2016年公開のある映画によって邦画アクションは大きく変わり出した『RE:BORN』【001】

突然だが、今私は長期にわたる仕事で北緯20°東経154°というとんでもない海の上まで来てしまっている。是非私が居る場所がどんなものか海図で確認して見てほしい…いやそもそもこんな僻地の海図を閲覧できる環境の人は中々いないはずなので普通にgoogle mapで見て下さい。人工物など周りには何も無い、とにかく広大な海が茫漠と存在するのみの純度100パーセントのネイチャーである。
自然は美しいものであるが、通信環境は拙いものなので現代文明のエンタメにドップリ浸かっている(最近SNSで目にしたブランデー漬けのシフォンケーキの様なものだ)私には世間から徐々に取り残されていっている今の環境はちと歯痒いものである。YouTubeやオンラインゲームを貪れない寂しさを紛らわせる為に、こうして文章を弄っている訳である。

前置きが長くなってしまったが、今回はAmazonプライムビデオにダウンロードしてあり数日前に鑑賞し直したアクション映画『RE:BORN』の魅力をお伝えしていきたい。(この映画はあまりにも好きすぎてアマプラのアプリにDLしておくことが癖になっているのだ)

このアクション映画の数ある魅力の中でも私が特に惹かれる面は『恐ろしさ』だと思う。
映画は冒頭自衛隊(?)特殊作戦群の訓練シーンから始まるのだが、もうこのシーンが一本のホラー映画を観てしまった様な感覚になる程の濃度で『恐い』のだ。

•アビスウォーカー
訓練中の特殊作戦群はある1人の人物の襲撃によって壊滅してしまう、その人物こそがこの作品に『恐ろしさ』をもたらしている最大の立役者の1人稲川義貴先生演じるアビスウォーカーである!もう開幕からキレキレの技と恐ろしい風貌で特殊作戦群をエゲツナイ程に屠っていくのである。(もしこの記事を見られた方がいれば是非このオープニングのシーンだけでも確認してみて欲しい)
常人の眼では理解できないスピード、一切の無駄を排し研ぎ澄まされた技、突如として現れたアビスウォーカー(稲川先生)はあまりにも純粋過ぎる『力』の形を映画を観ている者の前でぶちかましていった…
初めてこのシーンを劇場で目撃した時は、見てはいけない物を見てしまったという思いと共にコレから目撃する事になる全く見た事の無い世界に胸がときめいたものである。
この稲川先生という人物、あらゆる意味で『本物』なのである(海外に武者修行行ってたり、明治神宮で自衛隊に指南してたり)、本当に純粋な『力』はコレほどまでに『怖い』と感じるのか…
映画公開時は稲川先生に関連する情報はあまり目にする事はできなかったが、RE:BORN公開から約8年経とうとしている今では先生の技と想いを感じる事のできる動画がYouTubeなどで観られるので是非検索してみて欲しい。

•敏朗
映画でアビスウォーカーの対となっている存在が坂口拓氏が演じる本作の主役である敏朗だ。
アビスが恐怖を振り撒く存在であったのに対して敏朗は正義の味方であるかというとそんな事は全く無い…
寧ろアビスと同じくらい危ない空気を漂わせている。
敏朗はかつてアビスウォーカーとバディを組み戦場で傭兵として闘っていたが、部隊を離反し日本の石川県で幼女サチちゃんと平和(?)な日常を送っている。
クエスチョンマークが付くのはこの2人どちらも戦場帰りで日本の日常にイマイチ溶け込めて無いのである。
サチちゃんは車に轢かれたワンちゃんを埋葬する為に遺体を抱えて街を練り歩いちゃうし、敏朗はコンビニ勤務中にトラウマ発動して殺気全開接客をサービスしてしまうのだ。そうなのだ、何を隠そう『RE:BORN』は皆大好きアクション映画のジャンルのひとつ『舐めてた奴が実はヤバい奴だった」映画なのだ。ジョン・ウィックやロバート・マッコールさんが大好きな人は絶対ハマると思う。
この映画でも物語は比較的オーソドックスに進んでいく、かつて離反した部隊の長であるファントム(大塚明夫!!)が敏朗を処刑する為に傭兵を送り込んだりサチちゃんを誘拐しちゃったりする。舐めてた奴が実はヤバい奴だった映画と書いたが、よく考えたら作中で敏朗を舐めてたキャラは全然いなかった。皆、『なんかコイツヤバそうな奴やな…』と思っていた奴が想像の100倍位の化物だったという感じである。

•ゼロレンジコンバット
全編通してアクションたっぷりで繰り広げられるRE:BORNであるがこの映画のアクションは純国産CQCともいえるゼロレンジコンバット(零距離戦闘術)をベースにして構成されている。稲川先生はゼロレンジのマスターインストラクターであり、この映画の戦術戦技アドバイザーである稲川先生がいなければこの映画がここまで異質な作品になる事は無かっただろう。
ハッキリいってこの映画で繰り広げられるアクションは今までの日本にあった魅せる殺陣という文化を多くの部分で否定し、破壊してしまったのでは無いかと思う。戦技なのだ。最短で処理し、やられた方も吹っ飛んだりせず、その場に沈む。本物の技術をギリギリカメラに映る範囲で撮影しているのだ。だがだからこそいいのだ。味気ないと思うだろうか?全くそんな事は無い。洗練された刃物の形状を眺め心ときめかす様にこの映画のアクションはそれだからこそ心惹かれるのだ。
極め付けはやはりクライマックスの敏朗とアビスの一騎討ちのシーンと言わざるを得ないだろう。アビスウォーカーの動きはもはや人間のそれを逸脱し、タクティカルライトで相手の視界を奪うローライトテクニックと言われる技術まで持ち出してくる始末である。
全力の殺意(愛)を持って襲い来るアビスに対し敏朗がどう闘うのか?闘いの結末もやはり敏朗のアビスへの理解(愛)が決め手になっていたのでは無いだろうかと感じている。
ちなみに監督の下村勇ニ氏はアクションの撮影中に稲川先生にもう一度同じシーンを撮影させてくれと頼んだら『こっちは本気で○しあいしてんだぞ!同じ事なんてできる訳ない!』と怒られた事もあるらしい…

尖りに尖った異色のアクション映画RE:BORNであったがこの作品以降アクション映画ってここまでやっていいんだ!という衝撃があったのだろうか海外の作品と比べても見劣りしない程の国産アクション映画がドンドン公開されていっている様な気がしてならない。(ちなみに『ベイビーわるきゅーれ』の伊澤さんも『RE:BORN』にチラッと出てきているので探してみて欲しい)

まだまだ語るべき所のあるRE:BORNだが百聞は一見に如かず。是非映画が多くの人に見られる事を祈りたい。ハマった人にはなんとかしてBlu-rayを手に入れてもらってオーディオコメンタリーを視聴してもらいたい。本編で明言されなかった設定がたくさん拾えるのだ…
終わり

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