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地は大人、図は子ども

避けては通れない問題ーデータで見る子どもの貧困ー

これまでの起業ものがたりで、書いていなかったテーマがある。

子どもの貧困の問題だ。

厚生労働省が昨年7月に公表した2019年国民生活基礎調査によれば、以下のとおりだ。

・中間的な所得の半分に満たない家庭で暮らす18歳未満の割合「子どもの貧困率」は、18年時点で13.5%
・前回2015年の13.9%から改善は見られず、依然子どもの7人に1人が貧困状態にある
・世帯類型別では、母子家庭など大人1人で子どもを育てる世帯の貧困率は48.1%に上る

子どもの貧困率は2000年以降13〜16%台で推移し、改善されていない。この調査は2018年時点のものであり、現在のコロナ禍ではさらに子どもたちの困窮は深刻なものになっているものと思われる。

特に母子家庭の子どもの貧困が深刻だ。日本では母子世帯の母親の9割近くが働いているが、平均収入は2018年調査で231万円。子どものいる世帯全体の平均約3分の1である。これには、男女の賃金格差や女性が非正規雇用で働く割合が多いためだそう。

言うまでもないが、こうした家計の格差は、教育格差につながり、将来的にその後の子どもたちの収入格差にも繋がっていく。

子どもの貧困率が全国平均の2倍の沖縄では、県独自の算出における2015年度の子どもの貧困率は29.9%、3人に1人が貧困状態であるとう結果が出ている。沖縄県の2019年度の高校生調査では、困窮世帯の49%の生徒がアルバイト経験があり、保護者の88%が経済的に塾に通わせられないと回答している(2020年7月24日琉球新報社説より)。

子どもの学習機会は、本来親がどのような経済状況や収入であれ、守られなければいけないが、それが成されていない現状を見ると、国や行政による貧困家庭の経済的支援が十分ではないということなのだろう。

2020年7月24日付け琉球新報の社説では、以下の点も指摘している。

「日本の教育費に対する公費負担の低さ。経済協力開発機構(OECD)によると、2016年の国内総生産(GDP)に占める教育の公的支出の割合は、比較可能な35カ国中最下位。」
「教育支出の多くを家計で負担しているため、親の経済状況によって子どもの学びが左右されてしまう。」

国は当てにならない。多分、変わるのに数十年単位で時間がかかる。そんなの舞ってられない。大人が子どもを支え守る仕組みを、ビジネスで作れないだろうか。


資本主義原理の中で、どうやって社会問題を解決するか

私は、株式会社を立ち上げる。資本主義のルールの中で営利を求め、企業活動をしていく上で、最も大切なのはファイナンスを回すこと。

教育事業をする上での収入源は親からの受講料収入だ。月謝をいくらに設定して、何人の受講者がくれば利益が出るか。会社として年間いくらの売上がほしいか。年間売上が少ない金額なら、わざわざ法人化する必要もなく、個人事業主としてやればいい。でも、企業や自治体にも営業をかけていきたい。より多くの子どもたちにコドモタイムの学びとの接点を持ってもらうためにも、会社を大きくしたい。なら個人事業主では難しい。株式会社として数年単位で収支計画を立てる上で、収入源の柱である受講料収入の価格をいくらにしたらいいのか、他にも事業を増やした方がいいのか、悩みは尽きなかった

「受講料」というキーワードが出てくると、途端にビジネス臭くなる。子ども相手に儲けるのか?とジレンマも感じる。ビジネスをやるんだけど、でも、私自身はお金持ちになりたいとか、社長として成功してちやほやされたいとか、すごいねーって言われたいとか、全く思っていない。本当に、そういうのはどうでもいい(それは、1番にはそう思える家計の経済的基盤をモーレツサラリーマンとしてあくせく働く夫が作ってくれているからで、そのことについては本当に感謝している)。

株式会社コドモタイムが掲げる理念や社会が実現出来たら良い。ビジネスはあくまでその手段だ。とにかく、目指すgoalのためにお金を稼いで回していきたい。

受講料を払える子どもたちだけの学び場ではなく、どんな境遇にあろうと、立場にあろうと、コドモタイムの学びに興味を持った子どもや親が気軽に門戸をたたける場に出来ないだろうか。

この問いを、スーパーに買い物をしに行ったり、家事をしたり、お風呂に入ったり、息子と一緒にレゴをしたり、息子の寝かしつけをしたりしながら、日常の中で、1年間ずっと考え続けてきた。でもなかなか思いつかなかった。

ビジネスプランを考えては、多くの経営者や専門家に見せて意見をもらい、メタクソに言われたり、とにかく私の事業に金の匂いがするかどうか選別されたり、頑張れと背中を押されたり、様々だった。でも、良い案は結局思いつかない。


覚悟がなかった自分に気づく

子どもが入院してから社会復帰を目指して歩み始めた起業家への道。事業にかかる多くの費用、関わる人の多さ、会社や事業の仕組を1から作っていく大変さ、あらゆる選択肢の中から何を選ぶのか自分で決めなければいけない厳しさ、事業実現のために事業に共感してくれる協力者を探すことの困難。

そういうものが重なって、何度も逃げ出したくなった。子育てしながら家庭という安心感のある傘の下で、出来る範囲で在宅で仕事をする道もあるし、どこかの組織で働く道もあるのに、どうしてそれより困難な起業家を目指すのか。自分がこれから背負うリスクや責任の大きさを想像すると、眠れなくなり、不眠にもなった。

でも、やるって決めたんだから。私は、息子の健康や、もっと言えば子どもの命がこぼれてしまうかもしれない危機を経験して、息子以外のそうした境遇に置かれている子どもたちに出会って、現場を見た。その時、「子どものために何かしたい。何かしなければ。」と使命のようなものを勝手に感じて、絶対やろうと決めた。

結局この事業をやるのは私であって、責任を取るのも私であって。やるって覚悟を決めないと、この先進まない。そうやっと気づいたのが去年の年末くらい。

覚悟を決めたら、他者の意見に翻弄されず、実現したいことを実現出来る仕組みを作ろう。経済的困難にある子どもたちも、コドモタイムの学びを受けられる機会を作る仕組みを作ろう。それを、事業の拡大が出来ないNPOとか公的団体でやるのではなく、株式会社として、持続可能にお金を回して、子どもの事業を実現するための事業を考えてみよう。

子どものための事業を分子(地の上に書かれる図)において、分母となる事業(子どもを支える大人に関する事業=地)をどうするか。どうお金を集めるか。無謀な挑戦かもしれないけど、実現出来そうな気がするのはなんでだろう。

起業ものがたり、今日はここまで。

つづく。

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