公認会計士が教える投資家のための会計基準の教科書〜それは、資本主義の幕開けとなった特異点〜

こんにちは、公認会計士のなおです!

なおは「投資としての仮想通貨(www.daico-invest.com)」というブログを運営しています。

初めて3ヶ月くらいなのでまだまだ、ひよこみたいなブログですが、なおとしてはかなり楽しく運営してるところです〜!!

noteではブログとは少し違った切り口で文章を綴る感じにしたいな。

そこで、今回は公認会計士として、会計基準の説明をします。
会計基準なんていうマニアックな内容なものにニーズが存在するのかどうかは不明ですが、とはいえ、知っていれば投資に役立つだつことは間違いなしです。

プラス、サブタイトルとして、「それは、資本主義の幕開けとなった特異点」という厨二ぽいものにしてみました笑。
これは、なおがサブカルが大好き!っていうのももちろんあるのですが、実際に資本主義が大きく発展した理由の一つに簿記の発明があると言われているんですよね。

それくらい、簿記や会計っていうのは、資本主義と密接不可分な関係なんですよ。

でも、実際、株式投資をしている人の大半は会計基準のことを全く理解していないと思うんですよね。
そんな感じでも投資は成功することもあると思います。
というか、むしろ関係ないって説の方が有力かもしれない笑。

しかし、なおの周りの経営者で優秀な人は、会計については深い造詣を持っている方が多いです。
さらに機関投資家の方は会計に詳しい人が普通にいます。
こういう方は会計基準の細かいところまで知ってるわけではありませんが、会計に関する重要なところについては理解してるので、いろんな場面で応用が効くんですよね。

例えば、決算書を見て、売上高の金額を見て、それがそのままお金が会社に入ってきてると思っている人はいませんか?

あるいは、よく言われる、霞が関の埋蔵金問題。
決算書の純資産の部には利益剰余金がたくさんある。
これは企業がお金を溜め込んでいて、従業員に還元していないためだ!という議論ありますね。

いずれも会計の基本的な知見がないことに起因して起きてしまう典型的な勘違いの一種です。

こういう感じ議論をしているようでは、真に勝てる投資家になるのは難しいでしょう。

そこで少しでも皆さんのお力になることができれば!とおもい、執筆を始めました。

noteの読者層はどちらかといえば、個人投資家の人でしょうから、個人投資家にとって有益になりそうなことを提供できればと思いまして筆をとりました。

個人投資家の人が機関投資家に負けている点を強いてあげれば、この会計基準の知識を含めた決算書の見方や意味の抽出の仕方でしょう。

決算書からの意味の抽出については、また別稿でご紹介したいと思っていますのでここでは、会計基準の知識についてまとめていきます

なお、この教科書のターゲットとしては、投資家の人はもちろん、会計の専門家の人が読んでも気付きがあるようなものにしていきます。
壮大なものを作成する予定ですし、どんどん加筆していきますので、サクラダファミリア形式で、完成はいつになるのか的な感じでお読みいただければと思います笑!

それでは目次となります!!

注意!まだ執筆途上ですので、その点を理解していただけますようお願いします!!!!

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<目次>

1.会計基準より大事?
バリュエーションの公式PBR=PER
✖️ROEを紹介する!

(1)会計基準の目的をまずは説明しないと何も始まりませんな

(2)バリュエーション公式「PBR=PER✖️ROE」の意味

(3)割引現在価値(NPV)やディスカウントキャッシュフロー法はファイナンスだけでなく、会計でも理解しておく必要あり

(4)<応用>DCFと「PBR=PER✖️ROE」って同じことやん!

2.最初に理解すべきは、お金の出入り(キャッシュフロー)と利益の違い、利益とはお金の出入りを平準化したものであり、投資意思決定にとって有用な情報を提供するという観点から、将来のお金の出入りを予測するための情報である。

(1)お金の出入りと利益を一緒だと思っている人が実際のところ多いですよね。これを売上と減価償却費で説明しますね!

(2)会計の目的を達成するために、単純なお金の出入りから利益を求めるようになったんだよ。


3.投資の失敗を適切に決算書の表す減損会計

(1)経営者の投資が失敗したことを認める会計処理が減損会計である。

(2)ん??でも、さっきキャッシュフローを平準化することが現代会計の特徴だって言ってないか??→本当に知りたければ、応用論点までとべ!

4.会計と税金計算は異なることを意識せざるを得ない税効果会計

(1)税効果会計を理解するためには、2で言及したキャッシュフローと利益は異なり、利益はキャッシュフローを平準化したものであるという黄金ルールを適用することで丸わかり!

(2)<応用>税率差異分析(タックスプルーフ)の理解をしよう。そして、分析で困ったら、以下の調整項目をみて、分析に含まれているかどうかを確認しよう!

(3)<応用>正直な話、会計士でも理解していない人が多い連結税効果、とりわけ、「子会社の投資に係る税効果」の日本基準とIFRS、米国基準の比較をして見ます。まじ応用論点なので、会計の初心者は飛ばしてもらって結構です。

5.親子の貸し借りは全てなかったことになる連結財務諸表

(1)連結財務諸表の基本は親子の貸し借りは家族で見たら、チャラやんっていう発想

(2)連結と単体の会計処理はどんどん乖離しているってことを理解しよう!

6.会計マジックの真骨頂「のれん」にまつわるアレコレ

(1)のれんとは何か?
(2)のれんの会計処理の概論
(3)<応用>主観のれん、客観のれん

7.退職給付会計

(1)退職給付とは、従業員の退職金というめちゃめちゃ将来のキャッシュアウトフローをざっくりといまの価値に直したもの。
(2)<応用>補正計算と調整計算の違いと計算方法について理解しよう!!

【ガチ応用論点】

1.会計理論上の資本と財務諸表上の資本勘定は意味合いが異なる

2.減損会計を適用するための論拠って実は結構弱い??事後に負ののれんが生じていることが判明した際にその事実を認識するために減損損失を計上するという論拠を検討してみる!

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1.会計基準より大事?バリュエーションの公式PBR=PER✖️ROEを紹介する!


(1)会計基準の目的をまずは説明しないと何も始まりませんな


会計基準の教科書なのに、会計基準より大事なことがある!ということをまず冒頭で述べてしまいます笑。

なぜなら、会計にも目的が存在するからです。
会計それ自体よりも目的の方が重要なんですよね。

会計の目的。

それは、投資家の意思決定に有用な情報を提供すること、です。

企業が公表する決算書に記載された利益の金額を投資家が見ることで、投資家の投資ポジションに影響を与えることができるような利益になるようなルールとすることを考えています。
つまり、利益を意味あるものにしよう、ということが現代の会計では主要命題となっています。

もちろん、この目的以外にも会計の目的はあるでしょっていう指摘はあって、投資家の意思決定に有用な情報を提供すること以外に会計の目的を想定することを論じている学者の人はいます。

しかし、実際の決算書の機能としては投資家だけが恩恵を受けているということではありません。

銀行は決算書をベースにして、融資の姿勢を決めるでしょうし、事業会社が大きな取引を開始する際には、取引先の決算書をみて、潰れそうにない会社かどうかを確かめるといったこともあるでしょう。

このように決算書は投資家のためのみの利用を想定しているわけではありません。

しかし、投資家の意思決定に有用な情報を提供することを目的として、会計基準を作成し、それにしたがった決算書はそのほかのさまざまな目的を自動的に達成できることが多いのです。

投資家の意思決定に有用な情報を提供することができるような会計基準であれば、結果として、投資家以外の様々なステークホルダーの利用にも資するものになるだろうという考えが現在の会計基準の根本に横たわる基本原則となっています。

むろん、上記以外にもいろんなことをターゲットにして基準を作るよりも一つの目的のための基準であとした方が基準を策定しやすいという実務的な配慮もあるでしょう。

(2)バリュエーション公式PBR=PER✖️ROE

次に考えてみたいのはバリュエーションの基本構造です。

「PBR=PER✖️ROE」については知っていますか?

この公式は超重要です。

企業ファイナンスに関わる人は必ず知っておかなければなりません。

この公式は何を意味しているのか?

ズバリ。

「のれんがどのように創出されているのか」です。
あるいはのれんの創出を構成要素に分解するとどうなるのか?ということを示しています。

のれん。

のれんってなんだっけ?笑

ですよね〜〜。

のれんってたまに聞くけど、いまいちわからないですよ。。。っていう方は多いですね。

のれんは超過収益力を表すと言われることがあります。

少し専門的な説明の仕方ですよね。
この説明だとわかったようなわからないような・・。

超過収益力とは、市場の平均的な収益力を超える部分のことです。
これでもまたわかりづらいですよね。
具体例でいきましょう。

例えば、5000円でお店で売っているスコップを考えて見ましょう。
このスコップを買って仕事をすると、平均的には一日で8000円は稼ぐことができます。

しかし、サトシナカモト君はこのスコップで、仕事をすると、日給1万円稼ぐことができます。

他方で、ブテリンさんはこのスコップで、仕事をすると、日給5万円を稼ぐことができます。

この時に、サトシナカモト君は市場平均よりも2000円高く、ブテリンさんは4万2000円高く稼ぐことができています。

これが市場の平均的な収益力を超える部分になります。


PBRはPrice Book Ratioの略です。
単純にいえば、株価と純資産の割合のことです。
純資産とは会計上の概念であり、資産から負債を控除した残額として定義されています。

つまり帳簿上の企業価値と市場で評価されている企業価値との差分を割合として表現しているものがPBRとなります。

PERは何を意味しているのか??
これは、この会社のリスクとリターンを表しています。
どういうことでしょうか?


さらに、ROEは何を意味しているのか?
これは、足元の効率性です。
何に対する効率性かといえば、資本に対する利益の効率性です。
つまり、効率的に儲けているかどうか、ということです。

PBR=PER✖️ROEの式に戻りましょうか。

日本語に翻訳して見ます。

のれんの創出能力とは、会社のリスクとリターンに足元の効率性を乗じたものである。

この文章はとても重要で、めちゃめちゃ大事なものです。

のれんは超過収益力の現在価値です。

つまり、同業他社よりも多くキャッシュフローを生じることができるのであれば、それは会社に存在しているリスクとリターンと足元の効率性のいずれかあるいは両方が同業他社よりも優れているから、という予測が立つことになります。

2.最初に理解すべきは、お金の出入り(キャッシュフロー)と利益の違い、利益とはお金の出入りを平準化したものであり、投資意思決定にとって有用な情報を提供するという観点から、将来のお金の出入りを予測するための情報である。


2.(1)お金の出入りと利益を一緒だと思っている人が実際のところ多いですよね。これを売上と減価償却費で説明しますね!


こんなふうに考えてしまう人はとても多いと思います。
子供の頃にお小遣い帳をつけたことがある人はもしかしたら、特にその傾向があるかもしれません。

お金が入ってくると、売上だ!と勘違いしてしまうんですよね。

実際、これは半分は当たっているとも言えます。

お金が入ってこないとそもそも売上にはなりません。
なので、お金が入ってくること自体はとても重要です。

しかし、お金が入ってきたこと=売上計上できる!
という考えは会計にはありません

ちょっと難しく言えば、必要条件ではあるが、十分条件ではない
ということになりますね。
売上計上するためには、お金が入ってきたことは必要であるが、そのことのみで売上計上するためには十分ではない、のですね。

ここがロドスだ、ここで跳べ!

会計のロドスはまさにここにあります
これ以外の会計の論点は様々にありますが、このことに比べたら、無視してもらって構いません。

それくらいこのことは重要です。

とても重要なので、今度は費用の面から、お金の出入りと利益は違うことを説明しますね。

いわゆる、減価償却費です!

これも会計を語る上では切っても切れない関係にあるめっちゃ重要な概念です。
簿記の試験とかでは、さらっと計算の仕方とかが書いてあって、あまり重要性を感じなかったりするのですが、とても重要な概念になりますのできっちりと理解しましょう。

あと、そろそろ、お金の出入りではなくて、キャッシュフローと呼びますね。
会計に詳しい人はお金の出入りのことをキャッシュフローということが多いです。

減価償却費とは、大きな建物や機械設備などの固定資産を買った際に支払った支出をその時点で一気に費用とするのではなく固定資産が使える期間に応じて費用として認識する会計の技法です。

どういうことでしょうか?

減価償却費を本当に理解したいと思ったら、タイムリープしなければなりません笑

時は19世紀

産業革命の黎明期です。
それまでのマニュファクチュアと呼ばれる工場制手工業が発達している時代に、手でやる仕事より機械の方がよくね?っていう感じで、機械がどんどん作られました。

これにより生産効率は一気に上昇し、市場には商品が溢れるようになります。

この当時は生産設備を買った経営者は、キャッシュアウトフローが生じた時点で全額を費用として計上していたはずです。

それまでの会計では概ねキャッシュフローと損益の認識は一致していたからです。

しかし、これに疑問持つ人が現れました。

それは手工業の会社と生産設備を買った会社の企業比較をしている際に起こりました。

手工業の会社と生産設備を買った会社が今後どっちが成長するかを考える投資家にとっては、決算書の利益によって将来のキャッシュフローが予測できるものであってほしいわけです。

つまり、利益を多く計上する会社は将来キャッシュフローも大きいし、そうではない会社は将来キャッシュフローが小さい、利益がそんな関係性があるような指標となってほしいわけです。

それにもかかわらず、生産設備を購入した会社では、キャッシュアウトフローが生じるため、いきなりドーンっと費用が計上されることになるのです。

設備を購入すると赤字になる。

赤字になった会社の株式には良い価格はつかない。

これは何かがおかしいですよね。

ここで考えないといけないのは、利益はそもそも投資家の意思決定のためにあるのでした。
それにも関わらず大規模な設備投資が必要な時代になると、利益によって投資判断が歪められるようになってきてしまったのです。

そこで、当時の会計の専門家たちは工夫を施すことにしました。

これが減価償却費の誕生につながるのです。

減価償却費とはなんでしょうか?

Wikipedeiaによると減価償却費は以下のような説明が施されています。

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