『職場を腐らせる人たち』の目次を読んで思い出した目安箱の話
発売から半年以上が経ちましたが、『職場を腐らせる人たち』が好調です。
目次に思い当たる人はいませんか?
『職場を腐らせる人たち』では、これまで7000人以上を診察してきた精神科医である著者が「職場を腐らせる人たち」とはどんな人なのか? 有効な対処法はあるのか? を豊富な臨床例から明かしていきます。
まずは目次だけでもご覧ください。組織で働いている、または働いていた方であれば、目次を眺めるだけでも思うところがあるのではないでしょうか。
先輩Oから聞いた目安箱の話
私は第1章の事例5を見て、かつて勤めていた会社の先輩Oさんから聞いた話を思い出しました。
ある日、Oさんの職場では、江戸幕府8代将軍 徳川吉宗にならい、目安箱が社内に設置されました。目安箱のことは小学校の歴史の授業で習うはずなので皆さんご存じかと思います。そうです、町人や百姓の不満や要望を聞くために設置された投書箱です。吉宗が「庶民の声を直接聞いて幕府の運営にいかそう」としたように、Oさんが勤める会社の社長も社員の意見を広く聞いて会社運営にいかそうとしたのです。さらに良い意見を投書した社員には金一封5万円が約束されました。なんと太っ腹な社長なのでしょう!
早速Oさんは社内の組織改善案を目安箱に投書しました。後日、社内全体会議でOさんの案が社長に読み上げられ、社長からは「これはすばらしい!」「いいよこれは!」とお褒めの声が。Oさんは小さくガッズポーズ。しかし、そのあと社長から信じられないひとことが飛び出します。
「だけどこれ、俺も考えてた」
「すごくいい案だけど、まったく同じことを俺も考えてた」「やっぱりこれ、すごくいいよね」「だいぶ前から考えてたんだよ」などと繰り返し口にし、なんならその案は、社長が目安箱に自ら投書したかのようになったのです。Oさんに金一封は渡されず、その後は誰も目安箱に投書することはありませんでした。半年後、Oさんはその会社を退社しました。
あとから聞いたところによると、この社長は普段から社員が手柄をあげてもほめることはせず、何かとケチをつけていたそうです。「給料を上げる」「ボーナスを出す」とニンジンをぶらさげつつ、いざ社員が成果をあげるとケチをつけることが常態化していた。それだけが原因ではないでしょうが、社員も早期退職者が多く、いつも人材確保に苦労していたとか……。
というように『職場を腐らせる人たち』の目次をみるだけでも、自らの体験や誰かのエピソードを思い出して「あるある~」などと盛り上がったり、「自分のことかもしれない。気をつけよう」と自省される方が多いようです。
そのように気になった事例がありましたら、そこから読み始めていただくのもよし。最初から読むのもよし。また対処法については、第3章「腐る職場でどう生きるか?」に詳しいので是非こちらもお読みください!
ちなみに現在Oさんは中小企業診断士として独立し事業も順調。経営者向けのセミナーで社員の士気を下げる例として目安箱の話をすると、毎回会場はドッカンドッカンと笑いに包まれ、今ではOさんの鉄板ネタとなっているそうです。