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自分なら…? わが身に置き換えてしまう人助け3話

播州人3号です。人助けなどにつながる行動が表彰され、それを紙面に掲載することがあります。その場面に遭遇した経緯や救出の様子なども尋ねて記事にしますが、機転を利かした行動に思わず「自分なら…」とメモをとる手がとまることも。そんな勇気ある行動を3つ紹介します。

①橋の上で1時間話し掛け続けた先生の気遣い


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一つ目は、橋から飛び降りをしようとする女性に気付いた小学校教諭の行動です。女性を発見した後の先生の対応に感服です。

橋から飛び降りようとした女性救助 津田教諭(立花小)にのじぎく賞 尼崎北署

 深夜に橋の欄干から飛び降りようとしていた女性に声を掛け、人命を救助したとして、尼崎北署はこのほど、尼崎市立立花小学校教諭の津田遼さん(37)に、県の善行賞「のじぎく賞」を贈った。
 同署によると、津田さんは10月8日午後11時ごろ、帰宅中に尼崎市の武庫川に架かる上武庫橋で、欄干の外側に手をかけて立つ20代の女性に気付いた。「どうされましたか」と話し掛け、「寒いですね」「色々ありましたね」などと約1時間、世間話や子どもの話などを続け、思い詰めていた女性を落ち着かせた。
 津田さんは「助けないといけないと思った。女性が無事でよかった」と振り返り、「学校でも、子どもたちに『悩んでる人に気付いたら声を掛けてあげよう』と伝えたい」と話していた。

                (2019年11月26日付朝刊より)

現場は真夜中の橋の上です。声を掛けるだけでも躊躇しそうですが、女性を落ち着かせるために1時間も話し続けたといいます。毎日教壇に立つ「対話のプロ」とはいえ、そう簡単なことではありません。自分の先生が表彰を受けたことを知った子どもたちの反応も聞いてみたいですね。

「兵庫県のじぎく賞」は身近な善行に対する兵庫県の表彰制度で、1963(昭和38)年に創設されました。人命救助のほか、美化活動やボランティアなどで年100件ほどの表彰があるそうです。

賞にあるノジギクはキク科の多年草で、白い愛らしい花を咲かせます(最初の写真がノジギクです)。兵庫県の県花として親しまれ、県内の施設名のほか、2006年に兵庫で開かれた国体の名称にも使われました。ちなみに兵庫の県鳥はコウノトリ、県樹はクスノキです。

②帰宅ルート変更し、行方不明の女性保護

続いても先生の話です。「もしかしたら」。その想像力が95歳の女性発見に結びつきました。

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行方不明の女性保護 多可の西本さんのじぎく賞 朝来署、丹波市の浅田さんにも

 朝来署は、散歩中に行方不明になった朝来市の女性(95)を保護したとして、和田山高校(朝来市和田山町)の主幹教諭西本慶輔さん(45)=多可町=と大塚病院(丹波市)の看護師浅田夏美さん(31)=朝来市和田山町=に県の善行賞「のじぎく賞」を伝達した。
 同署によると、3月30日午後5時10分ごろ、女性の長男が「午前11時に見たのを最後にいなくなった」と通報。長男は近くの同校にも事前に相談していた。西本さんは、女性が散歩で通りそうな細い道を選んで帰宅中、同50分ごろに播但連絡道路和田山インターチェンジ前の歩道で座り込む女性を見つけた。
 ほぼ同時に浅田さんもマイカーから女性を見かけ、心配して駆け寄った。浅田さんの車内で休憩してもらいながら、西本さんが同校経由で同署に通報。駆けつけた署員が保護した。場所は女性宅から約2・3キロ。女性にけがはなかった。
 贈呈式は新型コロナウイルス感染拡大を受けて中止され、同署員が職場などに賞状を届けた。2人は「けがもなく、見つけることができて良かった」と話した。

                 (2020年5月15日付朝刊より)

事前に相談を受けていたとはいえ、わざわざ女性が通りそうな道を選んで帰宅するなんて、なかなかまねはできません。マイカーを運転中にSOSを察知し、駆け寄った女性の行動も光ります。

③「怪しい」、ドライバーの機転で詐欺容疑者逮捕

最後は、タクシー運転手の機転です。日頃から客の扱いに慣れている「プロ」の行動です。

特殊詐欺 容疑者逮捕に貢献 タクシー2社に感謝状 赤穂署

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 特殊詐欺事件の容疑者逮捕に貢献したとして赤穂署はこのほど、御崎タクシー(赤穂市中広)と赤穂タクシー(同市加里屋)に感謝状を贈った。
 同署などによると、3月30日、同市の女性(88)に「後期高齢者医療の保険料の払い戻しがある」などと男の声で電話があり、女性は訪れた女にキャッシュカード1枚をだまし取られた。
 女は女性宅を訪れる際、スーツ姿でタクシーを利用。運転した御崎タクシーの佐用大輔常務(45)は「若い茶髪の女性で、スーツは似合わない。詐欺に関わっているのでは」と直感。会社を通じ、通報した。同署が捜査中、赤穂タクシーからも「配車を依頼された」と連絡があり、署員が女を発見。ピンクの上着に着替えていたが、スーツや他人名義のカードを持っており、容疑を認めたため、詐欺の疑いで広島市の無職の女(27)を逮捕した。
 赤穂署管内では特殊詐欺事件が昨年の3件から今年は既に8件と急増。犯人がタクシーを利用する場合もあるため、情報提供を各社に求めていた。
 堀祐一郎署長は「地域の監視の目で詐欺被害を減らせれば」と感謝。佐用さんは「様子がおかしいと思った」、赤穂タクシーの守岡正彦社長(57)は「(現金の)被害が出ずに済んでよかった」と喜んだ。

                 (2021年4月27日付朝刊より)

何かおかしいと気付いたドライバーの「直感」ですね。日頃から乗客に気を配っていることがうかがえます。
これほど注意を呼びかけても特殊詐欺被害が後を絶ちません。それだけ手口が巧妙になっているからでしょう。特殊詐欺グループのメンバーがタクシーを利用して被害者宅を訪れることも多く、こうした周りの目が犯罪の抑止にもつながるはずです。

神戸新聞に掲載した過去3年の記事を調べると、「のじぎく賞」だけで70件以上扱っていました。警察署長らの感謝状を加えると、150件を超えます。
超高齢社会や相次ぐ特殊詐欺事件などで、助けを必要とする人に出会う機会が増えたこともあるのでしょうが、紹介した方々のような勇気ある行動や機転を利かした対応が世の中に広がっているとからだとも感じます。

<播州人3号>
 1997年入社。言葉遣いと車の運転が荒っぽいと言われる播州(兵庫県姫路市)出身。「ごーわく(業わく)」(腹立つ)はさすがに使わなくなりましたが、「らっきゃー(楽やー)」(OK、大丈夫です)はつい口にしてしまいます。

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