スライゴと妖精物語
妖精学
亭主が妖精に興味を持ったのは幼稚園くらいのことですが、それをちゃんと調べてみようかなと思ったのは、それからずいぶん後、中学生くらいのことだったでしょうか。
学校の図書室にあったブリタニア百科事典に、妖精(同時に人魚)という項目があり、詳しく宣べられていたのを読み、あ、ただのお伽噺に出てくるキャラクター以上の存在なんだと目から鱗が落ちたことを今でもハッキリと覚えています。
その後、本屋さんで井村君江先生の「妖精学入門(講談社学術文庫)」を見つけ、なるほど妖精は民俗学の一分野であり、妖精学という名前が付いていると知ったのでした。
憧れの地スライゴ
そこからは手に入る井村先生の著作や、そこに紹介されている参考文献を集め始めるという長い旅が始まったのは言うまでもありません。
(ご存知の方も多いですが、井村先生は大変な多作な研究者で、当時でも関連書籍は30冊はゆうに超えていたと思いますし、今と違ってネットやネット書店はありませんでしたから地方在住だった頃の亭主には大変でした💦)
そんな中、先生の著作を通じ、Y・W・イエイツという詩人の存在を知ることとなりました。
彼は詩作や劇作、そして神秘学に精通した作家で、妖精譚の蒐集、研究にも多くの功績を残した人でした。
そんなイエイツが心の故郷としたのが、アイルランド北西部のスライゴという町でした。
彼はそこで多くの古老や土地の語り部に出会い、様々なお話を蒐集、アイルランド語から英語への翻訳。志を同じくする人たちと出会ってくのです。
彼を、そして井村先生の翻訳を通して語られるスライゴのなんと魅力的なこと。鄙びていて、一種荒涼とした土地だけれど、そこにいる人たちの無骨な暖かさが伝わってくるようでした。
そんな町に惹かれない訳ありませんよね。
亭主が、スライゴに足繁く通うようになったのは、それから10年経ってのことですが、それはまた別のお話。
狐弾亭の1冊
イエイツが再話した物語は、どちらかといえば長めのお話、そしてある種の起承転結があるお話が多い傾向があります。
それは物語としての読み応えや面白さを追求した結果だと思いますし、実際に土地で語られているもっと短く、時にナンセンスで、オチもないお話とは少し違いますが、長いお話だからこそ分かるアイルランド妖精譚の特長があります。外を吹くのは荒々しい風。そして燃えるターフ(泥炭)。時に酒場で、時に夜の家で語られたお話の数々は、民族の宝だと思います。
狐弾亭の書棚にもありますので、開店、お越しの際には是非。
狐弾亭亭主・高畑吉男🦊
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