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トルストイと土星人

トルストイと土星人

 レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ、あの『戦争と平和』、『アンナ・カレーニナ』のトルストイに土星人が活躍する近未来SF小説のような作品があり、それを内田魯庵が翻訳していたことを知らなかったのは私だけであろうか。

 トオストイ 著||内田魯庵 訳博文館 1896年

 いや、この「トオストイ」は別人かと思えば、


トオストイ 著||内田魯庵 訳博文館 1896年

 どうもあのトルストイである。

トオストイ 著||内田魯庵 訳博文館 1896年

 しかし私には疑問である。もしトルストイが土星人の小説を書いていたら、「トルストイと土星人」と検索すると何かそれらしい情報が出てくるはずの処、どうもそれらしい情報が見つからない。それに書かれている内容が哲学的ではあるが少々トルストイらしくないのである。


トオストイ 著||内田魯庵 訳博文館 1896年

 そしてよくよく読むと、「めをと」は普通のロシアの家庭の話で、巻末にヴォルテールの『ミクロメガス』が載せられていたという仕掛けだ。


トオストイ 著||内田魯庵 訳博文館 1896年


 ああ、びっくりした。


敬宇文集 巻5 中村正直 著吉川弘文館 1903年

漢文訳もある。

Iト3D庫世錢五拾金價正四拾第兌發回二月每著原イトスオト國魯譯庵知不田內とをめ版藏館文博京東編
例言伯爵リオフ、ニコラエウ井チ、トオストイは千八百二十八年八月二十八日ヤスナア、に生る。其祖ピヨオトル、アンドリエウ井チは彼得大帝に奉仕して殊遇を受けし政事家にして、其父ヲウ井チは那翁一世を破りし軍功ありし人なり。伯はその第四子に生れ変世の名望と功業を承けセ十九世紀の文學、宗〓及び哲學社會に燦爛たる光輝を放ちぬ。今や此世紀の明星たる諸文豪く殪れ、伯獨り六十七歲の老齡をもて魯國の思想界に君臨す。『アンナ、カレもの少なしといへども其言動の魯國を動かし延て全歐に及ぼすに到てはまた一代の巨Loを史は紛糾せり。一人にして軍人なり、小說家なり、農業家なり、〓育家なり、社會の改造者なり會の改造者なり新宗〓の創建者なり。而して殊にその生涯に於て怪むべきは極めて濫雜不規則にして矛楯撞着に富めるの一事也。渠は曾て軍役に從ふて露土の戰爭に出陣し、諸方に轉戰して武功の譽れ高かりしが、其のち盛んに萬國の平和を說き太く戰爭を惡みて殆んど蛇蝎を以て之を而して殊にその生涯に於て怪むべきは極めて濫雜不規則諸方に轉戰して武功の譽れ高かりしが、見たり。渠は文學者として全歐を振駭し、『アンナ、カレニナ』以下十有餘種の作到る處に噴々せ言
られ、今に到ても猶ほ時としては其伎倆を試みる事有るにも關はらず、是等の方面には頗る冷淡無頓着にして、甚だしきは音樂演劇等各種の技藝或は詩歌小說等惣ての美文を以て風〓を李しし道德を破壞し人間を墮落せしむるの道具と見做す事すらありき。渠は名族に生れ、露廷に出入して「ザール」の寵遇を受け、交はる處多くは朝廷の縉紳なりしが、全く其名譽富貴を捨てゝ僻地に退隠し、農夫の衣を着けて常に鋤犁を肩にし、自ら耕耘に從事して『人は自己の力に依りて衣食せざるべからず』の金言に背かざらん事を勤め、他の優遊逸樂に耽つて錦衣玉貪する徒を目するに惡魔を以てし、飽くまでも平民社會の木鐸を以て任じ、賑恤救濟の業に一身を犠牲となしぬ。渠は魯國の嚴正なる宗〓羈絆の下に〓育せられしにも似ず、正〓派を惡む事〓の如く事につけ物につけ嘲罵冷罅を加へ有らゆる正〓會の信者を見るに魑魅魍魎を以てし、自ら新五戒を作つて『萬人と平和であれ』と說きしにも關はらず、正〓會に向ては常に戰端を開かんとするが如くなりき0渠は山上の垂訓を奉じ、『愛』の微妙なる力を信じ、唯一なる神の存在をも疑はざりしが、其說く處は殆んど虛無主義にして、金錢は悪魔なり惚ての不義不德を釀生し慘毒を世に流すものなればとて其廢滅論を立て、夫婦は畢竟內慾に渴するより生ず、『愛』の化生にあらずして『色慾』の塊物なりと喝破し、到底結婚は人間の墮落なりとまで云ひぬ。トオストイの論議行動は惣て斯くの如く矛楯衝突甚だしきを極む。トオストイは二十六歲にして苦もなく大家の班に列し、ツルゲー子フ及びドストエーフスキイと共にプーシユキン以後の三大家と稱へられし大詩人なり。渠の眞伎倆は實に小說の述作にして到底哲學者を以て立つの人にあらず。然るに露土の戰爭終りしのち偶然其處世觀に一變動を起し、千八百七十九年『我が懺悔』を著はしゝ以來全く念を美文に絕ち主として宗〓の革新に身を投じたりき。其の焔ゆる如き献身の念は匹俸少なりといへども、渠の宗〓論はたゝ矯激に走るものにして、哲學の眼より見れば全く價値を置く能はざるなり。如何にしてもトオストイは小說家なり。『アンナ、カレニナ』の妙想奇搆は單だに當時の文學に超出するのみならず、光明永く後世に照臨すべし。渠が宗〓界に於ける事業は偶々極端に走り勝なる魯人の氣に投じて多少の成功を得、終に渴仰者をして死せる基督〓を復活せしめし大豫言者なりと尊ばしむるまでに到りしが、抑も人に依て立つの〓は其人亡ぶれば共に亡ぶ。トオストイが宗〓論の運命も知るべきのみ。トオストイの傑作は『アンナ、カレニナ』、之に次ぎては『平和と戰爭』、『幼年、少年、及パ等最も有名なり。『我が懺悔』、『我が宗〓』、『人生論』等も亦廣く行はる。『めをと』は千八百五十九年(?)の著作にして本より傑作を以て見るべきものにあらず。然一て、一一言三
四此時は未だ極端なる懷疑に陷らざりしをもて却て渠が醒中の思想を窺ふに足る。思ふにトオストイの作中最も健全にして風〓の一端ともなりぬべきものを求めば、『めをと』は恐らく其撰に當るべし。竊に案ずるに我が國に於ける女子〓育は最近十年間に非常なる進步をなしゝが、變遷時代の常として何事も中庸を得る事難く、惣てのものと共に意外なる結果を來しぬ。所謂「女學生」は華美なる泰西の習俗に沈湎し徒らに其皮相を摸ねて浮麗虛飾を事とし質實なる東洋の女〓を蔑如して輕噪浮薄の風を爲す。渠等の多くが基督〓を奉ずるは神の存在を認めしにも其〓義を悟りしにも其倫理を守るにもあらずして唯外國人が奉ずる宗〓なるが故のみ。トオストイが此『めをと』は以て是等の「女學生」を〓ふるに足る。此書の英譯本數種あり。余はヴ井ゼツテリイ板、ウオーン板、及びムシロオ板の三種を採て一々異同を正したれども魯國の原本に就て之を校訂する閑を得ざりき。加ふるに全譯惣て口授に成りしをもて大に字句の修煉を欠く。原作者に對して頗る恥づる處多し。讀者之を以て直ちにトオストイを議する勿れ。猶ほトオストイの事を知るに參酌すべきもの左の如し。一一一(4)露國文學の泰斗トルストイ伯國民之友第九十五號、九十七號第九十八號第(b)トルストイ伯の飮酒喫煙論( (明〓)とは、大阪府第百十八號第(9)露西亞最近文學の評論(學第三十三個及び第三十四號內トオストイの部、黑糖醋酸桑原謙藏氏(d)トオストイ伯の福音(眞理第四十九號第五十一號、第五十二號第五十號、浪華散人(e)露國思想界の近况(三好)小西增太郞氏哲學雜誌第(1)露國の哲學不同樣小西增太郞氏トオストイの作にして我が國に翻譯せられしは、(2)瑞西舘(水米集)に山田県森鷗外氏(b)初陣、(調査新聞に出て原名)幸田露伴氏(o)おひたちの記(原作「幼年制)裏錦に出づ(d)コサツク兵(變人數位)田山花袋氏卷末に附載せしは佛人ヴオルラールの傑作にして奇想天外より來るの妙あり。十八世紀の道遙遊也O桑原謙藏氏浪華散人小西增太郞氏小西增太郞氏謙一森幸鷗田露外伴氏氏一甲午五月譯者識す例言五
めととトオストイ作不知庵主人譯Cられた母君の喪中マカアとソオニヤと自分の三人は故〓のポコロオウスキイでマカアは亡母の古い朋友で、今では自分の內〓師なる久しい間の刷染で、ソオ緒にソオさ此冬季は、凄婉慘憺として、寒氣も一ト通りでなく、風は窓外に高く吹雪を飛ばし、なか〓〓たま〓〓あなく冰り付き、步行は勿論馬行も中々むづかしく、扉を叩く來客もなく、個々有ツた處おお悲しい顏をして、とんと寢てゐる人を起すまいと掛念すると同え黑衣を觸ふて熟思はかりしてゐる自分ビソオニヤを見て希波する。恰で死神麥〓3其物凄さに大氣が壓へつけられてゐる樣である。亡母の居間は其以來閉切ツていつでも其前を通る度每に、何んだか眼に見えぬ或る物が、自分を此冷氣皮膚に浸徹する此冬季は、凄婉慘憺として、寒氣も一ト通りでなく、なか〓〓步行は勿論馬行も中々むづかしく、おお悲しい顏をして、幾なく冰り付き、慰みになる談話はせずに、じ樣に呼吸を潜めては、麥〓が此室內に逍遙いて、あッたが、自分を此冷氣皮膚に浸徹する第
二部屋に引摺り込む樣な、心ががた。cサン、ベテルブルグ自分は十七の誕生日をへた故、此会は聖彼得換に行て交際社會の仲間入をするが母君の胸算でのcなか〓〓ツた。然るに母君が逝去られたので、萬事が齟齬せし計りか、自分の愁傷は中々たとへられぬ程である。か、が、此一ト方ならぬ愁傷にも關はらず、實を云へば氣莫として死せるが如き故〓にモウ一と冬過さいよ〓〓うといふ考慮は非常に萎縮んで、時ガ經つと意なとの寢質と養傷を並間の結合せし感情が欲しく專つaて、終には居間に埀蔽めて滅多に外一山掛けず、「「ヤヤノ」の葢も開書物すら手に觸なかッた、しゆ〓〓、おな。(んじマカアは祥りに思めかれて種々の事を勸め込ンだが、いつでも其時は同じ返事をする。9『いやだよ、そンな氣はないよ。』4すると何處ともなく『アタラ花の盛りを何故仇に過すす』と囁嚅く聲が聞えて、此せつない言葉に對して應ふるものは唯一ツ!袖の軍だけである。ねん〓〓や人の噂に依ると、自分は段々疲せて、全く面變りがしたさうだが、自分は更に無頓着である。勿論こきジ面白からぬ孤獨の生涯に殘年を送らんと決心し、味氣なき世を通れんとさへ思ひし身がこんな事に心を苦めるわけはない。』と囁嚅く聲が聞えて、此せつない言葉だん〓〓しんぱいます〓〓じマカアは段々心配し初め、冬の末になると益々自分の容躰を懸念して、成るべく早くポコロオウc·スキイから自分を移さんと决心した。が、愈々左うしやうといふには多少の金子が必要であるが亡日、C母の遺産の始末は如何なつてゐる平自分達には更に分らぬ。で、是等の事情を詳しく知つてゐる後見人の來着を每日々々待つてゐた。終に三月となつて、後見人は漸く來着した。マカアは嬉し喜んで、或る日自分が影の如く、一隅から一隅にスリ抜けた時無頓着に平氣で獨暗してゐた。-『マア本統に有難いセルギイ、ミハイエになるつていふ御言傳たつたが、ウ井チが來て下すつたので、今日は御飯の時おいでカシヤ樣が奮發して下さりやア好いけれど』と自分に向て願ふ様に、『カシヤ樣- -ふんばるんですよ。セルギイ樣は8〃ぶ如何お思ひなさるだらう今迄は貴孃をお可愛がり遊ばしたんたが。』後見人セルギイミハイユロウ井チは自分の近所の者で、亡父よりも遙かに弱年であるが古くからs今度熊々來着して自分一家の生活を改めんとする一事を外にしても、の朋友で、自分は子供の時から其人を愛器し且つ尊敬してゐた。で、マカアが澤りに自分の氣を引立てんとしたは、誰よりも彼よりヒ此此人の日前で不撫歲又氣の後よる額をじてゐるが一番自分に李い'ゴツト、ドウターと云ふは一家の一同-其〓女たるメガニヤを初めマツテから下、馬丁に到るまでセルギイを尊其三
四はゝきみいちどじぶん·まへcぶんをつとB.んでゐたのみでなく、財者が、廣自分の輕く前でセルキノ如如き入を自分の以ムと定めたすると云はれたからで。じぶんこゝろきはばかおもじふんりさうまるBOOほんらいとしわか其時は自分の心に極めて馬鹿々々しき事らしく思はれた。自分の理想は九で相違して、本來年若く、せいたかやさがたいろじろちんうつすはんとし丈高く、柔形で、色白で、沈欝な人が好きであつた。之に反してセルギイ、ミハイエロウ井チは年も氏エイきやうけんひだいくわいくわつらいらく最早老けて、强健肥大で、常に快濶で且つ磊落である。りさうさうゐはゝぎみことばかたぶんきのこ走かし斯くの如く理想が相違してゐたにも關はらず、母君の言葉は固く目分の記臆に殘ツて、今よからくわさいぶんたいまへことばもちふれじぶんり六年前まだ漸く十一歲で、セルギイが自分に對して『お前』といふ詞を用ゐ、菫草と自分を呼んでをり〓〓ない〓〓ふうよめはとゐた頃から、既に折々內々で工風した、『若しセルギイがお嫁に欲しいつたら如何しやう?にうらくなにかじゆむびヨひるめしすこマクアが乳諸千甲千役の漁船をして待つてくなた其の日の生態の山ミ、イエロウ井たうちやくぶんまどこがたそりのついへちかそのすがたみチは到着した。わざ〓〓あてい自分は窓から小形の攝に乘て家近く來る其姿を見ると、態々會ひたくなさゝうな躰を3さしまかけこげんくわんきこあしおとくわんたいつくあいさつこたくわつたつたか粧らうとして座敷に駈込ンだ。が、玄關で聞える足音と、マカアの欵待を靈す挨拶に答へる潤達な高さゑみやたてたまじめんおもはくわすとびだ聲が耳に入ると、矢も相も堪らずツイ自分の所存を忘れて飛出した。はやくちはなおもしろわらCぶんもくねんセルギイはマカアの子を取て早口に證し面白さうに笑つてゐただ、自分を見ると默然として一ト能ゑしやくしづかへみcぶんなんふくわいも云はず、會釋しやうともせず、全く沈まり返ツてたゝ凝視めた計りだから、自分は何となく不快にかんはなじろ感じて思はず差明ンだ。おどろあなたたいへんかはれいたんばくぼくじつきしやうりやうてじぶん『どうも驚いた、貴孃だ子、大邊に變ツてしまツた』と例の淡泊な朴實の氣性から兩手を以て自分をひきよおはちいまれみごとば'引寄せ、『大きくなッた子。小さな菫州が見事な〓薇になッてしまツた。』いたぶんかたつかじぶんきつすのぞもだか、と云て痛いほど自分の手を固く握ンだ。自分は我が手の接吻せられん事を選んでセルギイに兇れ掛しんせつめみかゞやぶん紳士貴女の手を接吻し貴女紳士の前)○ツたが、たい其輝いた深切な眼を以て自分を凝視めただけである。(額を接吻するは普西亞の風俗なりあいたかはとしいろつやくろ12ひゆさん〓〓せ六年間會はぬうちに、セルギイも太く變ツて、年は老け、色艶は黑ずみ、似つかはぬ髭は〓々と生かはたゞたんばくらいらくきよきうしんせつじつめゆくわい愉快な殆んど子供らし笑方だけであこseわらひかたい。變らぬは唯淡泊な密落な擧動と、深切な實のある眼と、る。しばらいきやくうからこヽちひと暫らくはセルギイミハイニックカチな來客である市を忘れてこんののぬの如き心地の獨りふんひぼくめん〓〓き以うれようつとマカアと自分のみでなく、婢僕の面なも氣を配ツて嬉しさうに其用を勤めてゐた。Cぶんらいつしよさたんていきうgむあんじきんじよはんたい日益然とセルきはくわいくわつたべんろうなきはゝいあまなとんぢやくすじぶんばうせんキイは極めて快活に多〓を弄して亡母の事はトント云はず、餘りに無頓着過ぎて却て自分は惘然とたとひしんぢつあひだがらけるほど(かんがむどんぢやくして縱令親暱の間抦なりとも殆んど許しがたき事と思クた。が、程經て考ふれば、是は無頓着からでしりよこらけつくわなくて頗る思慮を凝せし結果である。ひと獨り五
六しよくじをはならはゝわざ〓〓もうこざしきちやちそうㄷぶん食事終らてかとしがが低くその爲めに後けられしん電態で茶の製懸ソオニヤと自分はマカつぎはなぱうふきせるもともつアの次に坐して、グリゴリイ老爺が亡父の烟管をセルギイ、ミハイユロウ井チの許に持て來ると、例しつないじやうげたばこEの如く室內を上下しながら烟草を吹き初めた。ふかうかさかんがとつぜんあしと『いるんなぶぞが東な多だす--ててるると』との米をとめめてセヨやうふたとぶんかほ『左樣でございますよ、』とマカアは答へ、「サモワール」(無効)渦沸ルの)の蓋をしてソオニヤと自分の顏を等とうぶん"がなかな分に睇視め半ばは泣きかけてゐた。とつ〓ぼcぶんむか『お父さんを記臆えてるかヱ?とセルギイは自分に向つて云つた。ごうくじぶんこた『極ぼんやりと、』と自分は答へた。とつさぞよレゴしあんのちわしあなたisむチ『今お父さんがゐたらからうな、』と徐かに思案して後セルギイは、『私は貴孃のお父さんが大好ものやはcheモあんゆんいろめうかきだつけ、』と物軟らかに言葉を添えた、暗然たる色を其眼に浮べて。かみさまてんまねちやばこか。同樣が大豆獨まになとてもいまたにてるッッな言な然も「プランㄱまへだれおとホロリと前垂に落した。なさけこつぜんかたむかおもちやみ『さう····情情い事をしだチ』と云て忽然クオニヤの方に向ひ、『ソオニヤさアお前の玩具を見せタaはふひろまとゅうしろかひじぶんなみだいつぱいめときるンだ』と云ひながら無作法に廣間ヘソオニヤと共に行く。其後影を自分は淚一杯の眼で見送る時、わしあなたisむチ『私は貴孃のお父さんが大好しんみひとひとりでg『親身の人がやツと一人出來た、』とマカアは云つた。じぶんこゝろなんしんせつひとどうじやう65t8ひじやうゆつたり『あア左うだ子』と自分は答へた。で、我が心は何となく此深切な人の同情に慰められて非常に優然わらひこゑわこわこゑげんくわんきこやがcぶんぷく々こしもととした。ソオニヤの英盛とセルギイの戯詐ふ聲は玄關に聞をる。頓て自分は一服の茶を點てゝ侍婢にめい.〓ふたろおとちいゆびじら命じてセルギイに進めた。すると復た渠が「ピヤノ」の葢の開ける音とソオニヤの小さい指で卵べるおときこ音が聞える。さけいつきよく「カシヤ、アレキサンドロオウナ、』と渠は〓んだ。『爰へ來て、一曲聞かせないか? cぶんたんばくちからあこゑうれせきたたヾそばい自分は此淡泊な、えかし万の有る感を聞くが語しさに原ともそはなにモルヤイの傍にヒ1クワシアナフアナタシアふほんかじやうンきよくいつまよくートオペンの「ソナタ」2 Quasi BB Fanatasiaの譜本を架上に置き、『さア此曲をお聞かせ····一曲しよもうちやわんすみしりぞ所望だ』と云て茶碗を持ちながら部屋の隅に退いた。さわけしそのひとしだいやうこゝぢ〃でみじゆく如何いふ譯だか知らぬが其人の云ふなり次第にならればならぬ樣な心地がして、まだ技藝が未熟できはたいひわけわすわれしまへざこのうへある、極めて凡手であるといふ托辭をする事も忘れ、我知らず「ピヤノ」の前に坐して、此上もなくおんがくあみちくはぶさまひはんおそれ君を見て如意思想しとちゃんのの事ははも幾に光司なれてるべいあかなにごとわすはだんはじも關はらず、何事も忘れ果てゝ彈じ初めた。おもしろなか〓〓じやうぞあなたおんがくよほどこうしややう『面白い、中々上手だ。貴孃は音樂は餘程巧者の樣ですな。』其一七
さんじcぶんとtheうれかほそあらういう此輕い讃辭は自分に取りては頗る嬉しく、思はず顏をぼうツと染め上げた。勿論亡父の老友なればこともじぶんあしらどうはいことばこちこれセルギイ、をハイニロウ井チは子供として自分を應接つてゐたが、同輩としての言葉を用ゐたは是がはじcぶんなんしいつしゆあたかんじやうもや初めて〓、A自分は何だか知らぬが一種の新らしい感情を燗した。をさっねゃいしきばうふマカアが程ないソオニヤを連れて寢室へ行きしあと、セルギイ、ミハイヱロウ井チは頻りに亡父のはなたはじかうさいノむすだん〓〓かうじやうこはつひちみま事を話し出した。初めに交際を結ンだそも〓〓から、段々交情が濃やかになつた事から、終に父は逝かじぶんをさなおもちやねこのこあひたたはむ去りて此時自分は猶は雖くして玩具を猶見の間に戯れてゐな事までさいしよおこえけだかゆくわいひとあひあいてきおもやが最初はウロ記臆の父の如く、面尙い愉快女人で愛し愛されべく適したものゝ如く思つた。順てセルぶんきんがくやうもつとこのしよくげふはやじぶんじいぜんギイ、ミハイエロウ井手は目分の勤めの模樣から最も好める職業などを聞最早自分が知れる以前たくわいくわつしやれおもしろとしんせつじつちやくどうじやうけいあいcぶんあらなんうれの唯だ快活で滑稽を云ふ面白い人でなく、深切で、實着で、同情と敬愛を自分に現はし、何だか嬉やうどうじじぶんことばゐあるひちこまた同時に若しや自分の言葉の或るものが或は父の子としての價値を落しはせぬねうちおとしくてならぬ樣で、をり〓〓なんしんばいかと折々は何だか心配でならぬ。さしきこじぶん、かたくちどめcぶんきはちんうついうもんしじゆうたれこマカアは坐敷に戾りて自分が固く口止をせし事、即ち自分が極めて沈欝で、憂問で、始終垂籠めてうしまつうつたはんぶんじやうだんはんぶんしかやうくびふトント浮きたゝぬ始末をセルギイに訴へると、セルギイは半分戯誠に半分叱る樣に首を振つて、じぶんちつ『さう〓〓自分の事は少とも云はない子。」『何にも云ふ事がありませんもの、』と自分は答へた。『もうそんな事ァないク。』じつさいじぶんちんうついうもんぬゞ〓みぢんかたんのこしんぱい原宿号の沈陵意ははひなすみれてでは濃壓き場ミ子子は變ら如く裏此心配のかへすぎさじんしいpけしつぶいやうかんなしらる意としておた事はいく過去りしせせて起きます事業は、とさびなかおしとほじつgどくあなたじぶんりつぱとしきろをんな『寂しい中を押通すことを知らんのは實に氣の毒なものだ。貴孃は自分で立派な妙齡の婦人だと思つてゐますか?おもわらこた『えエ、左う思ひますワ、』と笑ひながら答へた。あなたごくたちcぶんかうふく『いや左うでない。貴孃はまだ〓〓〓質のよくないダヾツ子で、自分がチヤホヤされる時はかり幸福ぶんひとりすふさはうで、自分一人になると直ぐ欝いでしまう方なんだ。』すこはぶんたうわくていかく「電ヲゆし裂めたこていう。」と自分は書感の躰を施ことして云ツなか〓〓ほあなたニラこよとつに『中々讃められない子。貴雖もお父さんの子で能くお父さんに似てゐる。』そのしんせつめふたゝsぶんむじぶんなん·ふしvかんじやうもやBっみ其深切な眼は再び自分に向けられ、自分は何となく不思議な感情を焔したが、ふつと氣を注けて見くわいくわつよそほはわ〓〓さうばうしたたしりよると、セルギイ、ミハイユロウカチは快活らしく粧ふにも拘はらず、晴々しき相貌の下に絕えず思慮めぐたせうちんつうぶんしヨロを廻らし多少沈希の分子を交へてゐた。あなたふさふさはむなりものこうしやほんよことi『實施には欝がうりたッて隠げない筈だが····甞業は巧者だし書物は讀めるし、いろ〓〓の事を知しんぱい此心配のcぶんかうふく自分がチヤホヤされる時はかり幸福ほんよ書物は讀めるし、ことiいろ〓〓の事を知一九
十にんげんあなたとしごろさかじんせいはなてゐるのに····人間は貴娥の年頃からが盛りで、いまさか、すこたなに人生の花は今開かうといふ時だのに、おそまきそんなにまめり返らないでもの事だ。もう少し經つと何をしやうからツて遲時になる、いxうちおもひいおもしろあそ現在の中に思入れ面白く遊はなければ。』あたかちゝかあるひをごとcぶんせつとくてうし恰も父歟或は伯父の云ふ如く自分を說得する調子で、じぶんどうとうセルギイ、ミハイヱロウ井チが自分を同等にはじさとすこc見る事を初めて悟つた。ぶんめしたみ若しししてても自分を目下のものと見くんたたぶ求ははシネ伏に感あるたせうふくわいかん〓そのそぶりみまつも知れぬが、ぶん世には茶葉がガヨネかから全なし自分の出口つ離す義務とある爲学なぐささとゴむかんがたのおもた。ばんしゆ〓〓ようだんをはとヾこほ試験發はフタンと種ふの用水餃の帶もでく用素滴して在變を傾て自ようじすまし=やがじぶんあれたっ『さよなら、カシヤ、』と離別を〓げた。いめ『何時お目にかゝれませう?たつとマカアは訊ねると、はるとう『春まではむづかしいチ。是から如何なツてゐるんだか、我が家の第二けんぶんじつゅ一ツドニールカの領地なりを見分して、それから、せ實はあんまり行きたくもないが、〓ゅなつモスコオヘ是非行かんければ····たび〓〓あな4夏になると度々會へませう』。『何故そんなにいつまでも、ぶんなな入らツしやらないノ』、と自分は悲しさうに云ツた。まいになあさうこヽろもちこのことば成るべくは毎日會ひたい樣な心持でゐたものがにはものかないぜん此言葉を聞くと遽かに物悲しくなツて、いうもんくわいふく再び以前の憂悶を回復しそのようすさうばうおんじやうあらみしんせつなぐさなで、其容子が相親と音聲に現はれたと見えて、セルギイ、ミハイエロウ井チは深切に慰めて吳れながやうなりものいかはんなんたた、『なアに長い樣だツて樂器を玩るとか、書物でも讀むとか、何かしてゐれば直ぐ經ツてしまいます。』こゑきよどうきはひやだけどはるめセルギイ、ハイユクロホ子の於を器動もゆるとやつにいてる大海に可同に辞まかぶんはなう、』と云ひながら自分の手を離した。いちどうげんくわんおくでてけがは〇七七B一同は玄關まで送ッて出たが、セルギイ、ミハイエロウ井子は手ばしこく毛皮の上衣を着てわざとぶん÷ 8らしく自分を振向きもしなかツた。なんなに知らン配をするンだらう?し心らふうほんとういひと『何だツてあンあんなに平氣な風をしないだッて····本統に善い人いたいヒぶんじんちう.は善い人だけれと、唯だ善い人といふだけの事だワ、』と自分は心中に思ツた。ばんぶんとこっしばよもやニSELわだい其晩マカアと自分はいのまでも床に就かずに奮らくは四方山の話とその話題はセルギイ、こんどなつこと*こつぎふゆミハイヱロウ井ナの事でなくて、今度の夏の事と、何處でどうして次の冬を暮すだらうといふ事であツた。じぶんみとなか〓〓だいもんだいなにゆゑだいもんだいヒぶんわかなん自分の身に取つては中々是は大問題であるが、さて何故是が大問題であるかは自分にも解らぬ。何しやうがいゆくわいおくすこぶたんじゆんきはめいれうじぶんこゝろたで生法は愉快に落ちはなとねこいふ事はふるようにて明らて明して自分の心には唯其一しんせつなぐさミハイエロウ井チは深切に慰めて吳れなんた何かしてゐれば直ぐ經ツてしまいまてけがは〇七七Bミハイエロウ井子は手ばしこく毛皮の上衣を着てわざと±
いうあんせいぜつ〓sたちまふうちしゆんぶうたいたうくわうみやうボコロオクシキ〓の此幽暗情絶なる望は候気の中に迷壓體態としてみあいかうふくゑいだ未來の幸福のみを描き、みなあんちくこく漲ぎる安樂國となつた。其二たうとうほるcぶんしうもんこと〓〓aゆめやうゐて,ばうこヽろまちれんぞくきたㄷぶん到頭春となツた。自分の愁問は悉く去り、夢の樣な目的もない希望と心待が聯續して來り、自分のひおくまるらぜんかはまいにちふざこれまでおんがくふけあらゑいき日を送るさまは全で以前と變り、毎日リオニヤと戯けちらし、是迄になく音樂に耽り、新たに銳氣をはつべんきやうみどりしたい〓さんさくうつぜんたいぼくしたそんこたゞむさうかつばうしあん發して勉强し、翠滴たる庭園を散策し、蔚然たる大木の下に蹲踞し、唯夢想して、渴望して、思案しこのひみつしひとかみさまてゐるが、此秘密を知るは單り神樣のみである。ときよよねむまとぎはたとりわつきよばんながねまきまとし時に依ると一と夜眠らずに憲側に立ち、取分け月夜の晩は長い寢卷を掴ふてマカアに知れぬ樣にそうちとんああるひものみのぼあるひつゆふちはんせうえうよせきばくたのしうかツと家を飛出し、或は觀臺に上り、或は露を踏みしだきて池畔を道遙し、夜もすがら寂寞を樂んで浮れた事もある。cぶんまよゆんざうなにものおもひだなか〓〓おもひだたま斯くばかり自分が迷ふてゐる勾像は何物であるか?憶出さうとしても中々に憶出されず、偶たまおもひだところとうふんじしんプなううかおんそこんにちじつさいしやうがい憶出した處で、如何しても是が自分自身の頭腦から浮んだ事とは思はれぬほど、全く今日の實際生涯はるかくぜつとは遙かに隔絕してゐる。すゑつひないDきヽやうまつたおもひまうじふん五月の末終にセルギイ、ミハイエロウ井チは再び歸つて來たが、此歸〓は全く思設けぬ事で、自分sものみちつまあたかちやゆ.ところ共は觀意に集り恰もベカアが茶を命じた處である。其ニきヽやうまつたおもひまう此歸〓は全く思設けぬ事で、じふん自分
にはゐもしげうぐひすこむらふかなかすつくめんぱんこゑはなの存料うらヽたそがれおくれんげう庭は靑葉茂り、鶯は木叢深き中に巢を作り綿蠻たる聲を放つて長閑けき麗かな黃昏を送り、連翹うつかをりつぼみいまやうふくいくBEDた七かばうえごみは蔚として香芬ゆかしき蕾を持ち、今にも破れて馥郁たる香を漲らさんとし、樺の植込はコンモリといりひあかひかりはんしやものみかすとゴヱらくさばてせの'ガ、して夕陽の赤き光を反射し、觀臺は蔭になりて旣に涼しく、夜露は草葉に輝りて、背戶には草野歸りひとごゑかしまうしそのかへまつゆうかぜなの人聲喧しく、牛は其歸りを待て夕風に鳴く。くわんすゐしやはしものみま、またてんぢくばたんくわだんめぐみづモ、わまへシリイ、ニコンは灌水車を馳らして觀臺の前に來り、天竺牡丹の花植を巡りて水を漑ぎ、我が前のゑんたくあゝやみがこにうらくなき圓卓には輝くばかりに磨き込みし「サモワール」と、乳酪、「パンケーク」、「タート」等さま〓〓のものならが陳べてある。ふとしろてあるじバちやわんいちざ心じぶんよくごかわきしんぱうにうらくともマカアは肥つた白い手で家婦振りに茶院を一座に記り、自分は浴後の渴に辛抱しかねて乳酪と共にばんはじ麵包を喰ひ初めた。らいちやくだいヽちみとセルギイ、ミハイエロウ井チの來着を第一に認めたはマカアで、ほんとういまあなたうわさところ『おや····まア、本統にまア、今貴君のお噂をしてゐた處です。』cぶんおもとびあがにけだはcぶんおさじ自分は思はず飛上ツて逃出さうとしたが、セルギイ、ミハイエロウ井チは早くも自分を押へて、自ぶんゆあがひろそでちやくしろねのぬれがみむすさまみ分が湯上りの廣袖を若し白布で灌製を結んだ能を見て、ゐなかたしなみくゴわらまへよ「加えることをときす」とかなること教分から、ガショメの製ですじぶんよくごかわきしんぱうにうらくとも自分は浴後の渴に辛抱しかねて乳酪と共にじ自わし三、どう私の前へ如何したもンだエ···cぶんすこBREいそて上まつ自分は少しく差明ろンで、急ぎセルギイ、ミハイエロウ井チの手を振りもぎツて『ぢやア待てゝよす.直ぐ來ますから。』cぶんあわ一ゃ1おつくかゞみむかかみおすなほあわコこと自分は慌てゝ部屋に行き、身粧りをして鏡に向ひ、髪を結び直して、慌てゝ再たいきせきと戾ると、えうだんさいちうcぶんかほみぁうちゑそのセルギイ、ミハイヱロウ井チはマカアと要談の最中で、自分と顏見合はして打奠みながらもわざと其えうだんaわここしよいうざいさんいゴかうきはいっこのうへミニ要談を續けて、我が家の所有財産は何れも好氣配であるを告げ、此上はボコローウスキイに留まるべひつえうあきけういくたいaス井ツツルあるひき必要もないから、秋になればソオニキの〓育の爲めベラルブルグに行く歟、左もなくば瑞西或はイタリイいうれきエ伊太利に遊歷するが可からうと云ツた。あなたごいつしよ.わた。あかんぽもりなかふみこやうきつ크「其所も御」なる」をミクシテリテ」をくとはかも手を於の次いにご子になりますよ。』まへたちいつしよせかいはんぶんあるはんぶんじやうだんはんぶんなcめごた「お散換と」恋なら世が五分先行いてもいい。と半分難渉生外見回aじぶんいいつしよせかいひまは「なヨ···モンならマ。」と自分は云ッた。『[依然世界を一とわしようじなにかすジとききよねんあきわししとあとまいにち『電話の女童電機は少女巻』を以な--』以降空の秋葉と歸を在舞をしてゐたヱ?』て上まつミハイエロウ井チの手を振りもぎツて『ぢやア待てゝよ其二十五
こすたそがれ庭は靑葉茂り、鶯は木叢深き中に巢を作り、綿蠻たる聲を放つて長閑けき麗かな黄昏を送り、連翹1244 BI乃作は蔚として香芽ゆかしき蕾を持ち、今にも破れて馥郁たる香を漲らさんとし、樺の植込はコンモリとお召りして夕陽の赤き光を反射し、觀臺は蔭になりて旣に涼しく、夜露は草葉に輝りて、背戶には草野歸りの人聲喧しく、牛は其歸りを待て夕風に鳴く。モ、ミ、シリイ、ニコンは灌水車を馳らして觀臺の前に來り、天竺牡丹の花檀を巡りて水を漑ぎ、我が前の圓卓には輝くばかりに磨き込みし「サモワール」と、乳酪、「パンケーク」、「タート」等さま〓〓のものが陳べてある。じマカアは肥つた白い手で家婦振りに茶流を一座に配り、自分は浴後の渴に辛抱しかねて乳酪と共に麵包を喰ひ初めた。セルギイ、ミハイユロウ井チの來着を第一に認めたはマカアで、『おや····まァ、本統にまア、今貴君のお噂をしてゐた處です。』c自分は思はず飛上ッて逃出さうとしたが、セルギイ、ミハイエロウ井チは早くも自分を押へて、自ゅ分が湯上りの廣袖を若レ白布で滯髪を結んだ態を見て、ニ、、張りとろさをともす。どがかしるに氣女がキ、タクライの世やシじ自分は浴後の渴に辛抱しかねて乳酪と共に自ニ、〃私の前へ如何したもンだエC上自分は少しく羞明ろンで、急ぎセルギイ、ミハイエロウ井テの手を振りもぎツて『ぢやア待てゝよ直ぐ來ますから。』〓:自分は慌てゝ部屋に行き、身粧りをして鏡に向ひ、嬰を結び直して、慌てゝ再たいきせきと戾ると、セルギイ、ミハイエロウ井チはマカアと要談の最中で、自分と顏見合はして打笑みながらもわざと其ンわ〓要談を續けて、我が家の所有財産は何れも好氣配であるを告げ、此上はポコローウスキイに留まるべたス井ツツルあるひき必要もないから、秋になればソオニヤの〓育の爲めベラルブルグに行く歟、左もなくば瑞西或は伊太利に遊歷するが可からうと云ツた。so「電壓」的「綠に」をヒックはジェム」致し其はかるずると言わな子になりますよ。』난x cめ『お前達と一緒なら世界を半分步行いてもいこ、』と半分戯瀘に半分眞面目らしく答へた。칼『左う····そンなら子、』と自分は云ツた。『一緒に世界を一と廻りしませう。』ニのの黒いヤニヤルクノ女将の反をかき--紫紫素の致死論シ在純そをしてゐたエ?』上ミハイエロウ井テの手を振りもぎツて『ぢやア待てゝよ急ぎセルギイ、二
十六それcぶんbいこいおこ夫から自分はセルギイ、ミハイヨハウホチに別れてから以來に起りし樣々に置を尊して少しさま〓〓なぐさひくらすこぶれうかんてんまつものがたも無聊を感じなかツた頓末を物語ると、あたかヒぶんをさこセルギイ、ミハイニロウ井チは恰も自分が稱ない子供でセルcしんほうぼごとに自分を稱識して可愛がツて吳れた。で、ぶんギイ自身が其保姆であるかの如くかあいじぶんなはごとものがただヾほめそや自分は一から十まで何事も物語る氣になツて、たしかおもしろかんじやう·おこ唯稱識されべき事ばかりでなく、こと慥に面白からね感情を起さしむべき事と承知しようちすこかくこと〓〓うちるはなとんしながらも少しも秘さずに悉く打明けて話し、ぶんコンプエツシロナルcしんコンフエツソア頓と自分が懺悔人でセルキノ自身が懺悔僧となツた。樣である。ばんなんうれちゃたうぐひきa "其晩は何となく嬉しくて、ものみ(3)つせちがら茶道具を引下げてからも猶ほ觀臺を逍遙き、うきよものおとtだい.なゴ世智辛い浮世の物音が次第に失くなりしを氣附かなかつた。こくういづこはなかみわたはむゑ虛空は何處ともなく花の音で充ち渡り、つゆたままろこまれんげうこむら葉末の爵は玉を轉はして湊やかに運類の木體に喘ずる黄島さへうぐいすこゑうるすみわたほしぞらづじやうおほきたの聲美はしく、澄渡る星空は頭上に覆ひ來つた。たそがれどきさいうんたちまらよるせかいへん曝骨時の彩雲忽ち黒ずんで夜の世界と變ずれば、ものみaははめんしたとつぜんかはほり朝臺の屋根を強りし帆木綿の下から突然蝙蝠が飛とびため)とゆ出して、目まぐるしか樣に飛び轉つて、じぶんしろひいさくいきなりに自分の白地の衣服をはたと打つたから、cぶんハこゑあとたんかはほり自分は思はず聲を上げやうとする其途端にふたヾこしたやみこ蝙蝠は再びもとの木下間にまぐれ込んで仕舞つた。し〓なか〓〓いギヨーリスタははみみないいてていましたよは時かくなくて「安全わたうてんこしやうがいおくせちがらうきよものおとtだい世智辛い浮世の物音が次第たいもんだ-。』さあそ『そンなら左う遊ばせナ、』とマカアは云つた。くりかへしか、すなばCHI『左うしたいナ、』とセルギイ、ミハイニタウホテは線邊した。。併し儘にならぬが則ち添世だ。』あなたなぜおくさまあそたづあなたやうけつこう『貴所は何故令室をお持ち遊ばさないノ?』とマカアはわざとらしく訊ねた。『貴所の樣な構なお方かれでありながら。』わしまヽかつてゞおちミわし『私は氣儘勝手が好きだから子、』とセルギイ、ミハイエロウ井チは笑ひながら、『お前や私なンぞはもこんれいはなしとしわしほういうりつわしにようばう23じつさいわしう婚禮の話をする年齡でもない。私の朋友は何れも私が女房を持たうとは思ツて居らんと。實際私も〓aばんとう最う其所存で居るのサ本統とも。』388ことばわざつよたちからいじふぶジ最後の言葉は態と關氣を強める爲め力を入れたしし自分にはにはれきじやうたんおつぃなんうきよみす『御調壓仰しやるよ、』とマカアは云ツた。『何ですす、三十六で居らしって····それで浮世をお見捨てあそいこと遊ばすと云ふ事がありますか。』わしきき、どくしんゐはうCafeこんれいことハまたべつかむふんべつ『いや、私は氣儘に獨身で居る方が所望なんだ。婚禮の事なんぞを思ふと又別に變ツた分別が山ここにじぶんさまへわしとかくこのこりつぱとこかたづる。カシヤ.』と點頭いて自分を指し、『マカア、お前や私は兎も角も此娘を立派な處へ嫁付けて、しあはせくらみあんしんじゆんとう空福に尊すのを見て安心するのが順當ではないか二こんれいことハまたべつかむふんべつ婚禮の事なんぞを思ふと又別に變ツた分別が山まへわしとかくこのこりつぱとこかたづお前や私は兎も角も此娘を立派な處へ嫁付けて、二十七
このこわねこのことばしたすこぶちんつうくもんぶんしかくゐたしかcぶんむねかんつうしば,此事業のである状況諸間の子が殺与と尺六は松に見の心に隠しし。渠は暫らく默ねんcぶんさららひら然として、マカアも自分も更に口を開かなかッた。かんがごらんなんわいつていせきはなと〃「ますと三國三と同た終分かいは、の場合け、なるより何かしたいをんなたとためしもちだにやはなしこんわかをんなの小女、例」は貼タシヤの樣なーとしてもそに例を惜したるんだ--以示解にようぼいつかれわらいだじふんなせわかわらいた女房にしたら、』と云て渠は笑出した。自分も何故だか分らぬが笑出した。どごくしやうじまこヽろもちsみじぶんかほみちんたわ のなにきどもの『如何だエ?極正直に心持を言ってたり、一自分の叡をじシき見て。其應の樣に何事も物めづはなかたとしとつはんぶんヽらく8)いつしよ珍らしく花やいでゐる方が、年を老て、半分ぼけてゐて、樂ばツかりしたがツてゐる者と一〓になツさだふしあはせハ、わかここヽろしゆ〓〓ざつたおもしろむばうもみたたら、定めて不幸福だと思ひませう。若い人の心には種々雜多の回白い希望が燃立ツてゐるもんだから。』このしつもんじぶんとよゆくわいバーしげもくねんまつたこたはうがくし此質問は自分に取りて不愉快に思はれて、暫らく默然としてゐたは、全く答へる方角を知らなかツたからである。うちゑふたヽことばフ渠は打笑みながら再び言葉を次ぎ、なにあなたけつこんまをしこみなんわしことばたいきくしやうちきとこ『何も貴孃に結婚の申をするンでも何でもないが、c私の言葉に對して極正直な處を聞かして實ひたゆうぐれにはうんどうどきあなたまうざううかみら、をつともわしいこいやうをとことうい。多發歷五卅卅くれ恭然を叛にのま來古ハム替わなきまたかないですしば,渠は暫らく默しげもくねん暫らく默然としてゐたは、まつたこたはうがくし全く答へる方角を知らなかツをとこじつやくかいものそれていしゆもつふしあはせでせう?こンな男は實に厄介者で、夫こそ事主に持たら不幸福でせう?』しあはせぶんぃb『いゝニ、不幸福ぢやアないワ、ですけれど-』と自分は言ひ掛けると、たんじしあはせわらいだ『けれども慥に幸福ではない』と云てセル、ギイは笑出した。『いゝえ、さうぢやアなくツてよ。あたしは····いいよしやうぢはいついけつこんわかをんな日)もちろんこま『もう云はないでも可い。能く正直に言てお吳れダ。さう云ふ結婚は若い女の方でも勿論困るだらうとしとをとこはうぞゐぶんふしあはせが、年を老つた男の力でも臨分不幸福なもンだ。』ほんとうおもしろかたゆふけじをかせきた5いくつあそ「不愁に問いただ」にマクタは聽の多に新人なるとあるなならないちつかはことばしても毫ともお變りがない事。』せきたあとヒぶんしんもくしんぐわいぶつしやうおなひそマカアが席を起ちし跡は、セルキイ、ミハイユロウ井チも自分も喊戡して身外の物〓と同じく滲まか·てんちしやくまくnうぐいすをり〓〓なHPこのうぐひすrこゑあさすり返ツた。天地は寢聖として霖ちくれし嵩がたし折々に鳴く計りで、志かも此鶯の聲も朝の、鉛をまろことかはながをひにはいつぱいそのてうしひびとほはなこむらかいに轉ばす如きとは變ツてしツとりと長く尾を曳き、庭一抔に其調子を響かすと、遠く離れし木叢で第二うぐひすそのあとひきうふたゝながをつるaみなぎざんじよるせかいそのちやうせいれいらうの鶯が其後を引受け、再び長く尾を曳いて美はしい音を漲らせ、暫時に夜の世界を其澄〓玲瓏たるおんてうらみ音調を以て充たした。にはをとこだうぐベやしんじよひつこねやがりうゆんてきせいおちくにどマ.きこ庭男は道具部屋の寐所に引込ンで寐てしまツた。頓て晩然たる當聲が大路から二度續けて聞えるとやがりうゆんてきせいおちくにどマ.きこ頓て晩然たる當聲が大路から二度續けて聞えると
いちなんかぜとも一陣の風と共にたちまもとせきばくゆふかぜこはひよけどうえういちなんかぜとも條忽ち元の寂寞にもどツて、夕風は木の葉をざはつかせ、日被はのどかに動搖して、一陣の風と共にあらおわりものみびまん新たなる香が觀臺に瀰漫した。もくねんなんおもしろじぶんかんさと〃くら합はうがく歟然としてゐても何となく面白からず自分には感じたが、扨て如何して日を切らうといふ方角もなかツた。いBもちせい〓〓たうとうくちじぶんため『あァ好い氣持だ····清清する』とセルギイ、ミハイエロウ井チは到頭口を切ツた。自分はほツと嘆いき息をした。とたづ『如何かおしか?』と渠は尋ねた。いこヽろもちぶんこたふたヽもくねんしプし〓cぶんなんcぶん『いゝえ、好い心持です。」と自分は答へたのを再び獻然として沈んで仕舞ソ自分は何だが自分ことばらうじんまといとほげ人ミハイエロウ井チを老人、たと思ふ如くに言ひ過して機嫌を損じたのではあvBそんの言葉が若しやセルギイ、丸お&うわびきとのもしかいしやく小とういふういるまいかと考へて、如何かして謝言を述べ若くは解釋を言はうとしたが、如何云ふ風に云つていゝもさらわかのやら更に解らなかッた。とつぜんたこんやはいつしよゆふめしたやくそく『さよなら』、と突然セルギイ、ミパイエロウ井アは起ツて、「今夜は得と一績に夕飯を嘆べる約束これしんきよくひたから。『それでも是から「アナタ」の新曲を弾きませつと思してこんどいなけ『また今皮にしませう、』とすげなく言拾てた。『さよなら。』ひよけどうえう日被はのどかに動搖して、さと〃くら합はうがく扨て如何して日を切らうといふ方角もなたうとうくちミハイエロウ井チは到頭口を切ツた。じぶんため自分はほツと嘆cぶんまつた·けんそここと9つとうとりつくろすこわかなか〓〓かな自分は全く機嫌を損ねし事に氣が附いたが、如何して取繕ツていゝやら少しも分らぬから中々に悲しくなッた。じぶんげんくわんしきだいおくいうしろかげaそのばていおとマカアと自分は玄關の式臺まで送り出で、セルギイ、ミハイエロウ井チの後影の見えず其馬蹄の昔きこみおく九たものみもどにながじやうけよしよくちんまうらうたんぼくが聞えなくなるまで見送り、再び觀臺に戻つて庭を眺めながら上下し、夜色沈として朦朧たる淡墨のなかせうえうわまうそうしちやうぶつ〓〓こゝろかよ中に逍遙し、我が夢想にて視聽すべき事々物々に心を通はしてゐた。かそのヽちはうもんにさんどかさうちれいがてんゆだんわため斯くて其後セルギイ、ミハイヱロウ井チの訪問が二度三度と重なる中に、例の合點行かぬ談話の爲たせうじぶんこゝろさわきがふくわいりやうりうこのいらいいつに多少自分の心を駈がした氣懸りな不快の情は消え失せた。セルギイ、ミハイユロウ井チは此以來一じうかんづゝじぶんうちおとたまヒかさひじやうしつばうあ週間に二三度宛も自分の家を訪づれて、個さか來ぬ事が重なると非常に失望するばかりか明けてもこ暮れてもセルギイが來なければならぬ樣に思ツた。じぶんみしんいうもつちうこくあたどうじやうへうをり〓〓じつせきセルギイ、ミハイエロウ井チは目分を見るに親友を以てし、忠告を興へ、同情を表し折々は叱責し、たび〓〓じぶんみびせう:ことたんばくくわいぎやくしんせつしたぶんすこかなにもの度々自分を見て微笑を洩す事がある。しかし其淡泊な談證と深切の下に自分の少しる關はらね何物かせんぶくぶんハが潜伏してゐるらしく自分には思はれた。Bどうぢうはせわヒしんざいさんくわんりならびわマカアから聞けば、セルギイ、ミハイエロウ井チは同住の母の世話、自身の財產の管理、並に我がこうけんほかすこあめんだうcけんしばくるし家の後見の外、頗る面倒なる事件に縛られて困らられてゐるさうである。とうとりつくろすこわかなか〓〓かな如何して取繕ツていゝやら少しも分らぬから中々に悲ならびわ並に我が二
c u답のみにしほぼ諸外に關して運薄片。G其太陽の如かるとして然還是5こ、唯妙に前額に皺を寄せ、『そンな事を聞くな、恰もお前の知つた事ではない』、といふ如き風で、〓直ぐと話頭を全く異ツた方角へと向けて仕舞ふ。cジ、だん〓〓な初めは何だか自分も面白からず思つたが、段々馴れて來ると、セルギイが唯自分に關係した事だけ云ふのが却て有躰で快くなつた。8殊に又自分の氣が揉めたはセルギイ、ミハイエロウ井テがとんと自分の姿挽に關して無頓着になつcごた事で、自分を榮人と息を寄子を更に其書張戒はその暫是に現さないばかりc若し萬一渠の面前で自分の容儀を稱揚する人でもあると却て肩を埋めて苦笑する。(又何か晴の時にマカアが自分を粧飾らやするとする流行の表紙や難候補はずモルキノスの議議案笑を貞ふ是にはマカアも自分も頗る當惑した。多のマカアは自身の心だけでセルギイ、c B〓ミハイエロウ井チは他に自分を愛して居る事と獨り决めて居たゐが、的なホットすは日からぶし屋をb·た。が、自分は逸早く其理由に感附いた。セルキイは虛飾が嫌ひで成るべく質素を候するのだといふこと〓〓事に氣が附き、次裳髮貌等の華美を悉く捨てゝしまつた、志かし暫らく經つと質素一方でそろ〓〓粧だん〓〓な段々馴れて來ると、セルギイが唯自分に關係した事だけり初めた。cあ:セルギイ、ミハイニロウ井チが自分を愛して居る事は全く確實で、子供として歟又大人として歟夫は云はずともの事だが、現金ももさされて是ると自分がセルルイの思人之物であるが何となsco滿足で、如何かして實際よりは一層見上げて黄たさが然で、心ならずもセルギイを欺むかうとした。』〓自分の容儀相貌はセルギイ、ミハイヱロウ井チには殆んど見馴れ、如何に化粧を凝しても無益であおくそこ、ニ、るが、我が心の奥底には猶ほセルギイの眼の屆かぬを知り、此點からセルギノを晦まさんとして、セ|なか〓〓あなた(ルキイが調〓に紛らしてざるうとしながらる『中々貴雄は)と終あるな』といら府は良世婦堪らぬ。4 u斯う云はれる時の自分の心は如何である?嬉しさが込上げて胸がワク〓〓として躍り出し、得意と滿足で心一杯となる。b.其時は斯ういふ塲合で、グリゴリイ爺が孫を可愛がる味が分つたと云ひし時と、歌や小說を讀んで5覺えず涙に暮れしほど感動したと話せし時と、シユールホフよりモザルトが好いと主張せし時だけ!,で、何故こんな事を云つたもんだか其理窟を知らぬが、毫しも正觸を誤らずに善惡邪正を識別したは上i r今から考へれば全く不思議である。u嬉しさが込上げて胸がワク〓〓として躍り出し、得意其ニ二十三
セルギイ、モぶんcかうすこcamまんいらじぶんこのミハイニョウ井チは自分の一事一行に少しも日出しをしなかつたが萬一自分が好めるなぐさみふにあひそのまゆひそぶんたいれうかい遊戯で不但公なものでもわれは五月を望めるかと見界は直ちに丁解なにごとちゆうこくくは又何事か忠告を加へやうとじぶんたちまよちする時はいつでも自分は渠が云はんと欲するるのを急て豫知する。なにごとといちべつ又何事か問はんとして自分を一瞥いちはやかれこゝろさとないごとする時は其一瞥だけで自分は巡早く渠の心を悟る。じぶんこゝろこゝろ何事につけても此時には自分の心だか渠の心だかひかにととうたいし= aでこととんはぞ彼我殆んど同躰となつて仕舞ふ。cぶんひとこゝうすゐち左ぁなければ元本殘忽勞鈍であるべき等の自分か他の心を推知すべしゆんさうえいり〓きほど俊爽鋭利となつたとは思はれぬ。しうちCぶんらつユへんくわ如らず識らざる中に自分は何時の間にか變化して、かひぼくみめマカアからソオニヤ並に一家の婢僕を見る眼がかはもちろんじぶんじしんゝにち〓〓しこと變つたは勿論、へんとうおこじかんつぶたゞとぜんたくる自分自身の日々の仕事にすら鬱動が起つて、是までは時間潰しで唯徒然を慰むるに過どくしよごらくまつたカノリえぎざりし讀書が此頃第一の娯樂となつたは、しよもつ全くセルキイが自ら撰擇んで臭れる普物であるからで。t.なか〓〓たいぎ令まではシオヘヤに〓へるが中々太儀で自分には頗る間何であつためんだうは此頃はセルギイに賞められるうれのつしんぼたのし嬉しきに氣が乘てソオニヤの進歩するのが頗る樂みとなつた。おんがくけいことてできことかんが又是まで音樂の稽古は迎も出來の事とおへてゐたものが、はいつぱいいつしやうセルギイに褒められたさが一杯で、一生けんめいおよべんおかきよくくりかへつひたま懸命に凡そ五十遍も同じ曲を繰返し、みわたせんマカアは終に堪りかねて耳に綿の栓をしたほどである。じぶんどうたいなんべつもの又是まで自分の則躰の如く思ひしマックが何だが別物の如き觀をなくわんじぶんマカアがソオニヤと目分にほういうぬ..まつたつとめあいねんcぶんしまいごに對し母となり朋友となり奴婢となつてゐたは全くお勤でなくて、其愛念を自分姉妹に献げてゐた事はじさとありがたみいまさらほねみしなか〓〓おんほうよういでき:を初めて悟り、其有難味は今更骨身に染みて、中々この恩報じは容易に出來さうに思はれぬ。いぼくれいぬひ十、ぶんこゝろあたそのうちモたぶんはじ我が家の候隷奴〓は乾て自分の心には新らしくなつて、十七年間其中に生長ちし自分であるが、初じぶんおなひあいくわんじやうCakさとにはもりはたけなにかわれのて漁等の間にも自分と同じく釋喜哀默の情が行けれてゐるを悟つ庭も森も圃も何も彼も我にはすべあたうつくかんせん惣て新らしく是までになく其美しさに感染した。じんせいしだいかうふくひとせいぞんはじみとう或る日セルギイ、ミハイユロタカテは人水の至大字廳とは他心ふゐに生存して初めてはCいみひじやうわかだん〓〓かんがれうぜんそのあちはさと云つた。初めは其意味が非常に分らなかつたが、段々考へてのち今は悉く亮然として其味ひあるを悟しうゐかくじかくぶついくわんあらなにさといつさいばんばふすべおもしろこどもると共に、我が同圖の各事各物は是までになき異觀を現はし、何事も一切萬法物て面白くなり、子供まうろううちcぶついちごんよつれび〓〓ありの時から膿腫の中に包まれてゐた事物は此セルキイ、ミハイエロウ井チの一言に依て歴々として明らくわんりじやうかになり、我が心は欺喜の情で一杯になつた。さつとこついnたび〓〓かならもとゅいくたびじぶんかう此夏は床に就ても寐られぬ事が度々で、其時は必ず起きてマカアの許に徃き、幾度となく自分が幸ふくくりかへおなかうふくすこぶまんぞくもちろんじぶんかうふく福であるといふ事を繰返すと、マカアも同じく幸福で顏る滿足であると云ふ。勿論自分が幸福であるだれしcぶんしかfrねどたかへは云はずとも誰にも知れた事で、マカフは時に依ると自分を叱りつけ然理を寐床に臨したこともあるよゆくすゑたのこゝろゑがうれむねいつばいが、此時は夜もすがら將來の樂しいさま〓〓を心にいてゐる。時に依ると婚しさが胸一杯で思は
767.9 / /二十六おきあがひさまついつしんじぶんしやうがいかみBせいあたりせきぜんず起上ツて號き一心に自分の生涯を神に新請した事もある。aいき斯る時四邊は寂然としてマカアの寐息とけいおとロはいはおとほかゆきとまさふたとそのあんたん寐おくれた蠅の羽音の外は関として、なか時計の音、cぶん戶も窻蓋も閉ぢられたる其晴澹たる中に、自分はひとりgさこゝろうれわきたいっやどこ入於望してには信じょがの立ち僕によくして何博までも既部屋の駐一ははなこのき此神々たじやうふつけうそらうんさんのぞる情を拂曉の空に雲散せしめざらん事を望んでゐた。わむそうB 15じせいこのせきばくあんたんにぎちんじやうおもお我が夢想も、5ぜん我が希望も、バン我が祈請も此寂寞晴澹を賑はし、枕上徐ろに怡然として唯渠を懷ひ渠をしたいはゆるヲヴさらg ?亞ふてゐた。ゑかし是が所謂「あ」こどは日分は更に氣が附かなか其三しうくわくどきすゑあひるすぎじぶんひるめしすわれ〓〓へいぜいあそなぼだいじゆ收獲時の末或る午後、スファとメオニヤと自分は生袋を深まして我々左年生遊ひ馴れたるこかげでb.ニ、シャリせつぜうこばんけいくわうじやうあつとほきやうぐわいうつぜんリみは木蔭に出掛けた。玆は大路に接し、一眸の下に萬頃の黃壞を集め、遠く境外に蔚然たる森を見晴らすわrs好地である。きたみつかごたしやきたセルギイ2ハイエロウ井チはボコロオウベキィに來らざる事三日であるが、此日の午後慥に來るしつじやくそくこしうくわく6やうけんぶんるべき旨を執事に約束したからだ。ぺき仔細といふは收獲の摸樣を見分あごいつたいじうくわくにんけんげうあひだうまのりまはみか午後二時頃になると一隊の收獲人の喧忙する間セルギイが馬で乘廻すを見掛けた。マカアはセルかうぶつなしさくらんぼつしたくめいおいよこかほあnし또じぶんうののを交換を像のはあるのを以後になる「ハンチーノと此に寒く自分ぼだいじゆえたをつあふきたみちすぢいつしんうちまきりかぶこしは菩提樹の枝を折てマカアを煽ぎ、セルギイが來るべき道筋を一心に打守り、ソオニヤは切株に腰をかこえだくさつかにんぎやういこた掛け木枝や草を束ねて人形の家を建てゝゐた。cheユなり〓〓ゑんらいいん〓〓かすひヾgちへいせんくまとひとむらくろくもひらでんくわう其日は暑氣强く折々違雷の隱々として微かに應くを聞き、地平線を隈取る一簇の黑雲を排いて電光かりひらめみの鍵の如く閃くを見た。やまこくるゐっくるまヽいくりやうぢほりそきしこくぐらのちのうをどこからくるまうへ山の如く穀類を積める車は幾輛となく大路を沿ふて軋り、穀倉に運んでから後、農男は空車の上にごたしやきた此日の午後慥に來るちへいせんくまとひとむらくろくもひらでんくわう地平線を隈取る一簇の黑雲を排いて電光こくぐらのち穀倉に運んでから後、のうをどこからくるまうへ農男は空車の上に其三
りう〓〓ニ ハ突立ち、鞭を嚠々としごき、長衫を風に靡かせながら、再びガタクリさせて歸る。遠く田園を望めイ9 :)喧然たる人聲聞え、浮彫の如く、我が限前の風色は宛がら秋風の吹き初めたる夏の本の景である。〇Robe 303 9で、斯くの如く人は忙がしく汗を流し塵に汚れてある間に、マカアは軟かき更紗の帛布を顏に掛けらこ·たいがたて眠り、處く熟して永氣網るばかりなる變質は皿に堆くして仇人の呼を飮込古代形の硝子の壺に盛りたる氷塊は日光に映じて七色の虹をなし、自分は徐ろに夏の日の熱さをも忘れてゐた。( ,「高度な」觀にしてもいにして居られは師の家庭だよる。自身は平して此幸福を裾分しやうかしら?〓x·8る)太陽は菩提樹の森に隱れ、田圃の塵埃は沈ちついて、遠き一連の岡は入日と共に紫色に變じ、近き森の邊には堆く收獲の山を積み、穀類を積める車は既に去り、今まで其の喧然たる間心身を粉にしニ:後參し血罪はは純花を肩に、まの私を開する劣はぁぁぁを過ななが法かしセルギ1、ミハイエロウ井チはまだ見えなかつた。はれ〓〓不意に、自分が待受けた道とは全く異つた方角から渠の背高な姿が現はれて、晴々しい面持で自分. cの方に向て進み、マカアの熟眠してゐる躰を見て唇を緊と結び、自分に點頭いて輕く會釋し爪尖6 c Bで音のしない樣に歩行く、其穿子を見て自分は早くくも機嫌の気い事を察した-此機嫌の好い分共は渠が『有頂天』の時と稱してゐた。c『今日は-如何だエ、菇艸きん』と自分の子を種つて直ちに自分の會釋に答へた。「有が今日·sは恰で十二三の見供になつて民に乘つたり木に登つたりした。それはさうと何だツてマカアの鼻を苦める?』g n =と云はれて氣が附くと、マカアの顏を蓋ふた布帛は何時の間にか取れて、自分が折りし菩提樹の枝こ〓じ,が恰も其鼻の上に落ちてゐた。自分は思はず吹出して、『なに、關ふもンですか、マカアは屹と起きる然ぐらとアンなないとなまラス。い俺首で其際にははカッシ郵便まく極睦じい親明の調子を用ゐて見たかッたからで。セルギイ、ミハイユロウ井チは櫻實の皿を手に取り、ソオニヤの遊び塲に行き、ムザと人形の席にbさくらんぼ坐ると、穉ないソオニヤは忽ちに怒り出した。セルギイは一向平氣で荐りに調戯ひ、ソオニヤは櫻實Eを吳れぬから御立腹だと云ツて弄ツた。走かし二人は間もなく和合くなつて一緒に此櫻實を喰バ初めたる0『最少し取て來て貰ひませう····取りに行きませうか?』く其三
へんじたさらとにんぎやうそのなか5むろかたいそのあとお張就致事をしないですもに皿を取り人形を其中に入れて暖濱の力(ソオニヤは其跡を追ツうはぎすそとりつにんぎやうか、(魯四亞にては綱にて屋根を張り)て上衣の祝に取附き人形を返して吳れとせがンだ。(たる暖室に草樹を培養する也)あなたすみれかれけふこのきんじよ土Aか『どうしても貴孃は菫艸にちがひない』と果は云つた。「今日も比近所へ來ると皇卿の香がラウッとしちすみれむにるころ63としたかすかをひんた。それが暖室の菫〓の蒸せる樣なンでなく、トント春の頃、雪の解ける下から微かに蕭る樣に品よねんにほひく何とも云へぬ香が····』しうくわくと,なみたおねおしづなにひたづ『收獲の樣子は如何でした?と自分は波立つ胸を押し靜めて何氣なく訊ねた。ごくかうけつくわしやうぢきものエかせしうくわくかくべつおほ『極好結果です。みんな正直者で能く稼ぐから收獲も格別多い。』あなたまへおもほんとうあせ『さうです子。貴君がゐらツしやる前にあたしもつくくゝさう思ひましたク、本統にあアやつて汗しなが、かいひとおもかきくらはづづくを流して稼ぐ人があるかと思ふと、斯うして氣樂にぼンやり幕してゐるのが耻かしくツて乎あなたたもひやくしやうくしんほんどう『そンなもツともらしい事をいふもシぢやアない。どうして貴建達に百姓の苦字が本統に知れるもさくらとこンですか····それはさうと櫻は何處にあろ。』むろとしまにはをとここのへんひとりみかなと暖害は戶が閉ツてゐて、庭男が此邊に一人も見えぬから、ソオニヤは鍵を取りに行ツた。まかしまちかへいこやねあみのたセルギイ、ミハイスヨウサチは得雜や切断麺屋屋根の網と呼けて下にくゝツたさくらんぼうはさらた『櫻實が欲しけりやア皿をお出し、』とセルギイは云ツた。そのあとおソオニヤは其跡を追ツまかしcぶんすかぎとつ9わか『いゝえ、あたしは自分でつまむのが好きなノ。どれ鍵を取て來ませう····ソオニヤには分るまいかじぶんこたら』と自分は答へた。〓.ぶんひと3ようすすきみつまさきだむろジャかかいはないんやりがふのと間の必ず落いしたくなんだので、そもがはゆつみかさありだばらうへのうまくろa ppなふしこぶくわぼくみちふ側に行き、積重ねし空俵の上に乘ツて、旨さうな黑い實の重さうに生つてゐる節痛だちし乗木で充わたいへのぞこめとばうとつこぼくきたヒぶん渡ツた家を覗き込むと、セルギイ、ミハイエロウ非チは眼を閉ち順を取て古木に俗れてゐた。自分はすでかぎといはやむろそとのこひとりぶかたへくひぜこしかゆび既に製りに行き最早駿密の外に残る者は」へもないと且ツたらし、傍の切株に腰を掛け、指のあひたご"ころとつぜんかかゆすめひらぴせうともいちごもち間に護謨を轉がしてゐたが、突然肩を搖ぶり眼を開き微笑と其に一語を洩した。じつたひじやうcぶんおちろくシ.かんてよてききよどうぎんき此一語は非常に自分を驚かし、深く此間解的の薬助に〓視した-といふは何でも『タシヤー』とわりvいふ樣に響いたらしかツたからで。じあんなはとたんまへいつそうものやはらくりかへかあい『さうぢやアない、』と自分は思案し直したが、其途端に渠は前よりは一層物軟かに繰返した。『可愛いカシヤ!』まさてとことばきこじぶんじやうきとうきにはかはげバれ正しく手に取る樣に此言葉は聞えたので、自分はクワツと上氣し動氣遽に劇しくなつて、思はず下ンつに落つまじと壁にしがみ附いた。BEきつcふんみあひたんぜんていめめみあはが、此時セルキイは初めて氣が附き、自分をふツと見上て報然とした躰で、眼と眼を互に見合せてかぎとつ9わかどれ鍵を取て來ませう····ソオニヤには分るまいか』ととたんまへいつそうものやはらくりかへかあい其途端に渠は前よりは一層物軟かに繰返した。『可愛いじぶんじやうきとうきにはかはげ自分はクワツと上氣し動氣遽に劇しくなつて、バれ思はず下cふんみあひたんぜんてい自分をふツと見上て報然とした躰で、めめみあは眼と眼を互に見合せて三三十一
うれにつこりわらまんめんきしよくみなぎじぶん之がほからさうはう嬉しさに莞爾笑ふと、セルギイ、ミハ〓ユロウ井チも浦田に食色を醸らして自分の笑顔を迎へ、相方ともしばきんぜんおもヽちはやたしんせつらうはくふ共に暫らく忻然たる而持であツたで、セルキイ、ミハイエロウ井チは最早唯死深切なる老伯父でなく、Cぶんあいぼゐけいひとじぶんユいよ〓〓あいぼゐけいかたむき自分を愛慕し且つ畏敬する人らしくなツて、自分も亦た意々セルギイを愛慕し且つ長敬する傾向を持ツた。いちごかはやがニc y,くちびるうかびせうりやうがんうらヽいろ一二分間は一語も交さずにゐたが、頓て渠は眞面目になツて、唇に浮べし〓笑も雨眼の麗かな色gうなにわるcorひ.さとむおさつやうきちらも消え失せ、トント何か惡い事でもしたのる漸く其非を悟つて、無理に抑へ付けやうとする樣に、兄だいれいしんcぶんむかお〓けがだいかみ、なで弟の如き冷心をもて自分に向ひ、『お下りなさい、下りないと怪我をします。第一髪を梳つけませんなふうか、何ンて云ふ風です。』ぶんかんじやうえなぜわざニ0せいりよくすると自分の感情は减じて、『何故態とあンな事を云ふンだらう、』と思ツたが、どれほど自分の勢力ためきがあるかを試す氣になツて、さくらんぼうつまPBBてぢかえだかけむろうち¥2,『あたしは櫻實を摘みたいノ』、と云ふと同時に手近の技に手を掛てヒラリ陸軍の中に飛込み、セル三、つゝたギイ、ミハイユロウ井チの前に突立ツた。ばかじつさいじぶんとびととびこすこぶふくわいこヽち『馬鹿な事をする、』とセルギイは云ツた。實際自分も飛込みは飛込ンだが頗る不快な心地がした。けがこいうで3『怪我をしやアしないか』』と象は言惡を未い君『如何して由る殖せいりよくどれほど自分の勢力セルまへいつそうめいわくようすヒぶんwしきしんちうすこふやすなきまわる渠は前よりは一層迷惑した容子で、自分も其氣色を見て心中頗る安からず、何んだか極り惡くなツかほあかいすべし504つまみgぶつかづさいひそかて、顏赤らめて言ふべき術も知らずに、木實を摘んで見たが器物を携へざれは入れるものもなく竊こうくわいぶんしかむかんがへきよどうさげすみきたに後悔して自分で自分を叱りつけたが、或は此無考の舉動がセルギイミハイヱロウ井チの賤視を來しんぱいとも〓〓たうわくいろあらざんじもくねんかほみあはうちじはせぬかと心配し、共々に當惑の色を表はし、暫時は獸然として顏見合せてゐた。その內ソオニヤかぎじさんもちとるcぶんどもしやくはうふたりともたがひことばかはたマが鍵を持參して暖密の戶を開けて自分共を釋放して吳れた。が、二人共互に言葉を交さず唯ソオニヤじかつはなに向てのみ話しかけた。じぶんもとゅはたcぶんすゐさつとほじゆくすゐよし〓自分はマカアの許へ行くと、マカアは果して自分が推來通り熟睡してあらぬ由を類りに辨じてゐじ.ぶんやうやいきつちゝおやてうしたいとふくな自分は漸くほツと息を吐き、セルギイ、ミハイエロウ井チも再び父親の如き調子と健度に復ししかすうふんじニ、ことばみcぶんSatたらたまをとこたいたクた數分時稍の言悪を立にすし月は中々其調度と其藤度れれるで、マカアが男がラヴはつごんをんなとかく3たしなみ『繼』を發言すべき者で女は兎角に謹むが嗜であると云ふと、べんめいをとこラヴCぶん『左うでない、』とセルギイは辨明した。『どうしても男が戀してゐる事を自分で云へぬ時、又は云ふまむゐぶんじき時は隨分あるもんだ。』〓セはんもん『何故です、』と自分は反問した。をとこひとだれxㄷめあな「ひよろと男がそしますでも云はうもんならんな話でもおかしく血眞面目くさツて「貴又は云ふまxㄷめあな眞面目くさツて「貴其三
c C孃に惚れました」と云ふ男は自分で自分を欺くばかりか、他人までも欺く輩だ。』あなた『それぢやア貴所、のの方向とも印しやたなけりやア女には慘れられてゐるンだか知可しませんワ、』とマカアは云ツた。上『そンな事は知らん。走かし惜といふ物があれば口一出さないでも分るもんだ。私は小說を讀ンだ時ごえ思ッだチーストレツツキイがエレイラフに向て「私は眞痛を受しまと云ツた時の馬鹿さ加減とお云ツたら實に無い。何もどうの斯うのといふ認もないが一段人間の格を禁ず樣なする。ニアルルイ必心中の感情を包み和さうといに支子はわり〓〓自自マカアは非常に驚歎したたしく『本数に偏屈な事を仰しもやよ』を陰なるまでで『ガガ貴所は本統に女の方みに向て戀してゐると仰しやつた事がありませんか。』こ、도"の論無いのサー私はなの前に腹を折てそん定地勿去平云つつ眞眞又云はうとした事すなら無い子、』と元氣よく答へた。〃cみ『云はないだツて好いヲと、』と勝密の事を膽由して目分は心中に改いる。云はないだってれたしに機してゐるのは分ツてる····いくらごまかさうたって無益だる。其晩セルキイ、ミハイエロウ井チは自と少しも言葉を交へなかッたが、其言葉の末に、又其起居又云はうとした事す其言葉の末に、又其起居B yおの端に、又其瞥見の間に渠の愛念を認める事が出來る。唯自分の疑念を起さしめたは、ト度其意中こと〓〓〃が口頭に發すれば萬事悉く良果を結ぶ事嫌然として次を見るよりも明らかなる此時機に屬し何故じErに渠は差更に恕量の情を私しなりに冷漠を辨ふに勤むるにや。是ばかりは自分が大にかしく思ッたち點である。其つ面よおおとこにになんとを隠然シト分分ははにして或は渠れセルギイミハイエロウ井チの慣浮を買ひしにあらざるかと懸念した。茶が濟んでから「ピヤノの室の方に行くとセルギイ、ミハイエロウ井チは自方の跡に從いて來て、〓『何かお彈きナ、カシヤ。此間聞いてから大分久しくなる。』cと渠の顔を見て、『貴所、『ねエ、貴所』と自分はじツ怒ツてゐらツしやるノ?』『何故?』g『何故ツて、今日は其所の云メ市を言きまぜんかっためる。て願みらめなだら云漸く渠は合點せし躰で首を振て莞爾笑ツた。が、其笑の中に一度は自分を叱らうとしただ今は既に過去りし事であるといふ意が含まれてゐるを悟つて、모「それでは再之伸を巻くしませうへ」「シ「ヤヤノ」」の席に至し『左うた、仲よくしやうよ、』と渠は云つた。三
だいらふそくいちだうひかりほなてんじやうたかさしきてらわづかしうゐかゞやしん「ビヤ」ノの意の蠟燭は一道の光を放つて此天井高の產取を照し、僅に其周圍を輝かすのみで、四邊まうろうほのぐらなつすゞかぜまどかよやじやうげgりつかなあしおと朦朧として仄暗く、夏の凉風はソヨ〓〓と窻に通ひ、部屋を上下するマカアの規律に協つた足音と、しゆじんまちかつちけうまひつめおとほかばんらいしげきせき主人セルキイ、ミハイニック井チを得兼思主を酸る湯の跡の合の外萬籍死せるが如く間寂としてゐる。cぶんうしろざしそのすがたたしかてうしみちセルギイ、ミハイエロウ井チは自分の背後に坐を占めて其妻は見えぬが、慥に「ビヤノ」の調子で充わたあんたんなかもくざなんしききよどうンられき〓〓こゝろまざこ渡る此晴渡たる中に歟座せるを認識して、其要助から其面持まで歴をとして心に刻み込まれし樣であだんじつかんがこゝろる。で、モザルトの『フハンタシヤ、ソナタ』を彈じてゐたが、實はセルキイのことばかり考へて心はまつたおんがくはなたたいぶんただんすこぶまんぞくしんなん全く音樂を離れてゐる。そして慥に自分は巧みに彈じて頗る渠を滯足とした事と信じ、何でもセルギじぶんだんぎんめうかんいつしんじぶんみつこゝろ1、ミハイエロウ井チは自分の彈琴の妙なるに感じ、一心に自分を凝視めてゐる様に思はれ、心にもおしいたゆび上ふりむまとぎはたひたひてろcふんなくうツかりと壓板に指を觸れたまゝ顧明くと、セルギイは寛側に立ち前預に手を営てゝじツと自分みっめめぶつかたがひびせうじぶんことてうちえあごがくきaを凝視め、目と目が衝突ツて互に微笑し、自分は琴の手を休めると、渠は打笑みながら順で樂器を指じぶんやかしやくていじぶんふたヽたんはじあたかつきちうてんのぼまだして自分が休めたのを呵責するが如き躰で、自分は再び彈じ而めると恰も此時月は中天に上りて愛にこぎんしよくひかりやいつぱいみなぎさし込み、銀色の光を部屋一杯に漲らした。はとヒぶんなまだんしかあなマカアは此時步を留めて自分が意けながら彈ずるを叱り、セルギイ、ミハイユロウ井チも同じく自あなミハイユロウ井チも同じく自セルギイ、ぶんだんきんすこぶこうめうよしつきこs一ベうんどうはじ分の彈琴は頗る巧妙ならぬ由を云て、此月のさし込む部屋から暗き部屋へと運動し初めた。cぶんなんうれわけxかくびつのどせつぶん走かし自分は何だか嬉しくて仔細もなく可笑しくなり、マカアの首にかぢり附いて其の咽喉に接吻くすユヒめし、セルキイが來ると直ぐ眞面目にすましてゐた。ちやうほんとうけふとうむかつ「ごううえんな本能に自ら外知かししてあらどしてるよ、モアルイが、渠はへんじたヽじぶんいちべつわら返事もせず唯自分を一瞥して笑つてゐた。5つきよじつエかくべつかうてんきおほぞらはれわたいつてんミけつくわう『好い月夜だ子、』と渠は云ツた。實に此夜は格別の好天氣で、大空は晴渡ツて一點の雲もなく、月光およかぎこうゑんりつざうものみだいくろかげのこたいちめんまんしろがねなみたゞよごと及ぶ限りは公園の立像も物見の蛋も黑き蔭を愛して、他は一面に浸々たる白銀の波を漂はすが如くとほきうりようしんりんまうシャあかみぎてはくやうじゆびようじやうくうさいと遠き丘陵森林は朦々たる觀に包まれ、近く有手の白楊樹は黴皿に乘じて今や空際に飛ばんとするが如cぶんもくせんかうふうちうごしりさんぼしゆちやうまたどういぶんうはぐつすく、自分は此目前の好風致に動かされて囲りに散步を主張しマカアも亦同意して自分に上靴を薦めcぶんcぶんうでかゆめつゆぬおしむいつロンたが、自分はセルギイ、ミハイエロウ非チが自分に腕を貸す故、露に濕れる憂はないと云て冷やかにきよぜつ拒絕した。しかじぶんうでかcぶんはうもリてとつもろども然るにセルギイは自分に腕を貸さぬから、自分の方から無理にその手を執て、斯くして三人諸共につゆふでか露を踏みしだきて出掛けた。しうゐぶつしやうこと〓〓きよすてんちすみわたぶかぜちりきた: Bなに我が周圍の物象は悉く〓く涼やかに、天地は澄渡ツてソヨ吹く風あれども塵來らず、艸も木も何もが、渠はcぶんはうもリてとつ自分の方から無理にその手を執て、もろども斯くして三人諸共にてんちすみわたぶかぜちりきた天地は澄渡ツてソヨ吹く風あれども塵來らず、: Bなに艸も木も何も
C彼も爽然として自ら形骸を忘れたる心地して衛径する中、月は愈々〓えて自分はそツとセルギイを覗くと平生より一層氣高く君やいで龍やかに見え、恍惚としてじツと見る途端に、『えツ····蛙が-』と號ぶ者があツた。是はマカアの聲で、マカアは平日より蛙嫌ひであるが、ふツと足元を見ると、ゆツたりとした蟇が蹲踞まツて小さい蔭を地上に印した。『恐がる事アない、』と洹は云ッた。自分は思はず渠の顏を見上げた。渠は再び『恐がる事アない』と云ツた。日、Eミ、如何云ふもンだか自分には『士前は可愛い』と云ふ樣に聞え、如何聞直しても『お前は可愛い-可愛い』といふ樣に聞えた。カ、暫らく散步して頓てマカアの言葉に從て家に戾ツたが、セルギイ、ミハイエロウ井チは猶ほ歸らずしゆ〓〓ざつたに座敷で對座して種々雜多な浮世咄をしてゐる中、時計は午前三時を報じ一番鶏は三度鳴いた。さ終にセルギイ、ハイベトウサはは眼之をして例の箱と言重寡なであらたが、自分はミハイヱロウ井チを掌中に握ツた心地がしたばかりか、自分も何だがセルギイ、イエロウ井チをc幕はしく思ツたから、其一部始終を悉しくヤカアに〓げると、マカアも頗る滿足の容子で、自分と共ふツと足元を見ると、ゆツたりとした蟇がいろ〓〓に觀臺で色々の談合をした、行末の事など語らひ、又た今しも三人で散步した同じ道を再たび尙伴しだて、此の日に起りし一事一物を追臆し、セルギイ、ミハイエロウ非チの言葉を線返へして樂しんでゐた。其夜は到頭寐床に入らず、生れて初めての日出を拜み拂曉の景色を眺めたが、自分には何事も面白くなく、唯胸一抔に充ち渡ツた疑問は何故セルギノ、ハイエロウ井チが公然目分を愛すると云はぬ" inとぎりに寒じれひて『『故故セラな匠難しし-ふふンだらう』』と『折角好い機會があるのに何故口へ出さないンだらう?男が女を愛するツたツて好ささうなものだ。若しあの人があたしの手を取て、唯ツた一と言あたしを愛するとさへ云て吳れたら、それこそあたしは根こそぎ胸にありたけ打明けて仕舞ふが、さもなけりやァあの人の腕にかぢり附いて何にも云ないで授いてしるうけれど···しかしそは見らものふとなれたんひよッとしたさう〓〓らあたしの想像が間違ッてゐるのかも知れない。セルギイ、ミハイエロウ井チはあたしに懇してゐないのかしらん?』と思ふと變な心持になつて、何だかうら悲しくなつて淚に暮れた。が、暖害に飛込ンだ時の事を考ムへると慥にセルギイ、ミハイユロウ井ヲは自分を愛してゐるに相違なく思はれ、まだ〓〓充分に望が又た今しも三人で散步した同じ道を再たび尙伴しミハイエロウ非チの言葉を線返へして樂しんでゐ三
p自分は跪きて神に祈請し、ある如く考へられて、さうと决心した。一層セルギイ、ミハイエロウ井チの爲め實義を表は其四間ももなく『アツサムプシヨン』(道の察日が初まり、自分の誕生日は比通の終りの口であるから、8C例の通り『サクラメント』の式を擧げんと其準備に掛ツた。セルギイ、ミハイニロウ井子は到頭此週間は見えなかツたが、自分は更に物憂しとも思はず、唯自〓.ぷ分の誕生日にさへ來て吳れゝば足れりと思ひ、其週間は毎日告天子と共に早く起き、唯一人で庭を散四ご.步し、他ろうと日見が近せ、福流郎を艦むして大泣い蕩事や事するとしてた、被を發すして見付けての監理を兼ふカメン其共に指摘を人號社三章心に祈念を凝しががら隨意消仰して誓然したる石階を參ツた。a〓何時でも今頃は十二三人の勞働者或は農夫のゐるが當で、自分は一々の挨拶に叮噂に會釋して堂守20から御像の前へ置くお蠟を買ツた。こ5し日聖壇の口を覗いて見ると、亡母が刺繍をした打敷があツて、神聖なる帳の上には星辰を羅織せる衣を纏へる二神使ありて、我が子供の眼には頗る大きやかに見え、又其上には黄金の光を放てる鳩ありて、我が稱なき心には感歎更敬の念一と通りにあらず。
四十二さうがくじよおつうしろじぶんかつせんれいさづぜんしんぱんらうけうしゆじぶんた、かけおくた秀樂處の格子の背後に自分が曾て說隨を授けられた次晝盡があつて老〓主は自分の父の棺衣で裁ストールかじゆせんときなきちヽはさうしき。き、へいはんてうときやうはじつた頸巾(類なり)を掛け、ソオニヤが受の時亡父母が葬式の時から聞なれた平板調の讀を初めると、つゞさうがくじよけんゆんがつしようこれたびくわいだうでゐらうばかべせいざう安人續いて樂奏所の噴然たる合唱と、長まで成々會處で山會ツた老築-いつでも壁の畫像を派にうるむめみがつしやうれいはいつねるやうCan gたうらうばbBこゑ吸るで見上げ八章しと噓れ改く樣に自述安可證體の當れたを聞い。いづみこと〓〓じぶんみなとくめづこのひとうわイ何れを見ても悉く自分の見馴れたもので、特に珍らかなものもないが、此日は如何した譯だか總てめあたものめづが目新らしく物珍らしげに見えた。cぶんけんしんこゝろこのきたううちくほいつしんくわこざいがふさBせい自分は献身の心をもて此祈禱の中に加はり、一心に我が過去の罪から救はれん事を祈請し、そいすわなさま〓〓くわしつくりかへしんないあはとうちせすちどうふるおころに過ぎつる日に我が爲せし樣々の過失を繰返すと、身内に粟を生ずる如く背筋から胴震ひが起り、くわこたゞざいあくくろまく、、お過去は唯罪惡の黑幕に包まれしかと思はれた。かみひ모ちんサベことあらひさみばんらいやてんちちやうぜんじんきくわつ之かし神の御前に懺悔して總ての事が洗去られて見ると、萬籟畑んで天地澄然たるが如く神氣活々ざいがふいつそうふかこれともあかあらみこヽろいよせい〓おもねんきせよとして、七郡業於一層漂ければ之と我た垢を深ひしむの心は金今浦ふすべと餘念なく祈請こらひたすらかみすくひねがけうしゆからみめぐみなんなteいきやうりカルトを凝して只管神の救を願ひ、〓主が『神の御恵は爾と共にあるべし』と云ふを聞くと、胸裡に蟠まりくわいぶつあさひむかゆきごときえうくわうみやうおんじやうじゆうなんし『苦』の塊物は旭日に向ふ雪の如く消失せて光明と温情をもて充滿して來た。このぎしきすけうしゆぶんそばきたよねれいはいぶんこきたあたよしのぶんいんもん此儀式が濟んで〓主は自分の傍に來り、夜の禮拜には自分の家に來り能はぬ由を述べ、自分は感〓ぶんいんもん自分は感〓あいさつCぶんみづからけうくわいさんかうむねこたに換拶して自分自身が〓會に參向する旨を答へた。いでくだたづ『それではお入來下さいますか、』と渠は訊ねた。じぶんへんじいしあるひけいそつこたれいかおも自分はどう返事をして可いかを知らなかつたは、或は輕率に答へて禮を缺きはせぬかと思つたからである。かこいつしよときごとビしやのわざ〓〓ごろぶかみちかちいへもど助して此のはいいちゃんとこれになくのお世にあがり洗い處た。あばんわいへしつじのうふしむすめくわんつくいたもら9はなカルト或る晩、必殺案の業形意実のサイマンが死んた如の性名を〓〓〓に〓だとタダヽびんぱふ聞して、『そんなに貧乏なものか子、』と聞くと、『麵包につける鹽がないです、』(メーカル·ウィル·コンポントばんと4くらいこたと答へた。ぶんこのはなしなんふくわいねんおこどうじかんがへしやうきうおもひた自分は此咄を聞いて何となく不快の念を起したが、仝時にふつと考慮が生じて急に思立ち、マカア〇九五らいひこしらにかいわやいすこしろcぶんこづかひせんかきあつには散步に行くと言拵へて、二階の我が部屋に行き、寡少ではあるが有るほどの自分の小遣錢を播集にはぐちちかむらはしいこゅそつひとしいつまどわくうかねおもてめ、庭口から近き村へと走り、サイモンの家に行き、竊と人知れぬ樣に窓椎の上に金子を置いて夜のとた、だれこゑほとざいにんごとあしよるにげた戶を叩き、『誰だエ?』といふ聲を聞いて殆んと罪人の如くこつそりとヌキ足で慄へながら逃出した。いつか、じぶんガニいづゅまたなにごとたづぶんなに家に歸ると、マカアは自分に向つて何れに行きしや、又何事がありしやと訊ねたが、自分は何を聞四十三
わかへんじわ( Rひきこもなにはうがうかんがおほつかくか分らず、返事もしないで我が部屋に引籠り、何をするといふ方角もなく、考へる事すら覺束なきやうこヽちやうちうんどういつかgゑつしんちうゑがさだこのいんとくしやおかつ樣な心地がして、部屋の内を運動しながらサイモン一家の實悅を心中に描き、定めし此隱德者に向つかんしやかんが6またぶんあしまこのじぜんしロラて感謝しつこあらんと考へ、若し又セルギイ、ミハイユロウ非チが自分の行つた此慈善の始末を聞いなんおもいろくりかへひそぐうぜんたにんおんけいほどこじぶんしたいよろこたら何と思ふだらうかと色々に繰返して、竊かに倒然ながら他人に恩惡を施せし目分の所置を碧び、うれみまひとわらあるひなつひひざまづかみいのなぜわかてんじやうてんがないものみなかごの嬉しさの餘りに獨り笑ひ或は泣き、終には跪いて神に祈り、何故だか分らぬが天上天下何物も皆可愛われひともろともふレgいとほらしく我も他も諸共に不思議なほど最愛しくなつた。そのひしばあひだせいしよじゆくどくよよいよ〓〓かみみちもつとあんしんりつめいうちかやう其日は普らくの問聖書を熟讀し、頗らば鼠なほど急々御の道が最も次心立命を得るに近き樣に思はわれらいせいますゑんまんかうふくDばうゑがげんざいきやうぐうおもひかへみれ、我々の來世はイエスと紙て益々圓滿季絕なるへしとの希望を描き、さて現在の境遇に思返して見なすたこと〓〓れうぜんしやうろよわたたあいまたた愛せらるゝより以外に人間が爲すあいはんげんると總てのものは悉く瞭然として、正路に世を渡り他を愛し又他にことじつさいこれふくじゆうじゆんはふそくジかんがばんふつみないとほべき事とてはなく、實際昼ほ服從せざるべからざる自然の注則であると思つて妻(ると萬物皆最愛からじぶんじしんたいかくぶつことく〓ぜんりやうしんじつわらあひみカノこヽちこれしく思ふ自分自身に對する各物は悉く善良親實で、笑つて相見ざるものなき樣な心地がして、是までちがねつしんせいをしこのころおとなべんきやうもちろんたひとぶんそのひとと違つて熱心誠意をもて〓ふると、ソオニヤすら此頃は温和しく勉强する。勿論他の人は自分が其人もてなおなじぶんおかじつぎハやう々を歎待すと同じく自分に向つて實義を盡す樣になつた。またかつじぶんけいかひとおもひだいちそのひと〓〓わびわこゝろやすおもはからぞ又骨て自分が敬意を缺きし人々を臆出し、一々其人々に謝言をして我が心を休めばやと思ひ、不計はからぞ不計かぶなきんじよらつじんそのほういうめんぜんからかそのひとつひいかcぶんかうさいたちうか考へると、直き近所の一婦人を其明友の面前で調戯ひ、其人終に怒りて自分と交際を絕し事が浮び、Cぶんよしこといなさらこうくわいていねいはんぷく스ぶんくわしつちんしやてかみおくその自分ながら由なき事をしてけりと今更後悔し、叮噂反覆して自分の過失を陳謝せし手紙を送ると、其ふじんりつぶくていかへつ5しん七こつせさらじぶんとがいんぎん: (んじa cぶん婦人は立腹の躰もなく、却て自身の味忽を責め正に自分を含めぬ嚴懲を極めたる携事を爲し自分はうれたまかねそのてがみおらなきくづこのどきほじかつたにん婦しさに堪り兼て其手紙を顏に當てヽ泣頽れ、此時初めてセルギイ、ミハイエロウ井チが曾て他人のせいぞんしだいかうふく...ことばあれうかいはやかうさいしやくわいまんいうりよかうゆめため爲に生存するが人間の至大なる幸福だと云ひし言葉の眞味を了解し、最早交際社會や漫遊旅行を夢みことむしfrよくあいねん(らうかうふくとうじゆうまんりつりよたえじゆんかうてんだうたのゐなかgらくる事はなく、無私無慾、愛念、平和、幸福等で充滿し、律呂妙に循行する天道を樂しむ田舎の氣樂なわびすまゐこのる詫住居が好ましくなつた。じぶんたんじやうびしんせいしきあかねけいくわくそのひいちはやくわいだうまう自分の誕生日には勵聖なる「サクラツン」にの式を擧げむと豫てよ其日は逸早く會堂に詣かへ上とみかばしやにぶんしゆくで、歸るさに不斗セルギイ、ミハイエロウ井チを見掛けて馬車から下りると、渠は先づ自分を祝していつしよいへと一〓に家に戾ツた。そのひめんぜんすこきゆうくつおもひわこゝろぶつぐわいてうぜんおほそらすつき其日は渠の而前にあツても、少しも窮屈なる思はなく、我が心は物外に超然として大空に澄める月カ,ぶんかわようずみじぶん自社の樣であツて、セルギイミハイエロウ井チも自分の變ツた容子に氣が附いたと見え、自分を極めてしんせつこていねいいだじぶんふたゐこのふたとちやうおろ深切に極めて町噂に介抱り、自分が「ビヤノ」の蓋を開けやうとすると、渠は此蓋を閉ぢ錠を下して、けふひあなたこヽろはうはるてうしとヽのい今日はお薄きさささを「『ヤマン」より甘婦の心の少女兔かを圖子と云ツ。た0そのひいちはやくわいだうまう其日は逸早く會堂に詣にぶんしゆく渠は先づ自分を祝して四
g c此言葉を聞いて自分は頗る嬉しく思ツた。が、同時に又當感したは斯く脆くも自分の心を見遂かさるゝ事で-自分の心の此年和を得だは元より深く移めし事である。食事の間にセルギイ、ハルヘモロウ井テは今日訪問したは唯自分の誕生日を觀するばかりB翌日モスコオへ向け山立する故其離別に來たのであると云ツた。b fr渠はマカアに向て荐りに話してゐたが、其眼は恰も當感の色の浮ぶを讀まんとする如く自分化向けられた。老かし自分は駭きもせず、當惑もせず、勿論其不在の日限を聞く事すらしなかツたは、豫てcaseよりセルギイが早晩此言葉を吐くにちがひなく、縱令一ば斯る言葉を吐いた處で决して此地を去る事とが出來ぬを知り扱いたからである、如何云ふ譯だか自分にも一向分らぬが、兎に角是からセルギイと自分との間に起るべき一切の事を前知して、過去より未來に貫徹する一種の夢を結んでゐた。セルギイ、ミハイエロウ井子は食後直ちに歸らうとしたが、マカアが其席を去ツたので告別の機會を失ひ、自分と共に庭に出て例の觀臺に行ツた。六七六百〃二人は座を占むるや否、自分は忽ち二人が愛禮の運命を决定せんを話し初めた。如何して自分は此ぶ沈着と此目重を養ひ得たものか更に分らぬが、恰で他人が自分の聲で咄してゐる樣に思はれた。たヨセルギイミハイニロウ井イは自分と對座し、欄干に凭れて手に持てる連翅の小枝の葉を摘ンでゐㄷあたび〓〓きたで、自分が咄し初めると、其校む然し手を前額に當てゝ處々氣を休めんとする如き味であつた「尙故意所はスズスス行行ダレヤモラー」」と長さを立献を見女が2「月があるかなる。箇向きながたなる心にななま應候ないを多いざ立たん『だツて貴所、』と自分は云ツた。『今日はあたしの爲には大事な日ですよ。あたしは何にも秘しやァしない-あたしは貴所を大變に愛してるンですよ、ですからどうしても貴所が傍にゐて下さらなけりu 800名やアいけないノ。何故行つておしまひなさるンだが、其仔細を云て下さい、是非云て下さい。』なか〓〓そのわ『中々其仔細は云ふ事は出來ぬ、』と渠は答へた。『此一週間といふものは、貴孃の事から自分の事を色〓〓かんが々考へて見たが、斷然モスコオへ行く事に决心しました。何だツてそンなに聞きたがります、私の心ハを充分察したら其上深く聞いて下さるな。』なか〓〓つらと云て罕は趙額を子で墜でふる眠を恐ふて『私は中々憂ひ望をしてお察しなさい。』このことば此言葉を聞くと自分の動悸は激しく打ち初めた。『いゝえ、あたしには少しも分らないワ。さア何卒云て下さいまし····あたしは是罪何ひたうございます。』〓二九十類は落附かね躰で自己の位置を變じ再び連理の小枝を持つた。お察しなさい。』其四
かれへいじやうてうしえしばのちしんじつうちあことでv「ビルヒシテ庭平衡のへくくンの子字を」として、童集計射等等等じついひかてかねあが、實は····』と言掛けて手を顏に當てた。『はア。』かん好ごちうこ、エじんさんなつくらうじんかりこれかふうわよまたかりをつむやう『まア考へて御覽じろ、爰に世の辛酸を甞め盡した老人があツて、假に之を甲氏と呼び、又假に乙孃よめうれいムじんこのふじんとしユわかよのなかことすこしものところかぞくと呼ぶ妙齡の婦人があツたとして、此婦人は年も尙た若し、社會の事を少しも知らン者だ。處が家族じやうくわんけいこのににんはがいつしよ"はじこのかふうぢパつと,かんがへCぶんぎょう上の關係から此二人が計らず一緒に暮した。初めは此甲氏は別に如何といふ考慮るなく自分の娘ごとにはあいの如く思ツて愛してゐました。』こ、かれしばとcぶんさらひことなさやがかれくちばやはつきりてうしところ爰で渠は暫らく默し、自分は更に一と言も挿まずにゐると、頓て渠は口早に判然した調子で、『處がこのかふうぢおつぢやうとしわかしやくわいたゞなぐごとなることわすヒぶんあいぼじやう印氏はノ奴が年者で社會を唯胤きみの如く思ツてるる事を忘れてふツと自分が愛慕の情をもやこときっせんりつついこのあいぼじやううすわかけつしんいつふた焰した事に氣が附き、戰栗して、終に此受輩の情が薄らぐまで分れやうと決心しました。』と云て再80. Sめかく其手を以て眼を蔽した。なあいぼじやうおここそじぶんへいそとほすこかはこたつもり『何故愛慕の情を起したからつて恐れるんでせう?』と自分は平素の通り少しも變らずに答へた所存たーかこのごいんうちよはひゞきさうゐだが、儂に此五旨の中に弱い礬があつたに相違なかツた。かれふたゝよぎ渠は再び餘義なさゝうに、あなたとしsわしとしとつあなためじんせいなぐさみわしきはさんB々ほ『貴孃は年が行かぬ、私は年を老てゐる。貴孃の眼には人生は遊戯である、私には極めて眞擊な野暮わしいつしよすこぶニとくさくことたじつあなたきつちがものだ。がな私の探査をと、地をなははなる不得知事本品は知ら君難なかくかふうむおつちやうこたしことそこれわしあなたわかゆうわか和長は個に答えたか気れないぜてるので、そんな意義君の若能力とりわかけついつ.くだましたらう、分ツたならもう决して云て下さるな。』すこちつわかセイストこゑ。ㄷぶんこたほん『いえ〓〓るよし如してななりでみりませんな。」秘秘監禁のらじるから分外とうあなたいくだそのひとそのをんなあい統に其所云つて下さいな--人人は其女を愛してゐるんでせうか、ゐないンでせうかへんじセルギイ、ミハイエロウ井チは返事をしなかッた。そのひとまつたそのをんなあいなんまるこどもやうそのをんなあその『若し其人が全く其女を愛してゐませんのなら、何だッて九で子供の樣に其女を遊び物にするンでせう?まつまかふうちわかれこたかふうちをはいさぎほういうわか『全く甲氏が惡るかツたンです、』と右)は答へた『ゑかし甲氏は終りを激よくして朋友となッて別れました。』ことほかと〃ふうじぶんおちろうこゑ〓ん『ひどい事をするの子。他に如何とか工風がありさうなもンでした子。』自分でも驚くほど聲を變じて云ツた。あこたい『それは有りましたらうとも、』とセルギイ、ミハイエロウ井チは答へた。『是れツきり云ひませんかほかと〃ふう他に如何とか工風がありさうなもンでした子。』じぶんおちろうこゑ〓ん自分でも驚くほど聲を變じこたいミハイエロウ井チは答へた。『是れツきり云ひませんか四
ら、能ウくお聞きなさいよ。甲氏は心から愛すると云ふ事を乙嬢に咄すと、乙孃は笑つて該龍だとしつ6てしまツた。そこで甲氏は狂氣する、乙雄の爲に飮〓と見えるものは甲氏の爲には辛い浮世でしたよ。」cヒ.自分は此時堪りかねて、戰栗して辨解しやうとするとセルギイ、ミハイヱロウ井チは遮ぎり留めて、はなしたフェス後をクにしてあて四をず、恐るムの電は解離に於劇し未成のどiさうです。處が乙孃は人生の事を何も知らぬから、そこで自分の起した不愍の情を以て愛想だと誤解して、終に結婚して見ると-此甲氏、元來馬鹿な男で、結婚さへすれば女も男も花咲く春に逃ふ事〓と豫想したのが大變に間違つて、諸共に一時の迷であツたさうだ。去かしモウこンな咄は止めにしやう、』と言葉を結んで暴らかに步き初めた。こ〓2渠が最後の言葉は『こンな咄は止めにしやう』といふのであるが、勿論自分の言葉を待ちつゝあるれきぜん」cは歷然たる事で、自分は一と言云はうと思ツたが、さて何と云出して可いものやら思案が附かず、そツと渠を見ると顏色は靑くなつて唇は震へてゐる。自分は一生懸命に震へる聲を漸く染り、一期の大事と思つて屹となり。『それから単発其人は其女をヒ.ミハイヱロウ井チは遮ぎり留め戰栗して辨解しやうとするとセルギイ、.お愛さないンで、其女を悲しい日に過はして置いて自分は好い氣になツてるレでせう其人は自分の意店地を通して立派でございませうが、其女は可哀相おやアありませんが-貴所も行て心しまひなさるなか〓〓へいきなら御勝手になさいまし、貴所は何のとお思ひでせうが、あたしは中々平氣ではゐられません。あた200しは貴所を愛してゐます、とうから貴所を愛しく思ひました-はい、貴所を愛してゐます、』と自分すら驚くはど聲を振染ツてもつばりと云ひ退けた。だん〓〓セルギイ、ミハイヱロウ井チは自分の前に突立ち、靑白い顔でじツと自分を凝視てゐたが、段々は、唇が震へ出し、暫らくすると大粒の涙が頰に傳はツた。『貴所は痛い方だ、』と自分は淚に咽んで聲を枯し、殆んど絕入るかと怪まるゝほど夢中になつて席を起たんとすると、セルギイ、ミハイエロウ井チは突然跪いて、震へる自分の手を傘て接吻し、淚はさん〓〓cモ、C L潜々として自分の手に灑いだ。自分は滿腔た〓嬉しさが込上げて、四邊は雲霧に包まれしが如く茫然として暫しは視健に離れし樣であツた。い.ラ五分間程經つとソオニヤは二階に駈上ツてマカアの許へ行き、全家に鳴響く程の聲で、『家の姉さんは子····セルギイさんのお嫁になるンだよ。』だん〓〓段々ラ全家に鳴響く程の聲で、『家の姉さん其四
五十二其五と〇〇はマカアは嫁入道具を調へるためモスコオに行かんと主張し、セルギイ、ミハイエロウ井チの母は家、む、を修覆し馬車を新調する事を勸めたが、さりとて結婚を遲延する道理もなければ、斯る細末の事は惣て後廻しとして、自分共は誕生日後二週間を經て、極めて質素に、來客も、待女郞も、三鞭酒も、何も彼も總ての儀式は悉く畧して目出度く結婚した。上1、3ムハセルギイの物語に依れば、母は此通例極りきつた儀式を略せし事を頗る不滿足に思ひ、音樂を奏しロ、大客を一となだれも會して三萬「ルーブル」を費せし母の結婚式の時の如く、家中が頻倒かへるほどのそれ〓〓騒ぎをしたかッたのかも知れぬ。差かし母親は夫をに或氈儿帳等の調度を準備し、取締のマリユーシカ女と色々協議を凝して、自分夫婦の幸福を補ツて吳れた。い、khて 0我が家では、アファと自分の傳勉クシミヘイシンと議事まゆく〓しく家事的の接何吳れcとなく自分の世話をして、自分兩人は終日〓然として愛想の夢境に澤泊ひ、只管他日の幸福を描くのみに時を費し、自分の衣服諸調度、禮服の刺繍から「ナプキン」、「テーブルクロース」に到るまでこと〓〓悉く其手を煩はした。ニオルスベイとポロキオクスキメイの間にすからざる形態の通信が元來セルギイと、か、ミハイエロウ井チの母とマカアとは熟懇の間抦であるにも關はらず、此婚禮の準備に就て互に競爭し的人はて善美を盡さんとしたからである。ジこ其頃から自分が一層親しくなりしクシヤナ、セミヨオノウナといふは澱格な氣象の張ツた古風な婦人で、セルギイミハイヱロウ井チは自己の母の如く尊奉し、誠意を以て交はり、世界第一の淑德ある賢婦人なりと稱讃し、タシヤナ、セミヨオノウナも亦自分一家と極めて睦まじく、互に圓滿なる交際を結んだ。自分兩人は結婚の約束をして、愈々式を擧ぐるまでの二週間は、每日セルギイ、ミハイヱロウ井チことぐの訪問を受け、午錢から夜半までいる一起に後の事どもを語らして嬉しき自を送りしかしセルキイは丹心を自分に明し、一と曰たりとも自分がなけれは生きてゐられぬと云ひながらる、曾て九一Dこ日自分と一〓にゐた事なく、日々の職務は少しも怠たらずに規則正しく之を勤めた。で、一緒に會合々B cした處で、其容子、其談話は惣て前日に變らず、互に『お前』と呼ばずして矢張『あなた』と云ひ、自分たゞふ·たりの手に接吻する事もなく、また唯二人だけの對座を求めざるのみならず、寧ろ非常に之を避ける樣な躰であつた。其五
c此頃は時候頗る不順で、天暴れ雨凄まじく、自分共は餘義なく戸內に垂籠めてゐた。自分共の愛する席はいつも「ピヤノ」と窻の間で、蠟燭の光は細く仄暗く、雨は戶を打て物凄く、樋を傳ふ水は激しく瀧の音をなし、戶外の騷がしきに似ず、戶内は當よりは反て寂然としてしめやかであツた。〓『此間の甲氏と乙孃の咄は記臆をてるか子?』とセルギイは此じめついた或る晩目分に向て訊ねた。〓3.で『えエ記臆えてますともcだけれども、まア纒りがお目出度くツて好かツた事チエ。』aエ〓『左う····一ツ踏み違へやうもんなら、一生不幸の境に落ちる所だツたが、全く貴孃に救はれたんです。しかし今考、「ると虛僞を吐いたのが自分ながら耻入る···『なんです子、最う濟んぢまツた事を。』『いゝニ、自分自身を叱ツてるんです。』『なんですよ、そんな事を云ふもんぢやアなくッて····しゆ〓〓しつさく『全く私がやり損ひだツた。私が種々失策をした擧句、地方に歸ッた時には、最う戀をする盛りは過sonoあぎてしまツたから、何でも此殘年を易々とる義務を濟ませやうと思ひました。處が貴孃に會ふと、ぶ初めツから如何も少し可笑しいナと思ツたが、まさかに自分の樣な老朽ちたものがと、自分の情を信Dふかみ、ずる事が出來ないで、色々に疑ツてる中に段々深味に陷ツて、或る夜の事ツてしたツけ、(貴孃は記臆どうにcそあるかが何だか知らない。五十二種に関まいての常常に自分では考へ,わBERRて見れば夏は貴建から得る事が多いとも貴顏に與へる事は少ない。貴孃は年が若く、曰はヾ蕾で是から春に遇はうといふ身、私は既に浮世の慘風装兩に外して冬格に向ふといふ身だもの。貴孃は何にもBer (知らす、世の中は唯面白くて人間は遊んでさへあればいゝ樣に思ひ、愛戀といふ事すら初めてヾ、空にまゝ事遊びと同樣に考へてゐる-折う云ツちやア失視だけれて。c『何です子貴所、貨所本銃に云て頂數な。』を自分は言葉を切り、『いミニ、そンな事は過ぎたこッたから做しやらなくツたツていゝク。』c.『貴孃は私が是まで戀した經驗があるかツて聞くンだ子?』と自分の所存を悟ツたらしく、『私は是ま總とのもるといくるといて、たのは唯貴孃だけだ。』『夫でも其所は與へる事が少ないと仰しやるシですか?』わしn『貴孃に與へる事は少ないです。私は樂しみで寐られぬ事もある、是まで送ツた日は隨分いが、眞E正の幸福といふものを認め得たのは今度が初めてです。私の幸福といふのは此狭い片田舍に住ンで、やす〓〓;他人に善根を施しながら、氣樂に安々と暮す事ツて、毎日怠らず適當の勞働を爲し、慰みといふは讀そンな事は過ぎたこッたか其五
しよおんがくほかしぜんたのししんいうあそわしリさうこのくらゐかうふく書音樂の外には自然を樂む獻執及と遊ぶだけの事で、私の理想から云へば、此位幸福な事はないンだあなたわかあなたやうこどもめわしかうふくよかうふくみとで〃が、是は貴孃には分るまい。貴孃の樣な子供の眼では、私が幸福と呼ぶものを羊麗と認める事は出來わしかうふく,おほこれかうふくみとあなたあた2すく〓〓oだから私が幸福を得る事が多くても、之を幸福と認めぬ貴礁に與へる事は極めて少ないぶんこた『いゝエ、』と自分は答へた。あんたわしおなやうかうふくみといげんわく&あなた『若し又其孃が私と同じ樣に幸福を認めると云へは、,〓だいき之は一時の眩惑で、如何して貴孃の時代には奇れいのはでことめたゞぐわいめんおもしろうばおうぜんなかわしヲ盡家族系の服医的になるも味外的の四口事はなに変数はれ中々私がいかうふくみとあなたかうふくみとわしあなれ云ふ樣な幸福を認めらるゝものでない。あい重膿に空福と認めららゝのは私が負硬を受するといふ一事だけだ。』gらくるなかむまほかなんのぞみあなたいまおつ『いゝエ、かうふくあたしは氣樂な田舍住ひの外には何にも望はありません。貴夫が今仰しやツた幸はあたとほしの思ふ通りです。』うちわらさおあなたためごくすくセルギイ、ハイニクの井〓は打条マて、至る以ふんず」とそて、でかしてのおたのしあなたわかきりやうよあのひいいひはな樂みです。世孃は年も若く容貌も佳い。』と力を入れて言放した。cぶんじぶんすこしんさとしんちうおたやことばなは乃ヒぶんじやくねんびばクひんせき自分は自分の少しも信ぜられなひのを悟つて心中礎かならず、殊に甚しく自分の弱年と美貌を〓斥ようすとうあいたまたづするますす。モンシヒ加州しておんじゃまシンマデにからんでもなあなたいまおつかうふく貴夫が今仰しやツた幸はあたみ見くびりながら。』しなんかあいンこたみたましひとやうcぶんみつ『とうしてだか知らないが、何だか可愛く思ふ』と答へて、じツと身も魂も溶ける樣に自分を凝視めた。へんじなにこヽろみあㅗいbかんじやうもえあがむねし自分は返事をしないで何心なく見上げると、不意に一種の感情が焔上ツて、胸がドキ〓〓して、四めん:っもくぜんまたはめ眼に入らなかつだは、cぶんみつがんていひやり面は靄に包まれしが如く、目前の渠の姿すら自分を凝視める集の眼底に光ありせんでんぶんたいたうこゝちうれおじくこぎましん〓〓くわうこつて閃電の如く自分の躰に投する樣な心地がしたからで、嬉しさと恐しさを混交ぜて、心神恍惚としてそのはておじやうきあふでき其果はモヤクヤして創は上氣して仰むく事すち由來なかツつた。けつこんぜんりつそらやうやはすゞあきかぜれんじつかうゝかうたいさうぐわいおとてんちさわかせうさつ結婚の前日空は漸く晴れ、涼しき秋風は連日の降雨と交替に窓外を訪つれ、天地爽かに蕭騒としてあきけしきげん秋景色を現じた。上あく方分ゆみじとこへつよくてうひのでxそのしうゐうんどうスルル其夜は翌る日の事など考へながら優に床に就き、翌朝は日出と共に起き、園の周圍を運動した。恰のぼるさひなかばふるおとぼだいじゆこなとういくしよくひかりなみち入、心者なんなを過日は証言末來を意見せたの器構物年の師を終し道にはろらくたふたいせきてんぢくぼ·たんしをみきをまさたふ1、すでくさはらえんがわてつらんかんし落葉堆積し、天竺牡丹は蒸れて幹折れ將に倒れんとし、霜は既に降りて草原より樣側の靈欄子まで白うすわたそらすみわたぺん: 0みく薄綿を被せ、空は澄渡ツて一片の雲も見えぬ。けムじぶんしんちうおもあしたこのいへなつよし今日となクだ」と自分は宇宙感度より附かるシルほとり世マカアなんかあいンこた何だか可愛く思ふ』と答へて、みたましひとやうcぶんみつじツと身も魂も溶ける樣に自分を凝視てんちさわかせうさつ天地爽かに蕭騒としてマカア
あしたあさどすぞやうわらひごゑ9ことでむ明日の朝ツからはンオニキを起して鉛の樣女英聲を聞く事も出來け上かぎあしたあさどすぞやうわらひごゑ9ことでむやソオニヤとゐるのも今日限りで、明日の朝ツからはンオニキを起して鉛の樣女英聲を聞く事も出來ないツ。』あさまちどはしゆ上じ립かんじやうみな其朝はセルギイ、ミハイエロウ井チが待遠しく、一種の不思議な感情に充たされて焦れてゐると、たちまはひるごろじぶんりやうしんつゐゆんたしよくわいたういセルギイ、ミハイエロウ井チは忽ち來て、正午頃自分の兩親の起蕃の爲め一緒に會堂に行ツた。とつ?いもろともいへぢことじぶんじんちうさヽやこた「や父さんがお母さんが生きてゐらしゅたら」と諸非に家路に戻る自分の心中で囁嚅く樣な聲がcぶんびごんなおやさいしんroひとうでもたくわいだういしたんむかつくびニとたんして、自分は無言で亡き親の最親の友でありし人の腕に凭れ、會堂の石階に向て首を曲げる途端に、ちないcぶんかたばらげんぜん父の靈が自分の傍に現前した、くわこついおくしやうらいさうざうげんとよこた9ばうくりかへよろこうれこゝろ過去を追臆し又將來を想像し、前途に橫はる希望を繰返し、或は喜ひ、或は憂ひ、我が心はゴツタふし합かんじやうたらしんせんくうきせうぜんふうしよくせきばくでんやおれはにして不思議な感情を生じ、新鮮の空氣も、蕭然たる風色も、寂寞たる田野も、しめやかに輝ける日こと〓〓どうじやうさいと.co光も悉く我れに同情を現すらしく思はれる。上いりよかほじぶんむじぶんごち不意にセルギイ、ミハイエロウ井子は其思慮ある顏を自分に向けた。で、自分は『あたしの思ツていよさうじぶんHerrはなしものがたたちまいとうる樣な事を云ふンだらう』と豫想せし如く、渠は自分の亡父の咄を物語ツて、忽ち云ツた。『お父さじやうだんわしこと二十四んが敵體に私に云ツた事がある、「どうを此クシヤを嫁にして吳れツて。』とんごぞんきつよろこcぶんよ『お父さんが師存になら决とお喜びでせうゝ、』と目分はセルギイミハイヱロウ井チにすり寄りながいら云ツた。じぶんxごくちいロcぶんかほのぞむこむじぶんよあったとめ「其時分は何天根小さんだッカ」と自分の如を覗父む樣にして『其時分には能く貴孃の眼せつぶんとつかしよあるおもに接吻したッけ、支えるんそツくりがから····しかしな斯うややてこなんに一緒かツた。』じぶんふたりあまとほみちたとくさかあとのはらしづかあゆほどひとどほりみち自分二人は餘り通ツた事のない道を辿ツて、草を刈ツた跡の野原を徐に步み、殆んど人行もなき道たれひとり上んあしおとはなこまおめではる。れんぞくちやかつしよくはくさうしげで離一人として自分の足音又は話し發を聞く者なく、右手は遙かの森に連續する茶褐色の〓草茂り、ゆんでぜんやしもなやとうばくはたひろ〓〓すそのあひだながいとせcぶんかほ左手は前夜の縮に惱める冬麥の圃廣々として、蛛蜘の巢は其間に長く系を張り、自分は其顏にかゝりかみのけまつはらゅものがたこゑそらロンcふんともさなグちうひしやういつこ毛髪に纏はるを拂ひのけて行き、互に物語る聲は空に響きて、自分共は宛がら宇宙に飛翔せる一個のさうぶつすされあきたいやうさんぜんおれはあをてんじやういとい.くわつぼ動物に過ぎざるが如く、又死の私の茶陽の燃焼として輝げる貴夫非を戴るくん北北べる者のないか、ロやえらいきやくヒぶんまちう斯くて家に歸ると、セルギイ、ミハイエロウサテの母と二三人の止むを得ざる奉答が目分を待受けくわいたうしきすばようのついる六七:てゐたので、正より向年でもむるよくにヨスルハスタに行までは三八度になれなけんこんしじくわいだうまつたからじぶんさうがくしよかたはらたしらちや結婚式の時、會堂は全く空で、自分は奏樂所の傍に立つタシヤナ、∞モミヨオノウナと、白茶の「リかずめめつみゐなかむすめポン」を飾つて涙に限をうるませてゐるマカアと、珍らしげに自分を瞻視める二三人の田舎娘を見
Bたばかりで、眼前に相對せるを知りながら却てセルギイ、ミハイエロウ井チの姿は見えず、祈禱を聞をり〓〓たか(きじやう9いて折々高らかに應答を繰返しても、其聲は更に我が心に響かないで、壁上の聖像に向ても祈禱する〓方角もなく、唯ぽンやりとして蠟燭、刺繡の打敷、〓欄屏障をながめて、〓主が自分の頭を撫で自分の結婚を喜ぶといふまでは殆んと砂寒を繞る心地で、此時初めてはツと氣が附いた。c T'マカアとタシヤナ、ミニオオノウチは曰分に接吻し、어てクリッソノ老部が出事を呼ぶ初めて結婚が無事に濟ンで、格刑我が心意に異常な感覺を與へる事るなく終りしを得り、駭然として且つ恐ろしき樣で、セルギイ、ミハイユロウ井チと互にキツスしたが、此キツスは自分の心には何だか珍らしく變ツてゐるらしく思はれて、竊に『是れぎりの事か?』と思はずにはゐられぬ。亭おとるろく〓〓す頓て自分共二人は會堂の前の廣塲に出ると、馬車の音は輔々として、涼しき風が自分の面を拂ツた。4〓で、セルギイ、ミハイエロウ井チに助けられて馬車に乘ると、此時、日は既に山の端に落ち、黃昏時54の風寒く、月は一道の素光を放ち、野も圃も銀波の漂ふが如く見えて、セルギイ、イエロウ井チは馬車の戶を閉ぢて自分の傍に座し、自分は窓から外の景色を眺め、心穩やかに曾て待設けし程の上事もなく、豫想に相違して暢やかに出立した。を不斗首を向けてセルギイ、ミハイヱロウ井チに何か曾はうとしたが、さて更たまりて言はうといふをさて更たまりて言はうといふ如-13 -13事柄もなく遽に何だか恐ろしい樣な畏い樣な心地がした。『今までは本統とは思はれなかッた、』と渠は自分の一瞥に對して裕然と答へた。『何だか心配で、』と自分は云ツた。『何だか理由は分らないけれど。』『何が?』と自分の手を拿りながら渠は云ツた。『貴郞が』と自分は答へ、渠の手の上に自分の手を重ぬ、心は石の如く冷たくなツた。するとセルギceㄷ1ミハイエロウ井チは自分の手を拿て接吻し、自分の心は再びどき〓〓して眼は霞み、四邊朦朧となり、最早セルギイ、ミハイヱロウ井チを恐るゝ念も消え、我が心は總て釋然として、愛慕の念は更.みこと〓〓に燃立つ樣で、未來の幸福一切は悉くセルキイ、ミハイエロウ井チの力に懸る事と合點した。五
其六s一日過ぎ、一週過ぎ、終に二ケ月間は何事もなく、稽やかに平和なる田舎住居を暮したが、夫れでも一生に滲るべきほどの精しい療法感情が縮まて何となくゝク〓しハ晝の中から現の如き計〓を妄想して、迚も此妄想は實地に行はれまじき樣にも思はれたが、又僅かなか〓〓はる實地に行ひ得し來どもは中る夢」にでこるでなく極めて驚伏で眞摯な義務の滿足、嚴した格なる無私慾、或は他の爲めに生存するといふことは、多年自分自身に描いた妄想であるが、今は却なほざり304て之を等開にして、眞實白狀すればセルギイ、ミハイニロ井子も自分もたゝ相互の爲ばかりをおへて、3全く他人の事は忘れて仕舞つた。L勿論此中でもセルキイ、ミハイヱ.ロウ井チは行日用事の爲め市中に馬車を駈けり、自分を跡に殘して行く。其時にはいつも渠の容子がいかにも辛さうに見えて、自分は其辛さうに見えるのが如何にも嬉しくて堪らぬ。夫ればかりでなくセルギイ、スハイエロウ井テは若し日分が傍にゐなけれは何事も面白くないと=ヤ、、分に〓げた。自分も矢張同樣で、或る時は讀書し、或る時は音樂に耽り、又母と共に家事向きの用を夫れでL足すが、是はセルギイ、ミハイエロウ井チの望だから厭きずにゐるので、若し渠が一向關係せね仕事cなら忽ち飽きてしまぶ。云は〓セルギイ、ミハイエロウ井チは自分の爲ばかりで此世界に生きてゐるので、自分は又セルギイ、ミハイユヨウ井テを世界で一書立派な一書ニライ大人物だと營業しル方分ギイ、ミハイベロウ井チ唯一人の爲に自分は生存してゐる事と考へた。セルギイも同じく自分を以てな世界第一の梟娜な美人で、第一の淑德ある賢女であると信じ、自分は必ず此信用に對しても第一の名婦とならねばならぬと决心した。C g或る日自分は聖像の前に跪つきて、閉目して荐りに祈念を凝してゐると、セルギイ、ミハイヱロウc〓シた井チは自分の傍に來て席に就いた。自分は本より閉目してゐても直ちに氣が附いた。『もう貴夫はお祈りをお濟ましなしつたの?』『あア、だが、私にはかまはずに·····私はモウ出掛ける。』『ねエ、貴夫、妾と一緒にお祈りをお讀みなさいましな、子エ貴夫。』cをり〓〓じc渠は自分の傍に座し、其腕を自分の背中に廻し、折々自分の顏を覗きながら、眞而目な顏をして祈た福文を讀んだ。讀み了つた時自分は嫣然として果に抱き付くと、お「私を十歲位女子供扱ひまするテ」を還は種を存して自分の子にキミハイヱロウc眞而目な顏をして祈其六
六十四こきやうモせんだい〓〓すまとち我々の故〓のニコオルスキイは、セルギイ、ミハイニロウ井チの祖先代々が住ツた土地で、そこらぢうじつお第ねんみわたいつじうらいとほしよりか〓いつさい中皆一家の紀念で充ち渡り、家は從來の通りタシヤナ、セミヨオノウナに處理されて、家具一切は自ぶんめじゆうぶんわかとかくけつこうりつげ分の目には充分解らぬが、兎に角結構づくめで立派であるらしかつた。ひろゴしきかきふがくてきおならかぞくせうざうぐわいつはいかふことこて廣い座敷には家具が幾何學的に壁に並べられて、家族の肖像〓を一杯に掛け、拭き込んだ床には手づくござしせまさしきふるいつゝる製りの産が敷いてあつた。又狹い座敷には古い「ピヤノ」と、二ツの「シツフオニール」と、一對の「ダくじやくいしいこづくゑかむおはならイバン」と、孔雀石入りの小卓が數多く陳べられた。とりわこヽろもちじぶんざしきわったもつとだいじきちようひん取別けタシヤナ、セ、ミヨオノウチが心を用ゐたは自分の座敷で、我家にて最も大事なる貴重品-じ.だいさくにんしなじぶんきならなかこだいトばこいつけんふるあらゆる時代の、あらゆる作人の品を自分の氣に入る樣に陳べてあツた。中にも古代の文箱は一見戰じぶんあああみなすんじてばなでgへつくほど自分を驚かしたが、さて見馴れてくると寸時も手離す事が出來ぬほどである。こゑかつきこ、bSD天丸ルもつとせいかくとけいせいりタシヤナ、セミヨオノウナの聲は曾て聞えなかッたが、一家は恰も最も正確なる時計の如く整理しさらびんらんじぶんしうとめらうかびじやうきらいつかこと〓〓うはぐつて更に紊亂しなかツた。自分の姑は廊下をパタ〓〓させるを非常に嫌ひ、一家の者をして悉く上沓をはじらんぼくひいづしゆじんそんけいすこゆだんせいきんぶんふうふはうばい穿かした。で、一家の僕婢は何れも主人を尊敬し、少しも油断なく精勤して、自分夫婦は勿論、傍輩どうしあひたむつたがひはひなまと占みほねをしおの〓〓てはたら同士の間も畦まじく互に勵んでトント怠ける素振も見えず、更に骨惜みせずに各々手を分けて働きとえうびおほさうちゆかじゆうたんせかみがまいげつついたちいちどうあつまさんびかうた土曜日には大掃除をして、床を拭き、戎氈を掃き、家具を磨き、毎月朔日には一同集つて讃美歌を歌かみそなみづはいぶんしうとめたんじやうびばんさんごちさうかひ、神に供へしお水を配分し、セルギイ、ミハイエロウ井チと姑の誕生日には晩餐の御馳走をして家ないいつとうふるまよるきんじよあつ〓たふ1たのし內一統に振舞ひ、夜になれば近所のものを集め舞踏を催ふして樂んた。をつとかないくわんけいふゆまいあさまつでんゑんゝみまはa cぶん良人はトント家内の事に關係しなかつたが、冬ですらも毎朝屹と田園を見廻るが常で、いつも自分はや、ルしよあさめし50ことうれよりも早く起き、一緒に朝餐の席に就く時は、子供の樣に嬉しがツてハシヤイでゐた。あさうちひきこもわざつねじぶんふうふタシヤナセミヨオノウナは朝の中はいつでも其部屋に引能ツて、態〓〓使をよこしては自分夫婦きえうじやうれいつかひこうじやうのたまジかふきだの機嫌を伺ふが常例で、其使がノヘツにだら〓とと上〓述べる時は堪らなく可笑しくなって吹出おさなんたびしすのを押へ樣ともがく事は何度だか知れぬ。こうじやうかまをきのふ〓ピしやひうんとう其口上は即ち斯うである、『タシヤナ、セミヨオノウナが申しまするには、昨日御馬車で御運動になごえいかゞてま、はらいたニきんじよいぬほえたりまして御氣分は如何でござります。手前は腹が痛みました上に、近所の犬が吠立てますので臥せらこんにちバンいかゞまをれませんかッた。夫から今日の麵包は如何でございます、ニカラツシエに申しつけましたんでございおもひほかじやうできぞんかはすこすますが、思の外上出來の樣に存じます。其代りに少し焦げ過ぎして··あさめし寸ふうふたがひわかあひだげふむヒぶんはりしさと朝餐が濟んで「ヂンナー」までは夫婦五に則れて、此間が即ち互の業務を執る時で、自分は針仕事かかじまかなひいそどくしよかうさくょねんセッら家事賄に忙がしく、セルギイ、ミハイエロウ井チは讀書考索に餘念なく、頓て四時頃になるとじよおもてざし日あつましうとめいんきよじよきやくフきやくしわくちやばひと一〓に表座敷に集り、義母までも隱居所から客を連れて來る。此客は大抵皺苦茶なお婆アさんで、cぶんいつも自分六十五
ふたり답あは人や二人はいつも來合せてゐた。おたてはヽきみさcぶんもろともさいうしよくだうぃ其時セルキイ、ハイヨリカチサは片手を毎君に轢げ自分系業に全石の子ありて食気すこぶまじめかたくるきうくつだんわあひたじぶんふうふしやれさうちようさせきるけん頗る眞擊に片苦しく、究屈に談話をする間に、時々自分夫婦のダクイなき酒溶に壯重なる座席の威嚴きそんを毀損した。しよくじごおほひちかけいナもたたばこioじんかん食事後、タシヤナ、セミヨオノウチは大き女助掛椅子に見れて畑草を燥らす歟、さもなければ新刊しよじやくかみこうれいcぶんふうふたかごゑどくしよおんがくさうなぐじぶん書籍の紙を切るが恒例で、自分夫婦は高聲で讀書する歟、或は音樂を奏するが第一の慰さみで、自分ナしらうすくらやすみたがセルギイ、ミハイエロウ井チの好きな「ソナダ」を彈べる時は、いつでも薄暗い部屋の隅に立ツてゐたとへcぶんじゆうぶんbはでBたしかよねんきヽほけしきして、縱令自分は充分に其顏を見る事が出來ぬにしても、慥に餘念なく聞惚れてゐる氣色が知れて、自ぶんじらをはそげゅうれいろめりやうけふべにさまんぞく分が彈べ了ツてから其傍に行くと、嬉しさうな色が眼に見えて、兩頰には紅が挿して、その滿足は包ていみおほせぬ躰である。よるちやじぶんうけもちまいせきかないめん〓〓あつじぶんしゆじんちやもてなしこうれいな夜の茶は自分が受持で、毎夕家內の面々を集め、自分が主人となツて茶の管待をする恒例だが、馴3なか〓〓ないやくcぶんじやくはいちやれぬ中は中々大役で、自分の樣な若輩では、一々茶を酌んで、是はマリヤ、ミニツチナ、是はイワンくばかげんきいめしつかひめいaたうめい〓〓わなかほねをイワーノウ井チと配ツて、そて基加破を開て有仕の者に電てて積積を各々に分けるのは中々骨た事である。けつこうなかじやうづをつと5たびます『是は結構だ、中々上手だ、』と良人に云はれる度に益々ドベマギした。ちやすはヽぎみひきといちどうどうじたいさんじぶんふうふね모ひきこもBそく茶が濟んでから母君は部屋に引取られ、一同は同時に退散し、自分尖婦は寐間に引飽る規則である。cぶんふうふよふけむつかたよういねむもちろんはヽぎみきこけれども自分夫婦は夜更までも聽まじく頃らそて容見に眠らなかシ勿論しめやかに母君に聞えぬちうい口やわはヽぎみひじやうすことば樣に注意したは、早寐といふ事が母君の非常にも好きなむ言葉であつたからで。ぞゐぶんひとてしんぱうとうひとしはしご〓時に依ると随分飢だるくなつて、迚も辛抱がしきれなくなると、密と人知れぬ樣に階子を下りで、しよくだうとだなばんさんのこりn〓はこ食堂の戶棚から晩餐の殘着を寐間まで運ぶ事もある。なんぶんふうふとありgりうにんこゝちなになにめんだうくさ,る何の事はない、自分夫婦は此家の寄留人となツた樣な心地がして、何から何までが面倒臭く、五月aおもしろかざいしよしきほうこうにんじやまたびごと〃るさまぎ蠅くて、面白くもない家財諸式や奉公人までも邪魔でならなかツた。老かし其度每に此五月蠅さを紛cぶんふうふあいじやうなはざりひユふか上し6たとか甲らさんとして、自分犬婦の運情は等開ならずはに增し澤くなるは不更議なはどで、例へば家僕のドミひじやうきつえんかゆふがたかくをつとしよさいしのこたばイトリイ、シデーロフが非常な喫烟家で、いつでも夕方にこッそり腰れて良人の書道に忍び込んで畑こすなかこまをつとさすがぶれいじかわんだい艸を吸ふ時には中々困る。良人のセルギイ、ミハイユロウ井チは流石に此無禮を叱りもせず、寛大にみすごじやまどうみっねけあしあしつまさきた見過してゐたが、さて邪魔になツてならぬ。如何にかして見附けられまいと抜足さし足で爪失立ツて、ようすcぶんはうすよちよつとこのすがたむねじcぶんドミイトリイの容子を見ながら自分の方へ摺り寄つて、一寸でも此姿が見えなくなるや否忽ち自分6たつくちびるなぜかるもちろんなすきの頸に抱き付き、自分の唇にキツスして、何故こンなに可愛からうと云ふ。勿論是は間がな隙がなで、
たのしみこンな事をするのが云ふに云はれぬ樂である。むゐぶんしうちあまうるaやうこヽち随分時たまはセルギイ、スハ4コニウキテの仕打が餘リシツコク五月興い豫な心地のする事コナ野じぶんいやわけやはりうれたのおもしろたヾが、流石に自分も嫌な譯でもなく、矢張嬉しくて、樂しくて、面白くてならなかッたから、唯セルキあまこどもじいなやうかへつまたこのこどもいな1、ミハイエロウ井チを餘りに兒供染みて、意地のない樣に考へたゝけで、却て又此兒供じみた意地ほうcぶんいつうれカノのない方が自分の身に取りて寧そ嬉しい樣であつた。まへわしう不さぶかたのしみいやつ「お前はナ、私がこンな事を云ふのを五月蠅く思ふだらうナア。しかし斯ういふ樂もホンの一時だ。ちさあわきもう直きに寤めてしまう。つまらんよ、いつかは泡の樣に消えるからナ、』と或時セルギイミハイヱロウ井チは云ツた事がある。なんちかとことばしかし何の事だか更に此事は分らなかツたが、兎にかくセルギイ、ミハイエロウ井チの言葉だからじぶんしんようこのたのしみさいなにぶんじぶんのみこ自分は之を信用した。しかし此樂がホンの一時であるといふ仔細が何分自分には呑込めぬ。ヾがすゆきあらしふゆやはりじぶんいつしよ頓て二ケ月過ぎて、雪や嵐の冬となツた。で、セルギイ、ミハイエロウ井チは矢張自分と一緒にゐぶんくらしかたあまおなてうしをつとじぶんりチたが、そろ〓〓自分には、生活方が餘り同じ調子で、良人にも目分にもトント珍らしい事がない樣に思はれた。じつさいなんおなみちゆもきこゝちをつといぜん實際何がか同し過を行きつ戻うつしてばかりある樣な心地がしてみ然るに良人は以前から見る1、いちじしきとしゆつせいをつとしむけcぶんしやぜつおんけ五従業として住法則して、いろにふるはるおは以自身無紀してるる9ぜんおかげんかくいかつら其毅然として犯すべからざる嚴格が如何にも憂かツたからである。さつくたいあいねんさらいぜんあひかはど唯一種の不思たしゆしぎあんしんと云ツて良人に對する愛念が更に減ツたでもないが、以前と變らぬ度合で、議な安心でかんじやうくるし出來ぬ感情に苦められてゐた。しんぱいやぶbつけぐすりはなにぶんこのたひしやうがいろつくできゆゑどうかして此心配を破る氣附藥が欲しく、何分此平らな生涯ではトテモ我が心盡しも出來ぬ故、ななにけんしんじつあらグしやうがいごるべくは何か事が起ツて我が献身の實を現はしたかツた。くるしが、此無事な生涯を送るにどれだけ苦んだつBかひんかくげんきつくいつしんか知れぬほどで、どうにかして此卒き加減を隠して冗氣を作らうと一心になッた。をつとかはらぜんとほじぶんgヒビまかし良人はいつも變らずに以前の通り自分に氣を付けて吳れて、あひだみやこあそ或る時暫らくの間都へ遊びにりいひだじふ〓ろく〓〓Che 9なくらしほうはふかうふくたてもの行かうと云出したが、自分は碌々其言葉を聞かないで、成るべく生活の方法を改めずに幸福の建物をきづヽやうたの更に傷けぬ樣にと賴んだ。ひつきやうじぶんかうふくひとヨていれつしんComきくわいと云ふも畢竟自分が幸福であるからで、唯あまり無事すぎるので人の妻たる貞烈心を現す機會がなた:ぎせいざんねん:00くいつまで經つても待とかまつてゐる物性の時が來らねを發念に思ツさつこねんもちろんふかなにぶんをつとあいふまんぞくなにとくべつ良人を愛する念は勿論深かツたが、何分良人を愛するといふだけでは不滿足で、何か特別な事からていじつしんあらいよ〓〓じつ?やま〓〓まつた모としわか自分の貞實心を現はし、一ツには愈々實を盡して見たさが山々であッたが、全く尙だ年若である爲め其六唯一種の不思たしゆしぎあんしん議な安心其六
キこゝろぶゅ敷、心に思ふほどに行かなかツた。なにゆゑをつとみやこゅいひだ何故良人が都へ行くと云出したものか。若しこンな事さへ云はなかつたら、ぶんら.ぜんをつとみづくささうざうすで或は自分が以前に良人水臭いと投深した事なくなはに〓判判して能るぬ去想と美(個たかはんぜんつままうざうおめついしみやこゅもをつとよろことZなかむまひそのしてき又都に行く事が若し良人の喜ぶ處なれば兎もかくも、かうもちろんめいれう田合住居の其嗜好に適するは勿論明丁なる事實であるから、ちじつたゞじぶんじぶんうルみやこで唯自分の後に-自分を過しがなるんが爲に都に出逃けるといふは顧ら不かすこぶムさく丘ゆきふかつもをくぐわいうつカ時は駒の如く過き、らゆるあひかは雪は深く積りて屋外に堆かく、おなあひすこへんくわくらたゞかすゆくわいやうきこゑきハラ我が一家は相變らず同じ具合に少しも變化せず唯徹かに愉快な陽氣な聲を聞く樣な心地がして、こヽちに暮し、このまつたかいうんどうひとそくてBしやうがい此全く器械の運動に等しき規則的生涯は日ひますかたあさやうきひるていねいよるねえたに益々堅くして、朝は陽氣で晝は叮嚀で夜は懇ろであつた。かていなにふへいなわけ斯る躰であるから何も不平を鳴らす譯もないのに、なにぶんじぶんおもしろかんがへンをつとしむけくらししかたふらじ何分自分が面白からぬ考に落ちたは、良人の仕向や生活の仕方に不平といふよりは、ぶんこゝろひそまけんしんてきあいねんかたらあら自分の心に潜る献身的の愛念を形として現はす事が出來ぬかででさしつかへやうそれらで。出來ないでも差支はない樣なものゝ、なんつまゴむつくた夫れでは何だか妻としての義務が盡し足りない樣文心持やうこゝろもちがするからである。Cap或る朝、けんぶんかへハイニョウ井ヲは農事の換分かにああといつもに償銀なく不喫な味セルギイ、にゆふきようていじぶんしんぱいようすたつつま自分は心配して容子を索ねると、『なに、こくちこたなん詰らぬ事ツた』と一ト口に答へて、そのヽち何にも云はず、其後之はこやくにんぎろんけつくわしㄷぶんそのことじしんBなせ小役人と議論した結果であるといふ事が知れたが、自分は其事自身が氣になるよりは何故セルギイ、ひなにぶんのみこミハイエロウ井チが秘してゐるのか何分之が着込めぬ。じぶんこどきおもなにきとこどもかんじんかなめようおけcぶんかた或は自分を子供だと思つて、何事も子供あつかひにして、肝心要な用向は少しも自分に語らずにゐしふうふいたいどうしんgいうくらぐとももちろんだれLたとひぶんるのかも知れぬ。夫婦は異躰同心で、喜愛苦樂を共にするといふは、勿論誰も知ツた事で、縱令自分こどもこのくらゐだうりわかをつとが子供であつても、ぶん此位な道理の分らぬ事はない然るに良人のセルキイ、ミハイユロウ井チは自分ふろはないうくわありうらこと立若しばなおばか語語して直の窓を立ていていてなンこSoうれおくそこしんぱいうちあかcぶんロぼ子供だからとて、嬉しがらしてばかりゐて、奧底の心配を打明して吳れぬは、自分を妻としての價うちものおもちがハロなか〓〓ざんねんくんこ値がない者と思ふに違いないと思ふと、中々殘念で片時も堪らぬ。か、しよくじナいそおんがくしつのであるから、自分はセルキイ、ミハイヱロウ井チに係はらず、〓事が濟むと急いで音樂室に行き、あさめしせうだいようきよはなしはじじぶん此日の朝餐に招待せしマリヤ、ミニタチナを呼んでタワイない浮世咄を初めたが、之もさツばり自分げんきなほたへうめんおもしろしやべりないしんなんおもしろさらの元氣を直すに足らぬから、表面は面白くお饒舌をしてゐたが、內心は何となく面白からず更に氣がひきた引立たぬ。あと々0 cぶんおもしろこわだかセルギイ、ミハイエロウ井チも後から此部屋に來たので、自分はわざと面白さうに、聲高にさんざしやべりこれはとbo饒舌たてゝフザク散らし、是までになくハシヤイで、殆んど「ヒステリカル」に笑ツてマリヤ、ミニツ
いたおじら2チナを太く驚かした。ヾ老かしセルギイ、でミハイニヒウカテが問もなく部屋を出て仕舞うと再び發の通しまはふたヽ。Sとほしづかへとしまおとorさり沈み返ツて、cぶんけしきどこどつぜんへんくわ戶が閑る音と共に呼えかニメた自分の氣色は値處へやし消に失せてびつくりなにごとしんぱいマリヤが此実然の變化に映繁して何事なるかを心配して宗也大のに返事もせたづへんじからたいすうプなた身躰を椅子に埋めたまゝ今にも泣き出しさうになツた。ジBick『どう思ツてらツしやるだらう。くだそう、こどもおも屹度下らない、モウ〓〓一層タワイのない子供だと思ってらツしやるんだよ。くやしさう、さうにちがひない、タカラ口借ひワ。』と考へて今にも堪を破らむとする淚を無理に押へて良人の部屋に行ツた。つゝみやぶなみたむおさやいをつとちたかかきものよねんじぶんちよつとみ良人は其時恰も書物に餘念なく、ふでとc.自分を鳥渡見たばかりで更に筆を止めねから、ぶんいよおもしろかんはなしかそばはん自分は愈々面白からず感じて、話掛けもせずに傍の書籍を取ツて見た。やがをつとやぶんロ輯て良人其手を休めて自分を見て、『カシヤ、お前はどうかしたナ、』と云つた。ひやㄸらそのむごん自分は冷かにジロリと睨視めたが、あだかあなたかつこ其無言は恰も『貴夫にのつ事事ッちやアない』と云ふと同樣であどうやうツた。をつとくびことにつこり良人は首を掉けて莞爾としたが、ゑみこたゑみはじ笑に答ふるに笑を以てせざるは之が初めてゝある。あなたサさ『貴夫は今朝ツからどうかなすツたノ?ぶんたゴなwなんおつ』と自分は訊ねた。『何故何とも仰しやらないノ?』c.ぶんいよおもしろ自分は愈々面白かなんとちをとこひとりみやこ『何でもない。土地の男が一人都へやられたンだ。』ヒぶんをつといひをはロけさなせあさごはんま(うかゞおつ自分は良人が言終るを待たないで、『モンなら今朝何故、の?』なふさばか『其時は氣が鬱いでゐたから、とンな馬鹿な事を云ツたかも知れんよ。』うかゞ『だツても、其時に伺ひたかツたワ。』『なぜ、其時に?』あれたひどごしんぱいわたしじやまものやうぼしめ『なぜツて、貴夫は痛く御心配なさる時には、却て妾を邪魔者の樣にお思召すもの。』ふでなげだをつとわし노だんハまへ「【そんな事を思ふす〉か」。」と拳を救出して真人は。私は生半お前がゐなからうもンないせわしまへたすけミ、おいら活きてゐる瀨がないと思ツてる。私の爲にはお前が幇助になるどころではない、お前のお形で活き斯うやツて面白く愉快に暮されるのは全くお前がゐるからだ、もしろゆくわいミわしてゐる樣なもンだ。お前は私に取りておんじんは恩人だ-あんたわたしこどもxあま、こと『さうでせうとも、さうでせうとも、貴夫は妾を兒供だと思ツて、甘い言ばツかり云てゐらツしやるをつとし〓こをつとびつくりcぶんかほみつふくか、わたし...ワ、』と良人の言葉を遞ぎツて、瓦人が眼驚して自分の顏を觀記めたはど眠れ返ツて、『どうせ多はやくた.ばかあなたなにきどしんぱうつよ地がありません、役には立ちません、馬鹿です、貴夫の樣に何事にも辛抱强ひといふ譯には-そりなせ何故、あさごはんま(うかゞおつ朝御飯前に伺ツた時に仰しやりません其六
はきるなたかんべんづよやア其筈です、貴夫は勘辨强くて····Bくちばやcぶんせいじぶんしやべりとわしまア聞け、』と口早に自分を制して、ふうふ『カシヤ、自分のお驍舌を止め、「私たち夫婦は···』なん日じぶんなつとことばや、『いゝえ、何にも聞きたくはあまません』と自分は良人の言集を耳にえれなかこうをつとis實は良人の口うれこにきおこから嬉しい言葉が聞きたいのは山々であるが、あたしあすわざとらしくステテ見せて、『癸はもう遊ンで暮すのは:いやあたしあなたじよ9じめくらあなた嫌です。位置きとり、神に反問口藍帶たるございま、云なん其其すの位置にどう〓〓ろちどうとうけんり同等であるべき權利がございます。』ふいことばおもかほこうてういと爰で不意に言葉を切ると共に、す思はす顏に紅を潮したは、つ我れながら少し言ひ過ぎた事に氣が注いたからである。なせまへわしどうとうのひやくしやう『何故お前と私と仝等でない?さわはなし飮んだくれの百姓 ともが騷いだ話をしなかツたからか子?』モ『夫ればツかりぢやアやりません。』ちんをつとことばつわしながあひた「よくあべて現れる。と及びは旨意を次き『私は異』明の經驗で能けいけんょしつそンな事は極つまらんあんぐわいないへんめんだうくさやくかいひつきやう樣ではあるが、はな案外に大變面倒臭く、しんぱい厄介なもンだから、畢竟はこンな事まで話してつまらない心配しやうぶんをさせたくないのが私の性分だ。』ごゐなたおつとほ『御もつともさまです、cぶんくちばや貴夫の仰しやる通りでございます、』と自分は口早に云ツた。こゝろで斯くの如く心いすつ我れながら少し言ひ過ぎた事に氣が注,こゝろで斯くの如く心かいつかうへいきすがモシヤクシヤしてゐるにも關はらず、セルギイ、ミハイヱロウ井チが一向平氣で澄まして居るのがじぶんcomたつたま自分には腹が立て堪らなかつた。わしもつとももつともミニきぶん『カシヤ、どうしたんだ?私の云ふのは道理だとか道理でないとか云ふ事ではない。お前は氣分でなにBもわるいか?それとも何か氣に入らん事でもあるか?そンなにせか〓〓して云はないで、とツくおねおちつわしまへはんぜんうちあり胸を落付けて、若し私がお前に對して氣に入らん事でもしたなら判然打明けて吳れ。』かくんにどこゝろうちあまるなにか斯うなると何と返事していゝものか、如何して心を打明けるものか、全で分らなくなッて、何も彼cぶんこヽろしnをつとやうをつとでぎも自分の心を知り扱いてゐる其人の前には子供の樣になッて、どうしても良人でなければ何事も出來かんがくるもねといふ考へが一層自分を苦めた。あなたなんふへいcぶんあなたわたしほんとう方々は『其夫に何にも不平な事はありません)と自分は答へた。けれども妾は本統に仝じ樣な事ばツいやあなたあすもうすこかりしてゐるのが嫌になつちまいましたク。だから貴夫、こンなに遊ンでないで、最少しとうかしたハやつはりのわたしほんとうおもしろいと思つてますけれど、矢張さうも行かないから、妾は本統に面白くないと思ふク。』かいさいぜんやうみつやたしてきちうみもんいうしういろをつとはあらは斯う云ツて再前の樣に凝視めると、矢は確かに的中して、視る〓〓苦閱憂愁の色が良人の顔に現れなはなけつじようだんめていおん深ぐ感動した聲で、『今斯うやふかかんどうこまさくま『カシヤー』低音で、ツて話すのは决して戯誠ではない。極眞面目ないつかうへいきすミハイヱロウ井チが一向平氣で澄まして居るのがセルギイ、はなけつじようだんめ深ぐ感動した聲で、『今斯うやふかかんどうこまさくまツて話すのは决して戯誠ではない。極眞面目なていおん低音で、其六
RECふたりみらいかうふくか、なヽせローわしこま話だ。二人の未來の幸福は皆此一事に關はつてゐると云てもいゝが、何故お前はそんなに私を困らせわかるのか分らない。』あなたなんかはなくたすわたししつ『なンでもないク。其其が何でも彼でも話してよりやテみなます。。らうぞ。ざらざるあなたぶつでもつとももの。しかし貫夫の仰しやる事は御道理ですよ。』cぶんあだかせいれいcぶんくたびるかきはれいたんいはな身分は怯も或の精選加目ののををりりそ云如く極めて溶液に雷ひ於ロ、なにかかれふるごゑい『それではお前が何も彼も知りさへすればいゝといふンだ子?』と渠は震へ聲で云つた。なきたなぜそのわけわかとなさけわれしなきたあま自分は思はず泣出した。何故だか其理由は分らぬが、兎にかく情なくなつて我知らず泣出し、餘りい.すざんぎこうくわいたしはらたぶんにら言ひ過ぎた事を漸愧し且つ後悔し、確かにセルギイ、ミハイエロウ井チが腹を立てゝ自分を睨みつけさうざうごわ〓〓かほあをつとかほおだやさめじぶんる事と想像して。恐々面を擧げて良人の顏を見ると、例の如く穏やかな柔しい眼をして自分を見てゐたcふんまんしんうれこみあをつとかんにんmわたしほんとうで、自分は滿身如しこが能上げて員人の手を取り、堪忍して下さいよ、妾は本統にタワイもない事を云て。』よわかロ、こゝろもちわか『能く分ツた、お前の心持がすツかり分ツた。』『それぢやアとうするノー』なヽせローわしこま何故お前はそんなに私を困らせわたしほんとう妾は本統にタワイもない事ゅべつさしつかへはぞ『とうと云て、是からペテルブルグへ行かう。もう別に差支はない筈だ。』『それではどうなりとも。』なつとからぶんせつぶんわしわかんべんねぎこゑい良人は斯く云つて自分の手に接吻し、『私が惡るかツた、勘辨おし、』と柔しい聲で云ツた。そのぱんじぶんながむかなかうんどう其晩自分はいつもよりは長く「ピヤノ」に向ひ、セルギイ、ミハイエロウ井チは部屋の中を運動してこうりぢん日裏にセルモントフの句を吟じてゐた。"But he, the fool,〓e longed 1.5 storm〓Asifinthe storm hia rest to find."ろうちあんしんミ(渠れおろか者は暴風雨を待つてゐた、恰も其暴風雨の中に安心を求めんどするが如くに)ほんとう、こわやさ『本統にセルギイ、ミハイエロウ井チはエライんだク。剛い樣でもあるし、柔しい處もあるし、こんひとをつとそんなみさをじゆぶんつくぶんひとしんちうおもな人を良人に持つてどうしたら人の操を充分證せるだらう。』と自分は稠り心中に思ツた。やがしようんどうでかあまちそのあげく頓て一緒に手を取りて運動に出掛け、いつもの通り甘ツたれて、フザケ散らして、其擧句にそツとつめさきだxごじゃちやしcぶんたちか、おそ爪尖立ツて部屋に歸ると、待兼ねたデシイトリイシデローフは茶の支度をして自分達の歸りの遲い。のをプリ〓〓してゐた。これcぶんたちみやこニいうれきしや是かと」週間後には自分絶夫婦はスルルルクの部に於ける遊誕生で其六べつさしつかへはぞもう別に差支はない筈だ。』
其七りよかうとちうしゆうかんたいざいペテルブルグへの旅行の途中、しんせり一週間はモスカオに滯在して、セルギイ、ミハイヱロウ井チの親戚しんこんかれこれおもしろゆめくらと親懇になツて、彼是面白く夢の樣に暮した。いつしよたびそらで、斯くセルギイ、ミハイエロウ井チと一〓に旅の空おんあいげんえうかんぜいスルドぞまゐなにをながめ其恩愛に眩耀せられて、なかわすはし크ほさ關靜なる田舎住居で何かは事は忘れ果てく仕舞ふた程である。cぶんいつきやうきつかいぜんこヽちをつとじんるるはういう易分。 參考而上方は誤なる心情を以及其内容弱を以周辺も愈之魔すこぶきうくつgしきばもてなおもほかごくたんぱく모ごゝろcぶんしみ〓〓さるゝことと思ひの外、みなか〓〓たのハ極淡泊に眞心からあしらはれた事で、自分は身に染々と中々に賴もしく思つなそのうへいよ〓〓あんぐわいおもひた。かうさいしやくわい猶ほ其上に愈々案外の思をしたは、かくしゆこと열けんセルギイ、ミハイエロウ井チが各種の交際社會、殊に貴顯のかた〓〓ひろかうぎむすとんたいモ方々にすら廣く交誼を結んでゐた事で、今まで頓と曖氣にも出さなかツた事である。ふt.ぎじぶんめなか〓〓りつば然るに不思議なは、かた〓〓ざん自分の眼には中々立派にエラク見える方々をセルキノ、ミハイヱロウ井チか殘こくひヽやうこゑじぶんgなにが〓〓酷に批評する聲で、10なにゆゑかこくはんだんくは12自分は聞く度ごとに苦々しく思つた。何故斯く苛酷な判斷を加へるものか、又親よこかへつかたむきしくれれ好好ゝゝうに思はれるハムおて忌過する傾向あるは何故かなにゆゑなにぶんじぶんのをとりつぱ何分自分には呑込めぬ。立派なかたヽちおすすふかりえヨ、もちろんたうぜん方達に安証を深くする事の利益あるは勿論當然の理數で、リすうかうさいしやくわいもけんがたいづかうさいンシテ此交際社會の貴頭方は何れも交際しえきとて利益ある人ばかりであるのに。しゆつたつほへじぶんみんじわしたちせうニコオルスキイを出立する前に、セルギイは自分に向て云つた。『地方にゐれば私達も小クローサス(稀〓の三人認め一人に)だが、なか〓〓かねもちベラルブルグへ行つては中々金持どころでない。だからよ、「イースタ-」aはでしやくわいはいでうふかいりヒつかひこみまでゐる積りだが、派手な社會へ入る事は出來ぬ。浮ツかり深入しやうもんなら飛んだ道込をするからなァ。』あなたぶんこたおんがくヽわいしばゐヨ、cc『さうですとも貴夫、』と自分は答へた。『冒架會や芝居(二三度も行つたら「イースタ!」の前に國ヘかへ歸りませう。』やくそくたちまわすふいしんきせかいしんきaぶつだが、ベテルブルクに着くと、此約束は忽ち忘れて、不意に此新奇なる世界に來て、新奇なる事物しんきくわいらくかこくわこしやうがいりようりけいくわくまつたばうきやくじぶんや新奇なる快樂に圍まれると、過去の生涯も胸裡の計雖も全く忌却して仕舞ツた。で、是れより自分かつすゐさうしんせいしやうがい〓が曾て推想せし眞正の生涯が愈々初まらうとする。cぶんしんぱいくしんないものはつきりとかくるルルすくなぶんくる自分の心配や苦辛、其れは何物とも判然しなかつたが、兎も角も地方に在りし時少からず自分を苦まるははふあまつたせうめつをつとたいあいねんだん〓〓あんしんえしめし或るものは、恰で魔法にでも遭ひし如くに全く消滅して、良人に對する愛念は段々安心を得て、いまはやをつとあいおぎじんさらおをつとじぶんこゝろ今では最早良人の愛だちょうで減減たと思ふ如きぬいは夏に起らぬといふも良人が自分の心のそこよさつないヨねがひまんぞく底までを能く察して、何んにも云はぬ前に我が願望を滿足きして呉れるからである。ない〓〓きやうおうていしゆやくつとことたび〓〓そのたびごとせきひ內々はブル〓〓者で、發應の亭主役を勤めた事も度々あつたが、其度每に、いつも其席が退けてかしんきaぶつ新奇なる事物じぶん是れより自分七
ら『中々見事だ、頗るお手際な事だ』、と褒められた。した、c到着後僅かにしてセルギイ、ミハイエロウ井チは母親に送る手紙を認め、自分に向て追書を副えべきやを尋ね、自分が其手紙を請取ると、决して其本文を讀むなと言聞かした。が、其れにも關らずユ心の內で潜と讀むと、カシヤ事いつの間にか行儀作法に乳し微妙しくる振舞ひ中候、誠に貞淑温雅なㅗトhe〓る婦人にて諸事感心致す事のみに候へは以前に增して可愛く急え中=『妾だツて左樣だワ、』と心中に思ツた、『以前に增してセルギイが可愛いワ。』さうぐわい。『朱見の親戚より受けた待遇は意起外に町噂周到を極め、彼處の伯父さん、此處の伯母さん、何れもたせ一方をや自分をテキキャして或人は以を以てヘラムルルに比願なし或人は是非かうさいしやくわいしゆりやうとも自分に向て交際社會の首領たらル事を求むるの意をはめめかし中にも一番仲を好くした良人の從姉デミイコフ公爵夫人は、既に浮世の酸いも甘いも心得し通人で、最早年輩でもあつたが、殆んど自分を傾倒するほどお愛想を陳べ立てる。E此公爵夫人が初めて舞蹈會へ自分を誘ひに來た時、セルキイ、ミハイエロウ井チは殆んど知れ惡いcコチケ程な微笑をもて自分に行きたいかと尋ね、自分は頷いて見せて、そして滿面に紅を潮した。『罪人が白狀でもする樣に面を亦くして、』とセルギイ、ミハイエロウ井チは自分をなぶツた。1つつそして其ンな事はお嫌ひだツてエものを、』と徵1つつ『だツて交際社會へは出るなと仰しやいましたもの、そして其ンな事はお嫌ひだツてエものを、』と徵c笑みながら自分は流し目に良人を見て云ツた。『しかし行て見たいなら行かう。』『それでも行かない方がいゝンでせう。』"たび〓〓でa.き『さア、一度位は派手な社會に出ても惡い事は無い。度々出掛けると、終には際限のない浮世の欲に5 ceで陷り込むのを甚だ困るといふンだ。今度は私も一ツ出掛けやうよ。』『それでは是れきりツ。其代り妾はもう何處へも行きたがりませんよ。』cられて行て見ると、偖て自分は良人に連れその面白さは思ツたよりは又格別で、何でも自分が其宴會の中心となツた樣な氣がして、此大廣間は自分一人の爲に照され、音樂は特に自分の爲に奏され、〓〓一列の賓客は唯自分を見むが爲に集りし如く想像し、自分の髪結から、舞蹈仲間の待女膓から、廣間cの中を運動しながら見物する霸髪の紳士まで、誰も彼も自分の端嚴なる美說に感服したらしく思はれcて、統の公將大かなる自分彼はを離れの軍事と認知を意平-去に自由生,なか〓〓天眞の美貌に匹敵する者は到底無いと云ふむ世辭を受けて、嬉しさは中々に例へられぬほどである。たび〓〓ぶたふくわい是が病時となつて其後も度々舞蹈會へ出席したが、セルギイ、ミハイユロウ井チはいつも快く承知a.き終には際限のない浮世の欲に其七
cぶんどうほんじぶんしだいしごくまんぞくして自分と同伴し、てい自分が次第にもてはやきさゝを見て至極滿足な躰であつた。をつとたちまじやくわいあき老かし良人セルギイ、わう〓〓たのていミハイエロウ井チは忽ち社會に厭が來て、却て快々として樂しまぬ躰に見えじぶんしんぱいをり〓〓じぶんなひいしとけれども、自分は此事を心配もせず、0折々自分を晩視する渠を氣にも留めぬ。じぶんみしあらゆる善美を盡つくなぐさみうじ自分は見知らぬ人や、ぶんしはいをつとげんせいかきやうかうした遊戯に浮かれて、自分を支配する良人の嚴正且つ强硬せいりよくかんじぶんゴなる勢力を少しも感じないで、けんゐせうめつしミしかのみならむぶんかうさいぢやう自分に於ける其權威は全く消滅して仕舞つた。加之、自分が交際塲れつをつとかたならゆ裡に列する時は良人と肩を比べて行くといふよりは、むしいじやうれいぐうこヽち寧ろ其れ以上に禮過せらるゝ樣な心地がして、いよ〓〓とくじつどくりつあいじやうじゆうぶんの無いのは竹芝恋の世界の七でも親儀系等に見たけどけならきが新をつとミえうれなかツた。しかなひかうさいぢやうりもてはやじぶんじゆびみ然るにセルイイは何故だか交際増量で応待さと自自の皆屋を見るをDじぶんジたふしつで、自分が舞蹈室にしゆうもくcぶんしんあつ9やう〓〓いつそうはな入つて、ゆくわいじぶん衆目が自分一身に集められて、しんりふつたう婦々揚々として、層花やいたる輸快於自分の心配に沸助するビあひし-其塲合になると、〓ぎじぶんそばはなあたかじふんかれもちセルギイ、ミハイニロウ井テは不思議にも目分の傍を離れ恰も自分が渠の持もの日ニちうざなかまぎこ物であるを知られるを憚かる樣に、D.ぶんつまcぶん稠座の中に紛れ込んで仕舞ふ。さも自分即ち渠の妻たる自分が斯くわんげいいとくの如く歡迎せちるゝを脈ふ如くに。まつcoぼあひじぶんしんちう『まア待て下さい、』といつでも此塲合に自分は心中に繰返した。くりかへわたしこゝろまつくだ『妾の心を見せる時まで待て下さい。わたしあなたためみだしなみあなたおちゃあなたみさをたわたしこゝろ妾は貴夫の爲ばかりに身嗜をして、唯貴夫だけに可愛がられ、唯貴夫だけに操を立てます。妾の心にあんたほかをとこわたしなんあたごゝろゐなかこはわかは貴夫の外に男は有りません、妾に何の仇し心がありませう。故〓へさへ戾れば分りますよ。』そのうちをつとじぶんたいしつとねんおこかんがぶんつねかたせう其中に、若して真人が自分に對して嫌如の念を起しはせぬかと考へ出したが自分の常に語らふ少ねんひかいあまねうちなすゆみしつとおわとて〓年は、セルギイ、ミハイエロウ井ヲと比較しては餘りに價値が無き過ぎる故、嫉妬を起す譯は迚も有おもとぶんりんせきおほえんくわいつねなみくわんげい〃いちじるまじき樣に思はれた。兎にかく自分が臨席する多くの宴會で、常に尋常ならぬ歡迎を受くる一事ヒぶんとこのうへゆくわいゆんせんじぶんきよしよくしんすこぶまんぜくをつとは、自分に取りては此上るなき愉快の原泉で、自分の虛飾心を頗る潮足せしめた。そして、良人セルあいねんたいよ〓〓もこといかふし〓じかれギイ、ハイラッドホテ患する急だの子がふゆうである事が知付のネ定電である。ゆふべx <さ=たいそうむつあさやくわい&『記家はアプロモカタツの信爵犬人シス思志心まじランズいそしだ夜會から戾ツてセーなぶかれてにぎからかひはんぶんはくしやくふじんルギイ、ミハイヱロウ井チを嬲ツた、渠の手を握りながら調戯半分に。此伯爵夫人はベラルブルクのいうめいかうさいによわうじぶんせいへいもつとなかよいちにん有名なる交際の女王で、自分が生平最も仲善くする一人である。きつきはニヒめなせそセルギイは屹として極めて眞面目に、『カシヤ何故其ンな事をいふ?』じぶんはじぶじつさいふうふなかあはぶゆゑまことすみ自分は初めてはツと思ツたが、伊陽是和の事が夫婦の仲を淡くしやうとは思はぬ故、誠に濟ませんろなたたがひまじはり〓かツた。だけど貴夫、お互の交は此んな事ツて氣まづくなる事はないと思ふリ。』
おもそれまんぞくかれこたくにかへCぶん『さう思へば夫は滿足だ、』と渠は答へた。『まかし、カシヤ、最う故〓へ歸ツてもいゝ時分だノウ。』に8きヽやうみやこをまゐあきはようす此後二度とは歸〓の事を灰かさなかツたが、セルギイ、ミハイエロウ井チが都住居に服果てし容子れきゆんじぶんひじやう당こくカセは歷然として、自分が非常に歸國を恐れしにも關はらず、どうしても歸らなければならなくなッた。ふゆしゆくこつうちすガーかしようてんさいしゆくいよ〓〓そのつぎくわえうび冬は候忽の中に過ぎ去り、思ひ掛けなくベテルブルクで昇天祭を祝し、さて愈々其次の火曜日となきヽやうじゆんびばんたんとヽのこきやうみやけものそろいとここうしやくふじんとつぜんたづり、歸〓の事備萬端を整へて故郷への土産物まで揃つた時、從姊のデミイコフ公爵夫人が突然訪れてはくしやくふじんb)ぶたふくわいしゆつせきとえうびしゆつたつえんき來て、ウオロンスキイ伯爵夫人が催ふしの舞踏會へ由席するため、土曜日まで出立を延期して吳れとくわんこく勸告した。くわいしゆはくしやくふじんせひあなたごりんせきのぞこうしやくふじん『といふのは子、生の伯爵大人だ罪罪と其婦の御隆康をびぐんあらしてそからで、cぶんむかじつこうしやくさまあなたたいヽちぴじんぎよいあそあなたごりん自分に向ひ、「實はなにがし公開權だ貴婦をスルプルク第一の美人だを御意遊は貴婦の御臨せきでいやおつかはれくわいたもとふきかへ席がなければ出るのは厭だと仰しやいましたんです。斯ういう晴の會があるのに袂を振り切ツてお歸なにぶんわたしうけとりになるといふのは、何分妾には請取れませんよ。』やかたすみしきかぼくようかつゆゑこうしやくふじん此時セルギイ、ミハイニロウ井テは部屋の片隅で存りに家候に用を命令けてゐた故此公爵夫人のことばみゝはいいなcぶんわか言葉が耳に入ッたか否、自分には分らぬ。ニ、ゅ『カシヤ、お前は行くかヱ?』とセルギイ、ミハイエロウ井チは云つた。『とうする?』こうしやくふじん此公爵夫人のミハイエロウ井チは云つた。『とうする?』あしたかへそつかほぬすやうみ『明日はニコオルスキ〓へ歸るんでせう、』と云て税とセルギイ、wぶつかとたんかれお近えると、ハタと眼が価突る其途強に渠は彼方へと行かんとした。わたしこうしやくふじん『妾がセルギイに申しませう、』と公爵夫人は云ツた。わたしたちてはむくる1こゝろしんばう「『れれるる交送の予急がなってていいすす」」と行きたい心を学よこんやこうしやくめれい上かんしやくきゑ『好からう、今夜公爵にち目に掛ツてお禮を申上げるが好からう、』とセルギイは疳瘠聲で、これまであらいひはな是迄になく荒らかに言放ツた。やきもちこうじやくふじんほゝみ『おほゝゝ嫉妬をやいてサ、』と公爵夫人は微笑みながら、『だが、セルギイ、ミハイユロウあなたおくさんはいしやくこうしやくさま井チ、其君の令室を拜借するのは公爵樣はかりのためぢやァないよ。』ゆっておもとはとこいし=『どうとも勝手になさい、思ふ通りに、』と云てセルギイ、ミハイエロウ井子は何處へか行つて仕舞ツた。をつとりつぶくひかたおもじぶんおつまぐたたこうしやくふしんあた良人の立順は一ト方ならず思はれたので、自分は發揮とした返事を公爵夫人に與へなかツた。かへをつとさがwかれしあんらじやうけこうしやくふじん渠は思案に吳れし面持でしよさい公爵夫人が歸つてから良人を捜しに行くと、書齋を上下して居た。きつと0やすこさしきまうたのあさはんうんちちがじふん『屹度ニコオルスキイや、想安い小生販に置ける樂しいの飯能の平をおってゐる必殺ひない。じもんじたふはたひやくせううち〓〓÷ゆふはんゆふはんすおんがくしつかたぁ自問自答した。『そして畑や、百姓や、內々で濟ます夕飯や、夕飯を濟ましてから音樂室で語り明かすかほぬすやうみミハイエロウ井チの顏を竊む樣に見ついぞセルギイ、ミハイユロウ其七
ゆくわいよるなにかおもほんとう愉快の宵のことや、せかいぢうぶたふくわい何や彼を憶ツてゐるンだよ。いつ···もつとも本統にさうだク、世界中の舞踏會を一しよあつうち〓〓むつだんらんたのしおよ〓に集めたからツて、あたたとどうして內々の睦まじい團業の寒みに及はないのは當りまへだ。こうしやくさま縱へば公爵樣せんにんおらでじゆうぶんあいさうならとてが千人御入來になッて、わら充分にお愛想を聯べたツて、うれ迚もセルギイがにツと笑ツてくれるほど嬉しくないク。』あすくにかへかねけいくわくおたしちがニッむね目は國(願うらと云云環)の計畫を愛子愛(まいと思考にを負入るで、をつとはなをつと良人はcぶんみつけきはいかめしい容子で前額に皺を寄せた。ようすわたふよにうわふんべつさう自分を見付て極めて嚴かまつた9うかこくか柔和な分別ある相は全く消え失せて苛酷で旦いうあんいろいりかはぶとつぜんませいたうくわうさいちんちやくじつ幽暗なる色と入替つてゐたが、そんぎやうさうくわいふくぐわん國て突然再だ精選なる安すと沈着なる自宣の形相を回復したは、元らいたんいつにんげんせいしつすなはgとあいらくいろあら來渠匠單一なる人間の性質即ち良態哀樂を色に現はすを好まず、このとりわじぶんたいきよじやうあだかたかみ取分け自分に對しては居常恰も高御くらいまかみゐぼうそうごんたも虚に在せる神の如き威國と壯嚴を保たんとしたからである。さりげぶんふりむ『どうかおしか?』と渠は去氣なく自分の方を振向ひて云ツた。こたたじぶんはつaけんたも自分は答へなかツた。唯良が自分の依ずる感感を保たないて、發遣区黑構ふ躰の見ゆるに願ることさらとりつくらていみすこぶたうわくした。とえうびぶたふくわいゆつもたづ『この土曜日には舞踏會へ行く積りかヱ?』と渠は尋ねた。ゅゆに『徃きたい事は往きたうございますが、のし꼬きつあなたいやおも荷物をからげて仕舞ツたし、必と貴夫もお嫌だらうと思ツしかきはれいたんいひはなをつとおじやうEctじぶんふくり上むて、』と答へた。併しながら極めて冷淡に言放つたは、良人の無情な調子が自分を腹立せしめ、且つ又じぶんつまじつつくねんそがい自分加圭たる實を盡さうとする念を却て沮碍したからで。れいぜんながおそこれはされいぜんおうせつれいつひこれまでおぼ渠は又冷然として自分を喘視めた。恐らく是程恰然として自分に應接した例は竟に是迄に覺えぬ事である。らいしゆうすゐえうびきといのにもつとし〓いひつい『來週の水曜日まで歸國を延ばさう、』と渠は云ツた。『この荷物も解いて仕舞へと命令けやう、』と何つりつぶくはやあしあら〓〓ゆかふみちら時も立腹せるときの如く早足で荒々しく床を踏散しながら。わたしほんとうわかをつとようすながめう『妾は本統に分らないり、』と良人の容子を瞬視めながら、『なぜそんな妙な事をおつしやいます?わたしあなたためcぶんたのしみぎせいすあんたわたんはは其夫の公なら自分の數擧となして機性にしてねてすちもうと思なぜ貴夫は妾をそんじやけんなに邪見になさるンです? Cぶんたのしみぎせいすo'せいとんちからわざこゑおだやか『なに、自分の歡樂を犠牲にして捨てる?と犠牲と云ふ言葉に力入れて、そして態と聲を穩にエ、つといくどつまりあひこむつ호して、『わしだッてもお前の爲に勤めた事が幾度もある。だからよ、結局相子で、どんな睦ましひ夫婦あひだじつつくできの間だツて是より實の盡しあひも出來まい。』をつとくちびるか、てんたそのけつくわおつcぶんはらたいよ〓〓がうじやうは良人の唇から斯る言葉の漏れたを聽くは初めてい、其結果は却て自分を腹立たせ愈々强情を張りたなく爲ツた。む且つ又わざこゑおだやかそして態と聲を穩にむつ호どんな睦ましひ夫婦そのけつくわおつcぶんはらたいよ〓〓がうじやうは其結果は却て自分を腹立たせ愈々强情を張りた七
あなたたいかなこぶんためいきあそ『貴夫は大へん變つちまツた事、』と自分は溜息して、『どう遊ばしたノ?なにはらたゐ何を腹を立つて居らツしやあなたぶたふくわいなんきつとあなたるノ?ねエ貴夫、舞踏會の事ばツかりぢやアなささうだ。aもつ何でも乾度貴夫はむかしの事を根に持ささあつてゐらツしやるンだよ。(6はうい左うなら左うでさつばりと仰しやツて下さる方が好いク。』なにおつじぶんしきしんぱい『何を仰しやるだらう? 2日ルごろかんがをつとcぶん』と自分は荐りに心配して、ことばさて常日明の事を考へると良人は自分の言葉をこんきヽながためしジンこほ〓〓かた一言なりとも聞流しにした例なきを憶ひだして、やニなかうんどう猶ほ細々と語らうとして、部屋の眞ン中を運動するそばすセルギイ、ミハイエロウ井チの傍へつか〓〓と進んだ。わたしそば9たたたくだ『妾の傍に來て妾を抱いて下すツて、ジめでたくす〓〓しんちう담ねんそして無事に目出度濟ましてできる樣に。』と心中に所念した。しかをつと一やかたすみたちとまじぶん然るに良人は部屋の片隅に立留ツて、自分をじツと見て、わか『わしの云ふ事が分らんか?』『はい、分りません。』いきこゝろ〓『そんなら言ツて聽かせる。へいなか〓〓おさおさしの心に燃をてゐる不平は中タ艸へやうとしても抑へきれねほどののだ。』かいひはなおの斯く言放ツてのちセルギイ、おんじやうあらみづかがくぜんとハイエリウホテはこれの菅置の荒らかなるに自ら傳然としたる如つツた突立ッたまゝであツた。こゝろ〓へいなか〓〓おさおさしの心に燃をてゐる不平は中タ艸へやうとしても抑へきれねほどのおのおんじやうあらみづかがくぜんとハイエリウホテはこれの菅置の荒らかなるに自ら傳然としたる如じぶんおぼさけ『なんでございます?』と自分は覺えず叫んだ。いほかはちたロ、こうしやくそのあとおひまは『わしの言ふのは外でもない。わしは腹が立つてならぬ。お前は公爵の氣に入ツた爲め其退を跡回し、をつとわすじぶんわすエじんとくさうわすしユまへとてこゝろくるし良人を忘れ、自分を忘れ、婦人の徳操をすらも忘れて仕舞ツた。お前には迚も此わしが心に苦んでゐたうていまへとくさうらしきこと〓〓なし또なか〓〓わかことらつる事が分るまい、到此前前の後に抱操の意識を得くべくして仕舞クては中々分るもん殊に一そうおもしろところgじぶんたのしみU'せいこかばあんかこうしやくところ層面白くないのは、わしが處へ來て自分の獸樂を變性にすると言ツた事だ。此言葉は恰は公爵の處へいやま〓〓きごころかねしかたたのしみガせいなえいはほしんがわいる感を受け方がなしいというと思いをだん〓〓はないうちおんせいげんびみづかかんきうやうすだん〓〓まcめ.かほいろかは授々部しておく中安装工をと言語關於自己線顏色まで變ツてゆたにぶんなんおそなげんそんしやうやりこヽちさらじやうはきた。それ故自分は何となく恐ろしく爲ツたが、わが威嚴を損傷せられし樣な心地がして更に讓歩す〓る氣にならずして、いッはれつかくごcぶんあいさうげおつ『ごうか早晩かは延到する事と必悔してるました』と自分は愛想氣『さア、もツと仰しやいまし〓〇ヨヘかくごわしたないにち〓〓〓〓だん〓〓いうだたいまんはつたううづうも『お前が覺悟してゐたか、ゐぬか私は知らぬ。唯だ每日々々段々と遊惰、怠慢、放蕩の渦まきの中にヨヘエこたんそくたとけふこうしやくふじんふるまひじつふれいお前が捲き込まれるのを見て歎息してゐた。管へは今日のブシーコフ公爵夫人が振舞の如き實に無酸かちじよくクしんぱいズを極めてゐる。ういふ。此屋を受ける事があくはしないかどうから此わしが心配あの其七おつもツと仰しやいま『さア、其
九十ふじんけがこゝろきよむねすゐさうかはなるみのれんもわしの希いたのお酒しいもんも事業期間ニムをやきもちあざけだれゝ妬いたンだ?やわしもちろん三、ろく〓〓しをとこビか私は勿論お前だツても碌々知らない男の事を云ふのか?じつつまはなししかミじゆうぶんわかたのしみ馬鹿々々しい、實に詰らぬ話だぎせい然るにお前にはそれが充分に分らんで、すいじつ却てわしの爲に其歡樂を犠牲にして捨てると言ふ。實らしまつわしはまへに云はう樣もない始末だ。せきめんgせいなん私の恥辱は云ふまでもなくお前の爲にも全く赤面する。犧牲にするといふは何たる事だ。』cぶんこゝろうちなんいる「ごうしたンだら、」を自分は心の中に『何ものひひとを愛とは無ことおほひざついごそれでも膝を突て御むリごもつともおそれいしひあやま無理御九で恐入つて强て謝罪らせたいのかしら?わたしまつびらごめん妾はそんな事は眞平御免だ。』けつあなたUせいはなつま"や久となして食の參に聯社にしままには"ご氣を前ら是如くはしはとえうび土曜日にはくしやくふじんくわいきるはウオロンスキイ伯爵夫人の會へ參りませうとも。』あそしつたこゑしか고あひだ「『んんと雖びなるい」を比乎する如き樣で『幾し二人の間はるるなりこれきう)この上はわしをこまらせきじつはかこのときくちびるこまふるせる席もなからう。わしは實に馬鹿だつた。』リ,むたいこゝろきつ此時渠の唇は細かに震へて無理無躰に心にもなく屹ばいひはなあり〓〓1.りと言放ちしは歷然と知れる。cぶんぐたぞ自分は此時一つには惡らしく又一つには恐ろしくなつた。しつせきかしつせきぶじよくたい叱責に代へるに叱責を以てし侮辱に對すぶじよくみるに侮辱を以てしたは頗る小氣味よかつたが、せつなみた行きことばしぶそれでも自分は切ない洗涙に咽んでツイ言葉を澁らしとえうび土曜日にくち5めしたは口に、旨へぬひけ目があつたからかも知れぬ。Cぶんむきんこのへ、やでをつとあしおとなきこきこうちかついちどcぶん自分は無言で此部屋を出た。けれども良人の望音が猶は閉えるか聞えないかの中に、曾て一度自分だちふたりむすかうふくえんやぶマふ。ふたゝあともとじゃなをつとヨヘで達二人を結んだ幸福な緣を破る事が出來はせぬかと思ふて、再び後戾りして最う一度良人の前に出やなかけつしんきたかんがおそをつとどこおのせいぎじぶんふこうぎうかと半ば决心したが、文表へれは恐ると言人は何處までも己れル正義であつて自分が不公びゆうさうあごかいこじつうご。けねんとてあんばいせんたいじんと謬想して飽くまでも其誤解を固執して動かぬだらうと懸念した。だい迎も此植梅では毅然たる大人の大どりやうcぶんつみたとあフハゆる10しんじつ置いている眞實、じぶんじゆうぶんあいぼじつうかたむこのこヽろをつとくわんてつかをつとぶん自分は充分なる愛幕の情を傾けてゐるのに、どうして此心が良人に貫徹しないで、斯ふも良人は自分きらふりつを嫌つて振付けるものか?々もとセンもくねんをつとことばいち〓〓くりかへいっこゝろぼそが、我が部屋に戻つて獨り聊然として良人の言葉を一々機返すと、ツイ何時となく心細くなつて、かたふかく女光むせたとひやうことをつとふくじゆうをんなぎむおもひなほ我知らず不覺の淚に咽んで、經令をの樣な事があらうと良入化服從するは女の義務なりと思直しじやけんおにやうかこくかんがへおひのしニ邪見な鬼の樣な苛酷の考慮を追退けて仕舞つた。ひるめしテーブルっをつとそれがしらいきやくどうざcぶんをつとあひだいつたい午飯の食卓に就く時、良人と共に某なる來客が同坐してゐたが、なんだか自分と良人との間に一大こうわんよこまつたかくぜつこヽちやがきやくじんぶんいつ江灣が橫たはつて全く隔絕して居る樣な心地がした。頓て此客人は自分に向て何時このベラルブルクたづを出立するかと尋ねた。七
じふんこた·ばやつぎすゐえうび。とえうびで、自分は答へやうとすると、セルギイ、ミハイニロウ井チは素早く、『次の水曜日に。土曜日にははくしやくふじんがたふくわいりんせきはむニ、ゅっじぶんウオロシスキイ伯爵夫人の舞踏會に臨席する筈です。-なア、お前は往く積りだなア、』と自分に向天サマさゆすいひはなてわざと冷笑る如く卑下む如く言放つた〓めじぶんなつとかほみ々こた『はい、徃きたうございます、』と自分はこは〓〓良人の顏を見上げて答へた。ばんきやくじんかへヒぶんもと0 cぶんとうけさ其晩此客人が歸つてから、セルギイ、ミハイヱロウ井チは自分の許へ來て、自分の手を拿て、『今朝ことなにぶんかんべんまつたわの事は何分勘辨して吳れ、わしが全く惡るかつた。』cぶんをつとてとうにつこりまんがん安九あふうれきつ自分は良人の手を拿て、おと〓〓しながら輾然として、滿眼に淚を溢らし、嬉しさにこは〓〓緊くをつとてにぎじやけんをつとたちま10あだかきやうげんおそとほはなせきし良人の手を握ると、郡紀も以入は數を無まるるて偽る甚程石支見を起悉泡+離れて尿をめた。やつばりじぶんいわかなにぶんさつぱりらけんg『矢張セルギイは自分で好いと思つてるンだらう?』と自分で考へて、何分淡泊とした意見を聞いて、ぶたふくわい〓にかへいさうだんまとgばうしたさきてんもしも隣の区はなんだというのシを云云南線のあとない島のに戦をつととつぜんさけとうりうのところおが必要取り法務簡人大、指傷がラッドあげるといとことをちかえのごしんばいれば····でないと御心配なさるだらうから。』いった『そして何時立ちませう?』つぎすゐえうび『次の水曜日。』のなんさしつかへじぶんをつとムし협めじぶん「モンなに延はるいでも何にも不問はありますまい。」と自分は百良人は不思議な目をして自分み.っバだんがふをじツと凝視めたので、ツイ氣遲れがして是より以上の談合は出來ずにしまつた。かわれ〓〓ふうふぶたふくわいりんせきいんぎんこcuはつぱうふりまじつ斯くて吾々夫婦は舞踏會に臨席した。そして例の如く慇數なる言葉を八方から振時かれた。が、實さいくわこいくぶんちが際は過去の時とは幾分か違つて居た。こうしやくこなたナこじぶん一七〇ふじんあひだはさこうしやくよぎ公爵が此方へ進んで來られたとき、自分は二箇の婦人の間に挾まれて居たが、公爵を見て餘儀なくせきたゑしやくねそむ席を起ツて會釋ながら、そツとセルギイ、ミハイエロウ井チを見ると渠は頭を負けて仕舞いた。cぶんこうしやくなじやうぞあいさうりやうしんくらじぶんくちをかほ男はなのかくの駅前くんといますると述にはじょ言はない自分の台七むね六七なかだんわきはてみじことあやにくこうしやくざせきツと染めて胸をときつかした。が、二人の間の談話は極めて手短かで、殊に生憎公爵の坐する席が無こうしやくのこをじぶんわかじぶんをつとせうかいわりかつたので、公爵は殘り惜しさうに自分と別れんとして、其まぎはに自分の良人に紹介して吳れと制しよまうなく所望した。ぱんおそをつとこうしやくしよやすみしりたんちなんこうしやくじぶん味噌近近で夏人と公務とが、所に部屋の陽で持ノの經體して居たの何でも公爵は自分うわちがじぶんをり〓〓ねみ、ようすわかふい部を艦こしろろに森なないと思けれる日分を皇ェガを懲デを作らをすると不意になつかかなじぎムさはふこうしやくあのセルギイ、ミハイヱロウ井チは眞赤に爲つて、輕く時宜をして、不作法に公爵と別れた。其七
〃じ.『公爵樣は妾の事や、別して其人の事を如何思ッてゐらツしそるだらう。」と自分は愚蒙で、又さ、自分は是等の容子。我が良人のセルギイ、ミハイエロウ井チが公〓に應接した容子を惣ての列席者確認後も目壁したに相松ないた情して。置若ん定和相似つてゐなる··妾達の間にお起ツた魂膽を悟らないとも云はれない。』自分の從姊は自分を家まで送つて來た。道すがら日分は廻合恐しき今夜の宴席で此つた當惑語しを爲て聞かすと、從姊は荐りに自分を慰めて、夫婦の間には此位な浪鳳は起るのが當然で過ぎ去つて仕舞へば少しも痕跡は殘らぬものだと言ひ、且つセルギイ、ミハイエロウ井チが餘りに剛情で我儘過ぎCじると非難して吳れた。で、自分は其人の諭られたのおくて飮飮の下のた樣な心地がして急る其う、〓同した。けれども家へ歸ウて唯一人になると、是等の言語は重石の如く自分の良心の上に落ちて、自いよ〓〓ふかいよ〓〓ひろ分のついた那遇の爲め美婦の間を分割さし六除を愈々保く愈を磨く其八われ〓〓ガ.皆其日から吾々の家庭に非常の櫻化が起つた。是までと機つて二人さし向ひの時には却て氣まづく思ら々.ひ、口に云はれぬ或る疑問が夫婦の間を祖碍する。斯る時に若し他人が來ると恰も虎の聘から救はれた樣な氣がした。『いは貧窮の續まに苦しも無縫重とか愛は自信信かに関する隱頭あ六百少しでも挿まると、一種の奇怪な色が二人の目に溢れて、互に顏見合せるを酷く迷惑に感じたこともわれ〓〓りやうにんある。恰も吾々兩人の間に一大江灣が橫はツてゐる如く正しく互に離隔してゐだ。又恰も淵に臨めるc岩角の実施に立つて儒然として居る如く自然にびくついてゐた。自分は良人が極めて傲慢で且つ强情であるを知る故、成るくく其欠點と演大するを無くるに頗る謂得せせばならぬととを良人のB方から云へば、自分はどうしても社會を離れて生存出來ぬ質だから、とても田舎住居は自分の性質にD適せぬ、蛙石目分と良人とは全て唱好を異皮すれは到底水之久住する事は出夫故寧ろ此眼に見じ、しん〓名古屋學を意に恐せよりは反合自が発ニ退くもは以敵し方がないとかゝれば双方ゴとも總ての不輸快なる問題に直接なる隱隠は更に角通虛して、たヾ互に邪推ばかりを廻らしてゐた。て0であるから、是まで通りに面白おかしき二人の爲はかりの世界を作ること出來ず却ておのが周圍の其八八其
さうはうけつてんみっかつてほうないこちくやがんてんないしんひそざんしゆう双方の欠點を見付けだしては勝手最醒を念眼點から向心で秘かに幾ひと〓〓おの〓〓たがひくあさうはうけつてんみっかつてほうないこちくやがんてんないしんひそざんしゆう人々と各々互に比較べ合ツて、双方の欠點を見付けだしては勝手最醒を念眼點から向心で秘かに幾してゐた。いよ〓〓しゆつたつtていひゆんじつcぶんつひしんじつびやうきなゆゑひユ愈々ニコオルスキイに出立せんと指定せし日の前目、自分は終に眞實の病氣と爲つた故、一ト先づききやうみきんがうゐなか々かりうじぶんャぜんくわいころ歸卿を見合はしてペラルブルクの近郷の田舍家を借受けた。で、自分が較や全快しかけた頃になるとはヽりみごきげんうかゞこきやうしゆつたつcぶん歩ひどうかうセルキイ、ミハイエロウ井チは母君の御機嫌を何はんとて故〓に出立した。自分は是非とも同行してせつぱうびやうごからだかげんあとのこはやうせつとくしかこれ吳れと切望したが、病後は身躰の加減もめれば跡發りして保養をしろと說得した。然し是はほんのおためじつさいたうりばくじつりちぎじやうろいとゐなかいへじぶんいつしよくらこの爲ごかしで、傷の心理はれ罪備情特邀生高ル山公会がで自分と一部に登るるたるらである。とりのこじぶん·ちばせいさうつまいしたくもんしかをつとかへ三、いつそうはなは取發されし自分は極めて淡償なる月日の下に普關した。然るに良人が歸つて來ると前よりは一層甚かくりくわこげんざいさんいよ〓〓いちじとうさしようにんだして臨離して過去と現在との凹に急々落るしき等差あるを永認しわれ〓〓りやうにんべつ〓〓えうじんこゑきちんけすこくらくわかで、吾々雨人は互に則々の要愼をして箇々の利益のみを考、少しも其苦樂を分たうとしない。其くせあたかなあいあいあひだがらへうめんだけおの〓〓ゆだんまへそうこまもっ孵恰も猶ほ愛し發されてゐる間柄の如く表面丈は各々池斷なく、却て前よりは一層細かに氣を付けて384しばうまんぞくいっふたりがもちろんこのきろこと相互の志望を滿足さした。何時でも二人さし向ひのときは、勿論此頃はめつたにこんな事もないが、なにぶんおもしろさめいわくおもきゆうくつひとりゐおなカノ其時は何分面白からず、去りとて迷惑にも思はず、窮屈なわけもなく、とんと一人で居ると同じ樣に、そばをつとムgくらゐしかじぶんそば8ひとあかたにん傍に良人が居るか居ぬか氣がつかね位である。併し自分の傍に居る人がまんざら赤の他人ではなく、しりつぱめいよじぶんをつとじぶんじぶんじしんtじゆうぶんきしやうなにかa然いの張若都な自己のはムート目分カルク質是超特命次外在荒漠向ゐしんひとハそばひとなにもとのみんたて居ると信ずる人であるとは思つた。が、今では其傍に居る人から何を求めると云ふ希望もなく、唯たんぶんをつとたこといじやうなんはやはなはたあひだがらへんくわだ單に自分の良人である丈けの事で、それより以上は何でもなく、最早是より甚しく其間柄に變化がおこほどはなぶんかんがへめぐ起らうとは思はれぬ程離れ〓〓になつて、自分は此上に考慮を廻らさうともしなかつた。りうかうしやくわいさんらん〓でりうかうしやくわいたびをつとじふんかていくわんらくよつみ流行社會-其燦爛として派手やかなる流行社會は、一ト度良人と自分の家庭の獸樂とに因て充たこヽろるちとつふつけうしうみん=じめぶんちんちほとされたる吾が心の位置を取て、拂咳から放眠する時まで以回目に自分の事をおへる時は殆んどなくいか5ところおもしろくるえせんかたいこと云はい斯く生きてのた處で面白くもなく苦しくもなく、たゞ止むを得ず詮方なしに生きてゐる事だけしようにんを承認した。さんねんつきひおなうちふたじ〓おこすなはしうとめえいみんうるこたんじやう點あるとを二年の自らしいとうある。こ:おまときおやじやうわこゝろはげはじこれゆくわいしんせいくわつおくいとぐち子供が生れた時は親の情が我が心に激しく燃えめたから、是が忽ち愉快な新生活を送る糸口になさうざうしかこのものめづじやううすふたヽそとではむこドこといわすらうと想像した。然るに此物珍らしさの情の薄らいで再び外出を初めだすと、子供の事は何時か忘れはヽおやじやうしだい〓〓〓たいこうつはヽおやれいたんgなつくた果てゝ、母親の情は次第々々に褪紅して、終には母親の冷淡なる義務を盡す丈けの事になつた。
しかをつとこどもおまEchムしぎわかふたヽいぜんじゆんこう併し良人セルギイ、ミハイエヨウ井チは子供の生れると同時に不思議に若でいで、再び以前の醇厚とくじつかにいてひとおんじやうこつけいまつたこs a爲賣なる祭姪好きの人となつて其温情と思稱とを全く子供に捧げたじぶんメたふふくこともせうにしつたび〓〓をつとそばる自分が舞踏服を着て、子供に『あばよ!』と云はんとて小見室に行くとき、度々良人が其傍に居るげんぜんしふめんつくをつとかほおばかじぶんこusを見た。で、北時價然として禮面作る良人の顏を見ると覺えずはツと思ツて、斯うも自分が子供を見むとんちやくおどろぶんよそふじんまるちがcもんるに無頓着であるかを驚いて、或は自分が餘所の婦人と九で述つて居はせ如かを自問した事もあるりぶんたしかあいいちじかんそばすはあやなにぶん自分も慥かに小供を可愛がるには違ひないが、なぜたか一時間たりとも其傍に座つて絞すのが何分しんぱうで辛抱出來るところでない。しうとめえいみんをつどたもつとしうしやうじ~んねんごをつとどうじやうあらろと姑の永脈は良人の爲らには最も幾傷なる事變であつて、自分は懇ろに良人に同情を見はし、或る度たしぶんつうせきしからいしうとめてつでうのがきらくおくまでは慥かに自分も痛惜した。併し實を云へは始の緣條を免れて氣勢にニコオルスキルにむを送れいつうれのが寧そ嬉しくてならなかつた。かうさいしやくわゐ乃〓生いさんねんた4ぶんらうしよ初めてペラルブルグの文際社會に仲間入りした時より三年經つてのち、自分の一家は暑を避けんとりよかうてパーデンパーデンに旅行した。cぶんたいあすこぶさうけんうへをんなざかじゆうぶんけしやうたしなこの時自分は二十一歲にて、身躰も頗る壯健なる上に、まだ〓〓女盛りにて充分に化粧の嗜みもあこのかうじせつさいはういうかくきんしふちよめいゆじぶんもつとうれれば、此好時節に際して四方の遊客麿集せる著名のパーアンパーデンに行くは自分が最も嬉しくてな4ぶんらうしよ自分の一家は暑を避けんとらぬ事である。しかかうふくかうふくかうふくはじくらナゆつかんかうしておよーしているとくんなーに関係は物もてこまええる。吾置おふくまるせいしつかはとかくかうふくちがじぶんなにおそなにのゼい福とは丸て性質が變つて居た。兎に角幸福には違ひない。自分は何も恐れず、何も望まず、云はゝ我さかづきすでわこヽろきはゆう〓〓〓が杯は既になみ〓〓として、我が心は極めて融々として居た。とうりういちだんゆさんきやくなかひとりとくべつちういえうほどものバーデン、バーデンに逗留する一團の遊山客の中には一人として特別の注意を要する程の者はなたわかとしとりつばえいこくじんろものくちひげふつこくしんく唯ほんの、或る者は若く或る者は年老つて或る者は立派な英國人で或る者は口髭ある佛國人だとたたひとりいくぶんヒぶんちういまねこうしやくイダリイじん云ふ丈けのことである。唯だ一人、幾分か自分の注意を招いたは、ミカニリイ侯爵と云ふ伊太利人で、これまつたぶんふうさいたいたんしやうさんゆうきかんしんぶんしよでる是は全く自分の風來を大膽にも利讃した気氣に感心しだからであるそして自分は一緒に出會つてとしぶたふしよぶおまでかりくわいaいちきうけがほとしじゆう一緒に舞踏して、一線に仮説部一場で出掛ける標會を過けるを。產たりとも語はずし殆んど始終そのゆさんsaかれたじぶんかれんくりかへ其遊山を共にした。で、彼は絕えず自分が可憐であると緣返した。をり〓〓やまとそとながこうしやくいしうゐだいたんけい〓〓めみは折々部屋の窓から外を脉めると、此侯爵が家の周圍をうろついて、大膽にも其葵々たる眼を見張つよねんじぶん"ガ.しば〓〓じぶんはなじらバかはシニて餘念なく自分を購視める事がある。此時には屢々自分は盖明んで思はず顏を背けた。こうしやくとしわかいうびかしるやかしうさいcふんをつとにとりわまゆ此侯爵は年若で、優美で、且つ〓雅なる秀才で、とこともなく自分の良人に似てゐた。取分け其眉かたちほヽゑようすほといきうつをつとくちもとじんじやうかにうわイタリイの形と其微笑む時の容子は殆んど生寫しである。唯だ良人の口元は尋常で且つ柔和であるが、伊太利
百xこれはんやモやきようあくきはそれゆゑはなはじんぴんおそゐ人は之に反して較や粗野で兇惡を極めてゐる。夫故自分は甚だしくその人品を恐れて居たが、それにか、%oふるいくたびひとおもひだも拘はらず、思はじと思ふても猶ほ態度となく其人を思出した。れいいつこくものいつぱんひとほとかうさいもとたセルギイ、ミハイエロウ井テは例の題硬族で一般のくんは殆んと交際を来りずさいじぶん唯だ妻たる自分のをつとしゐたふしこのイタリイじんこうしやくしんみつ良人としてのみ知られて居る丈けであるが、すこぶ不思議に此伊太利人のミカエリイ侯爵と頗る親密になつた。このきせつをはすこまへじぶんびやうきにしうかんへやうちたれこゐぜんくわい此季節の終らんとする少し前、自分は病氣となつて二週間部屋の内に垂籠めて居た。全快してからはじ5ぶでかちかごろびじんほまたかえいこく÷じんらいちやくうわさ初めて倶樂部に出懸けると、み近頃美人の響れ高き英國のスベルトナ夫人が來著せし陽を耳にしたれいとほじぶんしうゐあまたしうさいあつこれ4いつそうたくさん例の通り自分の周圍にも數多の秀すが集まらぬでもないが、こうしさいじんx是より猶ほ一層澤山なる公子才人が此しんらいゐねういづてふ〓〓えうげうるたほた新來のスベルトン夫人を圍繞して、たし何れも喋々しく其妖燒胸娜たるを譽め稱へてゐる。惜かにスベルふじんふうばう3)ひとなうさい〓ほどゆんけんじぶんとくかトシ夫人の風貌は以て人を惱殺せしむるに足ろ程輝〓である。いろが、自分は得意らしき色があり〓〓とかほあらPおちしやうおもしろゆくわい其顏に現はれるを見て極めて嫌氣を生じた。おもこと〓〓ぶんで、其日からは今まで面白く愉快に思ツた事が悉く目分じふへんを苦澁せしむるものと變じた。よくじつしろけんぶつれんぢうつのなかくは其翌日スベルトシ夫人は城見物の連中を募つたが、ほといちにちりよしゆく自分は其中に加はらないで、殆んど一日旅宿にひとりとりのこすこぶさくぜんこゝちゆゑじぶんはやロ+か、こゑ一人取殘されて頗る索然たる心地がした。おもそれ故自分は一日も早く各西亞へ歸らうとして、思はず聲それにあを上げた事すらある。エけんぜんかんじやうあらおそきたしかじぶんこくはくことくちさきかげん不健全なる感情が新たに自分を襲ひ來つた。併し目分にすら告白する事をしないで、口先では加减わるまつたかうさいしやくわいはなたおなとうりうきやくロシア上りんが惡いとばかり云て、其日から全く交際社會を離れ、唯だ仝じ逗留客の魯西亞の婦人リオーナマルしよいづみさんぼあるひ翌かほかさらぐわいしゆつシタと一緒に衆えで徵正し最は馬を聞けより外は近に外由をしかのたいざいをり〓〓此時セルギイ、ミハイニロウ井チはハ〓デルベルヒに滯在して折々このターアン、バーデンに來るいつこくはやロシアかんだけのことである。で、自分は一刻も早く魯西亞へ歸らうとした。ゐたひと〓〓いうれふでかゆうかた10或る日スペルトン夫人と其他の人々が遊獵に出掛けた時、其夕方自分はリオーナ、マルーシカと共しろゼじやに々がわれ〓〓ビしやおねえisほさひやくさいくりのきはささかレコに城まで馬車を走らした。勉て吾々の風邪が大路を時するるの百試の理樹に挾まれたる阪を靜のぼ〓あたかいりひひかりこのはあいえいかヽやえけじきい5登り行くと、此時恰る夕陽の光が木飛と相映でて輝ける得も云はれぬ景あを現たが、自分は何時きは끄めいろ〓〓ものがたりになく極めて眞面目にリオーナ、マルーシカと色々の物語をした。このふじんつきあたすでひさじんびんせいかくそんちやうし自分が此婦人と交際ひ出したは既に久しい前だが、今初めて其人品や其性格の尊重すべき事を知つこどもロシアかていせいくわつわれ〓〓chsおげんざいせいくわつきよざしうしよくふんきうた。子供の事や、魯西亞の家庭の生活や、吾々の此地に於ける現在の生活だ虛僞と修飾で紛糾せる事すべさんぜつうきよばなしみものがたつひじやうちうたうちやくや、惣ての慘紀なる浮世話に身を入れて物語るうち、終に城中に到着した。じやうへきうちがはひかげナマたいやうこせきくわうせんたゞよとだいたうみわたふうしよく城壁の內側は日蔭で涼しいが、太陽は其古跡に猶ほ光線を漾はして、砥の如き大道を見渡すと風色バーデンに來る百
こと〓〓し〓明媚宛として〓中の景である。其當蓐も其足音も悉く四邊に反變して寂然たる仙境を現じた。二人は石に腰掛けて慌惚として居ると其時不意に人聲が聞えた。たん〓〓そのこゑな.し〓ひ、段々其聲は明瞭と聞えて、どうも自分の名を頻りに言ふらしく思はれたので、耳を傾けて之を聽く〓〓〓〓と手に取る如く一暗々々に聞き取れた。此慶の主は即ちミカエリイ侯爵と其親友なる俳闘西人で、俳蘭西人は頻りに自分とスペルトン夫人おの〓〓竹太子とを比較して、各々の容色風釆を分析して居た。彼は决して自分を侮する言語を用ゐなかつたがひや、兎に角極めて冷かに身分の欠點を美術とを盡へ上る要を聞いたときは處をずくわとと無自分は既に子持であると渠は言ふ、然るにスベルトン夫人はまだ十九の花盛りである。自分の髪は匂濃かに且つ飽やかである、スペルトシ夫人の姿はすつきりとして萬娜かである。まかのみならず、cこスベルトン夫人は殆んど王族に屬する家柄であるが、自分は曾西亞に珍らしからぬ其處此處に充滿せる小貴族である。SO t'はほしき合葉を以上有其良つだー昇は高岡ポスニトルシアムの交響5.うになツてパーデン、バートンの交際社句からえく出せして其他置を誤つて仕舞つの裏に德を備へてゐるといふ。二人はひ、耳を傾けて之を聽く〓res小『彼女が行けば己も矢張行く、』と伊太利の鋪を帶びた聲で言ッた。『畜生ツ!まだ色をする氣だナ。」と下げしむ樣に相手の佛國人は旨つた。『色を!さうよ、色をしないで居られるもんか。やつと狂言が初まりかゝツた所で、手を引く馬鹿があるもんか。とうぜ遺掛けたもンなら、如何したツて適付けて仕舞はンけりやア···こんな事はお茶の子さい〓〓だ。』『むゝ、一ツ二ツ甘いことがある』と佛蘭西人は言つた。g 2二人はやがて何れへかムツたので、談話は是れぎり聽かれなかつたが、忽ち復た其足音が他の角2 "じ、ぶんたちふたりに聞えた。彼等は段を下りて、潜り門からそつと出て、自分淫二人のゐるを見て非常に愕然とした。cかほみ、あはか、自分は侯爵と顔見合せてはつと赤面した。で、城から歸るとき餘館なくも其同伴を受け入れたはいBかにも殘念至極である。併しまだ嫌ひぬいて擯斥する事出來ずして、リオーナが佛蘭西人と一緒に行3く後から目分は侯爵と共に我が馬車の待つ力へ步を追めた。: ;)分身は勿論無體なる月見左のが風優に加して備開西人の言葉に當或假令渠は自分が思ふ樣なミお事を口に出しただけにしても。殊にそれよりも一層當錢して且つ嫌心の情を起したは比伊太利侵爵c당惡語である。何だか其八百三
此目前にゐたゝまれぬ心地がした。であるから、一緒に步を聯べても顧阿きるせず、言葉をも交さず、只管足早にリオーナ、カの跡を追つて、唯だ何のわけもなく侯爵の腕に自分の指を掛けた丈けである。c渠は頻りに自分の美貌を板で押したやうな文句で譽め、B計らず自分に邂近した愉快を述べ、尙ほついぞ是まで聽かぬお世辭をべら〓〓並べ立てた。ロ.此時自分の心は良人と、子供と、魯西亞とに馳せて「ホテルヽバーデ」の自分の間室が待遠しくてならぬ。が、リオーナ、マルーシカは徐かに步行いて、自分の馬車は猶ほ遠方に在ツて、そして我西南部分なる会議はは重いにおず級をして分分と唯な(云さにさりそれ故自分いよ〓〓あしばやなか〓〓かつては愈々足早に行かうとすると、渠はゑかと自分の腕を取て中々勝手に步かせなかつた。=終にリオーナマルーシカと其同伴者は町角を曲つて仕舞ひ、自分達は到頭二人きりとなつた。c『失禮致します』、と云て自分は渠の腕から振りもぎると、其時上衣の催綠に候爵の袖卸鈕が引懸つた〓cので、男は之を外さうとして自分にヒタと寄添ふ途端に、其手袋を穿めぬ手が自分の手に觸れた。すると不思議な感覺が自分の靜脈を衝動した。そして自分は渠を見詰めて心魂に徹する恋怨を云はんとcしたが、ミ唯だ自分が異縮して居ることを示した丈けに止まつた。渠は燃ゆる樣な眼を濡まして自分をCニ凝視め、自分の手首の少し上を握んで、何か口籠り初めた-恐らく、渠が自分を戀慕して居ることこと〓〓いよ〓〓cつ.と、自分が風丰言動が悉く果の心を導ツた事を言はんとするらしく、愈々志ツかりと自分の腕を握んだ。C自分は惘然として霧に包まれしが如く、一ト言きつばりと云ひ遞けやうとしても唯だどぎまぎする〓〓ロ、言ばかりで惣ての言葉はの中で消えて仕舞つた。すると突然自分の頰に接吻を感じた。自分は背筋か=ら震へ上ツて氷の如く全身冷えて身動きも出來ず、ひたすら救助者の來るを待つばかりである-何〓故だか其理由は更に分らぬけれど。患かし此甲斐なき驚愕ははんの和那の辛抱であつたが、此刹那がなか〓〓"中々に恐ろしく、說のやうな中から良人の顏に宵たる侯爵の廣額と、其隆準と、其美髯と、其豐頰とを見て、假令自分は渠を嫌悪し日つ畏懼して居るにしても、又假令渠は赤の他人であるにしても、慥cに渠が滿腔の憎焰は自分に傾倒しつゝある事を感じた。な『私は貴婦を愛します』と候爵は繰返した。其時良人セルギイ、ミハイエロウ井チと子供の顏が自分답ふ〓の心眼に浮んだは、恰も危急の隙に臨んでごと以前に逝去りし最憂の人を以由由すが如t幸に此時リオーナ、マルーシカは自分を呼んで吳れた。其聲が耳に入ると、俄かに勇氣が出て、侯.x爵の手を無理に振放し、見向きもせず言葉をも吐かず惰惶周章の躰で友達の許に願せ、急いで馬車に其八
とびうつはじこうしやくかたみかへばうし노ろあひづじぶんめあらはいろ飛移ツて初めて侯爵の方を回顧ると、渠は帽子を振つて或る合圖をした。で、自分の眼に現れし色をみむごんけんをさとすこせきめんコナリかれせかいにんげん見て無言の嫌惡を悟つたらしく、少しく赤面したは流石に彼も亦交此世界の人間である。わげんざいすできばうaらいあんたんじぶん12.こうしやくせつぶんおみと我が現在は既に希望なく、我が未來もまた黯澹たるは、自分の頬に燃えし侯爵の接吻は我が身に取ちヾよくらくいんがんcぶんをつとこどもかんがばうゆんじしつすこぶりて恥辱の烙印の如く感じたからである。そして自分の良人や子供の事を考へると徒然自失して頗るらくたん落膽した。わりよしゆくもとものさびいついつそうたせつかくちやめいのきくなほど吾が旅宿に戾ると、其物寂しさは何時もよりも一層堪えがたく、折角茶を命じても咽喉に下らぬ程な0もえたもとゅである。そして何故だか知らぬが、燃立つやうにはいるせきとしてハイアルベルヒの頁人の許に行ほとむ4しきにひしらんとて殆んど無意識に荷拵へをした。かっきじ々のりこまどかよしんせんや上cぶんじやうりゴなうLだいさ下婢を連れて滊車に乘込み、窓から通ふ新鮮なる夜氣に觸れるを自分の上氣したき頭腦は次第にはじいきっやうやしゆ〓〓し ねんめぐで〓めて、初めてほつと息を吐き、漸く種その思念を運らすことが出來るやうになつた。くわこテねんかんろんじぞまゐきぞすおもひだゐなかどなゐやのちほどをつとしんぱい初めは過去數年間の田舍住居の氣安さを憶出し、それから田舎住居を罷めて後どれ程良人に心配をかんがいまさらたまじぶんりやうしんはげじぶんかせき掛けたかを考へると、今更堪らなくなつて自分の良心は激しく自を呵責した。なにゆゑをつとじぶんいつしよなにゆゑをつと1cmあひだきよぎおなにゆゑをつと何故に良人は自分と一緒に在らざるや、又何故に良人は夫婦の間に虛僞爲搆いしや、又何故に良人かにごとうちあきらなにゆみをつとじぶんむやくたいなにゆゑをつとじぶんンあいは何事も打明くるを嫌ひしや、又何故に良人は自分を虐待せしや、又何故に良人は自分に於ける愛のせいりよくこヽろをつともはやあいし、とかくたとをつとろつけ勢力を試みざりしや?良人は最早自分を愛してゐないのかも知れぬ。兎に角、縱令へば良人が自らせめにんリゆうなじぶんはらくいんたにんせつぶんち實に任ずべき理由があるにしても無いにしても、自分の頰に熔印せられし他入の援吻はどこまでる耻ちよくちが辱に違ひない。·しやだん〓〓ちかます〓〓をつとゐし滊車がハイデルベルヒに段々近づくと、益々良人セルギイ、ミハイエロウ井チに逢ふのが染みんこと恐ろしくなつた。ぃしなにかうちあなみだけつしん「おん言わとをはサかから--旬落及シン許語のを· 三歲のをかんべんちが『きつとセルギイは勘辨して吳れるに遺ひないる。』しかしんじつなはなぃはたかんべんかいたんじつわか併し眞實は何んと話して好いものか知らぬ。又果して良人が勘辨して吳れるもの歟否歟實に分らaloはぶじたうちやくをつとりよしゆくゅちんちやくたヾいくぶんがくゆんおもヽちaざん先づ無事に到着して良人の旅宿に行き、其沈着なる但し幾分か愕然としたる面持を見しときは、懺けはうがくかんべんこしたかなつらくちおいんわがこゝろおしかさ悔をする方角もなく勘辨を暗ふすべも知らず、唯だ悲しい辛い口惜しい念が吾心に押重なつて來た。ミ、きるすはう15ぷるかれとぶんカニれさ『どうしてお前は來た?明日はわしのガから行かうと思つたに、』と渠は言つた。で、自分の顏に歷ぜんあらいつしゆぎやうさうかがくぜん然と見はれたる一種の形相を視て愕然としたらしく、『どうした?どうしたンだ?』なぶんAre,あふ女九九ひおさつらしのことさら『いゝえ、』と成るべく自分は沈若いて、今にも溢れんとする淚を無理に抑へて、辛さを忍んで殊更にます〓〓をつと益々良人セルギイ、ゐしミハイエロウ井チに逢ふのが染みんじつわか實に分ら
(いきいろ?らしさいしゆつたつわる平氣な色を作つて、『少と仔細があつてパーデン、パーデンを出立したの、なアに惡いこツちやアあり五十七あなたごつがふあしたロシ.アかへません。だが、ねエ貴夫、真大さへ御都合がよけりやア明日にも魯西亞へ歸りませう。』なにいやろをつとねんといぶんみつ『何か嫌な事でも有ツたか?い』と良人は宏つと念を入れて自分を見詰めながら言つた。bじぶんごなじろうつおをつとおねあきいつしゆかこくさうすなはけんしゆんふんど思はず自分は羞明んで下向ひた。ちやうこう良人の顏に明らかに一種の苛酷なる相、即ち嚴峻なる慣怒の徵候うごみじぶんおそこゝろで당が動くを見て、シきよごんわれ自分は其恐ろしさにおと〓〓して、ツイ心にもない又出來さうにも思はれぬ虛言を我しくちばやこか知らず作りだして口早に答へた。ごDIEさび『なンにも起りはしませんけれど、だん〓〓かんがみいま一人で寂しくつてなりませんもの。それに段々考へて視ると、今わたしムしよぞんあなたぼしめしかなくらしまつたわモニのの所なかを東京市場西南將はなにはいたんだけどあったらに"わたしわごかんべんあそ全く妾は惡るう御坐いました。めいつばい女大阪みせせとうか今までの事は御勘辨遊ばして、』と眼に一杯の涙を漲らして、か、しやうどこゅco『ニコオルスキイヘ歸ツて、もう〓〓一生何處へも行かずに暮したいり。』やひやかロつか『そんな事は云ふな、』と較や冷かに、くにか、『金子も最う遣ひ切ツたからとうしたツて國へ歸らんければなしかいつしやういながことひとんがこのくらしあきつまららぬ。併し一生と云ふは長い事で、又今に田合の無事平和な生活に他が來るだらうよ。詰らぬ事を云ことちやおちつ..すヾなひまア茶でものんで氣を落付けるが好い、』かはずに、と云ひながら鈴を鳴らして家婢を呼んだ。をつとcぶんことばうたがしりひみつわけがらすこぶだうり買上の自身の高等近のティムリをとの秘密の燃相をありたらは願るcぶんます自分は益〓〓うつけつみじやすゐふかめひじやうおそか々欝結して、ぞうりと自分を見る其邪推澤い眼が非業に恐ろし氣げであつた。わかわかふるていとりつくろさう〓〓をつともくぜんさ『なアに分るもンか、分りやアしないタ、』と思ツて、躰よく取繕ツて早々良人の目前を避けんとしひとりジ。なななきくづた-一人になツて思ふさま泣いて、泣いて、泣頽れんが爲に。八
其九せきばくわいへこた、くわつきnわたして寂寞としてゐたニオルハキくの我が欲は可び造張を以至を流つgいぜんやうすが、以前の樣子まるかははヽおやしニいつとは九で鬱つて、ふたりセルギイ、ミハイエロウ井子の母親は死んで仕舞つたから、今ではたつた二人ぎりはなつきあはゆゑさくいんどくしよものさびで鼻突合してゐた。おほかさそれ故索然獨處してゐるわげでもないが、物凄しさは二人の上にび重つて、さじぶんなんじふふゆすぎさに&めるほどに自分のためには頗る難澁なる多は過去つて、こ:らいくらぶんな二度目の子供が生れてから漸く幾等か氣分を回は復した。じぶんくわんけいれいたんすべ目分とセルギイ一ミハイエロウホテとの開係は願る沿淡を極めてゐしよせきすべ〓〓で、惣ての書籍、物ての扁額、がくを「あるバイ」として居見ないしてるるではそうして存器之なすべなにみおかじぶんくわくとくこのい2なし二おもひたとてかんべんでgはどざいくわそかくのを憶出した。なにきと或は延も勘辨出來心程の卯過が夫婦の間を興醜したのかも知れぬ。をつと或は良人は何事かcぶんせきばつくわしつい自分お気割せを繰りるのある。かあやまでュして謝罪ることが出來やうか。ぶんことさらむとんぢやくよそば時によると或は自分をいおめるため建更に無暇者を粧ふてゐるのできうじじやうあいなをつと舊時の情愛は今でも猶ほ良人しんりのこそれゆゑじぶんむゐぶんいひわけの心裡に殘つてゐると思ツた事もある。いっをつ、夫故自分は随分解說を聞かうとした事もあるが、何時でも良とcぶんし3. gひまつたCぶんいつはりうたがまじめがんじやうあら入は必ず自分の試問を忌避した。全く之は自分を虛僞を云ふ者と疑つて、今の時に眞摯な感情を現はすこぶばかすは頗る馬鹿々々しき事と考へてゐる。めとうさか渠の眼と渠の動作は斯く云ふらしかつた。曰く、おれしまへはなもらおよまへおれ3かんなほ上しゆび『己はみンな知つてゐる、なにもお前かち話して貰ふには及ばぬ。お前が己の機嫌を直して不首尾をつくらBerよわかまへくちはのしうちみ繕うと悶いてゐる事は能く分る。お前は口づから仄めかす事もある、又動作で見せる事もある。一々おれBっ己には氣が附いてゐるぞ』200ぶんうちとをつとかほあはおそだん〓〓なっをつとせいしつぐわんらい初めは自分に打解けて吳れぬ夏人に如合せるが恐ろしかつたが、段々馴れて終に良人の性質は元來しやらくえんかいゑそつちよくあいさうはうけつくたうぜんさとあんしん酒落の分子を欠く故、率直で愛想のない方が結句當然であると悟つて安心した。cぶんはうはやをつとごちよくはふことば〓ぶんとも8たうよ自分の方では、最早良人を愛して居るといふ直入の言葉を吐く事も、自分と共に祈禱を讀んで吳れたのcぶんだん上で9かせいくわつさぶてうじふたと賴む事も、自分が「ビヤノ」を彈する時に呼ぶことも出來ず、一家の生活が惣て不調子になつて、二かていくわいらくぺんぎかもちろんどうぢうたなじつさいふたりべつきよ人共に家庭の快樂と便宜とを欠いた。勿論同住といふは唯だ名のみにて、實際は二人とも別居してゐかほをつとしよくむいそじぶんさらつうやうかんぶんたせうかると少しも變らぬ。良人は其職務に忙がしかツたが、自分は更に痛痒を感じない。又自分も多少の家Cようをつととんふりむさうはうともかつてすこをつと、かまつまかへり事用を有てど、良人は頓と振向きもせず。双方共に勝手な用をして、少しも良人に構はず、妻を顧みへいりれいたんほとふうふもとこreかあいちがず、平氣で、冷淡で、殆んど夫婦であるかないかの如くであツた。本より子供は可愛いに違ひないがまじめがんじやうあら今の時に眞摯な感情を現は九
このふたりあひだかすがいあまちいす此二人の間の餅とするには餘り小さ過ぎた。はるすなつあひだとうりうあたかこのときかきしうふくやがて春は過ぎて、マカアとソオニヤが夏の間運留せんとて來た。恰も此時家屋の修覆を初めたのいつかいちじひきうつで自分一家は一時ボコロオウスキイに引移ツた。このいへおなモふんもつとふるなじみひあたよものみりつぱさしきかざおきつ此家は同じく自分の最も古い馴染で、日當り好き觀臺と、立派な坐敷に飾られし置付けの「ビヤノ」はくしよくとばりsようじゆめあんじみcぶんこざしきこれらcぶんなじみと、白色の帷帳と共に、幼時の夢の名殘で充てる自分の小坐敷-是等はみンな自分の馴染である。ねどこBうちげんざいふとかげんきn今でも二つの寐盛が部屋の中に在つて、現在一つには肥滿つて且つ元氣なココオシカが寐て、一つにビいろはまくらおいつは猶ほいたいけなザハニヤが熟微色の如を枕に推附けてゐる。をつとBSいちどううほゐそのねどこかたはらすはへいもくちんしようじげんざう良人を初め一同が甘睡してゐる時、其寐臺の傍に坐つて閉目沈思すれば、幼時の現像があり〓〓ともくゆんみむかおぼこゑひさあひだわすうたsこきこその目前に見える。ことして苦し眞をの發で久しい間言れてゐた感をちたらの何感とも其こおすめざかあだつじうらうたことろの人や、娘盛りの仇な辻占めいた歌は今ではどうなつた事か?のぞのぞたのむにつかたちまさんく〓ごわいかいやうす望まぬものは望まれて、そして樂しい事は我手に製むと忽ち酸苦と機ずる。けれとも外界の樣子はさんへんくわおなにはおなみちおなまきしたこむらさへシャうぐひすおんげうはなおなてんち全く變化せずにあつた。同じ庭、同じ徑、同じ窓下の木發に嚇ずる同じ鶯、同じ連翹の花、同じ天地ぎんばみなぎanげつくわうすべぐわいかいこと〓〓かわれ〓〓ないかいへんくわに銀波を誤らす向た月光-抱てゐ外のるるが語く同じものであろに斯くも又我々の內界が變化せしことよーあたかこのときかきしうふく恰も此時家屋の修覆を初めたのいつきうらあたゝひやおもしろ一度は麗らかで温かなりしものが、今は冷やかで面白くなくなつた。むかしじぶんあさざしきすはしやべかほあをじろまcめ昔時の如く自分は朝の金數にマカアと其に坐つて饒舌つて居た。が、マカアの顏は蒼白く、眞面目めかいしんれんじゆつあらせいしつはかはで、其眼は戒愼と憐恤とを現はして、そしてセルギイ、ミハイエロウ井チの性質を譽めることの代りか、ほうへんゆつたんくだすべせかいじぶんだちかうふくねがかはに却つて渠に褒貶の月旦を下した。そして惚ての世界加自分達を共に孝福であることを願ふ代りに、かせいじさんたんへんせんもゝちたびくりかへたんそく斯くも世事は慘發なる變遷をなすものかと百千歳級發して欲思したいっどうやう〃ひたひじわふかもみあげけじろセルギイ、ミハイエロウ井チは何時も同樣である。唯だ額の小皺が深くなつて、揉上の毛か白くなそのくぼめいぶんさとう:おほつて、して其面ル皆可尙何はでも目ダメあける何ず気家也て程はむく居るじぶんやはりとうやうはやわこゝろうちヲヴねんラヴこ합ほう自分も矢張同樣である。が、最早我が心の中に戀するといふ念も、また戀に焦がるゝ希望もなかつた。ごとむさぼさまんぞくいぜんしゆうけうじやうかんがへをつとで、仕事をも貪らうともせず、去りとて滿足もしなかつた。すれば以前の宗〓上の慮や、良人にたいじやうゐいいかけんかくいかじんベもつともめいはく對する情愛は如何に〓隔し如何に信ず可からざるや。一度は道理らしく明白であるやうに思はれしこすなはたにんせいぞんかうふくいいで모さらわかと-即を他人の於に生ずるる之禍と云ふことが4其直方直に分会なセたにんcぶんせいぞんゅおぼつかこヽろもち何故他人の爲に、自分の爲にすらとても生存して行くことが然東ない心持がするに?すまいらいまつたおんがくとほレ〓ふるなじみみわかペテルブルグに住つて以來、全く音楽に遠ざかつて仕舞つたが、舊い馴染の「ビヤノ」を見ると若い九九
かう、時の嗜好を回復した。或る日セルギイ、ハニイイヨロカリは酸膚の條複の是分をせんためッカクとソルキヤオルスキイに出掛けた。此時自分は氣分が鬱いでならぬから、一人跡に殘つて留守居をした。夕方に담の譜本s Fantasiaなつて、一同の歸宅を待受けて居るとき、自分は「ピヤノ」の前に坐し、Quasi mm登を開いて彈べ初めた。で、一曲をし於つくすし良人加盟に坐したる腐を禁權的に我れ知らず振が、今では其坐は空しかつた。66日一々窓を開いて外方を見ると、夕陽の光は連翹の花に映じて、その馥郁たる花の香が部屋の中に忍び込たなんで、哀しい憐れな但し美はし「「セヤ」の音と妙に調子を合せる。やがて自分は手を顏にあて、暫らく默然として悲壯、痛恨、難苦、酸辛を以て充てる過去の歷史を追憶して、『こんな事があらうか、』と自分は情なくなツて、『もう生涯がお終ひになツたのか知らん?』こして此よく〓くしするが後を起すまとなくないとマッ」に留て同そして突然跪づいて祈念した。『神よ!若し私に罪あらば免させ給ひて、.既に失ひし過去の幸福を得せしめ給へ。私の心を消め、爲すべきことを〓へ、如何にして生存らうべきかを指示し給ヘー』ニろく〓復び「ピヤノ」の前に坐つて、彈等に餘念なき時、轆々たる車輪の音は戶に聞え、觀臺に聽慣れし穩やかな建音がした。で、復び靜まり返つた。けれども此定音は我が心に舊時の感情を起きしめぬから、自分は猶ほ彈等の手を休めず、再び一曲を奏し終りしとき再び同じ是音が聞えた。が、今度は自分の背後で、突然自分の肩にそツと手を載せたものがある。『久し振りで其曲を覗いた、』とセルギイミハイエロウ井チは言つた。c自分は返事をしなかつた。『お前、茶を飮まんかエ?』いD.〓自分は首を振るばかりで良人の方を屈順かなかつた。之は自分の顔に見はるゝ感情を讀まれるを恐れたからで。3つ『マカアもソオニヤも直きるだらう、』と良人は云ツた。『みンなは步行きたいと云ッたから、それぶで遲れてしまツた。』끄で「なんならみンなが歸ろのを待ちまさつ。ご自分は答(ながら觀察竊かに良人が後から跟s 1いて來ることを希望した。然るに良人は子供を捜しに出薄けて自分と別れて仕舞ツたが、兎に角良人が自分の前に來て多少の言葉を掛けた事は、いくらか自分の心を慰めて、若しや良人の愛を喪ひしにあらぬかといふ疑念を晴した。『みンなは步行きたいと云ッたから、それ其九
このうへよくしんちうジョをつとしんせつにうわちをつとりつぱヒゴ『此上の慾はないワ、』と心中に思つた。『良人は親切で、柔和で、父としても良人としても立派な耻なにふそくぶんわかかしからぬ人だ。それだのに、何が不足で居るのか、どうも自分には分らぬ。』ものみいつふうふやくそくおすこしかけせきし觀臺に行て、むかし夫婦の約束を結びし時と同じ腰掛に席を占めた。すでやまはかくこだちふかたそがればらいろひかりなてんには此時日は既に山の端に隱れ、木立深き中に黄昏の〓〓色の光を投げてゐた。すると天は遠かにかきゆうぜんいちめんびろくろくもいへにはニ、おほかさかぜ〓くさはくもり、油然として、一ににに今までの風は凪ぎ、草の葉すそよはなさぜらこむらあらくわなへどこえだのばかはづゐら戰がなかつた。で、まだ花の咲かの謂激の本遵は新たに劔を入れたる苗床に枝を伸し、蛙は啞々となうぐひすこたちおの〓〓さへぞたして鳴き、鶯はそここゝの木立から各々喞り出した。Bぶんそばざし其中セルギイ、ミハイヱロウ井チは來て、自分の傍に坐を占めた。よつゆぬまるあめふつ『ソオニヤもベカアも夜露に濡れるだらうに、』と渠は言つた。『丸で雨が降てゐる樣だ。』ぶんふたりちんもく(だん〓〓ひく『さう、ほんとに左うですヲ、』と自分は答へて復た二人は沈默して仕舞つた。其時雲は段々低くなつあめひおほこんどにはみて、たちまち雨がばら〓〓と日覆ひに落ちて來た。すると、今度はぼつ〓〓庭に落ちて、それからのみエはげさつしのみだかはつちまちかまくわんぼく上、セラうぐひすなやは計る間に參しく恐してをしてけけ土土得機て居る鹽末に降り滌い蛙も鶯も鳴き歇んしよくどうさうかこむちすつびき〓なで、唯だ食業の窓下の本體に集を作れる一匹の鳥ばかりが唱いて居た。bゅたセルギイ、ミハイエロウ非チは他方へ行かうとして起ちかけた。ゆたづこら『とこへ行くノ?』と自分は尋ねた。茲玆ゐらツしやる方か好いり。』むかやかさ『マカアやソオニヤを迎ひに遣らんければ、傘を持たして··ゆふたちすや『なに好う御座ひますよ。白雨だから直ぐ歌みませう。』をつとぶんことばしたがふたりneらんかん3しぶきじぶんゑりかみほどばしだん良人は自分の言葉に從つて二人共に欄干にもたれて居た。冷たい繁吹が自分の頸と髪に迸つて、段yサあまぐもちやうどじぶんうわかぶおとやさいごせきれきあまだん々稀薄くなる雨雲は、丁度自分の上で二つに分れ、其時どして降りの音が休むと最後の漸瀝たる擔滴おとかはづなうぐひす日あうるほはじたこかしこの音ばかりとなる。すると再び蛙は鳴き、鶯は羽ばたきを初めて雨に霜ふ葉の下から此處や彼處で互B)すべさらまたせきぜんに囀りだした。で、惣てが更に又寂然として來た。じつゆくわいてすりもたあめぬかみ『實に愉快ぢや』とセルキイは獨子に先れて雨に灣れし目分の變をなでながら云つたなんじやうあい〓じ習うごほとなきた此何でもなき情愛が不思議に我が心を動かして、殆んど泣出したくなつた。よくばをつどわしなにふそくラnわしゆくわい『此上慾張る事もない、』と良人は云ツた。『私は何も不足のないのが嬉しくてならぬ。私はそれが愉快でならぬ。』わたししあはせこ200なに『炎が半福よくなりたくつて斯レな事でも云はれたいと思ふ時には何とも云ツて吳れないくせに、』cぶんくちうちつくるあんたしあはせます〓〓しあはせさつと自分は口の裏で呟いた。『貴夫は仕合がよければよいほど、益々仕合よくなりたいと仰しやるにちがわたししゞゆうきいちかうし〓.はどぶんョらくあんしんひない。だけど、妾が始終氣を揉んでゐるのを一向知らん顏をして、御自分ばかり氣樂に安心してゐ九
まいにち〓〓〓〓わたししんぱいほんとうなきだ毎日々々妾は心配はツかりして本統に遭出したい樣だ.30みまいにち〓〓〓〓わたししんぱいほんとうなきだらつしやればいこと思ふのは餘ンまりひどい。毎日々々妾は心配はツかりして本統に遭出したい樣だワうきよやはりわたししんせつ스ぶんこわだかしんせつす「世性はかなたたしなんよじgなにかジじじゅうけつこうすくらゐで却て悲しくなる。妾は何だか不思議でならないと思ふのは、何も彼も無事平和で結構過ぎる位だのなサ!ものたこヽちふそものこひ何故だか知らぬが、あに、どうも物足りない心地がして、其不足してゐる物が戀しくてなりません。貴なたむかしきつとくちをおもまつたゆくわいわけ夫だつて過去の事を能度口惜しくを思ひなさることがありませう。すれば全く愉快だといふ譯には迚たのしみうちかなしみまじちがも參りません。歡樂の中にも哀普が交つておるに遠ひありますまい。』をつとcぶんあたまカしばもくぜんゐ良人は自分の頭に置く手を引いて暫らく聴然として居た。をつとことばあらたひさはるわしcぶんばうゆくすゑなにa『さて』と良人は言葉を更めて、『久しいあとに春のことだ。か私は自分の希望や行末の事や何や彼を寐わんけやあかばんじばんぶつわしまへぎながら考へて一ト夜を明した事があつたつけ。けれどもその時には萬事萬物が私の前に五辭傷をしてこヽろもちいままるせなかあはし〓いまゐ來るやうな心持がしたが、今では丸で背中合せになつて仕舞つた。まかし今ではわしは有るだけのもまんぞくじゆうぶんちからいいらあじぶんことばよつたので滿足して居る。是でもう充分だ。』と力を入れてさつばりと言切つたは、自分がその言葉に依て多せうかんじやうがいかたししんりみと少の感情を害したにも拘はらず、慥かに其中に眞理があると認めたほどである。あなたのぞぶんたづ『そんなら、もう貴夫の望む所はありませんか、」と自分は發ねた。なに『何があるもんか。』ざんねんぼしめじぶん〓レゴいをつとざんじむごんむかし良人は暫時無言『過去の事をちつとも殘念だとお思召しませんか?』と自分は氣を沈まして言つた。じぶんまごヽろ. 3cmこたほつとなツて、そして自分に異心を打明けて答へやうと欲するらしかツた。つひいそのじぶんかうふくみりおるいまさらなにしうしやうかれ今更何で愁傷しやう『いゝや、』と渠は終に云つた。『わしは其時ガに享けた幸福を有がたく思ふとも、ぞ。』あなたおもひだじぶんがうじやう=『けれども貴夫は、お思出しなさいませう、子、』と自分は剛情を張ると、『左樣、aやうなれ何も無理に思出さうといふ慾もない。むリおもひださ役にも立たぬ述懷をした處で暗らん話だ。』か、たじゆつくわいつま모든ごじぶんごぶんしかあそやうわたしあなた御自分を御自分でお叱り遊ばす樣な事す『そんなら貴夫は、妾のお氣に入らないのはいふ迄もなく、らございませう?』『そンな事はない。』きくだぶんとつよぎぶんかほやうなせるたんわたし「マジオアアでにてるは其の等を学校を とのしいうあたハロあなたあれしあつせいいつそくばくぜんようみち若し貴夫が妾を壓制して寧そ束縛しか著用する道を知らないうちに「自由」を與へて下さいました?くだやはりかうふくて下すつたなら今でも矢張幸福で御座いましたらうのに。』かうふくがくぜん『そんなら吾々夫婦は幸でないと云ふのかエ?』と渠は愕然として云つた。をつとざんじむごん良人は暫時無言いまさらなにしうしやう今更何で愁傷しやう百十九其九
『はい、幸福どころではごさいません。かうふくおたなさけあなたいつたんわたしめぐ妾はほんとに情なうございます。貴夫は一端妾にお惠みになあいそんけいしんにんこと〓〓うばツた「愛」も「尊敬」も「信」も盡く奪つてお仕舞ひなされました。むかしかんがですから。過去の事を考へますと今かあいハハタかこゝろかはでは妾を可愛がツて下さるとは思へません。もちろんわたしシン斯うお心が變りましたのは、それは勿論妾ばかりの罪でわたしばかをメルもございませう、だんうれゆるしえございませうけれどき-亥の權な馬座なだなせ-一輝増しい諸語をふうふむすとるきふgみきろあそ偕老のちぎりを結んだものを、あなかたわたし丸切り振り切ツて見殺しに遊ばすのは餘シまりな爲され方だ。妾は如うあなたむかむつかあいいたけ何かして真央と音しの機に険まぐして可愛がりていかいつともがいあなたすこさつ貴夫は少しも察してくだわたしきらきらきらぬたわたしわかはかりおつ下さらないで、妾を嫌ツて、嫌ツて、嫌ひ扱いて、唾だ安が分らないと斗り仰しやつてゐらつしやる。あなたでかつてあそたたあそはい、貴夫の御勝手に遊ばせ。かこまぼしめさンざ妾をおいぢめ遊ばして、とうでも斯うでも困らせやうとお思召すなら、それがよろしうございませう。』まへかんどうふうすあり〓〓と〓現して云ツた。『なにをお前は言ふ?』とその感動せし容子をきのふあなたきのふl.じゆうあなた『昨日も貴夫は、フェルルぞまゐわたしてき昨日ばかりぢやアない、始終貴夫は云ツてゐらつしやる。此田舎住居は妾に適さなこんげつすゑいから今月の末あたりには再たベテルブルグへ行かうと仰しやいましたでせう?ミゅ此ベテルプルグ、たいきらもう〓〓大嫌ひな此ベテルブルグへをつとがくゆんぶんnつ良人はます〓〓〓然として自分を凝視めた。わたしロ간くだふたゝこにはつあなたなわたしうちとやうあそ『妾を保護して下さらないで、」と出び實兼を續ぐ。其其は成るべく安と打燈けない樣に遊ばしてやしんせつことばかくだあんしなにさいなんであさしい親切なお言葉はちつとも懸けて下さらない。ですから、若し妾が何か災難にでも出遇つたなら、きつと、あなたわたしとがしかあそちが屹度貴夫は妾の答にしてお叱り遊ばすに違ひない。〓やれいぜんかげんぜんむかつ『罷めなさい、祀めなさい」に冷然としてらつ發然として「こんな事を云ふもンでわしに向じやすゐぐるならとういつたいまへて邪推がましい聞き苦しい事を聊べるとは如何したンだ、一躰お前は····』あなたあいぼらつこたなみた『貴夫を愛慕して居ないといふ事ですか。そんならさう仰しやいまし!』ときつばり答へると共に涙さん〓〓あふぶんこしかけうへみなおはおほは潜々として溢れ、やがて自分は腰掛の上に身を投げて「ハンクチーフ」で顔を掩ふた。おもちがじぶんむなみたおさしんちう「あままろつてるといしてにたななの」と月社臨ガシムを挙如えとつた。ばんじむかこひしこゝろうちこゑきこすると『萬事皆やんでしまつた、昔しの戀は死んでしまつた』と心の中にさゝやく盛が開える。ぶんそばcぶんなぐさじぶんことばたしかをつとえそん其時渠は自分の傍へも寄らず、自分を慰めやうともしなかつた。自分の言葉は慥に良人の機嫌を損こゑかんけつヒじたらしく、その聲は簡潔で沈んでゐた。三のみこをつといひだわしロ、あい『お前はなぜそんな事をいふ?わしにはとんと呑込めぬ、』と良人は言出した。『若し私がお前を愛さけつこんたうじあいつまりとしつハとしあいいろ〓〓ないなら、結婚の當時の如くに愛さないなら、それは畢竟歲月の罪である。年によつて愛にも色々の其九
c種類がある。初めてお前に逢つた時分には、お前の事斗り考へて一ト晩寐ずに明かした事もいくらかニ、9ある。ペラルブルクや或はバーデンバープンに居た頃には心からお前を愛する念を切らうと思ツて其爲めに恐ろしい夜を送つた事もある。なぜなら其「變」は却て自分を苦しめる丈になって仕舞ッたかg 50けれども私は、何分思ふ樣に思ひ切れないで唯だ幾らか氣を沈着けた位でお仕舞になツた。勿論今でもお前を可愛がツて居る、よしんは其可愛がり方が違つてゐるにしても-』ら『それを貴夫は「愛」と仰しやるンですか?それは「愛」でなくて「苦」でございます、』と自分は答へた。『貴夫は交際社會が惡魔の巢窟である事を充分御存じでゐながら、なぜ世故に慣れぬ妾を其中へ遣て下さいました?貴夫が妾を可愛がらなくなツたのは即ちこの社會の罪でございます。』『社會は决して罪あるものでない。』『なぜ又貴夫は良人の權有を充分にお揮ひになりません?』と自分は答へた。『なぜ又貴夫は妾を練りLつけて、寧そ殺して下さいませんかツた?惣ての幸福を失くなして仕舞ふ位ならいつその事死んだ모方が增しだ、其方が却て耻辱を少なく致します。』自分は再びシクシク泣出した。そして再び顏を抑へた。其時マタテどソコマキは而に溺れながらる元氣よく發商に笑ひなが併し自分達の容子の唯併し自分達の容子の唯3ならぬを見て何だか氣どツたらしく、不思議におとなしく爲ツて、忽ち去て仕舞ツた。cやがて暫らくは二人とも無言となつて、自分は有るほどの涙を振然ツて殆んどやるせなかツた。で、ロ3良人を竊と見上げると、良人は兩手を前類に當てヽ何か云はんと欲する躰である。併し渠は溜息を長く引いたゞけで罷んだ。自分はその傍に摺寄つてその手を取ると、愁然たる面持をして自分を顧胸いた。ふ、じんき、『勿論』』と彼は恰も暫らく思案を凝せしかの如く、『人間は、取分け婦人は眞正な生涯を送る前に、左旋位置益社會切らとゐ置いた。ての"點はな血壓を無心無線而由Bヨ出來ぬ。お前の様な年のゆかむるもは比弗業方輕講社會の知識をにく持たぬそれ故わしはお前ロ、に暫時此學問を少しさせたかツたのだ。實際あしはお前が此輕滯社會に浮かれてゐるのを否止める權利は有たぬ。』·%『何故貴夫は、心底妾を可愛がツて下さるなら、何故またあンな輕薄社に妾を入れて下さいました?と自分質疑した。ヨ『お前はお前自身で世間の事を味はなければならぬ。唯私が話して聞かしたいけでは迎もお前には信gじる事は出來ぬ。』·%何故またあンな輕薄社に妾を入れて下さいました?唯私が話して聞かしたいけでは迎もお前には信其九
五十五ワくつぢつじぶんなぎみすこかあいくだ「だを其の時間をあいてまに」を見続けつるみふしも異種がシ子でんのでせう。』しばたむごん暫らくは復た無言となツた。ロいまいことじつBなるほどいちおうもつともいはせきものみ『お前が今言ツた事は實に聽きづらいけれど、らう成程それは一應道理だ。』と云つて俄かに席を起て朝憂うんどうはじを運動し初めた。じつくつまつたわcぶんあしとむかしやう『實に、ヨヘ理窟がある。あいくんsこれかんりやくかたちさうとは思はね。老かし之よりはずつと簡畧な形で····Cぶんをつとことばgながおかし身其は買んの「量を聞き流してこはくし云ツた。恋去の事はう忘れしめおよひとたうていあともとできをつとこたそのおんじやう『さやう、過ぎたることは駟馬も及ばぬ、人は到底後戻りの出來ぬものだ、』と良人は答へた。其音聲だんもの々はら9は段々と物柔かになつて來た。たむせしとほなかちつとかたてかとつ『復た過去の通りに中よく老ませう、』と云て良人の肩に手を掛けると、良人は其手を拿て緊と握つた。をつとこレ.に所なことぃつひをつとくちき.ございあり『わしは眞實至はなかつつて、後後はじめる。適全のことを聞きをとつだのは学まつたいつはしよせんすぎさゆめいまさらよびかへでeくちをおもひょんちしうしやういくたびりて、双論までとのめななるので、電話家事由來ら旨置して急てしているそもそだれこさんたんきやつがいほねざいにんわかいまじやうあいる。抑も誰が此シな候補だる境界を逹いた乎其罪人はわしには分らぬ。のこそれは今でも情愛が殘らんでなるほどいちおうもつともいはせきものみらう成程それは一應道理だ。』と云つて俄かに席を起て朝憂る。ちからてうしぬルエたをり〓〓おもひだはないが、力も調子も抜けて仕舞ツた。唯だ折々思出して····ことおつじぶんいしんきいぜんやうじやうあいべでん生ず如していますな。」自分はなった『新規収版前の總產權あねニ、さうし5かほのぞこ+5/いよ、ものさちんせいめぶんませう、』と云ツてしげ/\と其の顏を覗き込むと、良人は愈々物寂ひし氣に沈靜した眼を自分に見せた。いまふたりさいしぎやうさううしな、たがひくわうゆんいろ〓今は二人ともに細思の形相を失つて互に性然たる色を帶びて來た。たんわにすうちしぶんお=こがをつとあいじやうとてえことかくれうで、路の中を無する。日野線モリ得たれなる見えの常常難の後点的事業じゆんかうぼくじつたいとむかくわんじあたからうじんぶんなきちゝぎみびせうせつ醇厚朴重なる態度を以て自分に對つて莞爾としたる時は、恰も老人-自分の亡父君の微笑に接するこヽち心地がした。まへなかわ.だいぶとしまへのぞあいじやうと『お前はまだ中々若いが、わしはもう大分年を老つた。だから、お前が望むやうな愛情はわしには既かSieことでなびせうふくかれくに欠けて居る。迚も自分を欺く事は出來ぬ、』と猶ほ微笑を含んで渠は云つた。をつとそばたレだいあんしん&自分は良人の傍に立つて次第々々に安心して來た。にきふたいおなしやうがいくりかへをつとことばつあいちこれたしんニ「皮と再びおに生法を殺火子でない。となんは我び言業を檢る。是からは唯だ心ばいくこうたくさんこのほかさすですでかうふくうんみつ配や苦勞をしなければそれで澤山だ。此外に慾はない。既に己に幸福な運は見付けて仕舞ッたから、これわれざむたせいだうふじやうていごらんたそのときうぼからなみの診断はあともと言の關災"にいるのは言います其九
だかこのものみさまたわれなgむ殺しても製製を実光学生がゆへへやる當せして、新生産業大分なるからはぶんかみせつぶん身躰をこヾまして自分の髪に接吻した。あいじんふるともだちせつぶんだが、これは愛人のでなくして故き明友の接吻であつた。かほたえたそがれきよすヾかぜにはしやういづこはるかこゑくうまうちせんきうきこ薰り妙なる黃昏の消き涼風が庭に生じて、·何處ともなく遙に聲か空氣の中に頼動して聞を、そしてせきぜんほした再び寂然となつて、星が大空にきらめき出した。じぶんなにげをつどみむげんたすけ、わこヽろえこゝちしん〓〓すべさうぜんで、自分は何氣なく良人を見ると、無限の援助を我が心に得たやうな心地がして、心身物て爽然とかるじゆふはかばうがいやつかいしんけいのがえどうして輕くなつたは、をもききを象しづくるるとき計らず納じこれれる匠れ物語を同やうじぶんはじゆんごしやうがいこゝろわだかかんじやうぃかさと樣である。で、以は直めて此撰の年渫に我だにはまるし修情め如何なるものなるがわれふうふくわんけいむかしもどで"このおなじやうあいくりかへあかつきじぶんると、吾々失婦の關係を過去に戻す事が出來ぬのみならず、萬一此同じ愛情を繰返す晩には自分すらかならけんきさうゐかくごしんせいこゝしやくぜんけんぜんくわんらく〓も必ず嫌忌して來るに相違あらじと覺悟して、若し心性玆に釋然たらば、あらゆる顯然せる歡樂を捨えいごうむきうあひだむけいくわんちくきやうじゆことで알しかごとでてゝ永劫無窮の間無形の歡樂を享受する事が出來る。ことはりさと然るに、若し自分が此道理を悟る事山來ずして、じやうしてんめんせうじきようくわいむさぼたというけいくわんらくほしいまつね情思纏綿せる少時の興懷を貪らんとせば、こゝろ縱令ひ多くの有形狀樂を擅にするとも、自分の心は常にあんしんえかへついうくわんくもんンt安心を得ずして、いつまでも、いつまでも却て憂患苦闇の中に落ちたかも知れぬ。ちやどきをつとものしづ六百いつしよざしきで『もう茶の時だ。』と良人は物靜かに云つて、かそして二人は一緒に座敷へ出懸けた。ざしきしきゐいなうばcぶんこsたきとむきだしあしかくcぶんむね座敷の關にヴバニヤを抱ける乳母がゐた。自分は子供を抱取りて、其赤裸の足を隱し、自分の胸におしつけせつぶんちいてうごかあいゆびのばなはものみっ押付て接吻した。すると小さい手を搖かし、くびれた可愛い指を伸して何物かを見詰めやうとする如ねむけめゐふいれいりめみと스ぶんとうじニッあにつこりくに眠た氣な目を明いた。不意に浮眞其抄細きな所を見張って自分を見ると同時於口を明いてとした。ばうわたしわたしくちのうらさヽやじぶんぜんしんてつうれこみあげおぼ『坊やは妾のだよ、妾のだよ、』と口裏に低言いた。で、自分の全身に徹する嬉しさが込上ると、覺えむねしかだいこつめちいあしてやうけロそろとあたませつぶんず胸に緊と抱て、其の冷たい小さい足や、其の手や、漸やく毛が生へ揃つたばかりの其の頭を接吻したをつとぶんそばB Bゆん上こどもまるにむうあきすると良人は自分の傍に來て、機嫌よく、『イワン、セルギイウ井チ』と呼んで子供の圓い二重關をつcぶんわざをつとてはなばうわたしあなたチヨイと突いた。が、自分は態と良人の手を放して、『坊やは妾ので、貴夫のではありません。』につこりいひひさあひだcぶんこのぼくじつoせうせつセルギイ、ミハイエロウ井チは莞爾とした。そして是より以後久しい間、自分は此朴實な微笑に接なにたのしするを何よりも樂んでゐた。ぶんれきしこじゆうけつきゆうじじやうこまやあいれんたうれおくなじぶんをつとじ自分が良人と自分との歴史は玆に終結する。舊時の情濃かなる変態は唯だ嬉しい記憶と爲つて、こどもこxeちたもけいけんしんしやうがいたはうめんみもちろんいぜんかうふく子供と子供の父とに對する『愛』の經驗は、新生涯-他の方面より見れば勿論以前よりさらに宰福しんしやうがい.モせいくわつぢそcぶんたむさいがいaあんなる新生涯の基礎となつた。そして此の生活は今まで持續して自分の爲めに無際涯の慰安となつた
だる。めとと(九)附錄天聲ヴ不ヴオルテール作不知庵主人譯y 21無邊際の虛空に懸る一大星あり、名けて狼星といふ。狼星に横める一人の靑年首て蟻樓に等しき我rが地世界に遊びし事ありて、其時余は不思議に相識るを得たりき。此靑年其名をミクロメガスと呼び、身の高さ二十四哩あり、之を五尺一步の「シオメトリカル、ペース」に改算すれば凡そ二萬四千步に該當す。Dには学家家は試に公衆の利益を助くる間はなれば直言を第をてり等此狼星の住民ミクロメガスの頭の頂點より足の爪美まで總身の丈二萬四千歩なれば、之を尺に改むれば、十二萬尺なる錄
こルはんへいきんこおほすちきうべし。之に反して我が地世界の住民は平均五尺を超める事多からず。左れば五尺の人間が棲める地球しうゐマイルさんじゆつこのきよじんさんしゆつシリンスまめつぶごとほとの周圍を二十七萬哩なりとして算出せば、此巨人を產出する狼星の周圍は豆粒如き地球の殆んを二千こもつとたんじゆんヒゆんかいだうりいなもドイツタンイ百六十倍ならざるべからず。是れ最も見やすき單純なる自然界の道理にして、今若し獨逸或は伊太利いつせうりやうこくわづはんときうちじうゐくわんぼトコロシアシナていこくひの一小個圖-僅かに半時の中共其周個多理少子スきものを以て上其魯西亞若くは支那帝國と比かくざうくわうちうかくせかいあんぱいだいけんかくはさつちた較せば、造化が此宇市に各世界を安排せし大應陽を賜は家如するに足らむ。しんざいてうこくかくわいぐわしかんさうおうえうゐよう先生身材斯の如く大なり。故に彫刻家或は繪〓師は此軀幹に相應せる腰固の殆んど五萬尺なるを容いどういちやうびたんれいさうばうさうごんかん易に同意すべし。而して其長鼻は端麗なる、相貌の三分の一、又其端麗なる相貌は壯嚴なる軀幹の七かれはなながないくばくはすうあまあらそけつくわ分之一なれば、湯のあああさえ三三百三三三とをは信然何の公然數學やべかあるるぜんくおほがうたうにして、此長さは則ち全軀の大きさに恰當せるものなり。しんしきじたらわれ〓〓しうやうかちよくcぶつつうみづか渠の心講に副ては我々の最も候表ある人士の間に列するの價値あり渠は多くの事物に通ず、自らさうけんよはひみとしごろしふくわんシリアスいうめい創見せしものすら少からず。渠は齡未だ二百五十歲に充たず、其年頃の習慣として狼星世界の有名なまなすでこちりよくもんだいかいせつこれる學校に學びし時、既に自己の智力を以て「ユークリツド」の問五十有餘を解說したりといふ。之なぐさとこうねんいうめいかがくしやとののみかがてcに三土の四顧を暫きの年有なる幾何學者をなりレパスカルに比すれことば其多き事更に十八。さむっちこえうじきやういきはなちよくけいたつうじやう左るからに渠が年漸く四百五十を越を、既に幼兒の境域を離れし時、渠は直徑百尺にも足らで通常けんびぎやうみことなか〓〓かたBakeさいちうかいばうつひしけんくわんちんきちよしよBroの順微鏡にて視る事中々に難き數多の細點を解剖し、終に此試驗に關する珍奇の著書を公けにせじいちじはか上しむこんなんかが、此一事は計らずも不思議の困難を釀したりき。いちがうふつたちまふんさうむしこらうこらうてんかちよしよよすうせつきはモかの一毫の啡忽ち紛爭する無識固陋の古典家はミクロメガスの著書を讀み、其數節を以て極めて粗ばうむくわいかだうせつとどくながもつとしんこくビリざんぱうたくまし暴なる奇怪の外道說なり、天下に竈毒を流すものなりと目し、最も深酷なる罵詈讒謗を逞ふせり。けださうてんシリアスせかいのみじつたいくわぎうどうしついなざもんミクロメちからしん八代之ふじんひかたべんなんこうげきつひガスは力を盛して自身を癖護し、あらゆる婦人を其味方と爲し、辯難攻擊する事二百二十年間。終にこてんかかついちとくさいばんくわんさいけつこちよしやはふがいきん古典家は曾て此書を一讀せざる裁判官の裁决を乞ふて、此書の著者は八百年間法衙に出づるを禁じられき。じやるよくきつさじゆうまんはふがジScarこてんかちやうばくわいぎやく渠は邪曲譎詐の充滿せる法衙よう追はるゝも左まで苦める事なく、かの古典家を嘲罵せる該·謔のしいつべんつくきよくがくふじゆえんことあたむしちうふせいかいへんれき詩一篇を作りしが、終に此曲學の腐儒を悶死せしむる事能はざれは、寧ろ宇宙に羅布ぜる星界を遍歷ちけん0万しさうきんつひりよかうとのぼし知見を廣め思想を養はんとて、竟に渠は旅行の途に上りぬ。たひきやくばしやうちちおこなうんゆもやうBかならきつきやう唯だ飛脚馬車のみをもて旅行の具と爲せるものは宇宙に行はるゝ運輸の摸樣を聞かば必ず喫驚すべどくわいせいそくごじんけいけんなにものさうざううちうりよかうかして、又此一小さ通の上に稅息せる貴人は機械以外名物をも憑樣す我が宇宙旅行家こてんかちやうばくわいぎやくかの古典家を嘲罵せる該·謔のむしちうふせいかいへんれき寧ろ宇宙に羅布ぜる星界を遍歷
グヲビテーシヨンはふそくアツトラクシロンレズルシヨンaようじゆくつうちしききんようくわうせんたよは重力の法則、及び引力若くは拒力の作用に熟通し、其知識を善用して或は光線の力に賴り或はするせいはじよかあたかひちやうじゆししゆんじ彗星の補助を借り、米飛の於相性を毎ェが如く世界より他世界に言き脾脂に銀河然こまやさんぶむすうかばうゑんきやうはつけんれども渠は渡かに散布せる無數の小星を見し外は、夫の有名なるデルハムが其望遠鏡にて初めて發見せうりつきよくびてんざううかがもちろんくわどせしと聞く壯絕なる極美の天象を窺はざりしといふ。勿論アルハムの發見に過誤ありといふにあらねじつちせいさいくわんさつかしよせんいづへんちつど。ミクロメガスも亦實地を踏みし精細なる觀察家なれば所詮何れを貶黜すべきにあらざるなり。いくたびてんくわいサダーンたうちやくめしんきな渠は幾度となく轉回して終に土星世界に到着しぬ。渠が眼は常に新奇のものに馴れしといへども、ピかけ話けんしやわう〓〓まぬちやうじやをらひおさ此世界と此住民の馬鹿氣たる大きさを見し時、實表すら猶ほ社々免がれざる長者の災を抑ゆるを得ざサターンわづたけやうやわいせうりき。元來土星は僅かに地球の九百倍にして、其世界の住民は身の丈漸く一千間の矮小人種なればイタリイがくじんフランスあそきよくさうあぎてんぜんぴはいにしてしてもの島の六六六間圓臣となったりするのをあるあくせう00笑を洩せり。シリアもとしゆんさいわいせうちゃうぎやく〓ゆまかれども此狼星人は元より俊才なれば、六千尺の媛小人種なりとて嘲読禮べべきにあらぬ理由をがてんたらサターンかうぎおすサターニアンきよじんいた合點し、忽ち土星の住民と交誼を結びぬ。矮小なる六千尺の土星、ハは初め此十二萬尺の巨人を見て太おどろやうやなしたしたがひあいかたサターンはくがくく驚きしが、漸く馴れ親み互に相語らふ中、ミクロメガス先生は此土星世界の大學書記を奉じ、博學くわうしきはまフィルじよじゆつめいじんざっしけいさん宏講の譽れ高く目ら發見せし事曾てなけれども他の創見を度述するの名人にして、小詩を吟じ計算こ、あんちじまつかを爲すに長ぜる大學者と最も深く交はりぬ。发にミクロメガスが一日此大學者と誤話せし始末を揭けどくしやいつきようこれて讀者の一興に供ふべし。わうぐわサターンかほちか先生先づ横臥して此土星世界の大學書記が其顏に近づきし時、曰く、Lぜんしんらばんしやう『自然は森羅萬象だナア。』サターニアンぜんくわたんくわんぱつ『左なり、』と土星人は云ひぬ。『自然は花壇の如し、其煥發するや-』『むゝ、花壇何する者ぞ。』びかゑんあつそのころも『自然は美姬佳媛の集まれるが如く、其衣-いかところ『美姫佳媛如何んぞ問ふ處ならむ。』ぐわしつ『然らば自然は舊室の如し、其-さけおんみ『當室は余の問ふ處にあらず、』とミクロメガス先生は叫んで曰く、『自然は自然にして足れり、御身何、とはなはぞ比較を求むるの甚だしき。』『唯だ御身に與を添えんが爲め、』と大學書記は答へぬ。ことばをし『我は興を添えらるゝを欲せず、』と旅行家は言葉を受けて云ひけらく、『我は激へられん事を欲す。先いうかくせいいくげくづ御身に問はむ、御身が世界の人間が有する覺性凡そ幾何ぞ?曰く、くわんぱつ其煥發するや-』そのころも其衣-附錄
われらくわせうつうせきかんお『【龍艦かに千三』な』』土土屋劣の美容重症父御身考へいつくわんむにごとなきうくつじつ見よ、唯僅かに七十二感と、項五星をおするのみにして何事をか成すべき其窮屈實に云ふべからざるなり。』か『我も斯く信ずるなり、』とミクロメガス先生は云へらく、『我が國の人間は殆んど一千の覺性を持てどくうさうしやうやういつそうくわんゆんも猶ほ空想の中に術祥して少しも安心を得ず、常に我等は宇宙の小動物にして我よりも一層完なるたこcosれつたういうとうもの多しと思ふ事絕え間なきなり。我は宇宙を旅行し、我より遙に劣等なるものを見、又優等なるもせつまんぞくのに接したれども、いづ:いたず。思ふに何れの日が更に不足を訴へざる地に到る事ああやも計られず然れども此地に住めるものは恐らく其理由を告ぐる事能はざるべし。』サターコアンシリアンだんわことととgぐわんらいたちこうべん3ろんたヽかのちじ土星人と狼星人の談話は爰に暫らく途切れしが、う元來多智巧辯のものなれば議論を戰はして後事實シリアンの問題に移り、狼星人先づ問ふて曰く、じゆみやういくばく『御身の世界にては人の穩命幾何ぞ?きはみなサターンわいじんしゆ一貫、極めて短かし、』と土星の矮人種は答へぬ。どうかんシリアンつれはふそく「我等も同想」り親親人は云ひぬ。我等=常に德命の短かきを襲ふ然れとも是れ宇宙の法なぐわんらいたちこうべん3ろんたヽかのちじう元來多智巧辯のものなれば議論を戰はして後事實るべし。』ああはサターニアンたんぞくわづくわいてんい〓高いなる」を主要人数意していた。。誤等呼ば儀がた悉を吾司博すれきじつくわいさんうんめいはか計2ざるなり』(土星の五百回轉は我が地球の曆日に改算算れば千五百歲也)『我々の運命の敢果なさは生るしわれ〓〓せいぞんからついつしゆんじれば忽ち死す。我々の生存は一「ポイント」、我々の命は一瞬間、我々の世界は一「アトム」たるに過ぎこのゆゑたせうをしへうきたけしつぶごうかすないちyo是故に多少の〓を受けて之を行はんとせば死は忽ち來る。我々は井子粒の如く我々は恒河の砂一リふしぴあつはづ粒にも如かず。さる故に御存の前に出で。此彼々たる然籠をさらすを形かしく思ふてつがくしやurじゆみやうミクロメガス先生曰く『御身哲學者ならずば我は云ふを憚かれども、まこと我が世界の人の壽命はしばんぶつもとしゆんかんきたじんみらい御身等の七百倍なり。然れども御身も知れる如く萬物元に歸するの時、即ち死の瞬間來る時は盡未來さいいいちじついみなおなかつシリアンいのちなが際生きるものも一日生きるものも皆同じである。我れ曾て我々此狼星人の千倍命長き國に遊びし事あちやうじゆなららみじつけるかくごり。然もにあいははそ十候選のの長義を長義となるまして得は其あの処老かし又覺悟いづこほんのうつくうちうさうざうしやかんしやよきものは何處にもありて、能く其本能を盡すを知つて宇宙の創造者に感謝するなり。造化は殆んどあいるゐせんさばんべつへんくわしたとカンメ相類するものと共に千差萬別の變化を此字宙に有けるは、例へば考へるものは同じからざるも、其思ねんいたつたがひあいたうきやういうげんそくひとぶつたいなげんことつういうせい念に到て互に相投ずる共有原則があるに等しくある。さて又物躰は無限なれども世界異なれば通有性またしぶつたいつういうせいいくばくも亦異なれり。御身の世界にては御身の知れる物躰の通有性幾何か有う!附錄
『御身は通有性を云へるか』と土豆人は答ふらく、長れなくむば殆んを世界の成立せざる通有性どうせいへるか、我が世界には通有性凡そ三百あり、例へば容性、凝性、動性重力、離性等。』『たつた三百!』と狼星人は言葉を受け、『造化の配劑實に妙なり。此三百の通有性にては頗る寡少か分の感あれども此小世界には極めて適せり。今に初めぬ事ながら神の全智全能感ずるに餘りあり、我れ各世界を旅行し、何處に到るも若干の差あるを見れど其比例は皆同じ。御身の世界小なれば、御身のさ軀幹も亦小なり。御身は唯僅かの覺性を持つが故に御身の世界に於ける物躰の通有性も亦少なし、是れ皆天の配劑極めて妙ならずや。シテ又御身が國にては大陽の色如何なるか?『白色に較や黄色を交へたるが如し。』と土星人は答へぬ。『まかしよく〓〓其光線を分解する時は七色より成れるを見む。』『我が國の太陽は赤色なり、』と狼星人は云ひけらく、『其光線の色素となるもの三十九。然れども太陽しば〓〓せつきんわれ〓〓にんげんは一にあらず。我れ旅行中屢々接近せし事あり。其異なれるは恰かる我々人間の容色の相異なると同じ。」暫らく斯くの如き間答に時を移せし後、元來異なれる存躰凡そ幾何かあると土星人に問ふて、土星には神、空間、物躰、空間を充たす形躰、空間を充たさゝる形躰、穿透性を有するもの及び有せざるもの等凡そ三十種の存 躰あるを聞き、狼星世界にては三百の存躰を數ふべく、又其旅行の途次に三千右餘を發見したりと誦りて太く土眞の哲學者を雖かしぬ。斯くて二人は互に知れるものを少しく知らざるものを多く語り、太陽一回轉の間各自に、論を試みし後、いぎ諸共に哲學旅行を爲さんと絞に土星界を出發せんとしたり。18/40 xoやがて二人の哲學者は測量器械一具を用意し、今や土星の大空に飄蕩せんと雅備既に整ひける時、sare土星人の妻君は此始末を聞き、其〓き大方ならずいでや抗爭せんとて涙片手に來りぬ。此妻君は極め高架をふたして与ふ德に資実上記のそれる簿を盡然器り又其旅行の途x『嗚呼無情なりー凡そ千年の間御身と爭ひ、漸く和賤して仲善くする事値に百歲にも足らで、復た十cも妾を棄て他世界の大男と何處に旅立ち給ふぞ。御身は唯偉大なる事物の外は何物をも知り給はずん愛するといふ味は微塵も感じ給はざるなり。御身若しまことの土星人ならば斯く心變りはし給はざる筈なるに····何故に、又何の目的ありて姿を棄て心强くも行き給ふぞ。土星を廻る五ツの月は御身シの如く輕薄ならず、土星の環は御身よりも心厚く惠深し。さるに御身はなどて獨り情なき!過ぎつる事は云ふもくだなり。妾は再び何人をも愛せじ。』附錄
えんゆんへいぜいうちわすさいはうえうなみだふるワべつおし哲學者は此怨言を聞きて平生の哲學をも打忘れ、其妻を抱擁し涙を揮ふて離別を惜みぬ。然れどもこのていじつムじんをつとわかのちかわデきやらをとこかうさいじんじやう此貞實なる婦人は所夫と別れし後涙はいつとなく乾き、近くに住める伽羅男と交際尋常ならざりしといふ。かこくうたんけんしやリングとびうつこのちうみんはつめい切ると云の露業務省先生主義學家に然すぐし重重慶過はずぶ世ののすこぶへいたんのりごゝろよかいそtoすゐせいきたし如く頗る平坦にして乘心極めて宜かりき。頓て月より月へと急ぐ折、慧星近く來りしかば、いでごいつそくとうつジユービターざんなれと二人は一足、びに移り、條忽の間に行く事凡そ五億萬里にして終に木星世界に達しぬ。シンたんけんしやしよはんぶつけんきうこのび木星世界に留まる事凡そ一年にして、二人の哲學的探撿者は諸般の事物を〓究し、此徵々たる地世なか〓〓きんえうひみつおちらけいくわく界にては中々に知られぬほどの緊要なる秘密を發見し、近く之を公けにせんとする計畫なれど、凡そこれたたんきうしまつせいへいたゞたせつひなんのうじやからcinえんか滿の無料來は年離離の堅たんまするともやましてするも零だのするさまたゆマースひど、し木星世界を去りて又行くむんを三億萬里にして火星に近づきぬ。火星は人も知れる如く我地世界のにこゑいせいてんもんせうゑいせいaおと價かに五分之一なる小星にして猶ほ二個の衛星を有せり。我が地世界の天文學者は此小衛星を見落しせつきんことかくじかなたれども、凡そ火星の如き小星にして次陽に接近する事斯の如く、而して二個の衛星だに有する無くいかょへいかうたるうちうかシリアスサータンこのげんいうすゐそくんば如何に能く平衡を保をて宇宙に聽るを得べき。狼星及び土星の二哲學者は此原由より推測してもマースたしかくしん火星は慥かに二個の衛星を有する事と確信しぬ(30は此後千八百七十七年華盛頓府の大學教授ボール博士は火星に二個ヴオルテールの此言を爲し〓はもと訴睦に出でしものなれど不思議なの術星あるを發)。見したりといふさておあまたうていひよろそれは偖置き二人の哲學者は此火星界を過ぎ、其餘りに小にして到底一ト夜を明かさんとするも身らおみあたかへきそんわいせうりよてんけいべつ또おかくたびれあしひりよじんさらを容るゝの地なしと考へ恰も鮮村の残小なる雄店を輕蔑して間重き町に尊臥足を引く旅人のさすwゅあしやすしきcせんに先きへと進みしが、行けども行けども足を休める地なく二人は荐りに悔みたれど其詮なければみわたおこくうさいはしぴくわうみやう中毒みジユービターたびた見渡す限りもなき虛空際を走る中、我が地世界より微々たる光明の輝くを見たれば、木星を旅立みまめつぶきとこもふたゝこうくわいか.ひすゐせいムたま〓〓ほくりよくこうかいちし身の豆粒如き心地せらるれど、再び後悔せんも甲要なければそ益星の尾を證みて個々北極紅と難こうほくがんたうちやく逅し、終に千七百三十七年七月五日パルチツク海の北岸に到着しぬ。しばいこのちあさげたやまふたくらしたうやが六.たんきうニ暫らく憩ひし後、二人は朝餐の爲め山二ッ喰ひて舌打ちしね。頓て此地を深く探究せんと先づ北よいつぽじんじやうた。わいじんいつぽふり南に行きけるが、狼星人の一步は尋常三百尺にして、〓唯一千間に足らぬ土星の矮人は其一步に對しきよじんくわん〓〓じよはて十二歩を行かざるべからず。十二萬尺の巨人は寛々として徐步し、六千尺の矮人はチヨコ〓〓としはしをかさまこヽろみさうざうしひひかくもとスカルドtoちやにひないぬだいて走る-其可笑しき態を試に想像せよ。强て比較を求めんとすれば恰も玩弄具に似たる離狗が大ひとうじんべいたいちやうあとお兵なるベルシヤ國王の親兵隊長の踵を追ふが如くならむ。-か9きういつしうこれさせいむしてん他世界の人は斯くて三十六時間に地球を一週せり。是は即ち太陽、否な寧ろ地球が一日に自轉するもちろんちくおいくわいてんきはめよういれきぜんと同じけれど、認人の丘を以下するもよははだにがて細體するの極く資具なるに如附錄附
0たり。我が旅行者は出發せし同じ塲所に來つて巖角に危坐し、渠等の眼には殆んど鑑別しがたき地中だなu海とやら云へる海と「大洋」の名を侵して渠等が坐せる土鼠の土を圍める他の小瀧を瞰下し、東京市下町〃5海とか名のれる水濁に入りしに其水は漸く疑人の膝頭まで達し、巨人に到つては唯踝を沒せしだけなりき。二人の探撿者は此地球に住民ありや否やを確かめん爲め、一心に力を盡して或は腰を届め或は橫臥われ〓〓し、此處彼處を徜徉ふて八方に心を配れども、渠等二人は我々地球の住人には到底想像し得べからざさわれ〓〓びなか〓〓る巨人なれは、地上に何卸する森爾たる我々微動物は中々に其眼に入らず、此地球には我々人類を初ISめ數多の動物が腐生群居して成存する事を更に感ずる躰なく、矮小なる土星人は時としては輕卒にもだ人げん此地球には一動物の存するなしと斷言し、其理由を以て己れの肉眼が鑑別し得ざるに歸せり。されど狼星の哲學者ミクロメガスは其理由の理由とならざるを辨じていへらく、『否なり、御言」は?母の御身は余が充分看明する五十分一の大きさある星をも見能はぬにあらずや。さるも猶ほ御身の鈍き眼にて視るべからざるが故に此星なしと斷定するや。』『されと、』と土星人は云ひぬ。『余れは充分、充分、極めて綿密に觀察せり。』充分、極めて綿密に觀察せり。』『されど、』狼星人は復た云ひけらく、『御身の視力は太く缺乏せるにあらずや。』此地球の極めて不完全『されと、』と土星人は再び言を繼ぎて曰く、『見よや、にして不規則にして又頗なる笑ふべき形狀を。惣て皆混沌たる躰を爲せり。此細き小川を見よ一として直線に走るはなし、又この圓にもあらず方にもあらず權固にもあらぬ此小池を見よ、又蝟毛の如く尖立せる此土角の到る處われ〓〓隆隆しておふ者のくとを大人の得ばいただましぬ。又はよろしは朝馬鹿らしきほど傾斜して、太陽を廻轉すれば兩個の風土は必ずや唯荒凉たるならむ。試に想像せよ、담きいてる感覺を其實もる病病みてのく生氣則工炎な世界の定差の新幹是れ余が住民なしと斷言する所以なり。』『可なり、御身の云へる言は、』とミクロメガス先生は答へぬ。『恐らく此の處に棲める人は感覺を具有せざるべし。されと余は棲める者なしと云ふを得ず。御身は此世界を不規則極まれりと云へど、〓は御身が土星或は木星の尺度を以て量るが故なり。恐らく御身が眼に此世界の惣てが非常に混泥鉛雜せる如く見ゆるは是故に外ならず。道すがらも御身に踊りし如く宇宙は森難萬象にして、意想外に大な口やるものあれば又意想外に小なるものあり、小を以て大を量るべからず、大を以て小を律すべからず。此世界既に小なり。小なる此世界には小なる尺度あり。若し小なる尺度をもて量れば、此世界もまた錄
御身が答ふる如くなちずして、案外規則正しきものならめ。されど余も亦如何にしても、如何にしても此世界の住民が感覺を具有せりと想像するを得ず。』サg二人は猶ほ抗爭せしが、恰も此最中狼星人は金石を結べる襟の糸を切りければ、石はバラ〓〓になり鏗然として地上に落ちぬ。石は大小數多く、最も重きは四百斤、輕きも五十斤に下らず。そここゝに散亂せしを二人は荐りに拾ひ集める時、此パルチツク海とやらの水溜に動めく蟲あるを見たり。逸早く見のけし土星人は不思n議さうに目を圓にして玄ツと視凝め、頓てカラ〓〓と打笑ひ、其漸く見えるほとなる塵の如き動物をつつぷすまじと心を用ゐて巧みに小指にて摘み出し、拇指の爪に載せて狼星人に示しぬ。是は即ち地球に棲める鯨なりけり。狼星人は之を見て地球に住める動物がんと數學上の知識にてりがたきほど極微なるを知て哄然Lとして笑ひ、土星の哲學者も此時初めて斯る不規則なる地球にも一か斯くの如き微動物の棲めるを識りしかど、は広體は其前説を回執して恐ると地球には呼此過の作はるならめと流有に類具人は恩慮ずれは此數と呼べる恐を極めて綿密に熱觀し、終に地世界には猶ほ他の動物らり但し其動物を得力を具有する千尋にてい判定するを得ずと反論し如何にして石はバラ〓〓に뜬しゆ〓〓たんきゆう二人は互に爭ふて果しなく、絵に想微鐵の力を僧りて種々探究を經しゝめち漸くバルチツク海の中学校教授はとの大きさある。動物の評はせるを發せし子を相てぶ諸君記臆するや、脂肪もも俺は拂に赴ぎしおつの君学者の熱規ボスニメ得にて細尾切艱苦を甞めて漸く生還せし事ありしを。新聞紙は畦雉離せし事のみを報道して其始未を降かにせざりしが、諸君、狼星及び土星の二大哲學者が顯微鏡にて發見せし極微動物は即ち此北極探撿の衆哲學者を載せ來りし船なりき。余は今その詳細なる壓更をよしも節らず極めて正直に物間らんとすらbyふるシタカスは庭校的などを物の浮かると評を取るとて置事すると上に載せ、其座埃則を施の中より數多の神士の駆出づろを示失にておさへ、ためつすがめつ捻り殺さぬ樣に用心して面白さうに樂めり。『前のとは全く異なれる動物あり、』と土星の矮人は叫びぬ。狼星人は此數多の微動物を掌上に置きおの〓〓て怡々たりしが、船中の乘組人一同は颶風に難破して大なる岩礁に乘懸けしなりと想像しけむ、各々あわてふためきて船より飛出し、水夫どもは盛んに酒樽をミクロメガス先生の學上に投出し、測量師や.は最嚴端を尺根を的も雲舊安くる男然の位置を他てとどし發見師士頓て測量竿の鐵鏢Part Lを二尺深く食指に决込みしかば狼星人はムツ痒き心地し、扨ては此蟲が整せしならめと思惟せしも錄
さいたぶたゞめづよねん左ばかり痛しとも思はで、唯珍らしさに餘念なかりき。こヽろみたしうるわんちう試に思へ、五尺に足らぬ人間が地球に於けるは、一丈の周圍ある権中に一「インチ」の六十萬分一ナびちううごかんもろてうきかかたに過ぎざる黴蟲の蠢めくと同じかるべし。又考へよ、雙手にて此地球を動すと難しとせざる人ありてこれさうおうかくせいそないつきやういつそんとためさつしやうざんりくがいか之に相應する覺性を具へたりとせば、僅に一〓一村を取らんが爲に殺傷斬戮して、之を得れば凱歌をあきやうきうしないうもんたうくわいc합この5かつ上げて狂喜し、之を失へば憂問して婚勝する地上の見觀を見て、此巨人幺麼の感ありと想像するや。ひんべいれいがいほうくわいゐりゆうせんこさうおそねぞみはなびくわん臨評論産天地を加價する如く思惟する我が地界の龍取虎爭も、恐らく渠が目には鼠花火ほどの觀もなかるべし。さうだいことはてつちう÷ゆうひしやうぐんくわん又斯くの如く壯大なる言を吐けば、其鍛胃を二尺高く振て喜ぶ熊韻將軍もあるべし。然れども此相々たる大將軍も亦蠅々たる蛹蟲に等し、けん〓〓だちゆうひとことこと何ぞ特に異なれりと云はんや。にくがんかんべつこのまよんひじやうなうりよく然らば肉眼に鑑別するを得ざる此微分子を發見せし狼星界の哲學者は非常なる腦力を有せる者ならきよくびぶんしおそうへこごめaoドルニラントノ歳はんキミルル種概の分子する見するとしてとすすうれよろこきよくびだうぶつはうごいたたうはなじゆくしほと嬉し喜びて、ミクロメガス先生は極〓助物が無手輻動するを目も離ミア絶記して思はず聲を上さけわたげて叫びながら顯微鏡を土星人の手に渡しぬ。みひきまはのシンどうおんさけひじやう『やツ、塵埃を引ずり廻してゐるぞ、伸びたり縮んだりして、』と二人は同音に號び、一ツには此非常ひじやう一ツには此非常むしうれみうしなしんぱいいつしんひつふるなる蟲を發見せし嬉しさと、)ンには見失なまじどの心配に一心に翻訳あ思は其基を線はしたりぐわんらいくわいぎてきかなたこなたわうらいさくざつかならせいしよくはたらき元來懷疑的なる土星人は此徴動物が彼方此方に往來錯雜せるを見て、こは必ず生殖の働を爲すなかろ〓〓ばうしんさすがしりよふかがくしよくあさかふくわいせつりと輕々しく妄信せり。然れどもスクリタクスは就石に恩慮濃く學建建くら建建からみするしゆ〓〓くわんさつこらのちあひだんわしゆちやうせつあやまず、種ク觀察を凝して後此機微分子は互に相談話するものなりと主張し土星人は己れの說の誤りはまけおしせつこしゆかちからたうていにくがんしを恥ぢ負惜みに自說を固守し、斯る極徹助物が誤話の力ありとは到底僧しがたしと云ひ、此肉眼にしきべつせいおんきくわんぐ.いうきくわいなすくなて噴別するを得ざる歳が聲者の機關を具有するといふは畜怪なり、若し又談話するものと爲せは少くれいこんにろいちふついかざうくわ上そくも靈魂に似たる或る一物を有せざるべからず、如何に造化は不測なりといへども此極徵の小動物に靈ばかかぎろんけつ魂ありとは馬鹿々々しさの限りならずやと論决せり。いなあやまげんせいしよく『否、』と狼星の哲學者は答へぬ。『御身誤てり、御身現に渠等は生殖を爲すといひしにあらずや。さらこひじやうこひおこことば戀の情なくんばあらず。靈魂なくして戀の情起る事やある。』しかあらそせんとかくしけん『否らず。されど爭ふは詮なし、兎も角も此蟲を試驗せずや。』『左なり、極めてよし、』と狼星人は答へぬ。かみそりおやゆびつめうずけづじやうきでんわとうほそあな渠は剛刀をもて執招の爪を薄く削り海斗に似たる債證尙を作り、其細き穴をおのれの耳に常て、そせろじやうきやくかぶの廣き口を乘客と船の上に被せたり。ほそあな其細き穴をおのれの耳に常て、そ附錄
こと〓〓きこほそおんせんゐとほほのきこすうじかんのちかれら人の聲音は、悉く聞えぬ。極めて細き音すらを爪の練締を通してがかに聞えたり。數時間の後渠等フランスらうかいひやくはうしりよくるしぃみくわくとくえわい小動物が佛關西語を用ふる事を理解し、百方思慮を苦めて漸く其意味を獲得するを得たり。土星の矮じんちどんよういさとののおきろまたひかたざうくわ人は痴鈍なれば容易に其談話を悟り得ざりしが、漸く理解せし後は驚く事も亦一ト方ならず、造化のめうきたうていぼんりよおよいよ〓〓がてん妙機は到底凡慮の及ばぬ事を愈々合點しぬ。ふたりおれもだんわのうりよくしぜんたちまかうきねんくわいわ二人の哲學者は渠等が該語の能力を有するを知るや、自然の情として忽を好奇の念を起して會話をこヽろもとびちうひそのしゑ試みんとせしが、狼星人は本より、土星の矮人といへとも、地球の微蟲に比すれば其聲必ず大にしてじんちいたどひていおんものがたろう渠等の耳には迅雷の如く響くべし。假令細めて低音に物體らんとするも楽等の耳を變するのみならけねんいつこきふふきとふうず、第一應念すべきは其一呼吸蔵は奉等を叺飛はさぐる事なきを保きずいろ〓〓に工風して、終こずってくだくちさいするさきよに小楊枝の如き管を口に含み、其銳どき尖を船に近く寄せたり。わうぐわこゑひく斯くして狼異入は先つ橫臥し極めて其聲を低ふして云へらく、みれざうくわむげんきよくびしめたなんぢらつくわれら今の『目に見えざる蟲よ、造化は無限の極微を示さんが爲め汝等を作れり。我等をして其不思議なる秘密めぐみすこぶタナを知らしむる造化の惠頗る大なり。されと汝等安んぜよ、我等は斯くの如く大なるものなれども、けつがいかへつはご决して汝等を害せず却て保護を加ふべし。』いたいづこけはふけうしひざまづあくまじやうじよ此聲を聞きし者は太く範きて其何處より來りしなるかを解せず、りたう法〓師は跪きて惡魔攘除の祈禱はふけうしひざまづあくまじやうじよりたう法〓師は跪きて惡魔攘除の祈禱せんせいかくせつあんせついかかヽはを爲し、水夫は宣誓をなし、哲學者は學說を案ぜり。然れども其學者の說が如何に巧妙なるにも關らなんぴとニガてんず、其聲の何人の口より發せしかを合點するを得ざりき。ひかくこゑよはすうげんのしんかんならび狼星人に比較すれば聲弱き土星の哲學者は數言を述べて二人が旅行の始末を語り、狼星人が身幹並さいのういだいとわりのしふびんせいくわつなにたのしに才能の偉大なるを說き、出等地部の機敏助物は値に死ぬよりなどといふぼと不感なる生法をぶくじらむしぞくおいモらかしやうがいDIEに送る事や、又一見すれは縣と呼べる蟲に屬すべき此地球に於て抑も如何なる生涯を營みつゝあるさなんことくわいらくしたいざうしよくや、演號秘處を如く動きなくは僕はあず。とうしゆ〓〓じんもんこゝろ有せりや等種々の訊問を試みたり。だいたんうむぎもんのぼぼつぜん極微動物の中にても哲學者は最も大膽なるものにして、其靈魂の有無が疑問にヒりしを聞きて勃然いかクジドランドたんちしやそくりやうとして怒り、象限儀をもて談話者の測量を爲して曰く、かったルしんざいあたまてうてんあしつまさき「間下よ地下の將計は話の旧誌より是の集まに到ちまで、千間あるきやうたんさけ『一千間!』土星の矮人は驚歎して號べりかれいかほかすこエちがごさん『Good heavens渠如何にして我が身の丈を測りしぞ?渠少しも間違へず、一「インチ」の誤算かくせいかくまさですらなきぞ不思儀なる。斯の如きにはえざる分子が此正確なる潤最を爲し能とをは正しく信びんせふめいけいぬ事ならずや。渠は實に測量家なり、志かも最も敏捷明慧なる測量家なり。余は顯微鏡の力を借りてうむぎもんのぼぼつぜん其靈魂の有無が疑問にヒりしを聞きて勃然附錄
漸くに此分子を鑑別するを得たれど、未だ其大きさを知らざる中に早くも渠の爲に魁せられたり。「ポノスは開門を獨登なり」』に比較くなる機機お言葉は芝く〓。今亦進んで關下が同伴者たる巨人をも測量せんとす。』ミクロメガスは其申込を承諾し、足踏み伸ばして橫臥せり、集れ憂然として立つ時には其半身は白雲の中に隱れて測量しがたければなり。極微の哲學者は、能能き處に測量竿を建て、三角測量をなして、終に其全長十二萬尺あるを發見し集れ憂然として立つ時には其半身は白三角測量をなして、終に其全長十二萬尺あるを發見しミクロメガスは太く感服して云へらく、『造化は不可測なり、何ぞ此微蟲が技量の精確緻密なるや。極微分子よ、汝等が形の極めて小なるは我が眼に見えぬほどなり。我は宇宙を跋涉し、星辰の間を遍歷し、其一足を擧くれば以て此地球を微座に紛碎すべき頗る巨大なる怪物を見たれども、未だ曾て汝等の如き微分子あるを知らざりき。宇宙は大丈夫にしてお前原のなん意にある。土蓋盡にの余としてないじ亦た汝等如き眼に見えぬ微分子もあり。やよ最とも小さき理學者よ、世界には汝より猶ほ小さなる動物あり、やu.s〓必要なにいくる」を、世には熊の店員まるる小さくれ物語あり、して、ななるも無限それば小なるも亦無限なりとてアアージルが静世界のスワンメルダムが發見より、ルーアルが解剖の頓末を說き、人に於ける蜂の如く蜂に於ける他の動物あるは、御身自身が今語りし巨人に於けると同じ。此巨人も亦必らず他の巨人に接して一驚する事あるべく、又此巨くだい〓〓きよじんむもるも樹微分子と日販版見えざる微熱なっと爲る大合良人あるべいよ〓〓3クラクメガヌは愈々既話の興に入り先づ極微分子を數笑していら、か、『怜悧明慧なる極微分子よ、めのかき微細なる過に断る發授なる聽力を音せしむる事覺れ造化がなる全能を表はさんが爲めの戯にして、思ふに汝等は此の地球にて最も完全なる純潔を擧なものならめ。宇宙は大なれどもいづこの果も無垢なる淨土にあらず。汝等の棲める此世界こそ純一なる幸福のか☆輝ける地にして、汝等は必ず「工風」」「愛」の中に生涯を樂むものなる事やはか疑あるべき。」きん〓〓地球の哲學者は此言を聽きて皆一同を首を掉り、最も磊落なる一人は進んで、僅々の少數を除くのx外は、人類は唯だ愚痴、驚鈍、猛惡、兇暴の徒のみなるを說きて曰く、『惡の原因が物質なれば、9〓我等は無用の物質をあまり多く有てり。若し又心性に歸するとせば、我等は無用の心性幾何かを有てり。巨大なる二君よ、斯く談話する中にも世界の何邊にてか帽子を戴ける附錄
人間は「ターバン」を戴ける十萬の人間を殺裁し、又其返報として唐殺せられつゝあらむ。斯る無殘なぐえ々名古屋の通常駐死を先にわない言文言える日は獨まも形子様な天気なり。』狼星人は之を聞いて戰慄し、何故に斯く慘澹なる惡事が行はるゝかと尋ぬれば、地球の哲學者は冷かに答ふらく、『他なし、基等はmilののくくれ〓依依開下の麺にも足らるる土壌を奪ひ合〓は其爭上聞に命を失ふ者萬人の一人が利益を得る事にあらずして、「サルタン」と呼べる男と「ザール」と呼べる男が互に其所有權を主張するより此無殘なる職爭を生じ、同類の咽喉笛を搔切てなりと己れが所有とざざれば止まぬ資接頭なるりよを骨し血を洗子後劇を頂ずるなり。5『記呼即異なる動物よ』を漁星人は殘つて盛つて曰く『よしく、我れ其戰塲に出で足下に其百萬の惡魔を蹂み殺して吳れん。』『閣下よ、起り締ふみれ』に地球の首擧者はなだめて曰く、「関下が力を損は十年の後には日え疫癘、饑饉、疲勞、不節制の爲め自ら斃るべし。加之、與實憎むべきは互に相殺傷するものならずして、是等の大衆を指揮して血を流きしめ以て巨れの候とする椅子發機な(日本にていふ羽織と同じく椅子に安坐せる盜何故に斯く慘澹なる惡事が行はるゝかと尋ぬれば、地球の哲學者は冷賊といふ意、ち帝王の事也一四〇、己れは一室の中に安坐し、錦の菌の上に凄しい笑を洩しながら朝略を運らし、百萬人のち5肉〓を膾にして、百打ちする鳥游の曲者こも千段に切りさいなむでも肌かぬ意處。血を喋めて笑にが〓〓ふ鬼、觸手術ぐとが非常電気玉ねを衆への事人心を經論の空手権するとにらずや。』此物語を聞きて太く驚ける旅人は一同に向ひ、『汝等は此陸に棲める少數の賢人に屬し、利慾の爲に人を幾す事なかるべし。されど汝等は何を以て日々の業と爲すや、乞ふ之を聞くを得む。』『我等は蠅を解剖し、距離を測量し、數を算し、二三の點に於ては互に同意すれども、全く知らざる二三千の諸點に於ては相爭ふを常となす。』源星人と十真人は其際に、定せる載を開かんと欲して先つ問ふて曰『雙女宮の大星より狼星まで其距離幾何ぞ?『三十二度半』と異口同音に答へぬ。『さらば爰より月までの距離如何?』『恰も地球の直徑三十倍なり。』二三の點に於ては互に同意すれども、全く知らざる附錄
『空氣の量目は? g比疑問を起して見事地球の哲學者を困めんとしたれども、渠等は少しも躊躇せずして、直ちに空氣は同量の蒸餾水より殆んど九百倍、純金より一萬九千倍輕しと答へたり。土星の矮人は此返答を聞きて頗る喫驚し、十五分前には靈魂の所有を許さゞりし此極微分子をもてい魔術者なりと考ふるに到りぬ。其時ミクロメガス先生は問ふて曰く『汝等能く自己以外の事を知れり、然らば自身に屬する內面の事は定めし悉しく知りつらめ。汝等が靈魂とは何ぞ、乞ふ之を〓へよ。』多くの極微哲學者は答へたり。然れども何れも同說ならずして思ひ〓〓に、或者はアリストートル上を引證し、或者はデカルトを呼び、一人はマールプリンシユを說き、他の一人はライブニツツを論じ、又或る他のものはロツクを主張しぬ。道遙學派の一人は斷乎たる高聲にて『鐵魂とは現實にして合理のものなり』云々と論じてルーブル版のアリストートル集の六百三十三頁を引證したり。『我は希臘語に通せず、』と巨人は云へり。直ちに空氣『我も亦然り。』た『然らは何故に其理解せざる希臘語を直に引證する事をなすや。』『御身も丁解の惡き人なるかな。一知年關の言語はなまなか之を期釋して云はんより吐直ちに原文を引證するの優れるに如かざるなり。』加爾多學派の一人は進んで曰く、『靈魂とは純粹なる精神にして、母の脂內に在る時より形而上の〓念を受けたり。然れども胎を出づるや餘義なくも學校へ行けど、旣に受けたる觀念以上を知る能はざるなり。』「なん行星していない」を王」おの五六町としてるシュなくなのに深き觀念を養ひしものが、順に畧を生しても猶ほ斯く沒分曉漢なるや。さるにても汝が所謂精神とは何ぞ?か、『何故に斯る事を問ひ給ふぞ。我は何事をも知らず。たゞ物質とは何なるかを問へ。是こそ必ず知りつらむ。語れ、聞くべし、』と一人は云ひ、他の一人は更にいへらく、15かく〓〓『例へば此石は白し、斯々の形を爲せり、三ツの「ダイメンシヨン」と重量及び分解性を有せり。』『よし、然らば聞かん、汝の眼に分解すべく、重くして、且つ白色に見ゆる此物質の本來は如何。汝然れども胎を出づ是こそ必ず知り錄
いは其性の幾何かを說きたれと、未だその本質を知らざるなり。』『知らず。』『然らば物質の何たるをも知らざるなり。』ミクロメガス先生は乃ち指頭の一哲學者に向て、靈魂の如何なるものなるかを尋ねければ、此マールブロンシユ學統の一人は語るらく、さ『何事をも爲し得るはたヾ神なり。吾人は神を通じて惣ての事を行ふのみ。吾人の媒介なくして行ひ得るものは即ち神なり。』『然らば汝等は成存せずといふも可なり。』巨人は滅然として大笑せり。「我がなよ。」編輯再びラインソツツ學を進ずる」への回てにて、c『變輿とは肉躰〓然として鳴るときは時間を指示する鍼か然らずむば先づ靈魂鎔然として鳴り肉躰即ち時間を指示する鍼なるべし。又他の一例を擧げて云はゝ經理は宇由の一大範にして肉味は其属〓なり。』、よななにしもシクニ乘半はなかいあと思いるんてくて然形るる意發未だその本質を知らざるなり。』靈魂の如何なるものなるかを尋ねければ、此マー吾人の媒介なくして行ひ余の疑ふ處にあらず。然れると肺は特質に良者の能力を傳之書事といふは余の非常に疑を余は無窮の勢力を崇敬し、其禮拜を制限するを欲せず。又余は何物にも固執せず、たゞ人の考ふるよりは多くが出來得べき事を信じて滿足す。』368很星人は莞爾として打笑みぬ。渠は最後の說をもて最も敏明なるものとなせり。又土星の矮人は其9 ,頗る怜慧なる說に動かされ、若し出來得るならば、最後の學者ロツク派の極微動物を快抱せんとした60うぶん〓〓然るに帽子の中に隠れし聖多の機微動物は急を咳々として咳いてい我等は宇宙の秘密を知れり、天も地も日輪も月輪も曾是れ地球に凄める人間の於に化らるゝなりらう〓〓かうがいけた十二萬尺の巨人、一千間の矮人は豪然として哄笑せり、其聲や琅々航磁盖しホーマーが所謂天地の神が專有せるものにちかし。其哄笑の〓に震動せられし數多の地球人民は振く落されて土星人が洋袴の衣兜に入りぬ。二人の大哲學者は此種微分子を見失ひしを悲み、百方索捜して漸くに之を發見し、扨て原の如く掌上に載せて、心中物に目にも見えざる蟲が皆樣なる思想をきするを嫌ふといとり深切に物語りて終に一の哲學書を渠等に與ふべしと約束しね。附錄我等は宇宙の秘密を知
上其不此一卷は其後巴黎の大學に收められしかば、學士は此秘本を一関して造化の妙を窺はんとし、*思議なる巨人の贈本を繙けば、是は如何に、一字をも留めざる白紙なりけり。『噫!』と渠は號びぬ、『是れ恰も余か望みしものなりき。』(元)
101 393-000-1 43-24 1めをとトオストイ/著M29知DBY-0726

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