香水



匂いはその人を思い出す為の一つの要素だと思う。
例えばすれ違った時、自分の知っている匂いがすればきっと僕は振り返るだろう。

でも元来自分の匂いとは自分ではあまりわからないものだ。曖昧で、それでいて一番遠くて。

他人に僕の匂いがすると言われて初めて自分はこういう匂いがするのかと自覚する事が多い。

たまに言葉を交わさなくても、匂いだけでその人の事を解った気になってしまう事がある。
うまく言葉には出来ないが、何となく。

香水というものは薄手のカーディガンを一枚羽織るのと一緒だと思う。その人を知れば知るほど色や模様や生活が見えてくる。


今だに僕はあなたが『好き。』と言ってくれた匂いの香水を使いたくなる時がある。

たまには思い出したいのだ。不思議だ。
匂いを纏うはずが、その香水を振ると思い出を纏った気になれる。

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