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【長田区地域づくり活動助成】推し活!移住してきた3人が語る下町・長田のもつ魅力

【団体名】下町ぐらし研究所

今回は、まちの人の好きなこと・チャレンジしたいことの応援や下町での暮らし・子育ての魅力を発信し、長田に関わる人や移住者を増やす取り組みを行っている下町ぐらし研究所の代表の小笠原舞さん、栗野紗也華さん、渡辺優さんにお話しを聞かせていただきました。
活動を始めた経緯や、大切にしている想い、3人が考える長田の魅力などを教えていただきました。

【長田で活動を始めたきっかけ・想いとは】
-記者-
まず、この団体を立ち上げたきっかけを教えていただけますか。

-小笠原さん-
私はちょうど子育てが始まる前に、長田に来ました。今年で6年ですかね。その前は関東に住んでいました。元々、保育現場での経験を経て、子育て支援活動をしていました。神戸に移住してから東遊園地で講演する機会をいただいた時に、このまちに住んでいる家族が見に来てくれたのがきっかけで、このまちに出会いました。そして、はじめてこのまちに来たときに数々の衝撃がありました。学童でもないのに、誰の子か分からない子どもたちがひっきりなしにお店に出入りしていたり、まちを歩いているとその辺でお喋りしている方が多かったり。自分が作りたかった子育て環境がそこにあり、「ここで、子育てしたい!」と思って移住してきました。
子育てしながらこのまちで過ごしていたら、子育て環境だけじゃなく、いろんな社会課題を解決するヒントが見えてきました。ママ友がこのまちに来ると、穏やかな気持ちになったり、人生に迷う若者が自分らしさを見つけたり。不思議な出来事がたくさん起きて、「ここにはその人が整う大事な要素がいっぱいある!」と思いました。まちの人たちとの繋がりが暮らしの中にあるからこそ、安心して過ごすことができる。これこそが、社会課題解決に紐づくキーワードなんじゃないかと思ったんです。そう思っていたら、同じ関東からの移住者である栗野さんや渡辺さんも同じことを言っていて。私たち3人は社会課題に興味関心があるという共通項もあったので、 「やっぱりそうだよね!」となりました。このまちが持っている力というか、可能性って、今の社会で叫ばれていて、いろいろな人が頑張って作ろうとしているものだけど、ここにはすでにあって。そんな環境で暮らせるなんて、なんて幸せなんだろうと感じています。だからこそ、ここに人を呼んだらきっと何か楽になる人はいると思うし、その人のWell-beingにとって大事なヒントがあるから、多くの人に来て欲しいと思っています。その時に私一人ではできることが限られているので、このまちが好きで、そういうアンテナを立てている2人と一緒にやりたかったんです。それで、2人に声をかけて、3人で始めました。

-記者-
渡辺さん、栗野さんはどのような想いで小笠原さんと一緒に活動を始められたのでしょうか。

-渡辺さん-
私は「ただ楽しい、好き」みたいな推し活ですね。あと、私の場合はまだ長田に来て2、3年目とかなので、このまちがなぜこんなに心地がいいのかを知りたいっていう思いがすごく強くて、住んでいる方々から見える、ありのままの長田みたいなのを私も教えてもらいたいし、体感したいなって思っています。

-栗野さん-
私もソーシャルセクターで働いていたんですけど、このまちに初めて来た時に、子育ての視点で見て、「なんてベビーカーが押しやすそうな場所なんだ」と驚いて。東京はベビーカー1台通るのも大変だったりするので、ハード面で、「すごくいいまちだ!」と思いました。また、去年子どもを出産したのですが、隣近所の人が妊婦の時から「いつ産まれるの?」とか、「大丈夫?」とかよく声をかけてくれて、子どもが生まれてからも「もう何か月でしょ。大きいね」と声をかけてくれて、こんなにも地域の人に愛されながら子育てするなんてすごいなと思いました。 自分が子どもや福祉界隈にいて、この環境にするのがすごく難しいってわかっているからこそ、それが普通にあるのが、「どうしてこんなに素敵な環境ができているんだろう?」という疑問を深めたいということもあり、この緩さとか、まちの人がお互いにコミュニケーション取りにいくスタンスを発信できたら、他の地域の人とか、そういうことをやりたい人にもヒントになるんじゃないかなと思い、一緒に発信しようか、となりました。

-記者-
具体的な活動について教えていただけますか。

-小笠原さん-
今は、部活が6つあります。地域のごみを拾って、みんなで朝ご飯を食べる朝活部、地域の人をゲストに迎えて長田の魅力をラジオで発信するラジオ部、子どもたちが中心となって路地裏にある畑を耕す・収穫・販売する畑活部、多言語部、図書部、ママ活部(名称:マリアージュ)ですね。今後も、まちの人の個性や好きなことを活かして、アート部などの部活を増やしていけたらいいなと思っています。畑活部では、先日、子どもたちが自分たちで育てた野菜を収穫し調理して、まちの人たちに振る舞っていました。ママ活部は、月1回のカフェ運営をしているので、そこに来たママたちに困りごとを聞いたり、繋がりを持って帰れるような仕掛けを作ったりしています。最近は、別団体のイベントにも出張でメンバーが呼ばれるようになって、認知度が上がってきているのを感じています。

-記者-
1年目の活動を振り返って、課題や印象に残っている活動はありますか。

-小笠原さん-
1年目は、私たちに近い関係性の人の「やりたい!」を支えたり、ラジオをして神戸市外に広報してみるというチャレンジがメインでした。今後はもっとまちの人・他の活動のプレイヤーたちとの繋がりを広げていきたいです。自分たちが何ものなのかをもうちょっとわかりやすくして、もっと気軽に・誰でも参加してもらえるものを作ったり、長田区がやっている取り組みやプラットホームを活用したりしながら、もっと「繋がる」ということを積極的にしていきたいなと思っています。私たちのやっていることに、どう地域の皆さんを巻き込んでいけるかなど、色々アイデアが既に出ています。
あと今までは、「研究」よりも、目の前のコンテンツを実施し・育てるとか、やり続けるというところに重きを置いていました。それを踏まえて、今後はメンバーの興味関心・強みを生かしながら、研究の視点も強めていけたらいいなと話しています。
印象的な活動は、ラジオで、特にソーシャル活動をしているわけではなく、ただ本当に長田で暮らし、生きている一般の方に話を聞けたことですかね。

-栗野さん-
私は、年末年始にゲストハウス「とりまぎ」で擬実家ヒトミという実家もどきを近所の人がやっていたのが面白かったですね。年末年始に、血の繋がりはないけれど、近所の人が集まって、ひたすらグダグダして。家族以外の人とこんな年末年始でグダグダするというのが面白かったですね。

-渡辺さん-
家族っていうものをすごく考えさせられました。

【それぞれが大切にしている想いとは】
-記者-
活動する中で、大切にしていることは何でしょうか。

-小笠原さん-
ひとりひとりの個性とか、やりたいことを大事にしています。私・私たちの感覚とみんなの感覚の化学反応が面白いし、個性が出てきた!みたいなのがすごい嬉しいんです。

-栗野さん-
ここに私たちの活動があるからこそ、いい循環とか、困り事が解決されてくみたいな。まちのリソースを使って、勝手に私たちが活動しているんじゃなくて、それをちゃんと還元していくことができたらいいなと思っています。

-渡辺さん-
「楽しい、おもろい、好き」っていうのが根源にあった方がいいなと思っています。 その気持ちは垣根を越えると思います。あとは、暮らしが大事だなとっていて、何よりも長田の暮らしが素晴らしいって私は思っています。なので、その暮らしは破壊しちゃいけないし、 見せるものでもなかったりするかもしれない。その切り取り方ってすごく難しいと思うんですけど、それに挑戦しているみたいな感じはあります。

-記者-
これから先、団体としてどのような活動をしていこうと考えていますか。

-小笠原さん-
長田区ではお好み焼きセッションなど色々な場があるので、まずは自分たちの活動を伝えに行くという広報活動ですかね。また、いろんな人がそれぞれの視点で、長田の良さや課題を感じていると思うので、まちの方や既に起業されている人と繋がっていけたらいいなと思っています。いろんな関わり口を私たちも提示しながら、活動で参加してくれる人や、資金で応援してくれる人、色んな応援の仕方、参加の仕方を明確にして、広げていきたいし、認知度を自分たちでもあげるような活動をしたいなと思っています。あと、地域の人の困り事をリサーチして、私たちが力になれたりすることを私たち自身も見つけていけたらいいねっていう話をしています。

【未来に残したい長田の姿とは】
-記者-
最後に、将来、長田がどんなまちになってほしいと思いますか。

-小笠原さん-
どんなまちになったらっていうか、この今の状況が残ってほしい。これがずっとあり続けてほしいし、そうなるように活動したいです。

-渡辺さん-
私はこのままでもう十分なのですが…他の人の視点ではどうなんだろう。

-小笠原さん-
このまちには、困っている人がいたら自然と「どうしたん?」と声をかけてくれる人が多いんですよね。これはあくまで個人的な分析ですけど、そういう人っておそらく日常が豊かで、満たされている人が多いからこそ、他の人が困っていたら助けられる余裕があるんじゃないかと思うんです。NPOのような活動も必要だと思いますが、そういう活動をしていなくても、一人ひとりが近くの誰かのために手を差し伸べられたらあたたかい未来は作れるだろうと思うんです。誰でもできて、どこでもできるやり方なんだけど、でも1番難しいことが、普通にできている。ソーシャルセクターの人にもこのまちのあり方に気づいて視察に来てもらいたいし、住民たちは当たり前すぎるからなかなか気づかないと思うのですが、外から人が来て、こうやって記事になったりすることで、自分たちが今まで普通にやってきたことがすごく価値があるんだということに逆に気づいてもらう。そういう循環も、私たちの活動を通して起こせたらいいなと思っています。

-渡辺さん-
下町セラピーが残るといいなと思います。自然にも勝るに自然体な方々がたくさんいるっていうところで、私自身、考え方とか東京で暮らしている時と変わったなと思っていています。無理をしなくなったりとか。それってすごい力だなと思います。それが残って、みんながありのままで暮らせれば、そこだけでいいんじゃないかと思います。でも、それがなんなのか、残すにはどうしたらいいのかを研究所として研究している感じです。

-栗野さん-
お年寄りがまちを支えているので、跡継ぎ問題とかが出てきた時に、まちの維持をどうするかみたいな話もありますよね。

-小笠原さん-
そういう人たちに次の世代どうしようって相談に来てほしいですね。活動を通して知っている人を紹介したりできますし。

-栗野さん-
うまく引き継がれていって欲しいです。

-小笠原さん-
私たちの活動が何か地域に循環していくようなことであれば、なんでもやります。お困り事があれば下町暮らし研究所へ来ていただければと思います。

-記者-
ありがとうございました。