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(お茶入ったよ)のひとこと

こどものねぐせです。こんにちは。

たくさんの人に好かれている人の話をするのは、照れくさい。けれどハタチちょっとすぎの若かった頃の話をしようと思う。まず一冊の本のこと。ぼくが星野道夫さんのことを詳しく知ったのは、SWICHという雑誌が、最初だった。若かったあの頃。どこで買ったのかは、覚えていないが、大きめの書店だったのだろう。

読んでいくうちに、その文と写真に惹かれて、1つ、また1つと買い足し読んでいった。特に好きなのが、「旅をする木」(文春文庫)という本。

読み切り型の本で

I は編集者に宛てた手紙で構成したもの、IIとIIIは雑誌「母の友」(福音館)に二年間連載したもの。(SWITCH 1997 vol.15 No.1 p57より)

アラスカにいる星野さんからの手紙のようなお話が、ぽつりぽつりと掲載されている。読んでいくうちに星野さんからの手紙を受け取ったような気になり、当時の仲の良かった人たち、新しく出会った人にも、「旅をする木」を(この本いいんだ、ちょっと読んでみてよ)と薦めたり、譲ったりした。(この本は、星の王子さまとか、モモとかと同じくらい好きだということ)

星野道夫さんの写真の展覧会にも足を運んだこともあった。奥さんの直子さんにも、展覧会を見た感想などを何人かの方が伝えてらっしゃったので、一般人の自分も、せっかくなので緊張したが(ありがとうございます)とほんのひと声だけ、かけさせていただいた。

その星野さんの話の中で、印象的なエピソードがいくつもある。

親愛なるシシュマレフ村長様 この手紙を書きながら、あなたの御厚意を願っていますー(同誌 SWICH p42より 星野さんの手紙と写真のアルバム)

一通の手紙を慣れない英語で出すことから始まるアラスカでのお話。

noteには、自分にとって、どんなに少しずつでも、お話を聴いてみたいなという人たちが、何人かおられる。著名人でないその方々は、自分なりの個性や特徴を、その人なりに発揮している。だから、noteに書いていなくても、会わなくても、その人が元気ならそれでいい。その人が、興味を持っているものに、日常の中でわずかでもふれられているのなら。

情報量の多いこの時代、食べきれない情報摂取は、自分には向いていない。読むのも遅い。好きな雑誌の休刊もよく耳にする。とてもさびしい気持ちにもなる。でも、その方々も、きっとどこかで、また書いてくれるだろうと思っている。こちらも、たとえ書いてなくても元気ならそれでいい。

ぼくは相変わらず、星野さんの手紙のようなタイムラグのもたらすものも、いいと思っている。いますぐだけじゃないものも。

星の王子さま、モモ、…いくつかの本に書かれている(時間)について。

遠い自然と、近くの自然を星野さんのように、観ていられたら、どんなに泰然としていられるだろう。ぼくは、大人になってもまだ、ちいさいころのぼくと、星野さんに惹かれた頃のぼくを連れている。きっとそのぼくの部分で、短歌や掌編小説エッセイなどを描いているのだろう。

ただ自分の個性は、星野さんとはまた違うものだとは、だんだんと気づいている。友達からの手紙には、きみらしいね。いろんな人がそういうの書くけど、やっぱりきみだとすぐわかるよ、と言われる。(そうですか?)自分なりの書き方などのことも書いてみた。いわさきちひろさんのにじみのぼかし具合、サビニャックのポスターのユーモア、絵ごころ。ピタゴラなどの佐藤さん、ユーフラテスさん、和田誠さん、100%オレンジさん、ちょっとかわいい、ほっこり、ユーモア、ポケットサイズが、自分の適度なサイズかなと思っている。

ちょっとはずかしがりだけど、一匙分のユーモアとほっこりをいつも考えている。

ぼくはぼくで、きみはきみ、星野さんは星野さん。当たり前だけど、その人が、楽しそうに、うれしそうに、ときに熱心に話してるのが、とても好きだ。なんだか手書きのようだけど、

(お茶入ったよ)と誰かに言ったり、言われたり、そんな軽いことでいいのだと思う。そのお茶が、文だったり、イラストだったり、写真だったり、そこにある自然だったり、地球にあるいろんなこと、宇宙にあるいろんな事、はたまたとっても小さなこと、さまざまなことをさまざまな人が出会っている。(お茶入ったよ)と声をかけていただいても、年をとってきたから、お腹がいっぱいのこともたびたびある。そういう時は、ごめんねとやさしく言おう。やさしいきみだから、きっとこんどは、(お茶入れるけど、のむ?)と次は聴いてくれるだろう。ほんとごめんね。出会える人や時間は限られている。だから、星の王子さまのように、ちょっとずつ。

そんな(お茶が入ったよ)とか(お茶入れるけどのむ?)をぼくは、あと何回noteでするのだろう。そんなことをお正月明けの一月四日にぼんやりと思った。

では。



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