映画 「ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~」
両親の老老介護を娘が撮ったドキュメンタリー。の、続編。
以下、ネタバレ感想です。
ボケるのはばあちゃん。自分が次第にボケていくのは、どういう気分なんでしょう。
ある朝、「人に迷惑かけてばっかりだ。死にたい」と言って泣き出すばあちゃん。
「いろいろ助けてくれる人がいるんだから、感謝して生きればいい」とじいちゃん。
それでも・・・とグラグラとゆれ続けるばあちゃん。
耐えかねたじいちゃんは「(そんなら)しぬれ!!!」と一喝・・・号泣するばあちゃん。ここでカメラが止まる。
同日のよる。じいちゃんがばあちゃんに背中をさしだし、「もうちょっと下」「はいよ」と背中を掻いてもらう。この夫婦の日課らしい。
ばあちゃんのやるせなさを、じいちゃんが十分に受け止めていたか?というとクエスチョンです。
また、「死にたい」と訴えられたじいちゃんのやるせなさを、ばあちゃんが想像する余裕がどれだけあったのかも不明。
ただ「お互いが抱えているものを明るみに出せていないやるせなさ」は理解し合っていて、「それを出してよい」という信頼関係があるからこそ、相手の真ん中の膿がでてこれるような言葉や態度をふたりと差し出せるんじゃないでしょうか。
じいさんの「しぬれ!!!」は、自分の悲しさも、相手の悲しさも、その両方を焚き上げるような、そんな言葉でした。言葉というより、とりつくわぬ叫びと言った方が近いかもしれません。あえて本気で言ってみせることで、「死ねなんてぜんぜん思ってないし、きみの『死にたい』も本気でそうなのか?」という問いかけになっていました。それはばあちゃんにも伝わってたんじゃないかな。
そんなことがあったあと、寝際には無防備に背中をさしだす日常へ、じぶんから戻してゆくアクションを起こすところも、じいちゃんの思いやりをかんじました。その思いやりをしっかりキャッチして、ながなが背中を掻いてあげてたばあちゃんもお見事。粋なやりとりでした。
夫婦間の、最小単位のプライベートなお祭りというか、デトックスのシステムというか、そういうものを目の当たりにしたような気分でした。
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