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映画「ほつれる」

脚本が、セリフがよかったです。
よ〜こんな生々しいセリフかけるな、すげ〜。
と思った邦画監督はふたり。
濱口さんと(「偶然と想像」の1本目冒頭がとくにすごい)、この映画の脚本・監督の加藤さんが2人目です。
そこまでセリフにグルメじゃない赤星が「すげ〜なあ」と気づくぐらいだから、よほどいいセリフを書いておられるのだろう。

セリフが、とかく日常的(ここがすごい)なので、見ていて「あぁぁ〜っ」ってなります。ヒリヒリ。へたくそな脚本だったら「ああこれは作り事ね、はいはい」といくらか安穏と見ていられるのだけど。

その上質なセリフがあった上で、それを活かす演技もまたよかった。役者さんもこりゃあ楽しかったろうな。

最低限のキャスティング、音楽とストーリーの起伏で、セリフと演技そのものに焦点がしぼられてる。塩コショウだけで、素材のうま味をいかすぜ!な映画でした。

だもんで、脚本家と役者さんそれぞれにチカラがないと成り立たないつくり。もっと言うと、お互いのチカラを理解し合えてるから成立している映画、ではなかろーか。
あらすじとか本気でかけばたぶん2行ぐらいで書ける。その2行をここまで充実させる、作り手としての胆力&実力たるや、きっとすげーんだろうなーと思います。

邦画にもこういう、特殊すぎる事件や設定を極力排除した、シブい実力派なヤツあるねや。
「日常、少ない人数で演技を魅せる!」みたいなんは、おフランスに多い印象だったから、日本を舞台に日本の役者さんがやってるっていうだけでも、なんか不思議なかんじだった。
これを「新鮮」と言うことがすこし悲しくもあるけど(私が業界人であれば)、まあただの客としては「ああ見れてよかったなー」と思います。

この映画、まったくノーマークだったんだけど、黒木さんと染谷くんが「加藤さんと仕事したい」と出演コメントに書いてたので「これは」と観にいったんだけど、よかったな。いいもんみました。

しずかなじわじわヒリヒリ系がすきな人にはおすすめかな。


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