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Twitter とイーロンとドナルドのめんどくさいお話し

note ってちょっとめんどくさいことも書いていいような感じがあるような気がするので、めんどくさいお話しをしようと思います。とはいえめんどくさいお話しの読み過ぎはあなたの健康を損ねるおそれがあります。ほどほどに。

火の車を買ったイーロン・マスク

イーロン・マスク氏による Twitter の買収は、この10月末に成立して、2022年最終四半期のインターネットの話題をさらった感じがあります。

話題の一つは、かつて永久凍結という処分を受けたドナルド・トランプ氏のアカウントを復活させるかどうかで、マ氏が投票を募ったことでした。結果としてト氏は凍結解除となったわけですが、マ氏にとってはおそらくドナルド・トランプという人物どうこうよりも、「こういうことを投票で決めてしまえば、審査のためにそんなに人を雇っておく必要もないでしょう」ということで、大量解雇に始まる事業の再構築が成功しうると示すところに力点があったのではないでしょうか。

実は火の車になりかけている Twitter にとって、いつどのようにやるかはともかく、人減らしは喫緊の課題であったのです。

迫る利上げ、借金の山

Twitter ってなんとなく優良企業だと思われているかもしれませんが、業績を見ると赤字になることが多く、有利子負債を増やし続けている状態であることが分かります。どうしてこんなことで事業を継続してこられたのかというと、リーマン・ショック以来の米国の金融緩和政策のおかげで、借金の借り換えのようなやりかたでつなげたということが大きいらしいです。まるで日本の国家財政みたいですが……。

こんな自転車操業のような経営は、昨年あたりからのインフレーションによって危うくなります。物価の騰貴を抑えるために中央銀行が利上げをすると、借金の利率も高くなってきます。ちゃんと利益を出さないと、利子の支払いで行き詰まることになりそうです。急激なインフレといっても借用証書がすぐ紙切れ同然になるというほどではないし、経済全体の先行きも怪しいので銀行の貸し出しも渋くなりそうな感じです。

利益といっても収入は簡単に増やせないので、固定費を減らせということになりますが、企業にとってその代表格は人件費です。ここで日本と米国では労働法制の設計思想がかなり違います。雇用を守って経営危機に陥るくらいなら、首切りをじゃんじゃんやって早く建て直したほうが良いというのが米国式なのだそうです。このあたりの感覚が異なるので、今般の大量解雇に対する日本での受け止め方は過剰であったかもしれません。

どうして赤字の山なのか

Twitter はミニブログの分野でほとんど市場を支配しているのに、どうしてそんなに利益が出にくいのかということになると、人を雇いすぎているのだということは以前から指摘されていたのではないかと思います。

ではなぜそんなに人手が必要だということになったのかというと、これは市場を支配してしまったからではないかと思うのです。市場を支配して利用者が非常に多くなったために、公共性も非常に高くなり、公共性の高い場を管理するために人を増やしていくと、まるで国営企業のように非効率化しやすい体質になったのです。

それで経営が成り立たなくなるなら、そもそも一私企業が担えないほど高い公共性を持ってしまったということになります。ここには市場の独占を防いで自由経済を保全するための国の仕組みが、情報技術産業に対してうまく機能していないという、めんどくさすぎる問題も絡んできます。

ミニブログは営利事業たりうるのか

しかしもう一つの問題として、そもそもミニブログという形態のサービスが、それ自体で採算が取れるものになりうるのかということもあるように思います。

ミニブログは一つのエントリの内容が非常に短かく断片的であるため、検索スコアが上がりにくく、検索からの流入によるページビューの獲得がしにくく、それによる広告収入も上がりにくいという趣旨の、ある「中の人」の見方をどこかで聞いた憶えがあります。

儲けになりにくいと理解されたために、かつていくつか出現したミニブログ系サービスがどんどん撤退していったのだとすると、Twitter は一人勝ちならぬ「一人負け」の状態にあるとも言えそうです。

実際に Twitter が取った収益化の方策は、利用者をどんどん囲いこんで、できるだけ Twitter を見る時間を長くさせ、それによって広告媒体としての価値を上げるというものです。利用者が Twitter に依存すればするほど良いわけです。

ところが広告向きの機能や仕組みを作ることと、利用者にとっての使いやすさとはどこかで矛盾します。この矛盾が大きくなっていくと、畢竟どのようにしてもサービス終了を避けられなくなるので、Twitter も継続しようとれば今とはかなり違う形になっていくのではないでしょうか。

なんにしても Twitter にせよ、LINE とか Facebook にしても、所詮は一私企業の営利事業の中に閉じたものに過ぎないので、あんまり公共の社会基盤みたいに扱ったり、依存するように使うのは良くないということです。

ちなみにわたしには Twitter の CEO などよりも世界征服のほうが向いているらしいです。


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