友達にウケるため

 久々に会う友達とご飯を食べに行った日、いつになく日頃のヘイトが口から溢れた。それはもう逆さまにされた砂時計のようにサラサラと淀みなく、刻一刻と過ぎていく時間の尊さを示す一粒の砂が蓄積する毎に乱暴な言葉遣いで放たれた。

 何と言っても、聞き手にウケる。自分が抱え他では話せなかった恨み辛みを笑いという形で肯定してくれた時間は暫く振りだったから、楽しかった。

 それからは専ら、何かを目撃したり嫌な空間に見を置いてしまった時は、ひたすら頭の中で言葉を並べて、この嫌ったらしさを高純度で伝える組み合わせを模索し続けている。格闘ゲームのコマンド技みたいな、強打撃を炸裂させたいがために、一纏めにした話を僅かに緩めた蛇口から独りでに溢してみる。

 いや、ピンとこない。要らない説明が長すぎて飽きられてしまう。少し削る。次は話の顛末が見え見えで期待値を超えてこない。一度バラす。あれ、これってそもそも面白い出来事だったのか?咀嚼し過ぎて面白かった原型を忘れてしまった。

 これを繰り返してる。疲れていたから面白がれたのかな、噺家さんや芸人さんだったらどうやって形成するんだろう。自分はそのどちらでもない。それでも、友達にウケる話をしたい。

 もう昨日のことだけどもう一度練り直す。並行して何か面白そうな出来事を探す。一つ気付いたことは、人はやっぱり悪意が好き。皮肉や冷笑はいつも一定の需要がある。そのボックスを満たそうと奮闘する皮肉屋がこのところ増えすぎている。皮肉のレッドオーシャン。倍率が高い。賢く生き残るためには、ウケやすい話題でありつつまだ未踏の地を探すこと。

 それは一つ発明する必要がある。めんどくさいけど、友達にウケるためにやってみよう。



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