こぐま (掌編小説)


「ねぇ、もう絵ぇ〜描かへんのぉ〜?」

「あぁ、描かへん」

「なんで?」

「なんでも」

「あんたン、イラスト、ポップですきやったんやけどなぁ〜」

 床にどっかとおしりをおろして、あたまのうしろに向かって両手を伸ばし、うーんとひとつ、伸びをしながらソファにもたれる。

「ふーん、そっかぁ〜、もー描かへんのかぁ〜」

「そうや、描かへんのや」

「ほー」




ひと月後、彼女は、彼のイラストのTシャツに、チノパン、いつものスニーカー姿で演奏していた。

ボンボンボン、ダカダカダンと、音を鳴らしながら。

Tシャツのなかのイラストは、リズムにのって、踊っていた。



こぐまkodomo  bear




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