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枝ぶりがクール 海を渡る「BONSAI(盆栽)」の美

こんにちは、ぶらっくまです。関西は一気に春めいてきました。皆さんがお住まいの地域はどうですか。今回は、日本ならではの自然美と人工美が調和した「盆栽」の話題をお届けします。

世界の富裕層に人気、輸出額2.7倍

日本人の心を外国人に伝えるために心を込めて盆栽を育てている松末浩二さん=兵庫県加西市別府町、盆栽翠松園

 「BONSAI」として欧州やアジアの富裕層の人気を集める日本の盆栽の輸出が好調だ。海外では新型コロナウイルス禍によって自宅に置いた盆栽に癒やしを感じる人が増えるなどし、2023年の輸出額が20年の2・7倍に伸びた。国内外で外国人の愛好家らと交流してきた兵庫の盆栽職人たちは、活動に手応えを感じている。

 兵庫県加西市の「盆栽すいしょうえん」。園内に入ると、さまざまな盆栽の力強さや、繊細な枝ぶりに目を奪われる。
 「外国の人は、盆栽がかっこ良くてクールな文化だとみています」と園主の松末浩二さん(48)。約20年前から海外への販売を始めたが、コロナ禍以降は高級志向が高まり、富裕層の購入がより目立つようになったという。
 松末さんのインスタグラムのフォロワーは12万人に上り、9割を外国人が占める。園の全景を写した動画には世界各国から240件を超えるコメントが届いた。インスタグラムを機に世界中の愛好家と交流するようになり、タイ、シンガポール、米国などで盆栽の講師を務めてきた松末さん。「盆栽には人を幸せにする不思議な力がある」と力を込める。

2024年3月29日付 神戸新聞夕刊記事より抜粋

松末さんの盆栽園を取材した動画もあります。

また、兵庫県高砂市の盆栽職人・長谷川哲也さんによる盆栽教室の様子をまとめた動画もあります。フィリピン出身の男性に、長谷川さんが盆栽の基礎を手ほどきする内容です(英語字幕付き、基礎編の①と②があります)。

電子版「神戸新聞NEXT」では、手ほどきを受けたフィリピン出身のデニス・ナインさんらにも取材した記事全文をお読みいただけます(会員登録が必要です。無料で月5本まで記事が見られる無料会員コースもあります)。

また兵庫県丹波市では昨年、こんなお店がオープンしました。

大阪から丹波へIターン 盆栽店を開いた夫婦の夢

盆栽店をオープンした宮里凜太郎さん、こずえさん夫妻=兵庫県丹波市春日町下三井庄

 盆栽店「BONSAI LABO Tamba(盆栽ラボ丹波)」が、丹波市春日町下三井庄地区にオープンした。大阪の都心で盆栽店を営んでいた宮里凜太郎さん(46)が、妻のこずえさん(36)と開業。販売や教室開催のほか、盆栽の素材となる木の生産にも取り組み始めた。地元で丹精する住民らとの交流も深め、「盆栽を通じて丹波地域の人をつないでいきたい」としている。

 宮里さん夫妻は2022年2月、丹波市に移住。購入した同地区の農地付き民家のうち、離れを住民らの手を借り店舗兼作業スペースに改装した。隣接する広大な農地ではマツやモミジ、サクラなどの盆栽を作る。2人は「ここに来て良いことしかない」と太鼓判を押す。
 凜太郎さんは大阪の専門学校で写真を学び、カメラを仕事にした。デジタルカメラの普及とともに、「撮り手の意志は必要とされず、撮ることだけを求められている」と感じるように。その頃、茶舖で一輪の白い花を付けたツバキの盆栽に出合った。
 「これが盆栽? と驚くほど、おしゃれでかっこよかった」と凜太郎さん。盆栽展で奥深さ、幅の広さに触れて「どうやったらこんなにすごいものが生み出せるんだ」と魅了され、30歳で大阪府池田市の盆栽園の門をたたいた。
 植物の生理機能を知ることから始め、親方の作業を手伝いながら技術を学んだ。毎日、誰よりも早く来て、最後まで仕事に取り組むという3年間を過ごし、独立。2012年、大阪市中央区にあるビルの3、4階に店と住まいを構えた。
 屋上で盆栽を作る珍しさもありファンは増えたが、周辺の府県や海外からの客、インターネットによる依頼が多く、凜太郎さんは「顔を付き合わせて仕事がしたい」と考えていた。何より、幼い娘を育てる環境を考えて、こずえさんと「人とのふれあいがある場所」に移ることを決めた。
 春日の拠点は、農地付きの条件に加え、緑豊かな山と水田のパノラマが広がるロケーションが気に入ったという。暮らしでも「子どもたちと遊んでくれたり、危なくないよう見守ってくれたり。地域の温かな支えがあって移住して本当に良かった」と、こずえさんは満面の笑みで語る。
 また、凜太郎さんは丹波地域には「長年盆栽を丹精する先輩がたくさんいらっしゃる」ことにも気付いた。先輩が手がけた「素晴らしい盆栽」が数多くある一方、持ち主が年を重ねて外との交流が減ったり、引き継いだ子が育てられなかったりし、人の目に触れなくなった「眠る盆栽」もあるという。
 今後、そんな盆栽を預かって整え、盆栽展として披露していこうと計画している。「丹波地域の人たちがつながって、暮らしに楽しさが加われば」と考える宮里さん夫妻の「地域への恩返し」だ。
 せんてい技術を生かした庭木などの手入れも始めた。丹波地域の種や種木から育てたり、地元の焼き物を鉢にしたり、「メード・イン・丹波」の盆栽作りにも夢を抱く。「丹波に来て得られた心の豊かさが盆栽にも表れると思う」とこずえさん。凜太郎さんは「培ってきたもので少しでも地域に役立ちたい」とし、「ふれあいを大事に、この地ならではの盆栽作りに励んでいきたい」と話している。
 盆栽ラボ丹波☎0795・71・4628

2023年5月14日付 神戸新聞朝刊記事

お店のおしゃれなホームページも開設されています。ご興味のある方はぜひ。

〈ぶらっくま〉
1999年入社、神戸出身。日本の盆栽が「BONSAI」として広まり、海外にも愛好家がいることは知っていましたが、コロナ禍を通して輸出額が増えているとは知りませんでした。にわか知識ですが、盆栽が初めて世界で注目されたのは、1889年の第4回パリ万国博覧会だそうです。盆栽の技術に驚いた外国人から「dwarf tree」(小さな木)と呼ばれたとか。私もちょっと興味が湧いてきました。