寝坊して4000円無駄にした朝の話

車窓から見える景色が後ろへ後ろへと流れていく。特急列車は2時間以上1人で乗るには暇すぎるから、ひとまず、流れる景色を眺める。山から山へ、コピー&ペーストの背景に点在する民家は大きな平屋で屋根一面にソーラーパネルを背負い、そば屋の青い看板は長年の雨風を受けたのか色あせて、旅先の田舎の風景を演出する。ふと覗く大きなスーパー。地元と同じスーパー。そうだ、私の住んでいる所も普通に田舎だったらしい。

長野原草津口駅に到着した。今頃サークルのみんなはバスでホテルに着いているだろう。駅からホテルへの送迎バスを待ちながら、先輩からの「駅に到着したら連絡して!」に返信する。ここまで1人で特急列車に乗って来たのは他でもない、自分の人生最悪の寝坊のおかげで、照れ隠しの「ご迷惑おかけします」ストーリーにはサークル員以外からも複数のからかいのメッセージが届いていた。2月11日の13時半、朝昼ご飯にファミマの安パンを食べたっきりだけど不思議とお腹は空いていない。

送迎バスに乗る。中にいるのはスマホで写真を撮る女の子3人組や妙に落ち着かない親子や穏やかな老夫婦で、若い女1人で静かに座る私は微妙に浮いていた。その空間に馴染めないまま出発。14時ちょっと前、車酔いする体質にも関わらず揺れるバス内でTwitterを凝視。神保町で同時進行されているはずのライブの結果をいち早く知るためだった。ここ最近で1番行きたかった・行かなきゃいけなかったライブではなく温泉地へ向かっている現実からは目を逸らしつつ、必死にTLを更新する。

ぴこん!見たかった文面が現れた瞬間、心が跳ねた!速攻で動く指、ニヤニヤしながらも声には出さず、喜びを文字に起こす。ライブに行けなかった悲しみも、寝坊した焦りも、そんな自分に対する鬱々とした気持ちも、乗り物酔いも、たった3行でどこかへ追いやられた。「結構面白いです」って言ったネタで本当に1位取るなんてかっこいいがすぎる。最高!推しはいつだって最高!そんな想いをTwitterにぶちまけているうちにバスは目的地に着いて、現実が戻ってくる。




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