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芥川龍之介 「長安句稿 一 花火」見える訳がないだろう


長安句稿     一


花火


明眸の見るもの沖の遠花火

遠花火皓歯を君の涼しうす

花火やんで細腰二人楼を下る

君が俥暗きをゆけば花火かな

水暗し花火やむ夜の幌俥


 七月廿五日       龍



[大正五年七月二十五日 恒藤恭宛]

※なんということもない句だが詠まれた時期を考えると、

 この問題と、

 この問題を考えると、かたや明眸、かたや皓歯なる細腰二人がわざわざ「長安」に置かれていることがあざとらしくも見えて来る。

 

 もし「長安」で「沖の遠花火」が見えたら千里眼だ。

 八月一日 藤岡蔵六宛の端書には、

fragment  de la  vie
明眸の見るもの沖の遠花火
水暗し花火やむ夜の人力車

 とある。もう一人に未練があることがなんとなく解る。

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