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中川政七びいき:1

 奈良好きのはしくれとしては、奈良ゆかりのお品を、常に身のまわりに取り入れていたいもの。
 いま自室をざっと見ただけでも、革の財布に小物入れ、ふきん、お茶碗など、たくさんの「奈良生まれ」の道具が目に入ってくる。このなかには、中川政七商店のグッズも多く含まれている。

 中川政七商店の創業の地は猿沢池の近く、餅飯殿(もちいどの)商店街の裏路地にある。ここが再開発され、昨年の4月から旗艦店として新たにオープンした。飲食を含めた複合商業施設ではあるが、町家の並ぶ周囲の景観に配慮した、洗練された雰囲気でまとめられている。


 江戸中期、この場所で麻布を商う問屋として産声をあげた中川政七商店は、いまや生活雑貨全般を取り扱う全国規模の小売店となっている。とくに近年、首都圏では破竹の勢いで出店していて、主要な駅はほぼ制覇しつつある。ここにも、あそこにも。
 これほど見馴れた存在になってしまうと、奈良に頻繁に行く者としては、お土産の選択肢に影響するという実際問題も生じてしまう。
 もちろん、奈良には他にも魅力的なおみやげがあるのだが、奈良らしい抹香臭さを感じるものだとか、それに口に入るものには、相手によって好き嫌いがあったりもする。実用的でいまの感覚に合う、こじゃれたものを探そうと思うとき、政七は心強い味方なのだ。
 そのあたりは会社としてもよくわきまえていらっしゃるようで、店舗限定やご当地限定の商品を、抜け目なく用意してくれている。品質には間違いがないので、こういったものはお土産として選びやすい。

 そんな店舗限定品のなかに、自分用としていいなと思いながら、買いそびれたままになっているものがある。
 本店限定の、抹茶色をした「花ふきん」である。(つづく


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