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鬼滅の刃とマシンガン

鬼滅の刃が面白くない。

TVアニメを見たのだが「面白くない」と思った。
もしかすると、コレから面白くなるのではないか?と思い、全話を頑張って見た。
だが、面白くない。
有識者から「遊廓遍からが傑作」と言うので、原作を2日間かけて読んだが面白くない。
だが、世間はアニメでも、映画でも大泣きしているらしい。
私は面白くない、と思っている。

理由を延々と考えたのだが、ようやく分かってきたのが
「鬼と戦うのに、タイマンじゃない」
と言う部分のような気がする。

主人公である竈門炭治郎が鬼とタイマン勝負をしたのは選別試験中だけであり、あとは鬼に対して
『1対3』
または
『1対4』
最終的には
『1対100』
とかになる。
「男の勝負はタイマンだろォォォ!」
と思うのである。

チーム・ワークとでも言うのだろうか。
だが、チーム・ワークと言うモノが日本社会の負であり、膿である事は電通で自殺した女性社員を見れば火を見るよりも明らかである。

そもそも、日本男児ともあろうも者が一匹を複数で殺すなんて、普通に考えれば
『リンチ』
『虐殺』
だからな。

古来、日本男児と言うのは高倉健が演じた『昭和残侠伝/唐獅子牡丹』を見れば分かるように多数に対して一人で戦いを挑むのが習わしである。

そんなチーム・ワークと言うなの『リンチ漫画』が何故、受けているのか分からない。

じゃあ、どうだったら面白かったのか?と思う。
鬼との対峙と言うのであれば『桃太郎』で事足りる。
あのアニメが『史上空前のヒット』になる理由が欲しい。

やはり、純文学路線であろう。

時代は大正時代である。
大正時代は平和な時代のようにも思えるが、第一次世界大戦が勃発しており日本も日英同盟のため、参戦している。
『鬼滅の刃』は刀一本で立ち回るが、時代は既に戦車と機関銃、空中戦の近代戦争の時代なのである。

そんなワケで竈門炭治郎や彼の仲間も徴兵されるのである。
「そんなワケで」と書いているが当時、徴兵制度は当然の義務なので仕方がない。


徴兵された竈門炭治郎はドイツ帝国の東アジアの最大の拠点『青島』に連れて行かれた。
そこで、イギリス兵と共にドイツ人を殺しまわるのである。

イギリス兵は里山育ちの竈門炭治郎にとって初めて見る外国人であり、当初は「リトル・ボーイ」等と呼ばれてバカにされ、時とし殴り合いの喧嘩に発展することもあったが(其の都度、軍曹から叱られる)、そんな事を繰り返しながらもイギリス兵も、この小さな日本の少年の活躍と、戦場での突破力を認めていくのである。

竈門炭治郎はイギリス兵から初めて『ジャズ』と『チェス』、そして多少の英会話を学び、竈門炭治郎はイギリス兵に『麻雀』と日本語を教えた。
「Hey,Mike.Do you know . Fellatio is called "shakuhachi" in Japan.」
(おい、マイク。君は知っているかい?。フェラチオは日本では『尺八』と言うんだ)
と言った事を教えて、戦場で焼けただれた兵士達は笑い転げた。

戦場で竈門炭治郎の耳元を通り過ぎるドイツ兵が放つベルグマンMP18の音と速度。

それは炭治郎が鬼と戦ってきた頃に比べれば決して速いワケではなかった。
しかし、日輪刀とは勝手が違う『有坂銃』には戸惑ったが、彼が会得した
『水の呼吸』
は有坂銃にも有効だった。

そして、順調に戦線を進め、邪魔するドイツ兵は水の呼吸:有坂銃、または銃刀で殺していった。
炭治郎にとって初めての異国。
だが、血の臭いは彼を離してくれなかった。

そして、10月31日。

『神尾の慎重作戦』により攻撃を強め、11月7日、ついに青島要塞を攻略した。
「これで終わった・・・」
息も絶えだえの炭治郎。
「・・・これで善逸や禰󠄀豆子の元に帰れる・・・」
そう思い、1週間以上、眠っていない炭治郎は漸く膝を地面に落とした。

「残酷だな。俺よりも残酷だ」

聞いた事がある声がする。
振り向くと、そこには『鬼舞辻󠄀無惨』が立っているのである。

「何故、お前がいる!」

「っふ。徴兵は国民の義務だからな。俺もお前もドイツ兵と戦っていた事に気が付かなかったのか?」

「クソ・・・日輪刀があれば・・・お前を・・・」

「お前は今日までに何人を殺した?」

「何を言っている!」

「お前が殺したドイツ兵は俺が殺した人間よりも多い・・・」

「・・・」

「俺は生きるために人を殺める。だが、お前は何だ?。彼等を殺す事でお前は何が得られた?」

「・・・」

「青島を焼け野原にして、得られたモノは何だ?。」

「そ・・・それは・・・」

「それは罪だ。俺は罪深いかも知れない。だが、今のお前と俺、どちらが罪深いと思うか?」

「・・・」

「答えられるはずもないだろう・・・。俺は・・・」

その時、生き残りのドイツ兵が打った機関銃(MG08重機関銃)が鬼舞辻󠄀無惨を直撃した。

心臓が7つある鬼舞辻󠄀無惨だが、MG8重機関銃には無力だった。
5つの脳、7つの心臓をMG8重機関銃は貫通し、大胆な内蔵破裂を起こした。

「お前たちにはとっては神にも等しい力を持つ俺だが・・・。近代戦争と言うのは・・・厄介だな・・・。お前たちは・・・俺達よりも残酷になってしまった・・・。お前たちの鬼は誰が殺す・・・?。俺は此処で死ぬ。だが、俺達よりも残酷で残虐な鬼を・・・お前はどうやって殺す・・・のか・・・?」

そして、鬼舞辻󠄀無惨は倒れる。
夜明けが来た。
鬼舞辻󠄀無惨は消えてしまった。

その時、竈門炭治郎は『本当の鬼』は鬼舞辻󠄀無惨ではなく、自分なのだと悟った。
青島開城規約書が交わされ、竈門炭治郎は漸く日本に戻る事が出来た。

産屋敷に向い、戦争が終わった事、そして鬼舞辻󠄀無惨はドイツ兵が打ったMG8重機関銃によって死んだ事を告げた。

だが、産屋敷耀哉は意外な事を言った。

「良かったね。竈門炭治郎君。鬼舞辻󠄀無惨はもう居ない。だけども、あと一匹だけ鬼がいるんだよ。それを始末して漸く君たちの任務が終わるのではないかね」

そう、「あと一匹の鬼」とは禰󠄀豆子の事だった。

禰󠄀豆子は産屋敷耀哉が預かっていた。
小型化出来るとは言え、軍が女性を連れて行くことを許さなかったからである。

久し振り会う禰󠄀豆子を抱きしめ、無事に帰国した事を告げる。

「生き残れたのは禰󠄀豆子がいたからだ。お前を守れるのは兄ちゃんだけだからな・・・!」

「うん」

「禰󠄀豆子、ワガママを言っても良いぞ。兄ちゃんが叶えてやる。待たせてしまったからな・・・」

「・・・雪が見たい・・・」

雪なんて幼い頃から何度も見ているではないか、と思うが禰󠄀豆子は鬼になってから記憶が止まっている。
其のため、鬼になってからの禰󠄀豆子は雪を見たことがないのである。

「わかった・・・。」

竈門炭治郎は禰󠄀豆子を連れて鳥取砂丘に向かうのである。
禰󠄀豆子にとっても初めての列車の旅である。

鳥取砂丘に到着すると、広い海がある。

竈門炭治郎にとっても、禰󠄀豆子とっても初めての海である。

禰󠄀豆子はハシャイだ。
下駄を脱いで海に入った。

海で遊ぶ禰󠄀豆子を眺めていると今年の初雪が振り始めた。

ぽつり・・ぽつり・・・。

日輪刀を抜き、禰󠄀豆子の背後に回った。

「禰󠄀豆子、お前にいつも苦労させてしまってゴメンな」

「うん」

「俺がもっとシッカリしていればな」

「うん」

「長男らしくないよな」

「うん」

「禰󠄀豆子、お前は難産だったんだよ。兄ちゃんもお前が産まれる時は立ち会ったんだぞ・・・って、覚えているワケがないよな」

「うん」

「やっと産まれた時は兄ちゃん、嬉しくてな」

「うん」

「俺があの日、もっと早くに帰っていれば、お前を鬼にせずに済んだのにな」

「うん」

「もう、鬼じゃなくても良いんだぞ」

「うん」

「兄ちゃんがいなくなっても、母ちゃんや父ちゃんもいるからな」

「うん」

「心配しなくても良いから」

「うん」

「ゴメンな。本当にゴメンな・・・」

竈門炭治郎は日輪刀を禰󠄀豆子の首元にズブリと貫いた。
そして、此れまでの鬼に対して行ったように首を落とした。

「ゴメン・・・ゴメンな・・・ゴメンな・・・禰󠄀豆子・・・俺がシッカリしていないから・・・」

雪降る空を仰ぎ見、号泣する竈門炭治郎。

その時、鬼舞辻󠄀無惨の言葉を思い出した。

「俺達よりも残酷で残虐な鬼を、お前はどうやって殺すのか?」

竈門炭治郎は鬼を始末していたのではない。
本当の鬼は自分であり、産屋敷耀哉だった。

鬼退治だと思って良い気になっていた。

だが、自分は鬼を超えてしまった。
鬼たちよりも醜い生き物になってしまった。

30年後、雲取山に古い家があった。

そこから木槌の音が響いていた。

人との関わりを一切、断ち、老いた竈門炭治郎が仏像を彫り続けていた。

何百対もの仏像は竈門炭治郎の心を癒やすのか。
その罪は償えるのか。

あ・・・・。長い。
流石に長い。
三人称で書くと説明文が何故か長文になる。
思えば夏目漱石の『三四郎』も三人称だが、やたらと長いんだよな。
この三人称って言う文体は文書が長くなる傾向があるんだろうか。

書いている俺ですら疲れてきたもんな。

取り敢えず、鬼滅の刃は面白くなかった。

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