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相談室へのお誘い

~相談室主任 “猫のおばさん” ご挨拶~


 長いあいだ、心理カウンセリングの仕事に従事していますと、“人間関係の悩み”が実に多いことを痛感せざるを得ません。もちろん、「自分の性格について」の悩みも多いのですが、そこにも、「人間関係」が必ずといってよいほど絡んでいるように思えます。

 人間は、まったく一人では生きていけない生き物です。生きるためには、多かれ少なかれ他者とのふれあうことが必要です。「ふれあい」というと優しいイメージですが、実際には、すこし強くふれあうと「擦れあう」ことになります。
 考えてみてください。ひとつの箱に、さまざまな果物を詰め合わせて揺すぶってみると、どうなるでしょうか? 柔らかい〈桃〉は、すぐに傷つき、〈イガ栗〉は傷つけるばかりで、傷つくことはないでしょう。〈リンゴ〉は〈桃〉よりは固いでしょうが〈イガ栗〉に勝てるはずはありませんね。
 人間関係も、この果物詰め合わせ箱のようなものではないでしょうか……〈桃〉は傷つきやすいですが、ジューシーで美味しいですね。そんな“桃のようなこころ”を護るために、私たちはどうすればいいのか? これは人間にとって「永遠の課題」ではないかと思います。

 2020年6月【パワーハラスメント防止法】が成立し、パワハラへの関心が高まっています。パワハラのなかには、心理的なイジメ(モラルハラスメント)も含まれています。私のような心理カウンセラーがご相談を受けるのは、当然、この心理的イジメに相当する問題であるといえましょう。
 周知のように、心理的イジメは、人によって受け止め方、感じ方に差があるだけでなく、客観的な証拠や証人を確保することが容易ではないため、〈桃〉の苦しみが理解されるとは限らない面があります。そのため、明確な救済方法が確立せず、白黒がつかず曖昧なままに時が流れてしまうことになりがちです。
 周囲からは「そんな人間どうしのイジワルは昔からどこにでもあることだから、仕方のないことだ。傷つきたくなければ、桃の皮がもっと厚くなるしかないだろう」という論調がまかり通り、「パワハラ未満」として片づけられることが、実に多いのではないでしょうか? その間、被害者は「神経戦の戦場」で一人ぼっちで耐えて、やがて心身のバランスを崩していくことになりかねません。

 「たかがイジワル、されどイジワル」と言わざるを得ません。

 心理的イジメは、複雑で微妙な問題をはらんではいますが、今後、ハラスメントとしての市民権をきちんと獲得して、被害者が泣き寝入りをする必要が無くなることが急務です。
 ただ、私のようなカウンセラーは、被害者の声に耳を傾け、被害者に寄り添って支えることは出来ても、その問題じたいを解決する権限を持たないことも事実なのです。私に出来ることは、被害者の苦しみを少しでも多くの方々に知っていただき、この問題について真剣に考えて頂くためのささやかな一石を投じることだけです。
 そのような気持で、“木立の文庫”のこの新しい試みに参加させていただきました。どうか、多くのご相談、ご意見をお寄せください。


相談室の主任“猫のおばさん”(臨床心理士)より

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