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【長田区地域づくり活動助成】若者が自分と向き合う時間に寄り添う、ユースセンターという場の役割

【団体名】Dive in!

まちが生き残るには、そのまちを好きで楽しく生きている人がどれだけいるかが重要。将来このまちを生きる若者たちが“自分はどう生きたいのか”“何がやりたいのか”自分と向き合い、その人がその人らしくやりたいことや好きなことをやれる環境を作るために走り続けるDive in!の今井直人さんにお話しを伺いました。

【若者支援の原点にあるもの】
―記者-
本日はよろしくお願いします。興味深い空間ですが、この場所はどのようなところですか。

―今井さん―
ここは、ユースセンターのはなれです。将来、この建物を建て替えてユースセンターをやりたいと思っています。家でも学校でもない、若者にとってのサードブレイスですね。

【たくさんの人が関わって作ったユースセンターの一角】

―記者-
長田区地域づくり活動助成で実施されている活動内容について教えていただけますか。

―今井さん―
僕たちの団体は、中高生世代の若者を対象にしています。若者たちが保護者でもなく、学校の先生でもない、長田にいる素敵な大人に出会える場を作ろうと思い、ツアーを開催しました。若者が学校に行くのがしんどくなったな、でも家にいてもな・・・というときに気軽に話をしに行ける場所がある、それはすごく健全なことだと思っています。ただ、その場所を知らないと行くこともないので、大人の役割は出会う機会をつくることだと思いツアーを開催しました。
でも、活動をしていて気づいたのは、まずは僕が何者かというのをちゃんと知ってもらわないと、人が集まらないということです。なので、途中から活動を知ってもらう方向にシフトしました。 “あの人がいる場所だ”みたいなのを知ってもらえるように、できるだけ 若者に会いに行くこと重点的に、意識して活動をしています。

―記者-
若者を支援したいと今井さんが思うようになったきっかけを教えていただけますか。

―今井さん―
高校2年生の終わりに、東日本大震災が発生しました。その翌月の4月から、ボランティアに行かせてもらい、現地の人に話をたくさん聞きました。その中で 80歳くらいのおばあちゃんと話しをする機会があったのですが、その方は「私は助かったけど、目の前で知り合いが亡くなった。だから、あの人達の分も頑張って生きる」という話をされていました。80歳のおばあちゃんがこれから頑張って生きるんだって言っているのに、ここから80年ぐらい生きる僕は、何も頑張らずに生きているのが恥ずかしくなって、そこから自分の人生をどう生きるか向き合うようになりました。
その後大学入り、東北のバスツアーをやっていたんですが、一緒に行った子たちがそこで「自分と向き合って自分の人生をちゃんと選択しよう」みたいなのが、すごくいいなと思って。でも一方で、ボランティアとかに行っていない友達とかは、社会人になって数年したら、鬱で辞めるとか、そのギャップをすごく感じました。日本の教育カリキュラムの中だと、できれば大学へ進学する前ぐらいに、“自分はどういう風に生きたいのか”“何がやりたいのか”みたいなことを、ある程度思って進まないと、しんどい生活が続くなと思っていて、できれば、中高生の間に、自分と向き合う時間を作れるような活動をしたいと思ってユースセンターで働き始めました。
仕事は尼崎だったのですが、長田生まれ長田育ちの僕が、地元で自分の知り合いが苦しんでいるのに、地元ではない子たちのために頑張っているだけでいいのかと思うようになって、長田でユースセンターを作ろうと思いました。

【今井さん提供 東北ボランティア時の様子】

【まちのポテンシャルを活かせる活動へ】
―記者-
ツアー以外にどのような活動をされていますか。

―今井さん―
助成金を若者のご飯代に回すのが難しいので、となりの居酒屋に来るお客さんにご飯やお酒を飲んでいただいて、その代金が若者支援に回るような活動もしています。自由に使えるお金はとても大事で、寄付で集めるのもいいけれど、面白くないなと思ったので「お酒飲みに来てください」みたいなのを今、月1でやっていて、お酒を飲めば飲むほど、売り上げが全部若者支援になるという取り組みをしています。

―記者-
大人も寄付というのはハードルが高くても、好きなお酒を飲んでそれが若者支援につながるというのは気軽に参加できそうですね。

―今井さん―
若者にとっても支援してくれている大人の姿を見るというのもすごく大事だと思っていて、ここに来るとそれを間近で見られるので、手伝ってくれている子もいます。
それと、地ビールを作りたいと思っていて。理由は、地ビールをこの辺の飲食店に置いてもらって、それを飲めば一部が若者の支援に回る仕組みを作りたいと思っています。ここの居酒屋に来なくても長田の人がそのビールを飲めば支援になる風習が広まれば面白いなと思って。地域全体で地域の子どもたち、若者たちを支えて応援していくみたいなモチベーションとか空気感みたいなのをちゃんと醸成していきたいと思っています。

―記者-
とても面白い取り組みですね。長田ならできそうな雰囲気を感じられているのですか。

―今井さん―
そのポテンシャルがあると思うんです。下町でそもそも支え合いの文化があるし、震災も経験しているし、そのポテンシャルをちゃんと生かしていきたいと思っています。

【取材風景】

【みんなで一緒にまちづくり、そこから死なないまちへ】
―記者-
活動の中で大事にしていること、またなぜそれを大事にしているのかを教えていただけますか。

―今井さん―
参画、みんなで作るということを大事にしています。一緒にやりたいとか、関わりたいと思った人の思いも、本人たちの思いも含めて一緒にやるみたいなのが、結果いいものができるんじゃないかなと思っているので、大事にしています。まあでも超シンプルですが、目の前の人が幸せか、その人が笑顔であるかということはすごく大事だなと思っているので、割とそれに尽きる気がします。若者の時間って短くて、大人って「忙しい」とかを大体言い訳しちゃうじゃないですか。若者にとっては大人の都合って関係ないので、だから彼らが望んでいることやるというよりかは、その人がその人らしくやりたいことや好きなことをやれる環境を作りたいなと思っています。

―記者-
やりがいを感じる時、これやっていてよかったなって思う時はありますか。

―今井さん―
・・・難しい。あるということは、僕が何かを求めているということなので、ちょっと嫌やなっていう気持ちもあるんです。例えばですけど、明らか成長したというか、若者が喜んでいるみたいなことにやりがい感じるんですけど、それは僕がこの子にこうなってほしいって少し思ってしまっているってことでもあると思っていて。 その気持ちが強すぎるとエゴになるのかなと思っています。「君はもっとこうした方がいいよ」みたいなコミュニケーションに繋がっちゃうと思っているので、 やりがいを感じる瞬間はありつつ、それをやりがいがこういう時に感じるんですって言いたくないと思っています。20年、30年経って、あの時よかったって言われたら嬉しいかもしれないです。だから、20年後聞いてください。(笑)

―記者-
20年後ですね!覚えておきます。
次に、活動を始めてからご自身の変化や、 周りの変化はありますか。

―今井さん―
変化でもないけど、やっぱいいまちやなって感じます。動かないと人にも場所にも出会わないじゃないですか。みんな優しいし協力してくれるしいいまちだなと。歴史や文化は大事だと思っていて、その文化に見合わない取り組みは良くないと思うんです。工夫にも繋がるかもしれないですけど、“どう仲良くなるか”みたいな、仲良くなったらとても助けてくれるじゃないですか、どう関係性作るかみたいなのをめちゃくちゃ大事にしています。

―記者-
最後に将来、長田がどんなまちになってほしいですか。

―今井さん―
社会の状況は田舎を助けようっていう動きと、 都市では商業が発展させようという動きがあって、長田はそのちょうど間だと思っていて、今後そういうまちから死んでいく気がしています。僕はまちが死ななければいいなと思っているので、どうやったら死なないかって、結局そのまちを好きで楽しく生きている人がどれだけいるかだと思うんです。要はみんなが住み続けたいというか、なんかここが楽しいな、いいなとか思うのが大事やなと思っています。僕はできるだけそれを、中高生ぐらいまでに思ってくれたらいいなと思っているので、若者に誇れるいいまちにし続けなきゃいけないと思います。
文化とか、歴史とかと向き合ってまちづくりはしたいなと思っていて、だから、若い人たちがどう継承していくのかとか、その文化を守っていくのかみたいなのは、僕はすごく意識したいと思っているで、できるだけ箱物じゃなくて、文化を守れる流れにしたいし・・・役所と一緒に5年計画をみんなで作りたいです。
ここが素敵な場所であり続けたいって思いは一緒のはずなので、その思いを共有できる場とか、最大目標のためにそれぞれ頑張っているというのを認識できる場とかは持ちたいなと思って、そういうコーディネートができるのは、中立的な立場の役所ですよね。みんなが一緒に、将来お互いの利益とか関係なく、“みんなで幸せに生きていこうぜ”みたいなマインドの人たちが溢れているまちがいいなと思っているし、多分、歴史文化上そうだったはずなので、そのようなまちになればいいなと思っています。

―記者-
ありがとうございました。これは言っておきたい、記事に掲載してほしいことありますか!

―今井さん―
ぜひ居酒屋に飲みに若者支援の寄付をしに来てください。ですかね!

―記者-
また友達連れて飲みに行きますね!

【若者が描いてくれた絵】