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5年目にして、ようやく成熟期を迎えた(但し書きあり)『THE W』【笑いのブン学】

小林 文/エディター

『THE W 2021』が終わった。12月13日の夜、リアルタイムで観て余韻に浸っていると、仕事から帰宅し結果をまだ知らぬ夫が「どんな大会だった? 」と聞いてきた(「優勝者は教えないで」の意味を含んでいる)。その問いに対して私の答えは、「過去イチでよかった、成熟してきた」。夫は録画を再生しその日初めての、私は2回目のTHE Wを観て就寝。それから数日経過し、落ち着いたところでこれを書いている。

「過去イチでよかった」「成熟してきた」の理由に重点を置いて語ろうと思う。

…が、その前に、来年にむけて改善してほしい点から書いておく。

それはやはり大会終了直後から(オンエア中から)物議を醸している採点方法について。AブロックとBブロックそれぞれに分かれ、”勝ち残り方式”で戦ったことがやはり観戦後のモヤッと感の原因。1組ずつ点数をつける方法とは異なり、「暫定1位と比べて上か下か」という“減点”方式での採点になってしまう。

ちょっと話が逸れるけれど、実はこれ、『バチェロレッテ』(2020年/Netflix)にも似たようなことを感じていた。

ひとりの女性が17人の男性の中から運命のひとりを選び抜く…はずが、最終話で誰も選ばなかった、というオチをつけて話題になったあの番組。盛り上がったのは最終話のオチ部分で、その途中にエンタメとしてのワクワクをイマイチ感じられなかったのが、番組として残念だった。バチェロレッテが、男性ひとりひとりの長所を見つけて”加点”していくのではなく、自分と相手との価値観のズレに対し無意識に”減点”していく。どうにも盛り上がり切らなかったのは、視聴者がそこにモヤッとしたからでは? というのが私の見解だ。(現在配信中の『バチェラー4』はさすが、そのあたりを改善。今のところ”ほぼ加点”な番組運びで、うまくエンタメに昇華している)

話をTHE Wに戻す(笑)。

来年の大会に求めるのは、”勝ち残り(=減点)方式”ではなく、”1組ずつの採点(=加点)方式”への変更。番組がエンタメとして今よりもっと盛り上がるだろうし、そうすることで、芸人と審査員、両者へのリスペクトを感じられる。

人生をかけてあの舞台に立つ芸人たち、それを全身で受けとめ審査する&審査次第では炎上の矢面に立たされてしまう審査員たち、それぞれへのリスペクトを番組演出には期待したい。

特に、生放送という番組の特性上、審査員のコメントを細かく拾う時間がない。二者択一の採点はどうしても”好き嫌い”の採点に見えてしまう(本当はそんなことなくても)。1組ずつ、100点満点中何点か、という採点ならば、コメントを聞けなかったとしても、各々の細かい採点基準を感じ取ることができるはず。芸人本人も視聴者も。来年は番組演出に、それぞれへのリスペクトをぜひ見せてほしい。

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さて。冒頭で書いた、「過去イチでよかった」「成熟してきた」について。私がそう感じた理由は、「”女芸人”のネタに、バリエーションが増えたから」

これまで、THE Wの舞台に立つ女芸人たちのネタは、”女”としてのネタが多かった。”女ならでは”の生態にまつわる設定、”女ならでは”の”女”に対しての毒舌、”女ならでは”の下ネタetc. …。THE Wの大会に対して、「”女”芸人に限定して開催する意味」を問う声が毎回あがっていたのも、そこに関係していた。

でも今年の大会、特に最終決戦に残った3組、Aマッソ、天才ピアニスト、オダウエダのネタに関しては、”女”を感じなかった。言い換えると、「”女”芸人でなかったとしてもおもしろいネタ」だった。

Aマッソの1本目『コント:電話』、2本目『プロジェクションマッピング漫才』、天才ピアニストの1本目『コント:ドアの強度チェック』、2本目『コント:スーパーのレジ』、オダウエダの1本目『コント:焼鳥屋さん』、2本目『コント:ストーカー』。

これらすべてが、従来の”女ならでは”軸ではなく(設定は女だとしても)、各々のコンビが「本気でおもしろいと思っているネタ」、という印象を強く受けた。だから、「”女”芸人でなかったとしてもおもしろいネタ」に見える。

このことが、「過去イチでよかった」「成熟してきた」と思う理由だ。

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では、最終決戦に残った3組にしぼって感想を。

・Aマッソ:
1本目が良かっただけに、2本目の最初は正直「わー、去年のプロジェクションマッピングかー大丈夫かー!?」と心配していた。が、そんな心配をよそに、素晴らしいネタだった。私は昨年のM-1の漫才論争について、「漫才とは、観客に”情景”を浮かばせるもの」と定義した。Aマッソのプロジェクションマッピング漫才は、視聴者が思い浮かべた”情景”を映像を用いて答え合わせする、という漫才。あえて言葉では説明的に語らず、映像にして共有する。しかもその”情景”は、視聴者が思い浮かべていたものの斜め上をいき、その少しだけ想定外なところが笑いに繋がる…というクリエイティブさ。これまでのAマッソは、コアなお笑いファンには愛されていたけれど、マス層には賛否両論あるコンビだった。それは、彼女たちの巧みすぎる言葉選びが好き嫌いをわけてしまっていたから。けれど、プロジェクションマッピングにすることで、Aマッソの視点のおもしろさは確実に伝わりつつ、嫌味がなく、いい塩梅に着地する。Aマッソにしかできない漫才で、Aマッソの良さが一番伝わる漫才だと思う。そしてこのネタは装置を使うため、M-1では決して披露できない。THE Wだからこそやる意味があり、その勝負の仕方もまたカッコいい。あ、それと、加納氏のキレッキレなツッコミはキープしたまま、村上氏のボケ具合いが程よく自然になったのもいい。

・天才ピアニスト
明るく楽しい気分で笑える、みんなに愛されるネタ。ふたりがしっかりその世界に入り込んでいるから、観ているこちらもすんなりネタに没入できて心地いい。1本目の『コント:ドアの強度チェック』のあと、笑い飯・哲夫氏が「ボケももちろん上手いけど、ツッコミの竹内さんが顔半分しか見えていないのに怒っていることをうまく表現している」と評価していて、「まさに!」 とテレビを観ながら納得した。(こういうコメントをたくさん聞きたいから、やっぱり1組ずつの採点方式にしてほしいのよ)

・オダウエダ
発想の奇抜さがジワジワ効いてきて、ネタが進むほどにハマる。この手のネタは今まで男芸人の得意とするところだったけれど(天竺鼠など)、”女芸人”もできることを見せつけてくれた。今までの女芸人でもいたかもしれないけれど、決勝まで上がってこられるレベルになったのは、時代の進化だと思う。

・ヨネダ2000(1本目で敗退したけれど)
今年M-1準々決勝(東京)の生観戦で初めて観て笑った。そして、そのときよりさらに磨きがかかっていてビックリ。『ストイックなお相撲さんである友達と仲直りしたい』という摩訶不思議な設定もさることながら、発声の良さやしなやかな体の使い方など、実は落ち着いて観られるポイントがたくさん。M-1の予選とは違って、テレビではふたりの表情がはっきり確認でき、面白さ倍増。THE Wの結果は残念だったけれど(1番手でなければいいところまで行ったかも…)、M-1の敗者復活戦でもう一度観られると思うと、楽しみなコンビ。M-1準々決勝でやった『YMCA』のネタ、観たい観たい! いい顔つきをしていて、オーラを感じる。

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最後に。

今年のTHE Wのもうひとつのトピック。それは、Aマッソへの高評価が増えたこと。何度も言うけれど、マス受けしないAマッソだったのに(笑)、これはうれしい驚き!

とにもかくにも、私としては、最終決戦に残った3組のどこが優勝しても文句なし! だったし、3組ともこれからテレビでたくさん観られそうで楽しみ。時代とともに”笑い”の幅が広がり、5年目にして成熟してきたTHE W。総じて、「いい大会」だった。

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小林 文/エディター

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