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芥川龍之介  「椅子を降りまはせ」

敬愛する室生犀星よ、椅子を降りまはせ椅子を降りまはせ

兎も片耳垂るる大暑かな
さみだれや青柴つめる軒の下

[大正十五年五月三十日  室生犀星宛]

五月に詠んだんや。

破調

兎も片耳垂るる大暑かな

按ずるに「垂らす」或は「垂らしたる」とSの音はひりては大暑の感じかぶさり来たらず。「垂るる」と改めたる所以なり。

[大正十五年六月一日  佐佐木茂索宛]


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