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芥川龍之介 大正五年二月十五日 短歌 九首

田端にてうたへる

なげきつゝわがゆく夜半の韮畑廿日の月のしづまんとす見ゆ

韮畑韮のにほひの夜をこめてかよふなげきをわれもするかな

シグナルの灯は遠けれど韮畑駅夫めきつもわがひとりゆく

ぬばたまの夜空の下に韮畑廿日の月を仰ぎぞわがする

ぬばたまのどろぼう猫は韮の香にむせびむせびて啼けり夜すがら

韮畑韮をふみゆく黒猫のあのととばかりきゆるなげきか


 東京にてうたへる

刀屋の店にならべし刀よりしろくつめたく空晴れにけり

冬の日のかげろふ中に三越の旗紅に身を細らする

日本橋橋の麒麟の埃よりかすかに人を恋ひにけらしな








[大正五年二月十五日 恒藤恭宛書簡]


【付記】

 この手紙には「文ちやんは多分もらふだらう」と書かれている。それでいて「なげきつゝ」と始めて「恋ひにけらしな」と歌うところがひねくれている。私の本を買わない人と同じくらいひねくれている。

 それからみなさん、noteがどうやって運営されているか考えたことありますか?

 無料の記事を10個読んだら、100円の有料記事を1個読んでくれても良くないですか?

 それこそ社会人としての常識みたいなものってお持ちじゃないですか?

 デパ地下の試食にご飯持って行きますか?

 それこそトイレでうんこしたら水を流すくらいのことじゃないですか。

 ああ「竹の芽」ってタケノコじゃなかったんだ、という情報が毎日ただでいつまでも手に入ると思っていますか。

 常識を持ちましょうよ。

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