも割とコアなファンだったみたいで、Oとちょっとだけ野球の話で盛り上がる。
俺がトイレに行ってる間にヤクルト優勝が決まり、壁の向こうから店員の「やったー!」という歓声が聞こえた。

帰り際もその女性に対応してもらい、「クライマックスシリーズで会いましょう」とかOは抜かしてたけど、九回裏ワンナウト満塁一点ビハインドで初球打ちダブルプレーで阪神を前に敗退するエンターテイナー横浜である。残念ながらその子との約束は果たせなかった。

軽く飲む予定が、酔っ払い過ぎたのと、主に俺の歌いたい欲が出ていたので、カラオケに少しだけ行くことになった。大学生みたいなことしている。そういえば、ウイルスが蔓延してからカラオケはしばらく行った記憶がない。

あとはバカ騒ぎだったので特筆することはない。

俺はフジファブリックとBaseBallBearを全力で歌った、カラオケボックスが一気に高校時代に帰っていた。サカナクションも歌ったか。
あとはかもめ児童合唱団の影響だろう、みんなで「ずっと好きだった」を歌っている動画が自分のケータイに残っていた。撮った記憶はあまりない。

乃木坂の曲を女性陣が歌ったんだか歌わせたんだか忘れたけど、そのときその場の男性陣で「可愛いー!」ってやってたのは楽しかった。けれど、冷静に思い返すとあんまりよくない気がしてきた。俺はそんなこと言ってよかったんか、俺友人に〇されるんちゃう?

UVERworldが個人的ハイライト。
Mの彼女が入れた覚えがある。友人だけで行くカラオケだと出なかったチョイスで懐かしかった。

自宅最寄り駅について、蒸し暑い夜を歩いているうちに非日常から現実に目覚め始める。
片手にはいつの間にかアイスボックスがあった、レモンサワーが入っている。氷のおかげで身体が冷えたのか、少し酔いが覚めたみたいだ。

ああ、憂鬱だ。

でも、芋煮ロックフェス楽しかった。

また来年見るために今日を生きよう、もうちょっと頑張ってみよう。

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