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【わたしのドーナツ盤】私がモテてどうすんだ/私らしく生きてみたい

けっこう前に千鳥の大悟が、「お笑いコンテストの審査員はようできん」と語っていた。なぜなら「どれも『はい100点〜』としてしまう」からだ。


この話を自分はよく覚えていて、ことあるごとに「自分が『はい100点〜』とするものは何だろう」と考えるのが趣味のひとつになった

今回はそのひとつを紹介させてほしい。「女性アイドルが自分らしさについて歌った楽曲」である。

A-side: Girls2『私がモテてどうすんだ』

『私がモテてどうすんだ』は、EXILEでお馴染みのLDHから2019年にデビューしたGirls2(ガールズガールズ)の2ndシングルだ。

自身の観測範囲内では「無風」と言っていいぐらいな評判のこの楽曲は、一方でJ-POP愛好家にはたまらない魅力を持っている。


『私がモテてどうすんだ』は、突然かわいくなってモテた私が歌詞の主人公である。

彼女は本当はBLが好きなのだが、そんな「真実の私」は誰にも気づかれない。異性はみんな私のルックスに対して好意を持っている(映画を見ていないのでストーリーは違うかも。歌詞だけで判断しています)。

こう書くと「誰も本当の私を見てくれていない!」と悲観する歌なのかと思われるかもしれない。

しかしこの歌詞のポイントは、主人公が異性に口説かれながら「ゆっくり変わる」ことを自覚している点にある。


ではなぜ「妄想全開」で好いてくる異性たちに対して、嫌気でなく好意を感じる余裕があるのか。

それは「自分らしさ」に対するピュアな信頼感なのだと思う。言い換えれば、自分を何者か疑ったことがない。現代では批判めいて聞こえるかもしれないが、この軽さは私にとっては魅力的である。

そしてこの「軽さ」は、曲の歌詞だけでなく、Girls2自身からも伝わってくる。「アイドル戦国時代」なんて言われる令和の時代において、これはオリジナリティの部類に入るだろう。


「恋も愛もくだらないわ」と歌いきってしまうシンプルな混乱と爽快感。そして「何レベル分けして変えてんの?」という、一切意味のつかめないフレーズ(たぶん漫画・映画に関連してる?)。

すぐに色褪せそうでいて、かなりの確率で一生魅力をもち続ける曲になるだろう。

B-side: Little Glee Monster『私らしく生きてみたい』

一方、Little Glee Monsterが2016年に出した『私らしく生きてみたい』は、Girls2と比較すると、明るい曲調であるにも関わらず、ROUND1のCMソングであったとは信じられないぐらい重たい曲だ。


「空気読みすぎたら空気みたいな人になった」主人公は、可愛くなることよりも「好きなものは好きと言える」ように生きることを望む(BLが好きで言い出せないのかもしれない)。

自分らしく生きて"みたい"、と表現されているように、主人公はいまの自分について悩んでいる。この「重たさ」は、現代であればそれなりに一般的であろう。

そしてその「重さ」は、曲の歌詞だけでなく(当時の)Little Glee Monsterからも伝わってくる。歌がべらぼうに上手くたって、それがそのまま確固としたアイデンティティになる訳ではないのだ。


2番で主人公は「個性はチャームポイントにしなきゃ輝かない」と、新しい自分になることを決意する。「自分らしさ」を見つめ直して、そして認めようとしたのだ。

最大の魅力は、2番のサビ後半。「鮮やかに絶賛 Let's Dance」というフレーズのボーカルで爆発する

ギリギリで「ちょっと下手かも」と思ってしまうような、感情のこもったこの歌唱は聴くたびに胸を打つ。

文字通り「個性をチャームポイント」を楽曲のなかで達成した瞬間であり、そのために名曲だと感じるのだ。

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Girls2とLittle Glee Monster。2つのグループは、それぞれの等身大を表現した。

等身大を見せられてしまうと、私は「はい100点〜」と言わざるを得ない。という再確認でした。


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