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ドローンの世界を体系的に理解する

小寺・西田の金曜ランチビュッフェ 32号 (2015年4月24日発行)より

今週は別の話題を用意していたのだが、4月22日に首相官邸屋上で墜落したドローンが発見されたことで事情が変わった。ドローンについて、一般の方も興味を持たれたことかと思うので、ここで筆者が知ってる範囲でドローン事情をまとめてみたいと思う。

今回の墜落事件は、人的被害はなかったものの、機体上部に放射性物質が取り付けられていたことから、何らかの意図を持って首相官邸上空に侵入したとの見方が強まっている。

首相官邸屋上にドローン セシウム由来の放射線検出

カメラ付き、直径約50センチということから、このクラスでは一番普及しているDJIのPhantom2 Vision+ではないかと推測したが、実機の映像が出てきた。Phantom2を改造したものだったようだ。

首相官邸で発見のドローン写真入手 多くの部分が改造される

Vision+と普通のPhantom2の違いは、カメラまで付いているか、後付けするかである。映像を見る限り、カメラはGoProなので、Vision+ではなくPhantom2である。

首相官邸は衆議院第一議員会館と道路を挟んで隣にあり、内閣府庁舎にも近い。国会議事堂前の通りは警察官が常時警戒しているので、道路から飛ばしたとは考えにくい。一方で後ろには山王パークタワーやキャピトルホテル東急などの高いビルもあるので、そこから飛ばすことは難しくないように思える。

機体が黒く塗られていたことから考えると、ひとけのない夜間に日枝神社の境内か、都立日比谷高校のグラウンドから飛ばしたという線も考えられる。今上げた中で最も遠い日比谷高校グラウンドからも、直線距離で370mぐらいしかないので、電波の到達距離だけで考えれば、十分飛べる距離だ。もちろんその距離になると、目視での飛行は無理なので、カメラの映像をモニターしながらの飛行(FPV:First Person Viewing)で侵入したのだろう。

ただ不思議なのは、機体にプロペラガードが付いていることである。外しても重量は大して変わらないが、これがあると屋外では風の影響を受けやすいので、安定性を確保するためにはプロペラガードを外すのが普通である。実行したものはそのあたりの知識がなく、ごく最近自己流で操縦を始めた人物かもしれない。

以前、ホワイトハウスにドローンが墜落した事件があったが、これは政府職員が隣接するアパートから酔っ払って飛ばしたところ、ホワイトハウス敷地内に墜落したということがわかっている。

ドローンメーカーDJI、ホワイトハウスのドローン墜落事件で限定地域飛行禁止の措置

リンクの記事からもわかるように、現在はファームウェアにより、飛行禁止区域では離陸及び侵入ができないよう、制限がかけられることとなった。

DJIのfacebookページによれば、日本でも今回の事件を受けて、官邸付近と皇居付近は1km以内で離陸できないファームウェアが23日にリリースされた。

官邸から半径1kmというと、西側はだいたい赤坂・六本木あたり、南はテレビ東京からNHK放送博物館ぐらいまでとなる。東は日比谷公園のあたりまでだ。北側は1kmもない距離に皇居があるので、ほぼ全域飛行できないことになる。

ネットではドローンの安全性や保安上の懸念から、法的規制を求める声も上がっている。現時点でこの手の模型飛行機の扱いは、利用者のモラルに任せられていることもあり、法的規制は特にないのは事実である。今回の事件も、どういった法で裁かれるのかよくわからないが、公安が動いているということで、威力業務妨害、重ければテロ対策特別措置法あたりが適用されるのかもしれない。

その一方で、今回の事件に便乗して、安易にビューを稼ぐためのエントリーがネットに上げられている。

GWにフライアウェイ! Amazonで買える小型無人機ドローン5選

「買うなら今しかないッ!」などと煽るのは、唾棄すべき所行だ。5選と書いてあるが、チョイスにまったく一貫性がないところからしても、書き手がまったくドローンなど飛ばしたこともないのは明らかだ。おそらくAmazonのランキングを見て、説明文だけ読んで書いたのだろう。

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