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5年ほどプレイしてきた「グランブルーファンタジー」を辞めます

スマホゲーム「グランブルーファンタジー」(グラブル)を、2019年のはじめから5年ほどプレイしていますが、近日中に辞めます。

これまでに、いろいろと興味深いこと、考えることがあったので、ここにグラブルおよびソシャゲ(ソーシャルゲーム)について書き残しておきたいと思います。

辞める理由は、突き詰めれば「飽きた」です。どんなにゲーム本編が面白くてもガチャを回すときがプレイしていて最も脳汁の出る瞬間なのに、微課金・無課金では存分にガチャを回せる年間スケジュールがどうしても固定されてしまい、その年間スケジュールに飽きました。

なお、この投稿では、本来の定義とは異なりますが「ガチャがあるゲーム」の意味合いで「ソシャゲ」と呼びます。また、ユーザー視点で「お金を払う」の意味で「課金」を使います。


「オウガバトル」「FFT」テイストを継承したビジュアル


グラブルは2014年3月にサービスを開始したなかなかの長寿人気タイトルで、とても「いいゲーム」だと思っています。ただ、ある程度しっかりと遊ぶならそこそこ課金した方がよく、そこそことはいえ少なくはない金額(年間5〜6万円ぐらいは見ておきたい)が想定されるので、周囲にすすめられるゲームではない、とも思っていますが。

いいところは、まず何といっても絵です! 「伝説のオウガバトル」や「ファイナルファンタジータクティクス」(FFT)のテイスト、というと往年のゲーム好きには伝わると思いますが、絵画調というか、アナログ画材を思わせる情報量の多いイラストです。

初期のイラストは、まさにオウガバトル風のダークファンタジー色が濃いものでしたが、10年の間にテイストは少しずつ変わっていて、近年は、だんだん垢抜けた、明るくて華やかな絵柄になっています。


初期の絵柄の主人公ジョブ「ホーリーセイバー」
最近の絵柄の主人公ジョブ「マナダイバー」

どのソシャゲでも漫画やアニメとのコラボがしばしば行われ、近年のグラブルでは「鬼滅の刃」「ワンピース」「呪術廻戦」「ヒロアカ」とジャンプ人気作品とのコラボが続いていますが、これらの作品のテイストとグラブルの世界観を融合させたイラストも、各作品のファンから好評で、要するに抜群に絵が上手い。

グラブルのキャラクターデザインとしてクレジットされているのは皆葉英夫氏。オウガバトルやFFTのキャラクターデザインは吉田明彦氏ですが、両氏は同時期にスクウェアに在籍していて、現在はCyGamessの子会社であるCyDesignの代表取締役と取締役であり、作風が近いことにも納得できます。グラブルは、往年のオウガバトル的な雰囲気を味わえる作品だとも言っていいでしょう(作品の世界観はだいぶ違いますが)。

1枚の「絵」としての完成度が高い反面、昨今のゲームではアニメーションを使った演出が当たり前である中、これはさすがに動かせんやろ、という絵柄なのは難点と言えそうです。

とはいえ、グラブル本体以外では、アニメも放映していましたし、現在「グランブルファンタジー・ヴァーサス」(GBVS)や「グランブルーファンタジー・リリンク」といったコンシューマー向けタイトルでも、アニメをもりもり入れているようです。

キャッチーで入り込みやすい「王道スマホRPG」


グラブルは、「王道スマホRPG」をうたっています。何が「王道」なのかというと、ストーリーがクソほど王道です。

ゲームを始めると、主人公は空から降ってきた少女(名前は「ルリア」)を助けようとして、いきなり命を落とします。

空中にいくつもの「島」が浮かぶこの世界では、「騎空艇」を駆って島々をわたる冒険者を「騎空士」(きくうし)と呼びます。なんだかんだあってルリアが持つ不思議な力により命を分け与えられ、以降ルリアと1つの命を共有するようになった主人公は、騎空士となり、行方知れずになっている父が辿り着いたという「星の島イスタルシア」を目指して旅立つことになります。

このあたり、実にキャッチーで分かりやすい。FGOは導入部分をやってみて「よく分からない」って感想でしたが、グラブルは「なるほど、大体ラピュタだ」で納得でき、ゲームの世界に入っていくことができました。

パズーのような冒険ができる、というイメージでテンションも爆上がりです。騎空艇って、ラピュタの世界で言えば飛空艇ですし。

この世界の「人類」はヒューマン、ドラフ、エルーン、ハーヴィンの4種族で構成されますが、これは、よくあるRPGの四大種族のアレンジだと考えれば7割方問題なく、世界観にハマっていったら徐々に理解を深めていけばOKです。このように、何のてらいもなく「王道」をやってくれるのは、全くもう純粋に素晴らしいと思います。

超分かりやすい本作の世界で、いいスパイスとなっているのが「星晶獣」という存在です。

はるか昔、グラブル世界の人類は「星の民」と呼ばれる存在に支配されていたことがあり、星の民は「星晶獣」という人工生命体を作り、使役していました。星晶獣はそれぞれ特別な役割と特殊な能力を持ち、姿形はモンスター然としたものから人型のものまで多様です。そして、人類とは異なる価値観や考え方を持っています。そうした、明らかに人類とは異なる彼らの視点も用いながら人類の姿を描いていくことで、グラブルのストーリーは分かりやすいのと同時に味わい深いものになっています。

メインストーリー中の星晶獣は、自然の脅威の象徴だったり、兵器利用されるロストテクノロジーだったりすることが多いですが、中には、自分の役割を失った中で「だたの命」として生きるために、絵を描いたり芝居を始めたりして人の社会に溶け込もうとする星晶獣がいたりします。また、ある地域では「神」としておそれられていた星晶獣が、我が力の源は人々の信じる力であり祈りであると説き、別の地域の混乱に対して人々の心をまとめ、対処したりもします。

人間同士の物語でも、人が他者のために己の力を出し尽くすという、シンプルながら力強いテーマの描き方が本当にうまい。毎度新しいイベントを楽しみにしていました。

ストーリーパートは基本的に紙芝居(絵と文章が表示されるアドベーチャーゲームテイストで、選択肢はほぼない)となります。私はしばしばラノベなどで見られる変なクセのある文章がキツくて読めませんが、グラブルのシナリオは、なんというか「しっかりしている」のが特徴というか、スタンダードで誰にとっても読みやすい文章であることが偉いと思います。

ただ、しいて言えば、少々衒学的な感じがするときがあるかもしれません。「巫山戯(ふざけ)る」とか「五月蝿(うるさ)い」とかいった、常用外の用字をしてきたり、そこそこ文章を読み慣れているつもりの私も初めて目にするような特殊な単語を放り込んできたりとか。個人的には好きでした。意外な発見があって。

複雑なバトルシステムと「上限解放」という謎概念


ストーリーが王道な一方で、バトル関係のシステムはかなり複雑です。1つのパーティに編成できるキャラクターは主人公含め6人(フロント4、控え2)。装備できる武器は10(特殊編成では13)。あと、召喚石を7個装備できます。

特殊編成で武器を13個装備したところ。どうやって使っているのかは謎


最初は「武器を10個装備できる」ことの意味が分かりませんでした。どう考えても手に持ちきれないし。武器が「スキル」を持っているというのも謎で、武器が技術を身に付けてるってこと? という違和感は、かなり長いこと残りました。

編成では、火水土風光闇の6属性分パーティを作る必要があり、属性相性のない「無属性」の敵というのも存在します。

グラブルに限らずソシャゲでは一般的なシステムのようですが、「上限解放」というのも、当初は意味が分かりませんでした。武器や召喚石はレベルを上げて強化してから使うんですが(これもだいぶ意味が分からない。風船をふくらませてから遊ぶみたいな感じ?)、そのままだと上げられるレベルに限界があり、同じ武器を複数合体させたり特殊なアイテムを使ったりして「上限解放」し、限界を引き上げる必要があります。


こんな感じで、いろいろとあるよくわからないアイテムをいっぱい集めて上限解放します


こうした複雑なシステムは、長期にわたってプレイしていく中で小刻みに達成感を得させ、また、なかなか「上がり」に行ってしまわないようにするためにあるようです。悪く言えば遅滞施策というか、無駄に制限を課している感じではありますが、よく言えば延々と遊べるし、複雑なシステムのあちことをいじることで細かく新要素を設けられるということでもあります。

ソシャゲは、そのシステム上「インフレ」が避けられないそうです。長期間運営を続け、徐々に要素を追加していく中では、キャラも武器もそして敵も、徐々に「これまでより強い」やつにしていくのが常道となります。で、これを単純にやると1年前のキャラや武器では最新の敵に太刀打ちできない、なんてことにもなりかねません。

が、グラブルはインフレが比較的緩やかで、昔のキャラが活躍できる機会も多い、といった評をよく聞きます。

システムを概ね理解したら、こうした複雑さは「無限に続けられるやり込み要素」のような感覚になります。私はグラブルを始めてから、買い切り型のゲームによくあるレアドロップ集めや超強敵の攻略といった、一般的なやりこみ要素への興味が皆無になりました。無限に新コンテンツの追加があるグラブルの方が、やり込み要素のやりがいが圧倒的にあるので。

とはいえ、10年も同じシステムを運用しているといろいろ大変なようで、「敵の強化効果を消去する技」に対し「消去できない強化効果」が現れ、「強化効果を(即消去できない代わりに)短縮できる技」が現れたりして、単純なインフレではないけど複雑化はなかなかのもんだな、という感はあります。

バトルの基本は「死に覚え」+「周回」ゲー


バトル自体の基本は、敵の行動パターンを覚えて対処していく「死に覚えゲー」であり、グラブル内の最大のイベント「決戦! 星の古戦場」などでは、同じ敵を倒しまくる「周回ゲー」です。

私は、この死に覚えゲーも周回ゲーも、どっちも苦手です。生涯でもっともプレイしたゲームがKOEIの歴史SLGシリーズであるためか、単に性格的なものか、装備を強くしてキャラも鍛えたら、あとは手堅く動けば勝てる、といった戦略視点でのプレイが好みで、初見では勝てない前提のボスってのが、どうも納得いきません。

古戦場は、ゲーム内のプレイヤーギルド的な「騎空団」単位で敵を倒して得られる「貢献度」を競うイベントで、要するに同じ敵を何百回、何千回と倒していくわけです。とはいえ、十分に準備をしていればそこそこのプレイで最高レベルの報酬が得られる設定がされており、貢献度対決の勝利報酬はそこまで多くないので、本当に死ぬほど周回する人は少なくなっています。

グラブル運営としても、非プレイヤーがいじり感覚で「古戦場から逃げるな!」とか言うような、鬼周回ゲーにはしたくないようです。

一部の特殊キャラクターの上限解放などのために、初めてのプレイヤーからすれば「鬼かよ」と言いたくなるレベルの周回が要求されます。ただ、タイミングよくブラウザーをリロードするなどのプレイ効率化ワザを身に着けたうえで、慣れてしまえば、こんなん無理やねんと思う周回も、いつのまにか普通にできるようになってしまうのが不思議です…。


「欠損」とうまく付き合うことが大事

ソシャゲ全般でよく使われるよくない言葉に、「人権」と「欠損」というのがあります。

特定のボスに特効だったりして、持っていないとバカにされるぞというキャラやアイテムが「人権」、それらを持っていないのが「欠損」です。ソシャゲのプレイヤーの中には、「人権がない俺にも配慮しろ」とキレたり、「欠損編成でサーセン」と自虐しながらそこそこ強い編成を晒したりするような、なかなか複雑な人も観測できます。

ガチャで欲しいヤツが出るか出ないかは運任せである以上、こういう一種の格差が生じるのは当然で、それによる優越感や劣等感の波を上手く作っていくことも、ソシャゲ運営のノウハウさなんでしょう。そして、「人権」を全部手に入れるほど課金できるわけでないプレイヤーは、「欠損」といかにうまく付き合うかが、ソシャゲを楽しく続けるキモになると思います。

では、具体的にどう付き合うか? 1つ考えられる簡単な方法は「適当にやる」です。たかがゲームなんだし、適当にガチャを回して、出たヤツで適当に遊べばいい。それで満足できるなら問題ありません。

以前、カードゲームに関して「弱いカードで勝っているプレイヤーは強いカードを持っていないわけじゃない。全てのカードを持っているのが大前提で、そこから研究を重ねた結果、一般には弱いとされるカードがデッキに入ってくることもある」というような発言を見て、なるほどすげえなと思ったことがあるんですが、ソシャゲの超上位プレイヤーも同様の発想で、息をするように課金しているようです。

中には「今月ももやし生活」とか運営に文句を言いながら課金を続ける(という演出で実際には大金持ちかもしれませんが)プレイヤーも見られます。3食もやしだろうがなんだろうが、欲望のままに課金しても生活が成り立つなら、それもそれで構いません。

以上のどちらでもない、無課金・微課金ながらにキッチリとプレイしたい人にとっては、タイミングを見てうまいこと「天井」するのが、最適な選択肢となります。

グラブルのガチャは1回300円(「モバコイン」等ゲームプラットフォーム内のコインを購入して回し。そのコインを購入する際に手数料的なものがかかり、正確には315円)で、ゲーム内でもガチャを回すためのアイテム「宝晶石」(300個で1回ガチャを回せる)が、さまざまな手段で入手できます。

そして、ガチャを300回分回すと、目玉アイテムを1つ交換できるようになります。これが俗にいう「天井」で、かつて、グラブル内で起きて消費者庁も動いた高額課金トラブル後に実装されたそうです(詳しくは「グラブル アンチラ事件」で検索してください)。

グラブルは他のソシャゲと比べてけっこう気前よく宝晶石を配布してくれるそうで、また、年末年始と周年期(毎年3月)、夏休みには大き目のキャンペーンをして無料ガチャをやったりもするので、無料ガチャを多めに回したタイミングで貯めておいた宝晶石を使うことで、年に4、5回は天井できるようになります。

それで何をするかというと、またパーティ編成の話。グラブルの編成には、無課金の武器・召喚石で完結する「マグナ編成」と、ガチャででてくる武器や召喚石が中心となる「神石編成」の2つの系統があります(最近はどっちとも言えない編成も出てきてますが)。

超大雑把に言うと、最強のマグナ編成を100とすれば最強の神石編成は150ぐらいのパワーがあり、編成の多様性なんかも神石編成の方が上です。つまり、ガチャを回すことで欲しいキャラを手に入れるだけでなく、神石編成を組めるパーツを揃えていくのが、強くなることを目指すプレイヤーの行動指針となるわけです。もちろん6属性分それぞれで。

私はプレイ開始から3年ほどかけて、6属性とも当時の最強の8割前後、一部属性はほぼ最強のレベルまで強化しました。

でも、ここ2年ほど強い武器や召喚石の実装ペースが上がって、また、汎用性はそこまでないけど特定場面で強いみたいな武器も増えて、これを年4、5回の天井で補って追い付こうとすると、おそらくあと2年程度はかかるんじゃないかなという感じになってます。もちろんその間も新キャラや新武器、新召喚石は次々と実装されるわけで、この調子ならもう追い付けんなあ、というのも、そろそろ潮時かしらと感じる大き目の要因でした。

これはゲームに限らない話ですが、何かの強化のレベルが上がっていくほど、コストのわりに小さな強化幅になっていくのが世の常です。そして、一度てっぺんが見える水準までがんばって、不意に(ソシャゲの場合は運営の思惑で)突き落とされるのは、なかなかに遣る瀬ないというか、何か発奮材料がないとそのまま諦めちゃうなと思いました。

「コストのわりに小さな強化幅」の影響で、最近はガチャで出てもうれしくないレアアイテムが増えていく(すでに持ってるし上限解放も終わってる、時代遅れで今は使わない、等々)のも難儀でした。ガチャ中は脳汁が出るけど、終わった後虚しい、みたいな感じで。

生活習慣に食い込むゲーム


携帯電話の普及とともに出てきたソシャゲの商売は、ユーザーが常時携帯している端末でプレイし続けるよう、習慣化させることが第一の鍵なんだと思います。「ログボ」(ログインボーナス。とりあえずログインすれば何か報酬が貰える)、「日課」(それなりのゲーム内報酬を入手するために毎日周回すべきコンテンツ)といった言葉があるくらいに。

ソシャゲを始めてみて、複数のソシャゲを並行して遊んでいる人が多いことに驚きました。ソシャゲはユーザーの生活習慣に「ソシャゲをやる」を組み込ませるので、1つソシャゲを始めると、同じプラットフォームのゲームとか話題のタイトルとかに、次々と手を出しがちなのかもしれません。

スタミナ(行動のために何らかのコストを支払う。時間でゆるやかに回復するほか、特殊なアイテムで回復うできる場合が多い)制で、ある程度プレイすると回復待ちが必要になるのもソシャゲによくあるシステムで、その待ち時間の間に別のゲームをやる人が多い、ということもありそうです。グラブルの場合、スタミナ回復アイテムを大量入手できるので、ほぼ回復待ちは必要なく鬼周回できてしまうのですが。

私がグラブルに手を出したのも、もとはといえば他のソシャゲがきっかけでした。ロマサガシリーズが大好きだったもので、ロマサガのソシャゲ「ロマサガRS」が出たときに、それまで興味もないし手を出したらダメだとも思っていたソシャゲに、初めて手を出してしまったんですよね。

でもロマサガRSはひどい出来だったのですぐ辞めて、しかし、1カ月ぐらいはプレイしていたので何となく「ソシャゲをやる」生活習慣はできてしまって、ついでにメジャータイトルをいくつかやってみようと思ったところ、グラブルにハマった、という次第でした。

ソシャゲを「楽しんでいる」という感じではなく、習慣化して、言ってみれば惰性で続けている人も、けっこういるように思います。実際のところ、その差はどこにあるのかは、よく分かりませんが。

グラブルで好きなキャラの一人、ネモネ。自称「ネモ姉」
何が好きかというと、この人だけキャラの説明のノリがおかしいんですよ。かなり初期にガチャで引いて、なんか懐の深いゲームだなと思いました。キャラクターのノリもかなり独特で、実はシナリオライター的にも扱いにくいんじゃないかと思っていたところ、唯一彼女が主役級で登場するイベントで、いろいろな事情からどうも真面目にやれなくてふざけてしまい、それによる軋轢も生みまくるけど、実はけっこう策士で、ふざけたことの帳尻合わせのために努力してる、といった厄介な個性がうまいこと描かれていてよかった。そんなネモ姉が活躍する「パリウリ・パラライハ」は、2024年4月15日から復刻開催!

「辞めにさ」のシステム

商売としてのソシャゲを考えると、「辞めにくくする」ことも重要でしょう。

ソシャゲを実際にプレイする前の私は、ガチャに課金させキャラやアイテムを集めさせてサンクコスト化させる(辞めたらこれまでの投資が無駄になると思わせる)ことがキモなんじゃないかと考えていましたが、実際にやってみると、これはそうでもありません。ガチャに突っ込む金はあぶく銭というか、ギャンブルの種銭というか、その瞬間に脳汁を出すための金であり、コスト云々で考える人は、おそらくちょっと手を出しても短期間で辞めます。

どっちかというと、ゲーム内で強者となり優越感を得ている人が、その座に居続けようとするため――先述の「人権」を失い「欠損」状態になるのが嫌で、というのが、課金沼の誘因としては強そうな感じがします。

ソシャゲに限らず取り入れられているものですが、ゲーム内コミュニティ、プレイヤーギルド的な要素も、「辞めにくさ」のためのシステムと言えます。グラブルの場合は先述した「騎空団」で、最大30人のメンバーで構成されます。プレイの快適さや各種報酬のためにはプレイヤーは団への所属が必須で、騎空団対抗イベントである古戦場で勝つことを考えれば、最大の30人集めることは重要な課題となります。

30人ってけっこう多くて、団の幹部(団長、副団長)が全員に目を配るのはなかなか難しいです。友達とやっている人でも、30人全員リアルな知り合いという例は聞いたことがなく、団のリーダーはSNSでの団員のリクルーティングに追われます。

プレイスタイルは人それぞれなのに、稼ぐ貢献度にバラつきがあると多く稼いでいる人は不満に思うし(同レベルの人が30人いればもっと勝てるし稼げる、という話になる)、団の幹部はいつも大変そうです。

見方を変えれば、基本的にうまく行かない前提と皆が認識できるからこそ、団幹部の運営が多少抜けていても皆目くじらを立てない、といったことはあるかもしれません。

もちろん、自己中心的に振る舞うことに躊躇がない人にとってはどうでもいいことですが、私はそれなりに気になるので、4月上旬の古戦場まで仕事をして、次のイベントに向けたメンバー集がめしやすい期間に辞めようと思っている、というわけです。

メインストーリーが終わらない

ソシャゲには「ガチャで出てくるキャラを殺せない」という制約がある、と聞いたことがあります。

そのキャラが欲しくてガチャに大量の実弾(現金)を突っ込んだ人もいるわけで、死亡などの理由によりゲームの世界から消してしまった場合、どういうクレームになるか分からないというか、ユーザーの気持ちがどうなってしまうか分からないけど、強烈なマイナスになることは明らかです。また、完全に主観(感情)の問題なので、厄介なことになるのも間違いないでしょう。利用規約に「運営は仕様を変えることがある」といったことは書かれていますが。

ソシャゲの商売としては永遠に運営が続くことが理想であり、結果、キャラが増え続け、ストーリーやら何やらも拡大を続けていくことになります。ゲームの世界観やストーリーも、それが可能なものである必要があるでしょう。仮に当初のゴールに到達しても、何かしら、その先がなくてはならない。

さまざまな意味で「終われない」ことのいい面、よくない面が、ソシャゲから観測できるかもしれません。

グラブルのストーリーにはメインストーリーと月に1本ずつのイベントストーリーがあり、主人公たちは10年間冒険を続けていますが、基本的に歳をとりません。

メインストーリーについては、少し前にプロデューサーが「そろそろ一区切り付けることを考えている」(イスタルシアに辿り着く?)的な発言をしており、ちょっとそんな気配が出てきましたが、メインストーリーの次の更新がいつになるのか分かりません。

「真王」というすごそうな地位にいながら、メインストーリーで唐突に主人公に対して「おまえ、明日から真王な」と言ってぶらっと旅に出てしまった元真王ことタウルーク。このあたりからメインストーリーがよく分からなくなってきたうえに更新周期が長くなってきた…


イベントストーリーを合わせた全体について、私は当然ながら「サザエさん方式」で、時間経過については曖昧にしてるんだろうと思っていましたが、9周年目あたりから、ちょっと雲行きが変わってきてる気配があるんですよね。

並行世界(パラレルワールド)的な世界観が示されたときには、えっ今までの俺の認識が完全に崩される(かもしれない。これまでの多くのイベントストーリーの体験が、連続していない並行したものである可能性がある)の!? とウルトラ戸惑いました。

キャラクターが過去のイベントストーリーを踏まえた言動をしないことがあるのは、そちらのイベントを未見の人への配慮でもあるだろうと思っていたら、実は「世界線が違う」から、という可能性を示された感じになります。

また、特異点(全ての並行世界に出生する人物、とかなんとか説明される)たる主人公を生存させるために数多くの並行世界の演算を繰り返し…とかいった壮大なストーリーが語られて、そこでも大変に狼狽しました。

ソシャゲの商売において、主人公=プレイヤーが存在し続けていることは、まさに作品世界を成立させるため必要な条件であって、プレイヤーが誰もいなくなったら世界も閉じる=サービス終了しかないわけです。

主人公を世界成立の鍵みたいな感じにするのって、メタ・ソーシャルゲームとしてハマりすぎると思うんですよねえ…。並行世界の演算を繰り返し、主人公にとって最適なルートを探る行為は、そのまま「企画会議」だと思えてしまう。

今後、実際そういうストーリーになるのか、ならないのかは分かりませんし、並行世界みたいな話が出てからストーリーがかなり複雑化しており、私が何か誤解しているかもしれませんが、人間ドラマがとても好きなのに対して、そういう世界設定はあんまり好きじゃないなあ、みたいなね。どうもね。

そんなこんなで、終わります

だいぶ長くなってしまったので、このあたりで終わりにしておきましょう。目的地であるイスタルシアに辿り着きそうで辿り着かない感じなのがもどかしいですが、プレイヤーとしてイスタルシアを見るのは諦めます。

本家グラブルも人気が続いているようですし、ソシャゲというカテゴリーはゆるやかに衰退しているような話も聞きますが、GBVSやリリンクをしっかり作り込んで出しているのは、単なる派生作品でなく新しい柱にしようという狙いがあるのでしょう。知的資産ないしブランドとしてのグラブルは、ソシャゲの枠を超えて今後も発展していくのだと思います。

そうした新しいタイトルで、私もイスタルシアを目にする機会があるかもしれません。

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