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「JR成田エクスプレスという『路線』」について:駅メモ!の路線データの話③

2021年3月13日に行われるJRグループのダイヤ改正。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、各線区で運行本数の削減や走行距離の短縮など、全般的には負の側面が目立つダイヤ改正となりました。

冒頭に掲げた写真は、首都圏を走る特急列車「成田エクスプレス」高尾行きの方向幕です。2021年3月13日のダイヤ改正で、成田エクスプレスの高尾発着は消滅。東京都心から見て2駅手前にある、八王子発着へと変更となります。改正前日である3月12日をもって、この方向幕は二度と見られないものとなってしまいます。

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この成田エクスプレスという列車ですが、運行経路が少々複雑です。
片方の発着駅は、関東地方の空の玄関口の一つである成田空港駅なのですが、もう片方の発着駅はバラバラ。上記の画像のように、横浜方面へと足を伸ばして大船まで。ある列車は多摩地方を横断して高尾(2021年3月13日以降は八王子)まで。またある列車は、埼玉県へと北上して大宮まで。中には道中にある新宿や池袋止まりの列車も……。
同じ列車名でありながら、多種多様でカオスな行き先が連なるのが、成田エクスプレスという列車の特徴です。

日本全国の鉄道路線、駅を扱った位置情報ゲーム『ステーションメモリーズ!』(通称:駅メモ!)には、なぜか成田エクスプレスが路線という扱いで収録されています。

駅メモ!における成田エクスプレスの扱い

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ご覧の画像のように「JR成田エクスプレス」という名称で、単独の路線として駅メモ!に収録されています。
2021年3月12日現在、JR成田エクスプレスの駅として登録されているのは、駅リストの順に並べると下記の駅です。

大船、戸塚、横浜、武蔵小杉、大宮(埼玉)、池袋、高尾(東京)、八王子、立川、国分寺、三鷹、吉祥寺、新宿、渋谷、品川、東京、千葉、四街道、佐倉、成田、空港第2ビル(成田第2・第3ターミナル)、成田空港(成田第1ターミナル)

成田エクスプレスの停車駅をそのまま「JR成田エクスプレス」の駅として登録しています。
駅メモ!内の路線情報で「地図を路線を見る」を確認すると、三つ又に分岐する成田エクスプレスの運転経路の都合と、分岐駅を考慮せず一本の線で表記する仕様のためか、とてもカオスな線形を見ることができます。

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リストで指定された駅と駅の間を直線的に描いているため、大船駅から成田空港駅までの間のルートがとんでもないこととなっています。東京駅から千葉駅までを東京湾上をかすめるように進んでるのが面白いです。
では、この地図を東京・埼玉・神奈川県部分にクローズアップしてみましょう。

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武蔵小杉から大宮へ一直線に飛んだ後、池袋まで南下したら次は高尾まで一直線。高尾からは中央線の主要駅を経由して都心に進んでいるためか、それほど目立った動きはありませんが、それにしてもこの図はダイナミックです。路線の姿か、これが……。

こういったイレギュラーな駅の並びをしているためか、武蔵小杉駅にチェックインし、横須賀線なり東海道新幹線なりで品川駅へ移動した後に「JR成田エクスプレス」を指定してルートビューンを飛ばせば、「JR湘南新宿ライン」や「JR中央線(快速)」などに登録されている駅の一部がアクセスできてしまいます。あまり実用性はないですが。

どうしてイレギュラーは発生したんだろう?

駅メモ!において特急列車が路線扱いされている例は、成田エクスプレスを除いて他にありません。複数の路線をまたいで運転されるJR西日本の関空特急「はるか」を始めとして、いかなる事情があろうとも成田エクスプレス以外の特急列車は路線として扱われていません。JR東日本の駅構内の掲示物、列車内のアナウンスでは一つの路線として案内がされている「山形新幹線」「秋田新幹線」といったミニ新幹線ですら、駅メモ!には路線として収録されていないのです。

そもそも何故、一特急列車である「成田エクスプレス」が駅メモ!上では路線として扱われているのでしょうか。

駅メモ!や駅奪取(駅メモ!と同様にモバイルファクトリーが開発・運営している位置ゲーム)が使用している情報は「駅データ 無料ダウンロード サービス 『駅データ.jp』」のものをベースにしていると言われています。(言われていますとしているのは、ゲーム内で地理情報データの情報元はどこなのか名言されていないためです。ただ、収録路線の名称や区間などは概ね似通っています)
「駅データ.jp」の路線データは、メールアドレスを登録すれば無料でダウンロードすることができます。ということで、ダウンロードして「駅データ.jp」の路線データを確認してみました。

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「JR京葉線」や「JR成田線」などの路線に紛れて、しれっと「JR成田エクスプレス」の文字が確認できます。成田エクスプレスが駅メモ!上で単独の路線として扱われているのは、「駅データ.jp」の路線データをカスタマイズせずにそのまま取り込んでいるためと考えられます

なお、駅データ.jpの路線データをカスタマイズせずに使用している箇所があるため、駅メモ!上では「ん?」となる路線情報がチラホラとあります。例としては下記のものが挙げられます。

・運転系統が完全に分断されているのに、一つとして扱われている路線(例:一ノ関で完全に分断されている「JR東北本線(黒磯~利府・盛岡)」など ※)
・逆に運転系統が同一なのに、別物として扱われている路線(例:「JR東海道本線(浜松~岐阜)」と「JR東海道本線(岐阜~美濃赤坂・米原)」など)
・駅データ.jpでは「一般鉄道路線と接続する一部ケーブルカー、一般鉄道路線を保有する事業者の一部ケーブルカーは掲載しています。」という基準で収録されている大手私鉄直営のケーブルカーの路線(例:「京阪岩清水八幡宮参道ケーブル」など)
・山陰本線の仙崎支線まで同一路線として扱っている「JR美祢線」の存在

※ 2021/03/15追記
新白河や一ノ関で完全に分断されている」と記載してましたが、誤りでしたので修正しました。

最後に

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2015年3月14日のダイヤ改正では、これまで全列車が通過していた佐倉駅に一部の成田エクスプレスが停車することとなりました。これを受けて、2015年6月1日には「JR成田エクスプレス」の路線情報に「佐倉」の駅情報が追加されました。
冒頭でも述べましたが、2021年3月13日のダイヤ改正で成田エクスプレスの高尾発着は消滅します。駅メモ!の運営がこの情報を認識しているのであれば、成田エクスプレスの佐倉停車のときに倣って、2021年3月末を目処に「JR成田エクスプレス」の路線情報から「高尾(東京)」の駅情報が消えることになります。 ※

※ 2021/03/31追記
2021年3月のダイヤ改正で改称・廃止された駅情報の更新が行われましたが、「JR成田エクスプレス」の路線情報に変化はありませんでした。

琵琶湖線の特急「はるか」「びわこエクスプレス」が新たに南草津に停車しても、JR神戸線の特急「らくラクはりま」が新たに大久保に停車しても、駅メモ!上の路線データに変化はありません。そもそも成田エクスプレス以外の特急列車は路線として扱われていないので、変化しようがありません。
成田エクスプレスだけが特別に、ダイヤ改正で停車駅が変化することによって駅情報、路線情報に影響が及ぶのです。

一特急列車である成田エクスプレスを一つの路線として駅メモ!上で扱うことは、はたして適切なのでしょうか?


【2021年5月24日追記】「JR成田エクスプレス」のその後

2021年5月24日、駅メモ!の駅情報更新の予告が発表されました。内容ですが、「JR成田エクスプレス」から「高尾」の駅情報を削除するというものでした。

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駅情報の更新について「今月残念ながら廃駅になってしまった駅や駅名、路線が変更となった駅の情報修正」とありますが、成田エクスプレスの高尾発着の列車は2021年3月のダイヤ改正で消滅しています。2ヶ月遅れで駅メモ!に反映されたこととなります。「諸事情により、更新時期がずれる場合や開業日までにデータの追加を行わない場合もあります」との文言から、2ヶ月遅れとなった諸事情があったのかと思われます。

路線のコンプリートというものは、鉄道を舞台とした位置情報ゲームの根幹とも言える要素です。その路線情報の更新をおろそかにするということは、「一特急列車を一路線として扱うこと」とは別の方向性で不味いことであると思います。「JR成田エクスプレス」を路線の例外として残すとしても、放置せずにメンテナンスをしっかりとやってほしいです。


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