こぐま (掌編小説)
「ねぇ、もう絵ぇ〜描かへんのぉ〜?」
「あぁ、描かへん」
「なんで?」
「なんでも」
「あんたン、イラスト、ポップですきやったんやけどなぁ〜」
床にどっかとおしりをおろして、あたまのうしろに向かって両手を伸ばし、うーんとひとつ、伸びをしながらソファにもたれる。
「ふーん、そっかぁ〜、もー描かへんのかぁ〜」
「そうや、描かへんのや」
「ほー」
◯
ひと月後、彼女は、彼のイラストのTシャツに、チノパン、いつものスニーカー姿で演奏していた。
ボンボンボン、ダカダカダンと、音を鳴らしながら。
Tシャツのなかのイラストは、リズムにのって、踊っていた。
こぐま
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