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芥川龍之介 大正六年七月十二日 俳句二句 昼の月


ガイダタマをなしたよ唯人造ダイヤだがねボクはもうぢき東京へゆく桐佐ででも一杯やらうよこの間の車中の句を録して君の蒙をひらかう


朝焼くる近江の空やほととぎす

麦刈りし人のつかれや昼の月



[大正六年七月十二日 池崎忠孝宛]


がいだたまをなす なにげなく口をついて出る言葉が、すべて珠玉のごときすばらしい名句になっていることをいう。 詩文の才能に秀でていることにたとえる。



薄命の花 福地桜痴 著春陽堂 1902年


薄命の花 福地桜痴 著春陽堂 1902年

芸者の来る茶屋か?

 なんにせよ和歌のリズムが薄らぎ俳句が極端な破調から落ち着き始め、省略の形が見えて来た。

麦刈りし人のつかれや昼の月

 などは麦刈に疲れた農夫が腰を伸ばしたところに浮かぶ昼の月が見えるようで「つかれ」と詠んで腰を伸ばして空を見る動作が省略されていると読むことができる。

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