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シン・長田を彩るプレイヤー ~長田を牽引するゴム職人~(後編)


今回は、株式会社富士高圧の代表である東田文太郎さんを取材しました。
大手企業から一転し家業を継いだ東田さん。後編ではゴムが秘める無限の可能性や今後の展望についてお話ししていただきます。


~富士高圧とゴムが秘める無限の可能性~
-東田さん-
我々はゴムに関する商品を扱っていますが、ゴムって色々な形にもなれますし、我々の商品は発色性がすごくいいので幅広く商品開発を行うことができるんです。

-記者-
すごくきれいですね!

-東田さん-
いろんな色にできるんです。
あとゴムは、匂いが問題になるのですが、うちの商品は全部石鹸のにおいがするんです。
香りや色を変えてゴムを楽しくするようにしてきました。
ゴムの可能性を考えるとだんだん楽しくなってきませんか?

-記者-
わくわくしてきました。ゴムの可能性って無限大ですよね。

-東田さん-
可能性を希望に変えて頑張っています。
日本、この神戸長田で生まれたエアラバーが今では世界中の人々のお役に立っているように、さらに進化したニッポンメイド製品を神戸長田から世界に届けたいです。

~今後の展開~
-記者-
長田でお仕事をされる中でのやりがいや苦労・課題、こだわりがあれば教えていただきたいです。

―東田さん―
そうですね。
靴ではなく、靴底のゴムという素材を楽しめるようになるまでは時間がかかりました。
ゴムという素材の開発は、靴のデザインのようにアイディアが目に見えづらいうえに、様々なマテリアルの化学反応などで、摩耗率や屈曲率など、物性値が大きく変わるので、一つの新素材を開発するのはとても時間がかかり、忍耐が必要です。

―記者―
大変な開発を続けられる中で喜びや達成感を感じる瞬間はありましたか?

―東田さん―
世の中にない素材を発想し、実際にその製品が完成し、日本に限らず世界の人々の足元を支え続けることは大きな喜びです。15年ほど前にイタリアのゴムメーカーの工場で弊社オリジナル素材の製造に成功した時の感動は忘れられません。

ー記者ー
長田で生まれたエアラバーを日本にとどまらず、世界に広げることもやりがいということですか。

ー東田さんー
そうですね。先人たちの積み上げてきたニッポンメイドの神戸長田文化を絶やさず、世界にその素晴らしさを伝えたいですね。まずは日本でのブランディングを頑張ります。

ー東田さんー
上記の写真はMBTというスイス発の機能性シューズブランド、そして左は有名サッカーチーム、パリ・サンジェルマンとのコラボ商品です。その他、オリジナル商品など多数に渡り、今年の夏は某有名セレクトショップや空港の某有名販売店、沖縄ではカフェにも置いてもらっています。

-記者-
カフェにもサンダルを置いているんですね。

-東田さん-
そうなんですよ。
沖縄本島以外に石垣島でもオシャレなお店でも取り扱って頂いています。来年は世界的なアートディレクターさんをお迎えしてロゴマークも一新し、履物やヨガマットに加え、エアラバーを使った積み木などの玩具でのコラボレーションが決定しています。

-記者-
長田のゴムが全国各地、様々な分野に広がっているんですね。

~海外に商品を届けたい~
-東田さん-
こだわりとしては、オリジナルの素材、オリジナルのプロダクトで、コピーされない唯一無二の製品開発を心掛けております。
これからは足元から全身への健康と足育という形を搭載したエアラバー素材、プロダクトを人々の足元にお届けしたいです。さらに幼児、子供の情操教育、探求心をくすぐる積み木など様々な形、様々な可能性に変えてエアラバーをお届けしたいと願っております。
そして日本の歩行文化とエアラバーの素晴らしさも同時に広く世界に伝えてまいりたいと考えています。

-記者-
こちらの商品ってすごい日本人に特化されていると思うんですけど、
海外の方の感想はどのような感じですか?

-東田さん-
僕の友達がロンドンに住んでいるんですけど、彼女は、絶対これロンドンで売れるからと言うので、実際にわらじとヨガマットを30セット送りましたがとても好評です。

-記者-
そうなんですね!

-東田さん-
ただ実際に継続して海外で販売するとなれば、どういうルートで、誰がどう管理をして配送するのかなど課題は山積みなのでまずは大手代理店のルートでテスト販売を計画しています。小さくても実際にチャレンジしながら可能性を希望に変え、希望を実現させるべくコツコツと積み上げていきたいと思います。

~長田のこれからについて~
-記者-
お仕事などで長田の人と関わる機会や、仕事をされている中で長田の印象とかあれば教えていただきたいです。

-東田さん-
長田の蓮池小学校に通っていたんですけど、そのとき学校の授業で日本の靴の70%を長田で作っていると教わり驚いた記憶があります。街は日々大渋滞で市場にもたくさんの人が溢れていてそらあ活況やったんですよ。それが今は、衰退してしまって寂しいです。

僕は世界のラバー会社をたくさん見てきたけど、長田の方が勝ってると感じる部分もたくさんあるんですね。靴もまだまだアイデア次第でやれるのではないかと思います。
自分たちの弱点、長所をちゃんととらえて長田を盛り上げていければいいなと思っています。

―記者―
子供の頃の賑わっていた長田に戻ってほしいという思いですか?

―東田さん―
そうですね。僕たちが子供だったときはもっと人間らしくって、厳しくて優しくて、隣のおじさんが怒ってくれるような人情味溢れる熱い街だった。
街自体に自信や安心感、信頼感みたいなものがありました。
豊かで元気な下町気質の長田に戻ってほしい。

―記者-
今後どうやったら長田がまた盛り上がっていくと思いますか?

―東田さん―
歴史として積み上げてきた唯一無二の長田の文化をこれからの世の中の変化にベクトルを合わせ、世相を鑑みて生き残るための策を講じ、長所を進化させてチャレンジするしかないと思います。眼鏡の鯖江みたいになれば長田人皆、誇らしく思えるんじゃないですかね。

あと特色と言えば、長田には中国、台湾、韓国、ベトナム、インドなどたくさんのアジアの方々が住んでおられます。神戸と言えばパンやケーキのような西洋文化だけではなく、これから発展するアジア文化の日本の発信基地になるのは国際都市神戸のこれからの姿かもしれません。

-記者-
地域ごとに色があっても面白いと思いますもんね。
最後になりますが、東田さんにとっての長田とはズバリなんでしょう。

-東田さん-
良いも悪いも目を背けられへん町ですかね。
新しいことにチャレンジしないと前には進まないぞ!ってね。
長田を見ていると自分を見ているようで悔しいというか(笑)
長田の根性を全国に!世界に!見せつけたいです!

~希望を持つ重要~
-記者-
お話をしている中で東田さんの発想力がすごいなあって思いました。
私だったら仕方ないと終わっちゃうんですけど、思い立ってどんどん挑戦されてるから尊敬でしかないなと。

-東田さん-
生きるためにやってきたというのが根底にあります。
良い会社に入ってから退職して家業を継いで、飲食店を始めてもお金がなくて。
新しい機械を大手さんは買うんですけど、僕らはこの昔ながらのクラシックな作り方で、なにか付加価値のあるものにできへんかなとか。
でも生きるために自分たちの長所を前に進めたら希望が生まれてきて、その素晴らしさをもっとみんなに知ってほしいと強く思うようになりました。

-記者-
格好いいです。

-東田さん-
希望を見つけるっていうのが大事です。
希望があったら生きていけるんですよ。
人が喜ぶモノ、仕組みを作る事ができれば自ずとリーダーになれて、利益が上がる事に繋がるじゃないですか。

今まですごいお金があってやってきた訳じゃないから、いかに僕の話でファンになってもらうしかないんですよ。小さいことだけど、会ってもらえる前に必死で奇麗な字で手紙を書いて送ったりとかね。
昔の手紙が出てくるとこっぱずかしいですが必死で生きてきた証やなって(笑)

本当、希望とそれを理解してくれる仲間がいたら勝ったも同然というか充分です。あとはそこに行くだけですから。自分達で人生を切り開きながら磨いていくしかないですから。長田のエアラバーを通じて社員と一緒に人生の続きを楽しみたいと思います。

-記者-
いいお話を聞けてよかったです。
ありがとうございました。


難しい状況の中にも面白さを見つけ世の中にない商品を開発する東田さんの姿は、長田だけでなく日本全体に活気を持たせているように感じました。
東田さんの商品は今までに履いたことのないまさしくマシュマロ!のような感動の感覚でした。日本にとどまらず海外にまで商品が届き、この感動を多くの人と共有したいと感じました。

(編集:すい、かかけつ)