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芥川龍之介 大正五年春 短歌 八首 埴輪童女にFUMIKOは似るも

白ふぢの花のにほひときくまでにかそけかれどもかなしみはあり

夕やみにさきつゝにほふ白藤の消なば消ぬべき恋もするかな

わが恋はいよよかすかにしかはあれいよよきよけくありさびにけり

朝ぼらけひとこひがてにほのぼのとあからひく頬をみむと思へや

たまゆらにきえし光とみるまでにそのたをやめはとほく行きけり

天ぎらふ雲南省ゆ来りたる埴輪童女(をとめ)にFUMIKOは似るも(白木屋に博覧会あり)

朝づけば観音堂の尾白鳩ふくだめるこそFUMIKOには似ね

ふと見たる金の蒔絵の琴爪(つめ)箱をかひてやらむと思ひけりあはれ




[大正五年春恒藤恭宛]

 この手紙に「短篇を二つ書いた」とあり、注に「父」と「虱」とある。題名の付け方がいかも潔い。

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