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草の戸や藪に隣りて霜はやき 芥川龍之介の俳句をどう読むか89

初霜や藪に鄰れる住み心

訪問録
 游心帖に終止符をうつてしまつたもの、それが訪問録であるが、二十五字詰十二行の原稿紙を綴ぢた物に半紙の表紙をつけ、訪問録と書いて、僕の病室の枕もとに置いてくれたのは小澤碧童である。
 訪問録の中に殘つてゐる芥川のものは、
十八日(大正十一年十二月)
  一游亭足の指を切る
 人も病み我も病む意太䔥條
 初霜や藪に鄰れる住み心
 冬霜よ心して置け今日あした

(小穴隆一『二つの繪 芥川龍之介の囘想』)

 それにしても井月のことを調べていて、句碑まで建てられたことに唖然とする。これこそがおぞましい文豪飯と顔出しパネルの近代文学1.0の象徴的なふるまいではなかろうか。野垂れ死にさせておいて、後でちやほやする。宮沢賢治にしても、中島敦にしても死んでからでないと評価されない。

 死ぬのを待って評価される。

 死んだとき一番本が売れる。

 生きている間は買わない。

 今買えよ、と思う。

 結局これまで芥川の俳句は誰にも理解されずにいたのだ。

 こんなこともわからないでいたわけだ。

 なのに買わない?

 つまり解らないまま死ぬ?

 はいそうですか。


草上俳句集 第6輯 伊東月草 編草上書屋 1935年


雨滴集 春雨会 編春雨会 1929年


美濃旧衣八丈奇談 滝沢馬琴 著九皐館 1893年


八丈綺談 : おこま才三郎 曲亭馬琴 著||蘭斎北嵩 画藤谷崇文館 1936年


俊傑神稲水滸伝 中卷 岳亭定岡, 知足館松旭 編||博文館編輯局 校訂博文館 1902年

 かぶ?
 
 まあ、「藪に鄰れる」は馬琴由来の言葉の選択であろうか。


鏡花全集 第7巻

 ぬすみごころという言葉はあるが、住み心地というも「住み心」という文字列はほかにみられない。ここで住み心地と言ってしまえばあまりにも俗に落ちるので、ココチと書けば済むところを「住み心」と翁ぶって見せるところがこの句の意匠か。


大正百家選 : 滝の雫創立7週年紀念 地巻 (大正俳句輯)

 それにしても何故みんな「ふーん」なのか。初霜とは地面の話であり、

初霜や土ふくれたる葱畑

 こんな句が一番わかりやすい直接的な句であろう。一番多いのはただ初霜と詠んで季節を示して話題を転じる句だ。

大正百家選 : 滝の雫創立7週年紀念 地巻 (大正俳句輯)

 この句なんかうまく転じていますね。

俳諧拾万集 冬の部

 これも上手く離していますね。要するに初霜やと詠んで「あるある」を論うのは野暮だということなのでしょう。
 橋に草鞋の跡が付いたとか、馬の息が白いとか、落ち葉が薄化粧したとか、そういうのは付きすぎなのだという我鬼先生の枯れ具合が出たのがこの句の味わいなんでしょう。

初霜や藪に鄰れる住み心

 この句もそのパターンにはまる。霜は踏まねばわかるまい。家の中に霜は降りまい。初霜そのものは住み心には直結しないはずであろう。その開きは論われることはない。


新纂俳句大全 冬之部

 もちろん離れすぎてもあざといので、ぎりぎりのところを攻めるのが俳句の面白さということか。しかしたいていの人はそんなことはどうでもいいわけだ。

初春や藪に鄰れる住み心

 そう詠まれても「ふーん」されて終わりだ。

初糞や藪に鄰れる住み心

 そう詠まれても「ふーん」されて終わりだ。

初鰹藪に鄰れる住み心

 そう詠まれても「ふーん」されて終わりだ。

初夢や藪に鄰れる住み心

 そう詠まれても「ふーん」されて終わりだ。

初対戦藪に鄰れる住み心

 そう詠まれても「ふーん」されて終わりだ。

初手天元藪に鄰れる住み心

 そう詠まれても「ふーん」されて終わりだ。

初詣藪に鄰れる住み心

 そう詠まれても「ふーん」されて終わりだ。

初マラソン藪に鄰れる住み心

 そう詠まれても「ふーん」されて終わりだ。

初竹輪藪に鄰れる住み心

 そう詠まれても「ふーん」されて終わりだ。

 なんでもいいわけだ。では鑑賞してみましょう。

…。

…。

…。

…。

…。

…。

 あのね、生きているってどういうことなのかね?

 生きているって、あなたのこれまでの色々、知りえた色々、それが今日、今、この瞬間に、何かと衝突することの感動そのものでしょう。衝突していますか? スルーしていませんか?

水晶今のみない진한出入509 13 569-137 1200501517276 5 6 7

纂新經營業冬之部
ほにはろ569 +37い(ゐ)纂新俳句大全符號〓=天文、目冬〓星氷る□鳴●庭●□隼〓●臘〓凍。貘鉢△銀杏落葉□猪二重廻春初初時爐燎枕叩近氷雨八一本齒凍る次-索枕叩近氷雨之引九云二一三三三日三三一三五、二三七五一〇桑一二、ニー三一三三二二地理、部氣候。煮鰰日蓮星冴る芭春初初爐魦圍爐裏一茶忌蕉●=人事。冬の部凍忌忌隣冬雪開三〇OOO〓一元吾吾八九元〓三見八云南二七□=動物。報恩講入初袴春初凍鰯頭挿す一△=植物。營鮒着待霜蝶一見〓〇一云:元三一五一云三三
とへか わお(五十)ぬりち目〓冬△村落葉●布〓立△茶□千●千△冬●べつたら市一九四〓大晦日□暖め鳥堀〓●△落□狼年年年年惜む次-索枯寒綿負帶御取越木樵の葉至野月入查五ニ七七葉云三一〇綿六一解九〓一二八三二子元元冬〓花三尺、鳥112笑一四百梅天越二二八籠三二二三二二〇至九一云2汲111.引●神△寒□寒苦鳥枯懷神寒寒寒杜父寒掛牡蠣革羽書出寒寒枯枯寒見舞寒垢離顏見狩神蓮木柳椿舟魚雀鳥織爐し搗晒世場樂迎集果入潮の の目次-索三三000二日三五五증정三四四言三二三三二六二三二二一三〓貢四充一二二、三二七ニ三公野月入葉引引茶の木圍ふ橡落葉年年酉年干榾鴛大岡御大散紅枯枯銀寒牡丹返り花黍杏乾寒外寒寒寒火粥神神寒寒神鷗紙カンジ刈寒かいつぶり三四一量鮭言雁三〇子元套八〇二三五キ餅上〓卵三紅三念二〇·佛聲284事二七〇行施三旅受の送三七水ニの內の三無全月川川音時雨綿涸帽子ののの根命二四四四三七七舌ロ念のの無〓六云六鴦漬見講年三二、一五ニ一一〇元葉900二三元二守市市暮三三ニ〓一四三菜冨二五五年年年泥鰌の送忘堀瀨寒枯芭蕉柿寒三菊葉落梅鵲裘寒髪牡粕風掛寒寒寒狩寒神歸鴨神の留守鴉巢の汁邪乞肥居芝詣習置り寒鐘冴鐘寒溫御御茶碗蒸會火石式燒ニ落蠣鴉巢汁の邪乞肥居詣習置芝明るる雨氷の二五、一五一一四三三〇二二二八三112一二〇日 一PCEテニュー〓三元云三〇〇三100.六一ing三二一二三二二101一一〇天一四一三三三三七九in
ふけまやくのうむらなねつそたよ日●玄〓冬の月□鮪〓今朝の冬◎魔日の海△八つ手花●藪〓山眠る△栗落葉□熊●クリスマス一五八●野施行□浮寢鳥吹●姥△室〓麥●浪花△南□海冬の原冬燒嚏次-索雪の雲猪鳥卷等咲蒔忌天鼠引壹四二九元仝云△益〓〓층云元言蚕〓壹증〓量受〓日●追●蕎麥△大〓瀧●夜興引〓宵の冬●子燈心〓氷□鷹●納△葱□石蕗花枯枯枯枯鷄頭頭卵足暖竹達摩忌寒竹の子枯無花果豆巾儺柱刈根酒袋爐瓮涸萩葛菊次-索豆次-索引壹四二九〓豐署三三〓亮승天豐言글초〓100要〓禿〓三豐噐二三引冬冬冬冬毛燒厄朽鯨莖藏枯枯枯蕪枯尾花菁葱菱蘆鍋雪鷹大根引く車狩鯛焚店大短味燈埋爪蒸嵐年貢納ののの味田山雨空布芋落葉漬祭火し酢雪忌燒籠噌火卸忌日交元六八元竟晝云총云一百香壹垂〓〓〓霊豐二二二言三二二四〓〓呉四二五言三四一九冬冬冬厄草藥ロ枯枯枯枯蕪妻鱈狸炭湯寒下駄大汁團婆寒の蕎麥五川野風拂枯喰切木湯曳茨芝蔦芒四ㅎ空긍垂二〓元禿言量壹〓堯奏三三四二五ニ豐com
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す せもひ冬の月纂新俳句大全冬之部現代俳句研究會編目●火の〓雹●歲●餅△枇杷の花□氷△〓諏訪湖氷胼水杉炭ストーブ仙燒燒暮搗魚番冬除天次-索仙燒燒暮搗魚番隊四〇、受≧三〇尤三三六글云二四五六一112引の柴がらみ薄き籬や冬の月溫室の花を照らすや冬の月鰤を釣る十里の沖や冬の月焚火せし練武果てたり冬の月兩岸に灯もなき河や冬の月河添の揚土ひかる冬の月十丁に響く嚏や冬の月珠を吐く雲をし見れば冬の月夜たゞ鳴る帆綱の風や冬の月屋根の上に火事見る人や冬の月子を捨つる女と見ゆる冬の月木の影や我影動く冬の月部番文引炭炭節墨製柊火避生霜姜酒燒の取る分花鉢寒〓云天言三三三一五三四毫助炭炭煤節季火柊插す桶一賣竈掃候炭同同同同同同靑同同子八重六三〓三五晝言三三靈櫻花嵐規
冬雪舟走る音も聞えて冬の月遠火事に訪ひ寄る門や冬の月道の井に水汲む人や冬の月町中に山川流れ冬の月終航の船の歸港や冬の月翌の荷の水菜積みけり冬の月莚たれ高き足代や冬の月狐狸のする空臼搗きや冬の月文覺の瀧のひゞきや冬の月此道に嫌ひな籔や冬の月我ゆけば鳴る長橋や冬の月我が影に下駄の響きや冬の月冬の月水に落すや十二管冬の月柱曆の望の影火を止めて口ぬる窯や冬の月村からの嫁入り通る冬の月瘠せ行けどたつきの馬や冬の月冬の月畑のくぼみに人家かな暗礁に波鳴る音や冬の月町更けて女に逢ひぬ冬の月桑瘤に雪ある畑や冬の月傾ける一峯冬の月欠けし足洗ふ盥の湯氣や冬の月船に住ふ人の妻子や冬の月錠あけて這入る我戶や冬の月三つばんや炎の上の冬の月熱海寢て大島荒れや冬の月眞如堂後ろの畑や冬の月冬の月忍びの火消通りけり川口に一艘もなし冬の月北門の城に一騎や冬の月熊を獲て歸る人數や冬の月醉ふて歸る放下の僧や冬の月夜の辻に砂吹く風や冬の月の部余島霽格鳴三同同天同水同同東洋城同碧同同春醉枯方士牛星別天模櫻醜子一蝶紅靑紅同百同子村郞巴月童堂雪堇櫻佛樹步柴陵外衣綠々葉雷
寒冬月寒月や我が書を埋む背戶の山寒月や谷七卿の古き家寒月や夢に嫦娥の衣を褫ぐ火一片關の戶守るや寒き月寒月や伏見澤文門柱寒月に何か火焚けり湖出城寒月や猫の目光る庭の隅寒月や雲盡きて猶風烈し寒月や石塔の影杉の影湖を圍む亂山黑し冬の月仰ぎ見る應天門や冬の月更けたりな八百八町冬の月汐瘦の松ひよろ〓〓と冬の月冬の月木にかゝりつゝ凍りけり貝鳴らす黑裝束や冬の月冬の月切れ味試す刀かな魔が淵や鏡のごとき冬の月の部立枯の竹吹く風や冬の月河にひゞく按摩の笛や冬の月血に飢えし獸の聲や冬の月冬の月氷を渡る人馬かな武藏野や百里小寒き冬の月猫捨てゝ見返り籔や冬の月冬の月圓塚山に何の火ぞとがり岩尖つら〓〓と冬の月雲を衝く杉千本や冬の月山門の猿を射とめぬ冬の月宴を張る密獵船や冬の月本町筋の倉に落ちけり冬の月北窓の峰に寺あり冬の月芦の根に潮の光りや冬の月獺の息白き水面や冬の月來る人を閉して待つや冬の月冬の月黌門矛の如きかな五同同鳴同同東洋城同同子文甲一野靑黃松象四眉亂南葦萍香裸五はぎ女獨虎解冷射雨素皐千里雪規江矢風花史村擧耳菊水天人居木城行月劍鐵石翠茗月
冬寒月や狐の堀りし人の骨寒月や火山の灰の霏々と降る湯屋出れば寒月匂ふ巷かな寒月に皮を剝きたる棕櫚高し寒月の門を出づれば大河かな寒月や此家荒れて狂女住む寒月に虎溪の寺の深さかな蘆の骨月の寒さに折れにけり寒月の岩に座したる行者哉寒月や坂道戾る馬車二つ寒月や狐の影を地に印す寒月に抱きし瓶子落しけり寒月や大路を我と影法師寒月や筑紫の浦の浪がしら寒月に玉散る櫂の雫かな寒月に狐啼き入る谺かな寒月や氷柱に鐘の響あり寒月に白き蘇鐵の鱗かな寒月や枯木の中の松柏寒月や硝子戶越しに東山寒月や瘦浪人の後影寒月や枯木にひゞく瀧の音寒月を踏で不獵の戾りかな寒月や背戶の柳に桔桿寒月や斯くて去る港顧みず寒月に行人石の如きかな寒月や胡弓に戀を泣くは誰ぞ寒月や陣釜運ぶ卒の影寒月や答刑の人の放たれて寒月に鐘撞く僧の白衣かな寒月や橋の下なる舟住居寒月に高く放歌す傖夫かな寒月や佛一つの堂淺き寒月や窟へ通ふ鬼の道の部六格同同象蝶碧梧桐同七三猿郞著炎獨把奇琅橙黃子未五丈原戎士女鐘瓢夏丹霞亂鹿道仙同容由南北雅風森天行栗遇々央衣堂外象櫻羊聲々柳楓樂童人喬溪菊齋古外
冬の雲冬の空冬冬雲の尾に枯れ立る木立かな絕壁の又生める帆や冬の雲梅はやき山ふところや冬の雲水涸れて廣澤ひろし冬の雲石山や木草をぬらす冬の雲乾鮭の鱗削るや冬の雲廣前に風吹き落す冬の空冬空にうつりて廣き湖水かな冬空やうすれ日寒き流れ雲寂寞とかげる朝日や冬の空冬灰色の冬雲飛べり松の鴟汐枯に松減る濱や冬の雲あれつゞく日本海や冬の雲冬の雲現ず銀杏の梢より冬の雲里寺遠く日あたる鐘撞けばうしろに暗し冬の雲空や櫟林は狐色冬の空はれの綿雲雪の散る冬空や犬を弄りて濱鴉物寒き裏日本や冬の空阪町の上に伽藍や冬の空渡海ある蔚山陣や冬の空空風に寒月うごく疎林かな帆柱や寒月遠き島の上寒月や厨の窓に干菜垂る松の針柳の骨や寒ンの月寒月や耶馬溪十里樹々古りぬ寒月や小田の鳥立つ水の音寒月や郵便入れに村外れ舟待や寒月あびる吹さらし寒月や裸木を吹く風の音寒月を絡んで巨樹の枝細か寒月や木立の底の雪を照る冬空や白き鳥飛ぶ湖の上の部八百十桃水董不禪錦金芋好圖白六玉泊法歩喚童童蒼雷老孫棹湫樓子江子村翠南福花軒月師九鶉潮一村鱸一霽句四靑同紅塘桂喜孤士午歩蒼子花星家江蓑月佛明々綠生華舟軒櫻
時初冬雨時雨管笠の阿彌陀か驛をしぐれけり時雨るゝや産着て跼む猪牙の人降性のおのれ出かゝる時雨哉雨華庵に、廓の駕や朝時雨黄金懷く旅恐ろしき時雨かな時有て松笠おとすしぐれかな夕時雨竹を遮る雲よりす時雨るゝや浮世の人の廓駕あの雲が時雨るゝといふ嵯峨野哉庫裏に入りて呼べど留守なる時雨哉夕烏一羽おくれてしぐれけり松にしぐれ杉に鳶鳴く夕日哉きそひうつ五山の鐘や夕時雨初時雨鍛冶屋の槌に火花かな芭蕉忌の案內書く夜や初時雨山茶花は蕾がちなり初時雨諸多く切干す濱の初時雨の部新藁の屋根の雫や初時雨猿に蓑かさばや伊賀の初時雨馬で見る多賀の鳥居や初時雨養賣の濡れて戾るや初時雨相生の松の雫や初時雨焚火して繩絢ふ宵や初時雨竹林に神の灯や初時雨坂本で僧にあひけり初時雨誰人を送る柩や初時雨買うて來る釣瓶の底や初時雨旅人の京に入る日や初時雨鷄頭を伐るにものうし初時雨冬雲の泌み入る肌の路銀かな巖頭に羽叩く鷲や冬の雲流人舟北さす空や冬の雲禿山に冬の雲洩る日ざしかなどうさ引く枠張の絹や冬の雲一一鳴竹同同六同同靑同同虚同同子香河芙蓉木雪花〃子規居泉公豐紫重獨林棠ヘ東松同同子醉風象蘆葉雪花〃子一洋齋濤郞行昇陰さ城宇規花花外仙子
冬時雨るゝや後架の窓に谷の杉骨二本折れて古しや時雨笠やまかつの煙り時雨るゝ木立哉杉時雨暮れよと鐘のひゞくなり時雨るゝや瀧阪下る黑木馬時雨るゝや初夜の鐘つく東大寺村時雨德利の口へそゝぎけり藪の家暮るゝおそしと時雨けり伐りひらく杉山慘として時雨る沼べりに番小屋一つ時雨けり鐘きゝて針措く妻や小夜時雨時雨るゝや水涸れ川の廣きより火の上に讀む文ぬれし時雨かな捨て文の時雨にぬれて着きにけり引越や時雨れて着きし菊の鉢孔雀の尾檻をはみ出て時雨哉伏見の月淀にしぐるゝ夜舟かな煤汁や町の時雨の潦大阪の時雨にあらぬ名やたゝん剝ぎ殘す棕梠の折葉に時雨けり夏越しの簀庇黑き時雨かなかゝる夜も時雨れて灯見ゆ山社羽重き障子の蟲や夕時雨眞向うに霓の輪見えて横時雨看病の夜半を文書く時雨かな時雨るゝや灯の花の落ちんとす深草の里を見てゆく時雨かな池二つ並んで見ゆる時雨かな時雨るゝや雲近く起る峠茶屋遠山の雲や時雨の薄月夜茅葺の大家ゆかしき時雨哉旅人に名所の松の時雨かな稱名の聲にしぐるゝ野寺哉錦木は倒れしまゝに夕時雨の部同把同格同鳴同同椽面坊同同癖三醉同同句同同同射同魚同一同竹同馬同孤同紅同同松佛栗堂雪石江義冷太軒葉濱
時雨るゝや靜かにおろす玉硯釣鐘の下に時雨の舍りかな旅籠屋の時雨を語る二階かな阪本に來れば舟出る夕時雨鯖船のしぐれ漕ぎぬく艫聲哉根が生えしよな帆柱に時雨哉時雨るゝや花屋日記の誰が淚時雨るゝや頭上の松に濱鴉時雨傘逢はず戾れば千鳥かな筵帆の陰に身を寄す時雨かな枯菊にしぐるゝ庵の障子かな船炙る煙おさゆる時雨かな小夜時雨芦のまろやのぬるゝほど丈山は時雨に新拾ふらん背の猿の茜濡らせる時雨かな柿の木の十本ばかり時雨けり小夜時雨嵐雪待て去來ありの部西浦へ時雨の雲の走りけり納屋人の草履を襲ふ時雨かな山陰や野機の上の片時雨片時雨杉葉かけたる軒暗しよし原にしぐれて原に泊りけり時雨來や湯豆腐も浮き始めけり時雨るゝや柴橋渡る簑の人河北に風見鴉の時雨けり甘蔗殻を烏賊船へ積む時雨かな狩暮し歸る北山時雨かなしぐれの夜四十男が戀をかししぐるゝや紙獨をかくす巫女の袖幾時雨々々て遂に海暮るゝ碓に葢する笠や村時雨時雨るゝや炊煙のぼる谷の家魚喰はぬ漁村の犬や夕時雨鶯の子を貰ひ來し時雨かな鬼圖素櫻醜子井泉水死握石寒梅飛鼓挿得守水老別天樓東洋城蝶呂風鏡竹醉菱雨秋無知紅松同雨同士城南泉酒月鼎樓痩雨竹雲川衣柚葉花後佛花六墨黃十綠宇翠櫻
冬三よし野に時雨るゝ裸櫻かな小包のつきて時雨るゝ障子かな小夜時雨爲鴦の睦み寢驚かせ馬市の果てし焚火や夕時雨灯を剪つて句に心澄む時雨哉裸木の片側ぬらす時雨かな原中や時雨て汽車の煙重き風待の船に幾日の時雨かな木茸をつり老う人や庵時雨山を出る鑛夫の群や夕時雨時雨るゝや南朝四百八十寺泳ぎ場の打捨杭やしぐれけり時雨るゝや並木離るゝ人と馬大釜に澁煮る濱の時雨かな時雨傘竪に山號寺號かな湯の山の名殘時雨るゝ紅葉かな塔の上に光る時雨の鴉かな講義半ば譬への歌の時雨かな破れ傘やお化橫町の小夜時雨曳入るゝ船や時雨の夕渚時雨るゝや狐嫁入る稻荷山鉾杉の鎭守に注ぐ時雨かなしぐるゝや猿は中々人に似る干物の竿に時雨るゝのき端哉義仲寺に人も在さで時雨けり日もすがら時雨んとして薄曇時雨るゝや禪林に入る檜笠君戀ふる夜を松風の時雨かな洲の崎に舟は隱れて夕時雨夥しく帆に風利いて時雨けり時雨るゝや傘の文字讀む川向葎戶や時雨に暗き古障子莚機織ればほろ〓〓時雨かな時雨るゝや季に遲れたる紅葉人の部亭初酒拈蘇射折大十且子若水柑春又春紅高三山梔子松影汲潮燕雲梧芳河士禪寺洞香絕島天田士英花溪樓一未露山臥川聲汀華坤川亭我翁巴子香實花花郞居峰月頂馬村轉央
冬冬の雨川音時雨冬の雨山越す飛脚絕えにけり楪の太き落葉や冬の雨野晒に炭積む庭や冬の雨冬の雨砂に錆つく錨かな冬の雨掛菜に暗き書窓かな馬糧煮る大釜の湯や冬の雨冬の雨灯吸ひ込む潦冬の雨香煙甑に泌む夜かな捨籠にひそむ小狗や冬の雨風呂を焚く物の煙りや冬の雨閼伽棚の花にしぶきや冬の雨湖に枯れし松倒れあり冬の雨贈り膳濡れしを佗ぶや冬の雨草の家の早寢を訪ひぬ冬の雨手袋に傘の柄漏りや冬の雨人うとく行灯にゐるや冬の雨冬の雨助炭の中の鍋ぬるき花賣の時雨になれし大路かな西行は小野に時雨るゝ頃ならめ夜時雨や芋の粥煮る臺所の部靑竹の戶樋を通りぬ冬の雨漁歌歇んであと川音の時雨哉志賀に時雨比叡に羽乾す烏哉筏尻渦まく菜屑しぐれけりいさゝかの塵燒く庵や時雨空小夜時雨暗き灯に見る物の本驛の灯の遠く汽車行く時雨哉幾時雨受けし古びぞ檜笠歌書かん時雨に着たる笠の裏窓あけて時雨見て居る女かなしぐるゝや大津へかゝる牛車時雨るゝや何處に宿借る旅烏時雨つゝ月あり〓〓と大河かなしぐるゝや烟匐ひ行く粟畑靜果淚烏白小虚牛鳳梧桐雨虚松靑三東洋城同同月愚秋濛生雨白素其秋南碎秋鶴愛括菊柳柳浪釆笑賊牛魚六詰六明〓嵐允斗佛航貧川石水水槌川洲霞堇儒里後
北冬の風寒の雨風冬のの北風に向ふ峠の下りかな北風に何する人か長梯子北風に浪立つ大津矢走かな北風の雪吹き落す林かな北風に頰のほてりし女かな北風や露頭の眞葛枯れ〓〓に北風に尻向けてゐる焚火かな北風や根ゆるぎのして動く杭莚戶に犬の寄添ふ北風かな北風に鍋燒うどん呼びかけぬ莚帆の數の子船に北風かな北風や雪投する子五六人北風や物の蔭なる泣評議北風に提げ行く網の雫かな大佛の鼻の穴より冬の風川迄の馬車を下りけり冬の風市に賣る熊の脂や冬の風部節高き榛の立木や冬の風寒の雨米搗く臼の地鳴りかな寒の雨明るく降て歇みにけり寒の雨板がこひ飽く普請かな桃開く夜に似たるかな寒の雨それ鷹の十日がへらず寒の雨明り取り覗く烏や寒の雨裏藪に寒の雨ふる紙屋川わびしさや紙衣にかゝる寒の雨鷄の尾引く車や寒の雨廢朝や馬も通らず寒の雨禪林を出でゝ沙場や寒の雨寒の雨からびし薪に音高し飛び殘る阿房鴉や冬の雨物の怪の襲ふが如き冬の雨忌日知る花賣る兒や冬の雨枇杷の花こぼれて白し冬の雨夢村霞烏白鱸露虚子同悟薰散丘柴八重櫻山梔子不木合村雨溪關山江石子規風風庵鳥波淺把竹同蝶大薑草三椽霽句四子同八重面明冷規櫻衣碩村逸木面川坊月靜佛茅栗明冷規衣碩村逸
凩冬凩に木々の根張りも埋め地哉木枯や寢鳥の騷ぐあまたゝび木枯の岩に取付く小獅子哉木枯の天に聲あり大鳴門凩や貴船詣での女與風の裏河岸更けぬ灯の廻り凩に抱き合ふ雌松雄松かな凩や鐘引きすてし道の端風や芭蕉の綠吹きつくす風や松葉吹き散る能舞臺北風や十里十里に烽火臺北風や脊戶に迫りて籔疊北風や麥に餘りし肥一荷北風やきれ〓〓に聞く三井の鐘山を前に町一筋の北風かな北風に浮名吹かるゝ心中哉北風に吹かれつゝ汐汲みにけり薪負ふて北風にゆく力かな北風や長江白く舟行かず北風や魚市の人去て雪北風や伽藍に高き鬼瓦北風に終日鳴るや古障子駄馬の鼻北風の吹き歪めけり北風は淺間颪の名なるべし北風や沖に吹飛ぶ雲白し北風に懷金のほてりかな北風や珊瑚の如き火中の樹北風や玉川下る竹筏北風や氷の上を走り水北風の川に楮を晒すかな北風に七尾の町の大火かな北風のやみ行く松に法の雨北風や月も出て居て宵神樂北風や尻を吹かるゝ都島の部同松同鳴同同子甲粂柳泰十草花吟榎柿菫芋雨香同禪寺洞松同土四曲白召玄櫻醜子大孤村字雪規之仙盡山園史音濤京陸水水木人我軒月村園哉村六
冬風に鶴の鳴く音の高さかな凩に人住める家や水のへり凩や今欠けるかの山の鼻筑波根の凩に寢ぬ筑波町凩や疵もつ鳥を洲に拾ふ木枯や叺捨てある新墾田凩やそびら吹かれて僧二人凩や浮藻疎らに沼錆びぬ木枯の一つ葉を吹く梢かな木枯の天に舞ひ行く木葉哉殘照や木枯止んで森の天木枯や夕餉の煙庵にみつ凩や水涸れはてゝ石を吹く凩の何處から落て蜘の殻凩や籃の小鮒の又跳ねる凩にもの分けて去る馬賊かな凩や我を流人とかゝり舟木凩凩風や江深く白き鳥一つ凩や苦屋めげ行く波なだれ凩や岩にかれたる物の蔓凩の沖に見ゆるや山の鼻凩や松にくひ込む藤かづら凩や爐に寢仕度の水を打つ凩や溫泉宿の日記發句もなし凩や石切る山のちぎれ雲凩に木の股童子泣く夜かな木枯や錦をさらす京の店凩の廓に通ふ男か凩や大きな月が山を出る木枯や貧乏神の緋の衣凩に蹉跎たる駒の行衞かなのやや部枯や淀川下る新晝の廓行く肥車喪中の家の晝灯船なの裸梧四同蝶同八重櫻同同同雨同乙同把同露子木月衣六字栗月靑麥香同同同同同碧梧桐同同虚同同四同同嵐人子明村子木月衣六字栗月嵐人子明村
冬木枯に軒燈暗し番太皷風や木の實ぶつかる鐘の音凩や木によりて馬車を避けにけり本枯や八幡の藪の竹虎落凩に晝を出て鳴く狐かな凩や水に傾く堤の木々風や一皷六足陣を押す風に火を噴く山の入日かな凩の吹きまくる戶や留守の錠風や病む鶴の毛の拔て飛ぶ木枯や時も遲れず仕舞船凩によろめく馬の高荷かな凩や水高低に沼二つ凩や法師群れ來る塔が峯木枯や濱庫見ゆる水の西木枯や三十六坊火を焚かず風の藍壺吹くや道埃風や火の見梯子に鳴く鴉風に屋根とぶ鮭の番屋かな風や磯釜汐の上こぼれ人妻をうらやむ心木枯す風や手して塗りたる窓の泥風や海士の庇の海松を吹く風や紅葉吹き込む水煙り風や庄屋の旦那が頰冠凩や宵寢の町に月さゆる風や投げはづれたる碇綱凩や落日寒き烽火臺凩に哭する新鬼舊鬼かな風や皆敵に向く陣の人凩の撞木にすがる小僧かな風や上野下り來るランブ賣風に輕き歸陣の蹄かな木枯や林に據りて夜の陣の部二七霞稻射得絕躑魚餘濱十步雉子翠鵜西守六老醉四方太峯頂躅鱗村右川生老湖郞濤人平佛瓢松濤模同淺竹同蘆同同山灌子同鬼紅鳴旬愚癖三綠佛球佛醉城茅綠冷仙綠
初冬雪凩や逢はれぬ母の後影凩や艫に艀の浮き沈み凩や離れては寄る池の鳥凩の吹くや詩の屑歌の屑凩の野に居るものは鳥哉凩に矢文の立ちし社かな凩や凩の波に漂ふ汐木かな凩を橫ぎる鷲の羽音かな凩や野茶屋の軒の懸草鞋凩の洞穴に入るさけび哉木枯や山から山に飛ぶ鴉木枯に灯を得て歸る舍人哉凩の一夜を寢たり峯の寺風や猿に魅の入る丹波越し凩や鍋の尻火の消え移り凩や狐の罠のから彈き肥桶並ぶ畑中初雪や二寸の麥のまだ見ゆる初雪の松や鴉が默りゐる初雪の降り出しけり雨まじり初雪や竹に雀は紋どころ初雪の根岸通れば謠ひかな初雪に詩箋拾ひぬ酒肆の前初雪に御苦勞樣と一茶かな初雪やつくり木多き寺の庭初雪をふるへば簑の雫かな初雪やきれいに笹の五六枚初雪や海をへだてゝ何處の山凩や楢千本に家二軒凩や焚火に焦す筏尻風に柴舟下る早さかな凩や島へ吹かるゝ夕烏木枯や菰かぶせたる晒糸凩の後や月夜の仇鴉の部獨蕪拈牛三默百里山四同同子金石方桐蝶童羊靈舟綠市三蠻岫李眞翠徒二豐孤不禽歩稀我水居彩水友苺雲瓶臺松士松月村翁化歩梔子行明華庵步允明南規子骨牀外子夢
雪學びする窓につもりぬ雪五尺雲垂れて雪に影ある月夜かな雪と見て穴とざし寢る夷かな一番の登城を急ぐ深雪かな局口曙の雪掃かれけり我のみの下駄跡淋し暮所の雪宿とりて猶降る雪に佗びにけり雪明り松顧みてあやしめり野の杉に往來叩くや下駄の雪挽きかけし松に一夜の深雪哉山松の雪日々かぶる藁屋哉駕籠一つ雪の吉原田甫かな山麓の古墳を埋む深雪かな大雪を見る改元の旦かな雪晴れに高き藪ある庵かなうすき雪柑子畠の旦かな軒落ちし雪窮巷を塞ぎけり雪催ひ枯木の中を通りけり夜晴れて朝又降る深雪かな雪搔くや行人袖を拂ひ過ぐ傘の下雪の遠山晴れにけり苦の雪櫂で掃きけり鴛鴦にげる波の舌短き磯や松の雪苫の雪くゞり出でけり船の妻勾欄に降りつゝ消ゆる粉雪哉橋姫のかゝる夜出でよ雪明り湖靑し雪の山々鳥歸る藁頭巾の雪振ふたる戶口かな大雪や關所にかゝる五六人初雪や衞士に賜はる酒の料初雪に明放ちたる二階かな初雪の積りもあえず摩耶嵐初雪のかゝりて高し三輪の杉初雪の大路にちらり〓〓かな部同同虚同同雪同同松同同子蝶皷快一三同格蝶同同同同東洋城同同香同同白同同碧梧桐堂衣村山子人濱規衣子雨雲餘
冬部鴛鴦二つ寢て居る雪の芝生哉朝晴や雪搔く舸子が酒機嫌谷底の家に雪落つ響きかな閣上に戶明る人や朝の雪船の雪掃くや山より月出る雪消えて又日にあたる小草かな雪明り一人あがれば又焚く湯雪晴れて綾瀨の森に月出たり夜の雪に物めく茶屋の二階哉大雪の船下りけり最上川さら〓〓と雪降リ出てゝ夜は更けぬ雪止んで十日の月の冴ゆるなり竹の雪王維が軒を壓しけり廓內の柳櫻やけさの雪林沼に水禽啼くや雪の月門口に女房雪かく小降かな雪月夜篁影膝に及ぶかな山に倚る搦手雪の深さかな殘月や雪晴るゝ江の上り舟女ひとり僧一人雪の渡し哉大雪の谷間に低き小村かな橋の雪眞中解けて轍かな傾けて拂ふや重き雪の傘山裾の梅の在所や雪颪雪に行く人皆な大津泊かな遠岩の雪とる浪を見入りけり雪の江や一家團欒へるかゝり船匂よげに春菊畑の小雪かな明石潟隈なき雪の眺めかな敷藁に粉雪吹込む厩かな鍬立てゝ酒肆の障子や夜の雪菜車の籠に秤に粉雪かな親王の御ぐしに寒し小野の雪峯越ゆる僧をあはれむ深雪哉水同雉子郞同波同果余格同望同同雨同同六同同鳴同同孤同同士同同八重櫻同同竹の門同同巴靜采東六花雪軒櫻子堂
仙人の鶴裳に散る粉雪かな雪の日や軒に塵見る唐辛子提灯の出で來る門の深雪かな戶をあけて驚く雪のあしたかな綠竹の猗々たり罪々と雪が降る裏表伽藍の雪のなだれかな蘆の雪人なき舟へなだれけり雪*降る靜かなる夜ぞと臥し入りぬ雪の朝大きな雅とんで行く雪晴や高ぐも干して茜染竹の奥灯一つ見ゆる雪夜かな汽車過ぎて漂ふ煙や堤の雪玄關の雪に明るき襖かな灯火やいつ來し雪のかゝり船吹風ぎて雪靜かなり港の灯雪晴るゝあたり松本平かな水村の雪つみあえぬうらゝ哉の部供に連れし小男の笠や雪積る枝高く山島遊ぶ深雪かな山脈の波相打つところ雪深し雪打や人の見てゐる塔の上上市に肴燒く火や雪の山棄水にこぼと凹みし深雪哉浦の家の萱の廂に粉雪かな雪の江や灯の數見えて權の音雪の中に草靑き溫泉の流れ哉大雪の降るや夜舟の水の闇提灯の下照る雪の深さかな電燈や影紫に廓の雪夜の人雪ぢや〓〓と通りけり雪の山のどつ底に住む小村哉山畠の雪に烏を點じけり大雪の海に消え込む靜さよ雪あたる傘の柄にきる拳かな柿同石同漱同守水老同紅同一同死同漁同不喚樓園鼎石綠轉酒壯水同愚同小同三同月同靑同錦同兎同櫻醜子巴園鼎石綠轉酒壯佛波允舟々村子
各脊戶庭を捨湯落ち行く雪の下雪の峯眉に落ち來んこの家哉谷風の渦卷に降る粉雪かなものゝ影雪にしみつく月夜哉戶を開けて窓下の市やけさの雪掘り出す雪の底より黑木かな夜の雪どさと崩れぬ罠邊り炭賣の雪踏む櫻三里かな棕櫚谷に山のなだれの深雪哉大雪の船に鼠のあるゝかな伐木をすべらす雪の谷間かな雪晴の江や帆を張らぬ船ばかり傾けて袖にこぼれぬ傘の雪晴雪に豚の兒放つ小家かな宿とりて降り積る雪眺めけり凸々と雪かき寄せし廓かな蒼海に甲板の雪の白さかな鹿出でゝ木々の皮食む深雪かな白妙の雪に頭巾や初瀨法師雪の朝雀吹矢の遊びかな雪の山海に照る日の照り返す大雪につぶれで燈す小家かなうす雪のつむ山の尾の景色哉降るとしも見えず頽打つ夜の雪梅曆ちよと借り來んや雪の傘雪の聲銀床一夜凍りぬる川に降る雪や浪花の澪標鰤漁や夕日うけたる雪の山杉山や雪なだれたる一ト平宿の朝雪深うして鷄の聲雪うづむ山家一軒松二本庵の雪年老ひたりと思ひけり湯歸やあらおもしろの雪景色雪積んで枯芦伏すや船の窓の部三七葦越里鶴瓊靑雷射靑星董普野花溪三西松濤模死天智靜聲浦梅萠久石嵐陵樓湫羅湖餘師薫稻鳴春橡紫旬癖碧把竹紅柿鵜愚乙死面三竹平水靑球字佛雨坊影佛醉童栗冷葉圍
雪の人雪見冬雪の人謠に似たる夕かな雪の人に心づくしの草鞋かな樓を下りて我れも交らん雪の人雪の人炬燵の人に會釋かな酒過ぎし頰の紅ゐや雪見人山陰やいづこ道ある雪の人雪見船比良の一角めぐりけり我が袖の雪君掃ふ雪見傘樓閣に遠し雪見の船がゝり人の傘借りて師走の雪見かな鶴下りる國の大守の雪見かな庵出でゝ二三步四五步雪見哉炬燵出て蹌踉として雪見かな雪搔かで人あるさまの野寺かな山鳴ると許り閉す戶や雪明り古沼の網代木白し雪の朝馬の湯をがばと捨てけり雪の上部雪晴に障子開きぬ靑疊水に觸る笹の葉末も粉雪かな雪晴れて旭映ゆき湖邊かな雪の日や市に鞭うつ馬の尻納屋までの雪搔いて强き僕かな雪晴の四山を望む天守かな雪の岬抱く一灣のみどりかな雪汁に幹うるほへる櫻かな瀧涸れし谷一杯の深雪かな血をねぶる手負の猪や雪の山早打の駕越す雪の峠かな動かざる船に港の深雪かな古人誹る夜などなか〓〓雪折す夜の戶や雪はね返す笹の音どつと來る雀や雪に飜れ籾着せかける女羽織や雪の朝川口や船の灯並ぶ夜の雪西甫舟堇十鷺突靈鹿笠俳極琅如香禪鎭小寺西步松橡射野山士子弓松濤樓無同巨翠蛇白瀧山梔子灌子面水櫻規濱坊月徑石ロ濤笏鳥北小步ロ濤笏鳥北浦々禾居洞郞居哉老村窪城語堂星男光
吹雪雪雪雪しまき雪雪雪達摩冬雪滑丸礫垣女傘と傘とつきあたりたる吹雪哉駈こんで門違ひする吹雪かな窓あけて吹雪涼しや醉ひ心朱雀大路二十八丈の吹雪かな十一騎面もふらぬ吹雪かな町近く來るや吹雪の鹿一つ病む人に戶明けて見する吹雪哉しまきして烏賊釣る篝消えに鳧澪標しまきに見えぬ船路かな冬の空月ありてしまきする夜哉船番所に船すだく夜のしまき哉伏せ臼の上に火桶や雪垣す雪垣の兩つ隣ぞ賴もしきの船雪垣や馬の屁を聞く枕元雪女郞去年見しかゝる月夜哉此原の森の長さや雪女雪女旅人雪にうもれけり乳母が居る家の灯を見て雪滑雪達摩腹に蠟燭灯しけり觀念の尻が崩れて雪達摩本來の空に歸りぬ雪達摩雪達摩眼つくれば月出でぬ町中やまろげすてたる雪一つ雪轉げ無言の佛生れたり雪丸げ雪に陽炎立にけり窓の戶にどうとあてるや雪丸げ庭の木へ押しすてゝある雪丸げそなさんと知つての雪の礫かな雪礫川をへだてゝ競ひけり敵を越して塀に碎けり雪礫雪礫横着な烏飛びにけり蛋が子が沖の鷗に雪礫誰がわざの神の扉に雪つぶて小坐頭のたはれをかしや雪礫四把同同鳴同同子守孤十句雪靑梧ゆう〓〓雉子郎子水步栗雪規老軒老佛人嵐月規露鷺水露子半花竹水靑八重櫻白雪杜夫愚同はのぎ兎月美鬼笠門巴佛々女村光人巴月規水步の兎栗雪月美鬼笠門巴佛々
霰雪冬空鍋燒の行燈を打つ霰かな陣笠の反りや狂はん玉あられ鶴の巢を傾けて降る霰かな酒提げて雪空仰ぐ漁翁かな雪空の暮や枯木に鳴く鴉雪空や掃き〓めたる寺の庭雪空や猪荷ひ込む五家の莊雪空やいづこ塒の旅鴉血振ふて猪猛り行く吹雪かな夕吹雪野茶屋に宿を乞ひにけり日は西にあり〓〓見えて吹雪かな北窓や敲く吹雪の音寒き夜に入りて宿とりなほす吹雪哉大木の片側白き吹雪かな洲の杭の鴉かき消す吹雪かな湖見えて來て曲り路の吹雪かな吹雪きけり奴の脊の紋所鴨なくや吹雪の中の水の色ランプ吊りて硝子戶黑き吹雪かな松明も人呼ぶ聲も吹雪かな入海を鵜のなぐれ飛ぶ吹雪かな羅生門鬼が風邪ひく吹雪かな吹雪やんで月落葉松の森に出づ陷穽に我馬落ちし吹雪かな丸窓のがたつく明けの吹雪かな棺桶に合羽かけたる吹雪かないづこ來て里に落ちたる吹雪哉提灯を置く足元の吹雪かな關守に呼び返さるゝ吹雪かな松葉焚く米山越の吹雪かな人と馬とかたまつて行く吹雪哉參禪の山を埋むる吹雪かな陣中の焚火ゆゝしき吹雪かな雁打て吹雪の中を戾りけりの部同同子、叱小月黃松二香隆鷗花靑酒鬼同同雨同三把如土余蘇文君仙子松濤樓白-瓊碧梧桐死規牛歡村雨宇松禾音居子夢囚子坤舟山轉音嵐竹城酒六允栗
冬汐濱の乾かぬ砂に霰かな燒石にまじる淺間の霰かな山茶花散れる地上相打つ霰かな身にかゝる熱罵冷嘲霰かな江を渡り中流にして霰降る舟蟲に霰ふり來る波止場哉霰聞くべく繕ひぬ枝さびし口開けば鼻にたばしる霰かな峰颪霰を降らす磧かな曉天の霰打ち込む野鍛冶かな鮪船競ひ出る夜の霰かな玉霰鴛鴦劒羽をふるひけり磧中に馬をならすや玉霰金盥伏せて霰の音聞かん鴛鴛の金網を打つ霰かな花笠やお杉お玉に打つ霰霰落つうつぼ柱の奈落かな牛の息の下に轉がる霰かな玉霰帆桁を拂ふはやてかな霰降る御溝に靑き小草かな一陣の風四五石の霰かな乾鮭の市に人なき霰かな帆渡りの島山颪あられかなきぬ〓〓の鼻打ち曲る霰かな能の日の寒き板屋に霰かなはづみけりテニスコートの玉霰玉霰旅の法師の落馬かな枳穀の中にたばしる霰かな篠刈りて歸る車にあられ哉玉霰夜陣の楯を叩きけり枯榎霰やうろに吹溜る吹かれ落ちて霰魯縞に力なし飜へる露布に大路の霰かな荒川に馬乘り入るゝ霰かなの部碧石癖三醉梧同蝶格松露虚竹紅同餘同一同稻同句同同同同碧梧桐同同愚同同六同同鳴童宇鼎月子冷葉生轉靑佛月衣堂佛花雪
冬町中や風の霰の轉げ行く蓑市の蓑に打ち込む霰かな霰晴れて陽に面赤き看守かな南苑に殘んの菊や玉霰大鷲の崖に羽ばたく霰かな鷹すゑし小手にたばしる霰哉鷄籠の餌壺にたまる霰かな棒先の駕提灯や霰打つ霰うつ不破の關屋の板庇揚舟や枯藻にまろぶ玉霞玉霰南天の袋破れけり玉霰晴れて八手の月夜かな並べ干す章魚壺にふる霰かな切出す寒水石や玉霰宵闇の笹に音ある霰かなはりつめし湖水の上に霰かな玉霞月の兎が仕業かなの部小盟の小鴨米かめ霰かめ御院主の下山の鞍に霰かな冬薇薔の紅摧け落つ霰かな鶴鴒の色動きゐる霰かな門入りて敷瓦飽く霰かな手に溜めて消ゆる消ざる霰かな月見えて北國日和霰降る斧を〓ぐ砥水に沈む霰かな玉霰明るき傘をひらきけり霰ちる池邊の芦や折れ盡し岩山や篠原かけて一あられ鶏の死に家人集ひて霰かな霰降りしきる竹槍蓆旗かな霰降るガラス工場の明地哉玉霞交野の雪に降積みぬ引越の毛布包みに霰かな打ちまじり木の葉ふきちる玉霰松指月橡把翠鼓天易兒八重櫻鳴松喜柑金鷄不喚樓素竹の泉圃門舟子城濤濱竹月球兎面坊栗乾芹愛塘午容松鷄射雨極蛙眞名文綠著蛇巴笠柳生堂堂人郞森亭笏雨耳川藤堂翠浦
霙冬霙降る鰤大漁の夕べかな石蕗の葉に雪片を見る雲かな古障子霙るゝ音の聞えけり畫雲山茶花の上に明るけれ北國や十步にみぞれ五歩に晴る水中に岩見ゆる池霙れけり廣澤の白蛇の塚や雲ふる天邊の朴の古葉の霙かな濡れて行く人の脊中に霙かな綿香に搗く杉匂ふ雲かな涸沼の泥にみぞるゝ夕かな棕梠の葉のばさり〓〓と〓けり大船の階子をあける雲かな太閤の睨み松とや霰とぶ守武の冠を打つあられかな玉霰馬上の君の武者振ひ霰うつ風羅念佛の瓢かなの部口あいて童の走る霰かな煙突の火の粉に見ゆる霰かな髫兒の庭に母呼ぶ霰かな將軍の馬首にたばしる霰哉玉霰鉢に馬蘭に礫かな塗笠に霰たばしる狩場かな雲ちぎれ〓〓月夜の霰かな石百段たばしり落つる霰かな玉霰金槐集を讀む夜かな伊勢武者の鎧の袖や玉霰普請場や霰隱るゝ鉋屑打ち上げし荒布の上に霰かな撥鬢の霰を振ふ奴かな石屋の石竹屋の竹に霰かな捨る子に袖あてゝゐる霰かな二三粒仁王の臍にあられ哉松風や霰たばしる能舞臺四九象同同虚同同句同同癖三醉同同子淡凉金童子萩矮輟花春告鳥樗香香月露浦雨月秋紅蓼鶯鷄頭庵香白外子佛規雪花郞山峰居々湖耕華人冷橋峰池骨水
初雹霜冬の初霜や束ねよせたる菊の花電止んで鐘撞く森の月夜かな寨の下電ふる韮の畑かな探檢記ある日の電を叙しにけり今朝取りし菊の葉の虫や雹がふる電降るや厲鬼を拂ふ橋の上電降るや八叉の大蛇來べき時拳大の電降りたりと噓申す電消えて松毬ばかり甃電止んで鵲の巢を見舞ひけり霎るゝや水田に殘る稻の株牛すねぬ時雨橋より雲橋濁り江の蘆の枯葉に霙かな霙れつゝ藪鳴る風や山の月野明りに炭割りゐるや夕雲夕雲軒の玉水音すなり十德を着て番傘や雲降る霙るゝや積み荷下ろして馬淋し鳶落す鼠逃げ行く雲かな霙るゝや爐に座をつくる木曾泊沼上る雁騷々し雲晴れ古庭や鴛鴦のやもめに霙ふる馬の息を脊中に浴びて〓かな甲子の市に鯛なき霙かな霙るゝや鍛冶工場の鐵の音霙るゝや水仙一株竹の下霙るゝや松の雫のぼた〓〓と霙降る一望莖菜畠かな網の目を漏れて蝦ざこ雲れけり一つ家の雲に早く暮るゝ日ぞ霙るゝや粥ともつかぬ飯の出來霙るゝや翼をいたむ濱鴉炊ぎ水流す上より雲かな風呂落とす音に紛れて霙かな部松濤樓之弓野射霞天易兒雨六橡面坊紅同蝶同象露堇泰花溪樓泰堇乍扇桃杏禪寺洞琅子白花溪樓同釜同同規眠哉月村人車孫花哉々山洋莊月鳥石溪六花綠衣外
霜冬薄霜に傲りて赤し茨の實霜どけや日晴れて葱の影法師霜晴れや茶の木に干せる猿袴藁塚にかくれて霜の小橋かな路下りに置く霜薄し密柑畑置く霜の物なき鉢の大きさよ山を前に野を行く霜の旦かな手にしごく三間鎗や朝の霜湖や霜の八景靜かなり霜寒く此夜馬稷を刎りぬ水車のみ黑うして霜の天地かな一日の霜に色なし葉鷄頭朝霜や畑を隔てゝ姉の家用材の石も積みけり今朝の霜居殘りも無く立つ宿や今朝の霜勿來より北かや霜の馬の鈴渡し場や下駄はいて乘る舟の霜霜の蟹や玉壺の酒の底濁り鳥にやる菜をむしりけり庭の霜初霜の街へ急ぎぬ酒車初霜に大極殿の朝日かな初霜に美男鬘の雫かな初霜の瓦を出づる雀かな霜初の菜を摘む鳥の朝餌かな初霜や子飼ひの犬の夜泣して初霜や佳節過ての菊の鉢初霜の密柑は靑き畑かな初霜に白粥たかん菊落葉初霜に大明竹の圍ひかな初霜や吉田の里の葱畑初霜や我が古里の緋の蕪初霜や密柑二木のかし長屋初霜や貧しき町にすさ叩く初霜や出て人妻の花を擇るの部春虚鳴同同靑禪寺洞同同射同同碧同同鳴同同虚流茶雨蒼蓮非田士英紅一同同碧梧桐同同子石童雪子規水影橋岑谷石露沙蓑子雪々
冬破れ鵜籠捨て置く霜の裏戶哉松の葉の霜ふみ落とす小鳥哉旭にとけつゝ霜の白さや枯すゝき岩角にはげしき霜や尾花伏す大原の家陰の霜や蕎麥殘る藁たいて人あたゝまりゐる徑の霜裏富士を見つゝ行く霜日和哉鍋燒を喰て霜夜の別れかな垢ほじる耳のこそつく霜夜哉裸火に鷄の骨打つ霜夜かな炬燵置く淀の夜舟や筈の霜菊の根を憐れむ藁や霜白し覇王樹や巨利の庭に霜圍ひ寒菊の霜燒の葉を愛しけり朝霜や〓士の家の鷹の聲霜の原遠く潮寄す光かな斧打てば霜に落ち散る木切れ哉の部甘藷蔓のたぐり寄せしに畑の霜提灯につき來る犬や夜の霜提灯の洩れ火寒しや道の霜楯の霜陣屋々々の焚火かな庖丁に葉蕪の霜の軋りけり白鳩の足紅や宮 の小大工の霜踏み落す足場かな伊豫はそも霜紅の緋蕪畑塵塚の霜に骨噛む野犬かな舟端の霜を踏んだる跣かな置く霜の白きを見れば草鞋哉朝霜や椀の泣くなるあつき汁朝の町霜白き戶に花屋が荷今朝の霜村の翁の眉毛かな曉の霜利根をはさみし山野哉百姓で句つくる人や霜朝夜山影や霜の杭ぜを渡舟出る霜同華同石同魚虚同水同玉同孤同翠同六同眉同醉同雪同梧同靑同麥同蝶同竹同禪寺洞園鼎江巴鬼軒濤花月佛人月嵐人衣冷
冬焚火して消し去る野路や草の霜紅葉照り柑子熟るや藪の霜朝霜や大纜の汐濕り朝的や射外れの矢尻霜を削く深霜を行く我に落つ日影かな草の霜馬の口繩すれて行く梅の槎〓竹の楚々みな霜夜哉片置や干し忘れたる桶の霜霜晴れや百里の川を上る船修驗者の杖ひいて行く道の霜霜白く椿紅に松綠なり大霜の雨を呼びけり吊干菜陶屑の積まれて霜の窯場かな捨猫のけろりと戾る今朝の霜川岸の霜乾鮭に菰かけてあり霜いたく降ればや狐いたく啼霜圍ひしてあり庭の花三種の部枯つきし西湖の梅や霜の聲橋踏めば河心に響く霜夜かな犇々と板屋に霜の夜風かな今朝の霜殘る杓杞の實赤き哉母出でゝ霜夜の甕に水張りぬ朝霜や出水のあとの荒畑大木の切株の霜や斧を置く霜時や花の室築く地の凹み波打つや霜頂ける鯨塚松低し霜の苦屋の向き〓〓に蕎麥刈つて霜美しき夜明哉蘆の霜汐靜かなる夜頃かな朝霜や神橋渡る 白白河や明て夜汽車の屋根の霜霜枯れて伐らるゝまでの芭蕉かな園の霜鶴の足あと淺きかな霜に置く一百枚の俵かな狐五七歸麓園榎龍孤零竹師家又滴烏躑初孤洛田觀村城山子餘居竹巢玄泉聲躅聲島川士英魚幾塵幕波白乙月別左衞門拙句山海けし靜山々字兎城洋太天樓三醉々波白洋乙月東菊別癖靑同香士け洋天三村
冬の山冬地冬の山狩りに獸のさけびかな石文のほとり道ある冬の山冬の山一刹こゝに頽廢す冬の山うね〓〓として入日哉冬山や汐かと嘗めし淡水湖禿て居る足尾つゞきや冬の山雪崩れ市にひゞきぬ冬の山冬の山氷れる湖の往來かな冬山やからぶ八十八地藏冬山や牧衰へし裾野村北天や馬蠶に似たる冬の峯冬山に狩りし獸物や牙長しこゝらにも人住みけるよ冬の山狼に逢はでこえけり冬の山霜晴れの雲二筋や峯の眉打上げし濱の汐木や霜白しトンネルを出れば杣行く霜の谷枯蓮の莖に霜置く晨かな朝霜や焚火を圍む道普請霜の鐘奈良千年の夜明かな倒れたる卒塔婆に白し夜の霜篝火や後ろは暗き霜の宿一霜に散り盡しけり忘れ花馬提灯下照る橋の夜霜かな峠越す夜立の朝や霜の吟霜の夜の古驛に細る灯かな抱き合ふて貧の子が寢る霜夜哉霜に鳥つゝじの柴の火は赤し霜白き庭の莚やかりもがりの部理婆吟靑溪射虚碧梧桐禪寺洞子同同同八重櫻同不可雉子郞折旭水史茶翠百水柿山伏香霞句巨丁羅月嵐子水石規句成亭影松萬翁居溪佛川
山眠る山眠る里に筏の瀨涸れけり山眠る下に廓の灯かな眠る山み寺すたれて幾年ぞ山見れば眠れり君はあらずして枯葎宇治の端山は眼りけり山眠る岐阜のはづれの紙場哉鶺鴒のたゝけど眠る小山哉古書の山眠れる下の机かな山眠る飛驒の質屋の暖簾哉山眠る溫泉の潤に病者かな天寳を藏して眠る古峯かな山眠る駿河と甲斐は隣なり戰ひに負けたる城や山眠る比叡の山眠りて風の都かな女郞買うて三島出づれば山眠る谷々の雉子が鳴こがと山眠る山々の蒲團引合ふて眠るかなの部海の中へ足なげ出して山眠る山眠る中に貴船の鳥居かな溫泉の宿や障子の外に眠る山眠りたる島山の根や浪噪ぐ眠る山胡將鐵騎を放つかな雄山裾雌山なだらに眠りけり筑摩谷冬の木曾山大なり絕頂に封雷殿や冬の峯冬山の裾めぐらして營所かな冬山を上がる汽車ありアブト式冬の山雪來るまでの仕事かな日當りの短かき冬の山路かな荒海を隔てゝ冬の山低し野の末に兀として立つ冬の山風荒す鳥の古巢や冬の山曳船の高荷の上の冬の山冬嶺のわだかまりゐて村安し華松竹の露同同句之都山柑子同柑同白同水同東洋城同圍門濱月子山巴兎春風三苔鳳靑十寸兎-格同虚同同一啄木鳥子嵐露穗毛子二醉寅雨樹城圍門濱月子山巴堂子
枯冬の原冬冬野野我馬の驚きやすき枯野かな野は枯れて小き赤き鳥居哉罠逃げて狐落ゆく枯野かな草の屋の火焼にせまる枯野哉我家の竈の外は枯野かな信長の榎殘りて枯野かな三日月や枯野を歸る人と犬馬見へて雉子の逃げたる枯野哉王として拓く冬野に母戀し雉つけて歸る一騎や冬の原ぞろ〓〓と馬買はれ行く冬野哉風の如く馬賊過ぎたる冬野哉傘さげて小雨踏みゆく冬野哉玉川の一筋光る冬野かな門ばかり殘る冬野の伽藍かな馬糞も共にかれたる冬野かな貝塚に石器を拾ふ冬野かな擂鉢の底の都や山眠る薪積む家の裏山眠りけり雲を着て眠るが如し裸山煙り立つて眠れる山の月夜かな古渡に來て寺見回へれば山眠る宇都の山紅葉をはてに眠りけり大刹の衰へを山ねむりけり姥が戶の裸火見せて眠る山眠る山聖見してふ樵夫かな京を出てうしろになりぬ眠る山眠る山下り來る人の大きさよ月日なき草盧や眠る山の底日表を畑に墾くや眠る山寒林に飢饉の碑あり眠る山日の出見て眠れる山を下り鳧湖に影を沈めて山眠る眠る山に家あるか飛脚行きにけり部同露蜃雪雷魚梅四喜同同八重櫻同同子大子渡尺河芙蓉鳴同同子遲輟里南蚤小六巨雉子郞一月規我規川予雪規水耕遊浪王姑花縫樓樹人久鱗痩丁舟
冬の來た道に日の照つて居る枯野哉野は枯れて目にしるき山や噴火烟村の幸山野の松に鶴下りて近松の道行もなき枯野かな退きし里見の陣や枯野原枯野道遙かに山の雪を見る枯原や矢を負ふ鷲による烏枯原や刀さしたる小商人枯れ沼に燃ゆる泥堀る枯野哉山鳥に人化さるゝ枯野かな鳴く牛へ煤烟長し枯野原枯るゝ野や如何に置くべき露の影我村の灯火遠き枯野かな山火事を橫に見て行く枯野哉枯野來て灯賑かや遊女町あとの人の先になりたる枯野哉見え初めて來る人遲き枯野哉人一人駕負ひ戾る枯野かな馬先の狐を叱る枯野かな藁しべに蒟蒻さげて枯野かな城の灯の我を見て居る枯野かなとまり後れ枯野急げば鐘が鳴る屑買の籠に菊見る枯野かな大峯の頂見ゆる枯野かな都會の灯見ゆる宵ある枯野かな我咳の眞似するは何枯野原傘さして行くや枯野の雨の音山鳴りの草鞋にひゞく枯野哉枯野行く煙運河の汽船かな戰のありては枯るゝ曠野哉火矢放つ敵の櫓や枯野原海の音風と爭ふ枯野かな乞食の鳥に飯やる枯野かな落窪に水田が見ゆる枯野哉部松紅同靑同同虚同同柑同同蝶露同東洋城同格碧梧桐同絕同孤同雪同靑同月同碧同稻同濱綠々子子衣月堂頂軒人嵐舟童靑
野は枯れて山河に違き我家哉紫野北野に續き枯れにけり利根の帆の枯野にのぼる心哉乞食の子を產み落す枯野かな一つ家に惡まれ住める枯野かな途にして腹いたみ出す枯野哉捨松明の風に燃え立つ枯野哉先馬に夕日影消ゆ枯野かな毛の長き駄馬吹かれ行く枯野哉荷に堪ふる馬たのもしき枯野哉沼の廬水城跡ある枯野かな詩旗立てん枯野の中の我一蘆我ありく足に風鳴る枯野かな枯原に蔦のしばりし巨石かな懷ろの金にあせかく枯野かな首塚の弔はれずに枯野かな舟を出て間近く町や枯野原鳥鳴けば馬淋しがる枯野哉鳥居塗る人のうしろの枯野かな靑墓の小家も過ぎし枯野かな人ちらほら枯野に迫る暮色哉拓くべく家を移しに枯野かな三藏の悟空まちゐる枯野かな根を堀りし草芳はしき枯野哉嵐雪の蒲團の裾の枯野かな落しものに人戾りくる枯野かな葬禮と見えて灯の行く枯野哉首つりのありし枯野の松一木狐火も信田に近き枯野かな古罠に鳥の毛かゝる枯野かなうつくしき虹現はるゝ枯野哉瘦村を通りぬければ枯野かな乞食の眼に輿ねたましき枯野かなの部一本の柳枯れたる枯野かな山灌子著死一海王星牛蕗香象小松花溪樓二眉把秋十步老西士波寒瀾俳小星麥痩六乙觀紫桐南子泰春巨不喚樓森酒轉步山村外星蛄湖月櫻山雨ロ魚人石人空樓水花字栗宇墨
冬冬田道端の冬田の中や捨草鞋礦毒の塊光る冬田かな家探すに橋を心の冬田かな枝村の五軒離れて冬田かな山城に通ずる道や冬田原埃焚いて人居ぬ冬の田面かな豊年の跡寂として冬田かな古塚や冬田の中の一つ松大水の砂山殘す冬田かな雨後の月冬田の水のきら〓〓す冬の田に三日月落ちて寒い風鷹共に鴻落つる冬田かな藺田蓮田葛飾の冬鳥白し木槌振つてメめをる冬田畦哉猪狩の火を焚く山の冬田かな吹き晴れて冬田の月となりに鳧鶴下りて冬田閑なる小村かな寺に入る冬田の中の一路かな打かへし畑に作る冬田かな隣村のあからさまなる冬田哉瀨田の町後ろ淋しき冬田かな美豆の牧一木も見えて冬田哉旅人や與謝の冬田の鷺の群冬田原四十八瀨も涸れにけり密柑剝いて皮を投げ込む冬田哉きぬ〓〓の大門出れば冬田哉身を投げて蠡死なんとする冬田哉火を焚けば風猶寒き枯野かな豆人の寸馬曳き行く枯野かな馬賣ツて伯樂戾る枯野かな萬卒の枯骨埋まる枯野かな薪積みて家支へたる枯野かな野は枯れて虎ともならず石一つ夕月に行く手明るき枯野かなの部孤波醉蝶稻月三鳴櫻醜子同句同同同六同八重櫻雲靜舟佛衣允佛雪花靑豐嵐香零膝喚同把同碧同同碧梧同同子湖餘餘濤老規年外靑居子六雲靜舟佛衣允佛雪花靑栗童桐
冬冬川冬の川あらゝ木の根に堰かれ鳧冬川やものを洗へば家鴨寄る鷺一つ冬川尻の廣さかな土手下りて水際遠し冬の川冬川の橋杭ばかり殘りけり冬川の抗出る處々かな冬川や筏に眠る獺を見る冬の川河原に倒れ柳かな冬川の上に濃き虹立つ日かな冬川や那須の高根のそがひ見ゆ狐追へば冬の川原を逃にけり冬川や鶴鴒に似て白き鳥米倉の鼠逃げたり冬の川冬川の石にちらばる木の葉哉冬川の石に激して流れけり冬川の片流れする麓かな冬川の水二股に流れけり冬川や魚の群れ居る水たまり冬川に鴨の毛かゝる芥かなよるべなき冬の野川の小魚哉積藁の雨に傾く冬田かな藁圍冬田の風を鎻しけり鶴立ちて高きものなき冬田哉冬田盡きし渡しへ出づる疎林哉櫨の下に必ず石や峽冬田根を張りて蛭藻の赤き冬田哉車置て藁ぬすみをる冬田かな切干に午砲の響く冬田かなの部山城の後ろ見て行く冬田かな瓦やく竈よりつゞく冬田かな臼作る土を堀りたる冬田哉この秋に汐の入りたる冬田哉荒浪に日上り冬田小さゝよ鶴下りて惜しき日暮るゝ冬田哉七同靑同八重櫻稻同同六同同碧梧桐同同虛同同格同同子綠殘不劭翠嵐象枴三素躑未石漁嵐靑花子堂規葉雪休童園舟外童餘泉躅央鼎壯
水冬涸冬の水掛けすてし水涸れ川の添水かな水涸れて遠きに渡す懸樋かな水涸れて芥にまじる鷗かな水涸や寄附纒りて堰普請水涸れて噴水高し池の中水涸れて渡船場遠き磧かな水涸て昔の城に灯ともらず空林を行き水涸を渡りぬる枯芒枯女郞花水涸れぬ大比叡や里のしらけて水涸るゝ裸なる鼠子捨てぬ涸るゝ水古魚の鹽洗ひけり涸るゝ水子鴉の鳴く口赤し涸るゝ水曆見て種紙ひたす冬の水冬の水櫟の落葉沈めけり菊見えて斜の堰あり冬の水午暫し上に日さすや冬の水冬川や淺瀨に折れし船の棹冬川の底に鎭まる砂金かな冬川に映る堤の疎林かな水草の色衰へず冬の川瀨頭を渡る鼬や冬の川幾束の杉皮つけぬ冬の川炭を燒く冬川上の丹波かな船の先の石に當るや冬の川薪舟や冬の川瀨の逆落し鵜を流す冬川の水ゆるきかな火の粉たてゝ冬川遡る夜船かな冬川や石に長藻のへばりつく冬川や柩乘せたるうつぼ舟風雲や入日けはしき冬の川芦までは來ぬ上汐や冬の川冬の川末廣ごりに水乏しの部狼のねぶりあまりや冬の水七三露梅水俳小星洋無蝶東洋城橡面坊靑同同柚俳小星蕗堇梧聾芋靑水鳳梧桐同癖三醉里無孔笛月露同靑霞波句左衞門聲痩巴々黃衣々斗月n釜靜峰哉溪月兎村茅空佛巴
氷初瀧川冬氷涸涸數の子をひやせし瓶の氷かな磨る墨や氷るはかなき返し文刈株に水を離るゝ氷かな潮流の北より來たる氷かな上け汐の氷に上る夜明かな掛樋漏る蘆の枯葉や初氷魚ありと見えぬ竹笈や初氷裏口や盟の底の初氷朝戶出や門の小溝の初氷敷石に雨のなごりや初氷薪割るにふんばる朝や初氷田鼠の走る音あり初氷諏訪の神の狐を現じ初氷瀧涸れて嵐に尖る巖かな瀧涸れて庭の萬年靑の霜に濃し源の近き小瀧の疾く涸れぬ瀧枯れて岩倉の狂女物言はず部瀧涸れて雌雄の龍頭寒げなる涸川や脛冷さする駒の主川涸や百舌鳥野を見やる橋の上川涸の河原に晝の焚火かな川涸や岸高ふして家一つ埋木の突き出て淵の水涸れぬ水涸れて地藏の頭拾ひけり水涸れて岩に吹かるゝ根笹哉水涸れて此頃鴨の尻寒し水涸れて柵高し嵐吹く水涸れて瀧も落ちざる日向哉水涸れて寢耳に獺の高音かな河原草枯れ伏す下に水涸るゝ獺の道の糞水涸に人も來ず机から見し小野の水涸にけり水涸るゝ江を北にして寒山寺水涸れてあらはになりぬ蟹の穴七五同柳同同子香巴苔望菱裸子葦同河白柳湖數鳳柿蜩拙黃芳河士月奇靑露治伊五同金童皐千梧雨工々月子靑雲知波志桐里洲鳩堂家規居藤花東花木規天骨雨工々
餅米を浸せし桶や薄氷石菖の根に水ありて氷かな蓼枯れて水少しある氷かな柴漬はあだに古江の氷かな比叡-京京中の水氷るなり灰汁桶のたがはねて居て氷哉月白き氷の松や鴦爲の沓笛習ふ唇氷る夜ありけり氷りたる鶴の餌鉢の鰌かな金のため苦しむ父を藪氷る薄氷女は水を捨てにけり薄氷の蘆を離れて浮びけり殘菊に灰汁桶の水氷りけり泉水に氷りて開けぬ雨戶哉夜嵐に尙張りまさる氷かなこゝ迄は汐さゝぬ江の氷哉漁りに荒れし鴨場の氷かなの部靑天の掩ふ山湖や氷面鏡藪柑子樹々の下風氷るなり灯氷る鴨野の小家寒念佛北風に結ぶ氷や冬の梅池氷れ水島は箕ですくふ迄御加勢の神兵渡る氷かな榛の木の長き影さす氷かなぬかるみの氷踏みわる荷馬哉沼氷る上に落散る妻木かな旅に病んで氷嚙みつゝ寢ぬ夜哉居牛場の前の大池氷りけり八鉢馬場森の小池の氷りけり霜月のまれな寒さや製氷場河に臨むで氷堅きを信じけり天門の氷を碎く力かなはりつめし氷の中の巖かな餅つきし夕の臼の氷かな月一同同六同六同三靑同同同左衞門同虚同轉村花瓜允々露月旬同碧梧桐同同柳白同同東洋同同同同同u兎城佛月家轉村花瓜允々子u兎城佛月家
鐘星氷滑諏訪湖氷冬氷氷近隣の寢靜まりけり鐘氷る星氷る夜を破鏡の響きけり初夜〓る八幡鐘や星氷る星氷る湖の夜を啼く狐かな幼きが上手に氷滑りかな音樂や氷滑りに人醉へる日輝く諏訪の氷の人馬かな竹筏とく〓〓わるゝ氷かな曉の月に田每の氷かな鴨は來ず鶺鴒のみに田の氷幸先に源吾の碎く氷かな山畫けば山は氷りぬ紙の上苦舟の板子あくれば氷かな氷割る槌を備へし渡舟かな出刄の柄に碎く生洲の氷哉水鳥のぬけ毛とぢたる氷哉石打てば氷のわるゝ響かなの部撞く鐘の影落つ月の池氷る黑潮の及ばぬ海の氷かな御手洗の氷叩くや鳩亂る日に捨てゝ氷見事や碎けゝり堅氷や森の上より日の光線海豹に氷に吼ゆる旦かな試みに踏めば氷の薄きかな氷る江の巖の上や鴨二つ北向やこん〓〓叩く厚氷古沼の塵も落葉も氷かな御手洗の二重に氷る旦かな棹をもて碎く氷や渡舟窓の灯の映る盆池の氷かな蒟蒻も豆腐も氷る忌日かな藍瓶の薄き氷や東ね綛たてよこと氷代り行く人數哉藪かげや枇杷の花ちり池氷るの子玲黃松柳碧葵子楓花象巨金靑橙葦巴梧童黃眉石把未士孤碧觀格鳴守水老同紅同同八重櫻同瑠櫻月軒栗雪央童瑠規瓏雨宇家桐規水外ロ江子畝子天藤彩櫻月軒鼎璃魚栗堂葉雪央
霜氷冬柱柱部籾敷くや踏めば落ち込む霜柱蕾つく梅の苗木や霜柱行車の髭を餘りし氷柱かな小冠者が棒喰らはせし氷柱哉薪拔くや氷柱の折れて雪の中金明水銀明水の氷柱かな雪に雨枯木に花の氷柱かな倒れ木の谷を渡せる氷柱哉藪かげの水車とまりて氷柱哉飛石に憂と落たる氷柱かな四ツ目垣繩の結ひ目に氷柱哉枯柳に玉を貫く氷柱かな厠より仰ぐ氷柱の廂かな法の山木々の乳垂るゝ氷柱哉南天の赤きに軒の氷柱かな巖より熊笹にとゞく氷柱かな瀧つせの音羽其儘氷柱かな氷柱たれて朝の戶遲き小家哉閉門の久しうゆれぬ氷柱かな颺の地上の霰氷柱かな石垣に添ふて氷柱の長さかな鬼の角の長短かなる氷柱かな崖にかゝる氷柱の下の小家哉佛立つ大盤石の氷柱かな枯れつくす糸瓜の下の氷柱哉瘦骨をさする寢覺や鐘氷る鐘こほる日本堤や頰冠り駈落の川を越えれば鐘凍る層塔の簷鈴死して鐘氷る狐鳴くと母がいふ夜や鐘凍る夜の網あげて空しく鐘氷る鐘こほる上野の森に這入りけり油なき憶良が貧や鐘氷る猩々の三七日頃や鐘氷る同子確茶松曉香活禾孤十歩老靑天六碧靑塔人竹格竹八重櫻五同碧梧桐子師散木庵蝶同同東洋城同世釜同規溪影郷村居林念村嵐啾花堂冷工規馬南村竹衣堂
冬の海冬富士晴れて冬海荒るゝ相模灘船一隻黑煙吐きて冬の海檣に鴉來鳴くや冬の海陸上げの越中鰤や冬の海蝦夷を立つ船にはぐれぬ冬の海水城の月越す波や冬の海一村の柑橘ぬくし冬の海十州の湖海の冬となりにけり霜柱土龍に荒れし畑かな日にうとき片山影や霜柱立盡す案山子の陰や霜柱霜柱流行らぬ神の庭寒し土揭げし土龍の道や霜柱荒鷄の高脛寒し霜柱旅慣れず歪む草鞋や霜柱霜柱陶工が莚敷きにけり蘆の根にとゞかぬ潮や霜柱杭打つて垣を作るや霜柱草生えぬ野の落窪や霜柱冴え〓〓と〓會の鐘や霜柱から風の櫻吹くなり霜柱遲れ蠶に桑の痛みや霜柱篠藪の枯れ盡しけり霜柱桑伐りて株のとがりや霜柱狩人の朝山越ゑや霜柱霜柱射頽される射垜かな誰やらん來かゝる音や霜柱霜柱踏出でにけり朱の沓霜柱鍬の刄先に光るなり霜柱家鴨の足に崩れけり遠き野の井を汲む里や霜柱夜鴉に立ち盛るらし霜柱涸壺に瀧なす土や霜柱霜柱盥の水をこぼしけりの部虚竹同鶯同未同不喚樓王曙香女舞羽著死松濤樓憂村裸月隣生梧醉蟹拈白麥露同蘆同同癖三醉子子冷池央〓石居羊鷹山森洒々鮫木村佛步華山人月風規
神無月十寒魔日の海冬月潮時古さるゝ戀を恨みぬ神無月御鏡を〓ぐ一日や神無月奉納の手拭古りて神無月八阪社をぬけて祇園や神無月俳行脚佐渡に渡るや神無月里人の何にか集ふ神無月巫子町や軒をつらねて神無月鳥居より內の馬糞や神無月赤星や十月の風空を吹く十月や菊に淋しき庭の雨十月や新宅建ちてまだ住まず十月の繪屏風寒し京の山洛陽の十月淋し寺社十月や船に夫婦の飯煙寒潮に浮びて白し烏賊の甲舸夫連れて住吉參魔日の晴魔日の海兵庫捲く舟なかりけり和田の原今日の魔日といふ旋風哉島長の水葬式や冬の海冬海に高々と崖や濱別墅冬の海碎氷船の煙かな冬の海不知火光る船路かな空船の艦の高さや冬の海冬海の胸に育ちし小貝かな雲凍てゝ島の木の間や冬の海冬の海蓬萊岩の近う見ゆ獵船の汲み捨つる血や冬の海日あたりて甦る帆や冬の海月孤ツ冬の入海靜かなりの部候鞭堇靑紫霽露露青霽露東洋無東洋子月子靑九品太橘小映松月不竹の同同亞箭吃濤城蛄二瓢紫樓平樓舟句門嵐斗下湫黃城月月々規紅六華聲城々城
今朝の冬立冬極霜十冬冬月月一月釜を上るやきもの二つ今朝の冬乳柑の香走る冬となりにけり賣り出しのよき衣かはん今朝の冬水借りに隣叩くやけさの冬修理寮に宣旨も聞ゆ今朝の冬酒屋にて機嫌問はれぬ今朝の冬黍がらの節々赤し今朝の冬花やかに兒女の羽織や今朝の冬飽食を暖衣を思ふ今朝の冬羽織着て旦冬なる小人形冬立ちぬ時めく人の衣より藪の月冬立つ七日八日かな冬立つや大きな鞠の花八つ手煙と雲と水と冬立つ疎林かな冬立つや立たずや留守の一つ家戀衣重たき冬となりにけり汽車過ぎて靜に冬の高根かなじやのひげの實うれる冬の垣根かな草莖も冬となりけり妹が垣草も木も菊の凋みて冬めきし焰なき冬の灯をたつきかな煎餅干す日影短し冬の町朝な〓〓粥〓ふ冬となりにけり物の寂猿簑冬にはじまりぬ極月の我に家なし妻もなし極月や結納の儀も取敢へず霜月や狐なきよる厨の戶霜月や狐を眞似て聟に行く霜月の臟腑に蕎麥の藥味かな霜月の霜が下りたる畑かな霜月の梨を田町にもとめけり土黑き十一月の畑かな神無月守武一人時雨けり矢大臣の顏修繕や神無月の部洋橡面坊句靑碧梧桐同蝶同辰碧麥純成文堂泊同古雪子不喚樓靑蝶三活五丈原子一經子幾句拙村蝶同同同子獨々佛々衣生几人規水家衣々規行衣栗東人規江雲
初冬冬冬に入る初冬の立木三本舟渡し初冬やよき衣着たるすまひ取初冬のしけに寢て居る漁村哉初冬の雲や芒の小諸城初冬の物なつかしき日向哉初冬の襟にさし込む旭かな初冬の穴ばかりなる芋畠初冬や跫然として人の來る初冬や煙絕たる里の菊初冬の靑菜こぼるゝ閥伽井哉初冬の月裏門にかゝりけり初冬の家並びけり須磨の里初冬の萩も芒もたばねけり冬に入る月の審さや菊の白冬來ては芭蕉の糸を機に張る冬に入る法樂加持の授戒かな竈上げる鹽しろ〓〓と今朝の冬家解いて烟らすものやけさの冬藁を着し水底の蟲や今朝の冬酒藏の祈禱しにけり今朝の冬脂濃き鴨の擂身や今朝の冬の部一わたり桃の葉落ちて冬に入る冬に入つて蘭の一葉を枯らしけり冬に入る錠前固き簞笥かなよき綱を練る持舟や冬に入る文鎭の山兀として冬に入る川筋の驛の荷着きや冬に入る葦芒芒よく燃ゆ今朝の冬鶯の鳴かで來にけり今朝の冬赤人の山邊に住みぬ今朝の冬德本の黄菊は枯れて今朝の冬やす〓〓と生れ子赤き今朝の冬色上げの羽織戾りぬ今朝の冬ベロ〓〓と竈火の舌や今朝の冬碧梧桐同同蝶同同鳴同同靑同同子田士英靑田間魚十步老巨雪碧梧桐香碧柑丹十二樓梧又はぎ女雪蛇泊師衣雪々規央柿圃將甕人村水子楓月玄人湖雲竹
冬冬至爐開きてこゝに冬至の句選哉初冬や硝子戶はめて山遠し初冬や松の下なる能舞臺刄物〓ぐ湯水も冬の初め哉初冬の調度驕るや病上り初冬や自在の竹を油拔く砂あぐる旋風も冬の初め哉初冬や鷄頭黑き無住庵萩からげて初冬の庭となりにけり初冬や水の關所の船住居初冬の疎林に銃の〓かな初冬や千家に候す茶師塗師初冬の六甲嵐吹く日かな初冬の煤に火移る竈かな初冬の書齋に靑き毛布かな初冬の寺の行事や鷄頭刈るの部初多の無花果黑き葉蔭かな初冬や鉋丁持たぬ魚賣初冬や江に突き出でゝ北廂初冬の芒を焚けば火赤し初冬の寺は紅葉の芥かな初冬の一路貫くや林檎畑初冬や浪宅たゝむ江戶表初冬の水渉りけり小柴刈紺足袋の女も冬の初めかな初冬にどの肴屋の鮪かな初冬や日の入る跡の月細き初冬や蛹にかへる柳蟲初冬を守る家見ゆれ漆山初冬の狹霧に小さき灯かな初冬の馬ならび行く御切米初冬や髭剃りたての男ぶり初冬や假普請して早住めり冬になりぬ逗留の客を待つ心鳴兎羊葵十步老烏年梅柑若竹みどり女里素射蓬鱶等子水水里人學子翁泉人水石外洲橡癖四紅虛碧梧桐句碧司左香水八重櫻芋雪秋灘子山梔子三衞村村人棹佛面坊童空醉門明葉子
冬柚の香の匂ふ冬至の朝湯かな南瓜煮えて人もあらざる冬至かな甥の來ねば女ばかりの冬至哉秘め置し南瓜煮て喰ふ冬至哉月高く南京町の冬至かな冬至より心は梅にをし移るたそがるゝ冬至の市や醉李白七味賣冬至の町に來りけり梶訪へば誰れ彼れも來し冬至哉紅箋や梅に置酒して冬至の詩天窓に日の分れ行く冬至かな常燈の番札廻る冬至かな道を聞いて死ぬるでもなき冬至哉零餘子飯焚いて冬至の草家哉古味噌の壺をあけたる冬至哉山國の虚空日わたる冬至かな一陽の一盃に盈つ冬至かな鶯の附子なきだす冬至かな長崎は柳のかれて冬至かな長谷寺は冬木牡丹の冬至かな餅配る文に日暮るゝ冬至かな山門を誦し出てけり冬至の詩日曜にあたりて遊ぶ冬至かな花殼を折焚く寺の冬至かな五山衆は皆ほうけたる冬至かな味噌をする音庵に滿ちて冬至哉湯豆腐に生薑の匂ふ冬至かな佛壇の菓子美しき冬至かな物干の影に測りし冬至かなみよしのは櫻しらけて冬至かな爐の中にあたる冬至の日ざし哉冬至の日宇治のしるべに遊び鳧陳套の詩に命ある冬至かな絞本に梅ばちめづる冬至かなの部九三零餘子木瓜寺浦紫尺同子同同靑同鳴一三喜士芋村村南山妨堇好蛇乍一虛巨句露虛同咀同八重櫻坪舟殘蠖星泉櫻村雨家哉翠笏人義明ロ佛月子佛規々雲
短冬の日日冬冬の日の短かけれども石部迄退廳の扉に短日の落首かな屋根葺が尻に入日や日短き短日の室にたゝまぬ晴衣かな歌枕短日の馬ひかへけり短日の確を蔽へる筵かな此頃の日さて短き著述かな短日や大津に歸る炒賣葦鴨に短日の水の光りかなげそと減る炭團保つや短き日短日に出そゝくれして夕月夜短日の迫る障子や竿の影短日の楚々と暮れゆく小笹かな短日や八瀨へ使の片便り古着市に短日の風すさびけり閑人と言はるゝ恥や日短か短日を角力の弟子のいとま哉部賣らで去る霹靂魚賣や日短き短日や己レが事と人の事日懸箱何處滯る日短きも一張短日惜しき障子かな短き日短き命博士かな池の鴨の脛短かさや短日や日短かき後ろ姿や笈佛日短かき參宮したり山田人短日に御者の眠れる車葢かな牛羊の牧短日の步みかな薪採る水汲む日こそ短かけれ短日や籔に雀の鳴き暮す短日や葬禮すんで鴉鳴く殘照もずんずと森の暮早き短日を語る浴司と飯頭かな短日や全く暮るゝ城の六つ雄鷄の冬至の日南妻をよぶ同六春碧同八重櫻露靑同象同東洋城同同碧梧桐同同月々外童花郊子大佛文天眉へ木春師鼓田松句裸癖五士三規我文舟郞月き母雨竹竹英濱佛木醉工月々外童花郊
冬の夜宵の冬冬秒を刻む時計の音や夜半の冬冬夜讀書何か物鳴る腹の底團欒に竈火明し宵の冬一器の食明日を思ふや宵の冬砂吹くや冬の日赤き廣小路高く干す茜に冬の日さしかな冬の日や干潟に長き船の影火鉢一對買うて冬日の小百姓冬の日のさしこむ湯屋の疊かな冬の日や由良の舟出をやゝ曇る樓門の碧瓦にくもる冬日かな引窓にさす束の間の冬日かな孔雀より鶴にめでたき冬日哉冬日鳥人魂の如く去りにけり海鷗の白きに冬の落日かな冬日さす湯殿の一窓やガラス越芋蔓を干せる小家の冬日かなの部九七機立てゝ織初む冬の日脚かな櫛挽きの障子放つや冬日影大寺の影落つ庭の冬日かな冬の日に草枯れてあり匂ひ迄城南の冬日に萠ゆる蓬かな門前の冬の日南や猿すべり冬の日の影も尊し御內宮麥畑の一番踏みや冬日和冬日さす障子にぴたと机かな砂よけの菰目を漏るゝ冬日かな冬の日や盥の中のさんしよ魚濡れ網を干せば冬の日落つる哉冬の日の落ちて明るし城の松冬の日のあたらずなりし乾飯哉沼の上冬の日落ちてあとも無き大鼠冬日の下水渉りけりたよりなく海より出でし冬日哉虚同百碧梧鳴千曉躑天玉小芋琅四白六月碧蝶子幾句同素碧梧五同極同同八重櫻同同禪寺同拙泉工桐浦洞童規子雷桐雪洲水躅郞鬼蛄村な十雀山花兎拙泉工桐浦洞童衣規
病床に冬の夜伽の梅白しかたと鳴る隣の木戶や夜半の冬冬の夜のからりと晴れて無月哉冬の夜や北する人の頰冠冬の夜や佛彫みて智惠の眉冬の夜の鍵あづかりて留守居哉銅羅折り〓〓馬賊を報ず冬の夜瞳なき〓板の像や冬の夜半冬の夜や雪洞冴ゆる長局脫稿の心閑なり夜半の冬冬の夜や杉の谷間の灯一ついづこまで鼓や響く夜半の冬關の火に山國安し夜半の冬鏡買うて女の戾る冬の夜病む足の大方冬を寢ぬ夜かな冬の夜の一間ほのめく炭火哉冬の夜の筆も持たずに白紙哉月と雪と灯と冬の夜を照らす冬の夜は急に蔓る腹の蟲冬の夜や波なき水の星明り冬の夜や松明一つ野を渡る冬の夜を語る麻布の七不思議冬の夜やふつ〓〓煮ゆる鍋の物冬の夜や遠く海鳴る風の後黑髪の婆娑と影あり夜半の冬冬の夜や鶯持てる庵のさま冬の夜や爪彈き三味の糸切れて冬の夜や小犬啼きよる窓明り冬の夜の法話も果てゝ股火哉冬の夜の天井遠きこゝろかな冬の夜や像と匠と影二つ天明より元祿戀し夜半の冬の部戶を叩く客にそら寢も冬夜哉夜を冬に燈火孤なり我〓九九凡梅百泰浦古梅ロ孤春又春三水櫻坡子春碧薰風郞山梔子露靑鳴蝶虚八重櫻六波句同竹の門同紅同同同同々牛雷洋鳴巖軒寸軒寅巴二童華花番佛綠〃雪衣子
小小六月冬春小者つれて島長ぶりの小春かな日の出見て山下りし里の小春哉藁かへる兎の箱の小春かな刈りすかす藪ほがらかに小春哉小春日や枯木の中の淺草寺六十の小春を肥えて源内侍湖を抱いて近江の小春かな城上に風船の戯や小春晴賣出しの旗や小春の廣小路大寺の椽廣うして小春かな小春日や南を追ふて蠅のとぶ雛鷄のつるみ初めけり小六月搗味に又た掘る臼や小六月煨入れて燻る炬燵や小六月夕日さす仁王の臍や小六月高砂の町に日晴れて小六月玉磨くひまな家業や小六月松の根に菊枯色や小六月小六月酢おす肘に蝶寒し十月の春を人見る金華山芝山に兎の市や小六月水仙の球の白さよ小六月茶の花に一鳥飛ぶや小六月森に來れば森に人あり小六月瘦虻の耳うかゞうや小六月十月の春を咲きけり牧の草人近く歩く鴉や小六月竹の節木の杖曳くや小六月禪林は達磨忌過ぎぬ小六月伐林の湖べり廣し小六月牛の子や賣られて遊ぶ小六月のび〓〓し歸り詣でや小六月囮かけて人居らぬ野や小六月荒釜を煮馴らす冬の夜每かな部一〇一霽紅同子放同碧梧桐同六靑小白握秋秋黃紅同六同同同同鳴同同子梅香石靑蜃死紫陽花花雪規痩舟鼎人樓酒雲洒山月蒼聲雨月綠葉花規哉
冬小春日の奈良阪こゆる女づれ裏庭に弦音高き小春かな夕空に梢の並ぶ小春かな市の音朝寢の窓の小春かな十丈の樅に鳶鳴く小春かな經師屋の椽に小春の雀かな小春日や一時見えぬ池の鴨四五匹の小牛牽行く小春かな品川へ艦を見に行く小春かな母衣たてゝ馬越す山の小春哉草山を燒けば小春日曇りけり舟搖れてちりめん波の小春哉小春日や卷帆枕に空濶し小春日や關屋の松に忘れもの小春浪我が繪心に叶ひけり手向山小春の鹿と紅葉かな染物に茜をしぼる小春かなの部染手綱喜ぶ馬も小春かな色狂ふ雁の翅や小春風小春日に七面鳥の濶步かな尼法師に石蕗の花さく小春哉小春日や浮く雲見れば湖動く人形の目も色々や小春店松代れば脂吹き出づる小春哉籔行けば翠影我に小春かな棹さして小春の水に舟輕し帆繕ふ船の女房や小春風新らしき障子の内の小春かな古き箕に花の種干す小春かな小春日や茶〓かはく枯木原みの虫の枯らすさし木も小春哉鳶の輪の中に小春の晝の月京一日奈良半日の小春かな小春日の里にお助普請かな一〇三把句竹同紅麥同左衞同同雪同余同柑同樂霽碧梧桐同香同鬼同死同小同水同蜃同小同酒月栗佛冷綠門人人子子南村城酒帖巴樓酒
冬尼弟子の頭剃り合ふ小春かな小春日や皷を習ふ影法師虎が威も檻に橫臥す小春かな鑄上げたる大鐘磨く小春かな雛にする土練て居る小春かな枯萩を分けて水汲む小春かな飼猿や賤が小春の麓宿お針子の並ぶ小春の座敷かな菫草ほろりと咲きし小春かな水晶の岩を切出す小春かな戾り駕富士を左に小春かな小狸の腹干す小春日和かな窓近く吹矢それ來る小春かな小春日の庭に絹張る女かな小春日や鍋釜並ぶ日向水小春日や井筒を圍む笹の靑旭さす鳥屋の店の小春かな鳥さしの飯食ふ森の小春かな百合玉に眞土塗り干す小春哉蜜柑黃に天城四郡の小春かな小春野に許六がうしろ姿かな小春日の暖簾縛るや大荷着く花水に嵯峨の優婆夷が小春哉門しめていづち行きけん小春人裸體畫の小春めきけり理髮店湖廣く小春の風の一帆かな我窓に西山まろき小春かな小春日の江に沿ふて長い宿場哉風船の瀨戶を橫ぎる小春かな小春風の船や止めけん島狐松菊に小春たのしむ翁かな小春日の庭で髮結ふ莚かな小春日や甲子祭る黍團子刺を挿して去るや小春の留守の門の部一〇五一〇四靑耐蝶虚漠著滴松黑景握得春水鼓醉八重櫻小十步老野漁富はぎ女馬陶竹若乾西花潮射白丁々林翠聲梅壯雪笑雨泉翁武友浪舟石水川洲春月川畦棹竹佛嵐雪衣心波
冬霜冬枯枯冬枯や蓬が宿の古障子冬枯や野田の玉川藤の棚冬枯の萩草枯の茅萱かな冬枯じや五老井じやと路通かな冬枯の桂に殘る泉かな冬枯の星映る井戶覗きけり冬枯や魯に入つて聞く咿唔の聲冬枯や巡査に吠ゆる里の犬冬枯や鮹ぶら下る煮賣茶屋冬枯の垣根に咲くや薔薇の花霜枯の中を金賣吉次かな霜枯の植木を惜む朝かな霜枯の蓬が原と成にけり味噌漉に世は霜枯の豆腐かな霜枯の佐倉見上ぐる野道かな霜枯や狂女に吠ゆる村の犬滋賀に來て物懷しき小春かなの部一〇七椽側に江戶繪を評す小春かな御野立に武を見そなはす小春哉遠山の小春見て掃く二階かな寺の庭は大山茶花の小春かな松低き小春の山や畫の月小春日に生れて小き胡蝶かな小春日の山懷ろや湖靑し石段を數へて登る小春かな兄と語りつゝ轡締む小春かな風雲の海へ流るゝ小春かな入日さす山惜まるゝ小春かな住の江の岸の小舟の小春かな靜なる波や小春の裸島畫を描きに來て句を作る小春哉松の蔭砂につめたき小春かな佛參の白髪染めけり小春人萩殼に雀遊べり小春寺薰未同同碧梧桐同同同同子晴嶺物活同子弓爾郞水央規江水外東規愼蘆南嶺禪寺絕櫻醜子黑〓月江紫一稻香寸旬兎南之都雪一丸斗寺水雲庵陽頂海狸子水洞水央規江水外東
冬冬ざれ冬ざれの干潟をあさる鴉かな冬ざれの砂利道つゞく並木哉冬ざれや机に愛す百舌鳥の贄冬ざれの支那町に干す馬糞哉冬ざれの山に皮剝ぐ檜かな冬ざれや砂利地の畑の瘦大根境內の冬ざれ根にすさむかな冬ざれや木のなき寺のあからさま冬ざれやよき木の多き里の中冬ざれや白の花瓶に花を添ふ日のうちは冬ざれながら人通り冬ざれの剃刀あてぬ病む頭の部冬ざれのたそがれ白き障子かな古き井に冬ざれの水ありにけり冬ざれて染藺の屑を捨にけり兀々と冬ざれ石や笠置山冬ざれの水光りけり山の湖冬ざれに庵の灰汁桶あらはなる洲つゞきにかゝれる橋や冬ざるゝ冬ざるゝ沙に色なきヒトデ哉冬ざれや狐もくはぬ小豆飯冬ざれや稻荷の茶屋の油揚冬ざれや石臼殘る井戶の端冬枯を獨り島守る僧都かな深草の里冬枯れて松の聲冬枯の庭へ山から兎かな冬枯れて住まぬ障子や菊の莊冬枯や秋より籠る溫泉を出る冬枯の中の胡蘿畠かな冬枯や竈を祭る琵琶法師冬枯の中の薔薇の實赤きかな冬枯は祇園の櫻一木かな冬枯れて軒の先なり富士筑波冬枯の奧の細道馬もなし···同鳴同同八重櫻同同六同同靑同同癖同同蝶三雪同同碧梧桐同同子蛙獨秋櫻醉鬼把裸碧竹鳴醜童三雪花々醉衣醜規仙行皎子佛憐栗木童冷雪
冬冬ざれや座論の樣をしのぶ松冬ざれや雲閉ぢ開く山平ら冬ざれや長良の岸の捨鵜舟冬ざれて狸の遊ぶ御苑かな冬ざれのいつ盜まれし梯子哉冬ざれや峠社の繪天井冬ざれの屠所に群立つ鴉かな冬ざれの庭に石曳く人數かな大石や二つに割れて冬ざるゝ鵠の巢落て山の冬ざるゝ冬ざれの居座り雲や城の松冬ざれの夕榮えて一ト明り哉冬ざれて水垢のつく釣瓶かな冬ざれや山外の道に入る人馬冬ざれてすさまじく落ちぬ葱の月冬ざるゝ村の夕や海が鳴る冬ざれや河原に並ぶ圍ひ船の部夏を愛す水盤の石冬ざれぬ冬ざれや竹の切株尖りけり冬ざれや引上げ舟の釘の錆黑塚は處の名なり冬ざるゝ冬ざれて流し木殘る河原かな冬ざれて蘆間に白し蟹の甲久ざれの雲より出でゝ落つ日かな冬ざれや小篠切り出す藪つゞき冬ざれや番所にかゝる旅役者冬ざれやさし藁したる古き屋根物屑に畑の鴉も冬ざるゝ杜氏が唄灘の冬ざれ淋しくす神の森落葉踏まれず冬ざれぬ冬ざれや峠の松に片日照冬ざれや小磯が原の濡れ佛冬ざれて蔦もまつはぬ柱かな冬ざれて植うるものなき畠哉一一一眉亞一非梧芳不北鬼十珂蕗柑漁春嵐八伯黑樂秋梅靑濱柳雨碧紅同溪同孤同虚月浪樂仙月宙休齋城晶星峰子人響江雛洲洲南蒼叟嵐人家六童綠水軒子
寒冬さ寒き夜の佛に何を參らせん婆が來て我心酌む寒さかな釣上げし烏賊が墨はく寒さ哉經藏の鼠逐ひ出す寒さかな水邊の松代り倒す寒さかな灯寒き我が影に師の影添へよ大いなる池に日當る寒さ哉灯影してまだ寢ぬ家の窓寒し業平に寒き鳥あり隅田川辻堂の張札そよぐ寒さかな月寒み袈裟打ちかぶる山法師月寒く峯の松風音すなり部寒き夜の細き灯や谷の坊移り住みて四五日寒き疊かな上野出るや靑森に行く寒き汽車山茶花は散てしまふて寒き庵師の前に出でゝ腹鳴る寒さ哉落首立つて京人の臍寒さ哉撞てをる鐘の下行く寒さ哉鰤の背の綠鮮けき寒さかな駕で立つ人見て寒し馬の我夕寒し障子の日さへ棧一つ毛衣の庵主に蓑の客寒し風寒く星江に照りなにもなし水交る油かこつ夜寒さかな廊下寒く初夜の案内の灯かな古下駄に眞白き足袋の寒さ哉兄弟の心異る寒さかな爭ひに我口吃る寒さかな劍に舞へば蠟燭寒き酒宴かな半燒の家に人住む寒さかなうね〓〓と元山寒し三河道道築くに切りし岩肌冬ざるゝ冬ざるゝ村に火の見の高き哉二二水同八重櫻同格同癖三醉同紅同鳴同同雨同同三同同碧同同松同同旬同同虚同同子瘤品巴堂綠雪六允童濱佛子規柳山
冬衰への老舗人無き寒さかなづらり寒し五百羅漢の膝頭鴉步く田舟の底の泥寒し戀懺悔聖母や寒く笑み給ふ市中の堀川寒し薪船大根を洗ふ手寒き焚火かな月寒しとまり烏のかすれ啼刪り去りて句何もなき寒さ哉寒い日を泣いてばつかり居る子哉我家の北に家なき寒さかな琴碁書〓生きて聲あり寒夜の灯生れしが失せし產屋の寒さ哉人中を出て横町の寒さかな臍をちゞめ肝をちゞめて寒さ哉病あるをつとめて寒き宿直かな花の句に感じののらぬ寒さ哉寒燈の下や俳魔の影もなしどう見ても背中合せの山寒き夜着觸れて立琴の鳴る寒さ哉何事も否と云ひたき寒さかな棧や燒かれて寒き蔦かつら我をあとに人なき山の寒さ哉川口を漕ぎ出て寒き艀かな海を見て空と合ふ目の春さ哉賣家に尙我住んで寒さかな百日の喪服よごれし寒さかな君前に佩劒寒き起ち居かな我ながら死ぬ年生きて寒さ哉大空の寒し月の輪雲の脚高尻の蘆絮もなき寒さかな古道の家疎なる寒さかな枕邊に笈立てゝ寢る寒さ哉古瓢主同じからず寒さかな寒燈や耽讀の僧に萬年靑の實の部一一五一一四靑黃花霽波五翠醉麥巨同死同靑同鱸同柑同香同山梔子同六同蝶水鬼乙碧梧根別天樓東洋城鬼四方太嵐雨囚月靜工濤佛人ロ城字史洒々江子村花衣巴
凍冬ともし行く灯や凍らんと禰宣が袖道凍てゝはだし參りの通りけり山寺の大鐘うなる寒さかな筆硯の疊に寒し二十日月絹裾の音する寒き廊下かな妻が血の爼板にある寒さかな卓上の花瓶花無き寒さかな大寺に寒き留守居の納所かなつまづきし石が戶を打つ寒さ哉船の灯のさむく尾を引く曲浦哉膝寒し貧居の壁を膳はず子なき腹寒しといひぬ宿の妻冬寒き百日紅の木肌かな荒磯や夜闇に寒き潮の聲城中に軍師の歿す寒さかな富士見えて橋行く馬の寒さ哉友去りて寒き机に思ひ寄す大寺や屏風に竹の繪の寒き島に寢て寒き夜頃や松の風着ぶくれた人の來ていふ寒さ哉夜半亭寒き物音は鼠かな供に立つ奴は寒き素足かな古寺に物の怪語る寒さかな灯影定まりて土の人形の寒さかな火渡しの地祭過ぎて寒さ哉爼板の魚の眼寒き灯かな廣過ぎて寒い家ぢやと思ひけり眉剃て我顏寒き鏡かなはな垂れて默想寒き己れかな三日月の水田にうつる寒さ哉海に沿ふて松原寒し小提灯焚火消す居殘りの我風寒し屋上の風に聲ある寒さかな香煙の入道描く寒さかなの部一一七一一六櫻芳折快菫琅赭山人梅其射同子信流遊子孤零餘子靑濂野寒兎幸子穆奇陬桐南子泊九萬字十二木公子草曲規吟司亭村亭川雨枝腸星太湫汀水山魂亭瓢々堂志月應石雲石
冴冬冴ゆる夜や貧乏町の水溜十丈の狸法師や月冴ゆる冴ゆる灯や書院九尺の白襖降やみし吹やみし夜の冴ゆるなり馬關の灯門司の灯糸竹冴にけり潮冴て月下に銀をたゞえけり地廻りの小唄さゆるよ格子先鈴冴えて人馬を募る夜の驛冴ゆる夜の北斗を焦す狼煙かな琵琶冴えて星落ち來るうてな哉凍えたる顏の並びし羅漢哉朝晴の連峯凍る光かな纜の堅く凍てたる渡舟かな書くや文長き文尻筆凍る凍てつくや花屋の軒の花の屑短繁の灯火凍る配所かな凍えたる手にあたゝかし火消壺の部芥凍てゝ土を放れず朝掃除北庭の終日凍てゝ水仙花水禽の羽叩き立ちぬ水の凍鶯の凍てにあそぶや花畠藪竹の凍わるゝ音頻りなり凍鶴や長白山下とある莊待つ戀や松の嵐もこほる夜に蒟蒻は凍てゝ豆腐の湯氣ぬくき鶯のいてず主をのぞきけり門前の〓いてつく小桶かな凍えたる馬上の君を迎へけり月影に凛てる橿子を握りけり酒を呑む我や妻子の飯凍る狩暮て凍ゆる脚を引ずりぬ信濃路や朝々凍る鍋のつる窓外の竹さや〓〓と風凍る凍え死ぬ人さへあるに猫の戀一一九梧靑六乙同霽同鳴同子小牛冷柿竹蘭俳小星月嵐花字月雪規柯壺火洲泉村坦士衣鼓白蝶竹月靑鳴同同水同同松同の月嵐花字月雪櫻々晴竹山衣門兎々雪巴宇
冬寒の入鐘冴る星冴る溫泉の花もまた一藥や寒の入寒に入つて此里晒す葛よけん寒の入河伯に漁父が供物かな寒に入つて牛に湯を飼ふ夜更哉から釜を焚いて僕や寒の入内井戶もある大庫裏や寒の入山梔子の一樹の眞黄や寒の入臼の餅杵に答へて寒の入飛驒山の猪くへば寒の入双六や象牙の賽に寒の入る鐘冴ゆる五山の京や雪月夜大衆や點心の鐘冴ゆる朝鐘冴る月下に松の一木かな鐘冴るとは湖上を渡る名なるべし鐘冴ゅを夜かゝげても灯の消えんとす鐘冴えて灯驚くや油さす鐘の冴え夜坐の鼎に感じけりさびれ行く溫泉の山に星冴にけり星冴えて篝火白き砦かな野に山に冴ゆる陣屋の篝かな冴ゆる火に幾度讀みけん汝が文草の根のあらはに冴える岸邊哉明鏡裡冴えて邪念を見る心吉原の灯火冴ゆる箕輪かな風見鴉まはりて光る月の冴え佛像の眼を刻む刀冴ゆるなり大なる月冴てとぶ烏かな石蕗の葉〓月月りに照り冴えにけり明星や鎚音冴ゆる鍛冶が家江に映る端山の火事や風冴ゆる姿見に燈火さゆる廣間かな家人寢て細きにさゆる灯かな默禱の一人に柱冴ゆるかな冴ゆる夜や裏戶に迫る波の音の部一二一同觀同八重櫻同同六象麥同同東洋城句黑竹子同蝶余子簑湖外生松濤樓舟堇藍鏡四靑葦靑十步老燦巴魚花外佛洲冷規衣子規空居湫雨古鶸雲天瓢秀生子
寒小大冬明寒寒寒の内寒明や寒垢離堂に朝の月寒明空羽ばたく雀小さけれ雀とる盥落しも寒明けぬ日時計に何の落葉や寒のあき小寒のせめて喰はうよ兎汁大寒や蠶種を浸す水重き大寒に怖れて小さき芹哀れ大寒や音してわれる檜木柱織殿に日脚はかるや寒の内汐風呂を家に沸しぬ寒二十日道心に嚙む麥飯や寒の內風蘭の根をいたはるや寒の内鍬鍜冶は鞴掃ひぬ寒四郞寒一夜杜氏を請じ語りけり雜炊に魂入るや寒の内寒の内越前樣の鱈通る干蕨煮て鍋黑し寒の内の部一二三落潮の雲の景色や寒の内切干の袋ゆたかや寒の内小肴の串も佗しや寒の内寒に入る竹百竿の庵かな寒に入る七面鳥の鷄冠かな枳殼の棘〓き雨や寒の入寒に入る床の錦や冬牡丹御局に炭の香匂ふ寒の入鐵漿壺へ古釘添へぬ寒の入寒の入浸々と寒き日なりけり寒の入る刻とやなりぬ水の音から〓〓と寒が入るなり竹の宿着ふくれて寒に入りけり小商人藍壺の渣の乾びや寒に入る寒の入見舞はん伯父が柘榴鼻小屋牛の角を包むや寒の入生れ子の蟲氣秡ひや寒の入麥裸繞紅極香棄東洋梅好拙白觀繞虛同象竹麗波碧続露虚綠紅同櫻醜子同同八重觀十步左衞櫻魚老翠空童石門月子冷子明葉人木石綠浦居女城史翠童山魚石子外
師冬走寒の水寒の果鶯は師走の市の質屋かな受負の雜な普請も師走かな金を貸す師走の寺の和尙哉市中の破れ鐘ひゞく師走哉雪空や師走の市の灯の光錢湯に師走の人の謠ひかな夜廻りを咎むる犬も師走かな門違ふ贈り肴も師走かな山茶花の宿や師走の里外れ火を焚いて藏塗り急ぐ師走哉死ぬ人の殘せし妻の師走かな大の字に死んで師走の妻もなし書に耽る二階の下は師走かな金屏風銀屏風〓師の師走かな戀わたる人に文書く師走かな俳諧の奴で通る師走かな翼ある車に乘りし師走かな海廣し師走の町を出離れて傾城を見たる師走の溫泉かな夕霧より伊左さま參る師走哉寒の水浴びて詩仙とならん哉心地よき微かな音を寒の水よき甕に寒九の水を封じけり漬物の桶に注ぎぬ寒の水寒の水冬の扇も貯へぬ水餅を壺に探ぐるや寒の果寒明のぶり返したる風邪かな寒明の鐘が鳴るなり寛永寺山寺の鐘の響や寒の明け寒明けを燒かるゝ猪の臥床哉寒明や小皿に殘る京の紅寒あけや骨ばかり立つ沼の蘆寒明けの障子嬉しや柳蔭寒明や病母の床の薄日影の部一二五滑蝶鳴虛格師松四方太同同水同癖三醉同同同合鱸松古東洋城同同子香醉雨靑無雨幽世雉子郞大樓衣球子堂竹濱巴規雪浦佛六々江字黃六山普羽泉
冬年の暮御降嫁の事も漏れきく年の暮通ひ帳年の暮とはなりにけり臼こかす隣の音や年の暮尻なしの喧嘩口論年の暮負公事の都を立つや年の暮僧俗の親しみ古き年の暮身の上の年暮るゝなり賣ト者我が髭も埃だらけや年の暮太祇から炭もとゞきぬ年の暮伽羅焚いて暮行く年を看給す年暮て御觸れの廻る城下かな一ふりの名刀買ひぬ年の暮馬に乘る嫁入見たり年の暮風吹いて今年も暮れる土佐日記忽ちに師走の市や雪となりぬ酒を得て心師走に倣りけり往來に油こぼれし師走かな部野の宮に物の市立つ師走かな利根川を上る師走の白帆かな鳥籠や師走の市のひまな店あと先は讀まぬ師走の手紙哉市中の師走日和やこぼれ炭とめ風呂に落る師走の鼠かな蜀山は市に歌詠む師走かな師走とも見えぬ港の月夜哉閑に處す師走の庵や靑木垣正月の花桶にある師走かな恩になるゝ師走の奴叱りけり持舟の皆かへりつく師走哉御加俸を春の噂に師走かな高臺に遊ぶ師走の閑一日物買ふて師走の財布はたきけり市中の社師走の神樂かな商人の發句よみのわれの師走哉二十七蝶溪眉醉把橡面坊別句碧麥一不喚樓同同子嘲三千竹天衣花月佛養栗樓佛童規雨水梅鶏香躑羽萩雉菱碧波零九品太雨好桃八重櫻111餘士子翠瘦子翠村耳墨躅英山郞郞花童靜天餘士子
除大冬夜年大晦日事終へて花活け居れば除夜の鐘灯に白し琴のほとりの除夜の梅擊柝の四ツも過ぎけり除夜の城除夜の鐘俳煩惱の我もあり鶴のしづかに除夜の灯しかな大年や月に淋しき屋敷町大年やどかと日かげり町一筋大年や三井の鐘聞く瀨田泊り大年や淀屋へ着きし金飛脚先生と大年を守る袴かな大年を藥の中に籠りけり大年の我顏惜む鏡かな大晦日空の財布を拾ひけり何時か來る幸を笑ひつ大晦日梅匂ふ花屋が軒や大三十日ろくでなの年にてありし大晦日大三十日小判數ふる主かな大晦日暮色の中の浮世かな膳番は鴨をたゝきつ大三十日大晦日夜をこめて馬戾りけり大晦日の月出でにけり釜の上お祠の雨の御燈や大三十日大三十日女牛賣りそこねけり書き盡す日記めでたし大晦日戀わびて手毬かゞるや大晦日歌貝の箔の光りや大三十日買物のこと罵るや大三十日船の荷や積みも殘らず大晦日行きあふてそしらぬ顏や大晦日宮樣の門靜かなり大晦日米櫃は空なり年は暮るゝなり歌屑を買ふ人もがな年の暮年の暮我に妻なく金もなし年の暮陶朱が館人しげしの部一二九水松六句紅星枴餘靑雨絕蝶夏呂碧梧桐晋花一同句雪左至北孤秋百癖三醉同一同同同子巴濱花佛葉池童生星衣佛村立靑風芳村皎雷柚轉々規風汀翠壁
春年冬年の瀨待惜春を待つ廓二丁目柳かな梅早し母と春待つ片田舎春を待つ心を比叡の嵐かな春を待つ大澤の波朝日かな小買物する町淋し春を待つ春を待つ心にゆかし嵯峨硯春を待つ衣桁の衣の主かな春を待つ後ろ姿や百人首病院に妻の看護や春を待つ春待つや只四五寸の梅の苗北窓に春待つ梅の老木かな春待や眺め古るせし軸の松の部春待つや人の秀歌を見てしより春を待つ人やら何を眺めゐる春を待つ鷹の餌袋滿たしけり春を待つ手習帳や女文字靑帝を待つ瑤臺の設けかな春待てる比枝の阿閣梨が障子哉春待ちて琵琶一面の主かな日々の編春待ち遠き花鳥かな人妻や鏡の顏に年惜む年惜む日が僅かづゝ水仙に靜かさや年惜む夜の燒榮螺帳尻に殘なき紙や年惜む年の瀨や鬼ケ島には實物年の瀨を木に金のなる噺かな禁苑や除夜嚴に庭燎除夜の鐘南都は四百八十寺恩師への一封除夜にこま〓〓と山内や杉の嵐に除夜の鐘湯燈や除夜姦しき女風呂除夜の鐘句帳の餘白數へけり寒灯に除夜の鐘待つ机かな除夜の鐘戶口に竹の嵐かな一三一、ー同水同三同露同虛同子同同へ同同白同同東洋城狐狂樂蝶香秋春刺躑喝雨十步老松士露巴允石子規き山村蜂南衣居水朗栗躅象聽溪櫻
春冬近雫して春に近く柳かな春近し村の雜貨に羽根を見る種蕪薹の二寸の春近き春近き雪よ霞よ淀の松嫁入にこの程の編や春近し對陣や一燕盾に春近し春近く瀧口に梅ふくみけり春近く接木の梅の第一花雅樂寮に春待つ笙の調かな松竹に春待つ風を聞く夜哉芝居出て春待つ町の灯かな鶯の舌もどかしく春を待つ春待つや果樹に滿ちたる裏の山春を待つ南新地の暖簾かな玄關に据えて春待つ萬年靑かな喪の事の果てゝ春待つ家門哉草の宿春待つ夜々の謠かな待春や九尺の庵の靑疊冬百句なりて春待つ机かな松植ゆる山買ふて春待たれけり春待つや黛つくる小人形春待つや漁長が家の仕立物春待て作り重ねし草履かな待春の心構や金屏風春を待つ詠進の歌莚かな盛衣成りて春待佗ぶや白拍子繪襖に春待つ宿や女の子及第の髯や春待つ男ぶり春を待つ人や痘瘡に籠りけり春待つや美人を見ざること久し紅裏の春待兼ねて燃ゆるかな雪國の春待つ心遠々し春待つや假の小桶に梅柳春待つや草の垣結ふ繩二束の部靑靑八重櫻同東洋同句美梧花芳南國子梧フクスケ呆大蛇河嵐〃城佛哉大堂人隱笏村士芋紅雉子郞碧江一竹の門麥橡愚小露曾左運八重櫻鬼四方太紅面坊村露人童城佛波綠月葉露河城
行冬冬春冬年盡深隣行年や埃たまりし硯恥づ行年や富貴な家の不和をきく行年や智惠の袋の搾り粕行年や四條美々しく軒飾り行年の鏡に老をうつしけり行年をぷいと惟然の放屁かな行年や一茶は一つ大欠伸詩百篇君去つて年行かんとす行年や人鈍にして子を得たり行年や母健かに我病めり繪卷物千鳥に冬は盡きにけり落木に冬深き戶や日南なる春隣る機よりおろす絹布哉水濾しの砂凍てとけぬ春隣菜園に賓頭盧草や春隣歌の宿の句の宿古りぬ春隣人增して船の普請や春隣の部二三五綾錦春を隣の衣桁かな梨壺にある夜の琵琶や春隣海士が家の貝殻山や春隣絕島に來る船影や春隣牧の主藁買ふ春の隣かな鷽姫の晴を啼く日や春隣歌問ひの里人來つる春隣ざぶ〓〓と水扱ふや春隣物を書く小野の小通や春隣春隣る心こまかに文しけり南向く片側町や春日に雨に雪消て無き春近し鯛味噌をひさぐ浪華の春近し春近き雜食に晴る山と水我妹のお多福風邪や春近き雲一朶かがらふや洛の春近し草の香の土にこぼるゝ春近し隣同蝶同碧梧桐同同初同同子曲靑康泊握乍三幹竹衣聲規浦々人雲月人鷄紅縱絮梅柿堇杜靑守白東洋城白へ一ゆう〓〓山梔子水鑵き萠耳蛙老山綠橫雪處園哉雨衣聲
神神冬送集のびにのびし馬の蹄切り神送る神立つと見送る雲や尋常ならぬかむなぎに戀はあらじな神送り神送る式見に來たり吉田山留守狐御供狐を送りけり赤幟疱瘡の神を送りけり御旅立竈の神を見送らん沙汰なしに貧乏神の不參かな福の神の振舞酒や神集ひ神集ひ廣前に立たせ給ふらん鼻黑に竈の神の末座かな瘤取の翁が事も神集ひ浪透る沙の明さや神つまりの部人行年を別莊守の晝寢かな行年の人や嶮しき秤の日行年や天下無用の書一架行年や夜を米搗く嵯峨の寺長安に年も行くなる人馬かな行年の噂に上ぼる美人かな行年を燈下に畫く酒債かな干解かけて行年の庵たゞならぬ行年の樣を鳥羽繪にかゝん哉行年や糟糠の妻子澤山行年の色町埋めし墓雪かな行年の徒に讀む兵書かな行年や江戶積の荷に船の難行年や古人の貧を文に知る行年や佛に手折る正木の實行年の塵に埋れて死ぬ名かな行年に振つて見せたる財布哉行年の髭いたづらに長き哉事一三七四同同露同同子玉漁里射碧梧桐規九虫壯靜石茶泊蘆雪六虎零餘子九萬字不眉一月碧鬼癖小四正雲仙人子花杖旬月養兎童城醉波明一月碧鬼癖小四正明石影
神冬神の旅迎神歸り浪枕島の女神の旅路かな連れだちて鹿島香取や神の旅神立ちし夜の團欒なる蜘蛛打ちぬ盃に乘りてや行きし酒の神姫神の旅や社頭の冬櫻旅の神八雲たつ日を御着き哉伯耆路の蕪は赤し神の旅旅立の大黑殿や金奉行北山の松に時雨や神の旅八重雲の雪峰こめて神の旅絕壁に注連ひきはへて神の旅鷺の森に鷺騒ぐ夜や神の旅神の旅白馬の汗を拭ひけり俳諧の神簑笠に旅立ちぬ山茶花や畑の竈の神も旅神の旅天の斑駒嘶ふらんいち早く旅立れけり軍神軍神旅立つ鉾に霰かな細矛千足のさまや神の旅佩玉の鳴る凩や神の旅穴あれて狐も留守や神の旅お留守には何事もなし神の旅芳しき酒捧げゝり神迎へ返り花咲く日や歌の神迎神迎へ神慮にかなふ巫女が舞どの馬で神は歸らせ給ふらん神送り宮居に雲の深き日ぞ部おくれたるちんばの神や神の旅鴛鴦二つ池に下りけり神送り神送り松に添ひ來る仕丁かな神々を送る天狗や杉の月神送りてひろ〓〓と掃き淨めけり三輪の里大根白し神送りわだつ海船玉の神送りけり一三九旭雄野司人玉楓散人美射山梔子月泰村東洋城句三癖三醉格同一同露同同子啄木鳥碧露子鹿語子河芙蓉古玉露小碧櫻濱鬼哉石村山家佛允堂轉月規明石規〓鬼人酒童
神冬樂神の留守山神樂焚火拜みて戾りけり神の留守呪咀の釘のさびにけりうつろぎの注連見る淋し神の留守神の留守事あり狐飛脚立つ守武が俳三昧や神の留守神の留守神鏡寒き思ひあり神の留守香取の森の寂しさよ木の間〓〓を漁火大いなり神の留守神の留守眉書く巫子の哀れなり道端の小さき神も留守ならん神鏡に鼠の影や留守の宮守武よ俳諧語れ神の留守神の留守魂ぬけし神馬かな神の留守物斷つ巫女の殊勝さよ神の留守涸れぬ御手洗尊とさよの部月がさす小宮も神の留守にして野々宮の遷坐普請や神の留守春日野や神のお留守の二日月神の留守奈良は佛の光りかな神の留守十二末社の淋しさよ白丁の衣手寒し神の留守お留守もる顏に日ざしや矢大臣夕燒けて動かぬ雲や神の留守神の留守賽錢箱を盗まれし籔神の留守を崇りし狐かな霜日和神は留守なる小村かないかめしや神の留守居の矢大臣口あいた舞樂の面や神の留守細どのに鶯の子や神の留守御留守を社鼠退治の謀古禿倉もとより神の留守にしてうつ蟬の羽衣の宮や神の留守道を異に風神火神旅立ちぬ神立つや金の草鞋の足の跡一四、竹櫻蘆葵松靜桂壽樓野晋祿藤壺半河井一坦司泉堂冷外仙水塘帆人風郞會藻白柳水生風裸靑癖露子犬銀旭水史同同四同樂巴如素左衞三雨露南藤泉木門嵐醉石明規童河三泉堂明規童河
御火燒庭冬燎御火燒の藁乞ひあるく日暮哉御火燒の幟まばらな木立かな御火燒の火に推の實のはしりけり御火燒の尊き光拜みけり神立に霜置く夜半の庭燎かな立騒ぐ鵠黑き庭燎かな庭燎焚く社頭の闇や鈴の音庭燎に夜の山寒う灯りけり庭燎すれば犬吠ゆるなり隣り村齒朶の葉の霜雫する庭燎かな庭燎濟んで華表の上の月夜哉葛城の神や庭火を面はゆげ思ひ初めつ庭燎に巫女の優姿御神樂や幼き神女の緋の袴笛の音に神馬居眠る神樂かな夜神樂に霜美しき庭火かな夜神樂の醍醐月夜を霰降るの部里神樂白矢を祭る杉の宮夜神樂や鈿女をほめる彌宜が妻夜神樂の笛更けにけり五十鈴川裏山に響く神樂の囃子かな鴨さげて征夫も見居り里神樂里神樂はげたる面を被りけり夜神樂に冷めたき巫女が化粧哉鈴添へて劒に舞へる神樂かな根颪に折々峯の神樂かな壺の中に惡鬼を封す神樂かな夜神樂や庭火の映る眞寸鏡夜神樂の灯火寒し假屋臺夜神樂の篝に移る嵐かな結構なお山日和や山神樂里神樂筑波颪が面を撲つ笑はれて古びにけりな神樂面里神樂笛も太鼓もなじみ貌四三萬燒梧紫吳俳小星老事-全枯子散樗居若方無靑香烏櫻艸石風影庵竹莊翁外黃牒水賊崖風黃伯三禪鶏彩寒醉秋守拈小乙同松竹寺水骨雨洲巴洞耳雲山佛双老華波字宇冷
夷冬講福引の祝賣あり夷講夷講紀文が家に醉共角臺所へ泣上戶來つ夷講花瓦斯に光る金庫や夷講席末に能登の椀屋や夷講大釜に月のこりけり夷講百貫の鯛に淀屋の蛭子講夷講眉に市井の埃かな入船や今日は錢屋の夷講の部取りたてゝ手代を聟や我講番頭の古き小唄や蛭子講凍まじき鯛の鱗や夷講書は姓名を記す主や我講夷講符牒の流れ汲にけり大通の十八人や夷講水仙を淋しと見るや我講鶴龜の燭臺古し夷講我講夜目に峙つ藏の數油屋に家を起して夷講大名の御金御用や夷講柿の葉の如き鯛かな夷講本店や暖簾持寄る夷講山の物炭百俵や夷講夷講位持ちたる人もあり三代の堅き老舗や夷講三寳に供ふ黄金や夷講隣合ふて伊勢屋近江屋夷講戎講端然として主人有夷講戾り時雨の小提灯金罍に綠酒たゝえつ我講我講をして豊かなり草の宿金銀の升をかざるや夷講御火燒や水田に映る人の影我講井の橘をむしりけり一四五殘烟雪霞踐翠白鞭一圖靑松芹薰風郞鳥不關參松雪葉香山樓軒雉下漂南瓢宇村差濱洋碧露八重櫻自左衞鳴同同耕同同月同同靑靑々童幽門月雪村斗々流
十達摩忌冬夜てら〓〓と賓頭魔赤し十夜の灯極樂の道の細さよ十夜寺藪越しに十夜の寺の灯かな瑤珞や潘や十夜の灯うつり皆人の老て悲しき十夜かな眼前に凍てゝ高さよ十夜の灯梁に笑む鼠の目元十夜粥お十夜の淚も足のしびれ哉水鳥に十夜の灯影寺の池念佛を知らねば寒き十夜哉盛りなり十時頃なる十夜寺枯菊に暮るゝ十夜の在所哉誓にはもれぬ十夜の盲かな達摩忌や霜の枯木に星隕る達摩忌や童顏の師の眉長し達摩忌の外は松吹く山颪達摩忌や壺の白菊を共儘に達摩忌や一筆書きの雪の蘆達摩忌の達摩に似たる住寺かな達摩忌や床に活けたる蘆一と葉古叢林雲衲や百達摩の忌達摩忌や枯木地に落つ夜の音達摩忌に俳居士誘ふ詩僧かな達摩忌や華やか過ぎし僧の衣達摩忌や提唱すみて椎の雨達摩忌や達摩に似たる顏は誰達摩忌や松穀寺に提唱す夷講大盛に致富 の銘百枚の緋の座布團や夾講の部十夜寺薄花染の人あはれ野の道や十夜戾りの小提灯月影や外は十夜の人通り達摩忌や寒さも葦の葉末より達摩忌やたゞふつ〓〓と弱白し一四七句格露四虛同月同同紅同靑格漱同同同子松ヘ木水〓沙氣師紅竹六北紫五同子黑三佛,堂石明子舟綠〃規濤き母棹竹露嶼花涯影工堂石規洲華
冬報恩講前髪にさすや御講のつくり花報恩講他力の齋につきにけり築地派の御講淋しや普請中幾年の十夜に黑き持佛かな西山の御坊時雨れて十夜かなお十夜や風に繪蠟の片流れ蓬生をから明にする十夜かな水晶の念珠つめたき十夜かな相座して私憤影なき十夜哉の部繼たして蠟燭長き十夜かな末法の僧衣燦たる十夜かな僧の子の僧をよろこぶ十夜かな襟に入る小錢冷たき十夜かな寺をいでゝ十夜の鐘や耳にあり極樂にひゞけと叩く十夜かないつも見る老や十夜の燭を剪るしぐれ傘まゐれば霽るゝ十夜哉一四九北山をうしろに坐る十夜かな大根まだ引かぬ話や十夜人十夜寺うしろは月の如意ケ嶽暗がりに草履重なる十夜哉十夜道芝居歸りの人もある鉦急に壇上振ふ十夜の灯くらき灯にうつ鉦光る十夜哉法の場に紅葉散り來る十夜哉ありがたき說〓眠る十夜かな小狐の灯もまぢるらん十夜寺十夜果てゝ戾るや月の眞如堂顯密の二燭相照る十夜かな片隅に誰そや十夜の高射十夜寺とゞろと落る屋根の雪晝參る十夜の寺の紅葉かな老が目に見それし顏や十夜連知る僧に十夜に戀し眞如堂洛燕居秋子香塔伯月孤星華靑鬼湖抱露梅竹着規室齋洲郞村主園人城月擧聲瘦後未蝶無夢靑鳴霽月東洋城小螢握蜃虛鱸一竹の酒雪月樓明江央蓑門衣黃風嵐球月兎
御鉢御命講御會式取越冬叩鉢叩雪に四條の宵寢かな鉢叩瓢に錢を鳴らしけり洛中に知らるゝ顏や鉢叩鉢叩く音や浮世の風の尻一しきり雨に止みけり鉢叩近衞殿の眞上の月や鉢叩六波羅や擊柝過ぎて鉢叩眞夜中の壁にひゞくや鉢叩うらなひの來ぬ夜となりぬ鉢叩夜嵐の千本通り鉢叩而白うたゝかば泣かん鉢叩御會式の明方頃や霰降る會式寺妙法蓮華枯れにけりの部御命講引掛け袈裟の法師かなたま〓〓に冬鳴る雷や御命講御命講や孫に引かれて片法華一ト里は霜に太鼓や御命講御命講水仙さげて兒のくる不受不施の一燈脈や御命講十月の稻妻凄し御命講饅頭買ふて連にわかつや御命講中山や狂女もこぞる御命講憂娑塞の話上手や御取越新發智にほれし女や御取越雪催ふ北國空や御取越御師樣の道化談義や御取越谷の寺へ著けばほか〓〓御取越御取越冬櫻咲く御西かな御取越肩衣寒き一夜かなよき風やお西お東お取越御取越蠅も他力の生殘り只たのめ莖漬の石も御取越門の菊存するうちに御取越佛燈の丁子の花や報恩講二五、士放逸樓柳八重櫻句碧橡格同同子堇師櫻家佛童坊面堂規村竹櫻醜子生きへ村芋泉古子雪君淚晶言堇四醉五露靑蘆虚同五同明工規溪子笑魚童哉子佛工月々山遷
浪化忌維摩忌日蓮忌林紅が狭き庵や浪化の忌御早世を語りもぞする浪化の忌浪化忌や法門發句の末草子浪化忌や司晨樓建つる志今朝の霜白扇集の忌日かな浪化忌に萬子のホ句を數へけり維摩忌や鐵如意かゝる床柱羅樹園に十日の月や維摩詰維摩忌や眞白く咲くは何の花山茶花に冷たき雨や淨名忌維摩忌や無垢月上の彩色〓隱元の拂子さびけり淨名忌誦んじ去る問疾品や御會の鐘維摩忌や庵主が文の走り書き維摩忌の花日に替ふる尊とさよ維摩會にまゐりて俳諧尊者かな維摩忌や參禪なれし峯の寺の部一二五蝕める摩詰が像に献茶かな維摩忌や松杉明き法の雨維摩忌や民に施藥の御内勅實階を昇り降りや淨名會冠に附きし木の葉や無垢禰會肩叩く月上藥を煮る善思枯原にひゞく太皺や日蓮忌鉢叩過ぎ行く月のうしろ影白川へ一人這りぬ鉢叩市の灯に横顏淋し鉢叩鉢こくり來世は花の瓢かな戾ろかと月に間ふなり鉢叩月落ちて西へ去にけり鉢叩鉢叩〓もなくて哀れなり洛東の果に人家や鉢叩鉢叩く我影寒き月夜かな鉢叩見知りの僧も來りけり水烏童守水老句同白白鶯竹柚十伯松河芙琅鬼不棹關佛山堂池山泉翁蓉框洲々城圃蝶簫蕗靑同同虚鼓其天秋師默牛好翠八重不濤櫻嵐子竹石郞皎竹衣骨子峰童翠
冬蕪村忌大燈忌几董忌嵐雪忌芭蕉忌風呂吹をくふや蕪村の像の前大燈忌室の戶あけて菜種あり花寒く蛾眉をひそむや大燈忌戀々として几董を學ぶ忌日哉各々に干菓子美し晋明忌前置の句の面白や几董の忌古足袋の四十男や嵐雪忌嵐雪忌黃菊白菊酢に和へん嵐雪忌また時雨かな落葉哉芭蕉忌や松を鳴らして夕時雨芭蕉忌や〓像にかゝる茶の煙翁忌や戶口にあまる蓑と笠芭蕉忌や提灯を借す僧の連時雨るゝや日記の花屋目に見ゆる十二夜の月や尾花の取合せ芭蕉忌に時雨の卷を語りけり翁忌や陀羅尼に勝る十七字の部二百年の灯更けたり桃靑忌芭蕉忌や壁にかけたる許六の繪十哲の像も古りたり桃靑忌芭蕉忌や茶飯にすべき米五升芭蕉忌はいつもの通り茶漬哉かしこみて句を奉る時雨かな桃靑忌時雨るゝ中を集ひけり芭蕉忌や新傾向の發句は誰芭蕉忌にものたく柴の匂かな芭蕉忌や淋しき事を語りつぐ蒟蒻に發句書かばや翁の日芭蕉忌や我俳諧の奈良茶飯芭蕉忌や其角嵐雪右左浪化忌や句佛が文のホ句三首浪化忌や霜に因みて回向の句優婆塞の俳人多し浪化の忌浪化忌や寫す三部の御日記一五子握靑香松蝶渡楓烏不關千孤松鹿堇櫻醜子北金抱愚稻麥格四同裸同靑同同子魚聾三未規月〃村濱衣川江曆村春鳴哉巖馬琴佛靑人堂明木々規里兎靑央
冬子燈心茶忌庵に古き大黑天や子燈心かちと打つて星と飛ぶ火や子燈心茶の花に遊べ小雀一茶の忌一茶忌の末座に一人童かな一茶忌の果てゝ寺門の落葉かな一茶忌や麥蒔いて馳せ參ずべく一茶忌や百姓どものホ句の會茶の花に彌太郞どんの忌日哉一茶忌に蕎麥うつ貧の主哉鳩雀一茶の忌日忘れめや蕪村忌や四明山下の飯煙の部一茶忌に貧乏神が上座かな一茶忌や各々無事で罷在る一茶忌や生殘りたる蠅一つ一茶忌に赤きものなき山家哉一茶忌に襟の虱もお供せよ一茶忌に行くや昔の落葉道一五七蕪村忌や貧居に酒落て紙ぶとん蕪村忌の趣向も古き蕪かな蕪村忌に碧巖集の講和かな蕪村忌や書屋の主貧に處す蕪村忌や遺墨嬉しき金福寺天下一品蕪のあるじの忌日哉むかしより庵に鴛鴦や春星忌袴着て狐まいりぬ春星忌蕪村忌の戶に音づるゝ狸かな蕪村忌や赧然として句盜人花摘の版木なつかし春星忌風呂吹の蕪も百十八面忌蕪村忌や朗詠集に題探る下第して凡ならぬ子よ春星忌蕪村忌や及第し得ぬ句三百蕪村忌や風呂吹の題蕪の題蕪村忌に吳春が〓きし蕪かな一五六松同琴葦秋聾浩柳未三碧同銀箭峰同同紅握紅濱雨夫蓼兎水家央允童同同靑同子柳西春逸痩山虚素月三露碧梧三梔紅濱雨夫蓼兎水家央允童三綠月枝湖洋夢石子明石兎允石桐々規
玄クリスマ吹革祭冬猪お玄猪に辛き物あり赤菜和江戶の雪積まで粉に降る玄猪哉火繩振る童もあるや亥の子つく枯萩やゐのこの糧を餅につく山寺や亥の子忘れず萩の餅御玄猪や炬燵もあけぬ長屋住故〓の大根うまき亥子かなアメリカへ歸化の一家やクリスマスなつかしき牧師の顏やクリスマス軒並に吹革祭りや鍜冶屋町吹革祭秀眞が鑄型何ならん相逢ふて妹に貰ふや子燈心部聖誕祭カードに止めし戀歌かな花瓦斯の綺羅を照らすや聖誕日クリスマス花乏しらに造花哉孤の君に幸あれクリスマス赫耀と灯ともす壇や耶蘇祭尖塔に月寒き夜やクリスマス良心の嘉賞樂しやクリスマス牧童や賞牌胸にクリスマスクリスマス〓徒の名ある娘かな布〓師の島に一人やクリスマス十字架の雪に朝日やクリスマス贈り物の數をつくしてクリスマスクリスマスの小き會堂のあはれよ子供がちにクリスマスの人集ひけ吹雪ちる吹革祭の朝かな吹革祭る榎の下の野鍛冶哉十握の劍鍜ひし吹革祭りけり火の神を鎭めて鞴祭かな古弟子を鞴祭に招きける土間寒き密柑の皮や鍜冶祭祭する野鍜冶を見舞ふ狐哉赤飯にいさゝか吹革祭かな一五九同同碧梧桐同靑同子官召郞春靑楓江西雪同孤同子枯錦山梔子杏秋蓼奇松無碧梧桐近藤越同波同同同々規郊江涯湖人空村規柳村堂溪雨遇濱黃々
臘八冬法水の沸く臘八のお粥かな臘八の空巖山雲樹かな臘八に禪僧の愚を笑ひけり獵八や浮世の粥のたき加減臘八や見る〓〓豆腐凍る時臘八や蹉跎と凡夫の戀をする臘八や我家に長き粥の杓臘八の人無きかごと雪滿地驢耳馬耳の僧臘八の機嫌かな臘八の且峨々たる聲音かな亥の子餅朝比奈生みし巴かな老二人寒きが中の亥の子かな生魚の無いなりにすむ亥の子かな山茶花は南に暖き亥の子かなお亥の子に賢なる母の機嫌かな寺寒うひたと亥の子の時雨かな佗人のきのふの亥の子あぶりけり六十の二十四枚齒玄猪餅亥の子日も門邊の菊に暮れそめる赤蕪をきざむ亥の子の膾かな奈良にても杵の音きく玄猪哉船路より歸りつきたる玄猪哉玄猪つき來たり樒柑をもぎ荒す竈の上に眞白の猫や玄猪の日柑橘に霜靜かなる玄猪かな亥の子餅十人の子をなしにけり組重や傘打ちかけて亥の子餅三井寺の大根かはるゝゐのこ哉凡兆の妻が髪結ふゐのこ哉亥の子餅さげて名親を訪ふ日哉蓬が宿の大根白き亥の子かな御玄猪や内藏寮の灯の朝朗北山に薄雪おけり初ゐのこ亥子つく兒や黄葉の一佳境の部一六、檐八重櫻句柳木夏靑同同同同靑同同碧梧桐東丁榎蝶醉虚八重櫻松碧樓句同小烏上人九日坊竹の門女一星月二郞巨佛々孫丘月公泉々虹羊淚霄村衣佛明口佛酒
冬粥施行野施行赤豆粥粥やろよ徂徠は灯かゝりけり粥施行冷さずと養覆ひけり粥やろや古き泊の小夜千鳥秋に見し蟲屋住まずや粥施行かゆ乞ふて水仙くるゝ翁かな梅に傍ひ柳をとふや粥施行野施行の提灯うつる水田かな木津こそる市場の衆や野施行野施行の包みほどくや星明り野施行に芒の風のすさぶかな野施行や道窮まりし小提灯野施行の腹ふくれたる狸哉野施行や一本榎野に立てる新妻の世帶染みたり小豆粥赤豆粥枕中春の思ひあり裏山の柴折り焚て赤豆粥赤豆粥京に年住む漢醫かな大事かる古土器や赤豆粥臘八に拂子の頌を作りけり雲水の目に寒かろか八日空臘八の魚板凍てたる響かな臘八や印可ゆりたる僧一人沙羅々々の風婆羅々々の雨や臘八日臘八や坐して無の字を三千年七花八裂師走八日の雲を見る臘八や奈良六宗の傳燈記臘八や椿の咲ける枯木山五味粥や師の師又の師佛顏臘八や老雲水の喝の聲臘八や解脫の耳に寒鴉臘八や渴傾の粥隨喜の偈臘八や道風會下の五百人粥鍋に耳なき師走八日かな寸善尺魔臘八の粥冷えてありの部一六三無靑小同同靑茂小桃裸溪晴桂鱶麥碧梧桐白孤若小水鶯歸農夫禽翠十步老水靑自ゆう〓〓雪六同拙徑嵐洒々生蛄崖木水人香村翁然嵐影魚洲翁池化濤人棹嵐花堂
箕藏冬雜魚寢千葉笑祭祭足袋はいて京の好色者が雜魚寢哉斗柄隱るゝ山冴々に雜魚寢哉さゞめきの靜まる遲き雜魚寢哉雜魚寢して密柑ふまれし袂かな狩衣の袖片しきて雜魚寢かな明け鴉雜魚寢の窓の白みけり雜魚寢の夜明くれば壁に狂歌哉家脫けて神に委ねし雜魚寢かな夜嵐の林木になる雜魚寢かな床下の風吹き上がる雜魚寢哉手が障る誰じや雜魚寢の足障る誰じややら目覺てる樣の雜魚寢哉軒あれて曙しろしざこ寢堂一卷の離騷たもとにざこ寢哉鮟鱇の口をひらいて千葉笑狐かも知らず彼の聲千葉笑代官も潜に出でゝ千葉笑の部一六五髯剃つて進士も雜る千葉笑とかくして我口吃る千葉笑利根川の水濁る世や千葉笑箕祭に醉ふ惣唄の拍子かな箕祭に媼の顏の淋しけれ鷄騒ぐ箕中に煽ぎしたりけり箕納めの廣土間朝に掃れけり福神のさゝやききゝぬ藏祭杵や臼や我世は富みて藏祭德孤ならず隣もすなる藏祭藏祭お福と名のる大鼠民飢えて仁よくいたる粥施行かゆ施行いくつ淀屋の小提灯遲れ來しは旅人と見ゆかゆ施行四辻に第下しけりかゆ施行かゆ施行江南四百八十寺粥施行一寒僧の吹かれ來る蘆若我黃麥塘裸梧翠雷死久堇堇櫻磈同師雨同哉哉竹義子仙翁世雨風雨木窓波寒素洋格百十步老皐千虫大北同ヘ同靑鞭靑一水里生狩月〃我堂涯々下々養き々下々養哉哉竹義
曆竹下駄墨製る賣古冬曆曆かけて庵安らかに住ひけり本箱に張り古るしたる曆かな不思善や不思惡や曆卷き納む古曆いたづらに三百餘日かな剝つくす日めくり曆捨てに鳧曆古り人匁忙の裡にあり改元の噂も古りし曆かな古曆いつ朽ち果てん草の宿百年の古きを持ちぬ伊勢曆徒に我身世に古る曆かな俳諧の日數に古りし曆かなわたましも遂に得なさず古曆見もせずに曆古びてしまひ鳧古曆かくて春待つ机かなみよし野の花の芥や古曆物皆の古りたる中に曆かな古曆兒の食初めも年の内の部一六七繪曆の古き繪をのみ殘しけり古曆枕包んでしまひけり臍繰の小判封じぬ古曆花曆俳諧國に古りにけり年の內に梅咲く町や曆賣袴着て來にけり伊勢の曆賣伊勢講の席上に賣る曆かな曆賣戀の堀川もどりけり浪花江の師走も來たり曆賣歸るさを月の夜霜や曆賣寒梅や草の戶に入る曆賣鐘の音や橋場に暮し曆賣今年まだ見えず河内の曆賣洛中を一日ありきぬ曆賣曆賣尻をからげて忙しや竹下駄や門外十里雪の原墨つくるよき香もれけり古梅園石立釜鶯西虎烏零未靑水蝶句八重櫻東洋虛五不鼎外村池湖杖關餘子央嵐巴衣城佛子工小子同雪芳可錦西紅迂笠望拈同鱸畦西波規人亭成朗男露外堂東華江堇湖
狩夜興引狩場冬夜興引くと寢刄合すや山刀夜興引や野中に瘦せし森の影夜興引十夜の寺をよそ目かな夜興引の物々しけれ繩詮議夜興引につきくる里のまぐれ犬夜興引や犬の眼光る杉の闇夜興引や狸仕業の籔ゆすりさゝら勢子一人雇ひぬ夜興引夜興引や獵に取る名の兄弟夜興引や我れに寳の犬二匹夜興引の草鞋はきゐる軒端哉夜興引や犬心得て山の路弓弦をしめす狩場の流れかな溫泉の村の寂れて雪の狩場哉狩場出て岩の徑に憩ひけり大鼎狩場の雪に据えにけりお狩場の松に吊るせし太鼓哉の部一六九鉾杉に狩の焚火の焔かな狩り暮れて胡砂吹く風に星寒し狩くらや孟春隣る月の暈狩り暮れて鴫立つ畦を歸りけり西山に雪見て狩の支度かな手負猪狩野の幕を侵しけり狩犬の山笹深く沒しけり狩りくれて月に詩を賦十馬上哉狩人に未だ獲物なき焚火かな狩のあと脫兎走るや麥の丘國守の武三日狩をつゞけゝり狩七日山野の月に暮るゝ例ゼルマンの公使よく射る御狩哉羆獲て今年の御狩振ひけり狩暮れて山中の溫泉に泊りけり大津繪と柱に古りし曆かな古曆名殘の花の座は何れ靑靑乙堇寒奇芳月同同櫻醜子同同子三紫魚瓢嵐村字湫山規碧果淺霽雨芳秋蛇蘭白香法明靑六同同笠瓢嵐村字湫山規碧茗志宙鱗宙香笏村鳥骨師水釆嵐花茅月山聽
火森事折柄の江の落湖も大火かな層塔も甜る業火の魔舌かな神木に恙あらせぬ火事場かな本尊を燒きまゐらせし急火哉夜座の空上野を隔つ火事遠し大火事のありし日けふを警むるよべの火事人逃げしさまの泥田哉大火事や四條を走る牛車火事の跡松を悲しむ法師かな大靄に映つる水城の大火かな吉良殿の店子で湯屋は火元かな廊唄に殘る相馬の大火かな舟火事やたま〓〓すさむ山颪屋根の雪江戶の火事見る宿の月火事に逃げて我が家の松を顧る丘の家よべ燒け落ちて立樹かな寺燒けて殘る鐘樓に鴉かなの部月西に大火下火となりにけり大川の水がさを思へ火事の空火事を見る大屋根の闇の人參差寺燒けて五本の棕櫚も立枯れぬ火事あれば世話しき顏や臟物買寒月に鎭火の鐘の響きかな火事見舞上野を踰えて戾りけり會更けて遠火事を見る歸りかな森の上に江戶の火事見ゆ夜の曇り水に映る火事は堀端通りかな夜興引や布子も凍る簑の下星の座に我が夜計るや夜興引狼のうなる木魂や夜興引夜興引や木々の木魂の身に泌る谷に落ちし犬を探すや夜興引夜興引尻切草履月白む夜興引や霜の山路の月明り一七一同六鳴同同碧梧桐同同水同同雪同同鱸同同花球碧同同淺同同虚同同子溪觀不孤波不蜃花球巴A江童茅子規水魚覊軒空知美樓
冬火事羽織八ツ手の花に乾されたり橋渡る火事裝束の人數かな山火事や杉に燃えつく一嵐火事消えて曉雨となりにけり類燒をのがれし家や商へり竿重く火事裝束を干しにけり大火ある空を見て過ぐ夜舟哉山火事の火の粉落つるや湖の上火事を見てくね〓〓の畔を趨る哉宮の火事松の木立に焰かな大提灯吊す近火の町家かな昔々振袖火事の噺かな火事明り枯木に足袋の干忘れ地の底も火と化せる火事の跡廣し雪空に焔の影や火事遠きこゝらぞと來し家も過ぎ火事遠し火事に撞く鐘凍るなる野寺かなの部一七三三度火事に逢ふて尙住む神田哉火事頭巾十二段目の夜討かな眼のあたり燒くるを見るや御本山火事うつる天守の壁の高さ哉火事遠しと隣の聲に寢る夜哉火事見舞船漕ぎつけし港かな火事裝束されて主熟睡せり島の火事水鳥白く立ちにけり野の中の一軒燒くる吹雪かな火事逃げし葛籠の上や女の子火事避けて御堂に狭き幾世帶火事の風纒をあふり煽るかな人屋根に火事の方角呼りけり捨てゝある喞筒に火事の廣さ哉ぬば玉の夜の一方や火事明り玲瓏と猛火の裡の大厦かな寺火事の蘇鐵にそゝぐ火の子かな蕗珂燕寶桐碧天兒た著柳四乍香南國子炎竹十步老露け葉星郞水森芽南弧人村天後聲松桃句三普癖青鳴同孫同象同瓦へ不喚露け三葉星郞水濱き孫樓佛允羅醉月々雪水外全
冬冬構火の番窓暗う黑木積みけり冬構瘦村の藁屋四五軒冬構納屋見れば炭一ぱいや冬構垣内に鷄蹴合ふ冬構二坪の腰板燒くや冬構冬構裏山眠りそめにけり冬構鋸山をうしろかな冬構筧に莚卷きにけり冬構蘭に萬年靑に袋かな山町や軒を並べて冬構結び足すや蘆の穗垣の冬構通り拔無用と冬を構えけり藁垣の雨に匂ふや冬構鷄小屋の藁厚々し冬構藁かけて風ふせぐなり冬構藁垣に菜畑かこふや冬構家の富妻子は知らず冬構の部火の番に間へば寢て居る返事哉、火事見舞風上の幸申しけり火事跡の山門高し朝の月北風に川なき町の大火かな頤埋めて褞袍に火事を語りけり連峯の雪に映じて大火かな富士の瘤見ゆる府中の大火哉荷空洞樹に菰を卷くなり冬構冬構伊吹颪に松瘦せし曉やすゝけし顏の火の廻り月高き巷の風の火の廻りあけ寒き火の番小屋の焚火哉火の番や辻に更けたる腰障子火事跡に釜かゝりたる竈かな火事を見る雨戶細目や風寒し積"でいたましく居し火事場、寺の火事火に飛ぶ鳩の去來哉な一七五同獨同隈同同桂雷死久同柳靑同同八重櫻同子同行水影家嵐華靑竹梧子枯西湖花保佛蛇同曉可孤鎭西花行水影家嵐規園峯天成村冷月郞瓢山坊靑囚泉丈笏
北窓塞冬北の窓新潟港を塞ぐかな北窓や小倉の莊の留守を閉ず北窓やかけて塞ぎし簑と笠北の窓ふさぎぬ獸通ふらし窓塞ぐ一夜二夜はもの遠し北の窓日本海を塞ぎけり北側の此町早き冬構冬構書窓斜に梯子かな小高みに風よけ藁や冬構藁で卷く筧の竹や冬構冬構世は簑蟲の我は顏訪客に折れし芭蕉や冬構納屋の戶に戶締り石や冬構穴目からかぐや姫見ぬ冬構築替へて竈烟らず冬構石臼の處得顏や冬構町幅を廣めて淋し冬構の部錦木はつれなく古りぬ冬構冬構一ト甕の水澄みにけり地辷りに殘りし家や冬構要塞や冬構へたる一個隊冬構わづかに萩のまばら垣千艘の船みな筈に冬構溫泉の村や紅葉散る日を冬構たのもしき大水甕や冬構爐と壁と繕ふ土や冬構三樂の爐一つ冬の構かな黄檗の干菜乾ひて冬構冬構相隣して大家かな炭賣ののぞいて去きぬ冬構狼の來ぬ圍ひして冬構高き木に梯子かけたり冬構新らしく莚一枚冬構冬構うしろに比叡の落葉かな簫淺五露靑子舟芳金童湖蒼霞鳳梧桐柑零餘子塘午雉子郞子茅工月々規子居靑宙子生刀溪士月未白橡素幽蝶品喟黃た露碧梧桐虚竹鳴面山け櫻舟央山坊水山衣子然雨し石子冷雪面山け
冬冬籠冬籠醉へば泣く身といつなりし屏風立てゝ冬籠る間の廣さ哉茶の花や世を宇治山に冬籠峽中の雪の眺めや冬籠冬籠る年々かきし書三卷誰問はぬ善罵の舌や冬籠師が威容犯すべからず冬籠秋成の反古しらぶるや冬籠橫丁の橫丁に住む冬籠買ふて讀まぬ古書三凾や冬籠古人にも其句多きや冬籠鼬來る冬籠る庵の垣根かな掌焙りこがしぬ冬籠冬籠孔子の脛を嚙りけり冬籠眠る病のありと聞く折り曲げて久しき膝や冬籠集を見て我句樂しむ冬籠都曇てふ樂器見せけり冬籠ものうくて二食になりぬ冬籠冬籠妻子を隔つ屏風かな市中は物のひゞきや冬籠珍重す五升瓢や冬籠冬籠佛壇の花枯れにけり冬籠煙のもるゝ壁の穴袴着てゆかしや人の冬籠北窓を塞げば遠き隣かな山火事に塞ぐ北窓開きけり北窓を塞いで遠し海の音船板で北窓ふさぐ漁村かな塞ぎたる北窓近く鳴く狐明日待たで皆北窓を塞ぎけり北窓を塞ぐ日向や海を前北窓をさして籠れり爐の烟鹿が來て覗く北窓塞ぎけりえの部一七九香同同水同同六同同虛同同彩同同同山梔子村巴花子雲霽笑葦抱松九茂茅雨琅同碧梧桐同同鳴同同子一雪規貫堂城天〃擧濱月村巴花子雲雪
冬古書の山天井の空や冬籠冬籠老いて謠の稽古かな冬籠〓の六病を覺りけり冬籠家の奥なる水車かな門前の濤聲に冬籠りけり裏山に松ふく風や冬籠冬籠目に見なれたる海の色己れ云ふて妻書く文や冬籠縫ふ妻に寢る己れ哉冬籠赤い物娘が部屋や冬籠冬籠氷の下の魚を思ふ議合はず病と稱し冬籠冬籠髯をのばさん謀事冬籠列仙傳に拾遺せん冬籠遠山の雪をなつかしむ耳搔の爪も一具や冬籠火を吹いてくすぶる鼻や冬籠の部死にしかと問ひこす情や冬籠俳諧の第一問や冬籠死後の事トす日記や冬籠穴に入る蟲の心を冬ごもる冬籠掟作りて何かせん冬籠る少陵に酒贈りけり冬籠一燈を分つ妻と我と江南の寺の一間や冬籠冬籠りて都の隅に生きにけり市の音掩ふ大佛の鐘や冬籠海鳴りの遠音を聞くや冬籠山火事の煙見に出ん冬籠冬籠る障子の破れ目山見ゆる冬籠尙薩長の世なりけり冬籠灯に波の響か折れ弓の杖の埃りや冬籠冬籠茶垢の染みし素燒かなな一八一一八〇柑漁師曲亞同堇同松同稻同繞同松同雪射靑格香同眉同同竹の同同三同癖三同同同子壯竹東浪湫濱靑石字人月石門嵐允醉堂村
冬古き戀夢に見るなり冬籠冬籠行人影す障子かな撫で癖の長臑人や冬籠野山あれ雪底町を冬籠冬籠る窓に親しむ雀かなよき鏡女に冬を籠りけり筆の穗をなめ切る舌や冬籠冬籠る阿茶や日南の爪掃除屏風繪を摺り消す背や冬籠冬籠日に三醉を樂みぬ日々の事に老婢不愍や冬籠枕頭に降る壁砂や冬籠冬籠往生集をよすがかな冬籠庭に日あたる枯芒物云はぬ掟つくりて冬籠今日からの冬籠るべき調度哉壁を蹴る廐隣や冬籠の部冬籠南無妙法蓮華經をよむ蠹みし本を助けつ冬籠冬籠るたつきに筵織る夜かな冬籠三重ね鉢に鹽辛も兩の掌に重たき腮や冬籠檻の犬獵促すや冬籠曲物に時雨煮のあり冬籠冬籠窓の外行く月日かな冬籠る光悅のぞく狸かな冬籠る窓に迫るや山の雲取りちらす詩箋の屑や冬籠冬籠病むともなくて氣の弱椿大樹に障子の白さ冬籠山の溫泉に病後の冬を籠りけり着重ねてまろき翁や冬籠躄の我世なりけり冬籠はしたなき病にかゝり冬籠一八三香一琅巨官泰隆秋夢柚不稀藍死幾句は匏櫻醜子居竿々縫郞召山子翁酒皎華の拙翁雨女ぎ瓜露靑耕口守寒松句東洋城四方太蛇華木水白挿禪寺湖園母棹水老山雲洞樓圃佛々村華寸水
札事避冬座敷襖冬の灯冬納始寒大木の椿がもとに札納納めたる札もちらばる木葉哉うき人の誓紙や共に札納さきつかた見しが灰かに札納うかとしてまた驚くや事始三味線を飛ぶ蠅も避寒の宿りかな島の溫泉へ避寒の人出渡しけり挿し柳芽ばる避寒の机かな梅の芽を食ふ鳥を追ふ避寒哉雜炊の賛をかきけり避寒人避寒宿のぐるりは砂の日南かな駿遠の早梅を訪ふ避寒かな避寒して江村の梅七分かな唐紙や浮世へだてゝ二た世帶唐紙の奧のわからぬ人の家繪襖の山水寒き漁人かな冬の灯の赤々として佛間かな冬の灯に吊せる河豚の眼かな冬の灯のつるりと寒き頭顱哉冬の灯に我が影見れば達磨哉折鶴の三ツ四ツ下がる冬座敷冬座敷一輪挿に造花かな冬座敷珊瑚の鞭のかゝりけり澤水の古りて見ゆるや冬座敷見る限り茶山の花を冬座敷つい立の大いなるかな冬座敷晝までの日さし樂む冬座敷銀屏風たゝみ立てたり冬座敷置物の玉輝くや冬座敷冬籠額の皺も合點かな我と佛魚板に生くや冬籠俳居士の茶袴古りぬ冬籠此の心法華は知らず冬籠風雲を呼ぶ筆禿て冬籠の部一八五同波同同靑柑漁藝同瓢虎靑紫竹溪同同松五土初藍秋花溪樓師蝶丈白碧迂秋死同一靜々子竹壯衣蘭山童笑江酒葉綠杖史〓南水轉濱湖音聲汀水
爐秘開暫し住む古市の里や炬燵切る爐開の一日は保て歸り花爐開や助炭のせある机上の書爐開や手馴の茶釜かけて見る爐開て書く事多き主人かな爐開や先人のせし如くしぬ爐開やあら釜一日かけすてぬ爐開いて芭蕉忌ちかくなりに鳧爐開や俳話をきゝに二少年爐開や庵主愈木兎に似る紹鷗がゆかりの宿や爐を開く爐開いて窓の葎を刈り捨てる爐開や持合せたる釜二つ爐開や壁塗りかへし春泥舍今年又爐を開く頃の健かさ爐開や忌服あけたる家の樣爐開のいつも袴の主かなの部花やある花筒やある爐を開く窓の竹雀の宿の爐を開く菊の宿早き寒氣に炬燵切爐開や板の戶さしをしめて置爐開や易をのせたる袋棚爐開や越の古簑木曾の笠爐開や〓に近き四疊半爐開に一日雇ふ大工かな助かりし命の札を納めけり札納船頭連れて象頭山札納月代寒き病後かな船厭ふ女なりけり札納神木の洞穴へ札納めかな札納して新たなる竈かな納めたる札かき出すや社家の鷄煤掃は昨日にすみぬ札納厄年を札を納めてしまひけりの二九七溪竹稻魚田鳥不呂向觀白碧格竹の門守水老虚碧梧同紫櫻關杣陽水後魚靑將山童堂子桐靑堇擧夢乍蝶松水子紅八重櫻同同同同同一綠々規菜韻明外人巴衣濱綠々
袴口冬着切袴着せて天晴御標致や畏袴着に富士見せ申す碁盤哉口切や椿一輪柱掛け口切や八重山吹の歸り咲く口切や庵主の古き皮頭巾口切や落葉を踏んで金閣寺口切や千家の庭の歸り花口切に磁の茶碗屆きけり口切や鴛鴦が破りし薄氷口切や窓明かに炭はねる口切の文や橙黄ばむなど口切や舊識に逢ふ薪寺口切や油機點心にものゝ佗口切や愚庵が許へ歌使口切や來ると便ある大雅堂口切や白鬚豊かに主ぶり口切の茶壺の側の手紙かな爐開や友遂に來ず夜の雨爐開や偶々來たる歌の友爐開の座に一塵もなかりけり爐開て葛の袴をたゝみけり爐開て臘梅床に移しけりの部爐開や市を離るゝ別座敷爐開や俳三昧に入る日より爐開て妻を迎へし詩人かな爐開いて筆つぐ稿や他山言爐開や藪に伐りとる蔓もどき爐開や松靜まりて夕なる佗人の佗び寄りてろを開きけり君まちし昔心やろをひらく爐を開く吾俳諧の一間かな爐開て兼題の句意動きけり逗留の僧の一偈や爐を開く爐開て爐尻に蕪の瓦盆かな一八九同鳴芋初其紫露花五格露同靑同同蝶子蓼桐拙松烏初師十二樓二輟其堇鬼洛燕居紫一ゆう〓〓雪村聲石人石人工堂月々衣規耕雲石哉城星雨芽堂陽健山聲竹
衣帶髪冬配解置西陣や加茂の分家へ衣配誰彼と數の衣を配りけり病む冬の命なりけり衣配衣配せみの小川を渡りけり衣配尺犢山に入にけり帶解や塗下駄ならす八阪道帶解や銀杏葉拾ふ神の庭帶解や座れば座る姉妹帶解やますほの花の抱へ帶帶解の·羽衣や草の宿髮置やふりし女が心そへ髮置の淺沓に鈴鳴らしけり髪置や早き梅さく二方椽髮置や壽命の長き庭の花盜人の子の髮置や唐錦髪置や田舍源氏の花の君髮置や惣領の甚六にて候の部一九髮置や母なくて育つ子の淡し髮置や妓に戀はる遊里の子置く髪に淡雪ちるよ神の松髮置や儒者が娘の尼丘山袴着や我が日の本は皇國袴着や乳母が手を引く鶴が岡袴着や竹千代殿のお附人袴着や蒲の冠者の幼顏袴着や我れ落〓と知りはじめ袴着や馬牽かせたる供廻り袴着や寒紅梅の花ごろも袴着や母は氏なきへりくだり袴着や甫めて父に見參す袴着や賤しき腹も武家育ち袴着の小さ刀をはやしけり袴着や豆やる鳩に綺羅誇る袴着や銀杏吹き散る男阪梧竹の鳴同小帶楓白同若無十蝶徑巨子步東洋城月門雪酒風江香翁徑老衣草口規稻鳴同松同鳴秋梅夏瀾水左癖露同同東洋城衞三雪衞三月門雪酒風江香濱雪航應風水明門醉月靑
冬顏見世年貢納顏見世や懷鏡霜を帶ぶ顏見世や吾妻下りの立女形顏見世や朝の灯ともる繪看板顏見世やひそかに惚るゝ小立山顏見世のとり沙汰したり京の文顏見世に俥集ふや雪の中顏見世も旣に櫓の朝日かな顏見世や提灯さげて樂屋入顏見世や霜にあけたる外のさま顏見世や姿繪に見る半四郞顏見世の手打聞えて霜の月顏見世や女女と傘の下顏見世や茶店の夢を叩き行顏見世や誰が羽子板の裏の梅顏見世や病を瘠せて菊之亟顏見世や團十郞は傘さして顏見世や定九郞の傘お輕の鏡の部顏見世や針屋紅屋の娘連顏見世や暗らきに坐り灯を守る顏見世や今が始まる三味太皷箕の中や年貢納のあまり米年貢米運ぶ本間が館かな山の雪光る日ざしや年貢米名に殘る駒の貢のゆかしけれ聟貰ふ家は年貢もすみにけり聟の田の年貢も籾で二俵かな佐久筑摩貢の駒に名も古りぬ天領の四公美む年貢哉租に代へて織る此村の紬かな綿帽子一つそへけり衣配衣配富貴の家に仕へけり衣配明日立たすべき僕あり衣配り婦女子の多き館かな妹山の麓通ふや衣配一九三握古秋蝶松闇六碧東洋城四方太四同靑同鳴同子同同虚笠吼儺河碧雪同同太砥水子香文乍王月曉人衣濱明花童明々雪規子山生子柳明人郞骨舟人郞
市べつたら冬酉の市筆立にさして小さき熊手かな店先に客の熊手や料理店酉詣鼻風邪ひいて戾りけり大熊手車上の人の見えぬかな酉の市火の見の下の小店かな天井に一ぱいになる熊手かな拔けがけの曉寒し酉詣妻つれて素知らぬ顏や西の市初酉の寒き二の西の暖き西詣月代靑き木工頭此程に身受せられて西詣何やらがもげて悲しき熊手哉病む人に買て戾りし熊手かな明星に慾の熊手や酉の市わが車雲とこそ飛で西詣柳橋出て駒形や西詣家根船に囃してつきぬ西詣の部畦道や月も上りて大熊手酉の市小さき熊手をねぎりけり女連れる書生も出たり酉の市淺漬のべつたら市の寒さかな人出あるべつたら市の時雨かなべつたら市押さるゝ程に出盛りぬ顏見世や曉寒き繪看板顏見世や廓へ配る繪番附顏見世や舞臺は花の吉野山顏見世や人にかくれて絹頭巾顏見世やまだほの暗き三番叟顏見世や霜にあけゆく高櫓顏見世や大阪一の立女形顏見世の三座を競べ鏡かな顏見世や役者となりて一代目顏見世や老いても花の半四郞顏見世や女を泣かす五大力一九一九九兎三裸婆零洋拈紅碧梧同蝶同同虚同同東洋城子實木羅史〃華綠桐衣子簑秋二衾華同同子日禾眉其空夏秋田三士子實木羅史〃華綠桐衣子規峯黃月石外風人蒼英雨星明葉允
麥蒔冬麥蒔や衣手惜き日の夕別莊に賣らぬ借さぬと麥を蒔く麥蒔や入江に映る倒さ富士麥蒔くや峠平らの吹きさらし麥蒔や生駒は晴れて日の溫み賭博止めて麥蒔く群に父淋し築城にこの岡漏れて麥を蒔く七島の風や麥蒔く伊豆の山麥蒔いて夕べ嬉しき小雨かな麥蒔の暮れて田に居る男かな麥を蒔く畑に藜の古根かな麥蒔に撞き落しけり峰の鐘一ばいに日當る畑や麥を蒔く麥蒔いて農夫安堵や鷄つるむ麥蒔や彥根の町の這入口兎逐ふて麥蒔く畑に出でにけり麥蒔や豆の落葉を打かへしの部男出て麥蒔きにけり寳寺彼の岡に麥蒔き居るは誰が翁ぞ麥蒔や時雨るゝ山の虹の根に釣舟の前の小島や麥を蒔く麥蒔いて鄙に住まんと思ひけり麥蒔の人皆往んで夕日かな麥蒔くや美濃の農具の面白き鹽濱のほとり麥蒔く暖き麥蒔くや影は野にある伊吹山麥蒔や興で過ぐ行く陶朱公麥蒔や紀の關守の出でゝ見る豆の如き人みな麥を蒔くならし麥を蒔く花咲爺の子孫かな麥蒔やたばねあけだる桑の枝酉の市江戶滯留の文のはし芋さげて寒き田甫や西詣部一九七格蝶子柚花靑紅同橡面坊同同碧梧桐同同同同々葉堂衣陸草靑霞月守松碧松露濱禪寺洞一丹士巴初東洋城楓童州溪鶏人櫻藤聲村水老濱童宇月々葉堂衣規翁陸
柴漬蕎麥刈冬の柴漬や月に見えすく水の底柴漬のとけて浮べる江尻かなせゝらぎを打つ山風や柴漬る柴漬に一寸しぐれたる月下哉柴漬を人犯すなし畑在所柴漬の流れ出たる淺瀨かな柴漬やながれのゆるき藪の蔭柴漬を上ぐれば跳る小蝦かなあげざまに柴漬の綱切れに鳧柴漬や柳枯れたる沼の家柴漬の柴にはさまる小魚かな堤下に柴漬けし江の廣さかな柴漬の浮上りしを沈めけり柴漬に聲なき雪や水に降る柴漬や我におそれて魚早し柴漬を見舞ふ近江の小舟かな柴漬や浮雲うつる水の面柴漬や浪のよる〓〓月くらし朝妻のふしつけ覗く小舟かな沼尻の川の流れや柴漬くる柴漬や常盤木暗き森の陰柴漬をほどいてふるふ小魚哉更科や豊かなる蕎麥刈り入るゝ蕎麥刈れば地機織る音〓かな蕎麥刈るに見覺えのある顏よぎる一鞍に蕎麥刈負はす高さかな蕎麥刈るや百舌鳥高鳴す忘れ時大麥の十が一蒔く小麥かな麥蒔や我が田に及ぶ比良の影鳶の輪の下に麥蒔く日和かな麥蒔や雪の山見る眉の上麥蒔や沼に鳰見る日の曇麥蒔や芋の葉青き畑のへり麥蒔や西日に白き頰冠部同鶯同同碧梧桐湖紫行井桂白梧巨千同碧紫射蛃醉彩月呂句靑同八重櫻鬼來稻禾子南鬼蛙影山月ロ波樂水雲石魚佛雲兎杣佛々고池村君人灯布郞黃吟浪城
網竹冬代瓮網代木や江尻の水の片淀み貫之のうかるゝ夜なり網代守汐頭消えて河口の網代かな夜もすがら一壺の酒や網代守燦として星映る江の網代かな流れ來て網代に朽つる芥かな曉や凍えも死なで網代守網代守る耳に廓の囃子かな網代守或夜河童と語る夢網代火に踏み迷ひたる飛脚哉亥中月川霧立つて網代かな網代木に鴉淋しや冬の霧網代守古歌にある我身なりけり網代守中々菊の翁かなよくもえる松のつま木や網代番徹書記のとひよる方や網代番あり〓〓と寄る魚見ゆる竹瓮哉蘆の間や竹瓮入るれば月動く枝川に半ば顯はる竹瓮かな竹爰あげる屯田兵の二人かな竹爰あぐる小舟の霜に焚火哉幸あれと竹爰を深く沈めけり近山に早雪の來し竹爰かな蛸壺の明石は知らぬたつべ哉柴漬やさゝら波立つ水車尻蘆わけて柴漬するや江深し柴漬や五橋に落つる宵の月柴漬や底に日のさす山の池柴漬の繩手ぐりけり徐ろに底流れする川尻や柴漬る魚壺に今朝舞ふ鳶や柴漬くる柴漬や足曳山の裾の湖柴漬や魚をはさみし蟹も居る柴漬や川風受けて店障子の部二〇·雪夜萃烏水松子蝶坡同武同同東洋城同同靑峯湖鬼芳牛竹の門蝶羊城女天網子俳小星王瓜子丁柑微橙黃子人水藻健巴濱規骨衣々醉雪靑城宙南衣水東羊川子笑
除泥鰌堀堀冬隊汲見忘れで犬の尾を振る除隊哉除隊待つ營所の門の時雨けり除隊して山着なつかし冬木樵るうき人は旣に嫁ぎて除隊かな思ひ出の故山嬉しき除隊かな祝言の日も定まりて除隊かな除隊して畑一反のあるじかな除隊兵を擁して城下戾りけり除隊して暫し無言や母の前似た顏の兵が出て來る除隊哉叔父連れて除隊の晝を牛屋哉寒鰌餌飼の鶴に掘る日かな笊提げて日の出見て居る鰌堀あたゝかな雲の一と日や鰌堀雨來るや鰌ほり去る後ろ影どぜうほる沼に遠山颪かな堀汲の積藁崩す焚火かな堀汲や柳の岸の人だかり赤い帶埀れて堀汲む女かな堀汲や波只ならず鯉を見る堀汲の簀による雜魚を掬ひけり堀汲に四挺のうつり競ひけり松原の入江靜けき網代かな海に入る大きな河の網代かな網代守る左右に響く瀨音かな晝の網代朽葉多くて魚少な網代守る心歸帆にさそはるゝ川霧になれて網代に住ふかな梟鳴く杜を後ろに網代守網代守或)る夜狐にばかされし川の脈網代の外に流れけり網代守妻はこゝらの千鳥かな宇治殿に一夜訪はれぬ網代寺首伽の子故に生きて網代守の部二〇二至奇錦紫汲靑孤秋松同望西麥裸同汀同十寸穗射梅柳病橘城子北翠法九品太八重櫻句之都同一正子同同無花果靑志楓天花瓢村墨宇東湖村木兒家園堇齋嵐石痩
寒入冬聲營寒聲や木辻の月を袖の上寒聲の川の瀨に和す夜更かな海樓の寒聲ちるや波かしら寒聲やうたひ枯れたる三の聲寒聲や脇もつとむる程になりぬ寒聲や廢寺の緣に下駄ならす寒聲や一夜稀なる泊り舟寒聲の人下り來るや化粧阪寒聲や春の花見し藤の森寒聲に灯あり鴨東第一樓寒聲やすたれ果てたる河東節月一痕寒聲さゆる畷かな寒聲や唄ひ終れば東山寒聲の鼻から拔けて病あり寒聲は實生流の謠かな寒聲や風吹荒ぶ町外れ寒聲や月は十日の庭の松寒聲や岡にのぼりて風の前寒聲に喉かれ〓〓の女かな寒聲の玲瓏として聞ゆなり寒聲のかくてぞ人となりにける寒聲や邪慳な母に養はれ寒聲やうか〓〓來たる尾花川寒聲やかれ〓〓の中叩き寄る寒聲や藪の外れのふきはなし入營の近く倦むなし講義錄入營の人乘せ下る筏かな入營の借着短き羽おりかな入營や馴れぬ臥床の夢寒し朝風に入營送る彩旗かな入營やつく〓〓見入る牛の艶入營や旗竿結ぶ門榎入營や見附の松に朝日影弟の入營兄の除隊かなの部二〇五若竹伯射十步老師蛋蝶一靑無松竹鳴子同雨同柳同同北同同靑渠乍黑萍柳零靑望錦翁嶼竹洲石樓衣義嵐黃宇冷雪規六家涯々水人洲樓雨生瓢東江
寒習冬うき事も忍ぶが岡に寒習寒習師の名を惜しむ皷かな〓瀧に口を漱いで寒習ひ月出でゝ里は煙れり寒習下京や月明の夜を寒習ひ隣せる延壽が家や寒習ひ寒稽古女の彌次も候へり長町や乞丐が皷寒習ひ風呂入の道で一番寒習ひ川筋に寒聲多き月夜かな寒聲や早梅の香に咽ひ入る寒聲に驚く月夜鴉かな寒聲や前は雪つむ東山寒聲や宮の灯見ゆる霜の橋寒聲や狐の聲と水の月寒聲や我立つ松に月落る寒聲やあとは千鳥に薄月夜寒聲の潰れ嬉しきのんど哉寒聲や月ケ瀨村の奧の茶屋寒聲や月なき夜の水明り寒聲や大比叡の前に頰かむり寒聲や漣立つる澤の月寒聲の向ふに白し浮寢鳥寒聲や七つになつて養はれ寒聲の月に更け行く洲崎かな寒聲や浪花の橋の夜の寂び寒聲や狹莚を敷く石の上寒聲や峙つ山のくらがりに寒聲や水すみの江の松の風梁の鼠も落ちん寒の聲寒聲や降るかと傘を落しさし寒聲や三の糸切れ拍子拔寒聲の人か麓の川手水聲袋無事で目出度や寒送りの部二〇溪竹鱶碧橘五楓庵秋柳一江虛靑香香流香尺月三骨握溪裸巨華小乍菫如幸烏五城樓梅雪水虹後家養南明々水洲山浪芳城村蠖洲羊山刀水木石水酒人哉悟亭人風人
寒念佛寒垢離冬寒念佛〓棘林を過り行く宵の內はいづれも若し寒念佛通るなり又寒念佛五六人寒念佛西吹く街を東から寒念佛見やる格子の禿かな寒念佛鉦一念に鳴らしけり獨り行く破門の儈や寒念佛寒念佛昔なじみの妓が門寒念佛入るさの月を惜しみ行く雜炊に腹あたゝめて寒念佛一村に十ヶ寺ありぬ寒念佛橫町を今宵は遲し寒念佛打やめて暗に消え去る寒念佛雲母坂下りて來つるよ寒念佛寒行の念佛に侍僧痩せにけり報謝せし先師の夜や寒念佛寒垢離や社頭の闇に木兎の聲寒垢離や腰に七五三張る比叡の僧寒垢離のくるりと月に背きたる寒垢離の灯にかざし見る御鬮哉寒垢離のふどしに氷る雫かな寒垢離のぬれ身に月の木影哉寒垢離や月を斜に橋の影寒垢離の霜蹴て歸る洗足かな寒垢離の女に月が照りだしぬ寒垢離や夜半となり行く松の風寒垢離や四條五條の水の月寒垢離の投げて去にたる釣瓶哉寒垢離や二人の童子目に見ゆる寒垢離や不動の火焰氷る夜に寒垢離の水を浴び居る月下哉百弟子の曉起や寒習ひ女多き家の夕べや寒習ひ笹鳴の娘ひとりや寒習ひの部二〇九靑竹子同木母庵同伯蝶一東窓楓將喚濤老裸同同三同句同同碧梧桐染士雨巨格同同子一堇龍々冷規洲衣允佛影峯村竹江星櫻木六口堂規村湫牙
寒寒寒見舞紅詣冬寒紅や險しき母に秘す病ほのめくや寒紅賣の爪の先燈影や寒紅光る化粧の間寒紅や老てわびしき宮仕ものがたき身のたしなみや寒の紅之ある哉君が行李に寒の紅寒紅や引船新造相似たり衰へし眼に寒紅のあざやかに寒紅や枯木の宿に蓋あける寒紅や竹の小窓に置忘れ寒見舞水仙提げて來りけり弟子連れて角力取くるよ寒見舞飼鷄の卵にて候寒見舞古弟子が鯉提げて來つ寒見舞すね長き男走るや寒詣山上の雪明りゆく寒詣ふつゝかの大工の弟子や寒詣の部二一一寒參り途から火事へそれにけり寒念佛田甫の月を市に入る水甕に水なく冴えぬ寒念佛雜談に暗くなる灯や寒念佛口あいて腹のうつるや寒念佛ひた吠る長者の犬や寒念佛寒念佛夜每隣の報謝かな寒念佛夜啼きの聲と遠ざかる寒行の鉦を叩けば佛かな魍〓にあふて別れつ寒念佛殘る日の十日となりぬ寒念佛百ケ寺をたゝきまはりぬ寒念佛寒念佛南無や他力の米五升寒念佛仰げば口に霰かな掛乞の灯をかる夜あり寒念佛月西へ寒念佛の聲遠くなり大嶺の闇に橋渡り入る寒念佛露溪橡碧靑助鱸同乍蓼悠竹愛可孤別天樓同面二電成村皎水坊童々郞江人村子保小靈烏魚寒へ化白觀虚稻柳霽松四露獅子浪波子啼將山き羊子魚明靑家月宇明月二々郞江人村子保
年木樵茶の木圍藪寒寒寒寒芝居晒冬卷肥卵山島に鉈を投げたり年木樵樵り〓〓て山をなしたる年木哉平木樵る閑谷費の僕かな年木樵櫻に斧を揮ひけり子鴉居て思ひとまりぬ年木樵山姥に肩をかるかや年木樵年木樵る黄金の斧の切味よ年木樵雪は落花とふりかゝる少しつむ年木も庵の行事かな年木來て主閑なり閏年杵とりし木の枝拂ふ年木かな萱中に陷る道や年木山古への砦のあとや年木樵年木樵る向の岨や鹿遊ぶ茶の木圍ふ下に小草の綠かな小鳥喰む茶圍ひ藁の彥穗かな冬鶯の奥にゐるかに藪を卷くの部二一三藪卷に茶袋を干す御坊かな藪卷て北窓見ゆれ妙喜庵藪卷もして北山の畫室かな卷藪もある郊外のさびれかな卷藪に大山荒らし吹く日かな山下の藪大がさに卷きにけり成り年の柿に寒肥注ぎけり寒肥を果樹千本に加へけり蓄ふる玉子にかんとしるし鳧米櫃に五つあまりや寒卵葛すわる桶の氷や寒晒寒晒白き土藏の廂かな尼寺や二升の黍の寒ざらし搗きへりし漉しへりし葛や寒晒寒曝忘られてあり雪の椽人肉の裁判沙汰も寒芝居寒紅や口元小さき京女松十二樓雨北零餘子句紅五吾同眉同同蝶櫻師醜如雨露翠濱涯佛葉工空月衣子竹乘露靑同同八釜西春黑鬼如同鳴柳山十步老重櫻百梔子月石々村湖翠合骨虹樂零雨月百月石々
年の市播煤竹や貰ふにきめて坊が藪煤を焚く烟かゝるや昏の梅閣に見る山朗かや煤拂飮器一燈火一具や庵の煤煤掃や楓吹き通す廣座敷煤掃くや吾が梅の檐月の窓煤掃や庭に居並ぶ羅漢達煤掃て猶殘る菊いとをしむ煤掃くや大佛どのゝ腹の中煤拂世なれぬ妻と二人かな煤掃いて樓に上れば川廣し煤掃や神も佛も草の上煤掃の埃しづまる葉蘭かな妓を連れし藏前衆や年の市ぬかるみに踏れし齒朶や年の市大靄や灯地に滿ち年の市年の市醉ふて息卷く賣人かなの部物値切る誰が妻ぞかし年の市人妻の箒提げてぞ年の市淺草の鐘は二更よ年の市年の市帶をこぼれし小錢かな年の市馬の尻打つ柄杓かな年の市ほろ〓〓降りに降られけり賞與金を懷ろに過ぎぬ年の市年の市買ふや數子海老五萬米年の市孫に土產や福袋新らしく杵買ふ例や年の市逃足に値をさす人や年の市嵐雪の妻に逢ひけり年の市年の市腹切る擂木いざ買はん庵主へ皆して分つ年木かな斧に飛ぶ雪に聲あり年木樵年木樵雪の下枝拂ひけり年木樵に冬み吉野の旅人哉の二一五香同師同蝶水鶯胡濱望文碧梧桐同鬼紅小左衞門墓露東波舟居竹衣巴子周人六同同橡面坊同同鳴同同水同同子素水九孤花雪巴日花雪巴規川巴庵村日居竹衣巴子周人
冬煤掃や埃流しの雨が降る煤掃竹伐りおく宵の曇りかな煤掃の疊を叩くこだまかな病室の蘭の埃や煤拂降り地震煤大方の夕かな煤掃いてしつらふ棚の調度哉煤掃て人移り來る隣家かな長持によりて話や煤拂凧はりの翁もすなり煤拂思はずも煤に遇ひけり東山煤掃いて旣に日暮や三井の鐘貧乏の神たゝき出せ煤拂家々や煤拂きすてゝ蜆川あり佗ぶる役なきものや煤拂煤掃やくゝる小扇唐辛子誰がふれて琴の空音や煤拂田のへりに山なす煤や寺灯るの部二一七煤掃の中に魚買ふ女房かな煤掃や其夜雪ふる煤の上草の戶に月がさすなり煤拂煤掃や枯木にかくる袈裟一つ煤掃や襖の松の深綠り日光を浴びて休むや煤拂煤掃や石に日惜む蠅一つ煤掃や麟鳳閣は古本屋弓仕舞ふ綿屋の暮や煤拂煤掃いて蛇渡る梁をはらひけり煤掃や一帙見ゆる草の宿煤掃や馬おとなしく畑ケ中一山の百の小僧や煤拂都邊や煤掃すみし水の月丈草の衾一つや煤拂江上に闇の煤はく夕かな古厨子の煤に帳のほつれかな堇幾奇波小竹へ鬼碧紅同虚石泊阜爲フクスケ千句雪里陵王拙遇靜酒後き史童綠明鼎同淺同靑同虚月同碧梧桐同同鬼同同巨同六茅々子舟城千句明鼎茅々子舟城ロ花
餅搗冬餅搗や皷をしまう能太夫富田屋の廣き戶口や餅の臼餅搗や夫の治兵衞けふも留守餅搗や隣の治兵衞けふも留守餅搗の中に御賜の使かな餅搗は長家のはしに來りけり餅搗や近所の聲に夜がしらむ臼に搗く餅に落葉を如何せん餅搗のすでに來て居る隣かな一臼は粟もや搗かん胡麻なども欺されて空臼搗きぬ手の痺れ餅のしてとり粉埒なき板間哉餅の粉の手ながらに讀む文使餅搗の音は枯木にひゞきけり雪の竹餅つく音にはねんとす病床に聞くや夜明の餅の音粟餅もつき海苔餅もつきにけり餅を搗く音やお城の山かつら煤掃や賣れぬ刀の一束ね日表の畑に飯喰ふ煤の午煤掃て柱に嫁のかもじかな煤掃やうしろに寒きちぬの海煤掃けば跳る天井の畫龍かな煤掃や枯木に吊す串の沙魚すゝはきの一壺一釜や梅の下雀來る漬物桶や煤の庭煤の中に疎まれ病める書生かな瓔珞の御煤拂ふ古びかな煤の日や鴛鴦の帷を閑却す風あたる端山の宿や煤拂煤掃や室の揚屋の寒椿部煤掃の中へ廓の使かな西陣や錦の屑の煤拂本丸の煤掃き落す御堀かな二一九同靑同鳴同同初同同把同同巨同松濱同東洋城々雪聲栗規子樓十二餘三樂同村象樓溪花露雨如羅婆石射人濱洗馬節子雪飛外空洛居燕叟花水寒
掛寒乞刈一上餅搗冬掛乞や京の女の親子づれ貧乏は掛乞も來ぬ炬燵かな掛乞の曰く主人の曰くかな倍桝に刈上餅を搗かせけり刈上げの大〓晴れや杵の音刈上げや馬好き聟の馬の世話寒餅や少し小作の當り米寒搗の手ずれ古杵拍子かな寒餅を切るに吹きつのる夜風かな寒搗の杵の輪深きしらげかな寒搗も馴れて斗張りを八白哉寒搗の臼譽めてをる聟見かな二臼程を施行の餅と搗き納む餅をつく杵にかゞやく灯かな餅搗や臼を起して明日を待つ餅搗や湯氣の中なる人の顏餅搗の蒸しあがるまを煙草哉の部ころがして餅臼運ぶ隣かな餅切るや早や力無き妹が腕餅搗や腰掛にせし秣桶餅十白隣も挾み搗きにけり餅つきや庄屋代々五本杵餅つきや三輪の酒屋の昔ぶり餅搗くや十戶の村に臼一つ酒債ある吾に餅搗く隣ありだゝッ子をあんもに搗くとおどし鳧餅搗や下女のお杉が玉襷餅搗の一臼殘る夜明かな山里に餅つく音の〓かな神の灯に杵の響や餅の朝畫襖や下にならべし餅莚昆山の玉爰にあり餅莚餅搗の火を擔ひゆく巷かな山家集に餅の粉しろし草の庵草水俳の二二一草水俳象四旭水史鳴吟孤三竹波同虚同蝶巨小の笛巴星外丁月月杉茶門靜濱菫蝶櫻醜子稻同同子櫻醜子同師同同師江一伯規竹衣人竹南の竹衣竹南哉靑轉洲子衣ロ
書出し冬書出しや末廣がりに一くゝり春正の妻が書出しくばりかな書出しやひろげば落つる墨の糞書出しの長きは似たり瀨田の橋書出しや言問の茶屋の都鳥花三種書出しにけり卷封じ書出しや今川文に乗り初少しばかり久しき掛を乞はれけり掛乞に出遇ふ戶口の一步かな掛乞の足元白し夜の霜掛乞が見返る梅の庵かな掛乞の犬を罵る戶口かな掛乞の鶯聞いて戾りけり掛ありて奈良を見て來し番頭哉掛乞や唇うすき女どし掛乞の急き込み顏や吶り口掛乞に鶯なくや小野の宿掛乞の無筆が棒をひきにけり掛乞の大聲になる隣かな掛乞の去にしかと見る小窓かな掛乞に池の水鳥さわぎけり掛乞にあからさまなる箪笥かな掛乞の叩けば旣に空家なり掛乞の女やさしく笑ひけり掛乞の手代住友鴻の池掛乞や一日ありく須磨明石掛乞に嘘も三十日の月夜かな掛乞に拙き謠聞かれけり掛乞に一茶危し首一つ豆腐など浮居氏の掛も三十日哉深川の掛杉風が拂ひけり掛乞や酒の後悔就中掛乞や天窓の月庭の霜着屋の八百屋の掛は何ともなの部二二二冷同同蜃同同小菜枯瀧碧杉愚暮守春小極六寒三夢同杜同碧同紅同同丁同同碧梧桐の童綠の劍樓酒浦骨水浪雨蛙情山郊酒堂花櫻允事紫童綠川
歲年筆仕舞店忘暮卸冬の年忘妻や昨日の思ひ人酒淡く年忘れけり二三人醉ふて泣く人尤めなし年忘醉中に年忘草生ひにけり此宿の鴛鴦の夫婦や年忘かりそめに白粉ぬるや年忘先生の歸田目出たし年忘年忘酒泉の大守皷打大殿の笑ひ聞えつ年忘年忘橙剝ひて酒酌まん乾鮭は包むに餘る歲暮かな手短かに一筆添へし歲暮哉牛ほめる歲暮使ひの訛かな書き熨斗のベンベラ紙に歲暮哉盆梅を市の棄駝が歲暮かな故里の物を歲暮の返しかな除夜閑に日記書くなり筆納め猫は土間に足なめて居り筆仕舞筆仕舞拾つるに惜しき筆もあり奥庫や晝灯ともして店卸開業の十週年や棚卸し店卸晝を下ろせし大戶かな棚卸暖簾を覗くお染かな店卸合はず仕舞に終りけり流連の留守を淀屋が店卸絕えず鳴く藏の網戶や棚卸雜然と今日も暮れけり店卸店卸の中に禿げたる番頭かな小窓から書出し入れし女かな書出しの雪に吹きちる戶口かな書出しや附け落しある味噌一壺書出しの中に見ゆるや畫卷紙書出しや吉野の里の材木屋書出しや妻に見せじの一件部二三五二二四ト碧橡面坊碧梧桐芋是花蘆虚子八重櫻風歸射露同同同同靑同同十步老不知美四如士同同裸黃山栗紅月子〃規貝童村明櫻黛櫻榴香月木木舟石外人綠
年年守籠各部年守るや煙草に淫す漢學者豆咬んで年守る宵や大男年守るや軒の松風一軒家年守や老人の衣ふくよかに年守や太刀振り弓を挽もちて年を守る灯につく〓〓と妻老ひぬ供へたる大提灯や年籠年籠る山伏共の白衣かな松風や年を籠りし眞如堂百八の鐘は頭上や年籠年籠り白眼にして梅を看る深川や木更津舟の年籠酒を賭す十步の吟や年忘年忘酒は琥珀の杯に盛る年忘よき年とろと別れけり詩論たま〓〓師に逆ふや年忘思出の多き今年よ年忘年忘して若返る夕かな年忘醉眠に入る妓の姿醉からに年忘じやと一茶哉江上の舊妓に逢ふや年忘年忘四門を閉ぢて明くるまでわいどんは薯燒酎に年忘獨酌の破顏微笑や年忘大白の前に我なし年忘三千の客酒くさし年忘年忘れちらほら雪に戾りけり洛陽の富者つどひぬ年忘葱一把年忘せん友や誰古き戀を又とく君や年忘ばかされて狐と遊ぶ年忘翁とめて年忘れけり大津人卷中の艶な一句や年忘年忘一人は聞きつ川千鳥二二七望龍艸亮香柿鶯樂未燕裸小同孤同鳴可孤孤句子擧丁白空眉竹の門六天易兒蝶同五同露木波村雪成村杉東佛規川々城舟明居鳥外園子天央月州花衣工月
追岡年年儺冬見越送の直垂に梅飜したるつひな哉由良殿は遣手の顏に追儺かな羅生門の一角暗し鬼やらひ追儺詣竹獨樂の音に雪散れり城内を天主のついな聞ゆなり月寒うなやらふ聲す城下町春正の妻が豆熱る追儺かな追儺雪に篝を社頭かな戈執つて鬼門に向ふ追儺かな鬼となる身はあぢきなき舍人哉追儺桃の小弓の音すなり枯芒岡見の人に囁けり足元の寺で鐘鳴る岡見かな山風に蓑ほゝけ立つ岡見かな倉七つもてど癩や逆蓑我宿の鴛は寢てゐる岡見かな冠著て岡見にまじる狐かな部二二九父が代に如かぬ我が代や逆蓑天狗風樹をならし去る岡見哉落合の樋守まだ寢ぬ岡見かな山として木として雁や逆さ蓑霜重ししばしの岡見蓑ぬるゝかく山の麓の岡に岡見かな年越や紀文を唄ふ廓の唄年越や眉落したる妻の顏年越や今年も一つ若がへる玉の〓よ年越蕎麥の長かれと塾生が餞歲の吟や醉て聞く古年の送つて樽に餘瀝あり年守や兩の隣は醫者學者梅活けて酒に座しけり年守る夜年守るや酒に醉ひ臥す爐の邊年守の燎に睡る仕丁かなときめくや年を守る夜の薰べ籠二八松如松阜十汲象六子同靑堇秋零眉逸月餘子々哉皎月名斗牛雉六同同靑松馬竹鳴同方輟鳴可江竹の門子濤樓步郞花々洗冷雪雪外成耕陵雨露千且塘宇里子花外花規千且子濤樓々洗冷雪步郞花
柊節貘鰯頭挿冬枕挿分のむし食みて我世ふりたり貘の札足袋はいて寢し夜の夢や貘枕貘枕頭もたげて人を見ずふところや少し顏出す貘枕うつゝなき妹が笑ひや貘枕鎌鍛冶のすゝけし軒や鰯さす豆殼に鰯さしあり草の庵さし鰯蘆の丸屋の戶口かな越後屋の門に光れる鰯かな柊や氷柱の影の明かに柊に鬼の目をさす門邊かな柊に雪降りかゝる戶口かなさび聲に柊賣りの翁かな垂菰に柊させし〓かな柊さす戶口を鬼の覗きけり柊をさすや厩の休め鞍あくる戶に誰が柊を挿添へし節分や藏皆開く問屋町豆撒きや今奧藏に聲遠し豆撒や柱に豆の打返し道きゝに寄れば豆打つ戶口哉松柏の大地節分を掃きにけり豆打や濱松城の夜の謠豆打つや鼠がはしる臺所年の豆妻に嘘ある昔かな豆まくや白梅蕾む神の庭綱の打つ豆金時の笑ひけり節分や綱の屋敷の豆五斗豆打の呼びそこねたる笑かな節分や篝に明かき神樂岡節分やよむたび違ふ豆の數妹が門やさしき聲に鬼やらひ人の來て媚びる大家の追儺かな强弓を射るひゞきあり追儺部二三一象滑泰水禪寺洞辰半琅鱸奇吟初四子天地朗奥十里露虚同同靑三撫白靑秋河雨琅同奇同八重櫻笠石子々華村鳥嵐溪柳聲々遇外樓洋巴〓翠々江遇月聲明規山
厄厄雪姥節季候車等拂落冬の雪舟慣て只管眠る旅人かな身振ふてのそりと土間に雪舟の犬雪晴れの湖畔につゞく荷雪舟哉雪車引いて立ちどまりたる話かな雪車引いて醫師をのせて戾りけり大木を載せたる雪車の辷りかな小原女に立交り來る姥等かな興そゆる姥等の中の姫かな唄ひ來て歌の意知らず姥等づれ節季候や月の戶口に影法師節季候や落合ふ町の雪もよひ節季候の囃し込みたる暖簾かな逸早く節季候來たり伊勢が家節季候の犬に吠られおどけ行く節季候も禿の駕も雪の中すねものゝたはれの果や節季候前垂の寳つくしや小節季候節季候の去ンで詠みたる狂歌哉厄拂門守る犬に追はれけり厄拂ひ稀に漁村に來る日かな眉剃りて厄拂待つ老女かな厄拂寒しと稼ぐ木場の月冠りたる手拭古し厄拂醉ひ伏して厄も拂はず貧詩人四十二の古ふんどしや厄拂貧居士がやくも拂はで宵寢哉やく拂袂に錢の音すなり四つ橋や厄落し去る水の闇四十二の分別欲しゝ厄落し米錢を天下の辻へ厄落し分別も古褌や厄落しうなさるゝ妻を起しつ貘枕鶴に乘る夢はさめけり貘枕女共が迷ひの管を貘枕部二三三二三二雨方野吼未蛙草竹里乍白甲霽句子碧同溪春吸孤木氷巨同子同櫻醜子同同雉子郎同同一規童水二花村淡巴ロ蓑六外梅生灰聲萊規冷石人濱村月佛
一本齒ジキ、雪沓爪籠、カン蟇のやうな魚頭のやうな爪籠哉雪車七里殘る三里を爪籠かな雪沓や駕籠界どもは我が門徒雪舟唄や松前殿の荷行列乘り捨てし雪車氷りつく旦哉大橋の犬吠ゆれば町の犬吠えぬ空林を縫ふて走るや月の雪舟雪舟の犬吠えて四山の〓かな雪舟曳くや鱈の尾雪にまみれつゝ土間に置く雪舟の荷に鳴く鼠哉今はたゞ吹雪のどこや雪車の上曳きそれて奈落の谷へ雪舟悲し泥濘を橋に出でけり一本齒一本齒多摩川在に人となりカンジキや一番踏の雪の峯つき纒ふ犬が顏する爪籠かなカンジキや勇猛心の山男の部二三五出稼ぎの雪車引き捨てぬ國境家々に薪下し行く雪舟一つ雪車二つ行き交ふ驛の日の出哉毛皮着て熊としも見ゆ雪舟の人雪舟唄に犬のかけゆく迎ひかな行囊を犬橋に得て局灯しけりから〓〓と谷にあやまつ雪舟の棹雪舟流す楫面白う九十九折立てかけし雪舟や門口暮れにけり糧運ぶ雪舟來ぬ日あり牧の原雪舟唄に白山高く應へけり雪舟犬は疲れて寢たり子等が門人二人雪車曳て雪の谷を出る雪舟の灯の〓たぶり下る谷間かな雪舟を馳すいつまで四顧の幕色哉提灯を抱きせぐゝまる雪車の上雪車唄に灯をさし出すや小屋の窓虎董士丈孤mp櫻醜子湘ゆう〓〓泰凡弓田士英八重櫻淺同蝶月湫櫻軒竹葦山〃月海茅衣の部同白漁師泰句同鶯孤可地琴鱶ニ松靑村藏山壯竹山佛子島成尊川洲星濱雲雨衣
胼霜輝冬燒霜燒の手より熬豆こぼしけり霜燒や武士の娘の水仕事皹や字のつたなきは手の病ひ皹に尙婢女の指輪かな皹や越後生れの寺男皹をいたはる下駄の步みか斧振ふ手に血を噴ける輝よ皹に種麥二つはさまりぬあかゞりや此君にして此病皹を病めども外に恙なき皹や我貧にして蒲柳の質あかゞりや貧に育ちし姉娘足袋ぬいであかゞり見るや夜半の鐘あかゞりに油ぬりつゝ待つ夜哉いたはしや妹の日記に胼のこと泣いてばかり居るや繼子の顏の胼胼の手や眞綿もつるゝ賃仕事の部二三七胼の手を大事に事に勵みけりかゆき雨いたき嵐や胼の足胼の手をするや木の葉を揉む如しつけて寢る胼霜燒のくすり哉添えてやる胼の藥や京みやげ藁打て胼にしむ風佗びにけり吹さらす頰胼凧に驕りけり胼の手に破鍋洗ふ世帶かな胼の手を隱しかねたる襦袢かな湯に入りて胼の藥をつけにけり手の胼を耻らふ心づくしかなよきを着て女は胼の哀なる胼の手を引き隱したる晴着かな此風に皆胼きれぬ町の子等胼の手にくひ入る土や濃紫胼の手に歡樂の灯や流れ來し涸州に道をとりけり一本齒の漁蝶月牛鬼月靑虚象碧梧桐葦たけし六四子同同壯衣村伴外花史方太兎な規子天二三六同子蛇桐香井靑紫同同碧同同子活士靑一子天規湖葉墨村雲影童規林櫻瓢
嚏水冬涕待つ戀の灰耕せばくさめ哉埋火や嚏にさわぐ灰白し水沸や草鞋編む手に火を探る風呂ざめの水沸すゝる夕かな水沸や念珠つまぐる膝の上水沸に頰赤の子の親はわれ水沸や口には紅の女の子水沸を落す句稿の〓書かな水沸の老の着物やめくら縞水涕に侘ぶや手紙のにじり書水沸に又死下手の歎きかな水涕の貧の思案や小行燈老病の水涕拭ひ參らせつ水涕や穗積の朝臣が髯まばら水沸や只水仙の爲に座すはな水や看護婦老て耳うとき水沸に旅順を語る老女かなの部二三九水沸や再び落す人の前水沸や木を伐る上に雲長し水沸のそと餘所を向き給ひけり水涕を唯さりげなく御小袖水涕の凍るまでなり夜念佛水沸に老い朽ちなんを悔しかりお剃刀只水涕に咽びける霜燒や鴛鴦の繡する針で突く霜燒をかけども足袋を隔て鳧霜燒や痒きにさわる絹のきれ生れ子の霜燒けさうな手足哉君が手に霜燒のなきことし哉霜燒や水仕もすなる小傾城霜燒の手をあぶりたる火鉢哉霜燒の手を集めたる火鉢かな霜燒の手をかくしけり袖の中霜燒の紫色にはれにけり子柿芋木虎蝶乙空六碧格露碧梧同蝶余十步山同靑同鱸同同橡東洋靑露同碧同瀾同虚子面山面衣子園村水杖老衣字人花童堂月桐規〃江城々坊月童水子規
風冬邪お染風邪針子大方休みけり山茶花にかぜ引聲の一家かなうたゝ寢の枕に立ちぬ風邪の神風邪ひけば風邪ものがさじと老ゅ君すねて風邪の心地と臥し給ふ風邪引て冬季十則定めけり〓魔俳魔風邪にこもる今日も哉風邪に寢て髮の長さも小百日爐によりて風邪をかこつや燒密柑風邪熱の父が子を見る眼かな風邪藥自らおろす藥研かな風邪ひきて臥しゝ東坡の生姜酒風邪の咳美人の顏の紅に關取の三日寢ねたりお染風風邪ひきの鼻に拔けたる嚏哉風邪の神漢醫が處方笑ひけり風邪聲の引かけ寢卷なまめかし風邪癖のつきて侘しき籠居哉風邪引いて人の欵乃きく夜哉つまごめの垣もる咳やかぜ二人かりそめのかぜに見舞や寒櫻拭いて取る風邪の寢汗や霜夜の灯山葵酒鼻から風邪はぬけにけり情こわき老が煎じる風邪藥さないひそ風邪ならなほる葛根湯小六月風邪の名殘を步きけり臥しなれぬ風邪にかごとや大男はやり風邪臥しぬ食客三千人風ひきや翡翠の〓いつ脫げてくさゝめや枯木の中を通る人枯草に嚏してゆく乞食かな大佛の樣な男のくさめかな拳。上の鷹が驚くくさめかな眉つくる鏡の前のくさめ哉同未部二四一月同稻同女澗初山梔子一荊秋鬼曲澗亞たけし丁轉棘邑城浦水浪六聲川民村羊同未同鵜同八重櫻同同句同同鳴康洞紅同蕗央平佛村羊央平佛雪人明冷葉
蒲冬團合客と薄き蒲團を恨みけり友達に剝かれて怒る蒲團かな學校へ行けと剝かるゝ蒲團かな小商ひしつゝや妹が貸布團二三人女手いそぐ布團かな故園には綿のぶくつく布團哉憂きことを夢にして除ケヨ薄蒲團まだ主人歸らぬ閨の布團かな布團出て船を上るや土手の霜兄弟の〓異る蒲團かな裾寒く何がなのせん蒲圍哉我死にし夢長々と蒲團かな宿の者蒲團敷きゐるぱたり〓〓髯の癖蒲團かぶると見えにけり人泊めてどうともなろの蒲團哉白粉をつけて寢た子の布團かな女手に二階へ運ぶ蒲團かな山寺に一夜寢釋迦の布團かな大蒲團ころげても我故〓かな悲しさは木魚に寄附の蒲團かな泥足の子供を叱る蒲團かな持ち去る事勿れと塾の蒲團かな積み上げし蒲團の山の一間かな繪に書くや嵐雪の蒲團東山着馴れたる蒲團や菊の古模樣縮緬の紫さめし蒲團かな重ねても輕きが上の薄蒲團先生のかぜ聲低き講義かな夜業してけんびき風邪をひきにけりかぜひいて宵寢佗しき灯かな美しき唇かはく風邪かな濡荷解くを見居る帳場や風邪心地風邪引の水涕拭ふ拳かな八瀨人の釜風呂に入る風邪かなの部二四三同同格同同靑同同虚同同香同同東洋城同同三同同鳴同同鷺碧梧桐同同子月霞楚桃梅柿堂々子村允雪規村斗翠人孫雪園
冬看病の隙を假寢の布團かな絕筆の墨がつきたる蒲團かな病人の起きて座りし蒲團かな經藏に並びて高し蒲團藏病む人の落込むやうに蒲團かな積みあげし蒲團に上る子供かな紅閨や人美しき絹蒲團細眉を埋み殘せし布團かなけふもある命に寢入る蒲團かな夜な〓〓を蒲〓にはさむ路銀哉弓に寢て蒲團短かき鹿火屋かな蠣舟の屋根の布團に鴉かな岩に干す燈臺守が蒲團かな相撲泊めて布團小さし草の宿綻に足をかまるゝ蒲團かな綴糸のこぼれ松葉やかけ蒲團片寄せて敷けば淋しき蒲團かなの部三四五切干の影の長さや干蒲團今日を佗び明日思ひ寢の布團哉蒲〓重くしわぶき苦し夜中頃足が出て詮方もなき蒲團かな鷄鳴と狗盜と寢るふとんかな奈良の宿二夜かさねし蒲團かな小法師の打かむりなく蒲團かな船窓や蒲團の裾に月のさす干蒲團山の木の影落るかな此蒲團死ぬるを癒てほどきけり十年の別離を語る蒲團かな醉人の斜に着たる蒲團かな蒲團包む大風呂敷や嫁の紋櫻の間梅の間配る蒲團かな縫ひ上げて蒲團ふくらむ日向哉百枚の座蒲團ならぶ廣間かなその儘の蒲團埒なき納戶かなの稻句橡石竹同天同水同雪同一同蝶同洋同碧同露同不同射同同六同同靑同同初面靑佛坊鼎冷風棹人轉衣々童月句石花嵐聲
盛隱れんぼ蒲團の山の笑ひけり起きられぬ病持ちたる布團かな君に惚るゝ夢はしたなき布團哉三階に蒲團干したる揚屋かな關取はお酒に負けて蒲團かな片隅に綿のよりたる蒲團かな長松の丸くくるまる蒲團かな病む人にそと打着せし蒲團かな長病の髪結うて貰ふ蒲團かな敷島の大和言葉や絹布團天鵞絨の襟柔かき蒲團かな寢とぼけて蒲團の上に座りけりほころびの鳥の毛出るや絹蒲團損料の蒲團負ひ行く月夜かな雨に暮るゝ沼に戶しめて蒲團布く思ひ寢に八重の汐路の蒲團かな肱蒲團秀才の肌美しきの部二四七長崎の廓忘れぬ蒲團かな蒲〓卷て倚りかゝりたる病後哉障子しめて景色に遠き蒲團かな起きしぶる我に詔らふ蒲團かな今日干して綿匂ふ夜の布團かな友と寢て昔戀しき蒲團かなすね人のねたれ込たる蒲團かな嵐雪の蒲團の裾の千鳥かな綻びに足踏み込みし蒲國かな千代紙の人形眠る蒲國かな安らかに旅人寢たる蒲團かな溫泉の宿へ馬で用意の蒲團哉馬で來る嫁の蒲團の赤きかな着なれたる蒲團嬉しや旅歸り總角に絲の絡るふとんかな寢法師の尾頭もなき蒲團かな枯葛をかつぐが如き蒲團かな落挿茶濱柚啞辰滋十二寒醉禾柿一鷗零一餘桂折著枯化鶏鱸芹射禪八重桐翠拈屑醉乙山寺株亭森樓羊耳櫻江川雨洞芽濤華月佛字餘山寺來黃洲楓生魚伴子子竿星雲樓庵人翁弔
湯婆冬のこの湯婆手足のつくをおそれ鳧夜のふけて二升德利の湯婆かな寢として湯婆に足を揃へけり湯婆入れて錦の夜着のふくれ哉この湯婆命拾ひしかたみかな百菊の御園も枯てたんほかな湯たんほも難波の梅も春べ哉枯尾花小町ひとりが湯婆かな湯婆溫めて母に參らす看護哉藥より更に湯婆を愛すかなもの思ひ居れば湯婆のさめやすき湯婆入れて〓の裾の秋の山湯婆あけて湯を參らせる雪の家湯婆無く寢る古妻を憐れめりある時は手元へよせる湯婆哉目さむるや湯婆わづかに暖き古庭や月に湯婆の湯をこぼす部戶口から病人見ゆる〓かなうつゝなの八幡鐘や古食うつり香や昔忍ぶの紙衾藁灰に根炭埋けしや古〓古〓夢に佳人と語りけり山家集それを表に紙〓病人のきつゝなれにし古〓燭乘りて古き思ひや厚衾冷たさのどん底を着る〓かな紙〓離騷と起臥を同クス御姿は夢見たまへる衾かな恨寢の妻美はしき蒲國かな蒲團着て大きな顏の男かな繪襖に山影動く蒲團かな蒲〓着てよき句を得たり忘たり叩けども裾に風ある蒲團かな隣室の話あやしき布團かな二四九松同露虛同子靑竹碧梧同同同同同同同巨砲雨竹坡香蝶鱸碧靑子茶不喚柑案可桂山はぎ女瓜聽雨上墨衣江樓童々規影子子成影山々冷桐濱ロ月子規
懷溫冬爐石老境を爭ひかねて懷爐かな懷爐冷えて上野の闇をもどりけり芝居見や懷爐入れたる腹の冷腹稿を溫めて居る懷爐かな溫石や夜をこめて立つ急飛脚朝戶出の手を溫石のぬくみ哉溫石や古稀に逼りて宮仕へ冬ざれの庵に溫石あてゝ病む溫石や臍もぬくめ手もあぶりける溫石や懷爐の賢に愚を守る溫石に音を潜めたり腹の蟲溫石に醫の八要を刻すかな溫石や後に寒き金箪笥湯婆抱て大きな夢もなかり鳧湯婆や病の足のおき所紅顏の夢さめやすき湯婆かな湯婆あくれば冬ざれの土躍りけりの部二五一長々と湯婆に足を伸しけり夢に得し歌思ひ出す湯婆かな後宮の美人に媚ぶる湯婆かな冷え果てし湯婆掻遣る夜更哉嵐雪が宿にふたつのたんほ哉湯婆入るゝ觀世太夫が病かな十年の妻に湯婆をかへさするたんほ抱て鴛鴦の〓に恨みあり抱き居る湯婆に浪の響きかな湯婆抱いて襖の春の山家かな湯婆ぬく窓下の雪の深さかな靴脫きし足を湯婆に夜汽車哉宇治殿のたんほ錦の褥かなちん〓〓と鳴る釜の湯を湯婆哉湯婆に去年の水のありにけり湯婆抱いて心枯野や俳諧師東雲の疊に冷ゆる湯婆かな黃挿橋零餘子無躑十步老尺三草東洋城淺河芙蓐同著山冷樂森黃外泉躅城子村雲蠖允火茅の碧梧桐同子仙默同玄牛東洋城碧松柑同師乙十二聽規葩二鳳步童字竹字樓泉子竹字樓泉子
火鉢冬の君の手の冷たし吾も火鉢かな火鉢撫でゝ和尙は噺し上手哉探幽の襖靑銅の火鉢かな銀屏や火のあか〓〓と桐火鉢待つ戀の辻占あぶる火鉢かな活け花の莖を燒くなる火鉢哉雨にあひし袴ながら倚る火鉢かな片隅に積み重ねたる火鉢かな歸る夫待つ女房が火鉢かな小皷の調べをあぶる火鉢かな宴會の用意とゝのふ火鉢かな店頭に馬おそろしき火鉢かな紙でくゝる紅さし指や桐火鉢炭はねて書院人なき火鉢かな古妻の鐵漿わかしたる火鉢哉しはぶきに灰まくし立つ火鉢哉瀨戶燒の火鉢かたへに謠ひ哉擂鉢のなりすましたる火鉢哉藥煮る〓の上の火鉢かなお飛脚に火鉢出したる庫裏廣し草鞋脫いで火鉢圍むや山の宿長火鉢處を得たる茶棚かな代診の鹿爪らしき火鉢かな講中や唐金づくり大火鉢番小屋の晝は人なき火鉢かないもの皮のくすぶつてゐる火鉢ァな火鉢抱い炭まぜて石をさぐり得つおんぼろのぼろ〓〓に包む懷爐哉懷爐入れて山茶花に對す病後かな旅はうき病も起る懷爐かな懷爐して手のなき己が姿かな七重八重襟かき分けて懷爐哉紅裏の少し焦げたる懷爐かな腹黑の老いて皺腹懷爐かな部二重二三八二吟左閑薰笠三間堂宵樂活無月南國子靑鳴同彩同碧同同虚同同繞同同子北秀井山梔子蝶麥碧月刀子三雨曲天東黃兎々雪雲童子石規浪峰花衣人童
助火冬炭,桶紫の筑波に遠き助炭かな鐵瓶の松風籠る助炭かな妹がりや助炭の上の草双紙落月のうしろに入りし助炭哉讀書子の母が助炭や眞白なる歌反古に君寵思ふ火桶かな桐火桶珠玉に比すべき御身かな佗住の火桶一つに妻も有十德に合羽も見えて火桶かな學ぶ夜の灰凹みたる火桶かな傾城の頭痛わりなき火桶かな桐火桶握る手と手と手と手かな古火桶必ず誦す召波が句吉野紀行老懷更に火桶かな木枯の中に何聞きだせし火桶主嘲りに答へず火桶吹きにけり方丈の壁に背を擦る火桶かなの部火桶置いてこゝな一間の古めかし怪談のうしろ寒しや番火桶式部語り小式部眠る火桶かな繪屏風の倒れかゝりし火桶かな芋あらば芋燒かうもの古火桶なで凹むところ〓〓や桐火桶しろ〓〓と曆をはりし火桶哉桐火桶男女の中におく各々の手筋を相す火鉢かないろ〓〓の手の集まりし火鉢哉伽の夜の曉寒き火鉢かな世にふりし太皷の胴の火鉢哉病院の患者溜や大火鉢押し合ふて火鉢とりまく生徒哉何ンの根の火鉢ぞ愛す風雅人手の裡の火蛸赤らむ火鉢かな日影去りし障子見て座る火鉢かな二五五小松黃同靑碧梧桐春又春香淺同子蝶東洋碧同同はじめ酒濱〃瓢水居衣茅城童柿蘆霞櫻醜瀧鳴同子同同靑牛秋二子山梔子同雪規々童紅村石峰松子北瓢酒濱雪規々童紅村石峰松子北瓢
火冬燵寮中に火焼めくもの工みけり寢るでなく無聊も云はず火燒哉鮭小屋に住みつく人の火燧哉火焼出て菜屑一掛そろへけりものもうの聲に出で行く炬燵哉だんだらの寢卷かけたる炬燵哉耳違く病もなくて火焼かな旅衣火焼の裾にかけて寢ん置炬燵並ぶふた子の娘かな蓬阪で晝飯食ふや炬燵賣置炬燵元祿の句のこゝろかな死の夜ひろく燈下に炬燵抱けるか炬燵抱くや庭木に冴ゆる空の靑雪を訪ひくるけはひに抱ト〓炬炬〓三人に硯が一つ炬燵かな置炬燵寫本の上の眼鏡かな置炬燵移すや梅の卓の下な炬燵から花屋を呼ぶや格子の間炬燵守りて山の如くに動かざる丈草が脛の長さよ置炬燵出勤にしばし間のある炬燵哉割據して煤掃聞くや置炬燵初炬燵眼を病む一日二日かな置炬燵紙治握りてうつゝなき宿昔の夢を又見る炬燵かな草庵や狐が覗く置炬燵寛がせ給ふ火焼の高さかな音唐に盧生ありける炬燵かな〓厚き炬燵籠りや能太夫炬燵して語れ眞田が冬の陣巨爐から見ゆるや橋の人通り女の童と男の童と遊ぶ火爐哉助炭してかくす文福茶釜かな足袋さすや助炭の前に脊圓しの部二五七同同同四方太同鳴同同靑同碧同同同子蝶四十雀雪々童規衣蝶同裸東洋城虚同同六同八重櫻同句同同同同同花佛子衣木花佛子衣木雪々童
冬の客去るや炬燵にもどす火桶の火腹病て火焼に深う寢たりけり風ひくと炬燵の宵寢おこしけり折鶴や炬燵蒲團の上を飛ぶ周公も夢見ずぬるき火焼かな足深く入れて炬燵に獨りかな鳥影のさして樂しき炬燵かな足の裏の脂に困る炬燵かな新妻の炬燵に倚れば眠りけり草鞋ずれ痛む旅籠の火焼かな病起火焼にこもる日數かな三人の子供皆寢る炬燵かな冬十則を考へてゐる炬燵かな阿蘭陀の花を觀きゐる炬燵哉我れが見る火焼籠りの腮かな旅戾り行李を開く火焼かな山宿に晴待つ炬燵火の乏し船宿に船まつしばし炬燵かな卷紙のつぎ〓〓落す火焼かなとぢ糸に烟管さしたる炬燵哉春遠き枯木の宿の炬燵かな置炬燵鶯育つ日數か日くるれば雪かも知れぬ炬燵かなひよろ長き身を埋めつくす炬燵哉漂着の濱に住みつく火焼かな臍に火のつく迄出でぬ火燒かな袈裟取つて凡夫に返る火焼かな屏風立てゝ千鳥めぐれる火燒哉置炬燵法衣の裾のよごれ哉歌反古の中に主の火焼かな小夜千鳥我は火燒の沖の石火焼して我夜一人の假枕橫に見るお山人形や置炬燵置炬燵西湖は雪のふるといふな三六八部二五九余同梧同霞同死同香同松同眉同櫻醜子同虚子月溪洒村濱月星星俳翠素鼓白碧梧桐同一師へ不喚樓左衞門別天樓露巨同小秋雪濤泉竹星竹山き華小子月溪洒村濱月明
安火冬行火一つ猫が一疋我家かな小謠や行火をたゝく指の先後朝の駕籠に運びし行火かな喰ひ足りて翁炬燵に入り給ふ物あれば寄る癖ねむき火焼かな初めての冬を官舍や置炬燵つゞき繪のひろげ餘りし炬燵哉四人居て繪圖回し見る火焼かな火燵すれば脊を寒鬼の呪ひけるよく笑ふ女ばかりの炬燵かな欠伸して猫の目覺や置炬燵嵐雪の嘘を火焼に籠りけり人見穴あけし障子や置炬燵湖の眞ン中の島の炬燵かな戀中の從兄弟同士や置炬燵山鳴りに我が尻痒き炬燒かな火燧奴が別れに風をなすり行くの部新尼の炬燵に寒しうしろ影紅閨に晝うつゝなの火燵哉炬燵出て日南に晒す病軀かな赤き夜具かけて廓の炬燵哉小夜千鳥淺妻舟に炬燵かな爪立てゝ猫叱らるゝ火焼哉鐘ついて來ては炬燵をせゝり鳧島原の炬燵に失せし黄金かな明日ありと思ふ炬燵の晝寢哉物臭の尻凹むまで火焼かな羽幟着て火焼の人や思ひもの寒梅や炬燵に倚りて歌の選火焼から天下に響く聲音かな老の屁を心安げに炬燵かな炬燵抱く心の中の山河かなかりそめの火焼や竟に起たざりし目さむれば猫も寢ねたる炬燵かな二六、麥同小曉秋壺靑鹿語子寒高瀨川香觀榎晩荒井蛙釜啄水鳥雨李濱天潮靑一暮鶯柾八夜桂滑山灌子琅西人波大皎桐枝山居魚村紅村正子葉瓶水涯月瓢情池浦塔濤影樓々湖
埋火冬のの埋火や老曾の嵐夜もすがら埋火に銅壺の古湯たぎりけり埋火や冬木櫻の比丘尼寺埋火のなぶればいぶる根榾哉埋火や鐵瓶ねむる僧の居間埋火や灘の風越す舟の中埋火や眼前の灯にこゝろゆく埋火の二階の闇へ梯子かな埋火に詩箋のにじみ焙りけり埋火や燈下にうつす普門品埋火を捨てゝ出でたる草廬かな埋火に串柿灸る山居かな埋火や軒に干菜の風が鳴る埋火や壽永の春を生き殘り埋火に橫川の坊の連歌かな會者四人四夜の四喰に火を埋む埋火や佗盡したる腰屏風部二六五埋火に淋しく立てる茶杓かな埋火の鐵瓶に蠅眠りけり埋火に戶叩く羽黑行者かな埋火や文よむ腮の歪み癖埋火に手紙の端を焦しけり埋火やそもじと呼ばれ侍る者埋火の底より出づる小石かな埋火や乙鶴丸の宵工み埋火を抱けば春なり山かづら埋火や鹿の卷筆本こげる埋火や靑墓道の一軒家埋火やかきさがしたる後の夢埋火やほのかにうつる人の顏辻番の夢安からぬ安火かな寄せ鍋に動く火見つゝ安火かな船宿に人待つ宵の行火かな天井が焦げて年經る行火かな同法同零餘子同蝶同巨同靑同同子曲零世麥餘師瑞柿射稻樂眉菰醉八月霽碧竹琶湖舟橙幽一黃重穗山伏石城堂月子山堂佛櫻蓑兎月童冷黃餘師衣口々規汀子音人
榾爐圍爐裏冬打ちくべて土の香のある根榾哉榾の火や狩の草臥夢を見る股凹に燃えべりのして根榾かな大原に丸榾干せし垣根かなちよろ〓〓と榾火の夢の何もなし物の葉のへろりと燃て爐塞しつくばひて爐人灰かむ思ひかな爐の左右の緣凹む迄庵古りぬ蓑の雪爐火に解け行く雫かな爐のそばに梅を養ふ山家かな濤と闘ひし人ともなしに爐に眠る山寺の爐に尋ね寄る樵夫かな爐火燃えて皆醉へる團居梅寒し爐に倚りて眠たきを眠る二人哉焚くものゝ日々白けゆくいろり哉皿甜めて灰にあやまつ圍爐裏哉山鳥をかたへに投げていろり哉極樂を心に描く圍爐裏かな舸夫の來る浦の揚屋のいろり哉一しきり盛る立場の圍爐裏哉圍爐裏火の細るに白し己が息凩の底に酒沸く圍爐裏かな狩夜明皆山下りし圍爐裏かな押並び居るや圍爐裏の馬鹿話山に住む者炊に圍爐裏一つかな大鍋のかゝりて寒き圍爐裏哉湖に降る雪見暮していろりかな時賴になりすましたる圍爐裏哉寢そべりて孫曾孫多き圍爐裏哉陽炎の埋火に立つ眞晝かな埋火や灰によごれし猫の鼻埋火の佛間に燻る香爐かな埋火をかいて寢餘る老二人埋火や亥中の月に雁の啼くの部二六五把吟眉松虎屓雉子井草五虚碧梧碧梧々蝶松不八芹翅麥六桐南子句鳴可烏東洋天翠三喚重衣濱樓櫻雨鳥人花城佛雪來成嶽濤寅蝶同同同梧々桐村波月濱栗子工子桐杖月郞々衣
冬ぬくもりし壁にもたるゝ榾火哉榾の火や雪に濡れたる狩衣さし出でし邪魔を折りけり榾の足榾焚くや木の實落ち打つ軒の風榾の火や睡魔の襲ふ夜も更し鯛は花は榾火に燒る赤鰯榾の火や妻がぬれ手に灰かゝる榾の火や獨り煮えたつ狸汁一夜さの榾はづみけり爐のほとり寸程の話を尺に榾火かな雲助の睪丸黑き榾火かな暗ければ榾焚き添へて話かなもの讀んで焰に近き榾火かな榾積むや三番坑の張番所榾の火や杉間をありく夜迷鷄榾消えて埃淋しき板間かな主客寢て從者夜を守る榾火哉何くれと榾の主が情かな番編むる父の手借りし榾火かな馬貸して手持無沙汰や榾を焚く濡れ足の乾きて眠き榾火かな帷幄亦た榾焚きつある陣深しの部麓なる鐘をうつゝに榾火哉雪溪を前に榾焚く一廬かな我臍の十年焦げし榾火かな鍋葢を甞めずる榾の焰かな木曾殿の軍令草す稱火かな榾の灰かぶりて殖える白髪哉榾の宿都の子より爲替かな榾の火に愁の眉もくすぶりぬ燃え刎ねて轉がる榾や妻叫ぶ大榾の尻七尺や座を狭み惶こさは宮の古木を榾ぬくし新しき嫁の簟笥や榾の宿三六七栗梧龍翠波松五虚子同法同不喚樓同同無何有山梔子松同同俳小星同同六同同靑同同香同同鳴蝶人月耳濤空宇工子規師濱花嵐村雪衣
春本冬來し人の語るを聞きつ妻木折る御佛の橫に妻木や老の宿沼氷る上に落ち散る妻木かな乏しさも有になれたる妻木哉庵に入れて少し榾ある妻木哉一匹の馬のゆきゝや榾百駄山里は物語りめく榾火かな榾焚くや大湧谷の溫泉の響榾赤き夜の障子に嵐かな退軍の自費嘲る榾火かな鍋かけて人横はる榾火かな大德の狸と語る榾火かな山塞の榾に淋しき女かな寢餘ると榾に夜更かす爺かな山賣るを母の不安や榾火焚く草臥るゝ雪の木曾路や榾の宿貞任が消にくづす榾火かな生マ松の燃えでいぶせき榾火哉榾焚て山中は我天下かな馬つぐ間榾火にあたる京の人脂吐いて榾頑や燃え澁る榾埃荒神松に積りけり蟲穴の榾をぬけ行く煙かな榾焚いて毛腸をさする獵男哉榾木積む裡に柑橘丸みけり榾焚て矢の根を磨く土人かな胡座から大安樂や榾の主いぶり榾火になる頃を猿なく太刀痕に顏の歪みや榾の主化けそうな茶釜煮かへる榾火哉附箋して戾る願書や榾の醉積榾や苅り束ねたる菊一把榾焚いて都の人を圍みけり燃えしさりごそと崩るゝ根榾哉の部二六九大辰禪香春又春靑鴻醉楓如十二風虚句同月山灌子寺岬明佛々城爪馬來生江風樓洞居瓦耕櫻醜子ゆう〓〓琶湖舟蘇水隼子如巨冷琅三破萍三怡素余子村全月縫火々坤棹鐘雨寅泉岬明佛
焚暖冬火爐船の腹の砂焦げてある焚火かな駕界のあぶれを語る焚火かな屋根下りて家根屋のあたる焚火哉焚火して獵師と犬と晝餉かな膝の泥靜かにかろく焚火かな枯藪の果の江の舟焚火かな燃えあがる焚火に皆が立ちに鳧江岸のたきび疑ふ夜舟かな野兎の森に逃げ入る焚火かな雪の草鞋焚火の上をふんまへたり南天の霜に焚火の埃かな磯をうつ波に消え行く焚火哉後ろから大きな手出す焚火哉尻むけて焚火に語り合ひに鳧塀外に焚火の煙があがりけりストーブに列ぶ書棚や裸體像球突きし掌あぶる暖爐かなストーブや片頰赤き夜會髷ストーブに唇乾く夕かな失戀のそびらにあつき暖爐哉ストーブや尙ほ捺印に躊躇せり溫室の一花持て來し暖爐かなストーブや油繪の額の山眠るストーブや雜音に馴れて調べものストーブや聖書に悔ゆる事多しストーブに後ろ淋しや額の景病室の盆梅開く暖爐かなストーブに鏡の前の挿花かな病床の位置を變へたる暖爐哉暖爐焚くや玻璃窓外の風の松消燈の鐘なり渡る煖爐かなうちくべる妻木に松の香ひ哉五味の粥煮るや妻木の焚落し水古き入江の舟に妻木かなの部二七、康汀麥蠻零餘子零同同虚蝶同三一正子閉寺爐同同一黃浩醉裸同竹芋小東洋城子小其歸麓園同同同同人兒史村子衣允莓白市歡雨舟佛木規馬村酒
冬炭炭取、炭賣炭竈、炭燒炭竈に雪降り積みて埋れ鳧炭起る不間不答の對座かな通夜の座や炭怠らずつぎ廻る堅炭の灰となるまでいさめ鳧炭賣は駱賓王に似たりけり書中古人に會す妻が炭ひく音す也消炭のすぐおこり立つ淋しさよ炭を吹く鬼の眉毛や動きけり殘る火の炭ついで夜を更し鳧噂せし下女炭つぎに來りけり炭恰もこがれて花のつゝじ哉焚炭やあすに鹽なき草の庵くぬぎ炭あふぐ事あり閨の梅炭竈や木を樵りに來る山の奥やゝもすれば堅炭の火の消んとす炭賣の休むか石に粉炭かな手を伸して顏を反ける焚火哉炭屑や小野の徑の草の宿炭白く燈下のあいろ眼にいたき炭ついで再び煮出す藥かな門口や炭積上げて物めける一冬の炭積む納屋や梯子して泣くといふ木を切りきざみ炭を燒く〓澄の炭負ふ四方木女かな炭燒や片山里の七竈炭をつぐ手顫へやまぬ激怒かな乘鞍の雲眼に寒し炭を燒くかきおこす炭や夜更の藥煮る炭の香や寫經の硯水をさす論募る顏に炭火の熱しけり心幽に折々炭をつぎにけり炭斗の塵や茶の花琴の糸寒菊や乞食にくるゝ炭俵すみ取も古風に出來て庵哉の部二二三碧同虚同同格同同靑同同子翠三同同別天樓童子堂々規央二七二竹寒耕露淺露同同二同零餘子同同乙同小同月冷骨星石茅月冷骨星村字酒允童子堂々規央
炭取の炭を割るなる火箸かな櫻炭黑木の御所に宿直かな消し炭の火を吹く眉に埃かな炭の香や留守懷き人の居間炭ついで引下りたる小姓かな煤けたる自炊の鍋やいぶり炭古るものに炭斗の底の穴を見たり嵐山の裏は炭燒く丹波かな炭賣の炭相打つや音聞けと炭切るや鶏クヽと鳴く雨の庫裡櫻炭つげば句論の焰かな炭竈の煙りの見ゆる孤村かな魚串の細腰こがす炭火かな幸便や追ひ下げ牛に炭俵炭ついで話頭を轉ず主かな枝炭に釜の古さや雪を煮る講堂のまだきに炭の匂ひかな藥煮る藥罐の下や燻り炭炭燒いて高嶺の中の月日かな炭窯や亂山底に冬木立山雨また打つ炭倉の扉かな口あける炭の俵の今年かな炭部屋を出れば明るき天地哉月が瀨の冬は炭燒く處かな炭の香やふたり伏目に灯ぞ赤き松風の炭燒く煙り亂れつゝ炭取に墨色古き寺號かな寄進炭けふ啓建の授戒かな炭をつぐ火箸輕ろやかに新居かな切炭になる木の櫟伐りにけり炭はねて屏風の達摩我を見る炭燒や丹波田處山處馬宿もせずて炭積む厩かな櫻炭大内香を薰しけりの部二五閑孤淚耐梅春蕗麥濱湖香牧榎一子櫻醜子一村村笑柏雲塵雨峰人人靑居童村轉瓢未圖眉田鶯谷松龍松天易水六月月愚句月八重士南月英樓圃兒央耳巴濱花舟兎佛村櫻佛
綿炭冬入團脛あらはに薩摩鹿摺の綿子哉綿入に引ン出し帶の女房かな躾糸光る女の綿子かな綿入をたゝみつけるや冬櫻橋守の火鉢わびしき炭團かなきら〓〓と朝日浸み入る炭團哉火達磨に吹かるゝ炭團法師哉灰となりて炭團法師の佛果哉炭屋の門に乾きつゝある炭團かな一塊の灰はゆふべの炭團かな豆殼を釣る軒淺し炭團干す朝からの舍利も殘らぬ炭團かな炭取の炭の上なる炭團かな伏見まで持たぬ夜舟の炭團哉炭團法師灰の中山ごもりかな捨てもあらず小野の粉炭を炭團哉ぬば玉の夜の底にある炭團哉炭團いけて佗し佛師が膠鍋夏干しと聞く賴母しき炭團哉粉媒の中に並ぶる炭團かな堅炭の其角炭團の惟然かなむづかしく炭團に炭をつぎかけし炭團干す家のうしろや眠る山達摩忌の灰となりたる炭團哉敷島の匂ひなつかし櫻炭炭の香にうつら眠たき眞晝かな炭を搗く臼に日うとし枇杷の花いぶり炭壁〓ゆかしき古び哉轉任や又吳れて行く炭薪炭燒の煙の筋の空晴るゝ走り炭屏風の裾を打ちかへる釜の水新たに汲むや走り炭消炭の如しと人に言はれけり炭籠や底の枯葉に一と時雨の部二七七子同同堇冷白葦雷死久仰烏不關白蜃稻松薰一醉癖三醉碧靑格子同三常素射河城北郞象堇泰抱白規哉火峯天念山樓靑濱水轉佛童々堂規允翠川石柳外哉山琴貧
布子冬冬の來て布子一枚おろしけり辻褄の合ぬ布子を重ねけり肩揚のいと福よかに布子かなポク〓〓と木もて肩打つ布子かな杖ついて水汲みに來し布子かな杣人の斧つゝみたる布子かな布子着て野山にまじる翁かな布子着て眠むた顏なる男かな炭竈のそばぬくゝ居る布子哉東山に遊ぶ日ぬくき布子かな布子着て杓子面の婦かな小夜霰鬼に物やる布子かな地角力の關を取りしが布子哉綿入の初著に褄をやきにけり綿入や大志を捨てゝ店の番綿よれし去年の綿子や今も着る綿入や日向に眠る惟然坊寢押する蒲團の下の綿子かな不漁の日を大胡座して綿子哉綿入にべつたら市の夜風哉燃ゆる襦袢綿入と重ね置かれたり一番の亥の子に着たる布子哉學をもて十州に布く綿子哉綿入に丹靑の朱の染にけり綿入に枯草まとふ徑かな見佛の問法の時の綿子かな綿入や惟然が冬も娘あり綿子着てあるが上にも猫脊哉綿入るゝ南の窓や枇杷の花綿入もすべて飛白に男の子綿入の下着は人形仕立かな綿入を着てふつゝかや荷ひ花綿子黃なり村醫者と見えて供一人の一日や綿入着つゝ日南ぼこ部二七九靑未同蝶同稻同三同同釜光衣沙櫻秋至九萬字同同俳小星泰醉寒不喚樓六露碧梧桐鳴同初同月同靑子R央衣靑允村波來靑山佛星花石雪聲斗々規
襟シヨール卷負革羽織表外二重廻冬冬綿套服襟卷に首をちゞめて眼鏡かな襟卷や蒲柳の質の顏よけれ頸卷に織りて鶴の毛光るかな縮緬の襟卷ラツコの帽子かな襟卷に顏つゝみたる車上かな肩掛や紫紺に君が顏白し綿負んで臍の根冷ゆる病かな吾妹子の脫ぐ藍染の眞綿かな革羽織固陋の老となりにけり革羽織老が心に日短か革羽織着る顏になる己れ哉白表に氣品備はる老師かな封侯を夢みてさめぬ表表や塞下の樹々に風騷ぐ後朝を二重廻しの二人かな軍鶏喰に二重廻しや二人連振り返る二重廻しや人違ひの部三八外套に着膨れて來る牧師哉外套の襟を立てたる夜風哉雨の日の外套重き步行かな外套に筑波颪や橋の上交番の柱に濡れし外套かな外套や霰たばしる衣紋阪陣營の外套寒き步硝かな外套に降る雪白き別れかな裾長に外套着なす公子かな冬服や冬暖かにロンテニス冬服の胸あひかぬる古着かな帶しめて俵の如き布子かな此浦に避寒の人の布子かな肩のあたり埃沁みゐる布子かな脫ぎ嫌ひ着嫌ひの子の布子哉燒焦の古き戀知る布子かな布子着て太古の民となりにけりの部雨六東洋同霞圭白草北碧梧子彩乍雉子郎草其子規山々山如村桐人葉萊水規靑二票至猿黃蝠裸松助子光柿菊堇黃露二六花城人更庵青似雨耳木字郞規波園太哉雨石
頭冬耳手冬巾帽袋袋陸奥に任を賜はる頭巾かな緋の頭巾〓ける如き眉目かな鍋牛廬に我れ舌耕の頭巾かな前投げに麥蒔僧の頭巾かな探梅の頭巾茶にして新なり善行を樂む老の頭巾かな古稀の賀の歌と賜はる頭巾哉あの人に道を問はむも頭巾哉いつも〓〓同じ頭巾の地藏哉古頭巾師走の市をうと〓〓と古頭巾裏は燃え立つ緋羅紗哉高島田塵も据ゑじと頭巾かな頭巾借りて君が姿に似るべうも猿に着せて吾れに似たりや古頭巾人丸は烏帽子芭蕉は頭巾かな頭巾着て平家を語る法師かな戯作者のたぐいなるべし絹頭巾十年の冬一帽の貧しさよ船頭も客も冬帽眉深なり冬帽や商人にして八字髭四角なる冬帽子今や歸省かな冬帽の十年にして猶屬吏なり姉聟の年よりふけぬ耳袋山越ゆる旅病人や耳袋耳袋松島を觀る舟一日耳袋三井の餅屋に忘れけり手袋を脫がねばならぬ密柑哉手袋に佗しき傘の柄漏かな舵取がはける巨人の手覆かな手袋をくはえて結ぶ草鞋かな手袋に銀貨をさぐるかくしかな手袋の編みさしてある病かな手袋に手をひく兒の歩行かな襟卷に顏うづめたる病後かなの部二八三三八一香靑象竹幽蝶松同同子折竹の門奇同同同師同同紅同虚同同雉子郞白同子同鳴同同子三間堂村嵐竹綠子雪規水規志外童山衣宇規亭
冬の京に立つ落首見にゆく頭巾哉千早振神主老ぬ丸頭巾頭巾着て烏羽の連歌に後れ鳧駕辭して老ひて健なる頭巾哉頭巾着て夜々の下山や若法師紫の頭巾仇めく優婆夷かな双眸の威儀尙存す頭巾かな明眸の皓齒の御高祖頭巾かな王侯の前にも脫がぬ頭巾かな忘草人に頭巾を隱しけり頭巾着て木兎に似る迄我老いぬ頭巾着て耳を疑ふ事多し見はやすや短か羽織の伊達頭巾頭巾着て戀の外なる遊びかな浮世繪に名ある主の頭巾かな通夜の衆の爺婆もわかぬ頭巾哉袖頭巾細かき雪となりにけりちよと逢て胸の轟く頭巾かな伽羅の香や頭巾をもるゝ月の眉頭巾して美目貯たるは誰が妻ぞ頭巾きて蕭條として暮しけり黑頭巾張良いまだあらはれず絹頭巾京人舟を寒がりぬ寒がりの鼻をとがらす頭巾哉絹頭巾茶屋酒を飮み習ひけり耻かしく疱瘡包む頭巾かな醫者樣で御ざいますかと頭巾哉藁頭巾霙るゝすぐに凍りけりいつの間に頭丸めし頭巾かなたらちねの念珠に杖に頭巾哉頭巾着てしるき白眉の汝かな頭巾着て魚見櫓にふかれけり頭巾着て日ねもす榾の埃かな古頭巾憤怒の眉の動きけり部二六街水乍蒼孤紫梅滴十步老へ麥醉古松蝶柳句癖三醉肋無把靑格三裸東洋城碧竹同挿同散同象香翁人刀軒子水泉き人佛泉濱衣家佛骨黃栗々堂允木童冷雲堂外村
足綿帽子袋冬の足なへて汚れず破るゝ足袋も憂き木枕の額にふれて足袋の泥雨の旅足袋干す一日休らはん綿帽子八重山風の寒さかな綿帽子裏門出づる文使綿帽子眠れる鴛鴦を眺めけりまばゆさの市の夕日や綿帽子僧正が一人の姪やわたぼうし綿帽子御室の雪をうしろにす綿帽子ぬけば面照る灯かな母禪尼つゝまやかなり綿帽子綿帽子ちら〓〓雪が降れるかな門前の花屋に入りぬ綿帽子浮世繪の女腐たし綿帽子綿帽子白拍子とは見えにけり仕ふまつる歌弟子二人綿帽子爺と婆と江戶見に行くや綿帽子廻廊に十四五人や綿帽子奧向の記錄とぞ謂ふ綿帽子綿帽子寺侍が妻なりけり隱棲むでやまと言葉や綿帽子綿帽子人は長安古意の中枯菊に遊ぶ誰が子ぞわたぼうし浪々の身を打ちつけの頭巾哉髷太に頭巾被りし里女白藏主嵯峨峨の月夜を頭巾かな鐘つきと此世定めし頭巾かな江戶褄や紫匂ふ染頭巾頭巾着て目も鼻もなき俳〓哉勤行の濟めば頂く頭巾かな鐘の下湖を見て居る頭巾かなあげつらふ荒くれ僧の頭巾哉怒髮天を衝て頭巾を脫ぎ捨る絹頭巾眼正しく母老いし部二八七死木翠紅乍碧松子同癖三醉甫同碧田士英松濤樓九萬字同同六同同露余雅獨兎孤歸禽射同紅櫻醜子小山酒明兎義菁人童濱規花月子村嘯子舟雲化石雨蕾(
冬の足袋干すや日ある枯木に寒鴉絹足袋や廊下塵なき宮仕絹足袋の女さかしき步みかな足袋刺すや爐との話の途切れがち足袋ぬいで蒲團にはさむ旅寢哉足袋履くや門に人待つせき心絹足袋や松の間過ぎて梅の間に脊の子の足袋落し來し片方かな白足袋やとう〓〓たらり足拍子旅は憂きうら若き身や足袋の泥紅の足袋爐の曉に殘りけり合宿や我足袋搜す人の裾絹足袋の氣傲る一世富限かな隱家に花足袋見ゆる垣穗かな泥の足袋ぬひで上りぬ金閣寺足袋干して子供の多き孀婦かなぬくゝなる蒲團の中や足袋をぬぐ花足袋のふらりと掛る衣桁哉よき衣を着て來る妹や足袋の泥白足袋や鶯張りを踏過る我足は人こそ知らぬ十二文紅の足袋はいて人形遣ひかな絣足袋鹿兒島行のみやげかな足袋だして讀書の灯奪はるゝ山茶花垣足袋かん〓〓に凍にけり上紺の足袋はき出るや朝朗足袋はいて座敷を走る子供哉脫ぎ捨し足袋に殘の暖みかな足袋打つや更けて佐野屋の槌の音あちらむき古足袋さしてゐる妻よ律僧の紺足袋穿つ掃除かな革足袋も殘る祖先の具足かな新足袋や吹革祭の鍛冶が弟子革足袋や建前見舞ふ木工頭部二八九子紫婆露愛拈一大菰喟朱史洞洋靑松三紅格小虚同白同四同靑同八重櫻同無同子同同六瓢殘羅華櫻華轉羽堂然々嵐宇允綠堂波子山子々黃規花
紙毛衣布冬の靑雲の夢の破れや澁紙子紙子きて今に暇のなき身かな世の中を厭ひもはてぬ紙衣哉味噌汁を膝にこぼせし紙衣哉紙衣着て出づれば吾に星落つる炙點師出張る草家の毛布かな赤布毛百里の旅に褪せにけり赤毛布靑毛布追ふ心かな毛布敷いて十年の友に對しけり兵の毛布に何を泣く夜かな毛布や雪の夜明の渡し舟眠るべく毛布を冠る夜汽車哉客に敷く毛布古びぬ草の宿合乘や江戶見物の赤毛布峽中の人骨秀づ毛布かな韓人の虎を織り出す毛布かな夜學する達摩の影や赤毛布部二九篦紙の心ンにきりけり古毛布ふくよかに閨の毛布の白きかな毛布被る一むれ寄席の歸りかな十年の苦學毛の無き毛布かなケツトーの赤きをかぶり本願寺紺足袋に麻裏輕き大工かな足袋はいて寢るよになりし病哉絹足袋になまめく舞の師匠かな黃足袋穿く能狂言の狐かな砂に降る松葉や足袋を通す風ものゝふの鐙冷たき毛足袋かな亡き親のたびはく足となりに鳧足袋白く衣食の道を求めけり白足袋に家名落さぬ杵屋かな白足袋の染りて赤き鼻緒かな白足袋のよごれものうき病かな絹足袋や物に馴れたる待女郞麥同靑同同子散虎釜雪桂狂紀山白眉蝶月堇同子楓同仙章人白風法ト零橙素香雪耕餘黄斗哉規禽化山人師道子子泉居腸雨梔々規堂杖村城株濤山子山月衣人斗哉
莖菜漬冬莖の桶も動かして出す餅の臼莖の水あすはこぼれん景色哉莖漬ける庭に鷄追ふ小犬かな莖漬の强硬にして石輕し大原女や莖漬け合て睦じき莖漬の水揚げて石を沒しけり莖漬てそれより琴を學びけり莖漬や鹽を加へて茶漬飯莖漬や寒き日くもる梅柳霜の威や紙衣の袖の凍るまで紙子着てもたるゝうつぼ柱哉澁紙衣世に〓作者の類ひ哉百帖の句反古や紙衣つくるべう安紙子音せぬ迄に着馴染ぬ紙衣着て木兎の頭巾被りけり大津繪も貼られにけりな古紙衣歌反古をはりつくしてや古紙衣歌麿の繪筆をぬぐう紙子かな御かたみの紙衣なつかし冬ざるゝかりそめの借着似つかね紙衣哉新たなる紙衣に澁のはけ目かな馴染とて紙衣で來ます住持かな頭巾もて雪打ち拂ふ紙衣かな我貧は骨に徹して紙衣かなうしろから一句書きたる紙衣かな紙衣着て兩手は袖に隱れたり酒のしみ火の燒焦の紙衣かな紙衣着て枯木の如き翁かな紙衣かへて古きは人に得させけり二君には仕へ申さぬ紙衣かな松にほす紙衣冴えたり夜半の星立ち出でゝ嵐の强き紙衣かなあり〓〓と反古の讀まるゝ紙衣哉しら藤の主が張りし紙子かなの部二九三二九二同同虚同同鳴同同靑方白啞菊師五丈原蜃古握石井柳六瀾把格紅同稻同鳴同同蝶靑子雪々外山蟬亭竹樓泉月叩村家花水栗堂綠靑雪衣々
大根漬冬大根漬けて有福となる厨かな繩襷澤庵つける坊主かな澤庵の三年びねや樽の底北風に大根漬ける田舍かなあくる日や重石傾く大根漬大根漬けて來年近く迫りけり莖漬て厨の冬の豊かなり莖桶や柱に枯るゝ物の蔓莖漬や寂光院の尼二人莖漬や厨に古き覺書機下りて日ありと莖を漬けに鳧莖漬る妻あり子あり帆前船櫛折つて一日悲しや莖漬くる莖漬や霰交りに五分の鹽莖漬や風ふきまくる門柳傾くを薪もて支ふ莖の石歸り來て蓑脫ぎかける莖の桶の部二五莖の石運ぶも親娘二人かな味噌桶の大きな影や莖の桶莖漬やあと口に壓す二升鹽莖漬に雪吹きつける破れ納屋ひろげ見る一葉見事な莖菜哉莖漬けん裏山日和鳶が鳴く莖の石輕ければ添ふ鮮の石漬くるべき莖洗らひつむ戶板哉漬け終えて莖屑掃くやこぼれ水莖漬の樽荷ひ去る野川かな莖漬をよろこぶ鷄や日に歩りく夕影や莖洗ひ居れば亡兒の姿薄月の夕べに匂ふ莖菜かな都鳥寒き旅籠に莖菜かな莖漬や枯木にかけし鹽俵なつかしの千枚漬や京便り紅一點漬菜の中の唐辛子二六鳥碧初虛格泅村同烟風草井閉著藍橡蝶道人雨寺面聲聲子堂鷗家葉樓童蘭爐森雨坊衣松果六句露紅同孤同同靑水禪寺同巨同同道人聲聲子面濱采花佛石綠軒巴洞嵐
藥風呂吹燒牛喰冬鳥鍋風呂吹や兒の臍の〓祝ふ日に風呂吹の寂然として冷えたりし風呂吹や禪杖もたす庵の壁風呂吹の湯氣にかすむや五臺山風呂吹にくもる眼鏡を外しけり風呂吹の後ろ寒さよ御本尊風呂吹を喰ふ霜の顏雪の顏鎧着て風呂吹喰ふや山法師風呂吹に集まる法師誰々ぞ大なるをこそ風呂吹と申すらめ風呂吹や小窓を壓す雪曇燒鳥の脂の煮ゆる炭火かな燒鳥や卓上に名も知らぬ酒月天心柳に依れる燒鳥屋燒鳥に塒の雀握みけり看板に山鳥釣るや燒鳥屋牛鍋に偶座の奇問奇答かな舟の衆の混爐を持てり藥喰藥喰北の御堂の鐘がなる更でだに地酒の濃きを藥喰狼の飢ゑたる如し藥喰掛蓆藥の肉を賣る家かな下山する比叡の法師や藥喰學寮や或る夜窃に藥喰藥喰わりなき人をだましけり烏羽玉の夜半の匂や藥喰藥には狸なんどもよかるべく藤の杖忘れて去るや藥喰大雪の落し猪なり藥喰藥喰死病ある身を惜みけり勝手なる方便品や藥喰戶を叩く音は狸か藥喰乾鮭にわびし日頃や藥喰藥喰の鍋こほりつく朝かな部子露守水老若乙格露靑歸農夫虚碧梧桐同同碧梧桐羽同同同蝶同同稻同子佛稻花溪樓十同同天易兒同白一衣靑規丈靑山滴牛山皎翁字堂月々子規
納冬豆納豆汁に口すぼめ語る天保大火御日記納豆汁の句ありけり說きやまぬ安國論や納豆汁碁敵の僧がくれたる納豆かな松風に三日の禪や納豆汁泣いて〓〓つきまとふ子や納豆賣納豆汁三十棒の痛みかな納豆汁峨山は酒の朝餉納豆汁其曉の嶺 の雲僧とめて作りそこねし納豆かな旅瘦の法師宿して納豆汁いたゞくや御法のあとの納豆汁詩の弟子の僧來て吳れる納豆哉納豆汁富みてたしめば奢り哉納豆汁啜り終りて垢汗も無し粗忽さも鼎をわるや納豆汁納豆賣る聲や阿呆の武太郞納豆や飯たき一人僧一人水仙の花の盛りや納豆汁火にかざす手の大いさよ風呂吹に風呂吹や吹雪する夜をホ句の友風呂吹に引窓の綱切れてある風呂吹の酒氣に露けき眉根かな風呂吹や酒なら蘇家の婦に謀れ風呂吹や味噌磨る法師煮る法師風呂吹に庵主立机の披露かな風呂吹に爐の火暮れゐる山家かな風呂吹に和田楠と並びけり風呂吹や豊島の寺の夕霰風呂吹の一切れづゝも一句かな蕪も交ゆ風呂吹の味噌あまりけり風呂吹に烏羽繪の中の僧都かな風呂吹や小さき庵の木葉焚く風呂吹や灯火に並ぶ繪具皿の部二九九葦はじめ桃素武大鳴句露同三同碧同同虚同同子亞はぎ女三米師駒松濤樓柑巨六鳴同乙同靑風雨醉骨我雪佛月允童子規浪允芽竹村子ロ花雪字
煮冬凍鯛味噌煮凝や厨に寒き妻の顏煮凝の蓋なき鍋へ拭巾かな煮凝に遊里の夢も無かりけり煮凝りて尾鰭からびし一魚かな煮凝や昨日の平目今日の鮫獨栖の書架に器や煮凍りし煮凍の頭ばかりとなりにけり辨當の煮凍あぶる火鉢かな煮凝の鍋にはなれぬ片身かな煮凝に强くあてたる焰かな煮凝や何かつましき妻を持つ鰈の尾や皿にへばりて煮凝れる煮凝や火燗德利の尻尖り煮凝のがばと取れけり鍋のなり煮凝で事足る酒や貧交行煮凝や埃の溜る貧の髭煮凝や酒なき時の顏白し煮凝りて叩く隣の木魚かな煮凝や世と我と相わすれ貝煮凝や先生いまだ湖海の士煮凍や鯛の目玉の光りけり煮凍につめたき腹や酒の燗煮凍や北に向きたる臺所鯛みそに天滿與力の寢酒かな鯛みそをなめて隱者の富貴かな添えて出す杉の小箸や鯛のみそ鯛みそや寒がゆるみて小雨ふる鯛みそや酒は藥に飮みにけり雪の灯や鯛味噌買ひに戎橋うかぶ瀨や雪の朝餉の鯛のみそ鯛味噌や木世肅か宿の客鯛みそや人のくれたる冬櫻納豆うつ音に客あり建仁寺納豆汁末世を語る僧古るしの部三〇一000竹花極十步老喜六左衞門八重櫻格湘碧梧桐瓦四同田士英同眉同同虛同同子竹小守水老碧靑裸同同露米峯雨囚浦舟花堂海全明月子規泉酒明楓木石靑香
粕狸卵茶碗蒸し蒸し鮓冬酒汁汁人妻の戀慕ゆゝしや卵子酒夜を羽織る絹の褞袍や玉子酒睦しき古稀の夫婦や玉子酒肉陣の昔語りや玉子酒著作者の身のおとろへや卵酒戀衣炬燵に掛けて玉子酒玉子酒纎手に炭を碎きけりそと吸うてあとを男に卵子酒浮世繪の屏風たてたり玉子酒ものにすねて妓やしたゝかに卵酒二箇三箇こつ〓〓割るや卵酒卵酒宵のたくみの外れけり卵酒古き戀よと思ひけり下戶ながら飮めば飮むなり卵酒讀書子の或夜の飮や卵酒小人の罪作るべし卵酒かぜ引の若き主や玉子酒ふるまはん深草殿に玉子酒卵酒陣中の冬ゆたかなり卵酒あはれ手足の雪燒にあれ聞けば千鳥なりけり卵酒自炊飯稀に溫かり茶碗蒸し蒸し鮮のわりなき雫こぼしけり蒸し鮮に後朝の酒啜りけり粕汁や煤竹賣りしはした錢粕汁に藁火疎しや雪の宵夜鴉の啼いて過ぐるや狸汁いさかいに賭場は崩れて狸汁けしき立つ寺の枯木や狸汁俳行脚木曾に泊りて狸汁雪國や焚火の鍋のたぬき汁崇るべき雲のけしきや狸汁尼に化けて戒めにくる狸汁狸汁壬生の小猿が遲參かな部三〇〇三〇〇蛇孤英鶯伯片十菊寒士靑觀化松奇句同子同同八重櫻西西白同冬靑耕銀千峰孤雨靑同句笏村山子洲水園太湖櫻々魚羊濱過佛規湖湖山史竹村軒六々佛
霰冬蕎麥湯生姜酒酒ぼつねんと業なき夜の蕎麥湯哉暗い灯に蕎麥湯をすゝる獨りかな筆を擱て又なき夜の蕎麥湯かな舌長き支考に蕎麥湯五器一具醫をやめてわび住む庵のそばゆ哉先生に蕎麥湯すゝむる鄙びたり假初の蕎麥湯で治る病かな山僧と碁に更かす夜の蕎麥湯哉俳想の虛に大食すそばゆかなそばゆ吸ふや翁の眉の豐なる蕎麥"むの搔きそこねたるそばゆ哉句に寒き腹あたゝむるそばゆ哉水仙に心閑なる蕎麥湯かな俳諧の膓ぬくき蕎麥湯かな草庵にそばゆの外は無りけり風呂吹はわびたり蕎麥湯鄙びたり湯が沸とさそくに出來るそばゆ哉この二日夜も筵織るそばゆかな懷爐入れて時立つ腹にそばゆ哉來て見れば只雜談のそばゆかな夜を嘆こつ老となりけり生姜酒風邪ひきて臥しゝ東坡の生姜酒こゝろむる小さき繪猪口や霰酒霰酒枯木に雪の散る日かな俳諧や時雨るゝ庵の霰酒霰酒飮むや木辻の小傾城十津川の貧に處しけり霰酒あられ酒妻が鮒燒く厨かな玉子酒深草殿に參らせん立琴の襖に影や玉子酒沖鳴るに寒き夜半なり玉子酒の部酒の世をすねたる樣の蕎麥湯哉貧にして賤しからざる蕎麥湯哉もの足らぬ心地嬉しきそばゆ哉三〇五觀浦眉活米巨得奇鬼八重櫻癖三醉竹同女同虚星山梔子蘆海若河芙蓉遠眞名女一同孤同同句同同碧梧桐同魚鳥月堂川遇史冷羊村佛子水仙魚翁水圃人雷
鍋冬湯豆腐燒湯豆腐や盧山の雪に夜を籠る湯豆腐の鍋をあげたる机かな湯豆腐や雪もよひ來る東山湯豆腐に母と小供と淋しけれ湯豆腐や小窓に迫る雪の山湯豆腐に五人男の胡座かな湯豆腐の冷えたらばいへ戀の事湯豆腐や茶の花の霜晴れにけり湯豆腐に淮南王を君知るや湯豆腐に枯菊の宿となりにけり湯豆腐に彼古火鉢出されけり湯豆腐や鴨川竹枝狂體に夕千鳥舟に豆腐を暖むる湯豆腐に如かんや一茶忌の夕豆腐煮てうまき酒食む師走哉三軒屋豆腐にかゝる散紅葉鍋燒や古行燈に風すさぶ濱町や鍋燒の灯に寒き顏鍋燒や主が猪口の癖久し鍋燒の火をとろくして語る哉鍋燒の人待顏や物の陰鍋燒や火事場に遠き坂の上鍋燒をわれ待ち居れば稻荷鮓難船の人を宿して蕎麥湯かな法師とめてかこむ山家のそばゆ哉粉吳れる隣もありて蕎麥湯かな人の來て共に蕎麥湯の茶碗かな腹の蟲暖まり鳴る蕎麥湯かな枯芒パツと燃して蕎麥湯かな僧坊の鼎を据ゑて蕎麥湯かな酒やめて酒おもふときそばゆ哉釜の尻榾火によせて蕎麥湯かなの部鍋燒の煽ぐ火花や雪の門暖かさう寒さう鍋燒喰ふ人三〇三鶯蝶雨童秋酒碧癖三醉同珂禾石裸井泉水靑薄稻珀竹の門同同六同子子同同碧梧桐孤水碧司同紅池衣六明人竹童花村巴童浦葉規規星黃人木嵐紅村雲
熊燒杉氷豆腐冬芋燒動雪かいて酋長待つや熊祭熊突や氷を渡る天鹽川人捕りし熊に鐘打つ人數かな酋長判官は蝦夷の神なり熊祭氷上に焚く薪あり熊祭燒芋や八ツ下りのお針部屋燒芋の行燈更けぬ辻の月燒芋や炬燵の上の戯文集燒芋の遂にはかなき氣焰かな燒芋に布衣宰相の共寢かな燒芋の皮と机上の句屑かな燒芋や己が句のある新聞紙燒芋やおすゑ集る御廣敷燒芋の湯氣に未來の抱負かな雨の日や芋燒くる待つ傘の人燒いもに天下を談ず書生かな燒芋やよからぬ酒をやめて後燒芋を買來る坂の下宿かな燒薯の水氣多きを場末かな燒いもとしるく風呂敷に煙立つ杉燒の比目魚鰈も知らぬ哉杉燒や表紙とれたる料理本杉燒をして宿もるや廿チ妻杉燒や吳山の雪を裏戶口切れば刄に氷豆腐の響かなかの月の雫が氷る豆腐かな湯豆腐や硝子戶冷ゆる松の雪湯豆腐も殘り少なに浮びけり湯豆腐や小鍋のせたる古團扇湯豆腐や趙州の僧の旅舍りの部物の娘美し熊祭三〇九溪桐一葉禪寺洞啞一月西乍可南瘤潮二一夢象萱靄繞同三同子龍露同靑木東洋城光水禪轉舟耕人山可骨花星聲草人石允規骨石々母雪拙き外
冬の鹿狼猪冬冬の鹿孤なり北斗の影冴て吹雪く樹の蔭へ廻るや冬の鹿狼の肋にさはる尾花かな月低く狼立つよ岩の角狼鳴くや命まうけて驛の宿狼の糞すさきじき山路かな狼に備ふ火繩や榾の宿狼の落し穴ある落葉かな狼や枯野の月に餓を泣く狼が泣く子食はうといふ夜哉狩暮れて狼よけの焚火哉狼や十三峠草鞋喰ひ狼の小供さらふや山の町狼に火繩が消えし怖れかな狼の呼びかはしけり枯木立狼のなく時峯の月白し狼の聲に煮え立つ鍋のもの捉へたる狼吼えぬ麓茶屋月凄く狼の聲しわがれし峯の寺狼吠えて雨夜かな狼に夜は越せざる峠かな狼の落葉に物をあさるかな猪や爐に茶をいぶす山の宿躍り出る猪に風立つ野中かな猪狩や鷲尾が宿は下に見ゆ猪鍋や大刀を脫いて傍に手負猪範賴が墓倒しけり隣國の森に逸しぬ手負猪猪の月に牙磨く木の根かな山驛や松明焚き立てゝ猪屠る木の葉降る冬を機嫌や檻の熊蝦夷弓の毒のうめきや穴の熊熊突や雪の會津の山續き熊二匹木枯の車上悲めりの部三一一無松鶯堇兎樂三句之都空醉坡一稻柑別天樓格紅鳴子同同句藍鵲蝶牛霽同同靑大師隈綠草子黃宇池湫子堂寅々佛上轉靑子堂綠雪規佛雨巢衣伴月嵐我竹水
鷹鷹暖め鳥冬狩鷹狩や勘當ゆりし小侍鷹狩や豫陽の太守武を好むたかの餌を承るや小百姓幕張りて鷹野の末の御座所哉御馬前や鷹据へて立つ美少年空の鷹柿の群雀を恐れけり据へ鷹の太〓に燃ゆる夕日哉笹深き水に鷹野の點茶かな据鷹の胸毛を煽つ嵐かな朝風するどき鷹の眼かなの部大空に一鶴白し鷹はやる白鷹の蒼穹を行く日なりけり床の間の墨繪の鷹や松活けん荒神の御崎の松や鷹の飛ぶ外れ鷹を追ふ人遠き枯野かな雪飜して笠の頭上を鷹速し鷹すゑて畷をすぐる人數かな思ひわびて放す夜もあり暖鳥冬の鹿淋しき奈良の日中かな雪晴て鶴鳴き渡るたか野かな荒鷹を飼ふ甲斐が根の小家哉渡りかけて鷹舞ふ阿波の鳴門かな鷹据えて人態ひ居る野茶屋哉はし鷹の拳はなれぬ嵐かな玉の〓のたえ〓〓明けぬ溫め鳥溫め鳥一樹の蔭の明け放れ暖め鳥かの唐土の肉屏風ぬくめ鳥凍える時が夜明かなぬくめ鳥夜の心をちゞめけり亂峯を下に拳やぬくめ鳥比叡寺の圓の杉やぬくめ鳥枯原や夜のほの〓〓にぬくめ鳥地はひろく人稀にしてぬくめ鳥霜飛て山本ゆゝしぬくめ鳥三一三稻子稻素喬農可芹案刺石百初八重櫻六寸碧梧山里靑規靑川嶽生成雨子栗鼎庵聲花陽桐松同靑子春吾同同東洋同黑子水皐千同同同山里洲規濱棹空里城々規波
笹隼冬鳴笹啼に遠山晴れや八幡道南天に笹鳴くを聞く佛間かな笹鳴くや石の下行く笠置山笹鳴の雜木林や富士を見る笹鳴や蕗の薹はえて二つ三つ笹鳴や花漬を賣る山の驛笹鳴や靜かにかゝる峰の鐘笹鳴や灌木圍む岡の家笹鳴や韻を重ぬる閑居の詩笹鳴の窓下繙く梅ごよみ部鶯子鳴や落柿舍を出で一二丁笹鳴や伊賀の山越松の中笹鳴や繩にかけたる兒の衣霜掃けば鶯の子がうしろ飛ぶ笹鳴に瀧の〓は放れけりさゝ鳴や貢の氷魚の皆活る笹鳴にわざくれ人の斧鉞かな笹鳴や故人こもりし草の堂さゝ鳴や麓路とりし山表樓臺の下木原なりさゝ鳴す笹鳴や去つて息はぬ比叡の僧大佛やさゝ鳴を見る二三日山道の馬糞日和や笹鳴す笹鳴や泉の見ゆる垣の内臥牛石笹鳴く籔がほちとある山番の蔓草編むや笹鳴す笹鳴や靑道心の日和下駄隼や牧場にとなる栗林隼の物くふ音や小夜嵐鷹狩の山秀づ國の大守かな鷹狩や甲斐の黑駒いさぎよき鷹狩の人數見え透く木立哉治まれる五十四郡や御鷹狩鷹狩や侍通る小村かな三一五三一四雨蕪松守初乙鳴一六同靑同碧梧桐同同散木庵同濤水花々字州雪樓老聲轉六花溪樓十九模素霜鬼象蝶八波麥別天樓橡五四重東洋露同泉川城外衣櫻靜人面坊工明城月濤水字州雪樓老聲轉六花々
木各兎寒苦鳥木兎に紙衣着せばや雪ぐもり木兎や闇這ひ渡る山の鐘木兎の目に入相の鐘や山寺の灯木兎鳴くや夜學の灯見ゆ三田の山木兎の膽は眼があく藥かも木兎に手拭貸さん月の面木兎は頭巾着たよな鳥にして寒林や木兎人に驕りたる木兎の眼のまじ〓〓と晝〓〓ぬ様よ落葉踏む夜路淋しや木兎の聲木兎や夕看經の鬼子母神風晴れの雲散る月や木兎の鳴く晝木兎の連れ鳴きも聞く關屋哉木兎に似た僧ばかり山の寺叡山の夜は嵐や寒苦鳥淨境の葱枯れたり寒苦鳥仰ぎ見て孤峯の月や寒苦鳥笹鳴や日南に枇杷の花匂ふ笹鳴や石蕗咲く庭に日の當る笹鳴逃げたり手鞠の如く三十三才笹鳴や夫子が裏の茶の木原藪ちよんの來て鳴きにけり霜の花笹鳴や溫泉の氣にこもる谷の村杣どもの時なし飯や笹鳴ける笹鳴や芒枯れたる茶の木原梭の音や笹鳴く中に暮迫るさゝ鳴や築山蔭の小さき宮笹鳴や江に沿ふて行く藪の家笹鳴や飛橋の下の八重葎溫泉の道や笹啼き晴るゝ小松原笹啼や造林の山芝刈す山ひだの森揉む風や笹鳴す笹鳴や韮粥すゝる朝の坊笹鳴や蓆垂れたる江の小家の部三一七三一六瀾同麥同三稻敬蛇靑松瓢眞名文滑四漁霞綠二同同同癖三醉禪寺洞其ゆう〓〓同左衞門同同啼夢小白雨水人允靑水筆酒聲樓石學湖央濤綠樓子壯溪郞星
梟冬梟の鳴く裸木や月冴る杉山や梟ないて月低き提灯へ落葉時雨やふくろ鳴く監獄の裏で梟啼きにけり城山や風ふくろうの聲を吹く木○瘤の梟の影の月夜かな松明に沼の廣さやふくろ啼く梟やうしろに出る峯の月梟の眼に冬の日午なり梟をなぶるや寺の晝狐梟や宗益酒に鴆を盛る五郞助が鳴くよと慰かす泣く子哉梟や靈木斧に血を流す臆病な吾れに木兎啼く暗さ哉木兎や木々に暮れ行く山番所木兎鳴くや雇はれの身の夜學問木兎や寒垢離去つて宮の森の部三一九木兎や吳子胥の眼汝か盜む木兎や臘月の夜を砧打つ木兎の聲煮物の凝る夜なりけり寢酒せぬ枕の冴えや木兎の聲木兎鳴くや茶店出したる軌道守木兎や野寺の灯明滅す木兎や鴉にさらす晝の顏風が磨く月の光りや木兎の聲木兎や枝ふみ外す夢にさめん木兎は尾上に耳を立てにけり木兎や杉の闇より杉の闇月影の木の股の木兎耳振りぬ夕月や木兎の眼に仄かなる大悟せし木兎の姿や晝の月木兎の智惠猿にとられし昔かな夜嵐や木兎の佛頂面を吹く木兎や六十一の赤頭巾三一八好麥雉子仙春靑露虚同鱸映裸繞靑瀾八重櫻鳴竹眉壺雷白櫻醜子兎蝶同死紫子久山子江樓木衣球石々冷月水子同同幽十靑瑳句鬼二二死翠天郞臥二嵐月子規山樓霖樓蔦月水
鷦冬鷯冬の雁垣を結ふ菜畑見に來ぬ鷦鷯南天や庭の隅々みそさゞいから〓〓になりし畑や三十三才八つ手葉の雪雫すや三十三才三十三才竹四五本の小庭かな厩の中に藁の中より三十三才霜とけぬ庭の隅より三十三才山水の蕭條としてみそさゞい味噌桶のうしろから何處三十三才物あればすなはち隱る三十三才菜屑などちらかして置けば鷦鷯汐沸かす磯屋の風呂や冬の雁積藁や廣田に遊ぶ冬の雁因人が耕す畑や冬の雁陸奥の田に雪を見ぬ日や冬の雁蘆の芽を足掻き起せや冬の雁寒雁の聲薄苦にこたへけり部三二一寒雁や玉壺の酒のありやなし寒雁の聲客船は絕えにけり藁塚の伏水遠し冬の雁澤涸れて野とも見ゆるや冬の雁寒雁や花の宿りし木のからび冬の雁井波の社中訪ふ日かな荒に來て風に見えずよ冬の雁枯蘆の風强く冬の雁が居る冬の雁落つ湘南の長沙かな梟や女人歸しの峠杉灯せば土間の梟の動きけり梟の晝つれ〓〓の目玉かな梟鳴くや風に危き厠の灯盜人が盜む戶に聞く梟かな風呂屋出て傘借る里や梟啼く梟や森に陷る梟の呼ぶはむくつけ法師かな三日月同碧梧桐同同八重櫻同同寒同同子雪蘇秋扇蝶八重櫻樓規溪坤双車衣蛙六碧梧桐〓同眉雪村奇枯師同同雪桂乍紅虎山亭花水月人樓家人露杖志樓竹山樓水月人樓家人露杖志樓竹
千掛鳥鳥鵠の巢冬川千鳥家も渡しもなかりけり掛鳥の狸かくるや竹靑きかけ捨てし鵲の巢の鴉かな松黑く鵲の巢や冬の月鵠の巢に近く塔の足場かな鷦鷯塀の小穴をくゞりけり三十三才雀と遊ぶ日和かなみそさゞい大竹原の雪霞三十三才味噌越罠にかゝり鳧葺きあへぬ萱の穗風や鷦鷯妻木とる某尼やみそさゞい鷦鷯籾磨る人のうしろまで種伏せる藁床の雨や三十三才鷦鷯鳴くや沼田のやれ生簀鷦鷯落葉掃捨つ折戶かな九太夫の頭を叩け三十三才底ぬけの桶くゝりけり鷦鷯の部鷦鷯牛の寢藁に遊びけり雪隱より肥桶出すや三十三才鷦鷄茶の花垣をくゞり出づ捨て水のやがて凍るや鷦鷯用に沿ふて小藪の道や鷦鷯三十三才枯菊拔きし土の窪鷦鷯は迯げて柴戶の月白し廣芝に涸れし泉や三十三才鷦鷯〓萱たわし飛びにけり朝顏の枯蔓すてず三十三才鷄にまく米にはよらず鷦鷯橘の掩を出たりみそさゞい番一荷かけ古したり三十三才三十三才五家山莊の米の汁山住の鍋に飛入るみそさゞい庭にこぼす十能の火や鷦鷯大寺や庫裡は人の世三十三才の三二三子靑笑香同靑峯女月月櫻醜子握未城北初幽鶯水梅規な堂居斗月城央郞聲火子村鶯古泊孤井梧松蝶不六靑三同眉同彩同虛泉喚規な堂拙月島水月濱衣樓花々允月雲子
冬月天に光れる星や浦千鳥林檣に月夜鴉や遠千鳥遊び女のより來る船や小夜千鳥小夜千鳥端島へ通ふ小舟かな川風に提灯消えて千鳥かな寄する藻に戀々となく千鳥哉鳴く千鳥月の汀に玉や撒くうつ波につむじつくるやむら千鳥洲の崎の松は時雨て千鳥かな消えがちに減る漁火や鳴く千鳥引汐に動かぬ船や遠千鳥蟹の穴ふみけす磯の千鳥かな舟出でず雪になる夜の千鳥哉逆汐の入江の松やむら千鳥苦流す客の粗忽や群千鳥流れ砂はや洲をなして群千鳥鳴くや千鳥江口の君の袖香爐桑木焚く里の泊りや川千鳥夕月の川瀨に寄りし千鳥かな磯風のから田渡りや鳴く千鳥友舟の泊り離別れぬ鳴く千鳥群れ千鳥浦人のいふ御殿かな島の灯の隱るゝ波や飛ぶ千鳥宇治巨掠千鳥の闇の廣さかな瀨の音の氷らで更くる千鳥哉蓮步一步移れば裾の千鳥なく千鳥鳴くとあるや假宅繁昌記浦風の帆の朝影や飛ぶ千鳥妓は皆舸夫を情人や小夜千鳥二三軒戶口堅田の千鳥かな此町に千鳥きこゆや長のれん加茂川や郵便函になく千鳥夜食する船乘どもや浦千鳥滿汐や〓盛の塚に千鳥啼くの部三三五同石同稻同蝶同同孤射同同靑同同同同八重櫻同同同同同靑乙同同東洋城同同六同同子字花々鼎靑衣軒石嵐字花々規
冬のの小夜千鳥寢酒の耳の冷かに大漁衣を著し女房やとぶ千鳥油さす夜半の水車や川千鳥蘆の洲に打込む汐や飛千鳥階前の砂濱走る千鳥かな歌屑と思ふ名歌や鳴く千鳥磯行けば與の戶近き千鳥哉引汐の泥や千鳥の橫ありき船に來る妓も聞き馴れし千鳥かな月を碎く磯の怒濤や啼く千鳥千鳥啼て浦の名を問ふ船路かなはらからの妓が遇ふ夜の千鳥哉沖荒れて鹽田の上や飛千鳥千鳥啼く潮來に宿る歌聖千鳥皆磯に吹かるゝ男波勝出る船に走り使や群千鳥小夜千鳥毛刺が船の酒宴かな部鯨骨に千鳥啼く夜や浦白し海荒れて街へ一夜の千鳥かな江の宿の雪の曙千鳥かな木屋町の寢ぬ灯慕ふや川千鳥漁火の稀に夜明の千鳥かな船ゆるゝ瀨戶逆浪や鳴千鳥友千鳥鴉に遠く遊びけり雜貨船島に着きけり磯千鳥何喰ふて千鳥襖にふとりしよ磯千鳥松かさ焚いて話しけり俊寬の枕流るゝ千鳥かな荒浪に千鳥高しや帆綱卷く島の溫泉の障子羽ばたく千鳥哉足もとを千鳥たつよな住居哉啼きつるゝ千鳥や鮑むきつるゝ蛸掛けの唄慕ひ來る千鳥かな月の雪松をこぼるゝ千鳥かな三二七同未同松虚竹同守水老同同同同蛇同同央濱一石碧露鳴霞同士古蛙醉橡霽旬露碧梧桐同櫻醜子同面面泉坊佛坊月童佛石雪月溪櫻面面央濱子冷笏轉鼎溪櫻
冬沖鳴りを近しとも聞く千鳥哉島風の洲つゞきありく千鳥哉夢去て閨に千鳥を聞く夜かな渡海屋の知盛にとぶ千鳥かな磯畑の菜の葉食み去る千鳥哉打上げし汐木に群るゝ千鳥哉寄す波に走りては立つ千鳥哉洲に迫り來るさし汐や寄る千鳥千鳥啼くや島はなれ行く貢船千鳥淋し捨てしが如く蜑の墓磯寺の午の講義に千鳥かな水樓の灯をひく頃や啼千鳥漁火に長き岬や鳴く千鳥火を起す音吹きやめば千鳥哉さめ易き濱邊の風呂や鳴く千鳥難船は岩を離れず千鳥かな鳴く千鳥錨しかへて舟がゝり濱千鳥逆卷く波にかくれけり浦千鳥船路に恙なかりけり打よせし松葉踏みなく千鳥哉水筋の夜空あかるき千鳥かな笹の雪を拂ふ川風夕千鳥滿汐に押されて來たる千鳥哉七浦の隈によりなく千鳥かな荒波に衞や夜着の裾模樣由良の門や夕浪黑く千鳥鳴く浦人の早寝早起鳴く千鳥飛ぶ千鳥懷紙を空に散しけり吹き風ぎし磯の日向に千鳥哉千鳥悲しこのごろ痛む右の肺海樓に千鳥聞く夜や霜の鐘千鳥啼く京は皷の先斗町汐入や千鳥も來鳴く濱屋敷小夜千鳥遊女に墨をすらせけりの部三二九樂不喚樓霞仙春靑秋稻橋橘虚塵兎百日紅歎瑳句樓醉宇極松濤樓魚爪竹里蘆瓢樂白水默蜃菰小波山翠臥潮枝人水城樓明山子水紅宙浦鱗靑子靜生綠堂山巴々樓堂波靜
鶯鷗都冬鴦鳥をしの池關帝廟のうしろかな水絕えず霑す岩や鴛鴦の池王侯にをし賣らず答ありや無し水にをし雙ツの峯の吹き下ろしをし鳥を養ふ里の吳服屋よ水にをし寒鯉取のもどり足をしの〓に加へんと思ふ牡丹哉梨壺の歌の會ありをしを題王母の沓化して浮くなりをし番ひをしの詩に次韻かしこき老夫哉籠中にをしを幽する愚かな枯庭や主人が沓とをしの沓古池の鴛鴦に雪降る夕かな人間のやもめを思へ鴛鴦二つ鴛鴦の向ひあふたり並んだり船宿の朝戶にちかき鷗かな瀨も見えぬ吹雪に狂ふ鷗哉の鷗浮く鹽濱の風見る日かな都鳥竹屋を寒く流れけり忍び來よの迎ひの舟や小夜千鳥水や空千鳥見る目に餘りけり史疑こもる浦波たゞに千鳥飛ぶ寢てまちよる松川宿や千鳥鳴く山川の高波に飛ぶ千鳥かな月呑みし逆浪を飛ぶ千鳥哉紅閨の裾に通ふや川千鳥あと船の人を寢て待つ浦千鳥千鳥啼く加茂の上瀨や雪おろし夜網引く篝にむるゝ千鳥かな暴風にさめぬ灘の千鳥や松の下瀨嵐に庭木は枯れて千鳥來る小夜千鳥女も買はず泊り舟風垣のくらがりに鳴く千鳥哉覺め易き夢の裾鳴く千鳥かな部三三一同同射同同虚同同一同同靑同子同同同六雨はぎ女柑寒桐泊稻小鶯握伯夢著雷死久壺素石明蓑々規花六子山舍雲郞酒子月洲筆森蓮泉
冬鴛鴦や入江の雪の蘆隱れ鴛鴦や高尾の部屋の小つい立鴛鴦の繪の極彩色や無落欵振袖に抱くやをしのクヽと鳴く鴛鴦飼うて朧に住むや草館蘭燈の細りて鴛鴦の衾かな翠帳の鴛鴦古びたり唐錦紅閨や鴛鴦美しき金屏風閨怨の鴛鴦百題を盡しけり隱れ田にいつ來て鴛鴦の番ひ哉をし二つかたみに見ては飽ぬ哉鴛鴦や古き都の水の月をしの夢さます月夜の霰かな石の上に鴛鴦ゐて雪の池丸し鴛鴦に散る紅葉かな蒔繪かなはなれ鴛鴦汀の人を親しげにをし鳥や枯木吹ちる水の上の部さゝ波や岩により來る鴛鴦二つ都府樓や鴛鴦なく池の雪明り銀燭に照るうちかけの縫の鴛鴦降るものに雨は佗しや池の鴛鴦鴛鴦二つ寢て居る雪の芝生哉をし鳥やちる花もなき池の上をしの番片しは水に浮びけり鴛鴦や古江の朽木とり暮るゝ山茶花の根に片々やをしの沓水にをし茨の中に小家建つ雪のをし夢想國師に贈りけり鴛鴦や戀々として顏を寄せ琴の音やをし鳥眠る池靜か旭さす渚に鴛鴦の羽搔かな後朝をつらいと鴛鴦に見られ鳧をしどりや水に傾く松柏鴛鴦一つ失せし王妃の愁ひ哉三三三三三二瓦將三柿零華華靑洛燕馬士蝶柳堇露東洋同山餘全壯餘伏子居邨餘嵐太櫻衣家波城石露同錦同水蜃同鳴同巨同同六同同象同月村巴樓球ロ花外
水冬鳥水鳥や浮み出ればはしの魚水鳥や日の照る雪の中禪寺水鳥や日和のすはる島二つ水鳥や網場定むる松が崎水鳥や唯の田舍の向島水鳥と小舟ゆらるゝ波濤かな日たゞ我れ水鳥群るゝ巖に立たん水鳥や這松すべる底の池水鳥や樓より捨る花の屑水鳥の輪つくり並ぶ氷かな水鳥に住むや今戶の一借家水鳥や小村も見えて陣の外水鳥に近き端居や長配亭水鳥の鳴く時城の夕日かな水鳥にキー〓〓と鳴る艦臍かな水鳥に池廣き庭や舟も浮く水鳥は近江の空を領しけりの部三三五矢は水に入る水鳥の別れかな水鳥に松明照らす夜の人水鳥や菜屑につれて二間程鴛鴦賣つて源琦が美人得たり鳧鴛鴦や雪の松影水にありすきものゝやもめ男やをしの番鴛鴦に小さき池もつ花屋かな山颪蓮の中出る鴛鴦二つ鴛鴦や春は花折る一ツ寺紅葉散る古江に鴛鴦の來初め鳧陰麗華陽麗華鴛鴦の二つかな鴛鴦に落葉くゆらすや日每〓〓水にをし眠れる山も高からずをし馴れて水の栖にたのみけり鴛鴦見えて雪晴るゝ江の碧り哉鴛鴦に朽ち行く杭やまのあたり思ひ羽に少し風ある汀かな同八重櫻六同同東洋城同淺同同松同同碧梧桐同同三花茅濱琶夢飛小竹の同同子水吼鼓雨蛇木田左右亭死規翁生竹樓山湖皮湖舟士英雨洒門洒の華花茅濱允山
冬水鳥に小雨の橋の高きかな水鳥の皆沈みたる水輪かな水鳥や野守が宿の作り池水鳥や舳から流す料理屑水鳥や尾高に見ゆる浪頭水鳥や運河の中の舟溜り水鳥や闇折ふしの羽ばたゝき水鳥のあとかたもなき怒濤かな水鳥や水せきとめて往める家水鳥のかたよる湖の嵐かな水鳥の胸に解けぬる氷かな水鳥の中分け行くや矢走舟水鳥や渡の舟の京女水鳥や鵜殿の蘆のほの見ゆる水鳥や沼の名を呼ぶ村孤つ水鳥の射よげに見ゆれ森の池水鳥や砦の方に船行かぬ水鳥や留守番のみの冬の莊水鳥に代官驅る即かな水鳥や櫨の枯木の漁戶に寄る水鳥や朝日を拜む船の窓水鳥や藪に入りこむ湖の隈水鳥や新米の餅に上る黴水鳥に與からぬ鵞は汀かな水鳥や枯木の曇り山を見ず水鳥やうろ〓〓舟の日和顏水鳥や廻廊の繪馬に負く人橋守の水鳥を釣るたくみ哉流れ出て水鳥泳ぎ戾るなり水鳥や淡路にかゝる時雨雲人聲に立つ水鳥やこやの池水鳥や千早の城の木戶の內水鳥の凍りて石となりぬべしの部水鳥や霜に明け行くみをつくし三三七露黃柚子士迂龍眞薰小洋霽露柑彩城北郞鬼碧梧桐得牛射花烏喟月波普無靑同同同同虚山 梔子一子櫻外城月雪城川步石浪人然酒々舟靜月羅黃石々子雲蓑明
冬浮寢鳥大銀杏どつと散りけり浮寢鳥水車へは行かずの水よ浮寢鳥水にうつる夕燒雲や浮寢鳥雪折の蘆に月出づ浮寢鳥光琳の波に丸みや浮寢鳥浮寢鳥神泉苑は荒れにけり月の夜の水の鏡や浮寢鳥倒れ木のある水澄めり浮寢鳥浮寢鳥凡そ人の夫婦かな峰の雪を射る旭に立つや浮寢鳥浮寢烏谷地の枯藺のふすま哉烽火待つ湖南の民や浮寢鳥水鳥の泳ぐでもなき浮寢哉內海になだらぬ島や浮寢鳥居處や水のまに〓〓浮寢鳥思ひ羽の霜にさす日や浮寢鳥水際やこゝにも番ひ浮寢鳥の部三三九御社や庭火に遠き浮寢島鴛鴦の二つ並んで浮寢鳥浮寢烏平入道の天下かな水鳥に流るゝ船の焚火かな水鳥の尻の逆毛や風寒し淋しきもの若き汝と水鳥と水鳥や水をくゞりて水の上水島や浪打ちかぶる離れ岩水鳥や焜爐燃えたつ泊り舟水鳥の列の舟橋すはりけり水曳いて立つ水鳥の嵐かな水鳥のとびのこりたる一羽かな水鳥や人なき樣のかゝり船水鳥や翼の眞白嘴の赤水鳥や平家の夢のさめやすき水鳥や蘆に凩吹きつくす水鳥や火焼の夢の桂川の普田橡未竹霽裸乙東枴海格靑淺碧梧桐同同士面の洋王羅英坊央門月木字城童茅星堂々同同子牛黃炎香漁村白櫻梨鬼漂拾竹逸京の洋王々規詰雀凉居莊家水子雨水舟翠山奇
ノ鳥寒寒冬雀鴉石山に鐘つけば鳰沈みけり水を出でゝ空見ては鳰の水に入る雪晴れの鳰見る人や湖畔亭橋際へ流れて來たかかいつぶり江を翔る鷹に嵐やかいつぶり雪に伏す池邊の篠やかいつぶり鳰二つもぐり〓〓て離れけりかいつぶり一つ沈めば一つ浮く餌を養る鶏に交るや寒雀梅林を守る小家や寒雀海からの旭に飛びにけり寒雀積藁に夜每寢るなり寒雀寒雀名草は枯れてしまひ鳧寒雀櫛の齒に似し永柱かな授業始まるまでの甍や寒雀雪晴や孝子の宿の寒雀桑畑を別墅の松へ寒雀寒雀鶺鴒よりも寒きかな寒鴉村雨堂の松の木に松林に又朋追へり寒鴉rb猪突に山暮れ易し寒鴉草の戶の串魚ぬすむ寒鴉暮るゝ野を馬車は町さす寒鴉ばさ〓〓と棕梠にとまるや寒鴉湖に映る離宮や浮寢鳥陸行の勝地を舟や浮寢鳥雲の影うつる湖心や浮寢鳥城壁の根に染む水や浮寢鳥入海に處々の簀立や浮寢鳥四山やがて雪となる湖や浮寢鳥廣澤や山をうしろに浮寢鳥風土記に橋の名殘る浮寢鳥利根川や船の絕間の浮寢鳥日は落ちて黑きもの皆浮寢鳥の部三四、三來白子同師稻堇零餘子秋鹿康士虚寒山秋竹石ゆう〓〓翠柿山伎虚八重櫻同得未子醉東洋城八白蝶如雨露餘布山規竹靑山哉堂央瓢佛子湫鼎山衣霜語人櫻靜星外皎泉
中冬浮島の雪の夜明や鴨の聲岩多く鴨多く糞の岩白し茨の實へ池の日去りし小鴨かな打ち止めし鴨遠く浮く汀かな鴨鳴や水に親しむ亭の燭鴨鳴くや池の面に立つ水煙鴨鳴くや首筋寒き舟の人鴨飛ぶや月の出潮の一ト嵐沼の鴨にいにしへの月や町灯る背水の陣を敷く夜や鴨の聲鴨鳴くや折れも盡さぬ蓮の莖鹽濱に近き刈田や鴨下る鴨なくや木の間にみゆる砦の灯爼板にほどく鴨ありランブ釣る鴨鳴くや鐘に暮れゆく江の南餌蒔して鴨場夜每の聲音かな靑竹に鴨を荷ふて通りけり夜明驛の窓に展べたり鴨の沼鴨獵や沼たのもしき佐倉領山門を入れば鴨鳴く池廣し鴨飛んで枯蘆の穗の水を拍つ小舟行く夕日の沼や鴨遠し鴨の聲江の眞中に月を印す群れ來ては溢れてかへる鴨場哉鴨下りる池を抱へて別墅かな雪の日の鴨場の御獵せられたり鴨鳴いて立んともせず打群れて初鴨や蘆の浪花に入る徑初鴨のふわりと浮いた姿かな内濠に小鴨のたまる日向かな一つ家に鴨の毛むしる夕かな鴨鳴いてともし火消すや長配事妻木きる澤の邊寒し鳰の聲山影や鳰沈む水に痕もなしの部三四三三四二同竹同同子四暮蠖錦花李松膝稻可水紫鬼菱靑大碧虚同同句同同碧梧桐同一雷死久竹の門六堂水囚村塘六風月巴茗星城花花々我童子佛冷規子情
河鰤冬豚杜夫魚腹の友皆純友に黨みしけり河豚食うて塾を破門の昔かな河豚くふて尙生きてゐる汝かな河豚も食はで安き思ひや冬牡丹迎飮やよべ河豚汁の餘勇あり虎と呼んで河豚の背中の斑なる河豚汁や門にイむ最明寺烏羽玉の間や河豚煑る宿あらん河豚鍋に魂入りし寒さかな河豚叫ぶ逢魔が時の厨かな河豚鍋や鬼の開きし焜爐の戶此浦や河豚に殘れる憂き話部寒月に河豚さいて身の白さ哉鰒の毒一人は天下望みけり河豚食ふて北狄王となりにけり河豚鍋や惡鬼爐尻に火や煽ぐ島守の精進落や河豚汁河豚褒るはらわた黑し呂太后曲解す遊俠傳や河豚の宿韓信を市に罵る河豚かな河豚くはず柱に膠したりけりふぐ洗ふ女を見たり草枕來年の事を言へば河豚が笑ひ鳧鰒生きて腹の中にてあれるかな河豚で死んで蓮の臺に生ればや鰤の腸に醉ひぼけし鶏や霜の朝灯ともして鰤洗ふ人や星月夜鹽鰤にしろき花ちる厨かな山茶花をさしてあるなり鰤の苞杜夫魚を釣り得て叩く師の書屋杜夫魚のまうけ少きたつき哉鴨飛ぶや庵崎かけて灯のともる寢そびれし鴨泳ぎゐぬ月の下鴨一羽水田の月を領しけり湧三四五同六同虚同同鳴同同櫻醜子同同蝶同同師同花子雪同靑同同靑同同子呂子同靑柚子如樹泔花子雪衣竹嵐々規柚規々翁規山人涯
冬鰒喰ふてかへれば暗き我家哉座にありて食はざる啞や河豚汁つきつけて鰒に剛臆ためし鳧河豚も食へ後生も願へ南無阿彌陀玉の〓の河豚の友垣結びけり魯に大に諸侯を會し河豚汁河豚汁の座にある地獄太夫哉河豚汁の酒は煮えくりかへり鳧母ありて河豚汁食はぬ一人哉蒲團著て河豚汁の座に列しけり河豚鍋を洗ふて藥煮る夜かな瘡落ちて飽くまで喰ふ河豚かな鰒喰つてあしたなき世と遊び鳧不知火の闇に舟あり河豚汁鰒の客夜行する鬼の一鬼なり腹中の鰒が豪語に出づるらん河豚斷ちし晩年の相圓なりの部河豚食ひし人の欠伸や狐啼く豆河豚の湧きし間もなく浪高し河豚盡きし箸に燭剪る雨夜哉寒燕河豚釣る我れに鳴き叫ぶだまし雨庇を鳴るや河豚の宿魚形の大判誰ぞや河豚の文帆を敷いて廣し河豚の座なりにけリ河豚汁のそれより破る願酒哉河豚食ふてやゝ腹痛む夜半哉肴屋の命請負ふ河豚かな腹を喰ふ戶に當りけり小夜嵐鰒好きの當年古稀と呼れたり鰒食ふて前後も知らず寢入り鳧ふぐ食ふて腹こそばゆき一夜哉病は氣から鰒などたんと召さるべい鰒喰ふとざれ言いふや妻の前河豚汁一人は逃げてしまひけり三四七彩壺銅田鬼紫景露不喚樓一三同松濤樓同一同寒士雲桐牛英養轉史影春允月山眉香梧同稻橡同竹同紅同古同同同同八重櫻面月村月靑坊冷綠泉面山月村月靑坊冷綠泉
鮟冬〓鰰の淡きに大根しぼりかないさゝ舟見えつゝふさぐ北の窓紗買ひに去りしをの子やかた便り鮟鱇や梁低き魚の店鮟鱇の口もさけよと怒かな放論の口鮟鱇に似たるかな鮟鱇の腹見えすきし愚さよ鮟鱇の矢庭に煮えし烈火かな鮟鱇の腮からぬけて物忘れ片そぎて鮟鱇つるす錨かな鮟鱇鍋義齒も落ちて煮返る鮟鱇下げし古き宿屋に泊りけり鮟鱇の口に吹つこむ北風かな鮟鱇鍋箸もぐら〓〓煮ゆるなり鮟鱇の口ばかりなり流しもと鮟鱇を吊して價誇りけり鮟鱇の口から下がる臟腑かなの部河豚汁や板戶に寒き磯嵐河豚汁にはんぺる啞の僕かな鰒提げて行くや玄海灘右衞門河豚好む隣憎むや最合井戶侍の河豚かくし行く合羽かな三毒の奴と生れ河豚汁河豚喰ふ天下無用の男かな河豚鍋に雪雷の鳴る夜かな枯菊に裸火寒し河豚を割く河豚喰ふて死なれし人の庵哉河豚の珍北山醫話に價かな割鍋のとぢ蓋の妻や河豚料る河豚食うて祿盜人を譏りけり河豚くふて四百四病の外に死ね人が皆死んだら河豚の天下哉河豚の座に女交れり夜の梅河豚食うて來ぬ友訪はん市の月三四九琴同靑乍告碎西柑著一蝶狂大同虛同鳴三四八可弓逸梅好はつ女山佛一死觀九萬字花樂鶯山梔子碧川々人水來湖子森樹衣浪羽子雪祝月人影翠樓丈呵洒魚浪南子童
鯨冬荒浪に卷出る沖の鯨かな松原の建物捕鯨會社かな鯨吼えて大北風吹く汐黑し鯨賣みるめの衣著たりけり磯寺や鯨の供養鉦が鳴る異浦の鉛受けて居る鯨かな七浦の旗七色や鯨曳鯨食ふて鯨の大を知らぬ哉傷負ふて鯨潮吹く夕日かな鯨とりしあとの高浪に小舟かな水葬や鯨が吼ゆる湖曇り鯨船今日も歸らず海くれぬ海國の果報男やいさな取遠卷のふりかはりたる鯨かな鯨〓ゆる凩の海雲赤し室に鯨の句を案ずれば池の躍る鯉の部沖遠く鯨潮吹く日和かな鯨突く熊野の沖や雪催ひ水軍の兵氣あがるや鯨汁荒浪に赤き幟や鯨舟漕ぎよせて鯨にせまる小舟かな鯨突き裸は輕き命かな鯨吼る朝鮮海や夕間暮鯨追ふて瀨戶漕ぎ越すや十挺櫓鯨割く血潮三叉と流れけり鯨浮くや陸地と見たる島添ひに滿潮の鯨にかけし梯子かな天草の料理にしたる鯨かな銛主の御幣いたゞく首途かな法螺の音出船になりぬ鯨舟鯨汁しばらく勇を養はん大きさも知らず鯨の二三寸百艘の舟にとりまく鯨かな乳呑齒に嚙む鰰のぶりこ哉三五露霧萩樂雨活八嵐山零餘子銀干蘆螢士孤雨初皎堂郞南竹堂湫梔子舟峰月雲肖軒花聲擧竹虚碧梧桐同子紅同九日庵同同同同綠冷子規川柳碧一句轉家佛童綠冷子規川
乾鱈氷鮪冬鮭魚乾鮭や小鼻大鼻曲り鼻乾鮭に御して渡海の心ざし乾鮭は魚の枯木と申すべく乾鮭は貰ひ密柑を送りけり老僧は人に非ず乾鮭は魚に非ず鹽鱈や厨に落つる富士颪鱈舟の鱈に雪降る戾りかな鹽鱈の世はせち辛き世帶かな鹽鱈に霰たばしる夜市かな鱈舟や浪と吹雪ともめる中鱈舟に夕べの浪のうねり哉鱈汁に飽足る江戶の旅籠かな鱈舟の浪楫帆楫合せけりあの山とこの山据えて鱈場哉玉階にすゝめて美なり鱈の魚鹽鱈やありのまに〓〓〓ユキ氷魚の目にうつりて古し志賀の山氷魚網や落葉ふる江の漁仕舞氷魚網藻屑の綠淋しさよ漣や月冴ゆる夜の氷魚網藻の屑の綠に白き氷魚かな乾鮭の切身に隣る氷魚かな近江のや氷魚取る頃の湖の月比良今年雪の多さや氷魚育つ氷魚もよらず風の用上月の宇治氷魚瘦せて月の雫と消へぬべし女院より御息所へ氷魚の折氷魚取りて堅田に老いぬ鳰を友蔽ひかゝる比良の暮雪や氷魚の舟兵營に走る鮪の車かな大仰に鮪吊りけり小料理店島住の快を語るや鮪鍋どてら男や鮪に醉ひし悔もあり海くれて濱は鯨の篝かなの部三三同松十步老同白夏櫻曾左運同露同同子片柳柚露句露同東洋城同子同昌河芙蓉同鶯同漁靑一同死月規水人翠山子壯々酒聲樹佛崖石規濱山泉
冬乾鮭の魂魄ぬけし腮かな乾鮭を梅の片荷や伏見入灯を把るや乾鮭の影壁走る乾鮭に湖南の柑子酬ひけり乾鮭をかけて凹凸山人と云ふ櫻木に乾鮭かけつ吉野山乾鮭の小荷駄や峠越えにけり山寺や乾鮭吊るす松の風山刀乾鮭たゝき切りにけり乾鮭は海にきりたる枯木かな乾鮭の壁赤々と榾明り乾鮭の折琴つくれ菊太夫乾鮭や峽中の人別天地乾鮭に荒む夜風や壁の穴乾鮭や松前侯の荷宰領乾鮭や眞田が庵の古柱乾鮭の骨切る宵や狐啼く部峻峰の如き乾鮭掛けにけり乾鮭や尙一脈の眼のうるみ鋸に引く迄鮭は乾ひけり乾鮭や也有が庵の懸飾乾鮭に鉋はかけぬ大工かな乾鮭や身は鱗の瘠法師乾鮭や我にもひゞく夜の雨乾鮭や水を振ひし菜の綠乾鮭のかしら盜むも盜みかな乾鮭をそぐや丈山長嘯子乾鮭に貧を思はず愚を思ふ乾鮭を洗ふ師走や夜の水藏に滿つ乾鮭匂ふ留荷かな乾鮭や牛舌のそれと句兄弟寒梅を敲き折り乾鮭を敲き切る乾鮭や雌ス逐ふ鱒の戀を知れ乾鮭に寒梅の香もなかりけりカラス〓三五五眉鱸鼓青觀小三淺兎格紅露碧梧桐同小同月江竹嵐魚酒允茅子堂綠石魚へき生水同靑同同碧同同四露同六同句同東洋城同花佛巴々童明月魚花佛巴々童明月
海鼠冬海鼠喰ふて神佛誹る息臭し佛道も神道もなき海鼠かな龍宮の庭にあまたの海鼠かな寒海鼠石となるべき思ひあり蔕落ちと見ゆる跡ある海鼠哉轍魚の苦知らずにとける海鼠哉海鼠の膚にいかなる神の花咲きし妻の手老いぬ娘の手大人びぬ海鼠章魚は咲き海鼠は荅む嚴かな海鼠共心〓〓にぬめりけりなまこ賣また夕闇に北の橋海鼠腸や萩の折箸俄なる海鼠あり庖厨は妻の天下かなこの腸に酒ある夜話のくだちつゝ盛安に一盂を置きし海鼠かな無爲にして海鼠一萬八千歲海鼠くひ海鼠のやうな人ならじの部晴れもせず雪にもならず海鼠哉乾鮭と古曆と寒き柱かな乾鮭に山人斧を加へたり乾鮭の影や法師のたゝずまひ乾鮭を吊す柱の古色かな乾鮭の吊りてゆがみし腮かな荒壁に乾鮭や移居の體たらく乾鮭に庵の壁の曲りかな乾鮭に鼠が登る灯影かな乾鮭にあかぎれの手を嚙まれ鳧乾鮭は紙衣の人の類かな乾鮭や水につくれば蝦夷錦乾鮭の叩けば凡と音すなり乾鮭に大雪をまつ山居かな乾鮭に觸れて聲あり空瓢子乾鮭を叩けば蟲の落ちにけり乾鮭や雲の山路の一軒家三九七嵐蘇霞半蕗芹丹蝶射黃雙抱子極乍花溪樓死規舟坤浦人溪美酒山村楓哉石雨魚琴射同竹の門同虚靑同八重櫻同同同同同同碧梧桐同同石子〃石子〃
牡蠣冬牡蠣の酢の濁るともなき曇り哉牡蠣をむく火に鴨川の嵐かな蠣汁や口裏に求む殼の欠け牡蠣飯の釜〓きたる行燈かな旅情聊か酌めどわりなし海鼠の酢鮟鱇に笑はれて居る海鼠かな海底に山脈走り海鼠かな大乘の境に入りたる海鼠かな霰降る町を走るや海鼠賣砂食ふて居るかも知らず海鼠哉海鼠々々汝成佛して何の佛大風の海鼠にかゝる埃りかな海鼠を喰ふ女にて木屋町の夕寒し俳論や海鼠は溶けて仕舞ひ鳧すり鉢の底に固まる海鼠かな仇浪も高しの濱の海鼠かな繡腸と題す海鼠の畫讃かな烏賊殿に足をむしんの海鼠かな海鼠賣二つ殘りて日の暮るゝ生きてゐる念力見ゆる海鼠かなこの腸やへたりと垂るゝ飯の上わだつみの底に物ある海鼠哉海鼠くふ妹にさしけり金屈巵後悔の嚙む臍もなき海鼠かな腹綿に玉もつゝまぬ海鼠かな潮に煽つ磯藻のかげの海鼠哉龍宮を追はれてこゝに海鼠哉龍宮の天井裏に海鼠かな龍宮にまだ來ぬものは海鼠哉今昔の句に惑ある海鼠かな魚市の轍にかゝる海鼠かな恐縮の限りを盡す海鼠かな醋海鼠のぶり〓〓と齒に潔き君知るや海鼠は海の鼠なりの部三五九同虛鳴花方禪寺洞絲霞知同茂十二樓醒可華藤四駒鼓露聾樂小一田士英靑吟化奇蝶六古鳴紅子雪囚外郞樹雪山鋤白鯨花子村竹華兎南酒轉嵐月羊遇衣花泉雪緣
凍初冬鮒鮒牡蠣舟凍鮒の爼板すべり落ちにけり獨喰ふ食堂寒し凍鮒彼一時此も一時やこゞり鮒突鮒や流れにうつる己が顏初鮒や雨に消えたる比良の雪初鮒や大津の柳三井の梅牡蠣舟に世を隔てたる障子かな牡蠣舟の屋根に音ある霰かな牡蠣船の障子に動く釵影かな蠣舟や障子の外の廓町牡蠣舟や難波の浦の灯の林牡蠣舟や役者連れたる女客牡蠣舟や昔の眺め橋にあり牡蠣舟の低き天井にランプかな牡蠣舟や舷に降る雪二寸牡蠣舟や舟蟲と棲む油蟲牡蠣舟の燈は細し十五橋牡蠣舟に聞く橋上の人語かな牡蠣舟の尙人目ある頭巾かな牡蠣舟を出でゝ天滿の雪景色牡蠣舟の戶を叩きたる旦かな牡蠣むらや夕日うするゝ濱廂牡蠣飯や浪花の宵の小ぬか雨牡蠣殻や海士の棄てたる蛸壺に牡蠣割の女は寒し比枝おろし濱に伏せし破船の底や牡蠣の殻牡蠣の酢の多きは佗し雨の朝牡蠣鍋や樓下は雪の隅田川牡蠣殼や荒れたる後の汐干潟牡蠣殼や汐入村の一軒家牡蠣の酢に生姜を刻む黄色かな牡蠣汁や居つゞけしたる二日醉人知れず牡蠣飯焚きし隣かな山住や松でたく飮牡蠣入るゝの部三六、裸竹靑子樂虛極西格松步虛竹の門一露梧靑碧梧桐翠鶴婆董士里子靑同華同ゆ東洋城同孤不喚樓木泉々吟外明浦湖轉堂字沾子月月々園村華夢き羅湫櫻人規々
冬冬の蠅冬の蜂あぶらめ冬の蠅甘い藥を知りにけり病床に冬の蠅飛ぶ暖爐かな冬の蠅夢みる如くさまよひぬ子守女の寢くたれ髪に冬の蠅客室の手爐のぬくみや冬の蠅冬の蠅一尺飛べば日蔭なり越王の甞去る膽や冬の蠅飯櫃を包む毛布や冬の蠅膝かくす紙衣やぶれて冬の蠅小障子や綿弓ひゞく冬の蜂凍日のあたる硯の箱や冬の蠅大佛の鼻にある巢や冬の蜂襠裲や牡丹に寢たる冬の蜂冬の蜂とあなどる針の長さかな枯草や射埠に迷ふ冬の蜂探幽の妻戶の梅や冬の蜂蜜蜂の冬暖かく置かれけり枯枝の空巢に一つ冬の蜂土塊を守る如くや冬の蜂霜よけの中をねぐらく冬の蜂箱にして空しきさまや冬の蜂濡れ色の石蕗にさす日や冬の蜂冬の蜂蜜にうすき日影かな南天の實に映える日や冬の蜂冬の蜂瓦はみ出る土白し冬蜂の背も腰も曲りかゝり哉法鐸に日のさすところ冬の蜂古棚の奥に漏る日や冬の蜂楢の葉に枯れた音すや冬の蜂板敷の暗きに置きぬ鼬魚寒潮に育ちし色やいたち魚あぶらめの暗憺として空の色凍鮒混沌として皿の上の鮒紫光部る鱗かな三六三菊月四方太句同乍同未同子堇癖三醉同孫秀十千妻寒釜柑石一師圖渠古靑同同象同東洋城同同天易兒太兎佛人央規骨村子城櫻竹南水泉嵐哉外水兒
寒冬凍冬の蝶冬椿椿蝶寒椿藁つむ蔭に咲きにけり北風をさへぎる藏や寒椿意を得たり此石あつて寒椿寒椿や妙心寺內庵いくつ寒椿咲いて聖の遷化かな石上に寒椿散るお寺かな植垣やれて竹林さびし冬椿大竹にからまり咲くや冬椿小蜘珠垂る日和に咲くや冬椿冬椿冬至の雨に開きけりしづけさは茶人の家の冬椿冬椿笹に交りて咲きにけり宇治山に世を佗住むや冬椿冬椿日に富む障子とざしたり凍蝶にするどく聳ゆ木賊かな掃き寄せて菊の枯葉や蝶の凍二ツ蝶三ツ巴に凍てにけり凍蝶に散るや御園の返り花乞食と同じ枕や蝶の凍暫しゐしがこゝも寒しと冬の蝶襤褸干す丘の小家や冬の蝶新らしき天井寒し冬の蠅糊桶に冬の蠅とぶ日南かな冬の蠅砂糖の俵をたゝく店冬の蠅きしやごを遊ぶ疊かな雪晴れて窓にてる日や冬の蠅鰤の骨鮭の頭や冬の蠅冬の蠅枠の繪絹に點じけりの部物一條や柳櫻に蝶 の凍三五三六百月月碧躑同北紫はじめ香一菰柳無紅松折華白村苔著握靑如雨露靑龍洞風月井泉水一村兎童躅涯星居堂堂思黃葉家雨森月濱々亭水堂園轉山
冬茶の花茶の花や住みよげに見る京最寄積藁に小家豊や茶の木咲く茶の花に袈裟千す日あり草の寺澁戾りせし柿のあり茶の木咲く茶の花や生死の外の御堂守寒園の花に植えたる茶の木かな茶の花のひとつ咲きたる垣根かな茶の花や臼にする木をまろげある茶の花に三つの小石や翁塚記茶の花や赤城颪の畑境俗事賴めば僧快諾や茶の木咲く茶の花に離れてもとむ旅籠哉紅葉照る下や茶の花ほの匂ふ茶の花や一路わづかに祇王寺へ茶の花や淋しき人の花にさす茶の花に日あたれば虻の動き居り茶の花や藪に落ち込む嵯峨の町茶の花の眞白にあらぬ物淋し茶の花の宇治に繪行脚來り鳧茶の花の一と並殘る貸地かな茶の花や宇治も狹山も月白し茶の花に我が牛黑し柴の門茶の花や珠數挽住める寺つゞき山の驛茶の花咲いて靜なり茶の花や坊主の頭五つ六つ茶の花に梅の枯木を愛すかな茶の花の中にまぢりて茶の實哉潮寄せる漁家の垣根や寒椿寒椿社は燒けて下馬の札寒椿の蔭に氷りて雪かたし打敷や花一つ落つ寒椿切干の家相似たり寒椿寒椿八瀨の蒸風呂たづね鳧陽に眠る諸木は淋し寒椿の部三六七鱸松射瀾不喚樓白月波麥淺八重櫻碧京虚橡面坊句靑同同虚同同初同同蝶同同子藍銀杏子白兎光潮大江濱山王靜人茅童人明佛々子聲衣規雨外石水我
山茶花冬山茶花の花に葉かげの見ゆる哉山茶花や鹽湯の宿の板庇山茶花に銀盤の湯や朝手水山茶花に貧の一燈かゞやきぬ山茶花や假の住家も四十年山茶花を雀のこぼす日向かな山茶花の垣根に人を尋ねけり杉垣に山茶花散るや野の小家山茶花に犬の子眠る日向かな茶の花に塔をこぼるゝ小鳥哉茶の花の日南魚板の遠ひゞき茶の花や南下りに廣き庭茶の花の垣や猫居て吠ゆる犬茶の花や貝塚に行く道の垣菰はねれば茶の花おごる日向かな茶の花や荷鞍下して馬渡す茶の花や須磨の在所の名なし寺少し咲く茶の花寒し顏子が盧茶の花に田家の冬の荒地かな茶の花に一逕通ず山の寺茶の花や坂を登れば喜撰庵茶の花に蜂の羽音の沈みけり茶の花や雨ふりかゝる陶の土茶の花や庵に名釜の記を傳ふ茶の花や句に三昧の智月庵茶の花に紫咲くや韮の花茶の花や小松が里の藁砧茶の花に櫟落葉や國分寺茶の花に蘚石かゝる籬落かな宇治は茶所茶の花今を盛りなり茶の花のだら〓〓坂や寺に入る茶の花に月白き夜や淨名忌茶の花や國師忌日の大德寺茶の花の勾配に家の國旗見ゆの部三六九三六八同同虚同同別天樓同同子藍落不稀翁飛百日紅湖零餘子去蘆春月蒲香士里九日庵泊華はじめ未一吟へき生觀愛子規雨水泉月水月蓉草城光櫻靜雲村央轉月魚霞
冬蛸壺に山茶花のちる濱家かな山茶花や立山の雪日々白し山茶花や溫泉の暇遊ぶ下駄輕し山茶花や生垣ひくき家構山茶花に落ちし足袋つる尼が垣山茶花に夜降る音は霰かな山茶花に日曜を縫ふ〓師かな山茶花や猿戶あくれば鈴が鳴る山茶花や年若き僧心を疾む山茶花の雀に盥落しかな山茶花の散るや利久が沓の上山茶花や戶口の廣き庫裡の前山茶花や籾殼積で小百姓山茶花や筵二つに麥を干す山茶花にぬくさをいふや姥二人軒ランプ山茶花赤き垣根かな山茶花や咲きたるまゝを移し植うの部三七一山茶花を掃きよせて高し草箒山茶花や垣に織られて花日影山茶花に一服の茶や銀閣寺山茶花や草庵閑に疊替山茶花に繪屏風圍へ持佛の間山茶花や霰をためる土の凹切花にして山茶花は荒にけり埃なき町の山茶花咲にけり山茶花や離宮の裏の水に垣山茶花に雄ばかり淋し渡し鷄山茶花に塵捨て惜む二階かな山茶花に堂守の居る札所かな山茶花や松も圍ひの墓所の内山茶花や日南に氷る手水桶律院や山茶花落て人も無し山茶花に阿咸呼ぶなる垣隣山茶花や少女かしこき茶通箱松鳴同月同碧同淺同靑同同同同碧梧梧同同雪蜃井拈蝶東鶯谷寸句露同松濤樓同守同田同三泉洋樓水樓華衣城陽佛屋水老士英洋樓水樓華衣城陽佛屋水老士英允舟童茅々濱雪
冬薔薇冬髮置の化粧鏡や冬薔薇さゝやかに牧師住みけり冬薔薇大理石の階段寒し冬薔薇粗朶小屋の瓦庇や冬薔薇冬薔薇に閨の庇を葺かせけりフランスの一輪ざしや冬の薔薇枯芝にこぼるゝ冬の薔薇かな菊枯れて冬薔薇荅む小庭かな山茶花に山の房借る畫工かな山茶花や南院の僧詩に耽るから臼に山茶花散りし垣根哉山茶花や忌に歸り來て家寒き山茶花や獅子に時雨て里神樂山茶花の赤き一つに冬立ちぬ山茶花に餘所心なる障子張り山茶花や垣結ふ人の猿袴山茶花や寺の內なる幼稚園の部山茶花や蜘蛛の巢にある蠅一つ山茶花に机据ゑたる廣間かな山茶花や故園の冬の暖かき山茶花に雨の果てなる雲かな山茶花や午後の日脚に土藏高し<山茶花に臼ほる二日がゝり哉山茶花に源太が梅は枯木かな山茶花の紅褪せぬ閏月山茶花や溫泉の村垣根湯染干す山茶花やいつの帝の救願所山茶花につめたき石の扉かな山茶花に吹革祭の野鍛冶かな重ね着て山茶花の目に物々し山茶花の垣は鳴海の染屋かな山茶花の庵主と見ゆれ白紙衣山茶花に草紙かけ干す日向哉山茶花の雨もあるべし枳殼亭三·三三七二十步老醉句同苣同同子狂一虎檐烏君死隈洋香野田千畝三禪寺洞堇小香伯紅靑象零餘子初三孤水佛佛村規花葉月月人郞洒水水居梅寅哉帖村洲菁堂外聲餘軒巴
返り花冬の山吹の名所を訪へば返り花うば櫻春の如くに咲にけり城よりも古き櫻や返り花土蜂の日南へ飛ぶや歸り花蘖に靑き芽もあり返り花歸り花籔になり行く徑かな返り花幻住庵の跡とへば返り咲くや一册に編む拾遺の句陸奥や返り咲く木に雪遲し愚庵亡きたゞの垣根や返り花野の家の畑に近し返り花登り得ぬ城の巨石や返り花返り咲く園遲々と行く廣さかな山と積む濱の芥や返り花返り咲く薄紫やつぼ菫紅蔦のからまる枝や返り花寂寞と苔の扉や返り花干藁に照る日尙欲し返り花返り花絕えず日當る疎林かな閑却す枝の小鳥や歸り花鶴の檻のほとりに一木歸り花昔々爺灰まけば返り花歸り咲く緋桃や禪師快諾す風呂咲に味噌つけてそれ歸り花短册に下手な句書いて歸り花花歸りさけば人若ければ廓酒腐り盡す老木と見れば歸り花歸り咲く八重の櫻や法隆寺木老いて歸り花さへ咲かざりき冬薔薇聖書の手垢なつかしき空庭に落つ竹影や冬薔薇冬ばらにま白き閨の蒲團かな冬薔薇に小門の錠を鳴らしけり冬薔薇鴛鴦の〓にこぼれけり部三五子釜同同一同同三同同東洋城同同子江太菫伯同雲桂樓同梅同句同碧同橡面坊同同蛇同同守水老洲度佛童笏轉允規村郞哉吟村
冬返り花が喜ぶらしき暖雨かな擧り木や雨後あたゝかに返り花枯草を積みしが上に返り花更紗干す里の小春や歸り花溫室につゞく小家や返り花歸り花水なき瀧のほとり哉歸り花同棲にうすき緣かな長春の歸り咲く日や雲降る積かくる庭の黑木や歸り花冠を桂けて佗居や返り花歸りさく眞野の御陵の京櫻我も杖に老いし愛馬よ歸り花返花北枝は枯れて南枝かなうそつきの妹が垣根や返り花覗き行く貸家の庭や歸り花巽より日低く出たり返り花ちるもろき凋む果敢なき返り花溫泉の神を祭る社や返り花返り花畫篝焚く社頭かな返りさく御室の里の櫻かな凩に吹き破れけり歸り花鳥落しといふ霜降りて返花蜻蛉風ぐ鹿垣高し返り花立てずもの碑の立てける返花歸り花葉芋まだ立つ畑かな江南の小高き丘や返り花並松も南下りや返り花返り花うせたる蝶の魂か築山の石あらはなり返り花磧よりこの道淋し返り花たそがれや易者の門の歸り花窓近き海平らかや返り花返り花一つ來て鳴く小鳥かな返り咲く木の間の枝垂れ櫻哉の部三七七雪耕若丁葉婆里錦巴薰水大鶯極三子樂波華瀾稻乙蕉雨樓六八重櫻松碧梧桐竹虚喜鳴同富美男泊府雲葉山子羅風朗藤水棹我子浦川駿南靜園水靑字花宇冷子舟雪洲
寒冬梅冬至梅寒梅や痩軀を倚する竹柱一麥にこの寒梅の奇骨かな寒梅や石摺古き座右銘寒梅や座右に愛す一狐〓寒梅にかけ干す蓑の氷柱かな久戀の地を匂ふものや冬の梅寒梅に印譜を選む書屋かな寒梅に鶯と見し雀かな寒梅の垣に干されし法衣かな寒梅や裾を曳く長き節會人鐵鉢に米も少し寒の梅玉藻集寒紅梅の句あるかや移り住んで知らでゐにけり冬の梅仕官すゝめて客今日るあり冬の梅寒梅に藻屑かゝるや蜑が垣寒梅や探る園庭十二勝寒梅に詩膓をしぼる主かな寒梅や韓非は痩て旅籠飯冬至梅咲て賀筵の大魚かなの部寒梅のひらきて狐さかるなり寒梅をもつが馬上で使かな幣を裁つ禰宜に日ざすや冬至梅冬至梅ちりて匂ひや冬の窓繪襖の花鳥飽く目や歸り花廢帝の御夢トやかへりばな返り花丘を抱く江の鷗かな返り花小鳥も鳴かぬ社頭かな歸り花咲て溫泉にさす躑躅哉耄けて鳴く雌追ふ犬や返り花山寺や石孕む木の返り花歸り花梢五寸の小六月歸り咲く梨子畑淋し時雨雲籾磨や井戶田の里の返り花大赦人歸國日和や返り花三七九舟忍辰警鳳梧桐松濤樓不喚樓句格四露同山梔子同蝶同婆同同靑眉蝶虚翠潮放射蝠未兎俳小星十二樓一經子天易兒居月生佛堂醒明月衣羅々月衣明濤花哉子石耳央
枇杷の花室冬冬咲櫻植込のうしろの方や枇杷の花職業のわからぬ家や枇杷の花室咲に袋をきせて座右かな室咲に秀歌をよめる遊女かな室咲や畫室の窓の南受室咲に調子はづれの附子かな室咲や北の座敷へ見せに出す室の梅浮世の風にちりにけり室咲や娘が入れし花鋏室の梅八幡の藪に野風かな室咲や霜の水仙きり添ゆる室明けて此花見よと亭主かなこと〓〓く紅蕾む室の梅杖ついて子安詣や冬櫻病閑やまことしやかに冬櫻姫神の旅や社頭の冬櫻暖かき日向の國や冬櫻冬櫻北窓塞ぎ惜みけり冬木櫻の梢知るあり山在所戀に病む沙彌が庵や冬櫻寒梅の草廬を出でゝ仕官哉鉢植の寒紅梅や瑤の琴寒梅や奈良に年ふる刀鍛冶寒梅に七日の產屋香りけり數尺の室を天地の梅花かな費長房むろに百卉を藏しけり北塞く藪に朝日や室の花人〓し室から出す花を看る霜時や花の室つく地の凹み·寒梅や宗鑑が挽く竹の筒寒梅や南下りの山の町寒梅に少しの日南移る猫寒梅に巫女が黛淡きかな寒梅に光る軒端の氷柱かなの部三八、同子泰烏好子象蜃小子翅楓山人淺八綠柚靑甕鱶巨露同同一同同靑白小巨鳴甲耕洛燕居規山健翠節村樓酒ロ石蓑々規馬鳥篁茅ロ雪湫葉翁南月城城洲
柊の花冬葉の上にこぼれて淋し花八つ手花八つ手障子靜めて薄日かな暮んとして晝尙白し花八つ手月の冴八つ手の花の白ければ日每見て小說書くや花八つ手上段の間は薄暗し花八つ手花八つ·手配所の寒さ忍びけり柊の花の匂ひや寺寒し屋根葺いて柊の花に住みにけり西廂の月冴え易し花柊花柊如意の竹切る藪戶かな寺の霜柊賣りの濕へり柊の花に紅ぬるいとまかな指を削す柊ひさぐうき身かな靑天の風の葉鳴りや枇杷の花葺替の萱積む庭や枇杷の花霜割れの石の雲母や枇杷の花姉死んで嫁ぐ妹や枇杷の花枇杷の花寒松院の日裏かな籔を漏る疎き日ざしや枇杷の花死ぬやうに思ふ病や枇杷咲けり枇杷咲くや百姓馬の毛を刈りぬ枇杷咲くや雨戶つくらふ草の宿花枇杷や簪冷たく妹亡し枇杷咲くや北山陰の無住庵枇杷の花律院の晝靜かなり花枇杷の梢にゆがむ〓かな水運ぶ裏戶通ひや枇杷の花芥火の雨に煙るや枇杷の花雀羅敷く藪醫が門や枇杷の花染糸の風に乾くや枇杷の花枇杷の花寺の襖の暗さかな枇杷の花風の乾きにからび鳧一うねの春菊靑し枇杷の花の部三八三瀾禪寺洞癖三醉吾虚同喟竹鬼未白同同靑寒芹波禪寺洞士巫華樂竹の門乙巴郞馬北死守水老靑松同象同八重櫻水空子然泉城央山々山雨舍來山園南洗山酒嵐宇外
枯冬柳石臼に澄みたる月や枯柳拔け髪の箒離れず枯柳駕に居て茶を呼ぶ驛や枯柳西行を江口に渡す枯柳枯柳妓病みて遂に相見ざる馬載せて舟渡すなり枯柳柳枯れ門べの事を歌にする此處吳楚の境やかれ柳黃昏を雪虫とぶやかれ柳客ありて開くる二階や枯柳吾戀の絕えたる道や枯柳枯柳振賣の雁買ひに出る市立つて處々焚火や枯柳門附のしはがれ聲や枯柳夕日野にざわめく水や枯柳硯賣る店の廣さやかれ柳旅僧の姿烏やかれ柳の部忘れもの尙ありし茶屋や枯柳曲り江の雪の景色や枯柳枯柳風西に吹く堤かな石垣の藻もすさまじや枯柳垣越ゆる圍の荒びや枯柳池涸れて底掘らせけり枯柳古池や柳枯れて鴨石にあり枯柳八卦を畫く行燈あり燐寸賣るともし火細し枯柳師の貧に傚ふて住めり花八つ手北向の大玄關や花八つ手石碑の表覆ふや花八つ手北窓に八つ手の花や籠り堂廢院や八つ手の花に日の殘る花八ツ手客間に煖爐据えにけり狐眠る廢寺の椽や花八ツ手西窓の鐵の格子戶八ツ手花三八同癖同句同靑同四方太同同水同碧同同同乙三醉佛々同虚同同同碧梧桐同同子白鬼二葦知醉至一規山城三醉佛々巴童字子規山城星天白佛靑樹
落枯釘杏冬葉湖の上に舞ひ行く落葉かな枯銀杏淋しく塔の聳へけり舟見えで灯見ゆる江や枯柳枯柳不意に聲わく障子かなあそび女は火焼を出でず枯柳柳かれて家疎らなる漁村かな暖簾に日消えしが雨や枯柳浪寒く柳枯れたり浦千鳥水垢の橋杭高し枯柳湖荒れて石垣寒し枯柳船着や纜を干す枯柳枯柳の雨に旅籠を求めけり鳥屋に入る鵜の尻寒し枯柳駕出れば日暮るゝ町や枯柳火燵から橋錢受けぬ枯柳枯柳船を沈めし家運かな濠端や枝は伐られて枯柳巳の年の飢饑の碑あり枯柳橋ありて廓の名ありぬ枯柳池の底に蝶螺動かず枯柳いつの年の水塚なりし枯柳枯柳や月下のポスト閑にあり枯柳や止め水黑く紺屋裏枯柳や斃れし馬を人圍む枯柳節季かゝへて無人かな柳枯れて易者の顏の小さびしきこゝを切れかしこを斷てと枯柳文結ひし柳も戀も枯れにけり比翼塚の名は艶めけど枯柳富士の雪かぎる堤や枯柳柳かれて石臼の臍馬鹿になる鴛鴦は艶に過ぎたり枯柳大河の尻に家なし枯柳ぱら〓〓と身に舞ひかゝる落葉哉の部三六七井松十二樓同天同同子南蚤晨都靑白柿靑河滴裸零餘子士松郊羽水木田士英醉景不喚樓紅鳴同山梔子規史王生月人貧園嵐柳泉木櫻濱人村山棹〓母佛春綠雪郎
冬朔北の風に落葉の月夜かな無住寺の軒端に雨の落葉かな落葉焚いて葬列を待つ非人あり落葉搔死にし鶉を拾ひけり月小に瀧また痩せて落葉降る落葉してあらはに塔の天王寺いち早く落葉する木の高さ哉湖荒れて石山寺の落葉かな落葉掃く中にころがる霰かな落葉して名所畫に似ぬ宮居かな落葉踏で古塔の下に來りけり打ち返しある山畑の落葉かな一時に燃やす落葉の山二つ掃かずして十日になりし落葉哉そしらるゝ榎を伐らん落葉哉窓の灯の人影に降る落葉かな落葉掃く脊に峙つ奇峰かな長き枝江に突き出でゝ落葉哉鴨川は千鳥にまじる落葉かな錦木の落葉す門の美しき脂桃の脂出ずなりし落葉かな落葉掃く箒と見ゆれ束ね柴神能の舞臺を走る落葉かな崩れたる山のなだれの落葉かな落葉多き都の隅と成にけり賃苧うむ鄙は落葉に明放し三寸の塔を數多や落葉寺落葉掃く切れて短き箒かな古道の小石にまじる落葉かな夜嵐の臼も盥も落葉かな南天の實よりも赤き落葉かな朽橋を直す大工に落葉かな紙燭して部にうつる落葉かな古家や狸石打つ落葉の夜の部三八九松同柑同同水同同巨同同同天同俳小星同同香同同橡面坊同同句同同靑同同把同同虚子隨宇子巴ロ村佛々栗子規
銀杏落葉櫻落葉冬一色に大樹の銀杏落葉かな石壇を埋む銀杏の落葉かな下馬札の奥は銀杏の落葉かな今宮の櫻落葉に庭燎かな障子張る糊に櫻の落葉かな渡し船肥船さくら落葉かな刈柴を谷へころがす落葉かな沙の上に築島寺の落葉かな眼底にさゝやく文字や落葉の碑此森をかぶる社の落葉かな山々の落葉を吐いて川百里菩提樹の落葉や諸佛皆默す南園の落葉や鶏のうづくまる漁あれば供米す寺の落葉かな落葉して雀のとまる枝長し湖へ吹き込む比良の落葉かな月寒う鎌倉山の落葉かなの部寫生する畫板の上に落葉かな怒りつゝ骨嚙む犬や道落葉裸溫泉の追ひ流しやる落葉哉駕籠立てゝ敷物の落葉拂ひ鳧空洞木の梢盡して落葉かな落葉捲て谷吹き越えぬ旋風蟲の巢の二枚つゞれる落葉哉落葉寺火を戒めて夜々の月炭斗の底に熊野の落葉かな斧入れぬ山の落葉を搔く日哉裏畑の落葉に鷄の卵かな霰こぼして雲ひらきけり落葉山踵打つ草履淋しき落葉かな蘆の中の水に溜れる落葉かな落葉して蔓高々とかゝりけり落葉かく翁の小さ刀かな盡く窓に吹きこむ落葉かなの部碧松鳴象馬霽月桐子半羽珀婆村梨吳素醉翅幾蝶山靑守禪梧三波亞紅碧普竹鳴句梔水寺一句梔水寺月鳥拙衣子瓢老洞月梔梧童宇雪外洗月村葉瓢美山雲羅家月之川允靜浪綠桐羅冷雪
朽冬冬木立葉木の葉椽落葉栗落葉柿落葉朴落葉寺の犬遠く來て吠ゆ冬木立尾長猿見えずなりけり冬木立猫捨てゝ來る沼淋し冬木立山脈の崩れあらはや冬木立冬木立銀杏の一木天をつく冬木立崖攀づべくもあらぬ哉車置て城市に遠し冬木立狗の背の枯れたる山や冬木立畑中や王子に近き冬木立盜人の金や隱せし冬木立菜畑や小村をめぐる冬木立冬木立五重の塔の聳えけり下駄はいて鐘樓に通ふ朽葉哉水底の岩にたまりし朽葉かな落葉朽葉置き煩ふや句の姿蓆帆や峰の木の葉の一つ來る水入れて木の葉うきたる小桶哉の部三六三山鳴を聞く日落つ落つ木の葉哉鐘つけば鐘から落つる木葉哉日だまりに一と葉二葉の木の葉哉庭廣々日かげ日なたと木の葉掃く鐵鉢の木の葉や錢や布施坊主誰が見てや木葉狹みし山家集木葉ふむ門の小溝や麓宿のうれんに木葉ちるなり比叡のもと木の葉散る奧は日和の天王寺木の葉はら〓〓幼子に逢ふ小坂哉吹きおろす風の木の葉や壇かづら橡の葉やぞろりと落て杉の中風に鳴る栗の落葉や山麓西日さす厩の屋根や柿落葉冬千句朴の落葉を題しけり落葉嬉し朴の廣葉を踏で見る實を落す礫に銀杏落葉かな梧同同虚同同六同同碧梧桐同同子竿八眉之重子花蒼霞香村淺紅同靑同同子節流東野虚未重々子花規月晴櫻月曳子山村家茅葉々規石向葡萄子央
冬痩馬の尻追ふ馬や冬木立冬木立裾木は粗朶に伐られ鳧松一木綠の錆びて冬木立冬木立陣營楯を列ねけり濁り水澄まぬ池あり冬木立冬木立さびたる石の橫はる冬木立梢に鳥の高音かな我を見て烏鳴くなり冬木立冬木立大斧揮ふ響きかな鳥啼けど咳すれど谺なし冬木立冬木立湯本に電の景色かな冬木立虚無僧寺の大破かなあらはなる鳥の古巢や冬木立熊の捨てし熊棚あるや冬木立菜畑の綠いさゝか冬木立其中に折れたるもあり冬木立山番の道細々と冬木立隔心の弟子と逢ひけり冬木立野の家の廣き構へや冬木立冬木立木曾川べりの焚火かな谷深く炭竈烟り冬木立祈雨臺に赤き雲あり冬木立開いて居る寺の障子や冬木立鳥居なき小さき社や冬木立舌切の雀出てなけ冬木立野社や小松の驕る冬木立から〓〓と日は吹き暮れつ冬木立蓑着たる人の焚火や冬木立溫泉の漏れに繩卷ける樋や冬木立冬木立怪魚の巨骨晒しけり宿り木のあからさまなる冬木哉家や田や飛び〓〓に冬木立哉冬木立長々と川ありぬべし雲を出て又走る月や冬木立の部三九五素竹君遷子樂琅泊漂鳴苔立波萩曲白月鬼守水老石波把格鳴射山梔子月東洋城乙左衞門竹同同八重櫻同同茗路南々雲舟球雨岳空郞洋山兎史鼎靜村字栗堂冷雪石
冬木冬の其中に臼取るほどの冬木かなそぼ降るや冬木の下のぬれぬほど我宿に日蔭の冬木切る隣宿り木のあからさまなる冬木哉門前に舟干す冬木日和かな炭市の馬來る冬木平かな頂や冬木もなくて松一木二三本冬木とりまく泉かな古道に馬も通らぬ冬木かなこと〓〓く藁をかけたる冬木哉鳥を追ふ鳥の羽音や冬木立荒海へなだるゝ山や冬木立冬木立一廓をなす溫泉村哉冬木立國の境に川長し吹き暮れし江添の村や冬木立阪本へ月に下山や冬木立冬木立火防の神の宮居かな羽繕ふ鷲に霰や冬木立掘り起す阿佛尼の碑や冬木立鳶とまる一木ぞ高き冬木立横さまに大きな月や冬木立月白く甍を射るや冬木立野施行の人さゞめくや冬木立枯芝の岡の小家や冬木立谿の戶に驛あらはなり冬木立北海の波見透すや冬木立野の家のからりと寒し冬木立三流の一河に會す冬木立貝を吹く人の屯や冬木立砂利を掘る河原の音や冬木立搦手の金皷を打つや冬木立鳥の巢の石に落ちけり冬木立冬木立警鐘高く吊しけり幕岩の二つに立てり冬木立部竹タ牛蘭射擔柚同虚同同碧梧桐同同子秀汀其折師野河芙蓉塵靑綠紫郞桃香天漁寒春八重櫻同一子規友樹川石亭村步竹村川老轉山嵐風翁雨村郞村樓畦
冬山火事のうつる澤邊の冬木かな鷄追ふてうしろ暮れ行く冬木哉時鳥枝ふみ渡る冬木かな江の風に人立つ岸の冬木かな杖に切る肌滑かな冬木かな樋の上に影の折れたる冬木哉落日の枝こまやかの冬木かな斧入るゝ目じるし削る冬木哉物見棚架け捨てゝある冬木哉冬木道知らぬ名なれど句碑うれし驛遠き渡し廢れて冬木かな斧打ちて梢風鳴る冬木かな阪なりに家並落ちゆく冬木哉冬木積む舟見て閉めし障子かな湖に溫泉尻落ちくる冬木かな心寒く冬木に斧を加へけり穗枯れせし冬木の洞の小草哉鳥けろりと冬木の枝にとまりをるから風に枝折れ勝ちの冬木哉仇し野に鴉群れ鳴く冬木かな夜半の月大路の冬木地に印す浦人の鳥追ふてゐる冬木かな畑の中舟を繫げる冬木かなこま〓〓と赤き椿や冬木宿泥沼の鳥皆上る冬木かな濠の底冬木小さく映りけり紅の空に冬木のあからさま冬木の根斧打てば石の響あり凍道に浮き出て高し冬木の根肥ひくや冬木より烏飛び來たる漁家の月帆柱まがふ冬木かな山茶花の低き園生の冬木かな築き捨てし石垣ありて冬木かな狩布令や冬木の中の筵旗の部三九九彩余零餘子藍一著濱寒三竹雉子郞松濤樓柑泊香可松亞桂靑左不喚樓乙石六東洋城句鳴同土同山梔子同八重櫻葉子雨竿森人山寅美子雲村山濱浪華瓢史字鼎花佛雪音
枯冬散紅葉木散紅葉關守が顏吹きまくる火繩振る明るさに散る紅葉哉散紅葉萱より低き小松かな散紅葉落日の江の碧かな今は只紅葉ちりしく時雨亭山房の連歌夜明けてちる紅葉山風に土器投げや散紅葉鴨さわぐ此風に散る紅葉かなちり〓〓て寺一ぱいの紅葉かな紅葉ちる里や紙筆に隱れ住む眞鐵うつ火より散るなり夕紅葉散紅葉障子にはりし山家かな筏解く岩の峽や紅葉散る鴛鴦の濡れ足に踏むや散紅葉一山の梢盡くしぬ散紅葉散紅葉光琳水を畫きけり散紅葉に銀杏落葉す地廣し通天や茶店たゝみて散紅葉紅葉散つて湖水を渡る舟もなし紅葉散つて山骨みゆる巖かな石冷えて苔に夕日や散る紅葉石段や一つ一つに散紅葉紅葉散る岡の日和や除幕式門前の小溝にくさる紅葉かな鑛山の荷馬數行く枯木かな枯木暖に殘菊いよ〓〓輝けり淵深く日落つる崖の枯木かな一山は木つゝき棲んで枯木かな火を曳いて飛べる怪鳥や枯木山枯木宿行燈靜かに動きけり木兎啼けば月出でぬ枯木立哉濱日和枯木に魚を干しにけり貸網の家はとぢたる枯木原雀淋し枯木の蟲を探し飛ぶの部四〇一知白八重櫻鐵把霽橡面坊癖三醉露靑同蝶同句同紅同靑虛虛同同格同同子零餘子喝花溪樓雪三泊幽啄木鳥白山露栗月石々衣佛綠子堂規鞭人寅雲外々子
冬牡丹殘冬菊香をたく孔子の像や冬牡丹冷牡丹寒き奴に酒賜ふ心高き局淋しき冷牡丹冷牡丹唯一輪の紅冬牡丹御影を撮らせ玉ひけり容與たる芭蕉の像や冬牡丹日暮里の里の舊家や冬牡丹君がために冬牡丹かく祝かな荒寺の羅漢つめたし殘る菊殘菊にいぶせき小野の伏家哉殘菊に簀の戶破れたる野茶屋哉殘菊や佛の花に剪り除くる殘菊や庭の霜掃く竹箒殘菊や霜の朝の月に匂ふ殘菊に一縷の香の奢りかな殘菊や箱に納むる小盃曉の月殘んの菊の魂に入る殘菊に親しみつきぬ松葉杖殘菊に故園を歌ふ大臣かな殘菊や陶家に餘す酒五升枯れ下がる葛の廣葉や殘る菊殘菊に蜂一つ飛ぶ日南かな四季の繪の冬を飾るや散紅葉紅葉散る炮烙店や西の京夕風に紅葉ちり込む机かな散紅葉筧の水を流れけり散る紅葉風に向つて下山かな紅葉ちる中に我あり酒の燗夕月や紅葉散り敷く局口散りそめて障子にはりし紅葉哉奥山に逃げ入る鹿や紅葉ちる二荒の紅葉は瀧にくだけゝり惟茂がうしろに鬼や散紅葉散紅葉山の一ト歲暮れんとすの部さ四〇三四〇〇撫同蝶同格同同子荻ニ華梓至鞭松水黃松花梅柳乍折王炎醉田士英照裸霽同初丹如雨露琴衣堂規風更水石靑下塘巴雨木月宇聲々星雫盡人亭郞天佛葉
冬石蕗花寒牡丹納屋の人を茶に呼ぶ窓や石蕗の雨山椒魚沈めるに石蕗の花の影手洗鉢換ふる下部や石蕗ふみて日に疎き五尺の庭や石蕗の花閑庭の旭つめたし石蕗の花石蕗の花狹庭數へて石七つ石蕗の花松の霜解落つるなり花石蕗や頭隱して鼬の尾歌の判詩の選石蕗の庵主かな花石蕗に普請の庭の轍かな草藪や野葱にまじる石路の花蠣汁の寒うなりぬれ石蕗の花床下を風吹きぬくや石蕗の花庭石や草みな枯れて石蕗の花日のあたる鍋の氷や石蕗の花日あたらぬ側の陰や石蕗の花銀燭の寂寞として寒牡丹丈山は詩書にかくれて寒牡丹寒牡丹の紫に消ゆ陽の霰半開の紅かたし寒牡丹皷干す椽の日向や寒牡丹金屏に晏起の君や寒牡丹狹莚に寒き日ざしや寒牡丹鶴死んだ籠かぶせけり寒牡丹寒牡丹枝兀として花一つ緋無垢干す嵯峨の伏家や冬牡丹冬牡丹白無垢に緋無垢襲ねたり冬牡丹閉さぬ門へ僧歸山冬牡丹貴妃が掛軸古びたり冬牡丹一夜の雪の深さかな日受よき藁の小家や冬牡丹冬牡丹紅うすきつぼみかな蒼天より雪遊びくる牡丹かな床置きの金の香爐や冬牡丹の部四〇五鳴塵華同靑同六同癖三醉茶寒東洋城同同同同子蘆魔十九樓乍孤象初三子杏果穆象香都村逢郞雪山園嵐花規影仙人軒外聲允規村佛釆堂外居月家水
寒冬の菊菊冬の寒菊や上人の訪ふ鞠塢許日の下に寒菊の霜久しさよ寒菊に何の落葉もなかりけり寒菊や機屋の塵の紡ぎ屑寒菊や関伽井に近き松の下寒菊の上に物置く家陰かな寒菊や芋屋の裏の吹き透し寒菊は下の下より赤ばみけり寒菊をもて匂ひけり女の子寒菊に小鳥の遠し端山宿南天は地に垂れんとす冬の菊荷積んで馬脚細し冬の菊枯松に傾き咲けり冬の菊朝起や忽ち日出づ冬の菊陶に二本さしたり冬の菊三たびきりて淋しくなりぬ冬の菊つはの花明るき鍛冶が垣根哉石蕗押して垂るゝ筧の氷柱哉墓參差日向冷たく石蕗の花石蕗咲くやうすき日のさす邸內雀吹く流矢立ちぬつはの花硼石の間に石蕗の黄なるかな石蕗咲くや茶殼をあびて窓の下石蕗さくや猫の寢こける草の宿霜ヒ病むアンダルシヤンや石蕗の花石蕗の花杏脫石に日脚かな花石蕗の庭に榎の浮根かな石蕗咲くや布煮る人に日疎し火の色のさむれば鐵や石蕗の花蝸牛は冬籠りけむ石蕗の花掃出す椽の埃りや石蕗の花曇る日を降らぬ寒さや石蕗の花塀に泌む雨の寒きや石蕗の花零落の淚も涸れぬ石蕗の花部竹同虛同彩同子同同靑湖躑松同同靑堇雪菊萱潮未爲鬼雪乍榎聾四筑葦射白波冷子雲規々村躅濱々哉人太艸花央王城溪人村兎水仙天石山空
水南仙天冬の水仙や澄みきる月に花の數水仙や病みふす心靜かなり股の墟に上りて切るや水仙花水仙を番に入るゝや冬の宿水仙に黎明の色を見て眠る水仙を剪れば冬ざるゝ垣根哉水仙やダンテの像に花の影水仙や霜に葉折れて花の數水仙や閉ぢて久しき鴻臚館水仙や古刀をひきぐ店の先水仙の香や大硯も光風居客室や鏡の前の水仙花水仙と唐筆を賣る小店かな水仙に古畫商ふ小店かな水仙や端溪の硯紫檀の卓文机や水仙の芽の一二寸水仙に恥ぢざる我が句なかり鳧部晴れの果風となる日や水仙花水仙の玉をひたしぬ冬の水古書幾卷水仙もなし床の上水仙や物もあげざる藪の神水仙の荅に星の露を孕む夕嵐南天の實の重みかな南天の實のゆんらりゆらりと鳥の起っ寒菊に機の糸まく人ゆかし寒菊にお僧の咳や馬の上寒菊のうつりて白き障子かな寒菊や老を讓りて草の宿寒菊に灰降る餘所の焚火かな寒菊や消炭干して賣茶亭寒菊の白きが上に白きかな寒菊の避寒の宿に黄なるかな寒菊や籾の殼積む門畠寒菊に古鏡の塵を拂ひけり四〇九同格虛同同鳴靑同同同華同同同碧梧桐同同園々子堂雪木癖三子白思薰風同同同一紅月孫芋錦一紫菊公菊公園々子堂雪醉規楓葉女桂子舟水村木郞蓑影
冬水仙や枯れそめし草の情深し水仙に寫經冷たき日なりけり銀屏に水仙寒し奥の院水盤に薄き氷や水仙花賀箋書く机にせまし水仙花水仙や熾なる火に卷煙草病顏に猶粉黛や水仙花水仙や梅さく迄の借り座敷水仙に無念無想の机かな水仙に畫室の窓の朝日かな水仙や障子にのぼる日の暖み水仙に心あづけて人安し水仙の花瓶氷りぬ古佛水仙に眼凉しき佛かな水仙は机の花や七部集水仙や凍てつく石の二つ三つ水仙や昔を今に源氏香水仙や圖書翰墨の私生涯水仙や佳き墨匂ふ唐机傳へ持つ唐の鏡や水仙花〓水井のあたり石なし水仙花水仙や荒鑄の釜を水に研ぐ水仙や戶口にかけし詩一聯玉藻集水仙生けて讀みにけり水仙や我影痩せて古鏡水仙や葉蘭の陰に日の寒き水仙や落葉の中に花一つ水仙を大束にして葱の如し水仙やじだらくに寢て金屏風黄卷の山の裾野や水仙花水仙や塾に別れの小酒盛水仙や石の女神の裸體像水仙を賣るや紅箋戶に貼ず阿茶町に水仙賣るや春隣の部四一折水紫秀富佐靑木寒孤麥月霜竹吟鬼竹口美韋山不六白野醉蝶三知把温東洋五同士田四方同喚樓花山鳥佛衣允十太栗亭城工櫻士英山巴水花男人鏡母樓軒亭天舟川人月城門櫻士英
冬枯草蓮冬の蓮枯れて極樂も嘸風寒く枯蓮に鴨近う見えて水淺み蓮枯れて婆になりたる菩薩哉蓮枯れて泥に散り込む紅葉かな蓮十里盡く枯れてしまひけり海うめしまゝの廣さや冬の草冬草や撞木の動く影法師冬草に錆び細りたる碇かな冬草は梅檀の下にあたゝかく冬草の枯れて小草の綠かな冬草に赤き實あれば茨かな冬草や舊府に歸る一人旅冬草の日に相搏てる小鳥かな垣したる佛足石や冬の草冬草や雀を追ふて鷹の來るさかしまにおつこち凧や冬の草風垣の內暖かや冬の草落ちて久しき瓦の片や冬の草御野立の晴思ふなり冬の草裾山の日向ゑり行く冬の草冬草に見ゆや繁蘰の小春生へ積藁の下の田水や冬の草冬草や口籠もるゝ馬の息冬草の山路に殘る馬勃〓培へば茶の花見えて冬の草듭銀盤に嗽ひの湯氣や水仙花水仙や天地の赤き美女の幅水仙に爪紅の臺子かな凍土に如意の立ちけり水仙花鐘の銘選む机上や水仙花爐石捨てゝ雪煮ゆるなり水仙花草花帖の終りにかくや水仙花水仙に佛燈さゆる一花かな水仙や床に佛畫の軸古し部四一三呂同同同同四默映紫樓馬十步老默亞伯蘆松四一二不喚樓六水鳴同子井泉水柑放一樓巨十堇波禪寺洞紫鷗活橡面坊碧梧桐巴雪規子ロ框哉城人渚東杣花明骨洗笑浪洲仙畔
草枯芭蕉枯冬枯黍枯果つる汀の草に水遠し草枯に新らしく立つ陣屋かな草枯に宇津の餅屋の床几かな鬼灯も髪結草も枯れにけり草枯れて藁屋の雀痩せにけり煙らしてゐるお地藏や草枯るゝ草枯や提灯も張つて田舎宿北嵯峨へ草枯道の岐れかな草枯や鳥羽を目當ての松一と木草枯れて古沓はかずなりにけり草枯に染物を干す朝日かな武藏野や枯れては土にかへる草草枯に黑き漆の挽目かな草枯や繪馬落てある稻荷道草枯に椎の一木の日影かな草枯の日南に下りし鴉かな草枯れてさはるものなき夕日哉草枯るゝ賤の垣根や枸杞赤し水草や水ある方に枯れ殘る夕顏の枯にし宿や狂女住む枯芭蕉咳もるゝ小窓かな律院に薄き日ざしや枯芭蕉枯芭蕉靑銅の塔寂びにけり病院のはげたる壁や枯芭蕉なか〓〓に畫師の庵の枯芭蕉枯黍の根をさかしまに垣穗かな色卽是空蓮かれ〓〓となりに鳧枯蓮に池を寒がる後住かな蓮枯れて樓臺高く仰ぎけり蓮の葉の完きも枯れてしまひけり落日の咫尺に枯れし蓮かな黑谷の鐘に枯れ行く蓮かな勤行の鐘が泌み込む枯蓮枯蓮や鴨二つ居る野の小池の部四一五裸北乙同碧梧桐同蝶虚五同八重櫻同同同同同同蘆梧同同子鳴小子句九萬字蘆鬼未南銀天河一玉工字木涯衣子規月櫻歡月規佛仙城央星浪鬼
枯冬菊大菊も次第に枯れて仕舞ひ鳧枯菊に粉炭ほしたる筵かな菊枯れて土に落つく霰かな枯菊や茶山の裾の一軒家枯菊やごぼりととれし鉢の土鉢ながら轉げて菊の枯れてあり大菊の見事に枯れし花壇かな佛眼の輝くや菊枯れてより石に菊たわゝなりしが枯にけり枯菊に夕鳴く小野の鴉かな菊枯れて松風寒き夜となりぬ風垣をして菊見えず枯るゝ頃丘の町菊枯れて立つ小寺かな枯菊のいよゝ曲るや地の凹み城おりて古き家あり菊かるゝ枯菊や女の有所知るゝ頃丈高く枯菊立てる時雨かな背戶の菊枯れて道灌山近し枯菊に氷すてたる朝日かな枯草を食み行く馬の肋かな枯草の靡ける伊吹颪かな草枯や放生にゆく魚躍る草枯ていよ〓〓土の黑き哉藥園の草皆苦く枯れにけり草枯の百里を割し封土かな雷裂の松代る丘や草枯るゝ草枯の山二つ鵜の名所かな草枯るゝ日々猛く伏せぬ籠の軍鶏枯草に盜人や米こぼしたる草枯に人放たるゝ國境草枯にかまつか色を殘しけり木を下りて柚の尿や草枯るゝ枯草の砂利を敷れて仕舞〓草枯に松一寸の綠かなの部四一七把花樣碧句鳴同十步老〓靑月同同碧梧桐同同同面童栗囚兎坊佛雲月〃子躑菫麥同師午一鳥不白波洋六癖三白左衞門不喚樓規竹人躅哉堂關山貧靜〃花醉人面童栗囚兎坊佛雲月〃
枯尾花仕置場や尾花は枯れて六地藏枯尾花水無き谷の續きけり靡くなり須磨の上野の枯尾花狐乘せて馬も遊ぶや枯尾花城跡や五段平に枯尾花尾花枯れて野川二すじ三筋哉尾花枯れて唯逃水のあと窪し住み捨てし狂女が宿や枯尾花橫ぎりて狐消えけり枯尾花枯尾花松がなくなる峠かな枯尾花日の洩る松の下枝かな野狐死して尾花枯れたり石一つ枯尾花燒場へ曲る小道かな枯尾花水なき河の廣さかな枯菊や降らば雪なる空幾日白菊も黃菊も枯れて茶色かな枯菊の下萠に又の花想ふの部四一九枯菊に旭つめたき畠かな蝕みて葉なき小菊の枯れにけり枯菊や時雨の雲のありどころ枯菊や參り納めの小さき墓枯菊に辛き煙草を干しにけり枯菊や淋しき院を一人守る枯菊をぬきたるまゝの花壇哉咲き化けて高く枯れけり大婆菊干傘や枯菊に遊ぶ餘所の鶏菊枯れて雨佗しさの小庭かな我垣や黃菊も枯れて力なきさかりより荒れける菊や枯れに鳧枯菊を切る力さへ病後かな枯菊の中に小松菜やせにけり汽車の煤に菊枯れ〓〓や庵の冬枯菊に鍋墨搔いて雨ざるゝ菊枯れて尖りし庭の石寒しの鱸子澪白櫻蝶竹鳴同句同東洋城同同獨著碧梧筑行森衣江桐冷雲佛規子水崖荻蘇靜拙君鶯鳥龍左辰鬼甲影鳴虚六八重衞佛水坤帆堂郞子〓城門生明花史櫻南雲球
枯枯鷄頭芒冬の白粉は冷たくなりぬ枯鷄頭陶工は土に生きけり枯鷄頭庭荒れて繪にならぬなり枯鷄頭枯芒北見ゆる窓未だあり月見せし丘の芒も枯れにけり船つなぐ大きな石や枯芒橋裏へ逃げし小鳥や枯芒枯芒狩場の割符拾ひけり毛を刈らぬ馬の脫毛や枯芒落武者の鎧捨てけり枯芒此奥に小町塚あり枯すゝき人の〓げし芭蕉塚あり枯芒みな枯るゝ軒の芒や比良面射崩れの射垜のまゝや枯芒寢支度の乞食追ひけり枯芒枯芒硫黃流るゝ溫泉尻かな奥山に逆卷き枯るゝ芒かな埋れ井に芒も枯れて野原哉尻無の野中の水や枯芒枯芒埒飛び越ゆる野馬かな古道にのこる茶店や枯芒野良猫の人に驕るや枯芒藁塚のつゞく堤や枯芒からげたる繩のゆるみや枯芒七湯の烟淋しや枯芒枯芒人呼ぶ茶屋の婆もなし枯れ果てし尾花が下や笠の骨狐火や消えてはもゆる枯尾花拔け穴のしるしの石や枯尾花尾花枯れて松に風ふく名所哉鉾杉の下に枯れたる尾花かな野狐の尾も交りなん枯尾花枯尾花沼のあなたを人が行く風さそふ念佛の鐘や枯尾花部四二一鴨射不喚樓把同蝶同同子へき生香射雉子郞幽碧木一靑柿泰藤柚虚樂師草普澪裸碧露十樓二散桐南子子木童月堂嵐園山吉翁明堂竹笛羅村石栗衣規居石村明兎白
枯枯冬蔦蘆枯蔦や賣家覗く破れ門枯蘆に漕ぎ入る靑き水棹かな枯蘆や垢で沈みしすたれ舟枯蘆に吹かれて遠き白帆かな枯蘆の猶立つ雪の古江かな枯廬を吹き折る松の嵐かな枯蘆や月夜に歸る舟の影湖廣く唯枯蘆の戰ぎかな漁歌絕へて枯蘆に風渡るかな枯蘆に獺の脊光る月夜かな枯蘆に鴨のこぼれ毛かゝり鳧枯蘆に燃えつく舟の篝かな枯蘆や湖畔の隱士肺を病む枯蘆や囚人遲々と船に來る歌枕和歌の浦曲の蘆枯れぬ枯蘆に崩れし岸の蛇籠かな枯蘆や劒を植ゑたる城の堀の部四二三枯蘆に火が花かとも燃え移る夕川や蘆の枯葉の風が鳴る枯蘆のすきまに星の影を印す枯蘆や風にもつるゝ釣の糸蘆枯れて鴛鴦の会の流れけり蘆枯れて古き流れや冬木立蘆枯れて氷りつきたる小舟哉蘆枯れて落月印す水や空蘆枯るゝ流れの果は汨羅かな枯蘆の寄洲盡れば帆を上る枯蘆に待つ鳰出でず舟の窓枯蘆を刈りて洲崎の廓かな枯蘆につゞく千住の木立かな蘆枯れて落雁もなし鳰一二船も來て荒地整理や蘆枯るゝ蘆枯れし江の夜を鳴くや餓狐鷄頭枯れて水仙のびし垣根かな挿麥蝶雀梅洛矮松湖南蠻寺舟落夜悠二子佛規丈居水水巨星楓莊南松塘月雲天衣靑麥句松紅虚碧梧同柚同雉子郎同子同同六村滋露人佛宇綠桐子翁翁規花家
枯枯枯枯枯枯葱枯無花果茨葱萩芝菱葛冬のの加茂川は葱洗ふより冬ざれぬ野鼠の穴凍てにけり葱畑ある夜葱筑波颪に折れ盡せり葱洗ふ野川の町に入る處山里や木立を負ふて葱畠無花果の鈍な枯れやうしたり鳧枯茨や牛馬の道の拾草鞋茨枯れて誰が畑の菜の綠かな〓鳴くや軈て日のある枯茨濡足の鴉あさるや枯茨戒律の山門外や枯茨枯惑つる棕梠繩も覺東な枯荵雨戶の破れより見ゆる葱さへ枯れて疎遠や郞の足枯萩に霜の花踏む小鳥かな萩枯れて紅箋落ちし爲かな葎なして萩ともわかず枯れはてぬ部四二五枯萩に時雨の塔の年かな萩枯れて寒き砧を打つ家かな枯萩や鐘つく時の我淋し萩枯れて思淋しや寺小姓萩も菊も芒も枯れて松三本枯萩や日和定まる伊良古崎枯芝に野施行の灯を捨てにけり枯芝や田中に小さき辷り山的干せば枯芝に遠く鳥語ある枯芝や虎落に掛けしスラダ織枯芝やくすべて黑き狸穴菱枯れてあらはに池の小鴨かな老松にからみしまゝで葛かゝる枯蔦に夕日悲しき土塀かな枯蔦や瀧の雫に氷柱して枯蔦の草鞋にかゝる日は暮れぬ枯蔦や石につまづく宇都の山四二四部堇東鬼路愚蝶杏眉碧梧子子田秋同六同同金毫鱸霽同東洋城同子矮村里著不知美桐紫子保五六同一江月規松雨葉石森星郞朶規金毫士英規規皎子月桐汀臺佛丘衣史花江月規
冬法の灯の寒さに盛るや葱汁夜半の灯や厨に葱の有り合す一もじや足引の山にかくれ住む鳥影の夕暮寒し葱畑戾り俥の蹴込の中根の深かな貧厨に葱咬む晝の鼠かな一もじのこゝにさすらふ門流れ葱買ふて山法師かな市女かなあつものゝ葱や寒山ふとし來る百菜に葱潔き市場かな板の間の灯に白銀の根深かな玉葱の煮えくづれたる小鍋哉玉葱の眼をさす高き香りかな帆を干すや奈古の浦家の葱畑葱汁壁蹴る馬に驚きぬ葱作る二三の漁家や松の中葱畑や赤城の雪に日晴れけりの部四二七俳豪の僧境涯や根深汁佛說の一疑得解けず根深汁雪晴れて日の入る葱の影法師葱畑に蛸壺捨てしあからさま葱洗ふ前に廬山の暮色かな瘦葱の中に菊ある小寺かな根深汁城下の飯の白さかな葱さげて小者通へり一乘寺葱畑の高きに日あり朝の程海女の戶に葱の香聞きし鴉かな徵發の葱引く背戶の夕日かな葱汁の膳にさしたる朝日かな葱盜む長者の果の繩目かな葱食ふて油なき夜となりにけり葱の香の高し莊夫の五六人親むやとまり〓〓の根深汁一もじに妻葛の葉の向刀かなの部象雉子郞耕洛燕居同同素野山無三紅句同同禪寺洞同梔浦村外同同華蝶田同同同月同癖不喚樓三同同竹六士英三園衣舟梔浦士英三泉鳥子黃城葉佛村外園衣舟允醉冷花
蕪菁冬蕪汁に枇杷は今花盛りかな水仙は水桶にあり蕪汁二法師の中に冷えけり蕪汁都戀へば尙更淋し蕪汁蕪汁聖健啖におはしけり蕪汁に人生けるなり雪の村蕪汁に床しといひぬ小野の炭蕪汁や我が俳諧の時雨腹蕪切るに千枚漬の巧かな〓室成る蕪贈つて祝ひけり蕪肥えたり蕪村生れし村の上蕪漬せばや辰馬の酒の糟寸泥もつけず蕪の眞白かな葉を切つて趣もなき蕪かな緋の蕪の葉をくふ蟲や霜ながら生きのこる老のまどゐや蕪汁蕪汁腹は北山しぐれかな我が蕪贈る天下の二人かなかぶ作る大百姓や聖村蕪汁木辻の遊び佗ぶといふ朝畑に葱ぬく僧や峯近し貝塚のところ〓〓や葱畑葱汁や名所も知らぬ宿の者玉葱を秤の皿に四つかな葱の香に我畑と知る夜道かな葱沈ひ馬洗ふ畑の流れかな葱洗ふ川を氷の流れけり阿蘇晴るゝ日數に葱の坊主かな歸りたる夫機嫌よし葱をとる葱嚙んで法の心を佗びにけり釣瓶竿吹き倒す風や葱畑葱ぬけば三寸白き寒さかな葱畑に一つ殘れりちゝろ蟲葱切つて目をさす香より淚かなの部四二九同同彩裸癖三醉東洋城同子六同同虚淺同鳴同同同同同碧梧桐握飛眉雪〓師藍躑零餘子著鳴照十步老茅球木規花子葉月泉月城虚竹雨躅森球葉
無曳冬の故里や蕪引くころ墓參り女どもの赤き蕪を引いて居る凍て土に葉の引ツつきし蕪かな疣なしの鐘撞く寺や蕪汁莖ながら結びて蕪を木に干しぬ蕪汁に僧眼を病んでおはしけり廻り持つ十人講や蕪汁關寺は松に時雨れて蕪汁蕪汁に臍なぬくめそ浪華人佛工の時なし飯や蕪汁蕪汁や帶解祝ふ膳まはり一宿の僧の朝寢や蕪汁唐臼の眠る日向や蕪を干す聖すむ湖南の村の蕪かな柴折てつき挿し食ふ煮蕪かな天明の蕪汁食ふて俳諧師うれしさよ新干蕪軒しわる舌の上に崩れて溶くる蕪かな蕪汁莚屏風の妹脊かな紅蕪の紅流れずや濯ぐ水讀み出でしホ句こそ蕪の功德なれ雜喩經蕪の功德說かれけり槇の戶の日の面に赤き蕪かな凡百の味を一味の蕪かな草庵の椽に寢干しの蕪かな蕪汁や書架のから檜葉枯尾花十二人二十四椀や蕪汁莖ずれの絹の音する蕪かな蕪畑や丘を崩しゝ大うねり大蕪小蕪ホ句も上手下手國富て共强く蕪大いなり拔き見れば下和が壁の蕪かな僻阪に住みて蕪の句宗かな蕪汁や花石蕗寒き流し元部四三一月竹同三同象射靑靑同櫻磈子同同梧紅山梔子同觀堇尙白又竹の門同同子燕桐春櫻坡子梅露八重櫻淺規郞舍郊痩聲魚哉山山新石嵐綠々舟冷寅外月茅
大大根引根冬の田鼠はいつ逃失せて大根引大根引の尻に川風尙寒し武藏野や大河を尻に大根引大根引きて後高低の畑かな湖越えて時雨るゝ比良や大根引大根曳く村人見れば日和かな大根の引き殘されて拔け出たり尻はし折て大根を引く詩僧かな花嫁は小きを引く大根かな大根引て葱淋しさよ畑の緣大根引午砲は聞かぬ野なり鳧大根や晩歸の鍬の五六本此里や大根白く家古し大根の白きに野邊の月夜哉掛大根砦のごとし畑の月弱き日の干大根に漂へり大根を肩に鳥羽繪の法師哉たそがれて大根白き山家哉干し足りて漬くる日近き大根かな方領と宮重と大根の尾張哉大根干す竿に並ぶや四明峯荷車に積み行く練馬大根哉里川や洗や大根に黄昏るゝ大根を運び暮れけり背負梯子大根のその太さかな長さ哉風吹いて干大根の日向かな遠山の雪と洗ひし大根かな大根干す檐の日向や鶸の籠引き捨てし蕪に寒し畑の月引く頃の近江蕪や比良の雪桃源の道に引き居る蕪かな蕪曳き近江聖人を語りけり歌よみの尼も出てひく蕪かなよつと引ゞひやうとぞはなす大蕪部四三三月彩挿白水郞東洋城紅露竹鳴同左衞門不葦湖射甲濛雨生歸麓園伯十步老蝶三無曾左運へ麥東洋城子蘆菰死雨射子村雲雲綠月冷雪休天風石北洲衣川黃き人規仙堂洒囚石規
干切菜f冬の住みよげの庵となりし掛菜かな菜を掛けて古き煙草を外しけり押しよせて更に釣たす干菜かな干菜食うて尻たゝかれぬ赤い牛巨濤捲いて漁家を呪へり吊干菜破壁に蓑蟲老いて掛菜かな古繩にからびついたる干菜哉繩切れて干菜に鷄の遊ぶかな川軒や軒の干菜に寒く寄る妻ならん掛菜外して入りに鳧卵うみてなき居る鷄や釣干菜妻ありて干菜掛けたる帆桁哉土藏の月干菜見えぬまで暮れにけリ古塀に鼠の上る干菜かな風吹けば軒を動かす干菜かな人戀し掛菜の窓の夕嵐戶開くれば顏の前なる干菜哉落葉焚く烟りのかゝる干菜哉夜の戶に掛菜すり合ふ嵐かな北窓を塞ぎがてらの掛菜かな掛菜して栖むや枯木をよすがなる梢荒れ鳥の栖まぬに掛菜かな君が手のつめたき戀や干菜編み一村は干菜吊る檐日午なり旅籠屋や山見る窓の釣干菜したゝかに干菜釣りたり一軒家切干や小さき寺の開山忌痩馬の野に出仕舞や大根引大根引娘一日笑ひけり後押の吾子ありけり大根引く土凍てゝ引ぞ煩ふ大根かな閑なる御料の畑や大根引大根引股から富士を眺めけり大なるを曳けば二股大根哉部四三五射未田士英十二樓指片松十步老虛麥蝶愚呂碧梧桐竹紅同雷死久同北同靑同露同子蝶柚香岳雷死久雪不知火三四三四石央月水圃明人衣佛柚冷葉涯々月規衣翁居樓村川
冬冬寒竹の子菜冬のの雪の年寒竹の子に富みにけり山門に寒竹生えて箔剝げる寒竹の子に虎の子を〓きけり寒竹の子に灌ぎけり湯婆の湯寒竹も其子も寒き月夜かな草の戶や寒竹の子の一二峯靑きのみに日を吸ふてある冬菜"畷なりの雪に日强き冬菜哉雪信が庵のぐるりや冬菜畑水引くや冬菜を洗ふ一構女よき橋場稻扱冬菜場所家々や日受選みて冬菜畑軒に積む薪の上に干菜かな柴垣の干菜淋しき月夜かな外し來し干菜の束や臼の上蠶室の日當りにする掛菜かな掛菜する森の豪家や花柊機の窓干菜の影今日も夕書樓より隣の干菜見る久し鐘撞かぬ撞木にかけし干菜かな頸延べて馬干菜食む軒端かな晝閑に干菜音無し雨二日拔け落ちて黑木にかゝる干菜哉魑魅出る寺や月夜の釣干菜時雨るゝや干菜かけたる寒山寺部部終四三五南花溪樓子同水輟孤茂桂同堇露禾〓鷺同同稻芹蘇小檐錦獨柘榴庵靑雨坤酒月蠻規翁耕村樹株哉月黃流江行鄉
昭和四年一月十五日印刷昭和四年一月二十日發行春·夏·秋·冬·各册纂新俳句大全金壹圓貳拾錢纂新俳句大全著作者現代俳句研究會東京麴麴二丁目三番地萩田卯發行者東:市麴區飯田町二丁目五十番地松岡虎王麿印刷者東玉〓麴町區飯 町二丁日五十番地京華社印刷所印刷所東京市麴町區飯田町二丁目三番地發行所資文堂電話九段二七一五番振替東京六二四八七番
高木蒼梧氏著作集高木蒼梧·三浦十八公共編年刊俳句集昭和四年版版郵價四、一六函入一圓九十錢料十錢幸田露伴博士題字·高木蒼梧編大新修歲事記正價·阿特金記金額郵送料六俳句〓究會編俳聖名句選白田亞浪·高木蒼梧共編古今壹萬句選模範高木蒼梧著評凡兆俳句全集釋菊半截特製定價金八十錢郵送料六錢四六版洋裝價壹圓五十錢郵送料十二錢菊半截洋裝價壹圓貳拾鐵郵送料六錢白田亞浪·高木蒼梧共著俳句の作法新しき菊半截特其中の人錢錢製國會議員菊半截定價金貳圓畑喜代司著洋裝送料十錢泰西名詩の味〓方藝術的香氣豊なる彼の美しき泰西の名詩篇を繙く人々の誰しもが、その尊嚴と精致の麗筆に驚嘆せざるはないのである。されど異國には異國の風俗があり習慣がある。それをそのまゝ取り入れて果して我等の胸にぴつたりと當て篏つた藝術として尊重することが出來るであらうか詩壇の新人畑喜代司氏が本書を編まれた所以は、卽ち泰西の名詩を味ふべき鍵を世人に贈るためである。西歐の名詩に接せんとする人は、先づ本書を繙かねばならぬ本書は泰西名詩篇の唯一の調味料である。定價壹圓廿錢百田宗治編四六半截特製美本送料六錢小曲新辭典眞畫に夢を見るのは若い人々の共通性である。誰か詩人たらざるものがあらうか、詩は人の賢愚、〓養の多寡によるものではない。詩は若い人々の胸に咲く花である。作詩は卽ちその多情多恨の感懷を卒直に詠へばよい。たゞそれを文字で表現すればよい。が、そこに作詩上の技巧が要る。形式がある。本書は抒情的小詩篇の作法と、人生の凡ゆる場合に於ける數千の語彙を集蒐し、名家の且つ語彙の組合せ方を示して何人にも自由作例を示し、自在に詩が作れるやう懇切に編纂したものである。發行所東二六京東替振三ノ二町田飯區町麴市京番七八資文堂書店
文學博士幸田露伴閱■評釋芭蕉の名句。いなく尠所るす益るあで料資好の上作句で上作句はとこるす究〓味玩讀精を句名の聖俳古てつとに人るすとんさなを作句本美裝洋截半菊書叢釋評句俳もたし施を釋評に切懇でん選を什佳吟名の哲先古は書叢本圓壹各價定岡倉谷人氏著■評釋其角の名句岡倉谷人氏著■評釋嵐雪の名句圓壹各價定吉田冬葉氏著■評釋蕪村の名句錢六各料送臼田亞浪氏著〓評一茶の名句臼田亞浪氏著■評釋子規の名句

嘴星

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