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さうかしら指の太きは人の妻 芥川龍之介の俳句をどう読むか169

惣嫁指の白きも葱に似たりけり

 大正八年十二月二十二日、斎藤茂吉宛の書簡に添えられた句だ。

「癆咳の頰美しや冬帽子」「惣嫁指の白きも葱に似たりけり」—僕は蛇笏の影響のもとにさう云ふ句なども製造した。

百艸
芥川竜之介 著新潮社 1938年

葱に似て指の白さも惣嫁かな

葱に似て指の白きも惣嫁かな

切りなづむ新妻ぶりや春の葱

人妻のあはれや春の葱

妻ぶりに葱切る支那の女かな

 ……など類似の句があり、なかなか剣呑な句だ。何が剣呑と云って、

切りなづむ新妻ぶりや春の葱

人妻のあはれや春の葱

 ……と「人妻」「新妻」「支那の女」「惣嫁」が交換可能な言葉のように見えて、これが誰のことを指しているとしても「お前の嫁は最下層の売春婦だ」と言っているように読めてしまうからである。

 総嫁、惣嫁とは広く知られている意味では「路上で客を引く最下級の売春婦」のことだからだ。

「そうか」は勿論「惣嫁」又「總嫁」 に考雜とされくかて江戶の夜鷹に比すべきものである。

かくれさと雑考 : 売女値段考
売春婦論考 : 売笑の沿革と現状
愛慾三千年史 中山太郎 著サイレン社 1935年


日本俳書大系 第15巻(通編) (俳諧系譜逸話集)

 あべこべになるケースもあり。

日記紀行集

 これはサンドイッチマン。

大阪市史 索引


 ただしここには一つ注意が必要で、まず萬治二年(1659年)の『高屏風くだ物語』では「そうた」と書かれているらしい。調べてみるとポルトガル語であるとか、カルタからきた言葉だとかなかなかややこしい言葉なのだ。Sota、王妃、あるいは女王という意味らしい。早歌(サウカ)と「そうなのか」の「さうか」とかけられた狂歌も詠まれた。

江戸時代のさまざま 三田村鳶魚 著博文館 1929年

 語源も転じ方も結局よくわからない言葉なのだ。(※三田村鳶魚は惣嫁はソウカ、早歌はサウカと書いているが、総菜はさうざいである。)

日本随筆索引

たとへば惣嫁といへる辻君の、日のくるゝを待ち兼ね、世上に徘徊し、物心おほえてより、其ながれをたてて、五十にちかき頃まで振袖を着し、始もなく終もなきこそうるさけれ、とある

南蛮更紗
新村出 著改造社 1926年
一茶叢書 第2編
能楽談叢 横井春野 著サイレン社 1936年


近松名作選 : 標註
和歌山方言集 杉村楚人冠 著刀江書院 1936年

 和歌山ではソーカらしい。

江戸時代のさまざま 三田村鳶魚 著博文館 1929年


裁縫之栞 : 普通教育 香蘭散史 著此村欽英堂 1903年


日本花柳史 山根秋伴 著山陽堂 1913年

 こうしてみてきたように書かれていても、三百年も前のことはかなりわからないものなのだ。

惣嫁 上方俗語、淫賣婦のこと、寶永頃の畫を見ると、黑布子に白の半衿をかけた振袖を着けてゐる。

大近松全集 : 解説註釈 第10巻
百人女郎品定 2巻 西川祐信 画八文字屋八左衛門 1723年


群衆と教化 加藤咄堂 著新興出版社 1933年

 しかし本所に惣嫁長屋があったのなら、案外芥川には、惣嫁という言葉が背伸びではないのかもしれない。

発句類題全集 1-65 [59] [正岡子規] [編]正岡子規写 1889年

惣嫁にも暁はあり初しぐれ ? 読めない。

京阪では惣嫁といふ。夜間路上に小屋を組んで數戶を開き、戶口に立って客を引く。舊幕時代江戶本所吉田町に最も多く、兩國橋東·永代橋西·御厩西川岸等にも出た。

新修百科辞典 三省堂百科辞書編輯部 編三省堂 1934年
大南北全集 第1卷 鶴屋南北 著||坪内逍遥, 渥美清太郎 編春陽堂 1926年

  男でも惣嫁と呼んだらしい。さすがジェンダーレス。

出口王仁三郎全集 第8巻


上田秋成集 有朋堂書店 1931年
諸道聴耳世間猿 5巻 [2] 和訳太郎伊丹屋善兵衛 [ほか1名] 1839年

 ゆきの人に袖引て両国橋で若衆の惣嫁。牛若ならで馬若衆……どうも男だ。そして京阪神だけにいたわけでもなさそうだ。ただ大阪では惣嫁と遊ぶことを「濱ぜせり」と呼んだらしい。これは大阪ならではか。

日本性的風俗辞典
花袋全集 第14巻

 こういう訳の分からない使用例もある。

新纂俳句大全 夏之部

お前みたいなひよつとこは藝妓の名折れだ、夜鷹め、地獄め、惣嫁、草もち、ざるそば、おたんちんのドタ臼め

浮世秘帖 : 猟奇珍談

 ざるそばにもそんな意味があったのか? 夜鷹蕎麦から来ているのか。


蕉門名家句集 第4輯

 いずれにせよ誰かの妻を惣嫁と呼ぶことは尋常ではないし、葱に似ているとは決して誉め言葉ではない。

惣嫁指の白きも葱に似たりけり

 この指は白いかもしれないが、太いのではなかろうか。

 さて、そして蛇笏とのつながりも見ておかねばならないが、大正四年の夏の句に、まず

白衣きて禰宜にもなるや夏至の杣    蛇笏

 という滑稽にして大胆な句がある。ここには「何かを禰宜に見立てる」という共通点がある。

 その前年大正三年には、

人妻よ薄暮のあめに葱やとる      蛇笏

 という人妻と葱の取り合わせがある。芥川は「その句境も剽窃した」として

癆咳の頬美しや冬帽子

 そして

惣嫁指の白きも葱に似たりけり

 と詠んでいる。このことから

草市の人妻の頰に白きもの

 に対して癆咳の人の頬は赤かったのではないかとみている。惣嫁指を禰宜にたとえる意匠は

白衣きて禰宜にもなるや夏至の杣 

 ここからきているであろう。しかし惣嫁指とは何なのかがどうしてもわからない。そもそも「さうかしの」なのか「さうかゆびの」なのかが解らない。解らないけれど少しは解ったこともある。

 それは惣嫁がわからないということだ。けしてそうかとはならない。

 肝心なことを書くのを忘れていた。

白衣きて禰宜にもなるや夏至の杣

惣嫁指の白きも葱に似たりけり 

 こう比較してみた時、惣嫁の着物の袖は緑だったとは言えよう。この書き方は色を隠す漱石張りだ。

 袖無がトレードマークの宗近君が藤尾を袖にする話として『虞美人草』を読み直した時、「袖」の文字が五十回も使われていたことに驚いてしまう。決してそうは気が付かせないが、確かに漱石はこのというものを意識している。芥川は緑の袖を詠まないで隠した。しかし誰かは気が付くべきなのだ。

 そろそろ。

袖引いて指の白きは惣嫁かな


飯田蛇笏著雲母社版
×-16廬集飯田蛇笏著雲母社版
川端龍子筆(著者肖像)
川端龍子筆(著者肖像)
{1(端龍干華)著者肖像)
3序なにが世のなかで最も地味な爲事かといつて、俳句文藝にたづさはるほどな地味なものは外にあるまいと思ふ。芭蕉の生活をながめてみても、彼が自家の集を生きやうのうち一つさへ出版してゐなかつたといふことを思ふても、實にうちしづんだ極端なものである。しかしながら、そのおもてにあらはれたところは其麼果敢なげな深沈たるものであつたに違ひないにしても、彼の心のゆたかさに想ひ及ぼすとなると、必ずしも外面に打ち見られるやうな1ものではなかつたと思ふ。私は、少年の頃からそれを古金襴を見るやうな氣
持でながめて來た。いつしか、自分の生活がその古金欄のくすんだ微光を追ふて、俳句生活に入つてゐることが自覺された。つもりにつもつた自分の作句を一卷にして上梓しやうとするに至つてゐることを見ても、最早爭ふべからざる事實である。芭蕉などの時代からみると、我々が現代に生をうけて、俳句の生活に入つてゐることが、可成り幸福を感じさせられることは瞭らかである。けれども、恁うした句集出版等について、いくぶん幸福を感ずるとはいふもの〓、爲事そのものに就て思ふ時、一生に果してどれだけのものがのこされてゆくか、おそらく多量のものではないことも瞭らかである。その點、いづれの文藝作でも然うに違ひないのだが量より質であるべき殊に此の爲事の果敢なげなことに於て、いつの時代でも變りがあるべきではないことを痛感する。この句集は、素より俳句生活に於ける私としての赤裸々なすがたである。といふのは、私の幼時から、昭和六年の終りに至るまで、三十有餘ヶ年にわたつて、さま〓〓なものへ發表した制作に、さらに自選をほどこして出來上つたものであるからである。いま、其等の記憶にとゞまるものをあげてみると、「雲母」。「創作」。「ホトトギス」。「小南-橫濱」。「俳諧雜誌」。「詩歌時代」。「みつやま」「芋蔓」。「朝虹」。「海月-伊豫」。「北-小樽」。「芭蕉」。「靑年日本」。「つくばね」。「穂蓼」。「光綠」。「うしほ-臺灣」「はざくら-伊豫」。「俳壇文藝」。「吹雪-鳥取」。「朝雲-朝鮮」。「寒菊」。「藁筆」。「枯野」。「土城-朝鮮。。「靑壺-朝鮮」。「東京朝日」。
思ふ。大大正正昭昭昭昭年代別山廬集昭和七年十一月十五日ものは深かつたものだけ多く採つてある。日報」。「山梨評論」等、その主なるもので、自分が選句に當つて關係の深かつた「大連新聞」。「哈爾賓新聞」。「國民新聞」。「山梨日々新聞」。「山梨每日新聞」。「峽中勿論、尙逸するものもあらうとは昭和和和和和拾拾貳參四五六目四五年年(昭和元年)年年年年年次百三十四句········(五二)峡中山盧に於て蛇勿論、尙逸するものもあらうとは七十一句······(一〇四)六十九句·········(九〇)百〇三句·········(七二)八十八句九十二句·········(一一〇)百十七句·········(二)頁(三六)笏
2明治四拾五年(大正元年)大大明治參拾八年明治參拾九年明治四拾年明治四拾壹年明治四拾貳年明治四拾參年明治四拾四年大大大大大大大大正拾壹年大正拾貳年正正正正正正正正正大正拾參年貳參四五六七八九拾年年年年年年年年年十六二十八句······(二九六)百二十一句······(二五八)三十九句······(二五二)七十句······(二七六)四十五句······(三〇四)三十六句······(二八八)五十七句······(二四二)三十六句······(二三四)三百三十六句······(二一四)四十一句······(二〇四)七十五句······(一九〇)二十八句······(一八二)七十六句······(一六八)五十七句······(一五八)三十二句······(一五二)六十四句······(一四〇)七十一句······(一三〇)七十句······(一一八)句······(三一六)句······(三一二)
昭裝著者肖像幀季題別山廬集和明治貳拾七年以前明治參拾六年以前明治參拾七年以前-百六同川十七年端龍句-子氏三五句······(三二六)句······句·····(三一八) C (三二二)
2春の宵早立初鍬蓬飾舊正月新春春湯始萊年春新春海大春山わ初雲一街へ船宵に和·路淺坂ら鍬ふ管路んの心齋橋寒々居即事三田尻驛頭に土地の俳人諸氏と別る山きやんやかの樹ほり年のやベくんのに春下笛枕春山の蓬にと起雲のさ溺司に舊年臥た萊行白きるがも立につ貯か正〓燈妙がもむつ年山水ばかざ月酒立のけちす灯のる池の旗つ春雲のり初湯かた山ぶをや故舟鸚忘たちかす泛詣で大る廬か飾か鵡賣女山かるぬみぶ人な力なな籠町な
餘冱返る春霞春の霜東朧啓きさらぎ風蟄寒畫ふ春夜別啓き如き燭温春春や春冱四春る霜をか蟄さ月さ光泉寒寒まさえツのき代の漁樵をこれの墨石庵らのらの東行庵靈廟開扉げくや別府郊外果秋の墓に詣でゝぐむか橋夜やめんいぎ凭ぎこむな墓にくへやを東てととのるのミりみ濡の尼るどはかし一門にだ古か行東手にれ僧山ろ風ん兒夜爐標は別を城ふ舟なお庵波ばひをぬをな府かそ二句にのか遲まものひせよする朧かとやくうつこだ まやは磯の餘寒かなくほあたき々ねふ片ごりどる老舖かなきぐすつそぶ餘寒かなも廬とどかよ傘つく枕旅泊餘寒夫のはもすみびちの齡人閾る旅さかか〓〓とかかなかかうかかののなしなななななちなな晝空
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15 14師冬の日霜寒初萩蘡菊走月さ冬莫冬常極極霜閨苫浪折ゑ菊盤月月房びのちり打つべくもな々月寒り と り木ややののかのくつら露とむる 葉のか坐灯ふ葉竈た邊の星るての火むの寒座さ花てけ厭むとみみのら 〓〓すきくみだゆつぬと浸ちれとるるお曉るもあのくふ染か冬巷桝もけ汐初野ま日のひに冬〓 り萩りかかかちごかけりかけななりとなななりけ り
16冬温焚火冬の風風冬耕石火鉢花晴冬溫燠松北風雪小古詣神雪牧こ冬耕石の風風花お柴り路山ふ〓岡晴東行庵即事ののつにや一團に逢ふ師走某日甲府錦町にて病院を出て來たれる男女のやち魚駒樓即事門まややかのろ大阪行八句や牛抱よきほて出さ木霽くえをきく〓と登屋入る々れ足神て杭ゼ率井古夜耳け山をの雪の雲を代緒のをの賽ゆのとは口禽てび徹たし古う足者る籬どしとをうてしたつけ實つのがとむるつぞるのきのるら射ぶすおる雪小光る焚火かな火女深雪雪ずてう天ほ露の鞭り桶ら夫氣雪えまけ井雪宴ウタゲかおかけかぶづかかたじしか曇となるなられななりりきなりなす
18草籔柑子枯枯寒枯寒念佛昭木葦蓮枯鯉河豚汁和見樹ほ枯枯寒ら鰒ふ君下のそ蓮く鯉り鍋ぐのうさひ食五しの-九十二句-や酌のろぐのぢふてつ醉このなあのて年瀧とひはわは籔がら袖つな柑枯るのざか恐ほがは子葦〓ふるる縮深るのてに揃もる酒やきく人のもあ鰭び冬ふよのふ實りやや孤影古-ぐ木小の深寒か一沼沼山古念二かとなつ哉尻川盥佛行な鍋
齒若飾正新煙柳忌春子の日遊愁行く春春深し朶菜月年野花春ゆ春春やまびとや採りもつ齒朶もお綠は山年新に紅愁くふと濃な國た遂ひに不歸の客となり畢れる煙柳君を弔ふ愛妻てる子夫人を失へる楚江君にど雲間庚午の春を迎ふ年山くや春かきやのついに草淨のき子ぎ年やにぬノて机こ白み廬端旅の〓ば日煙雲どたの月笠花ろのれま古なかゆりのに小るくな凭拜の道や松注るけ夜よりれむ一打連竈ての若煙煙ば佛枕たと菜ちや火山柳柳濃かつ眺竈かのも忌忌きなとばねむむ神な庵
香汗藥の日椿風爐茶涼しさ水疹夏香さ藥風印法紺陋い椿水ば獵爐籠廷靑卷ち寺やかや茶ににののじ雲〓やある眼八月侏るきり夜くふを女百げて影凉儒岨かほ難重んさに根微のそののとし咲のぐ凉空う顏雲はてけ椿とののるや咲しO)藥夜る魚あ〓きてせ山山餌凉百椿初板古ほ蔽長かか貨かめ鳴男哉ふ者なな店なぬる
墓扇競水納藥紫盂蘭盆蘇參馬泳凉玉紫こ山宵食お豪匂負遠納五蘇の川盆祿は華は馬泳凉色硯哉早逝すと報じ來るに轉た心を曇らす。草の秋文月十一日筑紫なる吉武月二郞の長子我が命名のにをしなしのや縷やや葉庵は流すたるく眼つの幽む何てややれ女ニョボ犯女のまたみか葉し墓裏て賊まみれにて墓參ひふはののじてもそふ參の浪くや扇扇むたへのむくかう風きな古されんやせときつの盆ぶりきた盆供かぶ人朝供月りに二君りら香をタかかのか煙けけ視三の肘ベなな水なりりりる段櫛枕
霧露野秋秋の日霜夜初秋分曇降寒秋秋霧湖畠庵野瀧た野旅飄霜佛秋旅さ霧中の分上ち祠人と降檀ぐ人琵琶湖畔紅葉屋假泊神戶に俳人と別れて歸途につく舞子驛に陶物師のわざを少時く面白しと見るぶもや露つやいににしのやちや山木よで秋夜の大秋て陶く霧露深し〓身にしみ〓〓と秋日日寒す秋屋も干く何瀨の日尊ものはにやのほのきのや上罩る月香後ら思ひのこすことよめつ秋つと園む笠ののるくおどよ日くは虧おののあたもミむし一るたけとふ花裏ごて秋り東つ翁ろ通雲にか返よ曇かか大かかふりと狆なしりりなな寺ななる雨水
山菊蟲蜻鹿解秋 の蠅芭蕉忌落し水夜添夜案山子鹿後の雛八秋の水薊蟲蛉夏學食水垣朔茅菊螽いくもどりつばさそよがすあきつ秋嶽老お解山う月月風やさ鹿しこ小ほさ燒蠅々鹿き夏がば虧遠雨がる垣ほの筧けけくのな草つたやてほどに弓矢すばやと眼忌をにまけきやく秋やて燼人角やむて近む又靑や南の雲のと薊の寺下敦茶す山江々百蠻丸ふた水夜山雲飾花笑ほ庵るど羽びま學風のう通濡ら穀盛濃こ織てのてたつ宿るみ塚ふの鹿ふじらるれひかしく窓けくるよのの案るか〓にのの飯心のもたを畦しとむのし夜し夜添山蔦けるに影あ秋づき夕淚十觀學落食水子ふしかなかり田けたか間かなと法か文世かししかかかづ菊面のひな暮ぶ師な字縒な儘水なななら雛節水
粟葛薄葉鷄頭秋茄子冬の霧冬年の暮冬の風晴冬冬深冬山行苅折ほ粟葉霧秋霧山風路く籠りけ枯鷄こ茄平等院の裏町所見やに年せる〓伯岸田劉生氏を深悼す昭和四年十二月二十日午前零時半溘焉として物故にとしれ頭め子木見誰穗り絮て漁やて遲のゆのがはての日人冥隣速葉干瀧ちは又のの梢土るもとし川りら離さ笠のの耕な花もご〓〓 のりるしの禽の花とおもき芒かな〓土くそをし古てののて干やすよめる冬だみらのう〓山日日しすび冬つ影和葛おつきか莚きすやのな日るかなsかかかう霧る和水きなななな
鷄霰茶の花泥鰌掘る褞冬雪近松忌一茶忌神樂袍服浪杣わ飄落鰌昨一冬痩玉行際山さ々月掘今二服馬あくややをとをるの泊やにら雲茶ぎふ火し襟れ鶲心ひ雲やにのむのてし風にのゞ花更水尉あ友ろ夜霰煙闌なき咲參いら誼半ふのけごぐてけではよをずりしとなむ雪るしなき過灯一つや志が神る褞褞のぐやて茶む賀れ近樂炎袍袍が答梢のた松のかかかかめかか寺里る忌忌ななななくなな林
昭和四-八十八句-年
正初松過ぎ去花がるた春初袋皷霞月年新花肅嫁ぬ慾二大聽初苑正酒表悔がとがひ無三殿きがの月ほ具いるしば某女の婚約成れるをしやとす端の一月二十日新縣會議事堂に初句會を開く。好晴。が師も年たあ文むのひやな夜閨てとげとい夜ふむや灘木玉倦松く々天い見立のみも古中てれかゆの地はくわお日つす年おの袋天るたあかたも和かぎうも〓灯やを地〓るりのりせてのたれたせ袋錢てるやるる愁ちひ花が縫ふにや君や初宿の田廬初がいら睦る月か爐小寢佗つありるや薫春春〓初かすか持かた君す袋袋み皷なみ哉なつな
燒二立早雪雪陽餘きさらぎ野間解炎寒月春春春燒古巖ほ大月ゆ春如き溪忘春早原め苔ど硯のくさ月さ橋るた春きも遠山庵即事を戶ほ江草如空庵にな春還山〓つのやむのらてうくひにど見きや日き大ぎ風月るに山深か山い春の眞ひほ山へ風か月雲ので立びとかふげのの墨こなご畫風しめしつろ くりほろ宿押滓き宿ぐ杣峽ないどふ深き山路りす固くのるものるづのむと水雪雪雪や月き二瀨燒雪峽影野間解解解山夜硯月音つ瀨法かかかかかか境かかかかゞか師ななななななひななななきな
虎春春雉百千鳥柳歸る雁田畑を燒く杖蘭鮠愁苅春雨鮠擊わ山天春籠蘭降かちら鴉氣愁を養ふ。二句盧後溪流のほとり、荒蕪のなかに池をつくりて鮠養の一句をもとめらるゝまゝに三月二十二日父錦風氏を亡ひし勝峰晋風氏迫善供やのるうとんよの遠やつベきわやま花け鮠水てのく水ほと艶獵田てひ引ころり草な矢の虎るたしやす咲に畔杖がにましへけ雁をついへたるもて燒さるるき雉子かつ槻名き百ぎ雲池の殘は佛よののもか千じかき中底となな鳥むな
靈燈抱夏歸老柘亭忌安更泉夏の露入生身魂薄鶯祭居籠籠帽衣省梅暑夏雲谷巷年水お蕭セウジヨウ牆夏似首空露入梅後雲間寄向ふも帽もな蟬凉架かざの卒逝せる小川柘亭君を悼むげやにのりやにをしつにくしうて墓も花て貧眼と鎌のれか歸竹夏結さ買信一ほひのらにぬ省の夏む鶯は心燈のに黑子んか葉の白げは"かにかい耀弱とけ降やたつ花に燈籠流しけ りだや裝は落たなり枝のるく束るてのなしか供竹戀日する竹薄の柘生ま養奴が中泉葛の暑さ亭身つかかた更かかのつかき忌魂るななき衣なな蔓ゆな
新秋秋の蚊帳秋高西風秋扇置く夜初秋の日冬澁繭雨風隣長秋新秋秋秋高秋秋秋はともに寢て墓秋澁の扇〓西霖風のしに微の繭に西村泊春君遂ひに長逝すとあるに病を得て久しく褥中に、苦吟に苦吟をかされたる風日歸庵途上り談に時を過す十月三日、醫汀波來庵。いさゝか恙をわすれて俳木のやや一しなに恙をや火ろ骨み秋蕨水壺草に一植だ闌ぐあか藥ゑゆと臥茶をけた枯らたをね夜ながたさぬれ棚れるか にそふ寢ざめれば鳴る瀨かなむも足のくて夢のく山もしくる一らき燈下もが小岨目初廬れ葉し秋かけ十かなの分ふ冬かなかなり本石量む隣な
橡の實栗柿解唐辛子秋の猫茨の實夏橡杣爪山雲茨秋送蕈クサビラととちの 樹のもみづるほどにおつ實かなとの山たが霧りの猫行とにとて實を示せば水〓の產たる君これを知らず即ち家つたま〓〓秋雲深き山盧を訪ね來れる吳龍君に橡の實つの靑やても實や目ののの高ちや柚〓の山枝嶽と川み山ネナ柿柿て大糸雨のの蕃タほ橡結又ま栗古椒燒どろぶのしに枯もに雲ぶか道實ぶ戀雲れ野ひづや柿ひをとかしらそ渡わつ〓麓か熟唐のた西つ哉る路なす錦景る東
48貉雪時冬ぬくし火狩冬の雲寒の內小日向ぼこ冬冬の水冬の 川鉢霞雨雪冬山な寂日體ガ冬冬冬雪藪冬冬寒い風小がきがと向業水川かみな雲暖雪有才といふ老婆あはれ深し下僕義政の祖母極寒炬燵に寄れる儘頓死す齡九十永井ノ里倫伽寺つらしほのややすえかやの呂やてこむやのはしらをつかむ炬燵かなひ日宿てや峯オ談に古座ま鳶貉そな雨雲朽笑上のたの木ギりしかたうぬち痴機あ爪鳴のしとに影ちく垣者嫌たをく鴉だめつ玉や嶽ぬをなこまる火鉢かなかな啞れしらうむのらなるむり々たしつ岩日すみ父繼五つ子狩りだ百和初とし子るだか疲つて重か時鳴けか絲まなれ〓み山な雨くりな櫻
鷄昭野和の參-百三十四句-す年こ仰向く風情か鷄し
淑正弓飾小正月三女禮者氣月日始新初あ宿い上小な爐院ん正つが弓な元ぎ正月六日より流感に罹り臥床十餘日尙起つ能はずかたやの月年醜んにこやりも氣遠世寂しくのに游然き射脂古と行睦のと月か粉るづおをしてのけめ爐とろたとてちて邊での目りふあのどたむをやるや飾淑むす三きつりま氣ゞ日た女かか邸むりかず禮なな內る筥な
〓霞冱返る春蝶蠶行く春蛙の子佛生會雪解明曉春蝶ど蠶屋の閑まちわぶ蝦夷夷そ蠶をめづ山切物ゆ〓雲冴春颯んの乞く明にえ曉寺株四眠休上原紅實君の來訪すとあるに生業最も原始的なる養蠶をこれたのしむ戊辰水〓の覊旅竹秋盡くつぼかの春鳶返ののややとりみわの富るるほどによ りそ路船展のの花雪た月士精ゆに產ブ土りに墓日さ解た舍の光て鵜くだくけかのナ神花あかの媼にき春をらし竹しすながあ日の搏しのくすしかなろにたむくふ妹背か念の雲るち蝌す渡頭宿甘る珠冴井枕に蚪蠶りけのか念猿かかか返かかり春なな佛茸なななるなな
帷裸歸夏香薷散暑氣下し菖蒲酒瀧泉夏の水麥の秋立子省館夏の風夏の雨夏夏めく夏香手かわ歸く誰觀山〓夏夏麥夏草夏〓弱たが省ちと瀑泉棘風の秋立鞋め六月八日人の誘ふ旅に市川古驛のほとりを過ぐ散女び好すつや杜にや雨つしくや保のらむ·るけし若花て風夏竹やや目や汗ひぇ〓〓と座にたゆふて卉痩夏養白る實ののふるすにを水をあ馬禿め霽なさみ人流あほら山くれ月ん古牽まわと聲るさぐはす渡雷にどるめきや暑氣下したりけき道〓きるなか舟のおし遠ほのるて去石野〓す一このと夜し磯るり菖蒲酒長た裸たり澤黃不つ市家娘りか夏てかか領グ蛇手淨ぎかかかぬるなな館きななな綱門なり
蟬螢郭墓靈繭花盂蘭盆飴納冷豆腐藺刈る土用灸白公參祭湯凉火靴深瀧しぶ溪郭香御た蓮う腹肱古藺を刈るわ驛い山墓山風公煙くのろくづ這枕家が路かの身延七面山歲々の休暇幼童姪甥共に集まり燈下童話をせがんで足をふみ首にまつはる、二句木の參ら葉ひそやこやな戶きにやにほのくににら冷とうこやほたやた耳一なとかにののと雲ね奴うすはかげろし古る火に じむほるか族み茄さ雨み繭動ゆがおろ白火だ子み降てもぜくすまくごほ靴をり見馬て舌うぎぬ蟬りりめも齋キゐかくす故山かなしづむ盆供かすにお飽婆のとなきもるやるのほつか々奏夜らふ笠ににの芹るき飴ぬやと山籔ベり生佛盆湯凉ね媼宵土てののかかなかか供かかどつくか花用かなな坊墓な哉なななもな火灸ず
61 60殘秋の晝秋秋の暮薔竹の實靑酸漿竹落葉晝夏木立暑曉薇顏秋杣秋秋つほ竹畑野垣霽竹桑人タの〓どの草茨薔れ落卷郡内大月句會歸途のや晝若山牧水の英靈を弔ふぬ遠實に薇やいや葉頰か一けてきに虻の夏溪ひへ基に寺靑と賣木晝裏秋のげりの酸顏山る女おあみ墓戶曉あ漿雨にも苔咲らすののけさ雀匂て岩かしなか花方きもかふの乾ぬ卉みみの殘るすや日へ旦雲るど暑小み秋雞カロロざのり暮がまりど女たのかしり見か〓なかき房る晝な哉時すなりきな
露名霧三日月暮の秋爽秋の日夜蚊帳の別れ帝秋の山秋秋展雨風月か寒〓帝秋霧誰秋秋秋粥新風石澄ゆ爽一果展山雨も雨風の炊月を橋みくかつて甲州黑野田宿ゐ宗用海岸所見悼角田湖舟く微恙即事にいやそ秋に家見やに風やや〓ぬや牧た秋めの日や秋旅賤枕夜草浪むて粟の露新笛日夜た籠がの觀の水チ瀨むけに月をの食さ寒具ど古身塵月むしらきたすふほ博ウタウ飥嵩づのしぶく秋日か中りをもすそなくふまれけ淺囚どでくれの句弟子めむのたよとのにわくすきよめる學るぞすめ光ら杖〓羽山焚ふ徒山か硯ありベのを路りか火境れか古へそかかなさ擴かありな屑ひぬな幣二三十ずむなきなぐなふ
64末葛鶉湖舟忌稻秋の螢秋の蟬芭蕉忌落し水案山子新砧枯刈酒う旅タ普籔湖時刈稻落耳の門ら人風陀の舟雨る刈し遠む前菩提寺龍安精舍枯に郡内桂川原-そのかみ芭蕉も旅しける樹をさゝやかにいとなむ十月三十日の夜小山村外れの野寺に角田湖舟の忌忌程水くろき即ち筆をとりて樣な大きな子息あるかと歲月流る〓の迅きにおどの父我が舊年の知己たるを認むるに早や舊友に左なにがし雜誌に揭げんとて句を徴し來る。書中某ほ落忌ややのれ行ややに田タ目どやや秋垂のて見おに山き山廬雲そ穗竹ら月佛風ののか顎彥のにれの飯かすしふにのねかのみゆやて雨けた駄たむあ微光みなそはせたへく鳴〓どふろ馬つるる案山子衛るけるすやかる晩ふ闇やる新山葛くる秋龍稻笠夜酒砧のの片秋の松かのかかかか墓秋鶉螢蟬寺な端なななな
時冬冬を惜む冬ぬくし樣 、團紅菌蔦茨の實木の實雨晴栗葉冬時黑冬冬冬榛團草吹泉紅菌篠雨坂晴病盡暖に栗籠き降り底葉山原來やれのや大谷山麓神社田ににに見御嶽昇仙峽にやわやし次や中けふ霧の子八實淵のながしきやの風あ日らぐぐかな威專のなどたたび訪が唐すかるれきし霽つか客れめれ出木る蔦こ葬のたにほたよれきる葉の木ほ道のむのゆやどのむく一めするきし木にら岨う頭小音山茨の實かの實か月栞ものつつか柴かのかのかみ石鐘てな垣な道ななな雨なぢ
焚冬座敷曆の果新曆賣出冬の水雪昔齋忌神炭鮒の寒釣冬の蠅湯送火婆昔八ッ寒冬も陶足い月家ひ古二か山齋のえ器のた雪守雪る霽釣た三平つ病病中、鍬澤小舖忌れや蠅た舖ベつやりくや尺萱老き二句月ほ中けのて このや古て自ま腰とてあやと雪凍猿た神にけ炎ただ芭り一寒然つ雪雪のをはりは蕉に卷薯し固むとを留さなのりを古も九蔓ぐ守めがる幽あゆりとのの軒け步るらつししすミめやるなむたむ水垣こき 湯穗とる餌臥戶焚火炭冬むる曆やを猿枯く火婆の麓胴かかかか座掛か厨垂肉かな由原亂なななな敷曆な甕る屋なり
昭和貳-百〇年三句-
雜山初織春鍬御正初破魔弓日記始煮始湯初著始降月春新汁翠破谷初初眉草端織春人戀鋤野火聖な帳魔雲山湯剃の山初なの々初社を芭くに弓着にや出りれへ焚蕉年戶路やとのてつやそててて高しおいかやを雨厭ら山びれ妻や磯姫魂く肉シシムラ湯降てすきぬきとめし破 魔矢かなて居の白曇凪のなみふり浦み〓くらこ流嬉り夜ごなりて氣機ぎ霽畠てつ くる子のたむろる々てをみの出樵を初しれ人お〓た縫た聞筆でるはやのはふ破るむたふるゆやし雲なタ睦す雜魔初十る小春煮矢どち湯機袖着初幣ニチナま月庵かなかこけか四初籬かか日かゐかのなろりな日め內なな記なりな春
雛雪花暖寒初祭解曇明卯春やくだ山〓暖寒玉う水か明夜ド床黎明にちかく必ず夢やぶれて雪げの音枕にかよふ中年の悲哀いつしか山中生活のうちに來り夜々のかやけのやくけののにのい佛惡雛鳴よ飯幣鬼餅きのをにつく干浸はぐ庵のつぞ〓りらるくふしし旦卯雪解か蠅花泉暮槌曇一かかかななりつなな
76柳山春躑藤田蠶蛙の子雲開種櫻蘭躅螺雀帳痘春の炬燵池い春尼山垣蠶一霽打ち開母たのば蘭寺藤津傭つれ帳のか面らやの田の浮〓乳どやののに野巖風やもく作ののな破はや苔卯す宿の蝌しにら盛か月こ水ツか蚪ごれほ唯りにけとり鐘みありら八しとうてどひつ給るとぶ日吹しきねまりし水面かなへ春みけくばくたのてるるのるゆし盛田飼りや種炬白るきや深柳り螺屋痘燵か山に躑かがか山山かかな櫻て躅ならな畑寺なな
〓籐椅子浴水瀧牡朝蟬蜥螢靈尠汗タ御祭風衣泳水立丹顏蜴祭夏花庖棧靑殪す鍼岸苔蚊タ小枕とはつたいをふくみた闌厨や蜥つきちは按にのとけや荒蜴さじくよだのう香ん立にてさまればか眼やほや假つ鉢瀨にのにのつのりま笠朝を熟泳袖水ナねゆすひかぐ答み着ふ顏こ嫉かを睡ひぎにのて底りのむ妬りのて姥のかごとか舐しらのとさこほす牡丹か實るのもぞす木ぶたけ波むり溯むき御祭風かの實る籐椅子すつほるぬを蟬やぶく瀧見かるむ汗浴るやむし大岩ら螢か聖靈棚馬衣溪すぐかかかかタ〓なぶれなななななな燒水な蛙な
月殘文秋の鷹秋秋秋の日初風暑月秋秋死ナヰガ骸月秋盆峽文秋秋白秋影の過底月ぐの猫や山中閑居柴垣を吹き古屏風のかげに二女袖をしぼる仲秋某日下僕高光の老母が終焉に逢ふ。風蕭々と日ぎの鷹や枕邊にて尾の切れし靑蜥蝪を弄ぶ九月一日の夜半ものゝけに不圖眼ざむれば庵の猫こ奥の細道幾度かこゝに親しむわれ〓にて書見する癖あり。蕉翁の芳野、更科、やややちののや穗古との秋榛田後時む家.巢か庭架風の刻し秋伏にけ池をか返喰 うか實をあのの旅をすつへよの暑の扉し日きるてふ枯きうむの調や尾ふた鼻れ假厠俄度月上閨ごのてかかかりのかの〓穴後な客な厠雨な秋ろ
秋の螢鶺秋の蚊帳鳴相八秋秋秋の霞鴒子撲朔富士の初雪雨晴た岩手生十小法情雲シ秋秋瀧秋ひま淵を死角廷こ間雨雨壺がる芥川龍之介氏の長逝を深悼すを吹き古屏風のかげに二女袖をしぼる仲秋某日下僕の老母が終焉に逢ふ。風蕭々と柴垣有斐閣小憩、人々物干臺に登りて四顧展望を恣にす仙娥瀧山盧即事し一齋句集の成るに際してやかのやはにやややすをひの棲どほ力八く秋禮田人む臥めや朔秋上てたむか雪容の松雪展る照のと白な締をみ客たや墓へ鶺りす裝る込さゆにむ古の鴒のば 秋〓束鳴するおろ竹ゆ一かカきをめのほたる哉とや子ン旅の二すやたんや秋一路秋屋つナなづ穗秋き臀シリコブラがの二見かかか三日敷のひ〓聲ゆななら穗和神風
瓢薄桔邯蟋蓑棗柘柿葛コスモス紅零餘子吾亦紅簞梗鄲蟀蟲榴葉池靑靑垣吹桔邯爐にみ寂厭な山觀あち瓢叢葛ふま柿楓ける簞籬瓢々間き梗鄲の莫やのお手金溪亭にと降や蟲とにくとや五風のすけほど先吾葉瓢やめをか見りや日しちちを秋やしのつににき亦た又のも ら枝六をすで籠のも顆い醉谷だ紅瀧が〓ち機の雨かろゝをすくふも手ろ哉ばい螢ひが客あちのきたたおた落咲る賢すかむのほこれもみ見ゆ曇ひつく轟〓しびつ〓ぶ雞翅たくしきへききてる零餘か子賤やるる枝精るる天岩蔓ききやすに燦を〓柘榴紅紅氣がは女瓢や女蜘郎蛛山とた棗かかなのさ舍か葉茶葉か合くなかか秋峠颪し〓れなな櫻口してむなきな屋ななひり
屏茶の花枯鷄爐雪春近し師落寒の內葉蓮風走各落野,ヅ阜あ鶲爐や積外日谷うや葉けき隱雪のを川登り靈境を淨めて山神を祀る藤垈金比羅堂即事丙寅霜月十四日病母の爲め忠僕二人とともに山にすやすてしくに座のあたや月うに一けやけ幣や棘に埋とに古ての神つ庵葬株枯股寂な憑ゆ春の莖引終たがく唫隣茶潰の〓るるる三一むるのゆ懸ま寒〓日の花る山ける屏風かな淨の師の影ざ蓮椒な机扉走法かかかが光かかか師りななしりななな
大正拾五年(昭和元年) -六十九句-
早元春北風立鳥春春追日春新春か早鳥歲北へ春旦追風早春展墓りの麥南のもとへ總州の旅より二月十七日夜歸庵とりあへずその地や麥南と〓もに我が尊崇宗吾神社へ詣づや年や樒つ庵芭さく顏出蕉し庵るよたたや旅きる春のへ地た紐につ二てのあ影人山眞ら法づ籠ぶ師れ紅り
墓踊汗草星夏梅盂蘭盆會雲參市祭雀夏さひさつ盆タ夏風山〓しるか市雲旅呂風訪ふきさらぎのはじめ總州の旅路に麥南の草庵生活をぐめほれのやあにやるきど身つ一二なやてにの俄くが箸た泣夜星汗かもてれそゞき冷をを鐘てふ一こなえへま盆供手と時の墓參かゑしぼる音頭取わきす庵の遠だつきたくつるる雲い月山善野梅かつ膚雀ばいかのの光かなな雨庵寺なな
火殘夜蕗薹忌十六夜の月名月暑長蛾秋か觀草ゆ秋ほ火蕗雲か蛾薹け月暑こ〓〓とを籠釜無川月見會即事た打はじめて蕗薹亡きを知る蕗薹と相見ざる十數年、弟さん二郞氏の文により橋やし忌追着つにや小のたやもふい者秋たてふ弑わこざ聖もみすれのミ暑とるよ牛してまむつとの夜ふにれづにたら永月灯花なくは修雨きををきすあすやの爐秋ら水と藻雲送暑灰ね濃のもか刈かどのり上す紫な鎌なも中盆
蔦桔蜩唐辛子秋の蟬蟲霧秋宵一秋の螢子規忌稻葉梗刈秋の蚊帳秋の山風闇唐白園鉢霧かひ秋か蟲月湖夜秋山秋す宵が紙生蔦のなぐ蟬りのさ沿の山霧風たや氏は生前頗る花卉を愛し其のつくるところの句も大正十五年九月二日篠原溫亭氏忽焉として逝く。らによの香くのそ夜そひやみらひややくしもりみにのひめのふま笹のしのと熟ら霧だ桔鳴しに更風やこ蟲に轡れふたれ梗きのと土けと闇家のにと宵ひにちおすう遠身這て定路の闇用道まりデぞのちがつのをふはむと子か意つか熟ぼたるりくだ秋の葛のるな秋遠じへやくすれるるてけく子のきりるし唐一諸山り聲風ほたるかな吹き規り〓稻家愛畠か葉葉路夜や情忌ぬが雲てす路馬かからかかか明雲山かへか稻くと雨ゞかかなしななな平ヲなすな車れ我蛙めなな
冬大年の暮草の花冬の風寒冬道冬極年三秋の風寒の冬は山居即事富士川舟行亦多くこれを詠ぜしものに秀れたるものあるを見る。溫亭忌と云はん。草花忌とや云はん。ベの瀨の今にやや塵ホ露北つ旅も句お風る人ともにさくしどつむむ草てめつきのずりむ乏灯岩て花女をし夫ふと狩ざ鍜厠すも日か冶紙ます記り
焚爐冬襟綿〓鷄佛山忌榾落昔齋忌火籠卷入葉燃焚曳氣や何頸襟襟綿み神山は山深ほ雲す小さ土れし山のにこ庵え火きに卷卷卷入ぞすさの爐火を十二月九日夜半故野田半拙家に其の忌をいとなむびのば木のややおす舟もにやにやるや搔ぐににぐるかとちやのか瞳思こ氣けとお狩とにて東も文" にゆのひ〓たや供冬て煙雪雜炊米ば鷄のら師日山もはの雲にうろけのみきう香のれれ走を子榾た樹はながくたき妻ににとでやら〓ちたほくあ月み醉火となき藁火かなにだるの身はあたきむる佗居かなしたたり夜たへのね眼着るつしるそやりる榾火かな下つ焚ぬやをるよ落ふぶ朴葉梢鶲鶲昔佛あく火冬女つ盲そふまる落かかかか齋山か靑モロガヘリ鷹か籠のむかほなり子るなふ葉なななな忌忌り
茶の花大正い日茶くに畠拾霜よ晴耕雨讀や-七十のう四山て花一年地茶び日の句-ら和花とにを咲かまくぐる茶命畝かかなな頭,
104雛早繪雙六歲木の芽蛙田畑を燒く行く春祭春玉春新土は夜野いゆた年億山くたの火きくど寄兆寺れく雲煙く春にり年のややとにやとや燃てこ高木鴉ひ吹ほ松ゆたののときそ柏早の〓々芽がきお目か春しろつ林るてくかすのみみふ小らどぐへむ火顏木田れややてご山ややののてくおけお山繪お芽蛙湖雛しかなかのかなも稼雙歲歲音な上てぎ六玉玉
梅日夏深し神夏の 雲木瓜の花鳴雨盛夏人夏汲つ山溫ち燒けう雲みゆの山る地獄谷の岨路に岳腹の砂防工事を仰望すとやも蠅溫道笹あときどの泉の山賤や溫るかのむ日泉人谷ら風のら雨に木瓜の咲きいでし宿崖川み船ゆ雨ににくもうきかあらぶ雷雨かなもつりと來ぶるるやりのる梅〓日す雨石の夏竹がかの盛深のるな上りし秋
葉合歡の花睡靈名越の祓盂蘭盆會燈櫻夏の山蓮祭籠ねは睡形靈盆信身山夏夏むざ蓮代棚經心一賤山旅の松友君夫人の死を悼むく上林廣業寺やややのつやにやや花らたしか母に風日用温やもばりかちに雨翔影とらそミ意泉るしにけとかくめはか山た越七るるては立なしでがゆ月雷見しちら世故の盆會かこ〓ふるの蝶ぬてしずきき盆身浮飯よ佛一尼會盆のくきのみか文一か燈日沈湯習一な字人み氣ふなな籠つ雷
111霧秋の虹秋夜砧秋の蚊帳初相無花果稻秋の蠶大角豆當藥引く撲獵風寒秋臥氣憎むをかしくば口や無山う山初一秋秋筆て折から花風ちの獵と虹風硯秋れら雨とよむと某の謂ふに「蛇笏」は季語の「せんぶり」又は「醫者ころし」果にま戶わかの白蓮女史をのをやわの顏ぬにやゆぜやた佳し思が一にた枯葉を雨らてふり景霧ばひ妻とくか餘れ遠る日くぶつのゆ音妻日たらきやふやちりね らん醫者ころし泉らかか暮くつ子しるすら顏にるちく消ゆさふれ仰たのふ蠶飼かなののさ落〓たすやるぐる夜相相〓ち晩る秋舟山路か草離寒撲撲げず稻砧のかなかか熟かか蚊の刈緣かななるなな帳上な女狀な
112冬桔蔦鶺雪霜冬冬冬の夜立初啄木鳥秋の蚊凪晴冬冬瓜梗鴿冬雪火冬冬夜雲は冬山桔石せ山秋の蚊や吹けば吹かれてまのあたり見屑凪晴半ふつ瓜寺梗垣き雲酒掃ぎやのか冬にのやれにや咲い一くに伐冬くやきあか齋十十きのとわれめへま山瀞我〓すまくがゐば國のがのふすすがひち靴高冬り谺るの家子ぎれよふあ枝一子居持瓜そやたどくとのし〓け人のやちきるむ瀨むやど酢ぐらや喇今そ墓樂ホガ霜うざひじ山と叭朝むや前蔦やつかめ神墜かの筆小むか明山颪ふ丼音なりきなり社つな冬硯
115鷄乳む木暖避屏標北窓塞ぐ胴寒兎爐冬座敷寒風著灸雪日山暖爐障か垣繪こ世標胴寒遲天に風子し間屏も過や著灸月や顫に厭あづ見風りきやにご吊羽ふ曉ふけきやや居て惡ふがしのててて屏病のしら興女りゆやきばな空小風後妻れほのつたよしぐかの女もなの北廻の頸もり房窓りのれな眞のご內かのりつよた影やる洞めり氣塞なにふきてるや木汝が月の頰やくのやぐるほ鷄避雪深つ鷄兎冬寒家二金山心は雪る乳の座かの三屏の日かしかむむ聲敷な內日風民和なきな
大正拾-七參十年句-
出東早凧繭春の夜代風春玉春新出小野をやくをとこをみなや東風ぐもり春春早早紙餅代のあ春春鳶花四月三日夜古奈屋旅舘句會席上婢に題してり夜年さのの吹やのや調風か泣たき度邪庵く〓れ人見やども笑みか馴のか煎はつふもめづらしやれた會け藥とるぬと釋ゆる旅ごろも小つやるやタ窓お山越ひ曇山畑しつり颪
蠶挿接虎涅槃會花種蒔く花椿木瓜の花佛生會田畑を燒く竹の秋杖木木廬山花折一草こ浴人挿畑花芝水一煙屋ぎぞさらとむれ佛々木中の燒邊り瀧北君新居成れるに一句を乞はれてひそんとす叢らやにの舟種の草のすやややふのやこた眼はまふほて竹月落月木虎のとのや接きみの秋雪し花のつ瓜杖つよなタ穗終消ぐ人ばさのむさの花のを嵐きき葉りひま燒靑りれ燃葉やふと葉がちや風の中いのめで浮くけめたたゆの溫るなぶしてる思で老るるるちみふりしけた茶涅浮如け野ふき野良蠶土りや小に葎そ杓槃び露む燒ベ花柴けかめか見けのかりかにし衣垣りなてなるり上な哉な
田袷汗蠅門踊天瓜粉七黴蟻孟蘭盆會蠅覆盆子火叩植疹タ涼しさ夏帽愛い山訪送孟もと早遠か人みたくまし七門の着ち蟻客り蘭ろ〓乙のたなめタとかすごの火盆との女きよつよ くぢにのびつわをもへやりくうのてて拭すむく又は出にて神男てあて にく 婢の愁ひあるせあぼか夜夜ひ黴籠らとたわ露打のば田歌はぞ凉すや葉くのち井れくみぶびか更にて地あと身馴をに身らえてりはすさ女む房かなしき子やけ靄のたちこ影いとふ踊りたるふらくむ二人づにし仰のか懷る聖水く夜や妻むぐけりし田ふそけにや紙書底子雲植袷天瓜粉山かかめてかのかやかな蠅かかり住ななな蠅な星叩れななな几ひ
秋蜻鶺障子洗ふ團扇置く扇置く秋の空初秋蛉鴿燕歸る風秋秋山風ゆね障子貼る身をいと ひつ古こ秋秋わ雲鰯む轉秋風さくんりと扇扇れ自あ雲ら寢旅甲子八月九日朝鮮の末吉休山君山盧をたづれ來るやそ雲ごゆよややを簀星ひやや棚ふにろがせさつ見嘲をにの庭田落しにむむひ透う日てるの葉ば妻秋唄く來机眞くす樹雨ら子のな砂雲透やにかな上秋にんとくお團りのわくひそむ歸燕かなも扇をくたる夜のれののぬまぶ星た日へ〓秋た筆は見やるれり障子張り日ものるややじのえ石初もてあそぶし扇庵秋秋め秋てたすがらあはれ秋消〓かのののかか半檜ゆきな客風空ななぱ笠
雪霜冬冬ぬくし冬の夜草の花秋の蠶新曆賣出新兵入營晴冬市な歸よ冬冬わ花た人でりく晴暖がいちにさつ晴や事そつのますくれにぐ居擔じる身て笹妻秋つり豊を霜ひと子は高とおを麗人あ頰よび草けきわるもすわた生々の見る秋蠶かなびたきち軒のえるぬてやる垣間かるタ冬て曆入雪水夜日賣營明一桃かかり子りな荷畑なな
草冬焚風破浪忌大枯籠火邪正草破冬一昨枯浪籠と今拾や忌故破浪君の忌に參じて日燃-七十の鯉貳やえあにに風花た一年う焚邪もり句-つ火供で餌に煙へあのと臥ずぶりて屏と棚ぬに風只田ぎ立夫か作りて婦な男
椿櫻蠶燕畦耕花餘瓜竹の秋猫の戀種浸し苗塗曇寒春胡タ花折二老ひそめて花見手晝春ひ日耕泉餘瓜日ちり三紙月猫らのの水寒二月八日甥昌起病む、一句り書や苗影と片やくあせにのほせしく押とつ顏兒あり落指雲しか吸け蛭くきを土とし花頭かやす塗く入にての花しるそひるみ畦うか古枯こ ろ ろひろやめ足わすつけ出のそく通簾葉たにたるすててふや雫めるゞまるお双や墓やぬ蠶るつ種跣よやと葉竹つ糞は井足道花なかのば山苗かか山りかなか境曇しな秋き櫻櫻にな燕てなひりき
蟲梅入麥の秋水蠅雨墓燈蚊遣火馬蛙參籠干雨梅夏う蠅雨墓子燈遠蟲西澤な衣桁簾一一タと月いで麥ち追蛙參も籠淺千晴瀉か外媼か秋か水ふと人なやにのれのくの梅う〓見えわたのに腹やびて歸のてく地天れむあつて葉か足もに我げれぬ雨見て蝶は這細り墓してめ月げよ靑に梅吹ねふ枝や參づあしさのとれ梅母雨かてないま紐す蜘冷ばのりれ幽足をかにがめへとかにたや水蛛ゆな梅や訪籔たる梅雨入居の一やるきふ下かや打ちり〓れにけりら夫婦るか松の燈籠たと蚊や梅雨梅雨梅雨雨あ最通る唐ぬ水合けつかば遣曇かかか合かか箕馬せりなゆなね香りななり傘なな先
蛾靑桑の實合歡の花蓮の花名月秋の日十殘冷桐の花月月暑か梅秋名た秋十つひ靑桑芝蓮白花抛月ち日月らや梅の山濠蓮桐げやい某氏の松の〓に題す椎のぬ〓の實のややにし宵でに日きかはの裾すは草蛾〓かてに葉野じにす秋ゞ影蟻簔ね裏のでけ刈一ぐを塔てまに籠と月や笠暑の搖るあの浮ば日や仰くか氣こりまぐ雲び草けくらや當り置ゆれて池の鯉のにの山のて秋し葉老樹ねるてき心廬袋酒暑湖やむ人一はせかか造かのタかの通二なきななりな舟泉な花り片し
稻芋萩秋の草砧露炭雪寒秋の蠅秋の蚊帳年雪起し冬の月冬の水秋の雲木さ寒冬炭年冬冬枯寒足晩政か秋つゆ砧露秋み賣木水雷紫月元稻敵よひ路にのぶく女ざ雲るの割やに蘇やに田に草ら雲にむをほ娘か古暖に灯死やかかのこどにのけ瀨ま畦芋全にや情ろねさのあ聲か房だ影ば間腹きすがく秋燈浦くがちつすは月のにの蠅れるる灯ゆ濡台山きれらをこ冱水とな音けせの手ばずたるてのりれたれる守ゐやはしさや秋の雲るやすにあひ日澄てぬのに小觸やと〓やん寒みるた〓千い高野萩か山なご〓りますへ雪白さきき草かけたぢたの柏かり笑のふろのかかづりずにり畑子なてひな雨秋ななち
落榾綿蕎麥刈る焚暖足葉火爐入袋大正朴蕎あ妻焚胸百足落麥つと火像姓袋拾もは葉刈が煙のとのい-六かのそな壹にむ月てさひこり十か我夜着光四年ばとざがぞすりりしとをま句-面ふ みお哭お眺愛しと伏通ちすめでたろせるてるらるふや暖夜流タれ布れ日榾 火榾に爐子ぞ更けかか明け焚かりななりりくなけし
梅蜆挿春の山花餘著衣始太木曇寒箸春新梅蜆薄春馬街春雪太園川月山の路さの箸やうもや耳樹む松や年誰す夜鳶うにきほいにご仰のも曇の新た仰くぐぐひり高墓どがば日ろしさのといれか顫しはてを雪ててりふて着ず水挿見や餘やお捨の木て花寒野初くて濃か憩曇かのか靜扇きなふりな平)な心
花椿木の芽靑燈花鵜タ蒲公英藻刈る籠氷飼立麥夏水逆燈觀夜馬塗裸澄長ぱ木靑梅の汐籠衆明車り馬む橋ら々麥の日にやにりを鰍澤富士川河岸畦率水にのや月にに出ににく芽に浮高なと渦てたてみおとに古焚き々がけと舟んおよとか株きてとれてけをほしろ日けのと衰ゆ浮てあむ待르うふ雨橋根ふちかくありし哉ならすつご音〓く早とるにるれ燈きなぶましき日しき蔭藁ぬ鵜川ややて風籠蒲しやぬも火藻小花雨搔竿かの花かタ花吹花山かちかな川氷な立嵐雪堤椿なてな
秋冷秋月秋の夜薔鮎雨分か薇秋あ月秋ひひ月め註。荏は紫蘇に似たる植物にして食用に供するこまかききの分やとづ雪雨木香氣强き實を簇生すの〓りらやに戶時か寢萎し澄しどにのみやむめりの身かしづ忘の舟雨ベぬされくつやたくもねた尙き荏るてるありの夜の皺や秋の夜垣る砂しや風の串崩かづ旅薔のれなく衣薇鮎
霧蜻新稻秋秋の蚊帳案山子秋出水秋の雲秋の虹秋の蠅鶺子規忌秋の蜂團扇置く蛉鴿酒刈繭秋松夜せ子規の墓に詣でごゝろや手をふれていとなみて月夜ばかりの子規忌かな樽歸も秋うかつ降出山秋谷秋のたのきあ省ちのち〓くり水霧の橋虹大正十一年九月大龍寺子規忌に參ず蜂か客れけ子い繭つしり終凪川の雲にや巢くにいてやで煮け傘へぎとしし見草をな翅泡ば〓えにのて門川越ゆてどげろる山にすがひタ吹つ身た冷月日ろきぐ秋映てれかたにちえ夜あとゞあくし虹え〓返れりそしたのたしかか出逢ふ秋雲づのて飛りよ湯るかるてせりるのくや一ぶてるや闇げ巖夜てしふ稻かのか絕やがと逈タ新高やややに團扇かな〓かと秋て酒は秋稻し出間眞入て〓かんの山かつじののか水か柴り消こなほ蠅泉なぎき〓上な川な垣しゆろ
149酸柿葡稻湯爐冬雪霜小蘭の花木の實曼珠沙華漿萄婆帽春冬瀧うすほ山曼雨に剪つ山吹老ぼれて子のごとく抱くたんほかな爐鏡にふれて衣紋つく ろ雪霜舟めぐ〓の珠陰きにやベぐ芝ち霧沙や降づ霧あんやりまのに華草りつでのんと す蘭日き罩莖てや日一穗き月霜のあのめ見と葉つけ たる 葡萄かな稻田影ま脛又うつや厭きごいしした大たえざをづる眼げる雫るそじへりよあか土橋のゆきもどりりろへなうつくし小春尼のす柿にびやふへるる木の實かなるの稻雲盛り 黑ソて籬雲水,面雫の沓這り間へかかか出〓ちフトかのかるななな來な泥な
水鳥大水正禽に淺草公園所見拾-三十二句-流轉年の小首うちかしげ
秋蠅水霧明月秋の夜月叩泳秋夏山霧明月は通わ音游霧罩月をしるづひ泳のめにみた我かやしかて馬る女を醉おん野鹽眇をしふてさめざ る姿態ナや秋女とぼが水盤るをもうげりは〓どちつぐ面晴げ水りた長をれしとの据る臂しや見うかわ樵や枯黍ぬつんぱ木のる夫秋秋蠅か伏かかののしなしなな夜馬叩き
秋稻蛇入穴蟲橇炭雪冬の日冬桐葉水燈會秋の虹炬冬の風燵耕刈冬黑汝空雪寒つ玉捕一む廊ふ蠅秋稻蠶ひと衣がはつ蟲鼠葉ちのなつ耕扱部日り僧淚北けの器掃う蟲べるにく屋に住月炭風てひけち吹りた母よむ界火地妻面死たばてかやみゆにりよよにに髪しにし蚯馭れ上とまゑ妹きりはか沈蚓しげぶまもゐ橇燃り枯ゆらむ縮者づ汐秋ぬひなえれく喫妹なげゆくどころや古炬燵につるみみよがび耕てぬ驚が乘き我水ててすめてり夜月監獄署てほ耳やたる桐や土の秋す月夜水る焚の鼻目一秋ぬ來かと戎冬一冷のか燈火だ生徒のぬなり橋疊葉え蛇な會空ち虹
落冬木立鶯大葉鴦正月のゆめを見しおもひ出や焚く落葉寒寒旅よ炬を林禽馬る燵ん九鶯-五十のあなを車陽鴦つ泣捕年をににきし七旬-見る渚か酒て上やげ冬又利げ冬ふ麗きて遠か日木は眼をつしぐののも冬と雨炬燵つ雲るぶる仄木の傘小かか立盃な
硯蕨白佛生會挿春三踊泉夏の雨夏の月洗魚木泥月夏春や硯薙夏生一白か堂柳春三ま洗ぎ雨き鷹魚しし挿泥月鶯宿山道ぎ信州なにがしの郷をよぎりてひ草や疲くこすづやをのり干の淵れむみやく屏にすおにて生たてし筆一風ぬ亭ちまたむび尼ばのれ二てたどに僧々か山しつて三つ下寢廻あ見つ風舟か踊步らるるれはえい押るのぬ合犬やるれさてしでや斜く歡や蕨舳やや花て高音面泉の夏影花頭かか蜘の伸か御御白足白取なな蛛月ぶな堂堂腕駄袷
蜥繭燈秋の夜秋蜴籠夜長秋蝶屑繭流醫夜秋竹ピスな繭買燈者永女山が買吟行費用、て我が笹鳴會に俳句無盡をたつ同人病死慰問、すべて不時の用意としトや爐やの醉をルるむ一にり坐ゝ風お舁馬ひつ土邊にとは間伏きにに蠶にむなは ねありてこち た闇のすでははしひかに枕しあろしかに秋抱怪そをらさぶわざ夜やき我か蜥たの誰しやし蜴りすの小かめ秋書かけ古ほあ齋なり扇る葬るて磧秋
鳴相初秋の水鶺秋の燈案山子秋の野無霧秋の日鴿子撲獵秋の星月瀧秋秋雪文鳴夜は秋逃き山し秋舟樹秋風夜燈山珠子相つ水げりさめやいかにお靈ばのを々の馬笛吹川舟遊けし、一水兩君と打連れだちて手古松山へわけ入る大正九年十月盡日、いさ〓か酒肴をしつらへて、たにのにを會繩撲獵やをらりの夜燈に星吹ねみのはややうくねすくやかをむせ僧た目暑しもとくとは遠のれつさてん月雨秋熱りて月〃玉くあるおしずを月日心がし覺月に薄とどづるとしにふみあるむ出ひ闇ばろはへつぼその夜霧かなづむ客やりるぬくにしみベ月舳えぬきや古鳴風てくたぬ野路の秋き蔦のやみふて石たぬ日傭男句か子雨土獵ケ不シる霧晴ぬかり足たかく小ふ三〓かか埃端古つる桑へ勘き昧しななり山扇ゆs畑て定
165秋の蝶蟲蜻龍蛇入穴零餘子秋の草師冬雪冬の燈神無月冬座敷冬の日膽蟲蛉沓走各零龍谷う秋笠汲雪柱寒冬誰山日餘膽ご蝶紐ま沓鏡燈日そ妻常々子をくとをんやにを緣靴やのもみや枝ぶ垂と話につう髮靴ぐ出やすひし唾るにるちろり一はたみ笠眼水腹雞大る古紐屠泉揃ときぼがか瀧つ露さるなるをへ〓しなくへよやな溯妻が刄うぬきわが婢すきいのきすひちてるはがや力なぐ起にや風つず師草日冬居み走神冬情露秋さごタの高座かけか無埃かののげと蜻蛤な中秋蛇てり緣敷なりな月り
166葱鶲榾炬冬燵籠大家雪甕婢子正もに水もを夫擊をあ持八-七十六句-も汲ててつわむ〓ばや鶲年すや屹なれま度め細たあずつど煮枝はれむ炬燵かる情はにるる根深かなに冬ご翅榾たげれむもりてりな
手雪燒凍二春淺し立野解解月春毬春新月家山月山火立廊い鴨く褒雪に春わよ抱に倦のた年ぼめるくく焚ん馬のてで月大やく嘶朴雪爐と空凍火く一解になわ解ばもと渡みるたのしよるま叢しる水らし月で燒はやややや雨手野れ雪二二淺中鞠かぐ解三月きのかなと月人空春陽な
芹梅竹の秋猫の戀獵名殘靑三夜の秋嵐雨伏川瀨ゆかう三尿夏谷日落草牧らち伏や川影汐喰が信濃山中梓川梅越白骨溫泉るにしむすのやる雨しまほて猫眼みくやて月月西もと胸浪水,面なのにううねりふをが小とちむすと尙おもむくはさ風きる川の梅雨かなる戀日照雨仰ぎけりくる や靑あらしとびて合歡の鳥れこ兒呂雞ふてやややや獵期燒夜竹芹船のケののの畢秋水猫ふ嶽秋
溪夏螢蜘金龜子合歡の花墓蚊泉孫蛛蝶參帳硯洗ふ夏の山ふ濁雲夏後架灯おくやもんどりうちて金龜子か瀨を展高剪硯深汗夏たりゆ蝶ざ墓山り洗山冷山境白骨溫泉に向ふ大正八年六月六日家〓を發して日本アルプスの幽白骨溫泉あらびやがて山 のすほたるめ江くやむ日七白骨檜峠一軒茶屋さふ雨えやの幽境白骨山中の溫泉に向ふ。途中三句大正八年六月二十六日家〓を發して日本アルプスきやや齒き暑月しやにつ又て茂にして虹行又葉朶まひ玉老毒濃蕗笠大ひ蟲うゆ蟲鶯花きふ紐川すとおつり袖をに水かひ!にまるしつを睡のすてきぐためやて芋あるゆ合花空又のゆく蚊たとるぐ歡あの雨螢む晝帳か泉泉りのや蜘來かかなか寢かなかかあ禽め蛛るなな〓なるななふ
月初葉秋秋名秋の日の秋月日月秋名あ秋山這月月感は陰秋僧月る月月ひみ高電つ曆日院し笛吹川堤上や幽夢の愛〓鳴海に題す白林和尙葬儀に眞乘寺住持聾白林に與ふいせ白骨溫泉秋八やや時やして耳冴でて少の月喰秋は魂〓二句池年雨へ風しえは月な人舟めは虹呂ひてとば前き捕ぐじうたま聾ぶ上舌るりくちてに僧さひさ白るお朴やてるうをたま雲ち仰く石にこつ高やぬぐ唐荒るや施み瀨鼓に耳月の深だ秋の餓晩があ越とな二蜘山〓日鬼稻らへえもひつ蛛槇みに棚守しる
霧露落菜種蒔く秋の蚊帳秋の山秋の蟬秋の猫三日月野秋の蠅榛萩芭秋 の草女郞花蕉菊鰻嘴古芭むらめさにおちず古葉やをみなへし野秋扇秋鰻臀菜耳鳥タふ倒新す椀蕉菊草折蟬搔た蒔さか霧なれ月るかう葉や折るやふやるなややくれてにきとげにやべり木や掃ややむ池やみ烈き顏むもくむうをのき榛池にうしやひだ髪ねれすおぼわ高ふひちだ火むろ飯ゆてた星ちるす枝くたみきに と幹やくひ月つてにれいさやか風せる早瀨タ燒けてたあ遠なのベをから鳥たやるるふでれ秋が萩の狩ご通ひ秋る横あ水に秋ふ賤や秋し秋や〓露のや露て萩るらみのゆののがのの笠の落つろもすゆら蠅み面猫妻〓山庇蟲杣葉
焚雪時霜師冬葱冬の風寒稽古火雨走冬葱月渡雪雞薄廊木雪月柚冬い極元洗のし空た雪灯枝晴い伐風も月結ふ木まやか山居即事にしなやでつに上曾根渡しのやをにつく榎ゆが庵て下葉や月て雪か脛死きににあく雪駄月りく雞の出婢雪こ山鋸もひ山みほど日ぬにたおと星さあさに遠結のりに山星へく霜をすふ月出ぬやきベげ飛べる 深雪かなてぐ鳴きは枝い冬析明するるた富しとやタのがや鵜たの焚士やるぶだ深寒火日深おた片籠湖ゞ女雪稽か作し雪〓みろか時かのきか竹古な男て竹しな雨な月てな
大正七-二十八句-年
萬花春の空三月歲花春三春萬新を天歲月搖をに年やるふた廊上ツ風りわ仰のめやぐ花夜白るふを齒藪ふとむやかぢ薄タめま草渡つけ〓て履し
花硯露秋月秋の夜秋火洗風つ金秋刈墨乾秋花硯夏ま剛草す草火洗風題へるを見だ力にちや婢やまやば梶出尾て顏秋た風し花な夜ぎ情草がて虐あのあこ鞋る木げは眉へ新て毛ずた割てれみやう養ややてさや立ごる露露月か秋舟やののてのしののく橋秋鏡秋て雞妻と
茅芋萩霜白膠木紅葉秋の草麥蒔く手煤氷秋の蠅袋拂萱冬地手蟲書う霜崖もみぢし て松にゆれそふ白膠木デかな芋風秋ひ水心露上袋の窻ら凪し喰の草る門中の醫鳳嶺三の巢耳くぎづふ萩やねやも日喰さ尺手やさやく しやぬせにと木霧をも折りと旭沼た大むまれてめ目で提とて焚しい邊ふ口もて嚙に起げぶ氷にあいきてづみ撲くるはす笠踏るいいろつく犬や秋の蠅いなつ柴萱ねがやむでてめでがやに霜やてる麥沓しいくぬし乘煤の紅仔を馬のお林郵葉と馬籠秋露屠蒔の夜とか便ししかのののりく面をもな夫ぬ妻な中蠅宿雞
爲鴦大月さ正六し て-七十五句-鶯年鴦浮く池の水輪か
東彌彼立春の山雪花朧春の日三月盡解曇風生岸春春タ雪軍もろとも還人東みそか男のうちころされしおかほろな山谷ゆ戀臼す立ばと船俗あ風國杉くざおぐ春てえやけは壇ノ浦懷古咎のむゆ吹いのに春大黑坂昌應寺のめもと野ろや海か渡にうれひ に酌むや花ぐもりな大て春凪や詩大の耕にさ舟地情日ぎ僧日人しき文嶺のを雲にになにこり馬づ旅冷は嚙迅鳥つこ尼にみやえどたつなあのくみさ啼てはやはなぐりふるへお見く花なてやくて彌〓彼岸かなりとる廬春のなしもぐもぐもり木草鷄の彌生雲の彌生か生の山きりり哉冠効盡中人な犢
櫻夏梅若忌種浸し卯竹の秋三凉しさ水無月伏月夏三笛富み師廬屠い梅日を伏ふ士なをの所にし若山ノ神祭典抱河口湖上しのい仰月盛遠忌たいてけふへ月てぐのく日ふ夏の日も火による神夜わこみも窓穢に〓凉がるくに透ろ縱をに首つれ鳴くに橫惜しめくた折竹生りがにへれく橋ちあのぬよるふややのるら古種卯山 ざ鵜盲船葉月と竹鼓井かか凉かかきのくかかななしなな枝秋らなな
194覆乾扇鵜袷松葉牡丹葵蚊蠅時若萍の花日向癸合歡の花竹盆子鳥飯飼日高わわ流上浮屑蚊蠅白山柱な袷向枝かか水圖き繭のと扇霧たが人日く河口湖上和田峠茶店山居即興葵に竹竹に聲ににかれさざさにぶに花ややたや山蜻く藻びか鑛め句牝れりに ま蠅夜や水蛉足にし山ぐはをて松びたふ烈くい倚みきびりげ追葉きかつせよ蟻む風ら耳とあむふほすしくさ りてのへ月鷄ゐたてろなし影のの扇着りにのるんたほ澄うしぞぎしつる午立いいのるとむしく干か派下て黃箒ぬ鵜づこまでしちてろ手のかと木掛飯ひ舟浴合ゞご赤か花け峠ぎかけかか衣歡み哉とな葵鏡草すなりなな
暮の秋夜秋秋名秋の日秋の畫秋の蚊帳長雨風月秋灯森柑なな秋秋あ筆か酒ゆな秋低園にん風風き硯ぜ坐くがの牛宵眠さむれば即ち灯をか〓げて床中句を案ずしのを偶ばやかぜやに山居即事ひ遠秋き晝てくやいと夜き感ん痢磊多てくや夜ね妻にくに灘のむした少ど醜見石の入眼酒てめてよしなきはした錢のをの榻枕らまるじのと巨かじ眼つちしにる燭りうめしりむ松の秋濤〓と黑月やのまてもよへねたもしあ耳さるやき父良秋てし秋秋きやよ己子夜日身俳疊の秋秋日ののあののがのかかなかの諧か〓〓め風風糞情なな力師な
蜻芭女郞花萩芋蕎麥の花馬追蟲燕歸る菊胡麻刈る蕉蛉膾芋絲足山刈胡空胡饗人寢月田明の水繰あ蟻り蘿炷キ桃宴遠て書龍安寺法會る女に芭蕉に葉はらのさにに樹くすしのたやつふ窓雨尾下胡ぐて廬にしめや月か孔て來に羽水灯麻に一さに遠は子客もうくにつゐちすかくり霧出らのをとた葉るし松くけよ〓みゆてぶたぶちやづ凪のか婢もありぬべしへるるるぬをむとぐ蟲い〓芭や そす野や萩み歸芋や良秋のまを蕉なばんい燕着のつも見かへのほとか菊か蚊ゆ尙るなし花哉哉な膾な帳
千狩雪師水十二月神無月鳥涕走冬月水月かあ極十葬入洟いりす月二人しれやでの月のくらば灯て法桑野らぬ北を獵師こ原にや斗か夫とをに曳を〓に孟もつなくめげな春をミくかぐたくかむ隣しすげるるや緋るやどや千机山夜雪鳥前が月つ着め神かのらのもかか無な子す暈るなな月
大正五-四十年一句-
彼早楪木の芽時立岸春春春新山尼舟立髪春ゆ寺のを春梳あづ舟の珠數得やけさ年り行扉て朴ばし葉を故にに琴饗犬山に雲そ書宴もに粥あ〓ののく釣三そぎち灯はへる椀ぶてりにや彼し彼岸かな大や果や木岸の雨淺樹山か芽やきののな時む春靄春
連椿花田畑を燒く行く春罌粟の花硯竹の秋桐の花蟬萍の花毛蟲洗夏の川翹花曲罌粟の色にうたれし四方毛神うや夏百空うきくさにながあめあが巒や連反空ゆ桐江蟲甕きま鷄ふはま翹逆林くや燒酒草がをかれびににの春にく滿つくてとく火や敷み火てにのはむちの山みに人布る幽り硯うなしる大風せ馬魚く蟬洗たば爐ず萍して花吹ねのへひ讀はしへむや我ぐば鳴るる陽にかけむむ眇へ機にれり神か汲へりやるわて上けの暮す鵜ややな落花かるむぬ薪野暮れ閨し鐘る匠皐月川竹泉花火春をののき哉鳴川の落のかの積のかみ狆婦る社子椿秋なな月む窓なる
稻露月瓢の花燕歸る刈秋の海秋の山魚稻舟秋葬甲詩秋瓢喰扱人山人斐に簞ふくのすののはのてや夜が花橋山歸無莨のにる燕花火小邊富わひにうたふ我が子果さや士もがとはふ〓露もえるか念とよの力すきぬ湖渡さよ秋の月逮や幹秋の舟舟月夜かかのよこのかなげ海りぐ秋な
蒲霰冬の風寒秋の草煙草の花芋團冬お場道苔秋開芋も舟のは草秋大正四年霜月二十五日誕生の女兒生後十五日にし墾人氣やひ亡兒二七日寺詣-龍安寺野邊に病者の寢具を燒くベ白林和尙故〓和歌山へ旅立つを送るやえにの入にて地枯あ大つ痢極の藻河てし寒はたにに人 闇れてにまばあも鳴おにたろくはゆこらぶの~鵜するつ布團かなたびご玉や彌や花あ冬陀人やらの如の秋ろれ風來衣旱も
鴛火枇杷の花鴦鉢大枇舳冷正杷にゆに病兒逝く遠富士川下りる四-百三十六句-炊く兒く鴦に年婢鴛綿にとをこベあほりぶたいるすしややが桐藥は火壜ら桶
椿摘土菊の根分田畑を燒く竹の秋繭筆草玉虛大海殘日閨佛春餅新空空し雪に怨像花らはめにをむのに年ぬあ彫嚙いまぐ子にす髪らんてなるゆ彫れこで春じ土りひしの土草晝り一あ丘つく幽は塊あがえのむらしりるやつ山し野ぬつ野竹ばくの菊火山火のきぐ子根のの家秋哉しよ分月月妻
夏夏夏花夏の雲風至夏夏夏夏白鑛花花雲雲衣山のに風に佇み幽谷を瞰下しつ〓强力の背より水蜜桃一個夏寒き西山溫泉入湯の歸途海拔五千尺の不二見峠濃やきに影打やし諸て逢戶てう人こ禰ふにば又と宜てま聽あやきに盛斧聞も夏りにのれのな帽裏の刺を通ず人か馬しゆるやをへるこだま哉にき兒偲わ夏至の杣かにばか竹へ枕しにり〓む
電蟲簟夏鵜夏夏〓夏夏の山梅干痩飼帽衣水野雨む靑な衣夏水大幽棺顏な雹深梅臙脂の黴すさ夏し巒つか帽盤峰火桶よつ晴山雨雲におつ白根駒ケ岳の連峰書窓遙かに聳え春日山の翠微眉をぬいて雲と〓もに嚙む山一日山盧を出て偶舊知某老妓に會すぼのやつにを戶をせれ花ののやてやて灯し月せぐ行日に舁つかの小や誰保李わもけみ急渡舟むのらる雨さ巢さ死そ養とたゆば梅まじみ夏すへどくな草りる雲〓一く雨て山ゞんぽんと山めき梅雨のかどふでやて夏ひよ念妻のしく書にそ〓ぐ人く酒肆の鏡かふ蟲さみ幽野ろたやあのかあらやにきのきか夏ざおしるへ鵜湖〓鵜夏やむる舟ご水匠野みおも深古し鏡去邊ろかかかかろしてみ哉山鏡ろ山る宿もなななな哉な槇
罌瓜鰒蛞蚊葵金閑古鳥枇靑餘若藻の花百合の花時燈杷梅花楓粟蝓魚鳥籠忌のことにつどひつ枇杷に乳人と酌む靑船伯日泥山大日ぬうお夜灯友杣まなことび膓な燈梅に母蔽舟百空中すたどふしのの籠れて死す三句のお逝垂の合にびがかて死死天狗祭の日鶯宿村の老樵夫自ら伐りし大木に壓さにけおちいる水に不にとへくさににねびて〓二ばた饗ゞ斧ちて棹ね咳につ松水澄妻る宴めをたゐかたむ夜ど毬にむはまのく祀がれあるてるてれ々尼へか明罌くこ酒ごる稚遊きたるのとなし鰒に酌むのる兒やろる粟をとや悼馬牛雨樵ぶるり ほとしきの操すきほ精み花や月やあはれな餘花眞やう金とや舍花や藻藻靄夏や蚊魚閑〓〓ぎすのの若かかのか花瓜蛞かか古ぎ地岸楓なな中な葵畠蝓なな鳥する
柘紫陽花林月機欄の花合歡の花秋の雲秋の空暮の秋秋の暮榴檎秋戀山妻紫汝飼八滄秋朴胃大ひ風織陽と猿千溟雲のぶ木老剝胃中に蟲數多發生して斃れたる農馬あり草を葉くをのれ花をにのやろひふどにい熱む見うてきくて月秋に八愛かつく貧煽る戀幽天す月すへ〓苦白ヲ眼く人たごつはの枇て閉に梳けり棕欄の花合しす魚樹かもす山み杷歡きめくるあた足のて戶の眼るりむ蟲かる林檎かなありやかや尼僧しや月杉ば暮秋ら花〓るかの大めののす柘らじ哉榴ず哉な秋樹る秋暮
霧秋露秋初秋 の山扇置く鳴秋の燈子獵雨風かコ病は秋舟あ露大岩わ槍秋秋あ肥きス閑つの解きさ秋をれの風風きか松窓未亡人たモに獵山いさだと白林は僧、大秋は醫、大秋病み白林僂すか狂人某人々に縛せられて藤岱の瀧にうたる佇我が〓里に無數の塚あり皆これ太古の墳穗ややかつ侍のめかぜぐて國てちス白むにこす眼のに舟や寡〓土山てのるに巖道林人咎だ夫水婦霧明安古四にしうゆをの人ま夫にき泰に墳翩窓たたるく弟白も返に東御へしのこほすや樹々我をたの飜か嶺の子齒なし燈すぐ松,ずさとの秋ややしてやく港の灯やがやや鳴や月の波山や子草た河し秋秋秋秋深黃の置ひのか下の中めりのののの山のな秋扇く花なへ風風風風川上り
鹿榛芙萩鳳仙花菊西鶴忌守武忌唐辛子竹の春芋蓉はしばみにふためきとぶや山 がらすな書野舟料ま月落家た塩俳薫タキモノんば樓拓解理たさ日富ましひのしづか辛諧後妻をむかへたる嵐舟のもとへに出いく屋痢むにんににんといづれぞあかてしく八てやの蹴ですて灯明一つあ樵み葬夜あ朝壺ぐ朔そ歌古人のへ暮ベの鬪梅又る野間うるのにるよう酒菊月やき邊寂鷄粥むや萩の人つやややくにやややる菊見かなや守し猿芋鹿西竹の芋白萩鳳鳳武ののぬの芙ぬしの仙仙の鶴臀春し秋蓉宿花花秋忌忌
霜冬の 夜冬冬の日霜冬の空冬の日頭煤爐雪蒲冬冬の海冬の山夜至團帽巾拂開冬霜赤冬髭寒山樋布こ雪利煤爐大藁雪團の晴に掃を艦つ國と貧そ剃夜國のた布病れうきをのけにらつ讀の草やむ〓團中てとつう日のたやてむ虛にむ熱き師てやさへ大や空日わつは顏人冷人は出冬てて樹灯日短をえがの徘るか大あや髪く晏潮わか冬もはきて眼れ如去徊や峯梳のたさ死ぬお帽にごめくを聽く獵夫ん來す椿はくたごるよのあとする頭巾か湖に雲し霜りと冬婢蒼りす華榮れのかさほ雲も冬の湖舟夜る冬く至のなか靜シ寂日鳴か炊かかとなのゆかなななななりし海かくな影るなぐ
火爐橇狸火埋榾炭冬の燈千空也忌名の草枯る〓鳥事火鉢園夜父とひとり詠むわが詩血か興はなれずひとり詩に憑る火桶か死輪湯いをでひとり讀んで花枯る爐山そむく意を齒にひしめかす榾火かな枯林濤か空山火埋萩檣かり也火を火にの病番に鳴得やのぶく忌事埋にで戶う とをよるせ大つらのにめにてお〓われに血めぐる圍爐裡かなつと妻ててく爪う魚藏てうは風ての風ちしの汐月板戶ふや山媚榾て連ちけ汲のほ花たつ く學山みき月に影ぶむ月のゆ月くベある針や蜑腹ぞかく夜のばつさ哉の谿や兄しる床や寒夜の燈か妻にむやうまやし我のよふ炭火かなき情夫ちらむら狸つかど鷄う情に榾榾に指輪桶火火桶橇し橇やなど千かなたぶの怒かかかの暗しり鳥なるふし醉るなななな醉し
落葱〓吾の花枇杷の花冬木立葉大薫唾妻落白親月畜枯正に吐激葉林疎に類菊眞乘寺の白林和尙俳諧を事として偶々山盧を訪ふ貞いしふを十ねの參や-三十六句-ててむ意ん湯年肉か口る雨か年す蒼でへ交峯もきけかし人とり風こあてに枇道ふたつのり石蕗の月に閉 づ鷄杷よ念柝ゆも石のしのをやるし蕗花葱暮に全冬葱を葱冠るたう木のとの動ふつす立月る味く
秋秋の空夜立秋火風長秋蛾秋夏竈秋晴海洟胃幽火風れ鳴か洗冥蘆の湖に溺死せる從弟萍生を國嶺の頂に茶毘にして赫くれんへやふどともでお眼艫てたる耳つご前樹は鼻病る壁秋湧の相院に音風け相通桐ああの形ずるるのり妻や今夜月秋灯を秋永朝見ののかの濶取る謎空な秋し蟲
萩烏菊雁梨柿曼珠沙華蘭の秋木瓜の實相案山子刈太祗忌古露月野瓜酒撲田分木梨農葬句窓梵菊か太牛情案山た子刈つ芋茶野瓜むと人まあ妻畠りがね乳には祗曳婦田ぶ毘分萍生の骨を故〓の土に埋むの蘆の湖に溺死せる從弟萍生を國嶺の頂に茶毘にして嚙くな齒たけをや忌いを遠らの雲むや故やつてあら燒くてホ戀大や四て訪ふれつば群雀空にしづかくなる連露提月湧齒〓〓はわ句ふ空秋山途ゞ汝灯けのをにるの次が山國が細乞へ尖あひ泣性心食菊肆酒の婢ありけ湖秋の勝ちやく吻は眼影けか草ど端にとくろ淋や邊やさ雲をしにしやし萩あのの古るのなん露の秋松刈興舟曼珠り氣や草相撲正るうく柿蘭晴蒲酒まらず袋にごだの沙のる烏騰燒のかう踞山くる秋華秋〓瓜るり屋醉なすす平
葱莖冬の 山寒紅漬さ葉冬山人束冬書あ紅山先神酒や人が妻の山樓る葉門着すつよに出夜ふにで間にがて岨ゆてきに薄の僧て月んで赫あおに葱暮も日にの林富村となちの狩寒香つあ間のらし士大孃塩浮日幣瀧てめれ山尊さよに日しの形をぶめ鳴しのはとる紅る小葱や博襞寒こ紅紅葉か紅や莖奕をび葉葉料さ理と洗か見かけか葉か屋るふなるなりな山なな
大正-五貳十七年句-
立殘る雪行く春春の川雪薊春の野春の水西行忌田畑を燒く解春春林人古春野ふむや珠履にもつるミ鹿薪木松殘行ゆ戀ゆ立沼々き島水戶に雪春く々く春のの世よの出帆やや春と春や日のりやの座いるや火雪中朱春梵の旅人にとや流しの消仙に惜鐘うにづお色ま草の人ら道そ巨しへかくうミの山磯のむ帆むに貼さ笠ご釣裾家遠なややくま茶靑歌るや日遲々たりるやの瀨き花野だ屋のや札西春春春多雲あ燒さざ行か水ののむに机の局ののみ忌な記水川し谷掛橋人雁數
蚊靑鵜蚊遣火川鮎鮓花行帳簾飼狩火水夏灯を古驛城ひ藏苗囮鮎鮓あ行行行鮎鮓壓ま水水水入れてしばらく 讀めや宿家の番にえの壁代なややすりのやの靑に松ぐ火に多つ月が晒藻と籠摩加茂よあ簾の裸のしのきとしの刈月鵜とて晩の黍塲にそもす川り曇まの透いれ水夏の暮麥とむののもつ風大るのけ蚊月でるりも過ぎし雨のる〓あひや雨ミる蚊帳かな花靑やの夜夜まなやタざり巖振な垣簾振な遠花花日くかかかかか〓の茶ろなななななし屋火樗隙影
246薄雁夜砧秋芭鷄蘭の花蕉頭學風秋と今羅山雁天治承こ山雁水大砧提砧秋人も年漢僧を人陵鳴軍峰一灯女風のしま寺に射のののくにのつをにや國びたのてぬか松や燒小稻のと遲秋月大野庵鐘湖けた平家ぞをしむ花す〓きはか夜城牛相澄たの樓き舟がさににいにどる中馬その月にらび歸かな一むな〓山淋月のばせをかの草日燒雲しかるける塊城のし生のくやきしやのや月のや月やや鷄やすす讀き鷄頭鷄蘭〓ふ書雁夜夜ぬや妙秋頭か頭のききのの學かた濱義のな花な花秋原哉灯秋人な哉社山風
草神炭榾落千冬の日春近し立葉枯鳥樂冬冬山大月磧炭鷄蕎文冬春道今晴江ひゆ賣と麥讀の隣芝朝れ草盧に籠りてくくつめをん日を冬戶るを〓わてにうでの吹やの嵐ふ御つこい軍れ安タ烈街船ひる母のて議に堵日火へはをに土そ駄に霜屏にのめる錦明太め馬もぐ夜風い怒斧やう古りゆれのでる ちのりやすのくし草神大つ榾杣落榾火匂今胡葉枯ど りかな樂字榾をひの朝地降るか讀のか焚か爐ののる〓なむ醉なくな火冬城
明治四拾五年(大正元年) -三十九句-
海蕨土薊蒲公英若人丸忌水口祭石楠花社釋涅槃會畑を打つ針供養雁風呂爐を塞ぐ業筆草日奠海石高み森蒲若二野關門釋門畑古雁爐春棠楠野さの公草三おの畑奠前打妻風塞や花山〓神英や人ぼ戶にやのやや呂や緣を紅のほ春けたやぎ日泉に炊やぎ空を薄月ろに水,や羊牛古墨菜花代に々針の笠や破不の水,口往のなあにに關南お濯忘ののつ供きかは口まそか衣屋來なのめではぎもれ夜祭つぶき雨た養ぬのるわすしや過るやへの一狆す微雨びらたき薊水湖籠人ぎ田社日像て涅畠て子旅ぐかとかの丸し一ののか土まか尊槃の澤のす鈴中な筆なで鶴忌月枚なと像墓山僧み
慈柳竹の秋雪菜の花姑湯婆ふ雪な踏雪み冬慈書菜竹竹る風つ切掃だ姑樓の秋のこさやかのける田出花や秋てぼと書し灯ばふや雨一すのや日燒院やを驛や五露垣雪透のす午雪見人箙のに垣草十風蘭ぢのる遠の暮原三雪我のか電窓くそし雪のあ次のやとく車の行らたやるひ榻な掃の深きのなま大るりとのひ除近雪に雪ぎにけり爐かす衛かけの社かり寂か守な旅びななむ兵なり雁
水冬木立草落茶の花山茶花葉仙枯明治四拾四年繪窓茶山枯道寒阿草草馬のの茶蓮具林武枯枯堂下花花は市の隈やや-百二十一句-のなもや阿しの水野又內つ菅日羅き蘆仙邊國日か笠南漢み荻のし提ゆ越もの水はにぬきけくゆさも仙古瀕く日て人るびのはきすきのしに文通墓冬に鶴落落一杵珠り塲木市の葉葉かか人埃かけかかのむなな旅りなりなな音れ
弓手繭門元春の夜春の宵四春の日月始毬玉松日春新冠春宿晒琵海な梅庭餅門元のの引布琶月がぬ訓花松旦紐夜にうのときくにややや年て帆りやひ日よ正雪前燒ばに暮し佛かやる月の山く事れ四煙遲養月霞き洛き友さあ颪春しご君のも帆をどむしすのたとの山末を中ちきた足〓ろ-邊の卷弓のや屋の袋むや應四き夜社は手根材の小宵へ月にか商のけかけ寺じ毬の木さな人春りなり詣め唄雪屋き
雛雪朧朧餘花蝶柳雉鶯行く春鮠猫の子祭解夜寒木た水山山久鶯鶯猫猫雛乙雪おお朧ゆ春押そ曾が甕吹越遠にやののの娘解法ほ夜く寒入ろ人やにのえ寺子子日雛や會ろや春にば山人やはし花蝶てへやのやも機に夜本の丈んに花てのを來閑吹遠尼な遲影や耕次の所笛艸に社日見てなばけにつく繪極人久た飼第窓子のに寢松のさてわ渡かれく暮あうがはになに火妻るねや花しゐたしりばれ暇れなるるた事戀たもむにててるややたよす橫窓てれふるり湖もふ餘檜笠餉午炊ぎ度得瀨や雉子川に垣の文づ山るに水朧し花し噂盲海寒夜半かかけか柳のか戀うかのけ不か一ぎあのかのななりな鮠聲なふちひ鐘り二な朶りり唄な春
梅暑松の花大根の花日秋近し凉しさ盛日し日絲す筆船夏唐花大藪山ざづ盛染ど耕暑櫃大原中寺かかむしは根やのやりやしさる木りさむ玄藁日やの一干やをややざお日町秋波穗潟關家和積と盛遠に二定むの中止のへり塵かがの的射ぬおくに塲灯おお軒ま墓らす所影のけのるしぬにろつ追月や小松峽花て暑す梅梅ふ野に蓬傘の旅き米のか大白の花な根し崖原と屋森衣宵俵
行打夏鵜幟蟲蚊遣火夏の川鮓麥花夏の宿夏の海鯖釣る富士詣刈火干水水痩飼鯖砂鮓鮓鮓葡江騷蟲い今蚊あわあ午社芭夏夏走桶萄泊動とは火つがな過家蕉川釣賣宿干海やりのへの棚の記やどた焚過眉痩ぎ町織へやしどくぎ夜の裏旅蓋ふ酒蟲東く月蚊やるにせのやる燈砂タとか盡干日し磧嶋雨日坂人れくくす寺火江行の耳に樗と臺さのにもを水のだとす下ば麥ほ中の蚊ゆ汲山の干お徑に花めあなぎり雲うどに鐘火たく田守かなるのみ大雨かむ妻を遠くさ遠うせものになとりとつの讀ししるへぬぬにす穗のぬざ小花ま·日水ろ鵜鯉ばき流富竹日し家火れ遠影をよ繩の夏麥流れ士ののけかかけきよりか打夏かぼのかれ汐詣月峠りななり緣ななつ女なり宿な筋
麥瓜蕗葵夏若百合の花餘藻の花玉卷芭蕉百日紅桐の花夏木立葉花菊松百花夏水麥麥し瓜山夜花百藪藻夏日桐一畑ば合寺菊風木畠つ里の葵の竹紅に荷にやくけや市貧折に花にに雨咲斯渡芥しる餘桑奈や木やしに芭くのも御子馬や花か蕉世民瓜にの良人も小葵く下や窻たににそとの屋買す見前玉や蠅雨小山えむ朽なび小のひみの卷すと月諸のけきちへ咲鍜中ゆて湖くしきベしくのの袖る嵯峨野かなて書伽湖靑籬冶瓜城をく靑に雨家り樓邊が下蕗人簾月す蔭藍葉落ばかかか峠かか古たかのの吊白なかななな畑なな簾けな川妻るきりな
菊霧秋の日葉殘鳩吹く秋の蚊帳月暑秋菊菊は鳩秋谷た日仲秋の咲つ吹〓のびの秋暑香く菊やや戶人秋やしやややタあやにや火太し日門湖け大日菊星古たの茶ふ原にもにののタ秋に佛女出釣遠汀まベ畠つ參よた瓶きふののどにのりるも人に爐焚ふ牧朝紙雁山火霧火草ごの日草ののののか刈ミ影履文墓紅中な女ろ鷄
冬寒枯木時冬の空冬の日冬の山霜寒竹岡冬の海聲瓮見野枯雨至さ冬寒淀つ逆枯冬冬初凩品冬帆六山短短短聲のれ義原海山霜の川空も波國日日日瞳のを魚瓮竹にだ淋てち運やのさ堰やに漁舸のを寺やに湖やに山に日塲臺のに煙へさ冬なてくぼ羅たへ寒やき計時のの水にのやはのしだ靑で至ん影秋てま音淋薪あ音見魚午きめ藻たのあ津すらふよ老のの一あるむし割るのやるのしくの海ゆに介の後のる嶋旅霧ぐやく至冬かふ漁灯一日灯つ見岡しと榛人奧が厠れ灘影小り人しかかかぐのかはく出かのか商子かけなななれ風な雪れてな船なな人哉なり
落葱鮟千さふ鳴水木の葉山茶花仙葉鱇鳥水牧笊園落葱山鮟岬千靑あ笹寒仙へ丁葉の茶鱇山鳥樓り鳴聲干あけの月をこぼ るにととす香花やの啼のやすや湯を木ぶや鶴やしにの垣か綠く灯に艦城とタげやい葉垣づ穗竹松入に暮日膳廻でにのかのにこむれの据廊りてあ落に渡とゆか穿く毛足袋かならゐ庫沈しえぶのる替へぬ葉る裡む見て燈ち〓ちどりふ千る小に落の楢晴緒雨どる鳥遠葉甕ばれ口鳥ざり屋かきかのやけ一からかか麓敷な山な水しりつなしなな灣町
明治四拾參年-七十句-
朧春早初芝居貝寄風夏近し曉春春新貝果煮春春春春寄樹る曉曉淺に旅ー句や園ものやしま年にの花け遠積に湖圃洟てきむ大にぬ紙優に石湖皿けす長おあのて逝洗てりは蝦ゆきてふるすやくぬお厨深杣夏水二ほか山のろ近貰の神哉しなひ草替
梅蛤初茶壺春の宿鮒靑櫻木の實植う鮎種竹の秋午摘燒膾饅餅汲芋火鮒夢さ瀧木,實植木鮎貝貝種耶巖梅梅蛤蛤吉山燒けに燒けのこりしを摘茶むかな海芋馬蔭林林やを野凪な膾さく殿の汲寄寄やのにを鳴燒けき瀨めらや實やややの山餅う植るしづかさに燒く蝶兵火舟古廬漁舸柩戶けば奧爐の多のたて食ふ鉢木人呼てゑ糧櫂を南の弄舁のの大橋〃を上紀のく鳴やへび水三すき渦い裏靑忘げのああく行み植かにとや味浪ゆに故燈さにぬやはきはまれた旅のう線の見くあにや淋さたのこゑしすしるの都古竹し竹やにえ漁人かづすと一螺春しす日古のぬくき雨楓峰二茨るかな高巖夫水笠一のののけからめのかのか草のか二畠秋秋りなず貝午な宿な廬實なき人つ
峯晝時麻刈る夏の雨鳥入寢夏燈祖倒晝麻夏灯芋臺父れ寢刈のを植の祖木覺つ雨はう浪母をめて草こやぶも尾ノ上穂厨渺越井湯寢のにたしすに女の花舟みるとこ大日やて月戰ぐ樹夏のあめはほの勢るの影晴宿とやや魚渡殘れ〓順介しりが順ぎののあかけます峰峰りなりし
葉夏牡鮎鰺初金火蛭蟬羽蚤蚊鼓雨櫻草丹鰹魚蛾蟻蟲蛙葉夏牡干鮎ふ鰺初赤夏古蟬鳴く釣魚膳泉まま雨寺櫻草丹鮎漁る釣鰹貧洗蟲驛人板さ掬ひひ蛙にやのさやいややよきぶくくみややや颪しと帆たふ-や瀨やになが羽りへ顏樫る嵐驛阿るや船くが塀蟻芭かひややの月橋の房しベ厩にさ如と沿わ蕉たや庭菖のはもく風くへ戰ふ晴木崩て多のあげ錦呂ひれ出しところてん舳つむかの蒲ぎるる立すた摩まどひしすむ魚を飼ひの曲をど桑くに落水淺ににやさ〓にとのるかく鳴間ほとるの梅門やつき床へ羽く雲人捨通蠅屋鮎雨地にけりの蛭り蟻蚤蚊門水〓ぎすのてふ一ののか酒のみかのか流車忙か傘車蟻つな川中な肴川ずな宿なれ尻し
藻合歡の花蓴蟲雁鵙鹿雪の下蜻蜩渡り鳥菜蛉秋曲ふ鴨合旅蜻ひ小は嶋森鹿蛉ぐ法つはの鳴江も足歡人やら師雁秋雲くに井と草かにしに鵙や山げ芋やしや雨の几かに遠の酒の鳴蟲帳ぐげ湯に船鳴を女く外くなのれ澄濁のくさにれ音くか易み煙唄音げつらにはづ轡すげの秋さてまりへとすぬのる須のよ動む花やり色〓泉磨句紙渡き烽藻か鴨足草か山中蓴のかな澤かりけ火なな湖採浪山な鳥り守
鯊明治四拾貳年鯊松畠つに中むりのれ-三十をて秋埋田葉め六句-のて面神そは社とよやばぐぬ蜻蘆蜻蛉荻蛤かかとななぶ
柳手書毬初春新巡手再手書邏毬び毬初終つやか年へくつどやて柳唄るけ草のひばになとのも日かり に障子日影か庵あり歌書をつなるのる〓お紅仙毬唐繙くかのな糸な紙
瓜夏木立牡火螢毛麥 の秋丹蛾蟲秋近し瓜逆牡山月庵毛師秋墓夏畑友丹雲出蟲門近光水松白の燒くををる遠き訪し翔に子くて樓に展ふ人り燭にや藻す玉墓倫て松情にり蟲岡を爽人窓掛をの咲晴說風泳にとけか人くのぐ凭るれや眼るやほ子るぬやぼあげて彈く湖靑はなた灯たる麥や月や秋は銀てん取かの二近秋杏ば哉蟲な秋つく
柿霧露小寒唐辛子燕歸る春さ冬の夜十二月神無月針浦山籔大爐山冬柿南燕杣江秋賣人風伐醉ほに林ば去の上ににれのと出んつ戶にも遊ばありをてを月袈鶴る善ぶ峰とのく柝しの装が光水舟もめ掛啼のひ甕らほ寺ことに車やうきけいふり路だり澄の水たる蟲た松たまあむ棹ざ霧ののら鷄とるする日るの小や橫て夜小寒寒冬や出去春春ささ夜十神た人水來露かかかかか二無へのかかかななななな月月て影ななな
氷枯蕪埋霙春近し手冬の日菁袋火野明治四拾壹年婢人埋林枯荒湯船春をさ火間原海屋よ近御かやのやのいせし-二十八句-しし篠留千倚イづて廻くて分守鳥廬漁國る帽かくのぶと月とるどしる戶ちるあき岸もこ瀨なまやげ傘のがきのりく手ての冬下妻氷し枯袋や槻り貰野霙日駄の蕪手のけひかかかの汁に枝り水ななな泥
初月露暮の秋落し水嵐三ケ日秋新落朝炊琴はとゆこし露ぎのつりくて水つ嵐いろ年や音秋鳴ふよ眞でむややるなき帆てす芭か洞が炭のもあびむ蕉〓火茜ろりのるすしのにきてぬ山なのさ凪錦吸やまくはぎや袖ひ露やきちに月のにの三け腰お初けの草ケり袋と嵐り秋風日
鹿秋の海秋の蚊帳秋出水秋の川秋の山初汐鹿爐秋茄秋かふ酒秋晒江は鳴邊海子海りる肆川しのついよの畠のがさをや塲汐宿なみてりこにねと出驛をにや吹ぎどくも妻とのてにきたさりも蘇のが關木蘆まくふづたひをら鐵〓見の槿荻がるる吐すの屑る旅のにり嵐妻け秋な窓帆人垣橋て間やにるのるのやややや船あ秋巨帆鳴二漁りの秋戶秋秋秋だ峯葉舟け蚊かのか出出のまか月かり帳な海な水水川りな汐な
水千爐煤鳥鳥開拂冬の日み汐高住爐透油く冬づどりにさむきこゝろを蔽ひく浪吉開垣垢れみにのやになしに千道とゐほ來むの鳥邊なて帶のそり櫛こ遠き〓と宿の筥ろ不煙てや煤にの二りつ爐の闇に冬ののとを調ち日冬きひ小度ど日倉かけ りりけらかか哉りく山ななな
明治四-四拾十五年句-
汐雛長蛙雉鶯鷄寒曲水の宴二日灸蓬櫻花鳥交る木の實植う蛇出穴子合食干閑春晴花草蛇塵城對一春寒流碇葦笈麵のつみ嵐の深穴取山岸寺暑食觴出の磨棒どたに風きをにのの領やのて間れのかくめ松凡鳥のとさ山い竹模七か築尙のて鳴素夫と泥や蜂で叢糊谷た臼る地吹のもな尊ろ艇高〓にに植袍む尻中のく立ながきき吊く耕鳴鶯うにくてらるわりにの雨風肩撰さわすくうる汗るず船〓たたやややるくた日雉つ木,膝行やよるるや蓬らる蛙に鳥子り實が方汐汐二宿艦かかかと新交かけか鷄しか干干日ののなななぶたるなりな合らな潟潟灸雛空
暑短躑雷秋近し凉しささ夜躅夏雷雷燈草晒紫短松の晴臺庵引陽夜伐晴れにのく花やりれや人にし灯藺倒日壁山凉草すのれににのし紙しのこ花ひ利さ干酒ぞ〓へろをす鎌旗かろださ言時にるやややつひ暑蚯〓躑秋蚓椎秋合さ戶躅隣隣か一かのへ咲な花りりりな枚く
蚊螢鮓行打蟲蚊燈幟植靑夏葵竹植う日井戶替合歡の花水水干帳籠田嵐霞雷雷蚊月此戶晒行水河無曝蟲合蚊か鯉植泉城やのばの宿袋井水草蒸花書拂歡帳り幟ゑ石廓みあし窓やににの汽果尙につそタしをのしらにあや水のわ鼠〓るめ田と飛た流中合やもた鹽打門れの古釣にベのは歡日眉の瀑るかれつのに河手燈た中づのの影のてにきの汲河糞のの牧西格昨籠れのる日忘ほ葉打樗空み岸の渡音塲南れと裏のほたた日の打に子日しにおけ巨〓やりやのやの大く石のつの眠り瀧ての空あかりす落つ夏竹水忙やや旅人樅きい宿入葵鮓植花温を事草木忘やがに屋るるかかかなのうかの泉け打かなかなの槿れ靑すなな石るな闇町りつなるなり中垣笠嵐み
明治參拾九年-+六句-
露月辛汐春の山朧暮早露菊暮の秋草夷干夜春春秋春露軍就水草舊海草諒芥春草艦車の山苔籠闇火淺中にのの戶廬麁ののにき落學灯訪朶甲の幽の蔭第沈草ち窓へ板か臀かに一丁喰木ばののにたげも大雉宵焦む菊灯もれああ破子やげ馬やあ猫るまややる水や月ぬのた佳や辛露やや春お暮轡端節月暮夷汐ののほのか山凪のの咲干哉ぎ中溪秋く潟山ろ春な
立歸り花千冬の夜鳥明治參拾八年冬冬返俊あ物冬り寬らおに咲浪ち入富士宿舍のくにてる-三枕園千水爐な遲鳥うに句-々がたつつとるかおみゆしと焚〓くややく千廣帆夜や鳥さ綱卷半古かかの草ななく冬鞋
秋夜立晴長明治參拾七年以前秋秋橋茶今か筒朝らか秋げのや-五そ釣笏れ糸をもない句-夜がだ長しけの秋ば爐晴緣袖るか長〓なし
薄菊麥日タ傘立秋夏花白麥鈴桐す菊ののの〓穗音葉のきにのにタだし小かかづす垣るくかちのぐつにびどを畫ときめをまくたく鷄る書日鳴し雀傘か齋い花かかて鋏ななな
明治參拾六年以前-三句-
蚊柳遣夏春さた居しかす汐どのご しのに時て源の箸氏軒との端る君や家が蚊の蚊遣遣柳焚かかくなな
明治貳拾七年以前|句-
墓錄附參季も秋つ題花に類おつ別る淚や墓まゐり
新年
織書門蓬日記初女禮者初初松萊飾春著衣始着正三ケ日三月日元去初新日年春年織書戀々とをみなの筆や初日記門松や雲ふかく蓬萊かざる山盧かな草端山路人の着て魂なごみたる春着かな雪の松ほの〓〓として着初かなあな醜の脂粉めでたき女宿院の世に古る爐邊の飾りかなはなやぎて煙れる注連や竈神初初一管の笛にもむすぶ飾りかなの 戶ややや磯や曇りて聞ゆ機初め草の庵の雪のあしたの材木白機切む十四日風ぎしたる籬內紅唐紙禮屋人時火を焚いて浦畠人の睦月かな酒ほがひ倦みつかれたる睦月かななつかしき睦月のちりやすゞり筥爐がたりも氣のおとろふる三日かな元日や前山颪す足袋のさき歲旦や芭蕉たゝへて山籠り悔いもなく古年うせる佗寢かな聖芭蕉か年たつや旅笠かけて山の庵山國の年端月なる竈火かなこゝろよき炭火のさまや三ケ日へんぼんと年立つ酒旗や賣女町船のりの起臥に年立つ故山かなすみておはす庵の春事候鍬樵初初破魔弓御淑春舊正月松過ぎ弓初袋始初湯皷始降氣霞小正月天慾無しといはるゝ君や鋤初の雨ふり出でし幣かな初山や高く居て樵る雲どころ眉剃りて妻の嬉々たる初湯かな初湯出し肉湯氣をはなちけり大殿や夜ふかくありて初つゞみ破魔弓や山びこつくる子のたむろ梅聞きとむやゆかりの宿の初皷二三文いれたる錢や初鍬や下司がもちたる大力わらんべの溺るゝばかり初湯かな谷雲にそれて流る〓破魔矢かな翠張につらぬきとめし破魔矢かな初弓や遠く射かけてあやまたず春なれて姫の夜を縫ふ小袖かなぬくし養君の弓はじめニギテ春春袋袋苑の端の木立おもてや初がすみ野社へお降り霽れや夕まゐりいんぎんにことづてたのむ淑氣かな初がすむ灘見わたせる田廬かな街表具師や松もす上路元小正月寂然として目をつむる正月の玉の日和のいらか哉臥床十餘日樹 にや正月六日より流感に罹りて初句會をひらく一月二十日新縣會議事堂に舊正月の鸚鵡籠ぎたる小爐持つ游行をとゞむ邸內文
手年萬凧歲初芝居子の日遊花かるた毬玉億兆嫁がばと天地袋を縫ふや肅として閨中の灯や花がるた再びやつけばもつるゝ毬の糸山萬歲にたわめる藪や夕渡し春にまけて優長逝きぬ二の替綠濃き子ノ日の小松打ち眺む紙鳶吹かれかはるや夕曇り花がるた夜々のおも〓ち愁ひあり廊わたる月となるまで手鞠かな庭訓による友どちや手毬唄手毬かゞるひとりに障子日影か手毬つく唄のなかなるお仙かな寺ぬひあげて天地袋に薰すや某女の婚約成れるをのこ〓ろ〓〓やお年高々つみてお年な玉玉君春繭雜鳥太楪齒若初繪雙六朶菜卯玉箸煮追植宗年寄りてたのしみ顏や繪雙六餅花や正月さむき屋根の雪太箸やいたゞいておくしづごゝろ鳥餅花に髮ゆひはえぬ山家妻汁なくて厭き〓〓くらふ雜煮かな餅花や庵どつとゆる山颪追や顏よき紐の 眞紅ゆづり葉に粥三椀や山の春やまびとや採りもつ齒朶も一とたばねおとゞいに盧の古道や若菜つむ玉夜床の惡鬼をはらふ卯槌かなタマドコ物〓
寒暖二明寒ン明けの幣の浸りし泉かな暖かや佛飯につく蠅一つ溪橋に見いでし杣も二月かな山雪に焚く火ばしらや二月空きさらぎの墨滓固き硯かな如月の大雲の押す月夜かな如月の凭る手爐ぬくき旅泊かなきさらぎの一夜をやどる老舗かなきさらぎの門標をうつこだまかな冴え返る精舎の春の雲井かな雲に鳶富士たかき日の冴え返る冴えかへる山ふかき盧の閾かな春淺き草喰む馬の轡かな旅一句春淺し涕紙すてる深山草髮梳けば琴書のちりや淺き春時候月立春立春や梵鐘へ貼る札の數立春や朴にそゝぎて大雨やむ立春や耕人になく盧の犢立春の馬嘶くもよし雨中の陽總州の旅より二月十七日夜歸庵、とりあへずその地の麥南のもとへかへりつく庵や春たつ影法師春たつや山びこなごむ峽つゞき春還山〓忘るなき春立つ峽の瀨音かな海に山に雲白妙の春たちぬ大和路や春立つ山の雲かすみきさらぎ源氏名早春春あさし饗宴の灯に果樹の靄火に倦んで爐にみる月や淺き春早春の調度見かけぬ小窓越し早春の風邪や煎藥とつおひつ春あさき人の會釋や山畑たゞに燃ゆ早春の火や山稼ぎ麥南と〓もに我が尊崇する宗吾神社へ詣づ早春や庵出る旅の二人づれ早春の日のとろ〓〓と水瀨かな春淺き山の貯水池舟泛ぶ山坂や春さきがけの詣で人のどかさや艇吊りたる艦の空墨石庵啓蟄のいとし兒ひとりよち〓〓とすぐろ野の日に尼つる〓彼岸かな山寺の扉に雲あそぶ彼岸かな尼の珠數を犬もくはへし彼岸かな〓明の路ゆく媼が念珠かな舟を得て故山に釣るや木の芽時押入に丈草寝るも餘寒かな春寒や耕人うたふ海の 唄春さむき新墓の雪や野の平ラ街路樹に仰ぐ日顫ふ餘寒かな二月八日甥昌起病む餘寒の兒吸入かけておとなしき江草如空庵春さむき月の宿りや山境ひ東行庵靈廟開扉燭光のこゝにはなやぐ餘寒かな春寒や墓濡れそぼつ傘のうち春寒くなみだをかくす夫人かな〓明木の芽時餘寒長閑啓彼蟄岸
溫泉げむりに別府は磯 の餘寒かな春さむく尼僧のたもつ齡かなやまぐにの古城にあそぶ餘寒かなながき日や洛を中の社寺詣海月とり暮遲き帆を卷きにけり春曉の湖に皿洗ふ厨かな春曉や花圃ぬけてゆく水貰ひ春曉の船にだにある枕かな大阪街路四ツ橋やどろ舟遲々とはるの晝心齋橋寒々居即事春宵の枕行燈灯を忘る宿引にひかれご〓ろや宵の春春の夜や佛事したゝむ小商人冠の紐燒く春の一夜かなそろばんに久松ねむる夜半の春四月三日夜古奈屋旅館句會席上婢に題して春の夜やた〓み馴れたる旅ごろも三田尻驛頭に土地の俳人諸氏と別る春の夜をはかなまねども旅の空三月の筆のつかさや白袷三月や廊の花ふむ薄草履琵琶の帆に煙霞も末の四月かな晒布うてば四月の山邊應へけり臼おとも大嶺こたふ彌生かな戀ざめの詩文つゞりて彌生人愛妻てる子夫人を失へる楚江君へ春ふかきぬばたまの夜の枕もと谷杉に風ぎ雲迅さや彌生盡春の日春曉三月四月春晝彌生春の宵春の夜春深し三月盡行く春ゆく春の笛に妻戀ふ盲ありゆく春や流人に遠き雲の雁戀々と春をしむ歌や局人行春や朱にそむ靑の机掛ゆく春の人に巨帆や瀨多の橋舟行スカメゆく春や人魚の眇われをみる大黑坂昌應寺ゆく春や僧に鳥啼く雲の中ゆく春や松柏かすむ山おもて戊辰水〓の羇旅竹秋盡くゆく春の月に鵜のなぐ宿りかな遂ひに不歸の客となり畢れる煙柳を弔ふゆく春のこゝろに拜む佛かな芥火に沈丁焦げぬ暮の春空林の火に馬れむる暮春かな煮るものに大湖の蝦や夏近し夏近し天文サカ山國の春日を嚙みて雞の冠春天をふり仰ぐ白齒とぢまけて人あゆむ大地の冷えやはなぐもり還俗の咎なき旅やはなぐもりもろともにうれひに酌むや花ぐもり檀ノ浦懷古軍船は海にしづみて花ぐもり馬の耳うごくばかりや花曇り泉水に顏をうつすや花曇り山水のいよ〓〓〓し花曇り早春展墓春の日春の空花曇暮春
春北風東風春北風櫁さしたる地にあらぶ小野をやくをとこをみなや東風ぐもり東風吹いて情こはく見る草木哉夜をこめて東風波ひゞく枕かな貝寄や遠きにおはす杣の神貝寄や南紀の旅の笠一つ貝寄や櫂を上げたる水夫二人春霜や東行庵の片びさし物乞のわたりてかすむ渡頭かなふるき代の漁樵をおもふかすみかなゆくほどにかげろふ深き山路かな諒闇の第一宵や月おぼろおぼろ夜や橋子にたれし花一朶朧夜や本所の火事も噂ぎり果樹園に積む石ありておぼろ哉お法會に影繪あるよし朧かなみそか男のうちころされしおぼろかな別れんとかんばせよする朧かな地理貝寄風殘雪雪解殘雪や中仙道の茶屋に谷雪解や機の窓なる湖水不二松に帆や雪消の磯家まださむし雪とけや渡舟に馬のおとなしき山くぼの朴一と叢や雪解月中年の悲哀いつしか山中生活のうちに來り、夜々、黎明にちかく必ず夢やぶれて雪解の音枕にかよふ。くだかけの鳴きつぐ庵の雪解かな切株や雪解けしたる猿茸春霞霜陽朧炎大硯をひかへて宿の雪解かな月の戶に山風めぐる雪解かな山庵即事ほど遠く深山風きく雪解かなからたちの雪解ぐもりに佇つ婢かな雪解して大和山々日和かな扇山むら雲すぐる雪解かな月褒めて雪解渡しや二三人巖苔もうるほふほどの雪間かな家鴨抱くや凍解の水はれ〓〓と騷人や凍解ふみて山登り草籠の蔭に雉子や春の山夕ばえてかさなりあへり春の山春山や鳶の高さを見て憇ふ春野ふむや珠履にもつるゝ日遲々たり木戶出るや草山裾の春の川春の水薪水のいとまの釣や春の水鹿鳥より旅うら〓なる春水記千鶴女小倉に我を仰ふ春泥に影坊二つあとやさき春泥や屏風かついで高足駄月いよ〓〓大空わたる燒野かな古めきて月ひかりいづ燒野かな燒原や風眞晝なる影法師春泥燒野雪凍間解人事春の山三月二十二日父錦風氏を亡ひし勝峰普風氏、追善供養の一句をもとめらるぶまゝに春愁のまぼろしにたつ佛かな春愁や淨机の花の凭れば濃き春の野春の川春愁
春愁や派手いとへども枕房火なき爐の大いさ淋し春の宿酒つげば緒口がつてんす春燈下麵棒のとゞろきわたる宿の雛乙娘雛も次第になりにけり雛の日や遲く暮れたる山の鐘いき〓〓とほそ目かゞやく雛かなやうやくに雛餅干ぞる且暮かな流觴の鳥ともならず行方かな春暑く素袍に汗や雞合古妻や針の供養の子澤山笈磨れの尊き肩や二日灸出代の泣くも笑ふもめづらしや牧がすみ西うちはれて獵期畢ふ海苔麁朶のかげある水や汐干潟葦の間の泥ながるゝよ汐干潟碇出てかたむく船や汐干潟寒食や凡夫の立てる膝がしら雁風呂や笠に衣ぬぐ旅の僧爐塞や不破の關屋の一とかすみたかどのに唯ある春の炬燵かな母の乳のしぼみ給へる種痘かな鮎汲や糧を忘れし巖高き殘雪を嚙んで草つむ山の子よ山燒けに燒けのこりしを摘む茶かな古き世の火の色うごく野燒かな佛像はあす彫りあがる野火の月閨怨のまなじり幽し野火の月反逆にくみせず讀むや野火の窓水邊草ほの〓〓燃ゆる野燒かな芝燒のふみ消されたるけむり哉野火煙や吹きおくられて湖の上春の宿春の燈雛祭寒食雁風呂爐を塞ぐ春の炬燵種痘鮎汲摘草茶摘田畑を燒く曲水の宴鷄合針供養二日灸出代獵名殘汐干天氣よき水田の畔を燒きはじむ耕のせか〓〓するよ道境ひ畑打や代々につたへて畠の墓日のあつく塗畦通ふ跳足かな日を抱いてけふを惜しめる種井かなひら〓〓と蛭すみわたる種井かな月影に種井ひまなくながれけり一寺領七谷植うる木ノ實かな木ノ實植う人呼びかはす二峰かな木ノ實植ゑて水にきはまる茨かな瀧殿や木鉢へ植ゑし楓の實畑中や接穗靑める土の 上柳挿すにしばし舟押して白腕薄月も夜に仰がれて挿木かな挿木舟はや夕燒けて浮びけりさくら餅食ふや都のぬくき雨壺燒鮒膾靑饅菊根分花種蒔く海風げるしづかさに燒く蠑螺かな鮒膾瀨多の橋裏にさす日かな夢さめてたゞ靑ぬたの古草盧日にむいて春晝くらし菊根分花の種まき終りたる如露かな耕畑を打つ畦塗種浸し宗〓木の實植う涅槃會門前の花菜の雨や涅槃像人々の眼のなま〓〓し涅槃見る釋奠や古墨にかきて像尊と吉野山奥の行燈や一の午門畑に牛羊あそぶ社日かな開帳の破れ鐘つくや深山寺野おぼろに水ノ口祭過ぎし月關の戶や水ノ口まつる田一枚釋奠初午社日開帳水口祭椄挿木木櫻餅
佛生會堂しづく一々見えて花御堂かしこみて尼僧あはれや花御堂浴佛にたゞよひ浮ぶ茶杓かな山寺や花さく竹に甘茶佛梅若忌日もくれがちの皷かな人々の座におく笠や西行忌二三人薄月の夜や人丸忌花紅く草みどりなり煙柳忌野に山に白雲ゆくよ煙柳忌猫の子のなつく暇や文づかひ塵取に尙吹く風や鳥交る山鴉遠くこたへて百千鳥對岸の摸糊に鶯うつりけり鶯や人遠ければ窓に戀ふ鶯に山吹ばかり横川かな城山の竹叢に鳴く雉子かな久遠寺へ閑な渡しや雉子の聲撃ちとつて艷なやましき雉子かな山風にながれて遠き雲雀かなアマバレ霽のなごりひばりや山畑畫月や雲かひくゞる山燕わらんべの獵矢に雁も名殘かな蛇穴をいでゝ耕す日に新た草深き築地の雨や蛙とぶ夜の雲にひゞきて小田の蛙かな良大人百千鳥鶯梅若祭西行忌人麿忌煙柳忌雉雲雀動物燕歸る雁蛇出穴蛙猫の戀草喰む猫眼うとく日照雨仰ぎけり落汐や月に尙戀ふ船の猫春猫や押しやる足にまつはりて猫の子や尼に飼はれて垣のうち猫の子ウブスナそのかみの產土神しろす蠶かな四眠休上原紅實君來訪すとあるに蠶屋の閑まちわぶ蝦夷のくすしかな山吹の蝶を見てゐて得度かな蝶颯つと展墓の花を搏ちにけり垣津田や宿水にうきて田螺がら蜆川うす曇りして水の濃き蛤を燒けば鳴く故にすゞめ貝蛤や鳴戶の渦にあづからず蛙の子どんぼりの日光あらし蝌蚪の春〓作一つ浮く蝌蚪とゞまりし水面かな白魚くむたびに廻れる舳影かな山越えて來てわたる瀨や柳鮠盧後溪流のほとり、荒蕪の中に池をつくりて鮠を養ふ二句鮠かふや水引草咲ける槻のもと兩降るや鮠ひるがへる池の底手紙書く指頭そめたる蠶糞かなこれやこのつむりめでたき野良蠶蠶傭のものかけてねる飼屋かな蠶をめづるほどによりそふ妹背かな生業最も原始的なる養蠶を之れたのしむ白柳魚鮠蝶田蜆蛤螺蠶植物下若蓬萠草草萠や詣で〓影す老の者若草や空を忘れし籠の鶴つみためて臼尻に撰る蓬かな
蒲公英蒲公英や炊ぎ濯ぎも湖水まで塗り畦にたんぼゝちかくありし哉森の神泉におはす薊かな林沼の日のしづかさや花あざみ草むらや虎杖の葉の老けそめて苅籠やわけて虎杖いさぎよきいたどりの葉の斑ざしたる蛇籠かな高野山春たけなはのわらびかな一鷹を生む山風や蕨伸ぶみさ〓ぎや日南めでたき土筆海しらぬ子にこの土ありつく〓〓し日影して胸ふとき難や芹の水芹汁や朱ケ古りたれどめをと膳慈姑田や透垣したる社守胡瓜苗ほけ土に出て双葉かな菜の花や五十三次ひとり旅大根の花大原やまる花大根花大根藁家二軒の峽かな種芋や兵火のあとの古都の畠芋植うや尾の上の花は晴れがまし靑麥や古株の根に蔭もちて耶馬の舟古くあやうし竹の秋巖蔭の廬の三味線や竹の秋竹秋や雨露風雪の榻の寂び竹の秋一燒す蘭のやまひかな虛空めぐる土一塊や竹の秋空ふかくむしばむ陽かな竹の秋屠所遠くみるつり橋や竹の秋谷川にほとりす風呂や竹の秋夕日影せきて古簾や竹の秋盧煙りや竹秋の葉のちり〓〓にちる笹のむら雨かぶる竹の秋薊種芋虎杖靑麥竹の秋蕨土筆芹慈姑瓜苗菜の花溪流のをどる日南や竹の秋春蘭や巖苔からぶけしきにて春蘭の花とりすつる雲の中一と叢の木瓜さきいでし葎かな燒けあとや日雨に木瓜の咲きいでしをりもちて木瓜ちりつゞくみづ枝かな石楠花の紅ほのかなる微雨の中松伐りし山のひろさや躑躅咲く尼寺や卯月八日の白躑躅大空に彫られし丘のつばき哉百雞をはなてる神や落椿ばら〓〓と日雨音しぬ山椿花ちりしあとの枯葉や墓つばき折らんとすつばき葉がちや風の中椿寺雲ふか〓〓と魚板鳴るいちじるく岨根の椿咲き初めぬ陋巷の侏儒に咲ける椿かな梅林に漁舸弄す浪の見えにけり梅林を柩昇きゆく漁人かな藪中の木を積む墓所や梅白し山寺やむざと塵すつ梅の崖梅の月に焚き衰ふる藁火かな梅園や誰もひろはず捨て扇きさらぎのはじめ總洲の旅路に麥南の草庵生活を訪ふ風呂あつくもてなす庵の野梅かな棕梠の葉のか〓りて梅の若木かな草庵や花うるみたる梅一樹ゆく雲に野梅は花のなごり哉山藤の風すこし吹く盛りかな海棠や緣を往き來す狆の鈴老鹿にひともと樹ちの芽楤かな春蘭梅木瓜の花石楠花躑躅椿藤海棠楤の芽
サヅユミ獵弓をたてかけにける芽楤かな木々の芽にかけ橋〓き風雨かなはた〓〓と鴉のがる〓木の芽かな土くれや木の芽林へこけし音朴芽だつ山おもてなる嵐かな舊山盧訪へば大破や辛夷咲く連翹に山風吹けり薪積む花の風山蜂高くわたるかなたがやして社の花に午餉かな木曾人は花にたがやす檜笠かな水甕に花の日さして炊ぎけり花に打てば又斧にかへるこだま哉花の影戶にあり人を偲ばしむやまびとの大爐ひかへぬ花の月巒はれてちる花に汲む泉かなうきくさにながあめあがる落花かな花を搖る上ワ風や夜をふかめつゝ長橋におとろふ月や花堤井裸馬率ておとなしや花嵐澄む水にみよしうごきて花吹雪老ひそめて花見るこ〓ろひろやかに山ぞひや落花をふるふ小柴垣ぬぎすてし人の溫みや花衣花さそふ月の嵐となりにけり瀧北君新居成れるに一句を乞はれて一屋 の月雪花や思ふべし大谷山大德坊深山みち風たつ花の名殘かな雨丈君の長逝を悼むちる花のあはたゞしさよ昨日今日晴嵐に松鳴る中のさくらかな木の芽辛連花夷翹一櫻山ノ神祭典いにしへも火による神や山ざくら折りとりし花の雫や山櫻二三片落花しそめぬ苗櫻いばら野や盛りとみゆる山櫻大谷山大德坊神山や風呂たく煙に遲ざくら居すごして箸とる家のやなぎかな巡邏終へて柳に日あり歌書を繙く書樓出て日の草原のやなぎかな池の面にはらりとしたる柳かな唐櫃は玄關におけ松の花柳松の花

古驛のほとりを過ぐ麥秋や痩馬牽きて長手綱白衣きて禰宣にもなるや夏至の杣月いでゝ見えわたりたる梅雨入かな入梅や墓さむげなる竹のつゆなにがし自作になる二尺餘りの陶壺を贈らる大陶壺さす花もなく梅雨入かな師をしたふこ〓ろに生くる卯月かなみな月の日に透く竹の古葉かな紫陽花に草紙干す時暑さかな船暑し干潟へおろす米俵筆耕や一穗の灯に暑き宵晒引く人涼しさを言ひ合へりすゞしさや波止塲の月に旅衣笛ふいて夜凉にたへぬ盲かな時候夏入至梅夏鑛山に逢ふて盛夏帽裏の刺を通ず盧の盛夏窓縱横にふとき枝夏旅や俄か鐘きく善光寺尿やるまもねむる兒や夜の秋夜の 秋や轡かけたる厩柱短夜や藺の花へだつ戶一枚夏立つや禿山すかす不淨門草鞋して夏めく渡舟去る娘かな夏めくや霽れ雷の一つぎり後架にも竹の葉降りて薄暑かな師門遠く藻に泳ぐ子や麥の秋麥秋の蝶吹かれ居る唐箕先六月八日人の誘ふ旅に市川夜の秋短夜立夏夏めく卯月水無月暑さ薄暑麥の秋凉しさ河口湖上富士仰ぐわが首折れよ舟涼し門とぢて夜凉にはかや山住ひ法廷に月影さして夜凉かな印籠にありて微涼の藥餌かな紺靑の夜凉の空や百貨店三伏の月の穢に鳴くあら鵜かな白骨溫泉三伏の月の小さ〓や燒ケ嶽溫泉山道賤のゆき來の夏深し燈臺に灯すこ〓ろや秋隣り草庵の壁に利鎌や秋隣り墓松に玉蟲とるや秋近く絲染むるや秋遠からぬ小野の森水樓秋近きてすりに凭るや月二つ天文夏の月夏の雲生き疲れてたゞ寢る犬や夏の月夏雲や諸人聽聞のゆきかへり夏雲濃しうまやの馬にわか竹に夏寒き西山溫泉入湯の歸途海拔五千尺の不二見峠に佇み幽谷を瞰下しつ〓强力の脊より水密桃一個をぬいて雲と〓もに嚙む三伏夏深し秋近し夏雲のからみてふかし深山槇地獄谷の岨路に岳腹の砂防工事を仰望す夏雲や山人崖にとりすがる臙脂の黴すさまじき梅雨の鏡かな梅雨
梅雨の灯のさゞめく酒肆の鏡かな深山花つむ梅雨人のおもて哉うち越してながむる川の梅雨かなから梅雨や水面もとびて合歡の鳥衣桁かげ我よればなき梅雨かななか〓〓に足もと冷ゆる梅雨かな澤潟の葉かげの蜘蛛や梅雨曇り簾外のぬれ靑梅や梅雨あかり二タ媼梅雨に母訪ふ最合傘とかう見て梅雨の籔下通るかな汲みもどる谷川くもる梅雨かな書窓つゆ蠅のからみもつるゝ石の上峡中山盧タケノコツユ雲ふかき筍黴雨の後架かな桐の葉に夕だちをきく書齋かな鰍澤富士川河岸馬車を出て舟を待つまや小夕立タ立や水ナ底溯る溪蛙雷晴れや日にのぞかる〓椎の花雷の晴れ倒れし酒旗に蚯蚓かな夏旅や溫泉山でゝきく日雷人うとき溫泉宿にあらぶ雷雨かな灯をはこぶ湯女と戰ぐ樹夏の雨夏の雨草井に日影殘りけり鶯宿山道夏雨や淵にまた下る合歡の蜘蛛夏の雨花卉あらはなる磯家かな電晴れて渡舟へんぼんと山おろし露凉し鎌にかけたる葛の蔓泉石をはづるゝ瀧や靑嵐信濃山中梓川神鳴夏の雨電夏の露靑嵐筍黴雨タ立川瀨ゆるく浪をおくるや靑あらし大南風をくらつて尾根の鴉かな夏風やこときれし兒に枕〓夏風や竹をほぐるゝ黃領蛇小枕に假りねのさむき御祭風かな城廓の中の牧塲や夏がすみしづかさや日盛りの的射ぬくおと日ざかりやおのが影追ふ蓬原日盛りの町中にして傘屋峽とほく雲ぬく峰や日の盛り夏の山なつ山や急雨すゞしく書にそゝぐ大正八年六月二十六日家〓を發して日本アルプスの幽境白骨山中の溫泉に向ふ、途中夏山や又大川にめぐりあふ夏山や風雨に越ゆる身の一つクサギ夏山や常山木の揚羽鴉ほど夏山の葛風たゆる時のあり棺桶を身けば雲ひろき夏野かな幽火戶にもゆる夏野の鵜匠かな夏海へ燈臺徑の穗麥かな夏川や砂さだめなき流れ筋やまがつのうたへば鳴るや皐月川〓棘に夏水あさき野澤かな大峰を日わたりて 晦き〓水かな南風夏の風ゴサ御祭風夏霞日盛夏野地理夏の海夏の川白根駒ケ岳の連峰書窓遙かに聳え春日山の翠微眉におつ夏の水〓水
苔の香や笠着てむすぶ岩〓水汗冷えつ笠紐ひたる泉かな深山雨に蕗ふか〓〓と泉かな山泉杜若實を古るほとりかな空蟬をとらんと落す泉かな薙ぎ草のおちて つらぬく泉かな蚊とんぼの袖にとりつく瀧見かな觀瀑や風に流る〓石た〓き植ゑし田の中の巨石や忘れ笠幟鯉幟タべたれけリ木槿垣社家町や樗の花に鯉のぼりオシマヅキ七夕の夜ぞ更けにけり几夕雲や二星をまつる山の庵白雲山盧行事梶の葉に二星へそなふ山女魚七夕のみな冷え〓〓と供物かなうき草に硯洗へり鵜匠の子硯洗へば梶ながるゝやさや〓〓と硯洗ふや虹濃き水のゆたかなる硯洗ひ干す亭二三步の斜面かな歸省するふるさと道の夜市かな首なげて歸省子弱はる日中かな盆市の一夜をへだつ月の雨草市の人妻の頰に白きもの藏壁の火籠とりいでつ夜振かな泉七タ瀧硯洗植田人事歸省風爐茶端午菖蒲酒藥玉風爐茶やきげんとはるゞ山長者深草のゆかりの宿の端午かなくちつけてすみわたりけり菖蒲酒五色縷のたれもたれたり肘枕草市川狩苗代に月の曇れる夜振かな午過ぎの磧に干せる鵜繩かなひえ〓〓と鵜川の月の巖かな衣かつぐ誰ぞ草やみや鵜舟去るながれ藻にみよし影澄む鵜舟かな夜明りに渦とけむすぶ鵜川かなわが好む白ふんどしの裸かなつかれ身の汗冷えわたる膚かなたちよれば答を舐ぶる汗馬かなたくましく婢の愁あるあせぼかなさばかる〓女難の顏のあせぼ哉あな瘠せし耳のうしろよ夏女一日山盧を出て隅々舊知某老妓と會すなつやせや死なでさらへる鏡山なつまけの足爪かゝる敷布かな暑氣下し香薷散藥の日土用灸天瓜粉香水手弱女の眼のなまめきや暑氣下し香薷散保養の月におこたりぬ藥獵や八百重の雲の山蔽ふいかなこと動ぜぬ婆々や土用灸みめよくてにくらしき子や天瓜粉香水や眼をほそうして古男卒逝せる小川柘亭君を悼む似もつかぬ白裝束の更衣袷人さびしき耳のうしろかな人なつくあはれ身にそふ袷かな水盤に行李とく妻や夏ごろも鍼按の眼のみひらけぬ浴衣かなかたびらや汗ひえ〓〓と座にたゆる夏帽や保養一念に湖邊宿夏帽に眼の黑耀や戀がたき山の戶やふる白靴もものゝかず鵜飼裸汗更袷衣汗疹夏浴帷夏衣衣子帽夏痩暑氣中白靴
日傘夏の宿夏館簞靑簾鈴の音のかすかにひゞく日傘かな芭蕉織る嶋とおもへば夏の宿誰としる人聲遠し夏館靑巒の月小さ〓よたかむしろ古宿や靑簾のそとの花ざくろ驛の家に藻刈も透ける靑簾かな忌中なる花屋の靑簾かゝりけり雲水もともに假泊や靑すだれセウジヤウ蕭牆のうれひにいだく竹奴かなすはだかに熟睡したる籐椅子かな晝寢覺め厨にみてる魚介ありとゝのへて打ち馴らしけり蠅叩音ひしと盤面をうつ蠅叩匂はしく女賊の扇古りにけり豪華なる女犯の扇なぶりけり山居即興柱たかく足倚せて扇つかひけり蚊帳つる釣手の音に眠入るなり合歡に〓古河の渡しの宿屋かな灯を入れてしばらく讀める蚊帳かな剪りさして毒花に睡る蚊帳かな白骨檜峠一軒茶屋高山七月老鶯をきく晝寢〓たかどのに源氏の君が蚊遣かなさし汐の時の軒端や蚊遣焚く蚊火焚くや江を汲む妻を遠くより今はたゞ蚊火もゆるのみ大雨かないとゞしく月に蚊火たく田守かな城番に松の月すむ蚊やりかな西晴れて月さす水や蚊遣香蟲拂鼠の糞の 大いなる曝書尙われに昨日の忙事かな蚊帳簾蚊遣火抱籠籐椅子晝寢蠅叩扇蟲干蟲干や東寺の鐘に遠き緣騒動記蟲干す中に讀まれけりむしぼしの巢くふ虫あるや古鏡蟲干のあつめし紐や一とたばね繭買やおとなひかざす古扇屑繭買むりに蠶むしろわたりけりわがことの繭もぎ飽かぬ媼かな江泊の酒盡くほどの花火かなあまりつよき黍の風やな遠花火花火見や風情こゞみて舟の妻驛路やうしろほめきに宵花火かりそめに燈籠おくや草の中燈籠にねびたる稚兒やあはれなる流燈や一つにはかにさかのぼる逆汐に高々と浮く燈籠かな燈籠やながれて早き蒲の川遠淺にむれてあまたの燈籠かな燈籠や天地しづかに松のつゆ山賤や用意かしこき盆燈籠おもざしのほのかに燈籠流しけりもろともに露の身いとふ踊かな信洲某の〓をよぎりてやまぎりにぬれて、踊るや音頭取さるぽどに泣きごゑしぼる音頭取歲々の休暇幼童姪甥共に集まりて燈下童話をせがんで足をふみ首にまつはる。ネ肱枕そら眠がくりと夜凉かな納涼やつまみてむさき君の櫛晒井にたかき樗の落花かな行水や盥の空の樅の闇あつ過ぎる行水にさす日影かな繭踊花火燈籠納凉井戶替行水
行水や晒し塲暮るゝ垣の隙行水のあとの大雨や花樗行水の裸に麥のタ日影水草の流れ汲み打つ溫泉町河蒸汽水打つ河 岸につきにけり無花果の門の格子や水を打つわが眉に日の山遠し水を打つ游泳やおぼるゝ水のかんばしき岸にうつ泳ぎの波や大夕燒遠泳やむかひ浪うつ二三段遠のきて男ばかりの田植かな早乙女や神の井をくむ二人づれかたよりて田歌にすさむ女房かな葡萄棚ふかく麥うつ小家かな藺を刈るやうすはかげろふ笠につく水の日に浮きてゆられぬ藻搔竿麻刈る竹植日花氷冷豆腐麻刈つて渺たる月の渡しかな戶袋にあたる西日や竹植うる觀衆にとけてあとなし花氷古家や冷奴おごりならねども歲々の休暇幼童姪甥共に集まりて燈下童話をせがんで足をふみ首にまつはる。腹這ひにのみて舌うつ飴湯かなはつたいをふくみて姥のかごとかな此の宿や飛瀑に打たす鮓の 石鮓桶の蓋とれば雲とざしけり鮓宿へ旅人下りぬ日の峠鮓賣の裏坂すぎぬ竹の月鮓壓すや加茂のまつりも過ぎし雨鮎鮓や多摩の晩夏もひまな茶屋和田峠茶店打水水泳飴尠鮓湯田植麥刈る藺刈る藻刈る乾飯山霧に蜻蛉いつさりし干飯かな食祿をすてし墓參のやからかなおはしたや墓參のむせぶ香煙り盂蘭盆の出わびて仰ぐ雲や星身一つにかゝはる世故の盆會かな信心の母にしたがふ盆會かな雲を追ふこのむら雨や送り盆さゝぐるや箸そふ盆供手いつぱいうろくづに雨降りしづ む盆供かな蓮の葉にかさみておほき盆供哉宵盆や幽みてふかき月の水山川に流れてはやき盆供かな文月十一日筑紫なる吉武月二郞の長子我が命名の硯哉早世すと報じ來るに轉た心を曇らすこの秋は何葉にそへん盆供かな宗〓盂蘭盆たんじ砂走りの夕日となりぬ富士詣雲ふかく結夏の花の供養かな負馬の眼のまじ〓〓と人を視る倒れ木を越す大勢や順の峰祖父祖母も寢しこの宿や順の峰もつ花におつる淚や墓まゐり展墓日暑し玉蟲袖をあゆむかな墓參人の歸りやながめられにけり子もなくて墓參いとへる夫婦かなひしめきてたゞ一と時の墓參かな御墓參のなみだをかくす故山かな香煙や一族まゐる籔の墓富士詣安居競馬峰入墓參
1じ靈棚やしばらく立ちし飯の湯氣盆經やかりそめならずよみ習ふときじくのかぐの木の實や聖靈棚たくらくと茄子馬にのる佛かなミヅムケ水向や貧一燈につかまつる盆經にむら雨すぐる木蔭かな年寄りて信心かたし生身魂送り火をはた〓〓とふむ妻子かな形代やたもとかはして浮き沈み蕗薹と相見ざること十數年弟さん二郞氏の文によりはじめて蕗薹亡きを知る蕗薹忌もわれまた修す雲の中巷間の花買は〓やな柘亭忌靈祭動物時鳥寺にみる月のふるさやほとゝぎす燈臺の浪穗の舟やほとゝぎす天狗祭の日鶯宿村の老樵夫自ら伐りし大木に壓されて死す。二句まなことび膓ながれありほとゞぎす柚の死に斧を祀るやほと〓ぎす河口湖上白扇に山水くらしほとろぎす友の死につどへる樵や閑古鳥身延七面山十十郭公に耳かす齋や山の坊谷雲に夏鶯は枝のさき生身魂門火名越の祓蕗薹忌柘亭忌閑古鳥十十齋枝郭老公鶯郭谷すはや山の坊のさき蜥場蝶ながるゝ風にはねあそぶ蜥蝪かな靑蜥蝪さます嫉妬のほむらかな河岸船の簾にいでし守宮かなおどけたる尼の操や蛞蝓雨蛙樫の戰ぎに雲忙し雨蛙とびて細枝にかゝりけり初鰹いたくさげすむ門地かな鯖釣や夜雨のあとの流れ汐鰺釣や帆船にあひし梅雨の中鮎漁のしるべも多摩の床屋かな干鮎や颪しはてたる蠅一つ〓鮎ながして水のあな〓しめづらしやしづく尙ある串の鮎ふるさとや厩のまどの鮎の川月さして燠のほこ〓〓と鮎を燒くうたがへば妻まことなし鰒に酌む金魚赤貧洗ふが如く錦魚を飼ひにけり灯してさゞめくごとき金魚かなまひ〓〓や菖蒲に淺き水車尻まひ〓〓や庭の水落つ門流れうち水にはねて幽かや水馬古驛や塀沿ひ曲る蛭の川月の窓にもの〓葉裏のほたるかな庵出る子に松風のほたるかな瀨をあらびやがて山のすほたるかなかざむきにまひおつ芋の螢かな瀧しぶきほたる火にじむほとりかな溪風のほたる火見する芹生かな殪つさまにひかりもぞ する螢かな大正八年六月六日家〓を發して日本アルプスの幽境白骨山中の溫泉に向ふ。守蛞雨宮蝓蛙皷蟲水蛭螢馬初鰹鯖釣る鰺鮎鰒
夏の蝶夏蝶や齒朶ゆりて又雨來る白骨溫泉後架灯おくやもんどりうちて金龜子七毛蟲燒くや愛人窓掛をあげて彈く毛蟲燒く火幽し我に暮鐘鳴る月光に燭爽かや灯取蟲夏蟲や一と風呂の間の酒肴幽冥へおつる音あり灯取蟲火蛾打つや弑するとにはあらねども抛げし蛾に一と搖りゆれて池の鯉蚊ばしらや眉のほとりの空あかり泉掬ぶ顏ひや〓かに鳴く蚊かな夜ふかく饗宴の酒をすう蚊かな蚊の聲や夜ふかくのぞく掛け鏡蠅追ふや腹這ふ足を打ち合せ訪客に又とぶ影や夜の蠅蠅とぶや烈風なぎし峠草蠅まふて小畫時なる出立ちかな膳さきへかたむく桑や蚤の宿山蟻のわくら葉あるく水底かな蟻いで〓風薄暑なる杣の路魚板より芭蕉へつぶく羽蟻かな釣人や羽蟻わく舳をかへりみず蟬鳴くや瀨にながれ出しところてん神甕酒滿てり蟬しぐれする川社棧や荒瀨をこむる蟬しぐれ深山木に雲ゆく蟬の奏べかな雲ゆくや行ひすます空の蜘蛛金平毛蟲蛋蟻火蛾飛蟻蟬蛾蚊蜘蛛の子植物蠅夏草夏草や驛の木立に捨て車夏菊向日葵瓢の花蕗瓜夏菊に桑かたむきて家蔭かな日向葵に鑛山びとの着る派手浴衣瓢簞の花にひともす逮夜かな山里や木小屋の中を蕗の川瓜畑を展墓の人や湖は秋しば〓〓や人に雨月の瓜ばたけ瓜つけし馬も小諸の城下かなぬすびとに夜々の雨月や瓜畑畑草や靑酸漿もみのり時流水にたれて蟻ゐるいちご哉いちごつむ籠や地靄のたちこめて紫蘇の葉や裏ふく風の朝夕べ庖厨や鉢朝顏の實をむすぶ桑卷いて晝顏咲かぬみどりかな旅人に遠く唄へり蓴採曲江にみる萍や機上の婦浮きくさにまびきすてたる箒木かな曲江に山かげ澄みて花藻かな藻の花に窓前の湖雨すなり日蔽垂る〓水に明るき花藻かな泥舟の水棹たてたる花藻かな濁り江や茂葉うつして花あやめ百合折るや下山の袖に月白き山百合にねむれる馬や靄の中上圖日ざかり松葉ぼたんの黃と赤と松風竹雨芭蕉玉卷く書樓かな鴨足草雨に濁らぬ泉かなふもと井や湯女につまるゝ鴨足草雷のあと日影忘れて葵かな夜の市や葵買ひゆく人の妻花葵貧しくすみて靑簾吊る日中に咳はく牛や花葵藻の花溪蓀百合の花靑酸漿覆盆子松葉牡丹玉卷芭蕉雪の下紫蘇朝顏晝顏蓴菜萍の花葵
屑繭に蠅たむろしぬ花葵麥の穗にかる〓〓とまる雀かな麥畑に芥子のとび咲く籬落かな麥畠や奈良の小鍜冶が古簾たかんなをさしかつぎしてつゆしげきわか竹や牝を追ふ雞のいづこまでわか竹や句はげむ月に立てかゞみ竹の實に寺山あつき日ざし哉竹落葉溪の苔岩乾るまなき帽のかび拭ひすてたる懷紙かな愛着すうす黴みえし聖書かな水一荷渡御にそなへし靑葉かな伯母逝いてかるき悼みや若楓逆友を訪ふ岡晴れぬ靑銀杏夏木にも瓜蠅とべり峠畑霽れや夏木おもての雲がかり桐の花花桐に斯の民やすき湖邊かな花桐や敷布くはへて閨の狆花桐に草刈籠や置きはなし百日紅咲く世に朽ちし伽藍かな妻織れどくるはしき眼や花柘榴戀ひ老ひて貧苦に梳けり棕櫚の花藪寺に餘花や見えける嵯峨野かな船におちて松毬かろし餘花の岸葉櫻や嵐峽晴るゝ人の傘はざくらや翔ける雷蝶一文字靑梅のおちてゐて遊ぶ精舍の地靑梅のはねて浮く葉や夕泉牡丹白し人倫を說く眼はなてば山雲の翔りて咲けるぼたん哉牡丹や阿房崩すと蟻通ふ花闌けてつゆふりこぼす牡丹かな麥百日紅柘榴の花棕櫚の花餘花筍若竹竹の實竹の落葉黴葉櫻靑梅若葉若楓夏木立牡丹薔薇月雪や萎みかさねて垣のばら野茨に虻とる雨雀かへり見すバ15垣薔薇の賣女に匂ふ旦暮かな紫陽花に八月の山たかゝらず大空に不二澄む罌粟の眞夏かな罌粟の色にうたれし四方のけしき哉白蓮やはじけのこりて一二片風波をおくりて深き蓮の水葉裏よりおちたる蜘蛛や蓮の水蓮濠やすでに日當る人通り上林廣業寺睡蓮に日影とて見ぬ尼一人雷やみし合歡の日南の旅人かな合歡かげに船の煙りや山中湖山風のふき煽つ合歡のからす哉高校に花めぐりあへり午下の合歡ふためきて又むしとるや合歡の禽芝山の裾野の暑氣やれむの花松友君夫人の死をねむの花ちる七月の佛かなラ汝と剝いて戀白眼み足る林檎かな桑の實の葉裏まばらに老樹かな飼猿を熱愛す枇杷のあるじ哉忌のことにつどひつ枇杷に乳人と酌む紫陽花罌粟の花林檎桑の實枇杷蓮の花睡蓮合歡の花

道幾度かこゝに親しむ。秋やこの後架を旅のうたご〓ろ九月一日の夜半ものゞけに不圖眼ざむれば庵の猫枕邊にて尾の切れし靑蜥蝪を弄ぷる白猫やとかげ喰ふてふ〓の秋旅人や秋に後る〓雲と水今朝秋や笏をいだけば袖長し涕かんで耳鼻相通ず今朝の秋立秋の庇みせたる杣家かな秋たつや川瀨にまじる風の音はつ秋の雨はじく朴に施餓鬼棚むら星にうす雲わたる初秋かな鰯雲簀を透く秋のはじめかな秋ぐちの庭池の扉や月の雨時候秋胃洗ふて病院桐の秋濶し乾草をまたぎあへず餐る秋の雞秋女醉ひ伏す枕抱きしめて僧院や秋風呂たてゝこみあへる竹山を昇き出し怪我や秋磧ピストル坐邊にありてこちたし書齋 秋通る我をしげ〓〓と見ぬ秋の馬轉寢や庭樹透く日の秋半ばナわづか醉ふてさめざる姿態や秋女秋旅や日雨にぬれし檜笠秋の鷹古巢にかへる尾上かなわれ〓にて書見する癖あり蕉翁の芳野、更科、奧の細立秋初秋秋ぐちのすはやとおもふ通り雨墓に木を植ゑたる夢も初秋かな秋暑し湖の汀に牧の雞つらぬきて蟻塔の草の秋暑かなゆかた着のたもとつれなき秋暑かな秋暑したて〓しづくす藻刈鎌草籠に秋暑の花の濃紫峽底の穗家秋あつき調度かな盆過ぎやむし返す日の俄か客杣人の頰ひげあらし殘暑どき関伽桶に秋暑の華のしづみけりさかゆきのにほへるほどの殘暑かな口紅の玉蟲いろに殘暑かな酒坐遠く灘の巨濤も秋日かな秋日や喰へば舌やく唐がらし秋の日の時刻ををしむ圓かな歸庵途上秋の日や草臥れ足の一葉ふむ協會ほど遠き秋曉け方の雞かな秋の晝ねむらじとねし疊かなつ〓ぬけに裏戶の花卉や秋の晝若山牧水の英靈を弔ふ秋の晝一基の墓のかすみたる大木を見つゝ閉す戶や秋の暮秋夕やかへりみすなる小女房墨するや秋夜の眉毛うごかして醫者の馬は闇に秋夜の小葬吟行費用、同人病死慰問、すべて不時の用意として我が笹鳴會に俳句無盡をたつ秋の夜や熱心みえて小勘定はしためをうつ長臂や秋の夜殘暑秋曉秋の晝秋の暮秋の夜秋日
ひとり寢の身のぬくもりや秋の夜茶筒かげそれも夜長の爐緣かな海鳴れど艫は壁にある夜永かな牛宵眼ざむれば即ち灯をか〓げて床中句を案ず。ながき夜の枕か〓へて俳諧師夜永爐に土間のはしらや誰かあるほこ〓〓とふみて夜永き爐灰かな十月二日、醫汀波來庵。いさゝか恙をわすれて俳談に時を過す。ともに寢て一とね夜ながき燈下かな爽かに日のさしそむる山路かな文月 や田伏の暑き假り厠ひやゝかに簑笠かけし湖の舟ひや〓かにのべたる皺や旅衣葉月仲秋や火星に遠き人ごふろ陰曆八月虹うち仰ぐ晩稻守十月の日影をあびて酒造り秋分の時どり雨や荏のしづく註。荏は紫蘇に似たる植物にして食用に供するこまかき香氣强き實を簇生す。筆硯わが妻や子の夜寒かな郡内大月句會歸途ハウタウ一つ家や夜寒傅飥すゝりあふ佛壇や夜寒の香のおとろふる舞子驛に陶物師のわざを少時く面白しと見る。サウカウ霜降の陶ものつくる翁かな草の戶の臀たれ猫や暮の秋ゆく秋や案山子の袖の草虱夜長十秋月分夜寒爽か文月冷やか霜降暮の秋胃中に蟲數多發生して斃れたる農馬あり。胃ぶくろにすごもる蟲や暮の秋ゆく秋や石榻による身の力ゆく秋の粟食むすゞめ羽を擴ぐはしり火に茶棚のくらし冬隣し、一水兩君と打連れだちて古松山へわけ入る。樹々のねの秋日ふむ客や足たかく秋日椎にかゞやく雲の袋かな澄みそめて水ナ瀨のしぷく秋日かな石橋や秋日のほめく杖のさき旅人に秋日のつよし東大寺たちいでゝ身にしみ〓〓と秋日かな野祠に秋日のほめくあたりかな飄として尊き秋陽一つかな水車の灯幽かにもあるや月の溪とりいでゝ脆き錦や月の秋松窓未亡人肥かつぐ寡婦に東嶺の月黃なり八千草の月幽くすめる尼僧かな滄溟にうく人魚あり月の秋冬隣る天文秋の日日の秋や門茶につどふ草刈女たび人に日の秋畠の焚火かなかぜひいて見をしむ松の秋日かな笛吹川堤上感電して少年めぐりおちぬ秋の日に大正九年十月某日、いさゝか酒肴をしつらへて、たけ月
詩にすがるわが念力や月の秋甲斐の夜の富士はるかさよ秋の月月高し池舟上る石だゝみ刈草に尾花あはれや月の秋白骨溫泉二句月みせてはとぶ白雲や深山槇這ひいでゝ人捕るさまや月の蜘蛛眞乘寺住持聾白林に與ふ山月に冴えて聾ひたる耳二つ白林和尙葬儀秋月や魂なき僧を高になひ幽夢君の愛〓鳴海に題すある時は月前にうつ皷とも蘆の湖に溺死せる從弟萍生を國嶺の頂に茶毘にして茶毘の月提灯かけし松に踞す月をみる眇もちたる樵夫かな月の木戶しめ忘れたる夜風かな海濱假泊簾捲く月の渺たる磯家かな某氏の松の〓に題すたちいで〓秋月仰ぐ山盧かなハシバミ月影や榛の實の枯れて 後新月や掃きわすれたる萩落葉新月に牧笛をふくわらべかな微恙即事粥炊くや新月すでに光りそむ山盧即事筆硯に多少のちりも良夜かな名月や耳しひまさる荒瀨越え明月に馬盥をどり据はるかな釜無川月見會即事三日月名月觀月や小者聖牛に灯をともす名月や宵すぐるまの心せき風をいたむ觀月づれの句弟子かな笛吹川舟遊舟をり〓〓雨月に舳ふりかへてかけ橋やいざよう月を水の上宵闇の轡ひゞかす愛馬かなすた〓〓と宵闇かへる家路かな宵闇や竈火に遠き藏びさし秋の星遠くしづみぬ桑畑晴れくもる樹の相形や秋の空朴の葉や秋天たかくむしばめる雲あひの眞砂の星や秋の空杣の火にゆく雲絕えて秋の空山なみに高嶺はゆがむ秋の空秋雲をむかへて樹てり杉大樹秋の雲しろ〓〓として夜に入りし秋雲をころがる音や小いかづちみるほどにちるけはしさや秋の雲瀧上や大瀨のよどむ秋曇り橋からの釣糸ながし秋晴るゝ仙娥瀧瀧壺や人のたむろす秋日和人の國の牛馬淋しや秋の風秋風や野に一塊の妙義山竈火赫とたゞ秋風の妻を見る蘆の湖に溺死せる從弟萍生を國嶺の頂に茶毘にして秋風や眼前湧けろ月の謎槍の穗に咎人もなし秋の風秋風やこだま返して深山川秋風や舟夫翩翻と波の上秋秋曇晴無月十六夜宵闇秋風秋の星秋の空秋の雲
あきかぜや水夫にかゞやく港の灯狂人某人々に縛せられ藤垈の瀧にうたる岩をかむ人の白齒や秋の風我が〓里に無數の塚あり皆これ太古の墳われ佇ちて古墳の松や秋の風白林は僧、大秋は醫、大秋病み白林僂す大秋と白林を弟子や秋の風秋風や痢してつめたき己が糞なんばんに酒のうまさよ秋の風あきかぜやためてよしなきはした錢秋風や磊〓として父子の情偶感なにをきく眼じりの耳や秋の風題婢風や顏虐げて立て鏡自嘲われを見る机上の筆や秋の風かの白蓮女史を秋風や思ひきつたる離緣狀秋風や笹にとりつく稻すゞめ山中閑居ひるを臥て展墓のゆめや秋の風仲秋某日下僕の老母が終焉に逢ふ。風蕭々と柴籬を吹き古屏風のかげに二女袖をしぼる。ナキガラ死骸や秋風かよふ鼻の穴宗用海濱所見ニチナ秋風や浪にたゞよふ古幣秋や立て鏡かよふ鼻の穴秋悼角田湖舟秋の風枕の塵もとめあへず微恙秋風や水藥をもる日分量高西風に秋闌けぬれば鳴る瀨かな初嵐眞帆の茜に風ぎにけり琴の音や芭蕉すなはち初嵐あきさめの巖うるほすや樹々の中柑園の夜に入る燭やあきのあめあき雨に澄む舟つきの砂崩れ秋雨や禮容客におのづから秋雨や田上ミのす〓き二穗三穗秋雨に賤が身をよす硯かな秋霖や蕨かたむく岨の石就中學窓の灯や露の中朝つゆやむすびのぬくき腰ぶくろ炊ぎつ〓ながむる山や露のおと江上に月のぼりたる夜露かな芋の露連山影を正うすつぶらなる汝が眼吻はなん露の秋露さだかに道ゆく我をたのしめり葬人は山邊や露の渡舟こぐ露の日に提げてながし屠り難心中もせで起きいでぬ露の宿金剛力出して木割や露の秋つまだちて草鞋新たや露の橋倒れ木やのぼるになれて露の杣ふなべりをおちてさやかや露の蟲誰もゐぬ露けき囚のぞかれぬ庵の露木深く月の虧けてより畠中や露干る笠の裏返しくづれたる露におびえて葦の蜘蛛高西風初嵐秋雨露
露寒露ざむの情くれなゐに千草かな能滿寺俳句會塲カケハシ棧やふり仰ぎたる天の川雲漢の初夜すぎにけり磧秋虹や草山映えて一とところ蠶部屋より妹もながめぬ秋の虹谷橋に見る秋虹のやがて消ゆ秋虹をしばらく仰ぐ草刈女山盧即事秋がすむ松や古竹や屋敷神杣の戶をしめきる霧の去來かな谷の戶や菊も釣瓶も霧の中舟解いて山霧にこぐや河下へ夕霧やうす星いでゝ笠庇きりさめやいかにおつべき蔦のつゆしばらくは月をとぼその夜霧かな山靈をうとんずる月や霧晴る〓霧單めて野水はげしや黍の伏し山霧のかんがり晴れし枯木かな山霧のしげぎしづくや眞柴垣山霧や蟲にまじりて雨蛙甲州黑野田宿霧雨や旅籠古りたる山境ひ琵琶湖畔紅葉屋假泊湖霧も山霧も罩むはたご哉霧さぶく屋上園の花に狆一とわたり霧たち消ゆる山路かな野分雲湧けど草刈る山平ラ野分つよし何にやら思ひのこすこと有斐閣小憩、人々物干臺に登りて四顧展望を恣にす。情こはく秋雪をさすをんなかな天の川秋の虹秋の霞霧野分秋の雪雲ン間に秋雪みゆる旅路かな秋の海茄子畠に妻が見る帆や秋の海秋海のみどりを吐ける鳴戶かな秋海のなぎさづたひに巨帆哉舟人の莨火もえぬ秋の海初汐にものゝ屑なる漁舟かな江の宿や蘇鐵のまどの葉月汐刈田遠くかゞやく雲の袋かなふるさとの木槿の垣や秋出水かりがねと關の旅人や秋出水降り風ぎて日あたる巖や出水川出水川とゞろく雲の絕間かな地理秋の山晒し塲を曇らす秋の二峰かな秋の山國土安泰のすがたかな秋山の橋小さ〓よ湖舟より鳥かげにむれたつ鳥や秋の山秋山やこの道遠き雲と我秋山や草むら淺き焚火屑逃げ馬にもしもとくはへぬ野路の秋酒肆を出て蘆荻に橋や秋の川秋川や驛に曲りて船だまり秋水やすてしづみたる古扇一の谷小筧や敦盛塚の秋の水初汐刈田秋出水秋の野秋の川人事秋の水八朔法廷に八朔照りのカンナ見ゆこの秋や百穀みのる田面節の秋の水
後の雛帝展相撲しほ〓〓と飾られにけり菊雛帝展見秋たゞ中の學徒かな情婦を訪ふ途次勝ちさるや草相撲夜相撲や目玉とばして土埃リ憎からぬたかぶり顏の相撲かな氣折れ顏にく〓〓しさの相撲かなシリコブラ小角力や締込かたき臀鹿垣や靑々濡るゝ蔦かづらはつ獵の眼にしたしさや草のはなはつ獵や暑さおどろく下獵端山初獵の佳景日暮れや舟の上案山子たつれば群雀空にしづまらず雪山をみせて月出ぬ古かゝしつくり終へて門川越ゆるかゞしかなか〓し傘の月夜のかげや稻の上なにがしの雜誌に揭げんとて句を徵し來る書中某の父我が舊年の知己たるを認むるに早や舊友に左樣な大きな子息あるかと歲月流るゝの迅きにおどろき即ち筆をとりて耳遠く目のかすみたる案山子かなやがて又下雲通る案山子かなさるほどに弓矢すてたるか〓しかな山びこに耳かたむくるかふしかな風雨やむ寺山うらの添水かな病閑に待するにたへず鳴子ひく鳴子繩はたゞ薄闇に風雨かな文珠會の僧月にひく鳴子かな一齊句集成るに際して生き死にのほかなる鳴子一二聲鳩吹や夕日に出たる山の墓鹿初垣獵添鳴水子案山子鳩吹く囮秋の蚊帳山田なる一つ家の子の囮かな爐邊よりこたふる妻や秋の〓秋蛹やあした夕べの爐火の紅森低くとゞまる月や秋の〓寢てすぐに遠くよぶ婢や秋の蚊帳灯して妻の眼黑し秋の〓耳さとくねて月遠し秋の〓うちつけに冷えたる闇や秋の〓ゆく雲や燈臺守の〓の秋山の戶やふる妻かくす秋の蚊帳夜のひまや家の子秋の〓がくれ仲秋某日下僕の老母が終焉に逢ふ。風蕭々と柴籬を吹き古屏風のかげに二女袖をしぼる。手をかごむ白裝東や秋の〓〓果てゝ夜の具嵩なくふまれけり病を得て久しく褥中に苦吟に苦吟をかされたる西村泊春君遂ひに長逝すとあるに秋〓になみだをさそふ寝ざめかなコスモスの四窓の秋や置扇秋扇やつひ來なれたる庵の客秋扇やさむくなりたる夜のあはれことよぜて唄かく秋の扇かな秋扇の骨あら〓〓し小十本もちいでゝ身にそふ秋の團扇かな古りゆがむ秋の團扇をもてあそぶ砧女に大いなる月や濱社提灯を稻城にかけしきぬた哉砧一つ小夜中山の月夜かな砧女にかの浦山のすゝきかな扇置く團扇置く砧
うちまぜて遠音かちたる碪かな門前の山彥かへす砧かな障子貼る身をいとひつゞ日もすがられんごろに妻子おもへり障子張りかきたてゝ明き御燈や山の秋秋夜の燈をつるしあるきぬ日傭男秋燈にねむり覺むるや句三昧大峰の月に歸るや夜學人山がつに雲水まじる夜學かなうばたまの夜學の窓をあけし儘秋の繭煮えたちし湯の高はじき秋の繭しろ〓〓枯れてもがれけり秋蠶糸干しさらる〓次第かな新澁の一壺ゆたかに山盧かな秋耕にたゆまぬ妹が目鼻だち蠅つるみとぶ秋耕の焚火空菜種蒔く稻刈菜蒔きにも髮ゆひあふや賤が妻稻扱くや無花果ふとき幹のかげ稻扱く母にゑまひなげゆく一生徒歸省子やばつたり出逢ふ稻かつぎ湖沿ひの闇路となりぬ稻車稻刈や秋のかげろふ笠の端刈る程に山風のたつ晩稻かな人遠く胡麻にかけたる野良着かな落し水鳴る洞ありて吸ひにけりセ落し水田廬のねむる闇夜かな月虧けて山風つよし落し水月遠き近江の宿の夜食かな饗宴の灯にとぶ蟲や菊膾牛曳いて四山の秋や古酒の醉樽あけて泡吹かれよる新酒かなのむほどに顎した〓る新酒かな障子洗ふ秋の燈夜學胡麻刈る落し水秋繭夜菊古新食膾酒酒新新秋絹澁耕秋の鵜よろ〓〓と尉のつかへる秋鵜かな十月三十日の夜小山村外れの野山に角田湖舟の忌をさゝやかにいとなむ湖舟忌や月の雨ふる龍松寺ふなべりや上げ汐よする水燈會宗〓湖舟忌水燈會解夏送行の雨又雲や西東解夏草をむすびてかたし觀世縒時雨忌やお佛飯の微光みそなはせおきな忌や茶羽織ひもの十文字いとなみて月夜ばかりの子規忌かな大正十一年九月大龍寺子規忌に參ず子規の墓に詣でご〓ろや手をふれて月さそふ風と定むる子規忌かなタキモノ薰に八朔梅や守武忌太祗忌や秋の湖邊の蒲燒屋俳諧につぐ鬪菊や西鶴忌芭蕉忌動物子規忌秋の猫臀たれてむだ飯くらふ秋の猫秋猫の目の糸ほどに戀ひわたる鹿鳴いて吹きくる嵐間ありけり鹿鳴くや酒をさげすむ烽火守〓辛に一壺の酒や鹿の秋老鹿の眼のたゞふくむ淚かな嶽々と角ふる鹿の影法師嶋は秋はしぐれ易さよ渡り鳥鹿守武忌太祗忌西鶴忌渡り鳥
啄木鳥燕歸る山雲にかへす〓やけらつぶき燕去つて柝もうたざる出水かな魚喰ふて歸燕にうたふ我が子かな胡桃樹下水くらく風ぐ歸燕かなゆく雲にしばらくひそむ歸燕かな森の雲鵙の鳴く音と動きけり瀧風に吹かれあがりぬ石たゝきせきれいに夕あかりして山泉風さそふ落葉にとぶや石た〓きせきれいのまひよどむ瀨や山颪岩淵や棲める鶴鴿一とつがひ磐石をはしれる水の石たゝきはつ雁に几帳のかげの色紙かな水軍に燒かる〓城や雁の秋雁鳴くや秋たゞなかの讀書の灯かりがねに乳はる酒肆の婢ありけり鶉鯊落鰻秋の螢夕風や垂穗にあるく片鶉鯊つりを埋めてそよぐ蘆荻かな鰻掻くや顏ひろやかに水の面かりそめに土這ふ秋のほたるかな寂莫と秋の螢の翅をたふむ芥川龍之介氏の長逝を深悼すたましひのたとへば秋のほたる哉菩提寺龍安精舍普陀落や竹にやどかる秋螢臥て秋の一と日やすらふ蠶飼かな甲子八月九日朝鮮の末吉体山君山盧をたずね來るたちつ居つ高麗人の見る秋蠶かな秋の蜂巢をすて〓〓ぶ迫かかな秋蝶とぶや雞屠る刄ひつさげて鵙鶺鴿のほたる哉秋の蠶雁秋の蜂秋の蝶秋の蠅ひるねさめて嚙みつく犬や秋の蠅水門や木目にすがる秋の蠅扇折るや烈火にとべる秋の蠅夜の客に翅ひゞかせて秋の蠅つぶらかに秋蠅とるやたなごとろle秋蠅や人丸庵の飯によぶ秋の蚊や吹けば吹かれてまのあたりみの蟲をついはむ雞や燦として秋蟬やなきやむ幹を橫あゆみ秋蟬のひしと身をだく風情かな藪の樹や見られて鳴ける秋の蟬ひぐらしの鳴く音にはづす轡かなひぐらしの遠のく聲や山平ラかな〓〓の鳴きうつりけり夜明雲蜻蛉や芋の外れの須磨の浪畠中の秋葉神社や蜻蛉とぶ松にむれて田の面はとばぬ蜻蛉かな胡蘿に尾羽うちしづむとんぼ哉汲まんとする泉をうちて夕蜻蛉山風や棚田のやんま見えて消ゆ松たかくながれ返りて夕とんぼいくもどりつばさそよがすあきつかな小法師や蟲なく秋の句澤山廊の蟲吹かれしづみて月夜かな蟲の夜の更けては葛の吹きかへす爐におちしちゝろをすくふもろ手哉邯鄲や日のかたぶきに山風しソラダキ空性に月さす松のすいと哉笠紐を垂る大露やいなごとり螽燒く燼のほこ〓〓と夕間暮うごく枝に腹つよき力秋の蛇むちうつて馭者喫驚す秋の蛇秋の蚊蓑蟲秋の蟬蟲蟋蟀邯鄲馬追蟲蝗蜩蜻蛉蛇入穴
云はん。草花忌とやいはん秋は今露おく草の花ざかり菊の香や太古のま〓に朝日影菊咲くやけふ佛參の紙草履はつ菊や大原女より雁の文白菊のしづくつめたし花鋏軍艦の甲板の菊や佳節風ぎ菊畠や大空へ菊の氣騰るたましひのしづかにうつる菊見かな菊さけば南蠻笑ふけしきかな菊のちり打つべくもなくか〓りけり野菊折るやうちみる早 瀨夕燒けて桔梗の咲きすがれたる墓前かな霧の香に桔梗すがるゝ山路かな桔梗や又雨かヘす峠口山蟻の雨にもゐるやをみなへし植物菊野邊に病者の寢具を燒く秋草にあはれもゆるや人の衣秋草やぬれていろめく籠の中秋草やふみしだきたる通ひみち谷々や出水瀧なす草の秋秋の草全く濡れぬ山の 雨うら枯れて雲のゆく衛や山の墓花いそぐ秋は草々の夕日かな大正十五年九月二日篠原溫亭氏忽焉として逝く氏は生前頗る花卉を愛す。其のつくるところの句も亦多くこれを詠ぜしものに秀れたるものあるを見る。溫亭忌と秋の草未枯草の花野桔菊梗女郞花むらさめにおちず古葉やをみなへし垣間見し機たつ賤や秋櫻梵妻を戀ふ乞食あり烏瓜靑瓢をめでゝ賢しき女かな靑々とかたちきびしき瓢かな池籬や瓢すがるゝ蔓はなれ山寺や齋の冬瓜きざむ音冬瓜にきゝすぎし酢や小丼平等院裏町所見秋茄子の葉と花を干す莚かな舟解くや葬人野邊に芋の秋野拓いてすみ古る月や芋のぬし白林和尙故〓和歌山へ旅立つを送る芋秋の大河にあらへたびごろも芋の葉や孔子の〓へいまも尙田水はつて一つ葉ゆるゝ芋を見る芋食ふや大口あいていとし妻政敵に芋腹ゆりて高笑ひ零餘子もぐに笠紐ながき風情かな瓢簞に先だち落つる零餘子かな南ばんをくらふ蟲とて人の影後妻をむかへたる嵐舟のもとなんばんといづれぞあかし猿の臀唐がらし熟れにぞ熟れし畠かな白紙にもらふ用意や唐からしとりもちて蕃椒枯れそ唐錦ほゝづきの大雫する籬かな開墾地のたばこの花や秋旱石垣やあめふりそ〓ぐ蔦明り鉢蔦のみだれおちたる諸葉かなコスモス烏瓜瓢簞零餘子唐辛子冬瓜秋茄子芋酸漿煙草の花蔦
篠原や日あたる蔦のむらもみぢゑびかづら露とむる葉の染まりけり葛の葉や瀧の轟く岩がくり郡内桂川原-そのかみ芭蕉も旅しける旅人に行きそふ駄馬や葛の秋霧こめて日のさしそめし葛かな龍膽をみる眼かへすや露の中クサムラ叢や吾亦紅咲く天氣合ひ窓あけてホ句細心や萩晴るゝ月さむくあそべる人や萩の宿また痢して灯明うよむや萩のぬし龍安寺法會月明にたかはりたちぬ萩のつゆ風の萩喰むまもはねて仔馬かな古椀うかむ池ふく風や萩のつゆかよひ路にさきすがれたる野萩かな折りとりて花みだれあふ野萩かな花すゝき小垣の晝を雞鳴いて山陵の松はさびしきすゝき哉治承このかた平家ぞをしむ花す〓き天人のぬけがら雲やすふき原吹き降りの籠のすゝきに女郞蜘蛛苅籠に穗はちり〓〓のす〓きかなほけし絮の又離るゝよ山すゝき折りとりてはらりとおもき芒かな落日に蹴あへる雞や鳳仙花家富んで朝暮の粥や鳳仙花今年また庵のその生や鷄頭花山僧に遲き月日や鷄頭花羅漢寺の鐘樓の草の鷄頭かな葉鷄頭遲速もなくて日和かな蘡葛薁薄龍膽吾亦紅萩鳳仙花鷄頭葉鷄頭芭蕉ともしびと相澄む月のばせをかな絲繰る女に芭蕉霧出てもありぬべし書窓足あらふ來客をみる芭蕉かな芭蕉葉や池にひたせる狩ごろも曼珠沙華莖見えそろふ盛りかな萍生の骨を故〓の土に埋む葬人齒あらはに泣くや曼珠沙華露草に落ち木もあまた端山哉吹き降りや稻田へ橋のゆきもどり山陰や草穗まじりに稻の出來晩稻田や畦間の水の澄みきりて山風にゆられゆらる〓晩稻かな粟枯れて隣る耕土の日影かな刈りさして盧にしめやかやそばの花雁を射て湖舟に燒くや蘭の 秋句また燒くわが性淋し蘭の秋瀧ぐちの蘭のしげりや雲這へる崖しづくしたゝる萱や紅葉しぬ茅ほけて薊花濃し畦づたひ料理屋の夜の関寂や白芙蓉むらさめに枯葉をふるふさゝげかな「蛇笏」は季語の「せんぶり」又は「醫者ころし」とよむと某の謂ふにをかしくば口やつねらん醫者ころし菌山に風たつ道の栞りかな書樓出て樵歌又きく竹の春先着にあな幣尊と紅葉山人すでにおちて瀧鳴る紅葉かな神酒やがて岨ゆきてさめる紅葉かな山門に赫と日浮ぶ紅葉かな茅萱山薊芙蓉大角豆曼珠沙華露稻草當藥引く菌竹の春紅葉粟蕎麥の花蘭の花
紅葉ふんで村孃 をはこびけりちるほどに谷あひ曇る紅葉がな觀楓の風をいたみて精舍かな金溪亭あけすけに醉客見ゆる紅葉茶屋御嶽昇仙峽紅葉見のやどかるほどに月の雨ヌルデもみぢして松にゆれそふ白膠木かな秋雪をいたゞく富士や桐一葉一葉掃けば蚯蚓縮みて土の冷え園生より霧たちのぼる一葉かな捕鼠器ひたし沈むる水や桐一葉うす霧に日あたる土の木の實かな泉底にしきなす木の葉木の實かな吹き降りの淵ながれ出る木の實かな柿林出る舟や水棹橫たへて農となつて〓國ひろし柿の秋山の霧單めたる柿の雫かな山柿や五六顆おもき枝のさき雲霧や嶽の古道柿熟す山がつの枝柿結ぶかづらかなタネナシ爪たて〓山柿しぶし麓路なま〓〓と枝もがれたる柘榴かな梨むくや故〓をあとに舟くだる木爪嚙むや齒の尖端に興うごく雨に剪つて一と葉つけたる葡萄かな厭ふ手にもらひこぼるゝ棗かな無花果や雨餘の泉に落ちず熟るとちの樹のもみづるほどにおつ實かな橡の實の山川まろぶひとつ哉たま〓〓秋雲深き山盧を訪ね來れる吳龍君に橡の實を柘榴梨木爪の實葡萄棗無花果橡の實榴〓膚木紅葉-葉-木の實柿示せば水〓の產たる君これを知らす即ち家つとにとてクサビラ蕈と靑柚と橡の實を一つ草籠に實の唐めきし茨かな茨の實や大夕燒も野渡の景團栗に八專霽れや山の道杣山や高みの栗に雲かゝるはしばみにふためきとぶや山がらす嘴するや榛高枝の秋がらす榛に田子の威しのよき音かな茨の實團栗榛栗

霜寒夜さ赤貧にたへて髮梳く霜夜かな藪伐れは峰のこだます寒さかな山 國や寒き魚介の小商人ある夜月に富士大形の寒さかな書樓出て日寒し山の襞を見る山風に鶴が啼いたら寒さかな足元に死ねば灯せる寒さかな苫寒く星座の浸る汐かな閨房の灯の寒む〓〓と曉けにけり山に遊ぶ水車の鷄や神無月葬人の野に曳くかげや神無月山妻や髮たぼながに神無月浦人に袈裟掛け松の小春かな針賣も善光寺路の小春かなめぐまんとする眼うつくし小春尼今朝冬や軍議にもれし胡地の城時候冬三冬のホ句もつゞりて狩日記玉蟲の死にからびたる冬疊日常の靴みがく婢や冬埃り元結をかみさす冬の女かな短日のはや秋津嶋灯しけり短日の水に影ある漁人かな短日の時計の午後のふりこ哉樋の草に日短かさよ婢の炊ぐ物おちて水うつおとや夜半の冬大醉のあとひとりある冬夜かな寒夜讀むや灯潮のごとく鳴るわが事に妻子をわびる冬夜かな夜半の冬山國の子の喇叭かな冬の日神無月冬の夜小春立冬道芝を吹いて駄馬ゆく今朝の冬富士宿舍冬に入る爐につみ焚くや古草鞋雲ふかく瀞の家居や今朝の冬はつ冬や我が子持ちそむ筆硯浪々のふるさとみちも初冬かな永井ノ里倫伽寺小雪や古りしだれたる絲櫻暖の笹とび生えて桃畑大谷山麓野社冬暖や霧ながれたる小柴垣冬暖の談笑痴者をなみしけり爐ほとりの甕に澄む日や十二月十二月桑原になくすゞめかな六波羅へぼたん見にゆく冬至かな帆もなくて冬至の海の日影かな山國の虛空日わたる冬至かな霜月や坐邊の厭きぬおもひごと寒ン風呂に上機嫌なる父子かな藤垈金比羅堂日をうけて寂たる寒ンの扉かな亡兒二七日寺詣-龍安寺苔はえて極寒におはす彌陀如來富士川舟行極寒の塵もとゞめず岩ぶすま極月の法師をつ〓む緋夜着かな極月や雪山星をいたゞきて誰ぞ靴に唾はきしわが師走かな谷川に幣のながる〓師走かな極月やかたむけすつる桝のちり極月の竈火みゆる巷かな年の瀨や旅人さむき灯をともす霜月寒の內初冬大寒小雪冬ぬくし小冬師走十二月冬至年の暮
昭和四年十二月二十日午前零時半溘焉として物故せる〓伯岸田劉生氏を深悼す。行く年や冥土の花のうつる水冬盡のふけかきこぼす頭かな春近し廻國どもが下駄の泥春隣る嵐ひそめり柚の爐火外の月に庵春隣る淨机かな冬日緣話し一とゝきはずみけり寒ン日に面しゆく我や戎橋常磐木の葉のてら〓〓と冬日かな寒月や灯影に冱てん白柏子冬空へ煙さでたくや灘の船冬そらや大樹くれんとする靜寂オネギ冬雲や峰木の鴉啞々と鳴く冬晴や擔ひおきたる水一荷冬晴や伐れば高校のどうと墜つ病中冬晴やつぐ訪客にゆめうつ〓山路見ゆ瀧川ごしの冬日和冬晴や杭ゼの禽を射ておとす冬風ぎにまゐる一人や山神社道のべに痢して 鳴く鵜や冬の風上曾根渡し冬の月冬の空冬を惜む春近し冬の雲冬晴天文冬の日油垢しむ櫛筥に冬日かなくれなゐのこゝろの闇の冬日かな船よせて漁る岸の冬日かな冬の日のこの土太古の匂ひかな髭剃つて顏晏如たリ冬日影冬風冬の風冬風に下駄も結べる鵜籠かなちゅ空は北風地にはりつきて監獄署道のべや北風にむつむ女夫鍜冶冬風につるして乏し圓紙冬風に誰が干しもの〓みだらなる師走某日甲府錦町にて病院を出で來たれる男女の一團に逢ふ北風やほとけの足のぶうらぶら凩の山に日あるや圓出て品川に臺塲の音のしぐれかな柚伐つて鋸おく枝や片時雨黑坂やしぐれ葬の一つ鐘藪なかや朽ち垣ぬらす初時雨初霜や湖に靑藻の霧がくれ霜とけのさ〓やきを聽く獵夫かなうら〓〓と旭いづる霜の林かな霜風ぎや沼邊にいでし郵便夫いもの葉にひと霜きしや湖の月舟ベリの霜しづかなる水ノ面かな霜芝や日影をあびて沓の泥よく晴れて霜とけわたる垣間かな焚火掃くわが靴あとや霜じめり踏切の灯を見る窓の深雪哉なつかしや雪の電車の近衛兵みだるゝや箙のそらの雪の雁雪風や書院午ぢかく掃除すむ雪掃けば驛人遠く行きにけり湯婆こぽす垣の暮雪となりにけりふるさとの雪に我ある大爐かな雪國の日はあは〓〓し湖舟ゆくあすしらぬこともをかしや雪つもる雪木時枯雨霜
薄雪に月出ぬ山は夕日して木枝ながき雪に星出ぬやぶだ〓み雪晴や庵にこたへて富士おろし廊灯しゆく婢に月明の深雪竹月いでゝ雪山遠きすがたかな雪空や死鷄さげたる作男山居即事鷄たかく榎の日に飛べる深雪かな雪つけて妻髮枯れぬ耳ほとり雪やんで月いざよへる雲間かな枯紫蘇にまだのこる日や雪畑歸りつく身をよす軒や雪明り遲月にふりつもりたる深雪かなホガ雪見酒一とくちふくむ樂ひかな積雪や埋葬終る日の光リかる萱の凍雪とけし穗枯れかな古雪や自然藷蔓の垣を垂る山平ラ老猿雪を步るくなり雪みえて雲ぬく嶽の日和かな鰍澤小舖二三尺雪つむ軒や猿肉屋痩馬にひゞきて雪の答かな大阪行、八句こゝろえて〓口とる雪の宴かな小柴門出入りのしげき深雪かな神山や霽れ雲うつる雪げしき詣路や木々の古實の雪まじり牧岡の神代はしらず雪曇り雪ふかく足をとゞむる露井かな古りまさる雪の籬とおぼえたり魚駒樓即事雪おちて屋をゆるがす天氣かな風霰花風花や登山賽者の女夫づれ揚舟や枯藻にまろぶ玉あられ行く雲や霰ふりやむ寺林玉あられ風夜半を過ぐ梢かな湯屋いづるとき傘の霙かな山居即事みぞるゝや雜炊に身はあたゝまる深山木の梢の禽や冬の霧冬霧や漁人の笠の古るびやう冬かすむ鳶の鳴くなり五百重山冬雷に暖房月をた〓へたり枯原や堰に音ある榛の風冬川や宿雨うちやむ岩だゝみ冬水や古瀨かはらずひとすぢにひた〓〓と寒九の水や厨甕冬水や日なた影玉うつりつ〓冬海の漁舸を淋しむ旅人かな大艦をうつかもめあり冬の海冬山に僧も狩られし博奕かな藁つむや冬大峰は雲のなか敵二三まうけて住むや冬山盧白雲の夜のゆきかひや冬山盧林間の篠分くる瀨の氷りけり書窓耳さとし氷踏む沓おとも冬の川冬の水霙冬の海冬の霧冬の山冬霞雪起し氷地理枯野枯原や留守の戶なりし貰ひ水荒海の千鳥ぶちまく枯野かな人事
爐開爐開やほそき煙りの小倉山住吉の道のべの宿や爐を開く爐をきつて出るや椿に雲もなし市人にまじりあるきぬ曆賣り家守りて一卷もとむ曆かななでさする豊頰もちて入營子透垣にとなりの煤の調度かな煤掃や師は徘徊す湖ほとり蟲の巢や折り焚く柴に煤の夜を月雪や古りに古りたる掛曆月いで〓獵夫になくや山がらすかりくらや孟春隣る月の暈ガウタイ業體のひそかにつらし狩疲れ年木割かけ聲すればあやまたず昨今の風邪でありぬ作男水沸や灯をか〓げたる机前の子寒綿灸入寒灸や惡女の頸のにほはしき百性となりすましたる布子かな綿入や氣たけき妻の着よそほふ胴着きて興ほのかなる心かな昨今の心のなごむ褞袍かな一二泊して友誼よき褞袍かな冬服や襟しろ〓〓とつゝがめく雪晴れてわが冬帽の蒼さかな鏡にふれて衣紋つくろへり黑ソフト利にうとき人の眼にごる頭布かな襟卷や思ひうみたる眼をつむる襟卷にこ〓ろきふたる盲かな頸卷に瞳のにくらしや女の子布團た〓む人を去來す榮華かな病中この布團熱冷えて死ぬおのれかな新曆賣出胴褞着袍新兵入營煤拂冬冬服帽曆の果狩頭襟巾卷年風水木邪涕蒲團おのれかなおもひ入つて人闇にたつ布團かな雪沓やうち揃へぬぐ日高緣標や吊られ廻りて雪日和山鳴るとうちみる妻や橇暗し爐によつて連山あかし橘の醉黑衣僧月界より橇に乘りて來ぬ子を持てばなめずる情に冬ごもり冬籠日あたりに臥て只夫婦何にもかも文ンにゆだねぬ冬籠り柱鏡にひろさ溯る冬座敷障子あけて空の眞洞や冬座敷病中いたつきや芭蕉をゆめむ冬座敷繪屏風や病後なごりの二三日垣間見や屏風ものめく家の內こもりゐの妻の內氣や金屏風やうやくに座のあた〓まる屏風かなひとり讀んで花枯る〓床や寒夜の灯寒燈をつり古る妻の起居かな日向ぼこまた瓜をかむ繼子かな世過ごしや北窓塞ぐ山の民かしづきて小女房よき避寒かな月の木にありあふ〓や寒稽古寒聲や城にむかへる屋敷町寒聲の瞳をてらす灯かな山火事に藏戶ほのかや鷄うたふ人さかしく帽とるや手袋の手に醫鳳嶺手袋の手をもて撲つや乘馬の面老ぼれて子のごとく抱くたんぽかな病中足のべてこだはりあつき湯婆かな雪標橇沓冬の燈日向ぼこ北窓塞ぐ避寒寒稽古寒聲冬籠冬座敷火手事袋屏風湯婆
溫爐石溫石の抱き古るびてぞ光りける湯をいでゝわれに血めぐる圍爐裡かな爐にあつき脛又うつや厭きごゝち氣やすさの爐火をながむる佗居かな爐隱しや古股引の懸けなが し胸像の月光を愛で暖爐焚く暖爐厭ふてゆたかなる汝が月の頰興はなれずひとり詩に憑る火桶かな輪番をおちて學べる火桶かな死病得て爪うつくしき火桶かな大正四年霜月二十五日誕生の女兒生後十五日にして大患危篤におつ冷ゆる兒に綿をあぶるや桐火桶寂として座のあたゝまる火鉢かな東行庵即事松風にき〓耳たつる火桶かな婢もあてゝ屹度あはれむ炬燵かなひとり住むよきゐどころや古炬燵をんな泣きて冬麗日の炬燵かな炬燵あつし酒利きつもる小盃下僕義政の祖母極寒炬燵に寄れる儘頓死す齡九十有餘才といふ老婆あはれ深しなきがらのはしらをつかむ炬燵かな炭賣りて安堵屏風の大字讀むひとり詠むわが詩血かよふ炭火かな汝が涙炭火に燃えて月夜かな炭賣りの娘のあつき手に觸りけり陶器舗のあたりの幽らむ炭火かな文讀んで烈火の怒り榾を焚 く蕎麥をうつ母に明うす榾火かな炬燵暖爐火鉢炭榾鷄とめに夕日にいでつ榾の醉夜の戶に風媚ぶや我に榾怒る園にで〓山影豁し榾の醉父とうとく榾たく兄の指輪かなそむく意を齒にひしめかす榾火かな甕水を汲むやまつはる榾げむり妻とがむ我が面伏せや榾明りあつものにかざしおとろふ榾火かな小庵やとても榾火の下あかりすこやかに山の子醉へる榾火かな埋火や倚廬月あげて槻の枝火を埋めてふけゆく夜のつばさ哉埋火に妻や花月の情にぶし渡しまつ脛くゞり鳴る焚火かな焚火煙そこぞと眺められにけり一と燃えに焚火煙とぶ棚田かな燃えおちて煙はたとなき藁火かな曳き舟の東雲はやき焚火かなモリガヘリ焚火すや雪の樹につく靑鷹もえたけて炎はなる〓焚火かな燠のつよく夜を徹したる焚火かなつれだちて淋しき老の岡見かな逆蓑や運のさだめの一としぐれ井冬耕の牛を率てうつ小鞭かな地上三尺霧とぶ笠や麥を蒔く蕎麥刈のひとり哭する夕日かな淀の魚竹瓮にまよふ一つかな鰌掘る火のあらはなる炎かな寒釣や腰に固めし餌胴亂東の間の林間の日や莖洗ふふぐ食ふてわかる〓人の孤影かな君の酌こは恐縮やふぐと鍋岡見冬耕麥蒔く蕎麥刈る竹瓮泥鰌掘る鮒の寒釣莖漬河豚汁埋火焚火
拙邸に其の忌をいとなむほの〓〓と師走月夜や昔齋忌昔齋忌月またしぐることの由雲にのる冬日をみたり佛山忌鰒鍋や醉はざる酒の一二行足袋はいて夜着ふみ通る夜ぞ更けし足袋昔齋忌宗〓佛山忌神神送樂八ツ霽れや神の留守なる麓原磧ゆくわれに霜夜の神樂かな落月をふむ尉いでし神樂かな土器にともし火もゆる神樂かなちりひぢの袖のふるびや寒念佛空也忌の魚板の月ぞまどかなる飄々と 雲水參ず一茶の忌わざをぎに更關けし灯や近松忌故破浪の忌に參じて破浪忌や花も供へず屏風立て去年十二月九日夜半野田半動物狸貉木兎さ〓鳴鶲かりくらの月に腹うつ狸かな山がつや貉しとめし一つだま山風に曉のなぐれや木兎の聲笹鳴や艦入り替ふる麓灣雪に擊つや鷄細枝に翅たれてはれ〓〓と鶴のぼりし梢かな山しばにおのれとくるふ鷄かな深山木に狩られであそぶ鷄かな鷄きて棘つゆ唫む山椒かな寒念佛空也忌一茶忌近松忌破浪忌野鷄のすこし仰向く風情かな杣山や鷄に煙ながれたる日に顫ふしばしの影や鷄乳む雪天や羽がきよりつ〓鷄つるむあら浪に千鳥たかしや帆綱卷く俊寛の枕ながる〓千鳥かな汐汲みにきて遠不二に千鳥かな高波に千鳥帶とてつゞきけり千鳥啼くや廻廊の燈雨ざらし岬山の緣竹にとぶ千鳥かなありあけの月をこぼるゝちどりかな靑樓の灯に松こゆるちどりかな月ひく〓御船をめぐるちどりかな林檣の大風の月やむらちどり濤かぶつて汐汲む蜑やむら千鳥月入れば北斗をめぐる千鳥かな富士川下り(ホトヽギス吟行)舳に遠く鴛鴦とべりいしがはら月さして鴛鴦浮く池の水輪かな寄る鴛鴦にかげふか〓〓と雨の傘水鳥に寒きこゝろを蔽ひけり淺草公園所見水禽に流轉の小首うちかしげ鮟鱇やかげ膳据えて〓口一つ寒鯉のあらはの鰭や古鹽病中冬の蠅ほとけをさがす臥戶かな鷄乳む鴛鴦千鳥水鳥鮟寒〓鯉冬の蠅植物草枯草枯や野邊ゆく人に市の音
草枯や又國越ゆる鶴のむれ草盧に籠りて大江戶の街は錦や草枯るゝ草枯や鯉にうつ餌の一とにぎり枯れくさのながるゝもあり深山川枯菊や雨きて鷄の冠動く枯萩やせはしき針に情夫なしほそ〓〓と枯葦揃ふ古沼哉あけすけに枯莖潰ゆる蓮かな枯蓮のつひながる〓よ小沼尻唾吐いてかすかに石蕗の月に閉づタキモノ薰に貞意かげあり石蕗暮る〓水仙に湯をいでゝ穿く毛足袋かな道具市水仙提げて通りけり枯蓮は阿羅漢水仙は文珠かな婢を御してかしこき妻や蕪汁葱葱の香に夕日の沈む楢ばやし人妻よ薄暮のあめに葱やとる山がつに葱の香つよし小料理屋親疎十年交りたゆる葱の月畜類の肉もこのもし葱の味月にねむる峰風つよし葱をとる葱洗ふや月ほの〓〓と深雪竹家も夫もわすれたゞ煮る根深かな寒林のしきみは古き墓塲かな阿武隈の蘆〓に瀕す冬木かな眞乘寺の白林和尙俳諧を事とし偶々山盧を訪ふ白林を湯へよぶ柝や冬木立旅馬車に渚又遠し冬木立寒禽を捕るや冬木の雲仄か寒林の陽を見上げては眼をつぶる枯枯枯枯菊萩葦蓮冬木立棄吾の花水仙蕪菁見下して瀧つぼ深き冬木かな牧へとぶ木の葉にあらぬ小鳥かな笊干すや垣の落葉に遠き山落葉すやしづかに庫裡の甕の水園丁と鶴と暮れゐる落葉かな繪馬堂の內日のぬくき落葉かな窓の下なつかしき日の落葉かな山晴れをふるへる斧や落葉降る落葉ふんで人道念を全うす月のゆめを見しおもひ出や焚く落葉朴落葉かさばりおちて流れけり山土の搔けば香にたつ落葉かな神さびや供米うちたる朴落葉丙寅霜月二十四日病母の爲め忠僕二人とともに山に登り靈境を淨めて山神を祀る落葉すや神憑く三ツの影法師返り咲く園遲々とゆく廣さかな樹のうろの籔柑子にも實の一つ山茶花の垣穂の渡し見晴れけり山茶花や日南のものに杵埃り茶の花も菅笠もさびし一人旅いく霜の山地日和に咲く茶かな茶畠や花びらとまる畝頭ラ晴耕雨讀日にようて茶の花をかぐ命かな野阜や一と株の茶の花ざかり浪際や茶の花咲ける滋賀の里妻激して口蒼し枇杷の花にたつ枇杷に炊く婢にこぼたすや藥壜木の葉落葉歸り花籔柑子山茶花茶の花枇杷の花
編三第書叢母雲發昭和七年十二月廿一日發行昭和七年十二月十八日印刷行所印刷所印刷者發著行作者者山梨縣東八代郡境川村一八六雲山梨縣甲府市橘町一番地山梨縣甲府市橋町一番地山梨縣東八代郡境川村百八十六番戶山梨勞資新聞社簑飯不許複製振替(名古屋)四〇五二番輪田定價金貳圓參拾鐵母庄武太社郞治本製部刷印社聞新資勞梨山
集句選笏蛇田飯再遺成島一齋稿峰明丘舍句集會句集旣( (既刊)刊雲母叢書第貳篇續雲母句集(絕版)雲母叢書第雲母叢書第參篇四篇雲母雜詠選集山盧集第雲母叢書壹篇雲峰山會母盧句句集集(既刊) (既刊) (絕版)雲雲成平雲雲昭和七年十二月二十一日發行大正十五年十一月二十五日發行大正十三年二月五日發行大正十年十二月十一日發行大正八年十二月十五日發行昭和八壤島年母刊母再母母行宥峰豫社定社三會社社八行
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M Kodak Gray Scale〓Kodak, 2007 TM: Kodak A 1 2 3 4 5 6 M 8 9 10 11 12 13 14 15 B 17 18 19 inches 2 3 4 5 6 8 cm 1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 Kodak Color Control Patches Blue Cyan Green Yellow Red 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19〓Kodak, 3/Color 2007 TM: Kodak Black Magenta White

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